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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20250909BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
F02D41/04
F01N3/28 301F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023004513
(22)【出願日】2023-01-16
(65)【公開番号】P2024100483
(43)【公開日】2024-07-26
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄士
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-127559(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0194450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00、 3/02、 3/04- 3/38、
9/00-11/00
F02D 41/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体と、
前記エンジン本体に接続された排気通路と、
前記排気通路に配置され酸素吸蔵能力を有した第1触媒と、
前記排気通路の前記第1触媒よりも下流に配置された第2触媒と、
前記排気通路の前記第1触媒と前記第2触媒との間に配置されたフィルタと、
前記排気通路の前記第1触媒と前記フィルタとの間に配置され、排気ガスの空燃比を検出するセンサと、
前記エンジン本体の燃料噴射量と吸入空気量とを制御することにより、前記エンジン本体の空燃比を目標空燃比に制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記センサにより検出された検出空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン判定空燃比以上となった場合に、前記目標空燃比を理論空燃比よりも大きい目標リーン空燃比から理論空燃比よりも小さい目標リッチ空燃比に切り替え、前記検出空燃比が理論空燃比よりも小さいリッチ判定空燃比となった場合に、前記目標空燃比を前記目標リッチ空燃比から前記目標リーン空燃比に切り替える空燃比制御部と、
前記フィルタの温度と、前記フィルタでの排気微粒子の堆積量とを取得する取得部と、
前記温度及び堆積量に応じて前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより、前記フィルタ及び第2触媒への酸素供給量を制御する酸素供給量制御部と、を備えたエンジンシステム。
【請求項2】
前記温度が第1温度閾値よりも高く前記堆積量が第1堆積量閾値よりも大きい第1状態では、前記温度が基準温度閾値以下であり前記堆積量が基準堆積量閾値以下である基準状態よりも、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより酸素供給量を減少させ、
前記第1温度閾値は、前記基準温度閾値よりも高く、
前記第1堆積量閾値は、前記基準堆積量閾値よりも大きい、請求項1のエンジンシステム。
【請求項3】
前記温度が第2温度閾値よりも高く前記第1温度閾値以下であり且つ前記堆積量が第2堆積量閾値よりも大きく前記第1堆積量閾値以下である第2状態では、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより前記第1状態よりも前記酸素供給量を増大させ且つ前記基準状態よりも前記酸素供給量を減少させ、
前記第2温度閾値は、前記第1温度閾値よりも低く且つ前記基準温度閾値よりも高く、
前記第2堆積量閾値は、前記第1堆積量閾値よりも小さく且つ前記基準堆積量閾値よりも大きい、請求項2のエンジンシステム。
【請求項4】
前記温度が前記基準温度閾値よりも高く前記第2温度閾値以下であり且つ前記堆積量が前記基準堆積量閾値よりも大きく前記第2堆積量閾値以下である第3状態では、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより前記基準状態よりも前記酸素供給量を増大させる、請求項3のエンジンシステム。
【請求項5】
前記取得部は、前記エンジン本体の吸入空気量を取得し、
