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特許7739972画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20250909BHJP
【FI】
G03G21/00 512
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021190012
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023076962
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2024-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 佳孝
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-327381(JP,A)
【文献】特開2018-155837(JP,A)
【文献】特開2011-017847(JP,A)
【文献】特開2014-215504(JP,A)
【文献】特開2012-159532(JP,A)
【文献】特開2002-196547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度に関する値を取得する取得部と、
交換前の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第1濃度差、交換後の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第2濃度差として算出する算出部と、
前記第1濃度差と前記第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた前記像担持体の寿命基準値を変更する変更部と、
を有する、画像形成装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記画像濃度に関する値を、前記像担持体の長手方向の一方の端部と他方の端部から取得する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記画像濃度に関する値を、前記像担持体の長手方向の少なくとも一方の端部と中央部から取得する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記取得部は、
前記像担持体上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、前記像担持体上の画像が転写される中間転写ベルト上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、および、中間転写ベルトから画像が転写された記録材上の前記画像濃度を測定する濃度センサーのうち、少なくとも1つの濃度センサーである、請求項1~3のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記取得部は、
前記像担持体上の潜像を現像する際に、前記像担持体へ印加する電圧を記憶する、請求項1~3のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記変更部は、
前記像担持体の使用情報に基づいて、前記像担持体の寿命基準値を変更する、請求項1~5のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記使用情報は、前記画像形成装置の使用環境、トナー濃度、印字カバレッジ、およびモノクロモードとカラーモードの比率のうち、少なくともいずれか一つを含む、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
交換前の像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度に関する値を取得する段階(a)と、
交換後の前記像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度に関する値を取得する段階(b)と、
交換前の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第1濃度差、交換後の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第2濃度差として算出する段階(c)と、
前記第1濃度差と前記第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた前記像担持体の寿命基準値を変更する段階(d)と、
を有する、画像形成装置の制御方法。
【請求項9】
前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体の長手方向の一方の端部と他方の端部から前記画像濃度に関する値を取得する、請求項8に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体の長手方向の少なくとも一方の端部と中央部から前記画像濃度に関する値を取得する、請求項8に記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、前記像担持体上の画像が転写される中間転写ベルト上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、
および、中間転写ベルトから画像が転写された記録材上の前記画像濃度を測定する濃度センサーのうち、少なくとも1つの濃度センサーによって、前記画像濃度を取得する、請求項8~10のいずれか一つに記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項12】
前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体上の潜像を現像する際に、前記像担持体へ印加する電圧を前記画像濃度に関する値として取得する、請求項8~11のいずれか一つに記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項13】
交換前の像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置から取得された画像濃度に関する値の差を第1濃度差、交換後の前記像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置から取得された画像濃度に関する値の差を第2濃度差として算出するステップと、
前記第1濃度差と前記第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた前記像担持体の寿命基準値を変更するステップと、
を有する、画像形成装置の制御プログラム。
【請求項14】
前記画像濃度に関する値は、
前記像担持体の長手方向の一方の端部と他方の端部から取得された値である、請求項13に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【請求項15】
前記画像濃度に関する値は、
