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特許7739897静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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  • 特許-静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 図1
  • 特許-静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20250909BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/097 375
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021156191
(22)【出願日】2021-09-24
(65)【公開番号】P2023047229
(43)【公開日】2023-04-05
【審査請求日】2024-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 もえ木
(72)【発明者】
【氏名】高橋 左近
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 洋介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 安章
(72)【発明者】
【氏名】大竹 諒
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-107855(JP,A)
【文献】特開2019-028235(JP,A)
【文献】特開2021-071614(JP,A)
【文献】特開2005-003726(JP,A)
【文献】特開2018-194775(JP,A)
【文献】特開2021-051109(JP,A)
【文献】特開2018-141956(JP,A)
【文献】特開昭53-119300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子と、
平均一次粒径が20nm以上70nm以下である単分散シリカ粒子及び平均一次粒径が20nm以上70nm以下であるチタン酸化合物粒子を含む外添剤と、を有し、
前記単分散シリカ粒子と前記チタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nm以下であり、
前記単分散シリカ粒子の比重Daが1.1以上1.3以下であり、
前記チタン酸化合物粒子の比重Dbが、前記単分散シリカ粒子の比重Daより大きい値であり、
前記チタン酸化合物粒子の比重Dbが4.2以上5.0以下である静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記単分散シリカ粒子の平均円形度Caが0.86を超え0.94未満であり、
前記チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbが0.78を超え0.94未満である請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記単分散シリカ粒子の平均円形度Caが、前記チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbより大きい値である請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記チタン酸化合物粒子がチタン酸アルカリ土類金属塩粒子である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記チタン酸化合物粒子がドーパントを含有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記ドーパントがランタン及びシリカの少なくとも一方である請求項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記単分散シリカ粒子の含有量に対する、前記チタン酸化合物粒子の含有量が、質量比で0.1以上10以下である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
【請求項10】
請求項に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「トナー粒子及び外添剤を含有するトナーであって、該外添剤は、無機微粒子A及びシリカ微粒子Bを含有し、該無機微粒子Aは、第2族元素を有するチタン酸塩の微粒子であり、該チタン酸塩の微粒子の一次粒子の個数平均粒径(D1)をDAとした際に、DAが10nm以上60nm以下であり、該シリカ微粒子Bは、一次粒子の個数平均粒径(D1)をDBとした際に、DBが40nm以上300nm以下、シリカ微粒子Bの稠密度が0.75以上0.93以下であり、該チタン酸塩の微粒子の一次粒子の個数平均粒径に対する該シリカ微粒子Bの一次粒子の個数平均粒径の比(DB/DA)が、1.0以上20.0以下であり、X線光電子分光分析(ESCA)による該トナーの表面の観察で測定される前記チタン酸塩の微粒子に由来するTi元素の値をTie、該シリカ微粒子Bに由来するSi元素由来の値をSieとし、蛍光X線元素分析(XRF)によるトナーの観察で測定される該チタン酸塩の微粒子に由来するTi元素の値をTix、前記シリカ微粒子Bに由来するSi元素由来の値をSixとしたときに、下式で求められる実効Ti比が0.20以上0.60以下であることを特徴とするトナー。
実効Ti比=(Tie/(Sie+Tie))/(Tix/(Six+Tix))」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-109416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子と、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子を含む外添剤と、を有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記単分散シリカ粒子の平均一次粒径が20nm未満若しくは70nmを超える場合、前記チタン酸化合物粒子の平均一次粒径が20nm未満若しくは70nmを超える場合、又は前記単分散シリカ粒子と前記チタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nmを超える場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち
<1> 平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子と、
平均一次粒径が20nm以上70nm以下である単分散シリカ粒子及び平均一次粒径が20nm以上70nm以下であるチタン酸化合物粒子を含む外添剤と、を有し、
前記単分散シリカ粒子と前記チタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nm以下である静電荷像現像用トナー。
<2> 前記単分散シリカ粒子の平均円形度Caが0.86を超え0.94未満であり、
前記チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbが0.78を超え0.94未満である前記<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3> 前記単分散シリカ粒子の平均円形度Caが、前記チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbより大きい値である前記<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4> 前記単分散シリカ粒子の比重Daが1.1以上1.3以下であり、
前記チタン酸化合物粒子の比重Dbが、前記単分散シリカ粒子の比重Daより大きい値である前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<5> 前記チタン酸化合物粒子の比重Dbが4.0以上6.5以下である前記<4>に記載の静電荷像現像用トナー。
<6> 前記チタン酸化合物粒子がチタン酸アルカリ土類金属塩粒子である前記<1>~<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<7> 前記チタン酸化合物粒子がドーパントを含有する前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<8> 前記ドーパントがランタン及びシリカの少なくとも一方である前記<7>に記載の静電荷像現像用トナー。
<9> 前記単分散シリカ粒子の含有量に対する、前記チタン酸化合物粒子の含有量が、質量比で0.1以上10以下である前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
<10> 前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤。
<11> 前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容し、
画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジ。
<12> 前記<10>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<13> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
