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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】車載空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/24 20060101AFI20250909BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20250909BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
B60H1/24 661Z
B60H1/22 671
B60H1/24 661C
B60H1/34 671Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023062331
(22)【出願日】2023-04-06
(65)【公開番号】P2024148843
(43)【公開日】2024-10-18
【審査請求日】2024-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 勇波
(72)【発明者】
【氏名】三本 亮
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/068362(WO,A1)
【文献】特開2006-298014(JP,A)
【文献】特開2014-125121(JP,A)
【文献】特開昭61-50823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ送風される送風空気を発生させる送風機と、
前記送風空気を冷却する熱交換器を有する冷却装置と、
前記送風機及び前記冷却装置を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
車載バッテリが車両外部の電源により充電中であり、かつ、前記車室内に乗員が不在であると判定した場合には、前記冷却装置を停止させた状態で前記送風機を動作させて前記車室内へ外気を導入する簡易プレ空調を実行し、
前記簡易プレ空調において、それが実行される前の車両イグニッションスイッチがオフにされた時点の直前まで前記冷却装置が動作していた場合には、そうでない場合に比べて、予め定められた時間の間、前記送風機の出力を大きくする、
車載空調装置において、
前記コントローラは、
前記簡易プレ空調において、前記送風空気の前記車室内への吹出口に関し、前記送風機の出力を大きくする期間では車両前席に向く吹出口を閉じて、車両後席に向く吹出口を開く、
ことを特徴とする車載空調装置。
【請求項2】
請求項に記載の車載空調装置であって、
前記コントローラは、
前記車両の外気温が、車室内温度を乗員快適性が損なわれる温度にまで上昇させる可能性のある予め定められた温度より低い場合、又は、前記車室内に照射される日射量が、車室内温度を上昇させる可能性のある予め定められた日射量より低い場合には、前記簡易プレ空調の実行を回避する、
ことを特徴とする車載空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内へ送風される送風空気を冷却する熱交換器を備える車載空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)等の電動車両が知られている。これらの電動車両では、車両駐車中に外部電源から供給される電力により車載バッテリが充電される。車載バッテリは、走行用モータに電力を供給するだけでなく、車両に搭載された空調装置にも電力を供給する。
【0003】
車両に搭載された空調装置は、調温された送風空気を車内に吹き出すことで車内を空調する。空調装置は、送風空気を冷却する冷却装置を備えており、冷却装置は、冷媒の循環路により構成される冷凍サイクルを備える。冷凍サイクルは、コンプレッサ及びエバポレータを含む。コンプレッサは、車載バッテリにより駆動され、冷媒を圧縮して冷媒を循環路に循環させる。熱交換器としてのエバポレータは、圧縮されて液化している冷媒を気化することにより、このエバポレータを通過する送風空気を冷却する。この時、エバポレータでは、通過する空気を冷却することにより、空気中の水分を結露させるようになっており、これにより、エバポレータの下流側の空気が除湿される。
【0004】