前記像担持体の長手方向の少なくとも一方の端部と中央部から取得された値である、請求項13に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、帯電、露光および現像により像担持体(感光体)上にトナー画像を形成し、像担持体上のトナー画像をさらに用紙などの記録材に転写、定着させる。このような画像形成装置においては、その使用により様々な部品が消耗する。このため、画像形成装置においては、消耗した部品の交換が必要である。特に、像担持体の消耗は、形成される画像の品質に影響する。
【0003】
従来の部品交換に関する技術としては、たとえば、特許文献1および2がある。特許文献1では、消耗した部品を交換する際に、新たに装着する部品の寿命を、消耗した部品の交換理由に応じて変更可能としている。特許文献2では、部品の交換基準値を決めておき、消耗した部品の使用度とその部品の消耗度を入力することで、部品の交換基準値を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-011674号公報
【文献】特開2005-014354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、新たに装着した部品の寿命を、消耗した部品の交換時点における稼働量に応じて変更し、かつ、その部品の寿命と判断していた。しかしながら、特許文献1では、交換理由がイレギュラーな原因だった場合、その原因に気づくことができずに誤った寿命に設定されてしまう可能性がある。
【0006】
また、特許文献2は、消耗した部品の交換理由が、寿命なのかイレギュラーなのかが正確に判断できないため、誤った交換基準値に変更してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、像担持体を交換するための寿命基準値を交換理由に応じて変更することのできる、画像形成装置、画像形成装置の制御方法、および画像形成装置の制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度に関する値を取得する取得部と、
交換前の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第1濃度差、交換後の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第2濃度差として算出する算出部と、
前記第1濃度差と前記第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた前記像担持体の寿命基準値を変更する変更部と、
を有する、画像形成装置。
【0010】
(2)前記取得部は、前記画像濃度に関する値を、前記像担持体の長手方向の一方の端部と他方の端部から取得する、上記(1)に記載の画像形成装置。
【0011】
(3)前記取得部は、前記画像濃度に関する値を、前記像担持体の長手方向の少なくとも一方の端部と中央部から取得する、上記(1)に記載の画像形成装置。
【0012】
(4)前記取得部は、
前記像担持体上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、前記像担持体上の画像が転写される中間転写ベルト上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、および、中間転写ベルトから画像が転写された記録材上の前記画像濃度を測定する濃度センサーのうち、少なくとも1つの濃度センサーである、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【0013】
(5)前記取得部は、
前記像担持体上の潜像を現像する際に、前記像担持体へ印加する電圧を記憶する、上記(1)~(3)のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【0014】
(6)前記変更部は、
前記像担持体の使用情報に基づいて、前記像担持体の寿命基準値を変更する、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載の画像形成装置。
【0015】
(7)前記使用情報は、前記画像形成装置の使用環境、トナー濃度、印字カバレッジ、およびモノクロモードとカラーモードの比率のうち、少なくともいずれか一つを含む、上記(6)に記載の画像形成装置。
【0016】
(8)交換前の像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度に関する値を取得する段階(a)と、
交換後の前記像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度に関する値を取得する段階(b)と、
交換前の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第1濃度差、交換後の前記像担持体から取得した前記少なくとも2カ所の画像濃度に関する値の差を第2濃度差として算出する段階(c)と、
前記第1濃度差と前記第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた前記像担持体の寿命基準値を変更する段階(d)と、
を有する、画像形成装置の制御方法。
【0017】
(9)前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体の長手方向の一方の端部と他方の端部から前記画像濃度に関する値を取得する、上記(8)に記載の画像形成装置の制御方法。
【0018】
(10)前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体の長手方向の少なくとも一方の端部と中央部から前記画像濃度に関する値を取得する、上記(8)に記載の画像形成装置の制御方法。
【0019】
(11)前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、前記像担持体上の画像が転写される中間転写ベルト上の前記画像濃度を測定する濃度センサー、
および、中間転写ベルトから画像が転写された記録材上の前記画像濃度を測定する濃度センサーのうち、少なくとも1つの濃度センサーによって、前記画像濃度を取得する、上記(8)~(10)のいずれか一つに記載の画像形成装置の制御方法。
【0020】
(12)前記段階(a)および前記段階(b)は、
前記像担持体上の潜像を現像する際に、前記像担持体へ印加する電圧を前記画像濃度に関する値として取得する、上記(8)~(11)のいずれか一つに記載の画像形成装置の制御方法。
【0021】
(13)交換前の像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置から取得された画像濃度に関する値の差を第1濃度差、交換後の前記像担持体の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置から取得された画像濃度に関する値の差を第2濃度差として算出するステップと、
前記第1濃度差と前記第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた前記像担持体の寿命基準値を変更するステップと、
を有する、画像形成装置の制御プログラム。
【0022】