前記<10>に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子と、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子を含む外添剤と、を有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記単分散シリカ粒子の平均一次粒径が20nm未満若しくは70nmを超える場合、前記チタン酸化合物粒子の平均一次粒径が20nm未満若しくは70nmを超える場合、又は前記単分散シリカ粒子と前記チタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nmを超える場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<2>に係る発明によれば、前記単分散シリカ粒子の平均円形度Caが0.86以下若しくは0.94以上である場合、又は前記チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbが0.78以下若しくは0.94以上である場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<3>に係る発明によれば、前記単分散シリカ粒子の平均円形度Caが、前記チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbより小さい値である場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<4>に係る発明によれば、前記単分散シリカ粒子の比重Daが1.1未満若しくは1.3を超える場合、又は前記チタン酸化合物粒子の比重Dbが、前記単分散シリカ粒子の比重Daより小さい値である場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<5>に係る発明によれば、前記チタン酸化合物粒子の比重Dbが4.0未満又は6.5を超える場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
【0007】
<6>に係る発明によれば、前記チタン酸化合物粒子がチタン酸アルカリ土類金属塩粒子でない場合(例えば、チタン酸アルカリ金属など)と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<7>に係る発明によれば、前記チタン酸化合物粒子がドーパントを含有しない場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<8>に係る発明によれば、前記ドーパントが入っていない場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<9>に係る発明によれば、前記単分散シリカ粒子の含有量に対する、前記チタン酸化合物粒子の含有量が、質量比で0.1未満又は10を超える場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーが提供される。
<10>、<11>、<12>、又は<13>に係る発明によれば、平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子と、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子を含む外添剤と、を有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記単分散シリカ粒子の平均一次粒径が20nm未満若しくは70nmを超える場合、前記チタン酸化合物粒子の平均一次粒径が20nm未満若しくは70nmを超える場合、又は前記単分散シリカ粒子と前記チタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nmを超える場合と比較して、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できる静電荷像現像用トナーを備えた静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0011】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、静電荷像現像用トナーを「トナー」ともいう)は、平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子と、平均一次粒径が20nm以上70nm以下である単分散シリカ粒子及び平均一次粒径が20nm以上70nm以下であるチタン酸化合物粒子を含む外添剤と、を有する。
そして、前記単分散シリカ粒子と前記チタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nm以下である。
【0012】
本実施形態に係るトナーは、上記構成により、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制する。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
近年、電子写真方式の画像形成において、省エネルギー、高画質化等の要求が高まっている。これらの要求に応えるために、平均円形度の高いトナー粒子(例えば、平均円形度が0.98を超えるトナー粒子。以下、球状トナー粒子とも称する。)を有する静電荷像現像用トナーが開発されている。
例えば、外添剤としてチタン酸ストロンチウム等のチタン酸化合物粒子を含有する球状トナー粒子は、画像形成において、湿度、温度等の変化の影響を受けにくい特徴を有する。しかしながら、チタン酸化合物粒子は摩擦帯電により正電荷を帯びやすいことがあり、現像手段においてトナーが帯電しにくくなることがあった。そのため、高温高湿環境下で画像を形成する際に、現像工程においてトナーが像保持体(例えば、感光体)の非画像部にトナーが付着しやすく、カブリなどの画像欠陥を引き起こすことがあった。
そこで、外添剤としてチタン酸化合物粒子及びシリカ粒子を含有する球状トナー粒子が開発されている。シリカ粒子は摩擦帯電により負電荷を帯びやすいことがある。そのため、チタン酸化合物粒子が摩擦帯電により正電荷を帯びても、シリカ粒子は負電荷を帯びているため、トナー全体としては外添剤の摩擦帯電が少なくなる。そのため、当該トナーは現像手段において帯電しやすくなる。しかしながら、当該トナーは、高温高湿環境下で画像を形成する際に、外添剤のシリカ粒子の埋没、外添剤の遊離、外添剤の凝集等を引き起こすことがあった。そのため、高温高湿環境下で画像を形成する際のカブリなどの画像欠陥を抑制できないことがあった。
【0014】
本実施形態に係るトナーは、平均一次粒径が20nm以上70nm以下である単分散シリカ粒子及び平均一次粒径が20nm以上70nm以下であるチタン酸化合物粒子を含む外添剤を有する。単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の平均一次粒径を20nm以上とすることで、トナー粒子への外添剤の埋没が抑制される。また、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の平均一次粒径を70nm以下とすることで、外添剤がトナー粒子から遊離することが抑制される。
更に、本実施形態に係るトナーは、単分散シリカ粒子とチタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値が25nm以下である。外添剤の粒径を当該範囲内とすることで、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子がトナー粒子表面に均一に分散しやすくなる。その理由はマクロ的に電荷が正極よりと負極の類似粒径の粒子のため粒子間で反発も吸引もせず、電荷のバランスが適切となるためである。そのため、外添剤の凝集が抑制される。
【0015】
以上のことから、本実施形態に係るトナーは、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制すると推測される。
【0016】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0017】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、ビニル樹脂が適用される。ビニル樹脂としては、例えば、スチレン系重合性単量体(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル系重合性単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル系重合性単量体(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル系重合性単量体(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン系重合性単量体(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン系重合性単量体(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の重合性単量体の単独重合体、又はこれら重合性単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル樹脂が挙げられる。
なお、結着樹脂としては、ビニル樹脂以外に、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も併用してもよい。ただし、ビニル樹脂は、全結着樹脂の50質量%以上(好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上)であることがよい。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