また、人が車両に乗車する前に、空調装置を稼働させておくことで、車室内の快適性を向上させるプレ空調の技術が知られている。特許文献1には、電動車両に関し、外部電源を利用して車載バッテリを充電することに加えて、外部電源を利用して空調装置を稼働させてプレ空調を行う制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-104143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外部電源により車載バッテリを充電するとともに、空調装置を稼働させる形態では、外部電源から供給可能な電力に制限があるため、例えば車内温度が高いことで空調装置の消費電力が高い場合には、車載バッテリに供給される電力が減少し、バッテリ充電が所望の時間で完了しない可能性がある。
【0007】
そこで、外部電源によるバッテリ充電中における空調装置の消費電力を低下させるために、空調装置の冷却装置を停止させた状態で送風機を動作させて車室内へ外気を導入する簡易プレ空調を行うことが考えられる。しかし、この場合、車両走行時に冷却装置を動作させたことで、エバポレータ表面に結露により凝縮水が付着している際には、送風空気により凝縮水が蒸発することになる。エバポレータ表面の凝縮水が蒸発するとき、凝縮水に溶け込んだカビや微粒子等が蒸気に混ざって車室内に吹き出されることになるので、車室内に異臭、悪臭が発生することになる。凝縮水が蒸発するタイミング、或いは、その直後のタイミングで、人が車両に乗車した際には、その臭いにより人が不快を感じてしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、空調装置の冷却装置を停止させた状態で送風機を動作させる簡易プレ空調を行う形態において、熱交換器としてのエバポレータ表面の凝縮水が蒸発して発生する臭いによって乗員が不快に感じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車載空調装置は、車室内へ送風される送風空気を発生させる送風機と、前記送風空気を冷却する熱交換器を有する冷却装置と、前記送風機及び前記冷却装置を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、車載バッテリが車両外部の電源により充電中であり、かつ、前記車室内に乗員が不在であると判定した場合には、前記冷却装置を停止させた状態で前記送風機を動作させて前記車室内へ外気を導入する簡易プレ空調を実行し、前記簡易プレ空調において、それが実行される前の車両イグニッションスイッチがオフにされた時点の直前まで前記冷却装置が動作していた場合には、そうでない場合に比べて、予め定められた時間の間、前記送風機の出力を大きくする、ことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、簡易プレ空調により、少ない消費電力で、日射等による車室内の温度上昇を抑制することができ、バッテリ充電終了後に、乗員が車両に乗車した際に、乗員の車内高温による不快感を低減することができる。バッテリ充電時の空調装置の消費電力が少ないため、バッテリの充電時間が長くなることを抑制することができる。乗員が車両に乗車した後、空調装置(冷却装置)の稼働量が低減されるので、乗員乗車中の空調装置の消費電力が抑制され、車載バッテリによる車両走行距離を長くすることができる。
【0011】
また、上記構成によれば、車両イグニッションスイッチがオフにされた時点の直前まで冷却装置が動作していたことで、熱交換器表面に凝縮水が付着している可能性が高い場合には、予め定められた時間の間、送風機の出力を大きくする。これにより、凝縮水が熱交換器から流下されて、ドレン水排出口から車外に排出されることを促進することができる。そのため、熱交換器表面の凝縮水の量が低減され、車室内に放出される凝縮水の臭気成分の濃度を薄くすることができる。また、送風機の出力を大きくするため、乗員が車両に乗り込む前に、熱交換器表面の凝縮水が蒸発する可能性を高めることができる。よって、乗員が車両に乗り込んだ際に、乗員が凝縮水の臭いにより不快に感じることを抑制することができる。
【0012】