(14)前記画像濃度に関する値は、
前記像担持体の長手方向の一方の端部と他方の端部から取得された値である、上記(13)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【0023】
(15)前記画像濃度に関する値は、
前記像担持体の長手方向の少なくとも一方の端部と中央部から取得された値である、上記(13)に記載の画像形成装置の制御プログラム。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、交換前後における像担持体の長手方向の少なくとも2カ所の位置の画像濃度に関する値の差分値から、像担持体の寿命か否かを判断して、交換後の像担持体の寿命基準値を変更することとした。これにより本発明は、像担持体を交換するための寿命基準値を交換理由に応じて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
図2】画像形成装置の制御部を説明するためのブロック図である。
図3A】像担持体に対する濃度センサーの配置例を示す正面図である。
図3B】像担持体に対する濃度センサーの他の配置例を示す正面図である。
図4】濃度センサーの構成例を示す概略図である。
図5】像担持体の寿命基準値変更手順を説明するためのメインルーチンフローチャートである。
図6】ノイズ判断の手順を説明するためのサブルーチンフローチャートである。
図7】像担持体の帯電電流と膜厚との理想的な場合の像担持体の膜厚予測結果を示すグラフである。
図8】像担持体の帯電電流と膜厚にバラつきのある場合の像担持体の膜厚予測結果を示すグラフである。
図9】高硬度像担持体の膜厚予測結果を示すグラフである。
図10】像担持体の膜削れを説明するためのグラフである。
図11】寿命に達した像担持体の膜厚を説明するためのグラフである。
図12】新品の像担持体の膜厚を説明するためのグラフである。
図13】イレギュラーでFDスジノイズが発生した像担持体の膜厚を説明するためのグラフである。
図14】第1画像形成装置における像担持体の手前側から奥側までの膜厚の推移を示すグラフである。
図15】第2画像形成装置における像担持体の手前側から像担持体奥側までの膜厚の推移を示すグラフである。
図16】第1画像形成装置の1次転写ローラーの状態を説明するための正面図である。
図17】第2画像形成装置の1次転写ローラーの状態を説明するための正面図である。
図18】像担持体膜厚に対する中間転写ベルト上のトナー付着量を示すグラフである。
図19】像担持体の膜厚の推移を示すグラフである。
図20】露光量一定である画像濃度の画像を形成した場合の電位Vdcの変化の差分を示すグラフである。
図21】画像形成装置の使用環境とその時の像担持体の平均膜厚推移を示すグラフである。
図22】画像形成装置のトナー濃度とその時の像担持体の平均膜厚推移を示すグラフである。
図23】画像形成装置の印字カバレッジとその時の像担持体の平均膜厚推移を示すグラフである。
図24】画像形成装置のモノクロモードとカラーモードの比率とその時の像担持体の平均膜厚推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0027】
(画像形成装置)
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、画像形成部10Y、10M、10C、10K、搬送部20、中間転写ベルト30、および定着部40を有する。
【0029】
画像形成部10Y、10M、10C、10K、の各々は、像担持体11、帯電部12、露光部13、現像部14、クリーニングブレード15、および1次転写ローラー16を有する。画像形成部10Y、10M、10C、10K、の各々によって形成された各色のトナー画像は、中間転写ベルト30上に順々に転写され、中間転写ベルト30上で合成される。
【0030】
像担持体11は、光によって静電潜像(単に潜像ともいう)が形成されることから、感光体とも称される。
【0031】
本実施形態の説明において、像担持体11とは、表層に高硬度層を有する高硬度像担持体である。しかし、本実施形態は、高硬度像担持体に限定されず、高硬度層を有しない像担持体11に対しても実施可能である。
【0032】
像担持体11は、帯電部12によって全面が帯電されたのち、露光部13によって画像データに応じた露光により潜像が形成される。ここでは、各色の画像形成部10Y、10M、10C、10Kによって各色の潜像が形成される。各色の画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、これらを区別しない場合または総称する場合、単に画像形成部10と称する。
【0033】
現像部14は、それぞれの画像形成部10Y、10M、10C、10Kに対応した色のトナーを収容している。現像部14は、トナーとともに像担持体11へ滑剤を供給する。像担持体11に形成された潜像は、現像部14により各色のトナーによって現像される。各色は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)である。
【0034】
現像された各色のトナー画像は中間転写ベルト30上に転写され(1次転写)、順次重ねられてフルカラーのトナー画像が形成される。中間転写ベルト30には、転写ローラー31およびクリーニングブレード32が当接している。中間転写ベルト30と転写ローラー31によって転写ニップ33が形成される。
【0035】
クリーニングブレード15は、像担持体11の表面から、不要になったトナーをかき取って、像担持体11の表面をクリーニングする。
【0036】
1次転写ローラー16は、中間転写ベルト30を像担持体11の方向へ加圧する。
【0037】
中間転写ベルト30上のトナー画像は、転写ニップ33において、記録材S(たとえば用紙)の表面に転写される。記録材Sの表面には、未定着画像50が形成される。このため中間転写ベルト30、転写ローラー31、およびそれらによって形成された転写ニップ33は、転写部となる。記録材S上の未定着画像50は、定着部40に搬送されて定着される。
【0038】
搬送部20は、給紙ローラー22、タイミングローラー23、および排紙ローラー26を有する。
【0039】
搬送部20は、給紙トレイ21から取り出された記録材Sを、給紙ローラー22およびタイミングローラー23によって転写ニップ33へ搬送する。
【0040】
定着部40は、未定着画像50が形成された記録材Sを定着ニップ41に通過させ、加圧および加熱によって、未定着画像50を記録材Sの表面に定着させる。
【0041】
画像が定着された記録材Sは、排紙ローラー26によって排紙トレイ(不図示)などに出力される。
【0042】
次に、画像形成装置100の制御部を説明する。図2は、画像形成装置100の制御部を説明するためのブロック図である。
【0043】
制御部110は、画像形成制御部120、算出部111、変更部112、記憶部113を有する。制御部110は、画像形成部10、搬送部20、定着部40、および取得部60と、信号線90によって接続されている。
【0044】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および記憶部113などによって提供されるコンピューターである。CPUは、所定のプログラムを実行することで、画像形成制御部120、変更部112、および算出部111の機能を提供する。