これらの中でも、ビニル樹脂としては、スチレン(メタ)アクリル樹脂が好適に挙げられる。
スチレン(メタ)アクリル樹脂は、スチレン系重合性単量体(スチレン骨格を有する重合性単量体)と(メタ)アクリル系重合性単量体((メタ)アクリロイル骨格を有する重合性単量体)とを少なくとも共重合した共重合体である。
なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
【0019】
スチレン系重合性単量体としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等が挙げられる。スチレン系重合性単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中で、スチレン系単量体としては、反応し易さ、反応の制御の容易さ、さらに入手性の点で、スチレンが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル等)、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル等)、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系重合性単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
スチレン系重合性単量体と(メタ)アクリル系重合性単量体との共重合比(質量基準、スチレン系重合性単量体/(メタ)アクリル系重合性単量体)は、例えば85/15乃至70/30であることがよい。
【0022】
スチレン(メタ)アクリル樹脂は、架橋構造を有していてもよい。架橋構造を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂は、例えば、スチレン系重合性単量体と(メタ)アクリル酸系重合性単量体と架橋性単量体とを少なくとも共重合して、架橋した架橋物が挙げられる。
【0023】
架橋性単量体としては、例えば、2官能以上の架橋剤が挙げられる。
2官能の架橋剤としては、例えば,ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、デカンジオールジアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)、ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸2-([1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、トリ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等)、テトラ(メタ)アクリレート化合物(例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等)、2,2-ビス(4-メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等が挙げられる。
【0024】
全単量体に対する架橋性単量体の共重合比(質量基準、架橋性単量体/全単量体)は、例えば2/1000乃至30/1000であることがよい。
【0025】
スチレン(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性の点で、例えば、50℃以上75℃以下がよく、好ましくは55℃以上65℃以下、より好ましくは57℃以上60℃以下である。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0026】
スチレン(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、保管安定性の点で、例えば、30000以上200000以下がよく、好ましくは40000以上100000以下、より好ましくは50000以上80000以下である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0027】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0030】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0031】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0032】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0033】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0034】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0035】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0036】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0037】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0038】
トナー粒子の平均円形度Ccは、0.98以上である。
トナー粒子の平均円形度Ccは、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0039】
(外添剤)
外添剤は、平均一次粒径が20nm以上70nm以下である単分散シリカ粒子及び平均一次粒径が20nm以上70nm以下であるチタン酸化合物粒子を含む。
【0040】
-単分散シリカ粒子-
単分散シリカ粒子としては、シリカ、すなわちSiOを主成分とする粒子であればよい。本明細書において、「主成分」とは、複数種類の成分の混合物において混合物の全質量の50質量%以上を占める成分をいう。
ここで、本明細書中において「単分散」とは、下記に示す粒度分布指標が1.25以下であるものを指す。
【0041】
単分散シリカ粒子は、平均一次粒径が20nm以上70nm以下である。
単分散シリカ粒子のトナー粒子への埋没、及びトナー粒子からの遊離をより抑制することで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生をより抑制する観点から、単分散シリカ粒子の平均一次粒径は、25nm以上70nm以下であることが好ましく、30nm以上65nm以下であることがより好ましく、35nm以上65nm以下であることが更に好ましい。
【0042】
単分散シリカ粒子の粒度分布指標は1.25以下である。
単分散シリカ粒子の凝集をより抑制し、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生をより抑制する観点から、単分散シリカ粒子の粒度分布指標は1.05以上1.25以下であることが好ましく、1.05以上1.2以下であることがより好ましく、1.05以上1.15以下であることが更に好ましい。
【0043】
ここで、単分散シリカ粒子の平均一次粒径及び粒度分布指標は、次の方法により測定される。
測定対象のシリカ粒子を、体積平均粒径100μmの樹脂粒子本体(例えば、ポリエステル樹脂、重量平均分子量Mw=500000)に、分散させた後の一次粒子を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置(S-4100、日立製作所社製)により観察して画像を撮影(倍率4万倍)する。測定対象のシリカ粒子200個を無造作に選択し、その画像情報を画像解析装置(Winroof)に取り込み、画像解析によって粒子ごとの面積を測定し、この面積値から円相当径を算出する。得られた円相当径の体積基準の累積頻度における50%径を平均一次粒径とする。
そして、得られた円相当径の体積基準の累積頻度における16%径(D16)及び84%径(D84)を求める。求めた84%径(D84)を16%径(D16)で除した平方根を粒度分布指標(=(D84/D16)1/2)とする。なお、電子顕微鏡は1視野中に測定対象のシリカ粒子が10個以上50個以下程度写るように倍率が調整され、複数視野の観察を合わせて一次粒子の円相当径が求められる。
【0044】
単分散シリカ粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に単分散シリカ粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体的には、例えば、シラザン化合物(例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン等のシラン化合物;ヘキサメチルジシラザン;テトラメチルジシラザン等)のシラン系カップリング剤が挙げられる。また、疎水化処理剤は、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等も挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、例えば、単分散シリカ粒子100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下が挙げられる。
【0045】
単分散シリカ粒子の含有量は、トナー粒子の質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2.5質量%以下が更に好ましい。
【0046】
-単分散シリカ粒子の製造-
単分散シリカ粒子は、湿式法により製造することが好ましい。
本実施形態において、「湿式法」とは、気相法と区別されるものであって、ケイ酸ナトリウムを鉱酸により中和する、又は、アルコキシシランを加水分解する、ことにより製造する方法である。
湿式法の中でも、単分散シリカ粒子は、ゾルゲル法によって製造することが好ましい。
【0047】