本発明に係る車載空調装置において、前記コントローラは、前記簡易プレ空調において、前記送風空気の前記車室内への吹出口に関し、前記送風機の出力を大きくする期間では車両前席に向く吹出口を閉じて、車両後席に向く吹出口を開く、としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、一般的に、乗員が車両後席よりも、運転席がある車両前席に乗車する確率が高いことから、送風機の出力を大きくする期間で、車両前席の吹出口を閉じて、車両後席の吹出口を開くことにより、その期間に乗員が車両に乗り込んだ際に、乗員が凝縮水の臭いを感じることを抑制することができる。
【0014】
本発明に係る車載空調装置において、前記コントローラは、前記車両の外気温が、車室内温度を乗員快適性が損なわれる温度にまで上昇させる可能性のある予め定められた温度より低い場合、又は、前記車室内に照射される日射量が、車室内温度を上昇させる可能性のある予め定められた日射量より低い場合には、前記簡易プレ空調の実行を回避する、としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、送風機の作動頻度を減らすことができ、送風機の劣化や故障を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱交換器表面の凝縮水が蒸発して発生する臭いによって乗員が不快に感じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車載空調装置の構成を示す図である。
図2】空調ユニットの構成を示す図である。
図3】空調装置による簡易プレ空調の処理を示すフローチャートである。
図4】ブロワレベルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、車載空調装置10の構成を示すブロック図である。この空調装置10は、車両に搭載され、車内を空調する。この空調装置10は、バッテリを電力源として駆動する走行用モータを有する電動車両、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド車両等に搭載される。なお、本明細書において、単にバッテリと言う場合、それは車載バッテリを意味する。
【0020】
電気自動車は、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る。電気自動車では、車両駐車中に外部電源から供給される電力によりバッテリが充電される。電気自動車は、車両走行時にバッテリの電力を電動モータに供給することにより走行する。
【0021】
プラグインハイブリッド車両は、エンジンおよび走行用電動モータの双方から車両走行用の駆動力を得る。プラグインハイブリッド車両では、車両駐車時に外部電源から供給される電力によりバッテリが充電される。この車両は、バッテリの蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっている時には、主に走行用電動モータの駆動力によって走行するEV走行モードとなる。一方、バッテリの蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっている時には、主にエンジンの駆動力によって走行するHV走行モードとなる。EV走行モードが利用されることで、エンジンによる燃料消費を抑制することができる。
【0022】
電動車両では、バッテリが走行用電動モータに電力を供給するとともに、空調装置10の各種電動機器に電力を供給する。
【0023】
本実施形態の空調装置10は、車両走行時に車室内の空調を行う通常空調の他に、乗員が車両に乗り込む前に車室内の空調を行う簡易プレ空調を実行する。空調装置10は、外部電源によるバッテリの充電中に、バッテリに蓄えられた電力だけでなく外部電源から供給される電力によって簡易プレ空調を実行できるように構成される。
【0024】
空調装置10は、図1に示すように、空調ユニット16と操作パネル14を有する。空調ユニット16は、調温された空調風を車内に送ることで車内を空調するユニットである。空調ユニット16の詳細については後述する。
【0025】
操作パネル14は、乗員から空調装置10の運転指示を受け付ける。操作パネル14には、乗員の指示を受け付けるための複数のスイッチと、情報を乗員に提示するための表示装置とが設けられている。なお、ここでいう「スイッチ」とは、機械的なスイッチでもよいし、タッチパネルに表示される仮想的なスイッチでもよい。乗員は、この操作パネル14を操作することで、空調装置10のオン/オフの切り替えや、空調装置10のモードの切り替え等を行う。
【0026】