【0045】
画像形成制御部120は、画像形成部10、搬送部20、および定着部40などを制御することで、画像形成動作を実行する。
【0046】
算出部111は、取得部60からの信号により、像担持体11の交換前後において、像担持体11の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度の差分を算出する。具体的には、算出部111は、交換前の像担持体11から第1濃度センサーおよび第2濃度センサーによって取得された2カ所の画像濃度の差を第1濃度差として算出し、交換後の像担持体11から第1濃度センサーおよび第2濃度センサーによって取得された2カ所の画像濃度の差を第2濃度差として算出する。第1濃度センサーおよび第2濃度センサーについての詳細は後述する。
【0047】
変更部112は、第1濃度差と第2濃度差の差分値が所定値以上の場合に、あらかじめ設定されていた像担持体11の寿命基準値を変更する。ここで設定とは、記憶部113に記憶することである。したがって、設定された像担持体11の寿命基準値は、記憶部113に記憶される(以下同様)。
【0048】
記憶部113は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)やその他の記憶装置によって提供される。記憶部113は、後述する各処理において、様々な値や処理(算出)結果などを記憶する。なお、処理結果などは、制御部110内のRAMに一時記憶されてもよい。
【0049】
取得部60は、像担持体11の長手方向の少なくとも2か所に対応した位置の画像濃度を取得する。本実施形態において取得部60は、2つの濃度センサーである。以下の説明において、像担持体11の長手方向奥側を単に奥側、像担持体11の長手方向手前側を単に手前側と称する。
【0050】
図3Aは、像担持体11に対する濃度センサーの配置例を示す正面図である。なお、正面図とは、像担持体11を記録材搬送方向の上流から下流方向へ見た図である。正面図とは、他の図においても同様である。
【0051】
図3Aに示した濃度センサーは、第1濃度センサー61と、第2濃度センサー62である。第1濃度センサー61は、像担持体11の奥側の端部に配置される。第2濃度センサー62は、像担持体11の手前側の端部に配置される。ここで端部とは、画像形成可能な範囲内の端部である。なお、第1濃度センサー61および第2濃度センサー62は、これらを区別しない場合または総称する場合、単に濃度センサーと称する。
【0052】
図3Bは、像担持体11に対する濃度センサーの他の配置例を示す正面図である。図3Bに示した濃度センサーは、第1濃度センサー61と、第3濃度センサー63である。第1濃度センサー61は、像担持体11の手前側に配置される。第3濃度センサー63は、像担持体11の長手方向中央部に配置される。
【0053】
濃度センサーの配置は、図3Aおよび図3B以外にも、図示しないが、たとえば、像担持体11の長手方向の両端部および中央部の3カ所としてもよい。濃度センサーを3カ所以上配置した場合、算出部は、各濃度センサーからの信号(濃度値)の互いの差分を算出する。そして、算出部は、算出された互いの差分値の中で最も大きな値を第1濃度差および第2濃度差とする。具体的には、算出部は、まず、(第1濃度センサーの濃度値)-(第2濃度センサーの濃度値)、(第1濃度センサーの濃度値)-(第3濃度センサーの濃度値)、(第2濃度センサーの濃度値)-(第3濃度センサーの濃度値)を算出する。続いて、算出部は、これらの算出された値の絶対値が大きな値を第1濃度差および第2濃度差とする。
【0054】
図4は、濃度センサーの構成例を示す概略図である。濃度センサーは、発光部601および受光部602を有する。発光部601は、像担持体11へ向けて光を出射する。受光部602は、像担持体11からの反射光を受光する。濃度センサーは、受光部602で受光した光の強度によって、像担持体11上のトナー画像55の濃度を検出する。検出された濃度は、制御部110へ入力される。
【0055】
第1~第3濃度センサー61、62、および63は、いずれも像担持体11に形成されたトナー画像の濃度を検出する。これにより、色ごとの像担持体11の状態を直接把握することができる。特に、第1~第3濃度センサー61、62、および63は、画像濃度を像担持体11から直接測定するため、現像部14(現像剤担持体)や中間転写ベルト30の影響を受けることなく判断できる。
【0056】
しかし、取得部60は、これに限定されず、たとえば、中間転写ベルト30に形成されトナー画像の濃度を検出するための濃度センサーとしてもよい。この場合の濃度センサーも、像担持体11の少なくとも2カ所に対応する位置の画像濃度を取得する。この場合、濃度センサーは、像担持体11ごとに設ける場合よりも、少なくできる。
【0057】
また、取得部60は、定着後の記録材Sの画像濃度を検出するための濃度センサーとしてもよい。この場合の濃度センサーも、像担持体11の少なくとも2カ所に対応する位置の濃度を取得する。記録材の画像濃度を検出するための濃度センサーは、色調整や、画像位置調整のために設けられているセンサーを利用することができる。色調整や、画像位置調整のために設けられているセンサーは、たとえば、記録材の搬送方向と直交する方向、すなわち、像担持体11の長手方向と同じ方向に画素が並んだラインイメージセンサー(コンタクトラインイメージセンサーを含む)が用いられている。
【0058】
さらに、取得部60は、たとえば、画像形成時に像担持体11に印加する電位Vdcを記録することとしてもよい。この場合、取得部60の機能は、以下のようにして達成される。
【0059】
まず、ユーザーは、画像形成部10によって、任意の濃度の画像を印字させる。任意の濃度の画像は、たとえば、濃度50%以上、べた塗りなど、記録材全面にわたり、濃度測定しやすい画像がよい。ユーザーは、その時に像担持体11に印加した電位Vdcを記憶部113に記憶させる。この時の記憶は、像担持体11の奥側の電位Vdcとする。
【0060】
続いて、ユーザーは、像担持体11の奥側と像担持体11の手前側に対応する位置での記録材S上の濃度を測定し、比較する。濃度の測定は、画像形成装置100に内蔵された濃度センサーによって実行されてもよいし、画像形成装置100とは別に設けられる濃度センサーによって実行されてもよい。
【0061】
続いて、ユーザーは、画像形成部10によって、像担持体11の奥側の濃度と、像担持体11の手前側の濃度とが同じになるまで、濃度を変えて記録材Sへ印字させる。ユーザーは、その時の電位Vdcを記録させる。
【0062】
そして、ユーザーは、像担持体11の奥側の濃度と像担持体11の手前側の濃度とが同じになった時点の電位Vdcを像担持体11の手前側の電位Vdcとして記録させる。
【0063】
以上により、像担持体11の奥側の電位Vdcと像担持体11の手前側の電位Vdcとが取得される。なお、像担持体11の中央部を含めた3カ所の電位Vdcを取得する場合も同様であり、ユーザーは、3カ所の濃度が同じになった時に、印字した像担持体11へ印加されるバイアス電圧を記録させる。
【0064】
(像担持体11の寿命基準値変更手順)
次に、像担持体11の寿命基準値変更手順を説明する。図5は、像担持体11の寿命基準値変更手順を説明するためのメインルーチンフローチャートである。制御部110(CPU)は、この手順に沿って作成されたプログラムを実行する。