以下、本実施形態に用いられる単分散シリカ粒子の製造方法について、ゾルゲル法を例にとって説明する。
なお、単分散シリカ粒子の製造方法は、このゾルゲル法に限定されるものではない。
単分散シリカ粒子の粒子径は、ゾルゲル法の加水分解、縮重合工程のアルコキシシラン、アンモニア、アルコール、水の重量比、反応温度、撹拌速度、供給速度により自由に制御することができる。
【0048】
以下、ゾルゲル法による単分散シリカ粒子の製造方法について、具体的に説明する。
即ち、テトラメトキシシランを、水、アルコールの存在下、アンモニア水を触媒として温度をかけながら滴下、撹拌を行う。次に、反応により得られたシリカゾル懸濁液から溶媒を除去、乾燥することにより、目的の単分散シリカ粒子が得られる。
この後、得られた単分散シリカ粒子は、必要に応じて、疎水化処理がなされる。
【0049】
なお、ゾルゲル法により単分散シリカ粒子を製造する際、同時にシリカ粒子表面の疎水化処理を行ってもよい。
この場合は、前述のように、反応により得られたシリカゾル懸濁液の遠心分離を行い、湿潤シリカゲルとアルコールとアンモニア水とに分離した後、湿潤シリカゲルに溶剤を加え再度シリカゾルの状態にし、疎水化処理剤を加え、シリカ粒子の表面の疎水化を行う。次に、この疎水化処理シリカゾルから溶媒を除去、乾燥することにより、目的の単分散シリカ粒子が得られる。
また、このようにして得られた単分散シリカ粒子に再度、疎水化処理を行っても構わない。
【0050】
シリカ粒子表面に対する疎水化処理としては、気相中で浮遊させられたシリカ粒子に対して疎水化処理剤又は疎水化処理剤を含む溶液を噴霧するスプレードライ法等による乾式法や、疎水化処理剤を含有する溶液中にシリカ粒子を浸漬し乾燥する湿式法、疎水化処理剤とシリカ粒子を混合機により混合する混合法などを採用してもよい。
また、シリカ粒子表面の疎水化処理後には、シリカ粒子を溶剤で洗浄し、残存する疎水化処理剤や低沸点残留分を除去する工程などを追加してもよい。
【0051】
-チタン酸化合物粒子-
チタン酸化合物粒子としては、チタン酸化合物を主成分とする粒子であればよい。
チタン酸化合物は、メタチタン酸塩と呼ばれ、例えば、酸化チタンと他の金属酸化物又は他の金属炭酸塩から生成される塩である。
【0052】
チタン酸化合物粒子としては、チタン酸アルカリ土類金属塩粒子であることが好ましい。
ここで、チタン酸アルカリ土類金属塩とは、一般式RTiO(式中、Rはアルカリ土類金属の1種又は2種以上)で表わされる塩である。
【0053】
チタン酸化合物粒子として、チタン酸アルカリ土類金属塩粒子を用いることで、飽和帯電に達する速さが速いため、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際におけるカブリの発生がより抑制される。
チタン酸化合物粒子として具体的には、例えば、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸亜鉛(PbTiO)等の粒子が挙げられる。
高温高湿環境下で連続して画像を形成する際におけるカブリの発生をより抑制する観点から、チタン酸化合物粒子としてはチタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、及びチタン酸マグネシウム粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらチタン酸化合物粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0054】
チタン酸化合物粒子は、平均一次粒径が20nm以上70nm以下である。
チタン酸化合物粒子のトナー粒子への埋没、及びトナー粒子からの遊離をより抑制することで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生をより抑制する観点から、チタン酸化合物粒子の平均一次粒径は、25nm以上70nm以下であることが好ましく、30nm以上65nm以下であることがより好ましく、35nm以上55nm以下であることが更に好ましい。
【0055】
ここで、チタン酸化合物粒子の平均一次粒径の算出は、単分散シリカ粒子の平均一次粒径の算出と同様である。
【0056】
チタン酸化合物粒子はドーパントを含有することが好ましい。
チタン酸化合物粒子は、ドーパントを含有することで、チタン酸化合物の結晶性が下がり適度に角張った形状となる。それにより、例えば、チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbが0.78を超え0.94未満の範囲内となりやすくなる。そのため、チタン酸化合物粒子がトナー粒子表面に固定されやすくなる。よって、チタン酸化合物粒子のトナー粒子からの遊離がより抑制される。以上のことから、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生がより抑制されると推測される。
【0057】
チタン酸化合物粒子のドーパントとしては、イオン化したときに、チタン酸化合物粒子を構成する結晶構造に入り得るイオン半径となる金属元素が好ましい。この観点から、チタン酸化合物粒子のドーパントは、イオン化したときのイオン半径が、40pm以上200pm以下である金属元素が好ましく、60pm以上150pm以下である金属元素がより好ましい。
【0058】
チタン酸化合物粒子のドーパントとしては、具体的には、ランタノイド、シリカ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、インジウム、アンチモン、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、白金、ビスマス、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、銀、錫が挙げられる。ランタノイドとしては、ランタン、セリウムが好ましい。これらの中でも、イオン半径がチタン酸ストロンチウム粒子を構成する結晶構造により入りやすい大きさである観点、及びチタン酸化合物を適度に角張った形状としやすい観点から、ランタン及びシリカの少なくとも一方であることが好ましい。
【0059】
チタン酸化合物粒子内のドーパントの量は、チタン酸化合物を適度に角張った形状とする観点から、チタン酸化合物粒子中に含有されるアルカリ土類金属原子に対してドーパントが、0.1モル%以上20モル%以下となる範囲が好ましく、0.1モル%以上15モル%以下となる範囲がより好ましく、0.1モル%以上10モル%以下となる範囲が更に好ましい。
【0060】
粒子Aの表面に疎水化処理が施されていてもよい。疎水化処理剤としては公知の表面処理剤が挙げられ、具体的には、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0061】
単分散シリカ粒子の含有量に対する、チタン酸化合物粒子の含有量が、質量比で0.1以上10以下であることが好ましく、0.3以上8以下であることがより好ましく、0.4以上5以下であることが更に好ましい。
【0062】
チタン酸化合物粒子の含有量は、トナー粒子の質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下が更に好ましい。
【0063】
-チタン酸化合物粒子の製造-
チタン酸化合物粒子の製造方法は、特に制限されないが、粒径及び形状を制御する観点から、湿式製法であることが好ましい。
チタン酸化合物粒子の湿式製法は、例えば、チタン酸化合物に含有される金属元素源の混合液にアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理を行う製造方法である。本製造方法においては、金属元素源の混合割合、反応初期の金属元素源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などによって、チタン酸化合物粒子の粒径が制御される。
【0064】
ここで、チタン酸化合物に含有される金属元素源としては、チタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品及びチタン以外の金属元素を含有する硝酸塩、塩化物等が挙げられる。
具体的には、チタン酸化合物粒子がチタン酸アルカリ土類金属塩粒子である場合、チタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品及びアルカリ土類金属元素を含有する硝酸塩、塩化物等が挙げられる。
より具体的には、チタン酸化合物粒子がチタン酸ストロンチウム粒子である場合、チタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品(以下、チタン源とも称する)及び硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等(以下、ストロンチウム源とも称する)が挙げられる。
【0065】
以下、チタン酸化合物粒子の製造方法の一例として、チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法を説明するが、これに限定されるものではない。
酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiOモル比で0.9以上1.4以下が好ましく、1.05以上1.20以下がより好ましい。反応初期の酸化チタン源濃度は、TiOとして0.05モル/L以上1.3モル/L以下が好ましく、0.5モル/L以上1.0モル/L以下がより好ましい。
【0066】
酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にドーパント源を添加することが好ましい。ドーパント源としては、チタン及びストロンチウム以外の金属の酸化物が挙げられる。ドーパント源としての金属酸化物は、例えば、硝酸、塩酸、硫酸等に溶解した溶液として添加する。ドーパント源の添加量は、ストロンチウム100モルに対して、ドーパントである金属が0.1モル以上10モル以下となる量が好ましく、0.5モル以上10モル以下となる量がより好ましい。