前記第3状態において前記エンジンの吸入空気量が空気量閾値よりも大きい場合には、前記第3状態において前記吸入空気量が前記空気量閾値以下の場合よりも、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより前記酸素供給量を減少させる、請求項4のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン本体に接続された排気通路の上流と下流とのそれぞれに配置された第1触媒と第2触媒との間に、フィルタが設けられる場合がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-127559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタや第2触媒への理想的な酸素供給量は、フィルタの状態に応じて異なる。例えばフィルタの状態によらずに酸素供給量が一定であると、フィルタが過昇温したり、又は第2触媒の浄化能力が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、フィルタの状態に応じてフィルタ及び第2触媒への酸素供給量を制御できるエンジンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、エンジン本体と、前記エンジン本体に接続された排気通路と、前記排気通路に配置され酸素吸蔵能力を有した第1触媒と、前記排気通路の前記第1触媒よりも下流に配置された第2触媒と、前記排気通路の前記第1触媒と前記第2触媒との間に配置されたフィルタと、前記排気通路の前記第1触媒と前記フィルタとの間に配置され、排気ガスの空燃比を検出するセンサと、前記エンジン本体の燃料噴射量と吸入空気量とを制御することにより、前記エンジン本体の空燃比を目標空燃比に制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記センサにより検出された検出空燃比が理論空燃比よりも大きいリーン判定空燃比以上となった場合に、前記目標空燃比を理論空燃比よりも大きい目標リーン空燃比から理論空燃比よりも小さい目標リッチ空燃比に切り替える空燃比制御部と、前記フィルタの温度と、前記フィルタでの排気微粒子の堆積量とを取得する取得部と、前記温度及び堆積量に応じて前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより、前記フィルタ及び第2触媒への酸素供給量を制御する酸素供給量制御部と、を備えたエンジンシステムによって達成できる。
【0007】
前記温度が第1温度閾値よりも高く前記堆積量が第1堆積量閾値よりも大きい第1状態では、前記温度が基準温度閾値以下であり前記堆積量が基準堆積量閾値以下である基準状態よりも、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより酸素供給量を減少させ、前記第1温度閾値は、前記基準温度閾値よりも高く、前記第1堆積量閾値は、前記基準堆積量閾値よりも大きくてもよい。
【0008】
前記温度が第2温度閾値よりも高く前記第1温度閾値以下であり且つ前記堆積量が第2堆積量閾値よりも大きく前記第1堆積量閾値以下である第2状態では、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより前記第1状態よりも前記酸素供給量を増大させ且つ前記基準状態よりも前記酸素供給量を減少させ、前記第2温度閾値は、前記第1温度閾値よりも低く且つ前記基準温度閾値よりも高く、前記第2堆積量閾値は、前記第1堆積量閾値よりも小さく且つ前記基準堆積量閾値よりも大きくてもよい。
【0009】
前記温度が前記基準温度閾値よりも高く前記第2温度閾値以下であり且つ前記堆積量が前記基準堆積量閾値よりも大きく前記第2堆積量閾値以下である第3状態では、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより前記基準状態よりも前記酸素供給量を増大させてもよい。
【0010】
前記取得部は、前記エンジン本体の吸入空気量を取得し、前記第3状態において前記エンジンの吸入空気量が空気量閾値よりも大きい場合には、前記第3状態において前記吸入空気量が前記空気量閾値以下の場合よりも、前記酸素供給量制御部は前記リーン判定空燃比及び目標リーン空燃比の少なくとも一方を設定することにより前記酸素供給量を減少させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
フィルタの状態に応じてフィルタ及び第2触媒への酸素供給量を制御できるエンジンシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エンジンシステムの概略構成図である。
図2】検出空燃比AFbの推移を例示したタイミングチャートである。
図3】フィルタに堆積した排気微粒子の堆積量Pとフィルタの温度Tとに応じて設定されるリーン判定空燃比LDを規定したマップの例示図である。
図4】空燃比制御を例示したフローチャートである。
図5】目標空燃比TAFの推移を例示したタイミングチャートである。
図6】フィルタに堆積した排気微粒子の堆積量Pとフィルタの温度Tとに応じて設定されるリーン目標空燃比TLを規定したマップの例示図である。
図7】変形例の空燃比制御を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[エンジンシステムの概略構成]