【0065】
ここで説明する手順においては、図3Aに示した第1濃度センサー61および第2濃度センサー62を使用して、2カ所の画像濃度を取得する。また、最初に記憶部113に記憶されている像担持体11の寿命基準値は、2000krotとする。
【0066】
まず、制御部110は、像担持体11の2カ所の画像濃度を取得する(S101)。この画像濃度は、たとえば、常時、第1濃度センサー61および第2濃度センサー62によって測定する。制御部110は、最新の測定値を記憶部113に記憶する。また、この画像濃度は、たとえば、像担持体11を交換するためのメンテナンスモードを用意しておき、画像形成を実行させて測定する。制御部110は、メンテナンスモードで測定された画像濃度を記憶部113に記憶する。なお、画像濃度に関係する値としてバイアス電圧を使用する場合は、メンテナンスモードを用意しておいて、すでに説明したように、現像時の電位Vdcを記憶させる。
【0067】
続いて、ユーザーによって、像担持体11の交換が実行される(S102)。この時の交換理由は、たとえば、FDスジノイズの発生である。
【0068】
そして、制御部110は、交換時点での像担持体11の回転数を記憶する(S103)。像担持体11が交換されたか否かは、たとえば、像担持体11の存在を認識するために設けられているスイッチのオン、オフによって判断される。ここで、交換時点の像担持体11の回転数は、たとえば、1800krotする。
【0069】
続いて、制御部110は、交換後の像担持体11によって画像形成された際の2カ所の画像濃度を取得する(S104)。
【0070】
続いて、制御部110は、FDスジノイズは、寿命による減耗が原因か否かを判断する(S105)。この判断は、算出部111および変更部112の機能として以下のように実行される。
【0071】
図6は、ノイズ判断の手順を説明するためのサブルーチンフローチャートである。
【0072】
制御部110は、まず、S101(交換前)で取得された2カ所の画像濃度から第1濃度差を算出する(S151)。
【0073】
続いて、制御部110は、S104(交換後)で取得された2カ所の画像濃度から第2濃度差を算出する(S152)。
【0074】
続いて、制御部110は、第1濃度差と第2濃度差の差分値を算出する(S153)。
【0075】
続いて、制御部110は、差分値と所定値を比較する(S154)。
【0076】
比較の結果、差分値が所定値以上(差分値≧所定値)の場合(S154:YES)、制御部110は、FDスジノイズを寿命による減耗が原因であると判断する(S155)。すなわち、(差分値≧所定値)の場合、像担持体11は、寿命に到達したものと判断される。
【0077】
一方、比較の結果、差分値が所定値以上(差分値≧所定値)ではない場合(S154:NO)、制御部110は、FDスジノイズを減耗以外が原因であると判断する(S156)。すなわち、(差分値≧所定値)ではない場合、発生したノイズは、像担持体11の寿命以外の原因であるイレギュラーなものと判断される。
【0078】
減耗を原因とするか否かを判断するための所定値は、実験により、また経験(これまでの実績)などからあらかじめ決定される。所定値は、たとえば、同一機種における、寿命に到達した像担持体11による第1濃度差と、新品の像担持体11の第2濃度差との差分値から決定される。所定値は、実験値や経験値などをそのまま用いてもよいし、ある程度のマージンなどを加えて決定されてもよい。決定された所定値は、記憶部113に記憶される。
【0079】
その後、処理はサブルーチンからメインルーチンへ戻る。
【0080】
S105の結果から、FDスジノイズが減耗を原因とする場合(S106:YES)、続いて、制御部110は、寿命基準値を、S103で記憶させた回転数である1800krotに設定する(S107)。その後、制御部110は、処理を終了する。なお、寿命基準値を変更した場合、処理を終了させることなく、後述するS108以降の処理を実施して、取り外した像担持体11の膜厚測定を実施させてもよい。
【0081】
一方、S105の結果から、FDスジノイズが減耗を原因としない場合(S106:NO)、制御部110は、寿命基準値を変更しない。したがって、ここでは、2000krotのままである。
【0082】
その後、制御部110は、取り外した像担持体11(交換品という)の膜厚を測定するか否か判断する(S108)。膜厚測定するか否かを判断は、ユーザーからの入力によって行われる。
【0083】
S108において、交換品の膜厚測定を実施する場合(S108:YES)、膜厚測定はユーザーによって実施される(S109)。
【0084】
続いて、制御部110は、膜厚測定結果から得られた寿命基準値の入力を受け付ける。そして、制御部110は、受け付けた寿命基準値を設定する(S110)。その後、制御部110は処理を終了する。
【0085】
S108において、交換品の膜厚測定を実施しない場合(S108:NO)、制御部110は処理を終了する。
【0086】
なお、FDスジノイズが減耗を原因としない場合、そのまま処理を終了させてもよい。手順としては、FDスジノイズが減耗を原因としないと判断された後のS108~S110の処理が省略される。これにより、制御部110は、FDスジノイズが減耗を原因としない場合(S106:NO)、そのまま処理を終了する。この場合、寿命基準値は、変更されない。
【0087】
以上の処理により、本実施形態は、像担持体11にFDスジノイズなどの画像キズが発生し、像担持体11が交換された場合に、取り外された像担持体11が寿命に達したのか、イレギュラーで画像キズが発生したのかを、自動的に判断できる。
【0088】
これにより本実施形態は、交換後の像担持体11の使用状況が以前と同様であれば、寿命を迎える直前に交換できる。このため、本実施形態は、寿命を原因とする画像ノイズの発生を迎えることができる。したがって、本実施形態は、記録材や現像剤の無駄も抑えることができる。また、本実施形態は、寿命を迎える前の交換であってもイレギュラーな原因によって交換された場合、寿命基準値を変更しない。したがって、本実施形態では、無駄に早く交換されることもない。
【0089】
また、本実施形態では、像担持体11の交換原因がイレギュラーなものであった場合に、交換品の膜厚測定を実施することとした。これにより、本実施形態では、交換品の減耗の程度を把握でき、把握した膜厚に基づいて寿命基準値を変更できる。
【0090】
なお、上述した手順の説明では、画像キズとしてFDスジノイズを例に説明したが、画像キズは、FDスジノイズに限定されない。たとえば、像担持体11は、何度か印字を行っても消えないようなキズが発生した場合に交換されることがある。本実施形態は、様々な理由により像担持体11が交換された場合に、取り外された像担持体11が寿命に達したか否かを判断できる。
【0091】
(作用)
上記のように構成された画像形成装置100における作用について説明する。
【0092】
(像担持体の膜厚)
像担持体11の膜厚は、像担持体11に流れる帯電電流を読み取って予測できる。像担持体11の膜厚を予測する方法は、像担持体11に、帯電バイアスを印加する。帯電バイアスの電位は、あらかじめ決められた値である。帯電バイアスの印加によって、像担持体11には、電流値Iacが流れる。膜厚は、あらかじめ記憶されたテーブル値を用いて、この電流値Iacから予測される。像担持体11の膜厚がどの程度減耗したかは、最初(または使用直後)に予測された膜厚と、使用後に予測された膜厚の差分から得られる。