空調装置10は、複数の温度センサ20,22を有する。外気温センサ20は、車外の温度(外気温)を検知する。内気温センサ22は、車内の温度(内気温)を検知する。温度センサ20,22の検知結果は、空調コントローラ12に入力される。空調装置10は、さらに、日射センサ26を有する。日射センサ26は、車室内へ照射される日射量を検知する。日射センサ26の検知結果は、空調コントローラ12に入力される。
【0027】
空調装置10は、空調コントローラ12を有する。空調コントローラ12は、空調ユニット16に含まれる各種機器を制御する。空調コントローラ12は、物理的には、プロセッサ12aとメモリ12bを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ12aは、単一でもよいし、機械的に離れた位置に存在する複数の要素で構成されてもよい。同様に、メモリ12bも、単一の要素でもよいし、機械的に離れた位置に存在する複数の要素で構成されてもよい。メモリ12bは、例えば、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。また、空調コントローラ12は、空調装置10のために専用に設けられたコンピュータでもよいし、他の装置で用いられるコントローラを、空調コントローラ12として流用してもよい。以下、空調コントローラ12を、単にコントローラ12とも言う。
【0028】
車両は、イグニッションスイッチ27、乗員不在判定装置28、および充電装置29を有する。イグニッションスイッチ27のオン/オフを示す信号は、コントローラ12に入力される。
【0029】
乗員不在判定装置28は、車室内に乗員が不在であるか否かを判定するものである。例えば、判定装置28は、着座センサにより、乗員が座席に座っていないことが検知されている時に、車室内に乗員が不在であると判定する。判定装置28の判定結果は、コントローラ12に入力される。なお、判定装置28は、以下に示す条件1~5の少なくとも1つが満たされた場合に、車室内に乗員が不在であると判定してもよい。
(条件1)乗員が座席に座っていない。
(条件2)シートベルトが着用されていない。
(条件3)車室内の各種スイッチが予め定められた時間、操作されていない。
(条件4)運転席側のドアが開いたことを検出済み。
(条件5)充電ケーブルが、車両の充電インレットに接続されている。
【0030】
充電装置29は、車載バッテリを充電するための装置である。充電装置29は、充電インレットを備える。車両外部の充電施設(外部電源の施設)は、充電ケーブルを備える。充電ケーブルの先端には充電コネクタが設けられている。充電ケーブルの充電コネクタが、車両の充電装置29の充電インレットに接続されることで、バッテリの充電が行われる。充電装置29は、充電ケーブル(充電コネクタ)の充電インレットに対する接続有無を示す信号を、コントローラ12に出力する。
【0031】
次に、空調ユニット16の構成について、図2を参照して詳説する。空調ユニット16は、冷却装置30と、加熱装置50と、吹出機構60と、に大別される。
【0032】
冷却装置30は、冷凍サイクルを備える。冷凍サイクルは、空調冷媒が流れる流路32を有している。この冷却装置30は、車内を冷房、或いは、除湿する際に利用される。具体的に説明すると、流路32には、コンプレッサ34と、コンデンサ38と、膨張弁36と、エバポレータ42と、アキュムレータ46と、が設けられている。空調冷媒は、コンプレッサ34で加圧されることにより、高温高圧のガスとなる。コンデンサ38は、空調冷媒を外気と熱交換させる熱交換器である。この熱交換の効率を高めるために、コンデンサ38の背後には、コンデンサファン40が設けられている。空調冷媒のガスは、コンデンサ38を通過することで冷却され、気液混合状態となる。膨張弁36は、気液混合状態の空調冷媒を減圧する。減圧された空調冷媒は、エバポレータ42において気化する。この気化における潜熱により、エバポレータ42周辺の空気が冷却される。エバポレータ42を通過した後の空調冷媒は、アキュムレータ46により気液分離され、気相の空調冷媒のみがコンプレッサ34に再供給される。
【0033】
なお、冷却装置30のコンプレッサ34(冷媒圧縮機)が動作している時、冷却装置30が動作していると言うことができる。また、コンプレッサ34が停止している時、冷却装置30が停止していると言うことができる。
【0034】