図1は、エンジンシステム1の概略構成図である。エンジンシステム1は、例えば車両に搭載されているが、これに限定されず、車両以外の船舶に搭載されていてもよい。エンジンシステム1は、エンジン本体10、吸気通路20、及び排気通路30を含む。エンジン本体10は、ガソリンエンジンであるが、ディーゼルエンジンであってもよいし水素エンジンであってもよい。各気筒内には、燃焼室11、ピストン12、点火プラグ16が設けられている。エンジン本体10の内部には、コンロッド13、及びクランクシャフト14が配置されている。ピストン12は、コンロッド13によりクランクシャフト14に連結されている。エンジン本体10には、回転数センサ15が設けられている。また、エンジン本体10では、気筒毎に筒内噴射弁17が設けられている。回転数センサ15は、クランクシャフト14の回転数を検出することにより、エンジン本体10の回転数を検出する。筒内噴射弁17は、燃焼室11内に燃料を直接噴射する。点火プラグ16は、燃焼室11内での混合気に点火する。エンジン本体10の吸気ポートには、吸気通路20が接続されている。エンジン本体10の排気ポートには、排気通路30が接続されている。吸気バルブ18aは、エンジン本体10の吸気ポートを開閉する。排気バルブ18bは、エンジン本体10の排気ポートを開閉する。
【0014】
吸気通路20には、上流側から下流側に順に、エアクリーナ21、エアフローメータ22、スロットルバルブ23が設けられている。エアクリーナ21は、外部から流入する空気から粉塵を除去する。エアフローメータ22は、吸入空気量Gaを取得する。スロットルバルブ23は、吸入空気量Gaを調節する。
【0015】
吸気バルブ18aが開くと、空気は吸気通路20から燃焼室11へと導入される。筒内噴射弁17から噴射された燃料と空気との混合気は、ピストン12で圧縮され、点火プラグ16により点火される。混合気への点火によりピストン12は燃焼室11内を上下に往復運動して、クランクシャフト14が回転する。燃焼後の排気ガスは、排気通路30から排出される。
【0016】
排気通路30には上流側から下流側に順に、第1センサ31a、第1触媒32a、第2センサ31b、フィルタ33、及び第2触媒32bが設けられている。第1センサ31a及び第2センサ31bは、排気通路30を流れる排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサである。第1センサ31a及び第2センサ31bのうちの少なくとも一つは、排気ガスの酸素濃度を検出することにより排気ガスの空燃比を検出することができる酸素濃度センサであってもよい。第1センサ31aは、エンジン本体10から排出され第1触媒32aに流入する排気ガスの空燃比を検出する。第2センサ31bは、第1触媒32aから排出されフィルタ33や第2触媒32bに流入する排気ガスの空燃比を検出する。フィルタ33は、多孔質セラミックス構造体であり、排気ガス中の排気微粒子を捕集する。
【0017】
第1触媒32a及び第2触媒32bは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)の触媒金属を含み、酸素吸蔵能力を有する三元触媒である。三元触媒は、触媒作用及び酸素吸蔵能力を有することにより、酸素吸蔵量に応じてNOx及びHCの浄化作用を有する。尚、第2触媒32bは、酸素吸蔵能力を有していなくてもよい。
【0018】
エンジンシステム1は、ECU(Electric Control Unit)100を含む。ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び記憶装置を備えている。ECU100は、ROMや記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより各種制御を行う。ECU100は、運転者により操作されるアクセルペダルやブレーキペダルの操作量やエンジン本体10の回転数や負荷に基づいて、点火プラグ16、筒内噴射弁17、及びスロットルバルブ23を制御する。ECU100には、回転数センサ15、エアフローメータ22、第1センサ31a、及び第2センサ31bの検出値が入力される。またECU100は、上述したCPU、RAM、ROM、及び記憶装置により、後述する空燃比制御部、取得部、及び酸素供給量制御部を機能的に実現する。
【0019】
[空燃比制御]
ECU100は、エンジン本体10での燃料噴射量及び吸入空気量を制御することにより、第1センサ31aの検出空燃比AFaが目標空燃比TAFとなるように、エンジン本体10から排出される排気ガスの空燃比を制御する。具体的にはECU100は、検出空燃比AFaが目標空燃比TAFに収束するように、検出空燃比AFaに基づいて筒内噴射弁17からの燃料噴射量やスロットルバルブ23の開度をフィードバック制御する。これにより、エンジン本体10から排出される排気ガスの空燃比を目標空燃比TAFに制御される。詳細には以下のようにして空燃比が制御される。
【0020】
ECU100は、第2センサ31bの検出空燃比AFbがリーン判定空燃比LDとなった場合に、目標空燃比TAFをリッチ目標空燃比TRに設定する。ECU100は、検出空燃比AFbがリッチ判定空燃比RDとなった場合に、目標空燃比TAFを理論空燃比STよりも大きいリーン目標空燃比TLに設定する。ここで、リーン判定空燃比LDは、理論空燃比STよりも大きい。リッチ判定空燃比RDは、理論空燃比STよりも小さい。リーン目標空燃比TLは、理論空燃比STよりも大きい。リッチ目標空燃比TRは、理論空燃比STよりも小さい。従って検出空燃比AFbは、リーン判定空燃比LDとリッチ判定空燃比RDの間で周期的に変動する。上記の制御は空燃比制御部が実行する処理の一例である。