【0067】
また、ドーパント源の添加は、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にアルカリ水溶液を添加する際であってもよい。その際も、ドーパント源の金属の酸化物は、硝酸、塩酸、又は硫酸に溶解した溶液として添加されればよい。
【0068】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液を添加するときの温度は、高いほど結晶性の良好なチタン酸ストロンチウム粒子が得られる傾向があり、本実施形態では、60℃以上100℃以下の範囲が好ましい。
アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し、例えば、0.001当量/h以上1.2当量/h以下であり、0.002当量/h以上1.1当量/h以下が適切である。
【0069】
アルカリ水溶液を添加した後、未反応のストロンチウム源を取り除く目的で酸処理を行う。酸処理は、例えば、塩酸を用いて、反応液のpHを2.5乃至7.0、より好ましくは4.5乃至6.0に調整する。
酸処理後、反応液を固液分離し、固形分を乾燥処理して、チタン酸ストロンチウム粒子が得られる。
固形分の乾燥処理の条件を調整することで、チタン酸ストロンチウム粒子の含水率が制
御される。
また、チタン酸ストロンチウム粒子の表面を疎水化処理する場合には、その疎水化処理後の乾燥処理の条件を調整することにより含水率の制御を行ってもよい。
ここで、含水率の制御する際の乾燥条件として好ましくは、例えば、乾燥温度が90℃以上300℃以下(好ましくは100℃以上150℃以下)、乾燥時間が1時間以上15時間以下(好ましくは5時間以上10時間以下)である。
【0070】
・疎水化処理
チタン酸ストロンチウム粒子の表面に対する疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤と溶媒とを混合してなる処理液を調製し、撹拌下、チタン酸ストロンチウム粒子と処理液とを混合し、更に撹拌を続けることで行われる。
表面処理後は、処理液の溶媒を除去する目的で乾燥処理を行う。
【0071】
疎水化処理剤としては、既述のものが挙げられる。
前記処理液の調製に用いる溶媒としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン)等が好ましい。
【0072】
前記処理液において、疎水化処理剤の濃度は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上30質量%以下が更に好ましい。
【0073】
疎水化処理に用いる疎水化処理剤の量は、前述の通り、チタン酸ストロンチウム粒子の質量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下が更に好ましく、10質量%以上25質量%以下が特に好ましい。
【0074】
-その他の外添剤-
本実施形態に用いられるトナーは、その他の外添剤として、前述した単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子以外のその他の粒子を含んでいてもよい。
その他の粒子としては、シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子以外の無機粒子が挙げられる。
無機粒子として、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0075】
その他の外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量は、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0076】
その他の粒子としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えばフッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0077】
その他の外添剤を含む場合、その他の外添剤の含有量は、外添剤の総含有量に対し、1質量%以上99質量%以下であることが好ましく、10質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0078】
(外添剤の物性値関係)
-平均一次粒径の差の絶対値-
単分散シリカ粒子とチタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値は25nm以下である。
高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生をより抑制する観点から、単分散シリカ粒子とチタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値は0nm以上18nm以下であることが好ましく、2nm以上16nm以下であることがより好ましく、4nm以上14nm以下であることが更に好ましい。
【0079】
-平均円形度Ca及び平均円形度Cb-
単分散シリカ粒子の平均円形度Caが0.86を超え0.94未満であり、チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbが0.78を超え0.94未満であることが好ましい。
【0080】
単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の平均円形度を上記範囲内とすることで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生がより抑制される。
その理由は以下の通り推測される。
単分散シリカ粒子の平均円形度Ca及びチタン酸化合物粒子の平均円形度Cbの数値範囲を上記範囲内とすることで、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の両方が、適度に異形状となりやすくなる。そのため、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子がトナー粒子上で転がりにくくなり、外添剤の凝集がより抑制される。以上のことから、単分散シリカ粒子の平均円形度Ca及びチタン酸化合物粒子の平均円形度Cbの数値範囲を上記範囲内とすることで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生がより抑制されると推測される。
【0081】
高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生をより抑制する観点から、単分散シリカ粒子の平均円形度Caは0.87以上0.93以下であることがより好ましく、0.88以上0.92以下であることが更に好ましい。
高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生をより抑制する観点から、チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbは0.79以上0.93以下であることがより好ましく、0.80以上0.92以下であることが更に好ましい。
【0082】
単分散シリカ粒子の平均円形度Caが、チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbより大きい値であることが好ましい。
単分散シリカ粒子の平均円形度Ca及びチタン酸化合物粒子の平均円形度Cbを上記の関係とすることで、単分散シリカ粒子と比較してチタン酸化合物粒子は角張った形状を有しやすくなる。そうすると、単分散シリカ粒子と比較してチタン酸化合物粒子はトナー粒子表面に固定されやすくなる。一方、単分散シリカ粒子はチタン酸化合物粒子と比較して丸みを帯びた形状となりやすくなる。すると、単分散シリカ粒子は、チタン酸化合物粒子と比較して、トナー粒子表面上で転がりやすく、トナー粒子表面のうち、チタン酸化合物粒子の存在しない部分に単分散シリカ粒子が付着しやすくなる。そのため、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子がトナー粒子からより遊離しにくくなり、外添剤の凝集もより抑制される。以上のことから、単分散シリカ粒子の平均円形度Caが、チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbより大きい値とすることで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生がより抑制されると推測される。
【0083】
ここで、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の平均円形度は、次の方法により測定される。
測定対象の粒子(単分散シリカ粒子又はチタン酸化合物粒子)を、体積平均粒径100μmの樹脂粒子本体(例えば、ポリエステル樹脂、重量平均分子量Mw=500000)に、分散させた後の一次粒子を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置(S-4100、日立製作所社製)により観察して画像を撮影(倍率4万倍)する。測定対象のシリカ粒子200個を無造作に選択し、その画像情報を画像解析装置(Winroof)に取り込み、得られた一次粒子の平面画像解析から、下記式により算出する。
・式:円形度=(4π×A)/I
〔式中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を示し、Aは一次粒子の投影面積を表す。
そして、測定対象の粒子(単分散シリカ粒子又はチタン酸化合物粒子)の平均円形度は、上記平面画像解析によって得られた一次粒子200個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0084】