【0093】
図7は、像担持体11の帯電電流と膜厚との理想的な場合の像担持体の膜厚予測結果を示すグラフである。図8は、像担持体11の帯電電流と膜厚にバラつきのある場合の像担持体11の膜厚予測結果を示すグラフである。
【0094】
図7に示すように、帯電バイアスを1700V印加した時の電流値Iacが1800μAだった場合に、理想的な膜厚は、24μmと予測される。
【0095】
しかし、電流値から膜厚を予測する方法は、画像形成装置100が持つ高圧電源の出力バラつき、帯電部材、および像担持体11の調湿度合いなどの影響でバラつく。したがって、実際の画像形成装置100における膜厚予測の結果は、図8に示すように、バラついている。
【0096】
通常の像担持体11の場合、膜厚の予測は、ある程度のバラつきがあっても、予測により得られた減耗の状態と実際の状態とに、大きな違いはない。通常の像担持体11とは、表層に高硬度層を有さない。
【0097】
高硬度層を有する像担持体11(高硬度像担持体とも称する)は、通常の像担持体11と比較して、の膜削れが少ない。このため、高硬度像担持体11の場合、膜厚の予測値にバラつきがあると、膜削れによる減耗量がバラつきの範囲に埋もれてしまう。このため、高硬度像担持体11の場合、電流値Iacを用いた膜厚予測では、その寿命を正確に判断できない。
【0098】
図9は、高硬度像担持体の膜厚予測結果を示すグラフである。高硬度像担持体11の寿命は、図9に示すように、2000krotである。しかし、電流値Iacを用いた膜厚予測では、バラつきの影響によって、800krot程度で寿命と判断されてしまう可能性がある。
【0099】
このように、高硬度像担持体11の寿命は、予測が難しい。このため、高硬度像担持体11の交換は、上述した電流値Iacによる予測ではなく、あらかじめ決められた寿命基準値(回転数)に到達した時点で、交換する。
【0100】
しかし、高硬度像担持体11は、寿命として設定された回転数で必ず寿命に達するとは限らない。像担持体11は、使用状況によっては、本来の寿命よりも早いタイミングであっても、画像ノイズが発生することがある。このため、高硬度像担持体11の交換のたびに寿命基準値が変更されると、まだまだ使用可能であるにもかかわらず、寿命基準値が、不必要に短期間に設定されてしまうこともある。
【0101】
(像担持体の減耗)
像担持体11の減耗について説明する。
【0102】
図10は、像担持体11の膜削れを説明するためのグラフである。
【0103】
ここでは、高硬度の表層を有する像担持体11を例に説明する。画像形成装置100では、現像部14からトナーと滑剤が像担持体11へ供給される。このような像担持体11において、高硬度の表層が十分に残っている間は、耐久性が高く、膜削れが起こらない(図10のaの膜厚)。しかし、像担持体11は、画像形成動作によって、像担持体11の奥側よりも手前側の方が膜削れが促進気味になる(図10のb~dの膜厚)。
【0104】
画像形成装置100では、多くの場合、現像部14から現像剤とともに滑剤が供給される。滑剤を含んだ現像剤は、現像部14の長手方向の奥側から手前側へ循環する。このため、滑剤は、現像部14の長手方向の手前側、すなわち、像担持体11の手前側の方が少なく供給される。このため、膜削れは、上記のとおり、像担持体11の奥側よりも手前側の方が促進気味になる。
【0105】
そして、高硬度の表層が減耗してくると、減耗した部分で急激に膜削れが促進される(図10のeの膜厚)。そうなると、形成された画像には、像担持体11の寿命による減耗によって画像ノイズが発生する
画像ノイズの原因は、減耗だけではない。たとえば、図10のdの膜厚において、FDスジノイズが発生した場合、そのFDスジノイズの原因は、減耗によるものか、イレギュラーによるものか判断できない。なお、FDスジノイズとは、記録材の搬送方向に生じる筋状の画像ノイズである。
【0106】
そこで、本実施形態では、FDスジノイズの判断を濃度に関わる情報で判断する。図11は、寿命に達した像担持体11の膜厚を説明するためのグラフである。
【0107】
寿命に達した像担持体11の膜厚は、像担持体11の長手方向の位置によって異なる。像担持体11は、使用する時間が長くなるほど、図11に示すように、像担持体長手方向の手前側が奥側よりも大きく減耗する。このような減耗が、所定量に達した場合、像担持体11は、寿命に達したものとして交換される。このような寿命に達した像担持体11は、ある露光量で画像を印字すると、手前側と奥側で画像濃度差ΔID1が大きい。
【0108】
図12は、新品の像担持体11の膜厚を説明するためのグラフである。新品の像担持体11は、図12に示すように、像担持体11の長手方向でほぼ一律の膜厚になる。このため、新品の像担持体11は、ある露光量で画像を印字すると、手前側と奥側で画像濃度差ΔID2がほとんど変わらない。つまり、画像濃度差ΔID2は、ΔID1より小さい。
【0109】
本実施形態は、これらの特性を利用し、像担持体11の手前側と奥側との画像濃度差ΔID2が所定値以上の場合に、減耗によるノイズと判断する。そして、本実施形態では、減耗によるFDスジノイズが発生した場合、像担持体11の寿命を判断するための寿命基準値を変更する。
【0110】
図13は、イレギュラーでFDスジノイズが発生した像担持体11の膜厚を説明するためのグラフである。
【0111】
イレギュラーでFDスジノイズが発生した場合の像担持体11の膜厚は、図13に示すように、像担持体11の手前側と奥側でわずかに差がある流。しかし、この場合の膜厚は、寿命に到達した場合ほど減耗していない。また、ある露光量で画像を印字しても像担持体11の手前側と奥側との画像濃度差ΔID3は大きくは変わらない。つまり、画像濃度差ΔID3は、ΔID1ほど大きくはないが、ΔID2よりは大きい(ΔID1>ΔID3>ΔID2)。
【0112】
このため、寿命による減耗が原因の画像ノイズか否かは、画像濃度差ΔID1(またはΔID1からマージンを加えた値)を所定値として判断できる。すなわち、得られた画像濃度差(差分値)が所定値以上の場合、FDスジノイズは、寿命による減耗が原因と判断される。一方、得られた画像濃度差(差分値)が所定値未満の場合、発生したFDスジノイズは、イレギュラーでの発生と判断される。そして、イレギュラーの場合、本実施形態では、像担持体11の寿命基準値を変更しない。
【0113】
このように、本実施形態では、像担持体11を交換する前後の画像濃度差を使用してノイズ発生の原因を判断する。
【0114】
(像担持体の膜厚の推移)
図14は、第1画像形成装置における像担持体11の手前側から奥側までの膜厚の推移を示すグラフである。図14に示すように、像担持体11は、使用初期の段階では、手前側から奥側まで均一の膜厚と成っている。この膜厚は、使用によって、中盤では、徐々に奥側の方の膜厚が薄くなる。さらに使用されると、寿命に至るほど奥側の方の膜厚が先に薄くなる。
【0115】