【0021】
図2は、検出空燃比AFbの推移を例示したタイミングチャートである。本実施例では、リーン判定空燃比LDは空燃比LD0~LD4のうちの何れかに設定される。空燃比LD0~LD4のうち空燃比LD1が最小である。空燃比LD2は空燃比LD1よりも大きい。空燃比LD0は空燃比LD2よりも大きい。空燃比LD3はLD0よりも大きい。空燃比LD4は空燃比LD3よりも大きい。最初に、リーン判定空燃比LDが空燃比LD0に設定された場合での検出空燃比AFbの推移について説明する。検出空燃比AFbが空燃比LD0にまで上昇すると、目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLからリッチ目標空燃比TRに切り替えられる(時刻t1)。これにより、第1触媒32aに流入する排気ガス中のHCは、第1触媒32aに吸蔵された酸素により酸化浄化される。これにより、検出空燃比AFbはリーン側から理論空燃比STに向かって低下する。第1触媒32aの酸素吸蔵量がゼロに近づくと、第1触媒32aから排出される排気ガスの酸素濃度が低下して検出空燃比AFbはリッチ側に低下する。
【0022】
検出空燃比AFbがリッチ判定空燃比RDにまで低下すると、目標空燃比TAFは所定のリッチ目標空燃比TRから所定のリーン目標空燃比TLに切り替えられる(時刻t2)。これにより、第1触媒32aに流入する排気ガス中の酸素が第1触媒32aに吸蔵されて、排気ガス中のNOxが還元浄化される。これにより、検出空燃比AFbはリッチ側から理論空燃比STに向かって上昇する。第1触媒32aの酸素吸蔵量が多くなると、第1触媒32aから排出される排気ガスの酸素濃度が上昇して検出空燃比AFbはリーン側に上昇する。
【0023】
図2には、リーン判定空燃比LDが空燃比LD1~LD4のそれぞれに設定された場合の検出空燃比AFb1~AFb4を示している。検出空燃比AFb1が空燃比LD1にまで上昇すると、目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLからリッチ目標空燃比TRに切り替えられる。検出空燃比AFb2が空燃比LD2にまで上昇した場合、検出空燃比AFb3が空燃比LD3にまで上昇した場合、及び検出空燃比AFb4が空燃比LD4にまで上昇した場合も同様に、目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLからリッチ目標空燃比TRに切り替えられる。
【0024】
設定されるリーン判定空燃比LDが大きいほど、目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLからリッチ目標空燃比TRに切り替えられる時刻が遅れる。この結果、設定されるリーン判定空燃比LDが大きいほどフィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量は増大する。具体的には、リーン判定空燃比LDが空燃比LD1に設定された場合、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量は最小である。リーン判定空燃比LDが空燃比LD2に設定された場合の酸素供給量は、リーン判定空燃比LDが空燃比LD1に設定された場合の酸素供給量よりも多い。リーン判定空燃比LDが空燃比LD0に設定された場合の酸素供給量は、リーン判定空燃比LDが空燃比LD2に設定された場合の酸素供給量よりも多い。リーン判定空燃比LDが空燃比LD3に設定された場合の酸素供給量は、リーン判定空燃比LDが空燃比LD0に設定された場合の酸素供給量よりも多い。リーン判定空燃比LDが空燃比LD4に設定された場合の酸素供給量は、リーン判定空燃比LDが空燃比LD3に設定された場合の酸素供給量よりも多い。
【0025】
ECU100は、図3のマップを参照してリーン判定空燃比LDを空燃比LD0~LD4の何れかに設定する。図3は、フィルタ33に堆積した排気微粒子の堆積量Pとフィルタ33の温度Tとに応じて設定されるリーン判定空燃比LDを規定したマップの例示図である。図3には堆積量閾値P0~P2、温度閾値T0~T2を示している。堆積量閾値P0~P2のうち堆積量閾値P0が最小である。堆積量閾値P1は堆積量閾値P2よりも多い。堆積量閾値P0は、基準堆積量閾値の一例である。堆積量閾値P1及びP2は、それぞれ第1及び第2堆積量閾値の一例である。温度閾値T0~T2のうち、温度閾値T0が最低温度である。温度閾値T1は温度閾値T2よりも高い。温度閾値T0は、基準温度閾値の一例である。温度閾値T1及びT2は、それぞれ第1及び第2温度閾値の一例である。ECU100は、温度T及び堆積量Pに応じてリーン判定空燃比LDを空燃比LD0~LD4の何れかに設定する。
【0026】
