(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】蓄電セル
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20250909BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20250909BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20250909BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20250909BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20250909BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/533
H01M10/0587
H01G11/74
H01G11/70
(21)【出願番号】P 2023081727
(22)【出願日】2023-05-17
【審査請求日】2024-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和仁
(72)【発明者】
【氏名】高須 純太
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】大野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】盛山 智
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康介
(72)【発明者】
【氏名】杉江 和紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 良哉
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-277159(JP,A)
【文献】特開2004-214174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 50/533
H01M 10/0587
H01G 11/74
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を含む捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容するケースと、を備え、
前記第1電極は、
集電体と、
前記集電体の一部に塗工された電極材料と、
前記捲回電極体の軸方向に前記集電体から突出するように設けられるタブリードと、を含み、
前記集電体は、
前記電極材料が塗工されていない未塗工部を有するとともに、
前記未塗工部同士が前記捲回電極体の径方向に重ねられる重なり部が形成されるように折り曲げられており、
前記タブリードは、前記重なり部に配置されて
おり、
前記集電体は、前記電極材料が塗工される塗工部を有し、
前記径方向における前記重なり部の厚みと、前記径方向における前記タブリードの厚みとの合計値を第1厚みとし、
前記径方向における前記電極材料の厚みと、前記塗工部に対応する前記集電体の前記径方向における厚みとの合計値を第2厚みとすると、
前記第1厚みと前記第2厚みとの差分の絶対値は、前記塗工部に対応する前記集電体の前記径方向における厚みよりも小さい、蓄電セル。
【請求項2】
第1電極および第2電極を含む捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容するケースと、を備え、
前記第1電極は、
集電体と、
前記集電体の一部に塗工された電極材料と、
前記捲回電極体の軸方向に前記集電体から突出するように設けられるタブリードと、を含み、
前記集電体は、
前記電極材料が塗工されていない未塗工部を有するとともに、
前記未塗工部同士が前記捲回電極体の径方向に重ねられる重なり部が形成されるように折り曲げられており、
前記タブリードは、前記重なり部に配置されており、
前記集電体は、前記電極材料が塗工される塗工部を有し、
前記径方向における前記重なり部の厚みと、前記径方向における前記タブリードの厚みとの合計値を第1厚みとし、
前記径方向における前記電極材料の厚みと、前記塗工部に対応する前記集電体の前記径方向における厚みとの合計値を第2厚みとすると、
前記第1厚みは、前記第2厚みと等しい
、蓄電セル。
【請求項3】
第1電極および第2電極を含む捲回電極体と、
前記捲回電極体を収容するケースと、を備え、
前記第1電極は、
集電体と、
前記集電体の一部に塗工された電極材料と、
前記捲回電極体の軸方向に前記集電体から突出するように設けられるタブリードと、を含み、
前記集電体は、
前記電極材料が塗工されていない未塗工部を有するとともに、
前記未塗工部同士が前記捲回電極体の径方向に重ねられる重なり部が形成されるように折り曲げられており、
前記タブリードは、前記重なり部に配置されており、
前記重なり部は、前記捲回電極体の捲回方向において、前記第1電極の一方端と前記第1電極の他方端との間に設けられている、蓄電セル。
【請求項4】
前記重なり部は、前記捲回電極体の捲回方向において、前記第1電極の端部に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電セル。
【請求項5】