-単分散シリカ粒子の比重Da及びチタン酸化合物粒子の比重Db-
単分散シリカ粒子の比重Daが1.1以上1.3以下であり、かつ、チタン酸化合物粒子の比重Dbが、単分散シリカ粒子の比重Daより大きい値であることが好ましい。
【0085】
単分散シリカ粒子の比重Da及びチタン酸化合物粒子の比重Dbが上記関係を満たすことで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生がより抑制される。
その理由は以下の通り推測される。
チタン酸化合物粒子の比重Dbが、単分散シリカ粒子の比重Daより大きい値となることで、トナー粒子に対する単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の外添時に、チタン酸化合物粒子がトナー粒子表面に優先的に付着しやすくなる。そうすると、単分散シリカ粒子は、トナー粒子表面のうち、チタン酸化合物粒子の存在しない部分に単分散シリカ粒子が付着しやすくなる。よって、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の凝集もより抑制される。以上のことから、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子の比重を上記範囲内とすることで、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生が更に抑制されると推測される。
【0086】
チタン酸化合物粒子の比重Dbは、4.0以上6.5以下であることが好ましく、4.1以上5.5以下であることがより好ましく、4.2以上5.0以下であることが更に好ましい。
【0087】
チタン酸化合物粒子の比重Dbを上記数値範囲内とすることで、トナー粒子表面に対するチタン酸化合物粒子の密着性がより向上しやすくなる。よって、単分散シリカ粒子及びチタン酸化合物粒子がトナー粒子から更に遊離しにくくなり、外添剤の凝集もより抑制される。それにより、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、カブリの発生が更に抑制されると推測される。
【0088】
単分散シリカ粒子の比重Da及びチタン酸化合物粒子の比重Dbは、ルシャテリエ比重瓶を用い、JIS K 0061(2001)に準拠して測定する。操作は次の通りに行う。
(1)ルシャテリエ比重瓶に約250mlのエチルアルコールを入れ、メニスカスが目盛りの位置にくるように調整する。
(2)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る。(精度0.025mlとする)
(3)試料を約100g量り取り、その質量をW(g)とする。
(4)量り取った試料を比重瓶に入れ泡を除く。
(5)比重瓶を恒温水槽に浸し、液温が20.0±0.2℃になったとき、メニスカスの位置を比重瓶の目盛りで正確に読み取る。(精度0.025mlとする)
(6)次式により比重を算出する。
D=W/(L2-L1)
ρ=D/0.9982
式中、Dは試料の密度(20℃)(g/cm)、ρは試料の比重(20℃)、Wは試料の見かけの質量(g)、L1は試料を比重瓶に入れる前のメニスカスの読み(20℃)(ml)、L2は試料を比重瓶に入れた後のメニスカスの読み(20℃)(ml)、0.9982は20℃における水の密度(g/cm)である。
【0089】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0090】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
【0091】
これらの中でも、平均円形度Ccが0.98以上であるトナー粒子を得る点から、懸濁重合法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0092】
具体的には、例えば、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合、
重合により結着樹脂となる重合性単量体を少なくとも含む重合性単量体組成物を調製する工程(重合性単量体組成物調製工程)と、重合性単量体組成物と水系分散媒体とを混合し、懸濁液を調製する工程(懸濁液調製工程)と、懸濁液中の重合性単量体を重合し、トナー粒子を形成する工程(重合工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0093】
以下、各工程の詳細について説明する。なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0094】
-重合性単量体組成物調製工程-
重合性単量体組成物調製工程では、例えば、重合により結着樹脂となる重合性単量体(必要に応じて架橋性単量体を含む重合性単量体)、着色剤、及び離型剤を混合、溶解又は分散して重合性単量体組成物を調製する。重合性単量体組成物には、上述したその他の添加剤の他、有機溶媒、重合開始剤等の周知の添加剤を混合、溶解又は分散してもよい。
【0095】
重合性単量体組成物の調製には、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の混合機を使用する。
【0096】
ここで、重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物(ジ-t-ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等)、無機過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ化合物(4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等)等の周知の重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性単量体100重量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.3質量部以上15質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
なお、重合開始剤は、重合性単量体組成物に添加してもよいが、後述する懸濁液調製工程において、重合性単量体組成物の懸濁前に、水系媒体に添加してもよい。
【0097】
-懸濁液調製工程-
懸濁液調製工程では、例えば、重合性単量体組成物と水系媒体とを混合し、水系媒体中に重合性単量体組成物を懸濁し、懸濁液を調製する。つまり、水系媒体中に、重合性単量体組成物の液滴を形成する。
【0098】
懸濁液の調製には、例えば、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の混合機を使用する。
【0099】
ここで、水系媒体としては、水の単独媒体、水と水性溶媒(例えば、低級アルコール、低級ケトン等)とを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0100】
水系媒体には、分散安定化剤を含有してもよい。
分散安定化剤としては、例えば、有機分散安定化剤、無機分散安定化剤が挙げられる。有機分散安定化剤としては、例えば、界面活性剤(アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等)、水性高分子化合物(ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等)、硫酸塩等が挙げられる。無機分散安定化剤としては、縦叔母、硫酸塩(硫酸バリウム、硫酸カルシウム等)、炭酸塩(炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、リン酸塩(リン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化チタン等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄等)が挙げられる。分散安定化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
分散安定化剤の含有量は、重合性単量体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部が好ましく、0.2質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0101】
-重合工程-
重合工程では、例えば、懸濁液を加熱し、重合性単量体を重合して、トナー粒子を形成する。つまり、重合工程では、懸濁液に分散された重合性単量体組成物の液滴中で、重合性単量体の重合により結着樹脂を生成し、結着樹脂、着色剤及び離型剤を含むトナー粒子を形成する。
【0102】
ここで、重合性単量体の重合温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上98℃がより好ましい。また、重合性単量体の重合時間は、1時間以上20時間以下が好ましく、2時間以上15時間以下がより好ましい。また、重合性単量体の重合は、懸濁液を攪拌しながら進行させることがよい。
【0103】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、上記重合工程で形成したトナー粒子をコア粒子(芯部)とし、insitu重合法、相分離法等の周知の方法を利用して、シェル層を形成し、コア・シェル構造のトナー粒子を製造してもよい。例えば、insitu重合法を利用して、シェル層を形成する場合、上記重合工程を経て得られた、コア粒子が分散した水系媒体中に、重合により結着樹脂となる重合性単量体(シェル層を形成するための樹脂となる重合性単量体)を添加(必要に応じて重合開始剤も添加)し、重合することで、コア粒子の表面を被覆するように樹脂を生成し、シェル層を形成する。これにより、コア粒子(芯部)の表面にシェル層が形成されたコア・シェル構造のトナー粒子が製造される。