図4は、空燃比制御を例示したフローチャートである。この空燃比制御は、エンジンシステム1の運転中に繰り返し実行される。ECU100は、フィルタ33に堆積した排気微粒子の堆積量P、フィルタ33の温度T、及び吸入空気量Gaを取得する(ステップS1)。堆積量Pは、フィルタ33の前後の圧力差に基づいて推定される。温度Tは、エンジン回転数やエンジン負荷率、点火時期に基づいて推定される。堆積量Pは、エンジンの冷却水の温度や運転履歴に基づいて推定してもよい。温度Tは、フィルタ33に設けられた温度センサによって検出してもよい。その他、公知の方法により温度T及び堆積量Pを推定してもよい。吸入空気量Gaは、エアフローメータ22により検出される。ステップS1は取得部が実行する処理の一例である。
【0027】
ECU100は、温度Tが温度閾値T1よりも高く且つ堆積量Pが堆積量閾値P1よりも大きいか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2でYesの場合にフィルタ33への酸素供給量が多いと、フィルタ33に多く堆積した排気微粒子が燃焼してフィルタ33が過昇温するおそれがある。そのためステップS2でYesの場合、ECU100はリーン判定空燃比LDを空燃比LD1に設定する(ステップS3)。これにより、フィルタ33への酸素供給量を抑制してフィルタ33の過昇温を抑制できる。ステップS2でYesの場合は、第1状態の一例である。
【0028】
ステップS2でNoの場合、ECU100は温度Tが温度閾値T2よりも高く且つ堆積量Pが堆積量閾値P2よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でYesの場合にフィルタ33への酸素供給量が多いと、フィルタ33及び第2触媒32bの双方が高温となって熱劣化するおそれがある。このためステップS4でYesの場合には、ECU100はリーン判定空燃比LDを空燃比LD2に設定する(ステップS5)。これにより、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量を抑制してフィルタ33及び第2触媒32bの熱劣化を抑制できる。ステップS2でNoでありステップ4でYesの場合は、第2状態の一例である。
【0029】
ステップS4でNoの場合、ECU100は温度Tが温度閾値T0よりも大きく且つ堆積量Pが堆積量閾値P0よりも大きいか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6でYesの場合、ECU100は吸入空気量Gaが所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS7)。ステップS6及びS7でYesの場合には、第2触媒32bを通過する排気ガスの流速が大きく第2触媒32bでの浄化反応が低下するおそれがある。このためステップS6及びS7でYesの場合には、ECU100はリーン判定空燃比LDを空燃比LD3に設定する(ステップS8)。これにより、第2触媒32bへの酸素供給量を確保して第2触媒32bの浄化能力の低下を抑制できる。
【0030】
ステップS6でYesでありステップS7でNoの場合には、フィルタ33を通過する排気ガスの流量が遅く、フィルタ33への酸素供給量が不足してフィルタ33に堆積した排気微粒子が燃焼しにくい。このためステップS6でYesでありステップS7でNoの場合には、ECU100はリーン判定空燃比LDを空燃比LD4に設定する(ステップS9)。これにより、フィルタ33への酸素供給量を確保して排気微粒子の燃焼を促進することができる。ステップS6でNoの場合には、ECU100はリーン判定空燃比LDを空燃比LD0に設定する(ステップS10)。ステップS2及びS4でNoでありステップS6でYesの場合は、第3状態の一例である。ステップS2、S4、及びS6でNoの場合は、基準状態の一例である。ステップS3、S5、S8、S9、及びS10は、酸素供給量制御部が実行する処理の一例である。
【0031】
以上のように、フィルタ33の温度T及び堆積量Pに応じてリーン判定空燃比LDを設定することにより、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量を制御することができる。これにより、フィルタ33の状態に応じた種々の問題の発生を抑制できる。
【0032】
[変形例]
次に変形例の空燃比制御について説明する。本変形例では、リーン目標空燃比TLは空燃比TL0~TL4の何れかに設定される。図5は、目標空燃比TAFの推移を例示したタイミングチャートである。空燃比TL0~TL4のうち空燃比TL1が最小である。空燃比TL2は空燃比TL1よりも大きい。空燃比TL0は空燃比TL2よりも大きい。空燃比TL3は空燃比TL0よりも大きい。空燃比TL4は空燃比TL3よりも大きい。最初に、リーン目標空燃比TLが空燃比TL0に設定された場合での目標空燃比TAFの推移について説明する。リーン目標空燃比TLが空燃比TL0に設定され、検出空燃比AFbがリーン判定空燃比LDにまで上昇すると、目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLからリッチ目標空燃比TRに切り替えられる(時刻t1)。その後に検出空燃比AFbがリッチ判定空燃比RDにまで低下すると、目標空燃比TAFは所定のリッチ目標空燃比TRからリーン目標空燃比TLに切り替えられる(時刻t2)。