前記重なり部は、前記未塗工部が折り曲げられることによって形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第4805545号公報(特許文献1)には、正極板と負極板とがセパレータを介して構成された捲回型の内部電極体を備えるリチウム二次電池が開示されている。正極板および負極板の各々には集電タブが設けられている。集電タブは、正極板および負極板の各々において,電極活物質(電極合材層)が塗工されておらず金属箔体が露出した部分に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の内部電極体には、正極板(負極板)、電極合材層、および、集電タブ等の様々な部材が含まれる。このため、内部電極体を捲回した際に、内部電極体(捲回電極体)の径方向厚みを均一にすることが困難な場合がある。この場合、捲回電極体において段差が生じやすくなるため、捲回電極体がケース等により拘束された状態において、捲回電極体に局所的に加重がかかる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、捲回電極体の径方向厚みを均一にすることが可能な蓄電セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の局面に係る蓄電セルは、第1電極および第2電極を含む捲回電極体と、捲回電極体を収容するケースと、を備える。第1電極は、集電体と、集電体の一部に塗工された電極材料と、捲回電極体の軸方向に集電体から突出するように設けられるタブリードと、を含む。集電体は、電極材料が塗工されていない未塗工部を有する。集電体は、未塗工部同士が捲回電極体の径方向に重ねられる重なり部が形成されるように折り曲げられている。タブリードは、上記重なり部に配置されている。
【0007】
本開示の一の局面に係る蓄電セルでは、上記のように、タブリードが上記重なり部に配置されている。これにより、上記重なり部における重なり数を調整することにより、タブリードが配置されている箇所の第1電極の厚みを容易に調整することができる。その結果、第1電極の厚みを容易に均一化することができる。これにより、捲回電極体の径方向厚みを容易に均一にすることができる。その結果、捲回電極体において段差が生じるのが抑制されるので、拘束された状態の捲回電極体において局所的に加重がかかるのを抑制することができる。
【0008】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、集電体は、電極材料が塗工される塗工部を有する。径方向における重なり部の厚みと、径方向におけるタブリードの厚みとの合計値を第1厚みとし、径方向における電極材料の厚みと、塗工部に対応する集電体の径方向における厚みとの合計値を第2厚みとする。第1厚みと第2厚みとの差分の絶対値は、塗工部に対応する集電体の径方向における厚みよりも小さい。このように構成すれば、上記絶対値が、塗工部に対応する集電体の径方向における厚み以上の場合に比べて、第1電極の厚みをより均一にすることができる。
【0009】
この場合、好ましくは、第1厚みは、第2厚みと等しい。このように構成すれば、第1電極の厚みをより一層均一にすることができる。
【0010】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、重なり部は、捲回電極体の捲回方向において、第1電極の端部に設けられている。このように構成すれば、第1電極の端部において局所的に加重がかかるのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、重なり部は、捲回電極体の捲回方向において、第1電極の一方端と第1電極の他方端との間に設けられている。このように構成すれば、第1電極の一方端と第1電極の他方端との間において局所的に加重がかかるのを抑制することができる。
【0012】
上記一の局面に係る蓄電セルにおいて、好ましくは、重なり部は、未塗工部が折り曲げられることによって形成されている。このように構成すれば、塗工部が折り曲げられるのを抑制することができる。その結果、電極材料が折り曲げに起因して剥がれるのを抑制することができる。
【0013】
本開示によれば、正極タブリードを重なり部に配置することによって、捲回電極体の径方向厚みを均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態による蓄電セルの構成を示す断面図である。
【
図2】一実施形態による正極板の構成を示す平面図である。
【
図3】一実施形態による負極板の構成を示す平面図である。
【
図4】一実施形態による重なり部の構成を示す側面図である。
【
図5】一実施形態による重なり部に正極タブリードが取り付けられている状態を示す平面図である。
【
図6】一実施形態による正極板の厚みを示す断面図である。
【
図7】一実施形態の第1変形例による重なり部に正極タブリードが取り付けられている状態を示す平面図である。
【
図9】一実施形態の第2変形例による重なり部に正極タブリードが取り付けられている状態を示す平面図である。
【
図10】一実施形態の第3変形例による重なり部に負極タブリードが取り付けられている状態を示す平面図である。
【
図11】一実施形態の第4変形例による正極板の厚みを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本開示の実施形態に係る蓄電セル100の全体構成を示す断面図である。蓄電セル100は、たとえば車両に搭載されるリチウムイオン電池である。なお、蓄電セル100の用途および種類は、上記の例に限られない。
【0017】
蓄電セル100は、捲回電極体1と、ケース2と、CID(Current Interrupt Device)3と、正側絶縁板4と、負側絶縁板5と、絶縁層6と、を備える。
【0018】
捲回電極体1は、ケース2に収容されている。ケース2は、円筒形状を有している。すなわち、蓄電セル100は、円筒型の電池である。
【0019】