加熱装置50は、主に暖房時に利用される装置であり、暖房用冷媒、例えば、水が流れる流路52を有する。流路52には、ウォータポンプ56と、水加熱ヒータ54と、ヒータコア59と、リザーブタンク58と、が設けられている。ウォータポンプ56は、暖房用冷媒を圧送する。水加熱ヒータ54は、電力供給を受けて暖房用冷媒を加熱するもので、電気式のヒータを有している。電気式のヒータとしては、例えば、PTC素子(すなわち、正特性サーミスタ)を有したPTCヒータを用いることができる。加熱された暖房用冷媒は、ヒータコア59を流れる過程で、周辺空気と熱交換する。この熱交換により、ヒータコア59の周辺空気が加熱される。リザーブタンク58は、余剰の暖房用冷媒を貯留する。
【0035】
なお、加熱装置50のウォータポンプ56と水加熱ヒータ54の少なくとも一方が動作している時、加熱装置50が動作していると言うことができる。また、ウォータポンプ56と水加熱ヒータ54の両方が停止している時、加熱装置50が停止していると言うことができる。
【0036】
吹出機構60は、調温された風を、車内に吹き出させる機構である。吹出機構60は、ハウジング61を有している。ハウジング61の上流端には、内気吸入口71と外気吸入口72が設けられている。内気吸入口71は、車室内の空気をハウジング61内へ取り込む空気入口である。外気吸入口72は、車両外部の空気をハウジング61内へ取り込む空気入口である。内気吸入口71と外気吸入口72に隣接して、内外気切替ドア73が設けられている。内外気切替ドア73は、アクチュエータによって駆動され、内気吸入口71と外気吸入口72との開度を変更する。
【0037】
内外気切替ドア73より下流側には、送風機としてのブロワ62が設けられている。ブロワ62は、内気吸入口71または外気吸入口72から空気を取り入れ、ハウジング61の下流側に送りだす。ブロワ62の下流側には、エバポレータ42と、エアミックスドア64と、ヒータコア59と、が配置されている。エバポレータ42は、上述した通り、冷房運転時には、空調冷媒が気化する際の潜熱により、ブロワ62から送られる風を冷却する。冷却された空調風が、車内に出力されることで、車内が冷房される。
【0038】
エアミックスドア64は、ヒータコア59の上流側に配置されており、ヒータコア59を通過する風量を調節する。暖房運転時、ミックスドア64は、ヒータコア59を遮らない位置(図2における破線の位置)に移動する。これにより、ブロワ62から送られる風が、ヒータコア59を通過し、加熱される。加熱された空調風が、車内に出力されることで、車内が暖房される。
【0039】
ハウジング61の下流端は、複数(図示例では4つ)の通路66に分割されており、各通路66には、調整ドア68が設けられている。また、各通路66は、特定の吹出口に接続されている。本実施形態の場合、吹出口として、フロントガラスに向いたデフロスタ用吹出口70dfと、乗員の顔に向いたフェイス用吹出口70fcと、乗員の足元に向いたフット用吹出口70ftと、車両後席に向いた後席用吹出口70rsとがある。なお、吹出口70fc,70ftは、車両前席に向いた前席用吹出口である。コントローラ12は、各吹出口70df,70fc,70ft,70rsに対応する調整ドア68を動かすことで、各吹出口70df,70fc,70ft,70rsから出力する空調風の風量を調整する。
【0040】
次に、空調装置10の動作について説明する。ここでは、まず、車両走行時に車室内の空調を行う通常空調について簡単に説明する。
【0041】
操作パネル14は、例えば、空調装置10の作動スイッチ、空調装置10の自動制御を設定あるいは解除するオートスイッチ、運転モードを切り替える運転モード切替スイッチ、吹出口モードを切り替える吹出モード切替スイッチ、ブロワ62の風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する車室内温度設定スイッチ等を有する。
【0042】
コントローラ12は、操作パネル14の操作信号や、空調制御用のセンサ20,22,26の検知信号を読み込む。そして、コントローラ12は、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOを算出する。目標吹出温度TAOは、内気温Trを速やかに乗員の所望の目標温度Tsetに近づけるために決定される値であって、下記数式(1)により算出される。
【0043】
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