このような膜厚の推移から、像担持体11の膜削れによる膜厚の差は、像担持体11の手前側と奥側とで最も大きくなる。このため、画像濃度差が最も大きく現れるのは、像担持体11の手前側端部と奥側端部の画像濃度を用いる場合にある。したがって、画像濃度に関する値は、像担持体11の長手方向の一方の端部と他方の端部からを取得することが好ましい。これにより、本実施形態では、画像ノイズの原因を高い精度で判断できる。
【0116】
図15は、第2画像形成装置における像担持体11の手前側から奥側までの膜厚の推移を示すグラフである。第2画像形成装置は、第1画像形成装置よりも、1次転写ローラー16の直径が小さい。1次転写ローラー16を小径とするのは、画像形成装置100の小型化かつ低コスト化を目的としている。
【0117】
第2画像形成装置では、1次転写ローラー16が小径のために、たわみ(ベンディング)易い(詳細後述)。そうすると、1次転写ローラー16は、中間転写ベルト30を挟んで、像担持体11の両端部で強く接触し、中央部で弱く接触(または非接触)する。したがって、像担持体11にかかる加重は、両端部の方が、中央部より高くなる。
【0118】
このため、図15に示すように、像担持体11の両端部の方が、中央部よりも膜削れが促進される。そのため、画像濃度差が最も大きく現れるのは、像担持体11の中央部とどちらか一方の端部の画像濃度を用いる場合になる。したがって、1次転写ローラー16が小径の場合、画像濃度に関する値は、像担持体11の長手方向の中央部とどちらか一方の端部からを取得することが好ましい。これにより、本実施形態では、画像ノイズの原因を高い精度で判断できる。
【0119】
ここで、1次転写ローラー16の直径の違いによるたわみについて説明する。図16は、第1画像形成装置の1次転写ローラー16の状態を説明するための正面図である。図17は、第2画像形成装置の1次転写ローラー16の状態を説明するための正面図である。なお、図16および図17においては、中間転写ベルト30を省略した。
【0120】
すでに説明したように、第2画像形成装置の1次転写ローラー162(図17)の直径は、第1画像形成装置の1次転写ローラー161(図16)より小さい。このため、第2画像形成装置の1次転写ローラー162(図17)は、第1画像形成装置の1次転写ローラー161(図16)よりたわみ易い。なお、1次転写ローラー16がベンディングするか否か、またはどの程度たわむかは、1次転写ローラー16の素材の剛性や直径などによって異なる。このため、たわみ易い1次転写ローラー16の場合、濃度センサーは、中央部と端部に設けることが好ましい。また、たわみにくい1次転写ローラー16の場合、濃度センサーは、両端部に設けることが好ましい。さらに、たわみの状態が不明な場合、濃度センサーは、中央部と両端部の、合計3カ所(またはそれ以上)に設けてもよい。
【0121】
(画像濃度と像担持体の膜削れの具体例)
画像濃度と像担持体11の膜削れの具体例について説明する。
【0122】
図18は、像担持体膜厚に対する中間転写ベルト30上のトナー付着量を示すグラフである。図19は、像担持体11の膜厚の推移を示すグラフである。
【0123】
中間転写ベルト30上のトナー付着量は、画像濃度と比例する。図18に示したトナー付着量は、図4に示した光学式の濃度センサーによって中間転写ベルト30上の画像濃度を測定した値から換算した。
【0124】
画像濃度の測定は、黒のベタ画像を以下の条件で形成して行った。露光量が2.2mJ/m、像担持体11の電位Vdcが350V、線速が290mm/s、環境が温度23℃、湿度65%である。
【0125】
図18に示すように、イレギュラーでFDスジノイズが発生した場合のトナー付着量は、約3.7~3.6g/mの間である。この時の像担持体11の膜厚は、約26から28μmである。一方、減耗寿命でFDスジノイズが発生した場合のトナー付着量は、約4.7~3.7g/mの間である。この時の像担持体11の膜厚は、約15から26μmである。
【0126】
したがって、イレギュラーでFDスジノイズが発生した場合のトナー付着量差とそれに対応する像担持体11の膜厚差は、寿命による減耗でFDスジノイズが発生した場合のトナー付着量差とそれに対応する膜厚差より小さい。
【0127】
このような関係は、図19に示した像担持体11の膜厚の推移において、像担持体11の長手方向の両端部の膜厚差の関係とよく一致している。すなわち、中間転写ベルト30上のトナー付着量差が少ない場合は像担持体11の長手方向の両端部の膜厚差も少ない。したがって、このような場合、FDスジノイズはイレギュラーによるものと判断できる。中間転写ベルト30上のトナー付着量差が多い場合は像担持体11の長手方向の両端部の膜厚差も多い。したがって、このような場合、FDスジノイズは寿命による減耗と判断できる。
【0128】
像担持体11を交換した場合、像担持体11の両端部の膜厚差は、なくなる。このため、両端部のトナー付着量差もほとんどなくなる。一方、すでに説明したように、使用により寿命に達した像担持体11は、両端部のトナー付着量差が大きくなる。したがって、像担持体11の交換前後で、両端部のトナー付着差の差分を算出することで、発生したFDスジノイズが、減耗が原因かイレギュラーな原因かを判断できる。
【0129】
このような中間転写ベルト30上の画像濃度の読み取りと同様の方法で、像担持体11上の潜像を現像した画像の濃度を濃度センサー(光学式センサー)で読み取ることで、像担持体11の寿命を判断できる。
【0130】
また、すでに説明したように、画像濃度の測定に変えて、画像形成時の電位Vdcの違いを使用することもできる。図20は、露光量一定である画像濃度の画像を形成した場合の電位Vdcの変化の差分を示すグラフである。
【0131】
図20に示すように、イレギュラーでFDスジノイズが発生した場合の電位Vdcは、約360~340Vの間である。この時の像担持体11の膜厚は、約26から28μmである。一方、減耗寿命でFDスジノイズが発生した場合の電位Vdcは、約450~360Vの間である。この時の像担持体11の膜厚は、約15から26μmである。
【0132】
このように、電位Vdcにおいても、その差は、イレギュラーの像担持体11端部の膜厚差のVdc差が減耗寿命の時の像担持体11端部の膜厚差のVdc差より小さくなっている。これは、画像濃度と膜厚差の関係と同様である。
【0133】
(寿命基準値の他の変更方法)
像担持体11の寿命基準値は、像担持体11の使用情報を用いて適宜変更することも可能である。
【0134】
図21は、画像形成装置100の使用環境とその時の像担持体11の平均膜厚推移を示すグラフである。
【0135】
画像形成装置100の使用環境が低温低湿であると、像担持体11を削り取る像担持体クリーニングブレードの硬度が硬くなる。
【0136】
像担持体11の膜厚は、図21に示すように、回転数が多くなると、画像形成装置100の使用環境が、低温低湿の場合(温度10℃、湿度15%)の方が高温高湿の場合(温度30℃、湿度85%)より、薄くなる。したがって、膜厚の減耗は、高温高湿の場合の方が低温低湿の場合よりも、促進される。
【0137】
このため、像担持体11の寿命基準値は、画像形成装置100の使用環境、特に、温度湿度から変更することが好ましい。たとえば、交換前は高温高湿で使用され、交換後は低温低湿で使用される場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも短くすることが好ましい。これとは逆に、交換前は低温低湿で使用され、交換後は高温高湿で使用される場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも長くすることが好ましい。さらに、交換前は高温高湿で使用され、交換後も同じ環境で使用される場合、交換後の製品に仕様として決められている寿命基準値よりも長くしてもよい。交換前低温低湿で、交換後も同じ場合は、交換後の寿命基準値は、仕様よりも短くしてもよい。