コア粒子(芯部)の表面にシェル層を形成する場合、コア粒子が分散した水系媒体中に含有される分散安定化剤を取り除いてからシェル層を形成してもよいし、コア粒子が分散した水系媒体中に含有される分散安定化剤を取り除かずにシェル層を形成してもよい。
【0104】
ここで、重合工程終了後は、水系媒体中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
なお、洗浄工程において、分散安定化剤を除去するために、トナー粒子が分散した水系媒体に、酸又はアルカリを添加することが好ましい。具体的には、例えば、使用した分散安定化剤が酸に可溶な化合物である場合には周知の酸を添加し、使用した分散安定化剤がアルカリに可溶な化合物である場合には周知のアルカリを添加する。
固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。
乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0105】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レ-ディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0106】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0107】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0108】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0109】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0110】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0111】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0112】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0113】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0114】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0115】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0116】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0117】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0118】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0119】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0120】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0121】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0122】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0123】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0124】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0125】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0126】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0127】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0128】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0129】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0130】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0131】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0132】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0133】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0134】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0135】
なお、図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例
【0136】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0137】
<トナー粒子(A)の作製>
(コア粒子分散液(A)の作製)
・スチレン(富士フイルム和光純薬社製) :80部
・n ブチルアクリレート(富士フイルム和光純薬社製) :20部
・ジビニルベンゼン(富士フイルム和光純薬社製) :0.65部
・ドデカンチオール(富士フイルム和光純薬社製):2部
・シアン顔料(PigmentBlue15:3、大日精化工業社製):8部
上記材料をステンレス容器に入れて撹拌により予備混合した後、メディア式分散機(ペイントシェーカー)を用いて十分に分散して、重合性単量体組成物とした。
【0138】
また、丸底ステンレス製フラスコ中に下記の成分を投入し、58℃に加温した。
・イオン交換水:80部
・0.1mol/L Na3PO4水溶液:100部
・1N HCl水溶液:2.8部
【0139】
次に、上記混合液をホモジナイザー(エムテクニック社製、クレアミックス)を用いて回転数13000rpmの条件で分散撹拌した。これに1.0mol/L CaCl水溶液:10部を徐々に加えて、Ca(POを含む水系媒体を調製した。58℃を保持しつつ、このCa(PO分散液中に、分散した重合性単量体組成物を投入して、均質化するまで撹拌した。ホモジナイザーで分散しながら、これら縣濁液にテトラメチルブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノエート(日油社製、商品名:パーオクタO):6部を徐々に添加し、重合性単量体組成物の液滴を形成した。
【0140】
上記の液滴分散した懸濁液は、還流可能な反応容器中で攪拌しつつ外部加熱により90℃に昇温することで、重合反応を進行させた。温度を保ちつつ十分に反応した後は、室温まで冷却し、イオン交換水を加えて、分散液全体に対する、重合単量体組成物の濃度が20質量%となる様にコア粒子分散液(A)とした。
【0141】
(シェル層形成用樹脂粒子分散液(A)の作成)
-ポリエステル樹脂Aの作成-
・ビスフェノールA-エチレンオキシド2モル付加物 :49.2部
・エチレングリコール :8.9部
・テレフタル酸 :14.4部
・イソフタル酸 :5.8部
良く乾燥させてN2置換した3口フラスコに上記モノマーを投入し、N2を送気しつつ185℃に加熱して溶解した後、十分に混合した。テトラブトキシチタネート:0.03部を添加した後、系内の温度を220℃に上昇し、その温度を保ちながら5時間反応を行い、ポリエステル樹脂Aを得た。
【0142】
-シェル層形成用樹脂粒子分散液(A)の作成-
・ポリエステル樹脂A :100.0質量部
・メチルエチルケトン :45.0質量部
・テトラヒドロフラン :45.0質量部
良く乾燥させてN2置換した3口フラスコに上記原料を投入し、N2を送気しつつ80℃に加熱して溶解した後、十分に混合した。次に、80℃のイオン交換水300.0質量部を添加した後、十分に混合し、得られた溶液を蒸留装置に移した。留分温度が100℃に達するまで蒸留を行い、冷却後、得られた溶液にイオン交換水を添加し、分散液全体に対する、ポリエステル樹脂Aの濃度が20質量%になる様に調整した。これをシェル層形成用樹脂粒子分散液(A)とした。
【0143】
(トナー粒子(A)の作製)
コア粒子分散液(A)500.0質量部に対して、シェル層形成用樹脂粒子分散液(A)15.0質量部を1.0質量部/分の速度で滴下した。得られた混合溶液を200rpm(rotations per minute)で20分間撹拌を行った。その後混合溶液を55℃に加熱し、希塩酸を滴下してCa(POを溶解除去した。更に混合溶液を55℃にて2時間撹拌を行った後、混合溶液を65℃に加熱し、1時間撹拌を行った。その後混合溶液を室温に冷却し、イオン交換水で充分洗浄して、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。次に、40℃のイオン交換水中に再分散し、15分間攪拌しながら洗浄した。この洗浄操作を数回繰り返した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、真空下で凍結乾燥してトナー粒子(A)(体積平均粒径(D50v):6.6μm、平均円形度Cc:0.98)を得た。
【0144】
<単分散シリカ粒子の作製>
(シリカ粒子分散液(1)の調製)