・・・(1)
【0044】
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度であり、Trは内気温センサ22によって検知された車室内温度であり、Tamは外気温センサ20によって検知された外気温であり、Tsは日射センサ26によって検知された日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0045】
コントローラ12は、目標吹出温度TAOや、操作パネル14の操作信号に基づいて、冷却装置30、加熱装置50、ブロワ62、内外気切替ドア73、エアミックスドア64、および調整ドア68等を制御する。なお、このような通常空調の制御については公知技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0046】
次に、簡易プレ空調について詳細に説明する。図3は、簡易プレ空調の処理を示すフローチャートである。コントローラ12は、車両のイグニッションスイッチ27がオンからオフに切り替わった場合に、図3のフローチャートに示す処理を開始する。なお、イグニッションスイッチ27がオンの状態で空調装置10が動作している場合には、イグニッションスイッチ27がオフに切り替わると、空調装置10が停止することになる。
【0047】
S10で、コントローラ12は、イグニッションスイッチ27がオフにされた後、予め定められた時間tpが経過したかを確認する。S10がNoの場合、コントローラ12は、時間tpが経過するのを待つ。S10がYesの場合、コントローラ12はS12に進む。これにより、次のS12で、乗員不在の判定(S12:Yes)となる可能性が高まる。
【0048】
S12で、コントローラ12は、乗員不在判定装置28からの判定結果に基づいて、車内に乗員が存在しないことを確認する。S12がNoの場合(車内に乗員が存在している場合)、コントローラ12は、車内に乗員がいなくなるのを待つ。S12がYesの場合(車内に乗員が存在しない場合)、コントローラ12はS14に進む。これにより、乗員が車内にいない時に、後述する簡易プレ空調(S24、S32)が行われることになるので、エバポレータ42表面の凝縮水が蒸発する際の臭いにより、乗員が不快を感じることが抑制される。
【0049】
S14で、コントローラ12は、充電装置29からの信号に基づいて、車両に充電ケーブルが接続されて、外部電源により車載バッテリが充電中か、或いは、充電可能となっているかを確認する。S14がNoの場合(充電ケーブルの接続なしの場合)、コントローラ12は、車両に充電ケーブルが接続されるのを待つ。S14がYesの場合(充電ケーブルの接続ありの場合)、コントローラ12はS16に進む。これにより、車載バッテリの蓄電残量を減らすことなく、外部電源からの電力を用いて簡易プレ空調(S24、S32)を実行することが可能となる。
【0050】
S16で、コントローラ12は、外気温センサ20の検出値(外気温)が予め定められた温度TOth以上であり、かつ、日射センサ26の検出値(日射量)が予め定められた日射量Sth以上であるかを確認する。予め定められた温度TOthは、車室内温度を乗員快適性が損なわれる温度にまで上昇させる可能性のある外気温(一例として摂氏20度、或いはその前後)である。なお、TOthは、車室内に照射される日射による車室内温度の上昇を考慮して決定されてよい。また、予め定められた日射量Sthは、車室内温度を上昇させる可能性のある日射量である。
【0051】
S16がNoの場合、コントローラ12は、図3のフローチャートの処理を終了する。これは、コントローラ12が、車両の外気温が予め定められた温度TOthより低い場合、又は、前記車室内に照射される日射量が予め定められた日射量Sthより低い場合、簡易プレ空調(S24、S32)の実行を回避することを意味する。これにより、不必要に簡易プレ空調が実行されることを回避することができる。簡易プレ空調の実行頻度を減らすことができ、ブロワ62の故障や劣化を抑制することができる。また、簡易プレ空調が実行されないことで、外部電源の多くの電力をバッテリに供給して、バッテリ充電の効率を高めることができる。一方、S16がYesの場合、コントローラ12はS18に進む。
【0052】
S18で、コントローラ12は、イグニッションスイッチ27がオフにされた時点の直前まで空調装置10の冷却装置30が動作していたかを確認する。S18がNoの場合(上記タイミングまで冷却装置30が動作していない場合)、コントローラ12はS28に進む。