【0138】
図22は、画像形成装置100のトナー濃度とその時の像担持体11の平均膜厚推移を示すグラフである。
【0139】
クリーニングブレードと像担持体11の接触部分には、静止層が形成される。静止層は、トナーと外添剤で構成される現像剤が供給されることで形成される。静止層に供給されるトナーは、トナー濃度が高い方が多くなる。静止層では、現像剤が循環する。そして、クリーニングブレードは、静止層によって像担持体11の表面にあるトナーを削り取る。このため、トナー濃度が高い方が像担持体11の減耗が促進される。
【0140】
像担持体11の膜厚は、図22に示すように、回転数が多くなると、トナー濃度が濃い場合(トナー濃度7.5%)の方が、トナー濃度が薄い場合(トナー濃度5.5%)より、薄くなる。したがって、膜厚の減耗は、トナー濃度がより濃い場合の方が薄い場合よりも、促進される。なお、トナー濃度とは、トナーと外添剤で構成される現像剤全量に対するトナー成分の割合である。
【0141】
このため、像担持体11の寿命基準値は、トナー濃度の設定に応じて変更することが好ましい。たとえば、交換前は薄いトナー濃度で使用され、交換後は濃いトナー濃度で使用される場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも短くすることが好ましい。これとは逆に、交換前は濃いトナー濃度で使用され、交換後は薄いトナー濃度で使用される場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも長くすることが好ましい。さらに、交換前は薄いトナー濃度で使用され、交換後も同じトナー濃度で使用される場合、交換後の製品に仕様として決められている寿命基準値よりも長くしてもよい。交換前濃いトナー濃度で使用され、交換後も同じ場合、交換後の寿命基準値は、仕様よりも短くしてもよい。
【0142】
図23は、画像形成装置100の印字カバレッジとその時の像担持体11の平均膜厚推移を示すグラフである。像担持体11の表面の残トナーは、印字カバレッジが高い方が多くなる。このため、静止層にトナーが多く供給される。
【0143】
像担持体11の膜厚は、図23に示すように、回転数が多くなると、印字カバレッジが多い場合(カバレッジ15%)の方が、少ない場合(カバレッジ1%)より、薄くなる。したがって、膜厚の減耗は、印字カバレッジが多い場合の方が少ない場合よりも、促進される。
【0144】
このため、像担持体11の寿命基準値は、印字カバレッジに応じて変更することが好ましい。たとえば、交換前は印字カバレッジが少なく、交換後は印字カバレッジが多くなる場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも短くすることが好ましい。これとは逆に、交換前は印字カバレッジが多く、交換後は印字カバレッジが少なくなる場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも長くすることが好ましい。さらに、交換前は印字カバレッジが少なく、交換後も同じ印字カバレッジで使用される場合、交換後の寿命基準値は、交換後の製品に仕様として決められている寿命基準値よりも長くしてもよい。交換前印字カバレッジが多く、交換後も同じ場合、交換後の寿命基準値は、仕様よりも短くしてもよい。
【0145】
図24は、画像形成装置100のモノクロモードとカラーモードの比率とその時の像担持体11の平均膜厚推移を示すグラフである。
【0146】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、たとえば、中間転写ベルト30の走行方向上流から、この順に並んでいる。カラーモードとの比率が高い場合、最下流色のKには、上流色のYMCからトナーが逆転写されてしまう。このため、最下流色のKの像担持体11には、多くのトナーが供給される。そうするとKの像担持体11の静止層には、トナーが多く供給される。
【0147】
像担持体11の膜厚は、図24に示すように、カラーモードの比率が多い場合(カラーモード比率50%)の方が、カラーモードの比率が少ない場合(カラーモード比率5%)より、薄くなる。したがって、膜厚の減耗は、カラーモードの比率が多い場合の方が少ない場合よりも、促進される。なお、カラーモードの比率(%)とは、カラーモードの印字枚数/(カラーモードの印字枚数+モノクロモードの印字枚数)×100である。
【0148】
このため、像担持体11の寿命基準値は、カラーモードの比率に応じて変更することが好ましい。たとえば、交換前はカラーモードの比率が低く、交換後はカラーモードの比率が高くなる場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも短くすることが好ましい。これとは逆に、交換前はカラーモードの比率が高く、交換後はカラーモードの比率が低くなる場合、交換後の寿命基準値は、交換前に記憶されていた寿命基準値よりも長くすることが好ましい。さらに、交換前はカラーモードの比率が低く、交換後も同じカラーモードの比率で使用される場合、交換後の寿命基準値は、交換後の製品に仕様として決められている寿命基準値よりも長くしてもよい。交換前カラーモードの比率が高く、交換後も同じ場合、交換後の寿命基準値は、仕様よりも短くしてもよい。
【0149】
これらのように、本実施形態は、様々な像担持体11の使用環境に応じて、寿命基準値を変更することで、より高精度な寿命設定が可能である。
【0150】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0151】
また、上述した実施形態に係る画像形成装置100における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウエア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部113に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、画像形成装置100の一機能としてその装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0152】
10 画像形成部、
11 像担持体、
14 現像部、
16 1次転写ローラー、
20 搬送部、
30 中間転写ベルト、
31 転写ローラー、
33 転写ニップ、
40 定着部、
60 取得部、
61 第1濃度センサー、
62 第2濃度センサー、
63 第3濃度センサー、
100 画像形成装置、
110 制御部、
111 算出部、
112 変更部、
113 記憶部、
120 画像形成制御部、
601 発光部、
602 受光部。
図1
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図3A
図3B
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