撹拌機、滴下ノズル、温度計を具備したガラス製反応容器にメタノール300部、10%アンモニア水70部を添加して混合し、アルカリ触媒溶液を得た。このアルカリ触媒溶液を30℃(滴下開始温度)に調整した後、撹拌しながら、テトラメトキシシラン185部と8%アンモニア水50部とを同時に滴下を行い、親水性のシリカ粒子分散液(固形分量12%)を得た。ここで、滴下時間は30分とした。その後、得られたシリカ粒子分散液をロータリーフィルターR-ファイン(寿工業社製)で固形分量40%まで濃縮した。この濃縮したものをシリカ粒子分散液(1)とした。
【0145】
(シリカ粒子分散液(2)~(12)の調製)
シリカ粒子分散液(1)の調製において、表1に従って、アルカリ触媒溶液の条件(メタノール量、アンモニア水の濃度及び量)、シリカ粒子の生成条件(アルカリ触媒溶液へのテトラメトキシシラン(TMOS)の量、アンモニア水の濃度及び総滴下量、TMOS及びアンモニア水の滴下時間及び滴下開始温度)を変更した以外は、シリカ粒子分散液(1)と同様にして、シリカ粒子分散液(2)~(12)を調製した。
【0146】
【表1】
【0147】
(単分散シリカ粒子(S1)の調製)
シリカ粒子分散液(1)を用いて、以下に示すようにして、シリカ粒子に対し超臨界二酸化炭素雰囲気下でシロキサン化合物による表面処理を行った。なお、表面処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、エントレーナポンプ、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、圧力弁を具備した装置を用いた。
【0148】
まず、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)へ、シリカ粒子分散液(1)を300部投入し、撹拌機を100rpmで回転させた。その後、オートクレーブ内に液化二酸化炭素を注入し、ヒーターにより昇温しながら二酸化炭素ポンプにより昇圧し、オートクレーブ内を150℃、15MPaの超臨界状態とした。圧力弁でオートクレーブ内を15MPaに保ちながら二酸化炭素ポンプより超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液(1)からメタノールと水を除去し(溶媒除去工程)、シリカ粒子(未処理のシリカ粒子)を得た。
【0149】
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)が900部となった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した。
その後、ヒーターにより温度150℃、二酸化炭素ポンプにより圧力15MPaを維持し、オートクレーブ内で二酸化炭素の超臨界状態を維持させた状態で、上記シリカ粒子(未処理のシリカ粒子)100部に対して、予め疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)20部に、シロキサン化合物として、粘度10000cStであるジメチルシリコーンオイル(DSO:商品名「KF-96(信越化学工業社製)」)0.3部を溶解した処理剤溶液をエントレーナポンプにてオートクレーブ内に注入した後、撹拌しながら、180℃で20分間反応させた。その後、再度超臨界二酸化炭素を流通させ、余剰の処理剤溶液を除去した。その後、撹拌を停止し、圧力弁を開けてオートクレーブ内の圧力を大気圧まで開放し温度を室温(25℃)まで下げた。
このように、溶媒除去工程、HMDS及びDSOによる表面処理を順次行い、単分散シリカ粒子(S1)を得た。
【0150】
(単分散シリカ粒子(S2)~(12)の調製)
単分散シリカ粒子(S1)の調製と同様にして、単分散シリカ粒子(S2)~(12)を得た。
【0151】
<チタン酸化合物粒子(T1)の作製>
脱硫及び解膠したチタン源であるメタチタン酸をTiOとして0.7モル採取し、反応容器に入れた。次いで、反応容器に、他の金属酸化物源として塩化ストロンチウムを溶解した水溶液を、SrO/TiOモル比が1.1になるように0.77モル添加した。次いで、反応容器に、ドーパント源として酸化ランタンを硝酸に溶解した溶液を、ストロンチウム100モルに対してドーパントであるランタンが1モルになる量添加した。3つの材料の混合液における初期TiO濃度が0.75モル/Lになるようにした。次いで、混合液を撹拌し、混合液を90℃に加温し、液温を90℃に維持し攪拌しながら、10N(mol/L)水酸化ナトリウム水溶液153mLを2時間かけて添加し、更に、液温を90℃に維持しながら1時間撹拌を続けた。次いで、反応液を40℃まで冷却し、pH5.5になるまで塩酸を添加し1時間撹拌を行った。次いで、デカンテーションと水への再分散とを繰り返すことによって沈殿物を洗浄した。洗浄した沈殿物を含むスラリーに塩酸を加えpH6.5に調整し、固形分を濾別し乾燥させた。乾燥した固形分にi-ブチルトリメトキシシラン(i-BTMS)のエタノール溶液を、固形分100部に対してi-BTMSが20部になる量添加して1時間撹拌を行った。固形分を濾別し、固形分を130℃の大気中で7時間乾燥し、チタン酸化合物粒子(T1)を得た。
【0152】
<チタン酸化合物粒子(T2)~(T15)の作製>
他の金属酸化物源の種類、他の金属酸化物源の添加量、ドーパント源の種類、ドーパント源の添加量、及び10N(mol/L)水酸化ナトリウム水溶液153mLの添加時間を表2の通りに変更したこと以外は、チタン酸化合物粒子(T1)の作製と同様にしてチタン酸化合物粒子を得た。
なお、他の金属酸化物源の添加量は、TiOのモル数に対する他の金属酸化物源のモル数が表2に示す値となる様に調整した。
また、ドーパント源の添加量は、ストロンチウム100モルに対しするドーパントである元素のモル数が表2に示す値となる様に調整した。
【0153】
【表2】
【0154】
<実施例1:トナー及び現像剤の作製>
トナー粒子(A)100部に、外添剤として表面処理単分散シリカ粒子(S1)0.4部、チタン酸化合物粒子(T1)0.5部、を添加し、ヘンシェルミキサーで撹拌周速30m/secで15分間混合し、トナー得た。
【0155】
そして、得られた各トナーと下記の樹脂被覆キャリアとを、トナー:キャリア=8:92(質量比)の割合でVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、現像剤を得た。
【0156】
-キャリア-
・Mn-Mg-Sr系フェライト粒子(平均粒径40μm):100部
・トルエン : 14部
・ポリメタクリル酸メチル : 2部
・カーボンブラック(VXC72:キャボット製) :0.12部
フェライト粒子を除く上記材料とガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とを混合し、関西ペイント社製サンドミルを用いて回転速度1200rpmで30分間撹拌し、分散液を得た。この分散液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れ、撹拌しながら減圧し乾燥させることにより、樹脂被覆キャリアを得た。
【0157】
<実施例2~25、比較例1~4>
トナーの作製時において添加するトナー粒子種、並びに、外添剤(表面処理単分散シリカ粒子、及びチタン酸化合物粒子)の種類及び添加量を表3に記載した通りに変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、トナー及び現像剤を得た。
【0158】
<評価>
各例の現像剤を画像形成装置「Apeos PortIVC5575(富士ゼロックス社製)」の改造機(環境変動における濃度自動制御センサーを切った改造機)」の現像装置に収容した。この画像形成装置の改造機を用いて、カブリ評価及び画像濃度安定性評価を実施した。
【0159】
(カブリ評価)
高温高湿環境下(28℃、85%RH環境下)で画像密度40%の画像をA4紙に連続30万枚連続出力した際の、最後の30枚の画像のカブリ評価を実施した。
[カブリ評価指標]
G1:30枚すべてにカブリは認められない。
G2:1枚に僅かにカブリが認められるが、実用上の許容範囲である。
G3:複数枚に僅かにカブリが認められるが、実用上の許容範囲である。
G4:複数枚に明らかなカブリが認められ、実用に適しない。
G5:30枚すべてに全面的にカブリが認められる。
【0160】
(画像濃度安定性評価)
高温高湿環境下(28℃、85%RH環境下)で画像密度1%の画像をA4紙に連続10万枚連続出力した際の、500枚目および10万枚目の画像の画像濃度の差を測定した。画像濃度はX-Riteカラー反射濃度計を用いて測定した。
[画像濃度安定性評価指標]
G1:10万枚目と100枚目の濃度差が0.03未満
G2:10万枚目と100枚目の濃度差が0.03以上0.05未満
G3:10万枚目と100枚目の濃度差が0.05以上0.07未満
G4:10万枚目と100枚目の濃度差が0.07以上0.09未満
G5:10万枚目と100枚目の濃度差が0.09以上
【0161】
【表3】
【0162】
表中の略称について説明する。
・粒径差(Si粒子-Ti粒子,nm):単分散シリカ粒子とチタン酸化合物粒子との平均一次粒径の差の絶対値
・粒径比(Ti粒子/Si粒子):単分散シリカ粒子の平均一次粒径に対する、チタン酸化合物粒子の平均一次粒径の比
・含有量比(Ti粒子/Si粒子):単分散シリカ粒子の含有量に対する、チタン酸化合物粒子の含有量
・円形度比(Cb/Cc):トナー粒子の平均円形度Ccに対する、チタン酸化合物粒子の平均円形度Cbの値(Cb/Cc)
【0163】
上記結果から、本実施例のトナーは、高温高湿環境下で連続して画像を形成する際における、非画像部にトナーが付着して定着される現象(カブリ)の発生を抑制できるがわかる。
【符号の説明】
【0164】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
118 露光のための開口部
117 筐体
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
P 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2