【0053】
S28で、コントローラ12は、ブロワレベルを第1レベルに設定する。ブロワレベルは、ブロワ62の出力レベル、すなわちブロワ62の回転数(回転速度)のレベルである。ブロワレベルが大きいほど、ブロワ62の回転数が大きくなる。第1レベルは、後述する第2レベル(S20参照)より低いブロワレベルであり、ブロワ62の回転数が比較的低速となるブロワレベルである。
【0054】
次に、S30で、コントローラ12は、内外気切替ドア73を動作させて外気吸入口72を開くとともに、各調整ドア68を動作させて予め定められた吹出口を開く。予め定められた吹出口は、例えば、全ての吹出口70df,70fc,70ft,70rsである。
【0055】
S32で、コントローラ12は、ブロワ62を動作させる。これにより、冷却装置30と加熱装置50が停止した状態で、第1レベルでブロワ62が動作して、車室内へ外気が導入される簡易プレ空調が実行される。すなわち、車内換気が実行される。この簡易プレ空調により、少ない消費電力で、日射等による車室内の温度上昇を抑制することができ、バッテリ充電終了後に、乗員が車両に乗車した際に、乗員の車内高温による不快感を低減することができる。バッテリ充電時の空調装置10の消費電力が少ないため、バッテリの充電時間が長くなることを抑制することができる。また、乗員が車両に乗車した後の車両走行時に、空調装置10(冷却装置30)の稼働量が低減されるので、空調装置10の消費電力が抑制されて、バッテリによる車両走行距離を長くすることができる。
【0056】
S34で、コントローラ12は、簡易プレ空調の停止条件が成立したかを確認する。停止条件は、例えば、乗員不在判定装置28により車室内の乗員の存在が検知されたこと、又は、イグニッションスイッチ27がオフからオンに切り替わったこと等であってよい。コントローラ12は、停止条件が成立するまで簡易プレ空調(S32)を継続する。そして、コントローラ12は、停止条件が成立した際には(S34:Yes)、図3のフローチャートの処理を終了する。
【0057】
一方、S18で、コントローラ12は、イグニッションスイッチ27がオフにされた時点の直前まで空調装置10の冷却装置30が動作していた場合(S18:Yes)には、S20に進む。これは、冷却装置30の稼働により、エバポレータ42表面に凝縮水が付着している可能性が高い場合である。S20で、コントローラ12は、ブロワレベルを第2レベルに設定する。第2レベルは、前述した第1レベル(S28参照)より高いブロワレベルであり、ブロワ62の回転数が比較的高速となるブロワレベルである。
【0058】
次に、S22で、コントローラ12は、内外気切替ドア73を動作させて外気吸入口72を開く。また、コントローラ12は、後席用吹出口70rsに対応するドア68を動作させてその吹出口70rsを開くとともに、他の吹出口70df,70fc,70ftに対応するドア68を動作させてそれらの吹出口70df,70fc,70ftを閉じる。すなわち、コントローラ12は、車両後席に向く吹出口70rsを開いて、車両前席に向く吹出口70fc,70ftを含む車両前側の吹出口70df,70fc,70ftを閉じる。
【0059】
乗員は、車両後席よりも、運転席がある車両前席に乗車する確率が高いことから、ブロワ62を第2レベル(L2)で動作させる期間(図4の時刻0~tH)において(詳細後述)、車両後席の吹出口70rsを開いて、車両前側の吹出口70df,70fc,70ftを閉じることで、その期間に乗員が車両に乗り込んだ際に、乗員が凝縮水の臭いを感じることを抑制することができる。
【0060】
なお、車両後席の吹出口70rsは、乗員が後席に着座した際にその乗員の足元に向く後席フット用吹出口であってよい。これにより、乗員が車両後席に乗車した場合であっても、乗員が凝縮水の臭いを感じることを抑制することができる。
【0061】
次に、S24で、コントローラ12は、ブロワ62を動作させる。これにより、冷却装置30と加熱装置50が停止した状態で、第2レベルでブロワ62が動作して、車室内へ外気が導入される簡易プレ空調が実行される。すなわち、車内換気が実行される。そして、S26で、コントローラ12は、ブロワ62の動作を開始してから、予め定められた時間tHが経過したかを確認する。S26がNoの場合、コントローラ12は、時間tHが経過するまで、第2レベルのブロワ動作を継続する。そして、コントローラ12は、時間tHが経過した際には(S26:Yes)、ブロワレベルを第1レベルに低下させる(S28)。図4には、この場合のブロワレベルの遷移が示されている。同図において、L1は第1レベルを示し、L2は第2レベルを示す。