【0033】
図5には、リーン目標空燃比TLが空燃比TL1~TL4のそれぞれに設定された場合の目標空燃比TAF1~TAF4を示している。設定されるリーン目標空燃比TLが大きいほど、第1触媒32aに供給される排気ガスの酸素濃度は高い。このため、設定されるリーン目標空燃比TLが大きいほど、第1触媒32aの酸素吸蔵量が早期に増大して検出空燃比AFbは早期にリーン判定空燃比LDに到達する。ここで、フィルタ33は、エンジン本体10の排気ポートから離れた位置に設けられている。このため、エンジン本体10の排気ポートから排出された排気ガスは、所定時間経過後にフィルタ33に到達する。従って目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLからリッチ目標空燃比TRに切り替えられて発生したリッチ雰囲気の排気ガスは、エンジン本体10からフィルタ33に到達するまでに時間を要する。このリッチ雰囲気の排気ガスがフィルタ33に到達するまでの間では、目標空燃比TAFがリーン目標空燃比TLに設定されていた際に発生したリーン雰囲気の排気ガスが、フィルタ33に供給される。このリーン雰囲気の排気ガスの酸素濃度が高いほど、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量が増大する。即ち、リーン目標空燃比TLが大きいほど、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量が増大する。
【0034】
従ってリーン目標空燃比TLが空燃比TL1に設定された場合、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量は最小である。リーン目標空燃比TLが空燃比TL2に設定された場合の酸素供給量は、リーン目標空燃比TLが空燃比TL1に設定された場合の酸素供給量よりも多い。リーン目標空燃比TLが空燃比TL0に設定された場合の酸素供給量は、リーン目標空燃比TLが空燃比TL2に設定された場合の酸素供給量よりも多い。リーン目標空燃比TLが空燃比TL3に設定された場合の酸素供給量は、リーン目標空燃比TLが空燃比TL0に設定された場合の酸素供給量よりも多い。リーン目標空燃比TLが空燃比TL4に設定された場合の酸素供給量は、リーン目標空燃比TLが空燃比TL3に設定された場合の酸素供給量よりも多い。
【0035】
ECU100は、図6のマップを参照してリーン目標空燃比TLを空燃比TL0~TL4の何れかに設定する。図6は、フィルタ33に堆積した排気微粒子の堆積量Pとフィルタ33の温度Tとに応じて設定されるリーン目標空燃比TLを規定したマップの例示図である。図6図3に対応している。
【0036】
図7は、変形例の空燃比制御を例示したフローチャートである。図7図4に対応している。図7について、図4と同じステップについては説明を省略する。ステップS2でYesの場合には、ECU100はリーン目標空燃比TLを空燃比TL1に設定する(ステップS3a)。これにより、フィルタ33への酸素供給量を抑制してフィルタ33の過昇温を抑制できる。ステップS4でYesの場合には、ECU100はリーン目標空燃比TLを空燃比TL2に設定する(ステップS5a)。これにより、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量を抑制してフィルタ33及び第2触媒32bの熱劣化を抑制できる。ステップS6及びS7でYesの場合には、ECU100はリーン目標空燃比TLを空燃比TL3に設定する(ステップS8a)。これにより、第2触媒32bへの酸素供給量を確保して第2触媒32bの浄化能力の低下を抑制できる。ステップS6でYesでありステップS7でNoの場合には、ECU100はリーン目標空燃比TLを空燃比TL4に設定する(ステップS9a)。これにより、フィルタ33への酸素供給量を確保して排気微粒子の燃焼を促進することができる。ステップS6でNoの場合には、ECU100はリーン目標空燃比TLを空燃比TL0に設定する(ステップS10a)。
【0037】
以上のようにフィルタ33の温度T及び堆積量Pに応じてリーン目標空燃比TLを設定することにより、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量を制御することができる。これにより、フィルタ33の状態に応じた種々の問題の発生を抑制できる。
【0038】
上述した実施例と本変形例とを組み合わせてもよい。即ち、フィルタ33の温度T及び堆積量Pに応じてリーン判定空燃比LD及びリーン目標空燃比TLの双方を設定することにより、フィルタ33及び第2触媒32bへの酸素供給量を制御してもよい。
【0039】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 エンジンシステム
10 エンジン本体
30 排気通路
31b 第2センサ(センサ)
32a 第1触媒
32b 第2触媒
33 フィルタ
100 ECU(空燃比制御部、取得部、酸素供給量制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7