【0062】
次に、S30で、コントローラ12は、各調整ドア68を動作させて、予め定められた吹出口(本実施形態では、全ての吹出口70df,70fc,70ft,70rs)を開く。そして、コントローラ12は、第1レベルでブロワ62を動作させて簡易プレ空調を継続する(S32)。このように、コントローラ12は、予め定められた時間tHの間(図4の時刻0~tH)、ブロワ62を第2レベル(L2)で動作させ、その後、ブロワ62を第1レベル(L1)で動作させる簡易プレ空調を実行する。そして、コントローラ12は、停止条件が成立した際には(S34:Yes)、図3のフローチャートの処理を終了する。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、イグニッションスイッチ27がオフにされた時点の直前まで冷却装置30が動作していたことで、エバポレータ42表面に凝縮水が付着している可能性が高い場合(S18:Yes)、予め定められた時間tHの間、ブロワ62の出力を大きくする(第2レベルに設定する)。これにより、凝縮水がエバポレータ42から流下されて、ハウジング61に設けられたドレン水排出口(不図示)から車外に排出されることを促進することができる。そのため、エバポレータ42表面の凝縮水の量が低減され、車室内に放出される凝縮水の臭気成分の濃度を薄くすることができる。また、ブロワ62の出力を大きくするため、乗員が車両に乗り込む前に、エバポレータ42表面の凝縮水が蒸発する可能性を高めることができる。よって、乗員が車両に乗り込んだ際に、乗員が凝縮水の臭いにより不快に感じることを抑制することができる。
【0064】
なお、以上説明した実施形態では、簡易プレ空調(図3のS32)におけるブロワレベル(ブロワ62の回転数)は、一定であった。しかし、例えば、日射センサ26の検出値(日射量)が高い場合には、それが低い場合に比べて、簡易プレ空調(図3のS32)におけるブロワ62の回転数を高くしてもよい。このようにすれば、車室内温度の上昇を効果的に抑制することができる。
【0065】
また、以上説明した実施形態では、日射センサ26により車室内に照射される日射量を検出(取得)した。しかし、例えば、車両が、インターネット等の通信回線を介して、各地の日射量の情報を提供するサーバにアクセスし、そのサーバから車両の現在地における日射量を取得してもよい。
【0066】
また、以上説明した実施形態では、図3のS16で、車両の外気温が予め定められた温度TOth以上であり、かつ、車室内に照射される日射量が予め定められた日射量Sth以上である場合に、簡易プレ空調を実行した(S24,S32)。しかし、車両の外気温が予め定められた温度TOth以上であり、かつ、外気温に比べて内気温(車室内温度)が予め定められた温度Tdf以上高い場合に、簡易プレ空調を実行するとしてもよい。
【0067】
また、以上説明した実施形態では、加熱装置50(図2参照)に関し、熱源として水加熱ヒータ54を用いたが、熱源は他の形態であってもよい。例えば、水加熱ヒータ54に代えて、または、加えて、空気加熱ヒータまたはヒートポンプ方式のヒータが利用されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 空調装置、12 空調コントローラ、12a プロセッサ、12b メモリ、14 操作パネル、16 空調ユニット、20 外気温センサ(温度センサ)、22 内気温センサ(温度センサ)、26 日射センサ、27 イグニッションスイッチ、28 乗員不在判定装置、29 充電装置、30 冷却装置、32 流路、34 コンプレッサ、36 膨張弁、38 コンデンサ、40 コンデンサファン、42 エバポレータ(熱交換器)、46 アキュムレータ、50 加熱装置、52 流路、54 水加熱ヒータ、56 ウォータポンプ、58 リザーブタンク、59 ヒータコア、60 吹出機構、61 ハウジング、62 ブロワ(送風機)、64 エアミックスドア、66 通路、68 調整ドア、70df デフロスタ用吹出口、70fc フェイス用吹出口、70ft フット用吹出口、70rs 後席用吹出口、71 内気吸入口、72 外気吸入口、73 内外気切替ドア。
図1
図2
図3
図4