捲回電極体1は、正極板10と、負極板20と、セパレータ30とを含む。セパレータ30は、正極板10と負極板20との間に設けられている。セパレータ30は、正極板10(正極活物質)と負極板20(負極活物質)との間におけるイオン(たとえばリチウムイオン)の行き来を可能にしつつ、正極板10と負極板20とを分離している。捲回電極体1は、正極板10および負極板20がセパレータ30を介して捲回された極板群により構成されている。なお、正極板10および負極板20は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「第2電極」の一例である。
【0020】
図2は、捲回が解かれた状態の正極板10をY1側から見た図である。正極板10は、X方向に延びる長辺と、Z方向に延びる短辺とにより構成される長方形形状を有する。なお、X方向は、本開示の「捲回方向」の一例である。また、Z方向は、本開示の「軸方向」の一例である。なお、Y方向は、
図1に示すR方向に相当する方向である。また、R方向は、本開示の「径方向」の一例である。
【0021】
図2に示すように、正極板10は、正極集電体11と、正極合材層12(斜線部分)とを含む。正極合材層12は、正極集電体11の一部に塗工されている。すなわち、正極集電体11は、正極合材層12が塗工された塗工部11aと、正極合材層が塗工されていない未塗工部11bとを含む。
【0022】
図2に示す例では、未塗工部11bは、正極板10のX1側の端部10aおよびX2側の端部10bの各々に設けられている。塗工部11aは、X1側の未塗工部11bとX2側の未塗工部11bとの間に設けられている。本実施形態では、X1側およびX2側を、それぞれ、捲回電極体1の捲き終わり側および捲き始め側とする。なお、正極集電体11および正極合材層12は、それぞれ、本開示の「集電体」および「電極材料」の一例である。
【0023】
正極集電体11には、たとえばアルムニウムなどが使用されている。正極合材層12は、正極スラリーを正極集電体11の表面に塗工して乾燥させることにより形成される。正極スラリーとは、正極合材層12の材料(正極活物質やバインダー等)と溶媒とを混練することにより調製されるスラリーである。正極合材層12は、セパレータ30(
図1参照)に密着している。正極合材層12の厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0024】
図3は、捲回が解かれた状態の負極板20をY1側から見た図である。負極板20は、正極板10と同様に、X方向に延びる長辺と、Z方向に延びる短辺とにより構成される長方形形状を有する。
【0025】
図3に示すように、負極板20は、負極集電体21と、負極合材層22(斜線部分)とを含む。負極合材層22は、負極集電体21の一部に塗工されている。すなわち、負極集電体21は、負極合材層22が塗工された塗工部21aと、負極合材層22が塗工されていない未塗工部21bとを含む。
【0026】
未塗工部21bは、負極板20のX1側の端部20aおよびX2側の端部20bの各々に設けられている。塗工部21aは、X1側の未塗工部21bとX2側の未塗工部21bとの間に設けられている。負極板20の塗工部21aは、正極板10の塗工部11aと対向する位置(Y方向に重なる位置)に設けられる。また、負極板20の未塗工部21bは、正極板10の未塗工部11bと対向する位置(Y方向に重なる位置)に設けられる。これにより、正極板10および負極板20の各々が捲回されると、塗工部11aおよび未塗工部11bは、それぞれ、塗工部21aおよび未塗工部21bに対応する周方向位置に設けられる。
【0027】
負極集電体21には、たとえば銅箔などが使用される。負極合材層22は、負極スラリーを負極集電体21の表面に塗工して乾燥させることにより形成される。負極スラリーとは、負極合材層22の材料(負極活物質およびバインダー等)と溶媒とを混練することにより調製されたスラリーである。負極合材層22はセパレータ30(
図1参照)に密着している。負極合材層22の厚さは、たとえば、0.1μm以上かつ1000μm以下である。
【0028】
再び
図1を参照して、正極板10は、正極タブリード13を含む。正極タブリード13は、正極集電体11(
図2参照)からZ1側に突出するように設けられている。なお、正極タブリード13は、本開示の「タブリード」の一例である。
【0029】
負極板20は、負極タブリード23を含む。負極タブリード23は、負極集電体21(
図2参照)からZ2側に突出するように設けられている。
【0030】
正側絶縁板4は、ケース2に収容されている。正側絶縁板4は、捲回電極体1(負極板20およびセパレータ30)とケース2とを絶縁するように設けられている。正側絶縁板4は、正極集電体11、負極板20、および、セパレータ30をZ1側から覆うように設けられている。
【0031】
正側絶縁板4は、貫通穴4aを有する。正極タブリード13は、貫通穴4aを貫通することにより、後述する導電膜3bと接触している。これにより、正極タブリード13と導電膜3bとが電気的に接続されている。
【0032】
負側絶縁板5は、ケース2に収容されている。負側絶縁板5は、捲回電極体1(正極板10およびセパレータ30)とケース2とを絶縁するように設けられている。負側絶縁板5は、正極板10、負極集電体21、および、セパレータ30をZ2側から覆うように設けられている。
【0033】
負側絶縁板5は、貫通穴5aを有する。負極タブリード23は、貫通穴5aを貫通することにより、ケース2の底部2aと接触している。これにより、負極タブリード23とケースの底部2aとが電気的に接続されている。その結果、ケース2の底部2aと接続されているケース2の側面部2bは、負に帯電される。なお、側面部2bは、捲回電極体1の最外周に設けられる負極板20の負極集電体21と接触している。
【0034】
CID3は、蓄電セル100の過充電に起因して発生したガスによるセル内圧の上昇を利用して電流経路を遮断する素子である。CID3は、ケース2のZ1側の開口を封口するように設けられている。CID3は、外部キャップ3aと、導電膜3bと、ガスケット3cと、ボトムディスク3dとを有する。
【0035】
外部キャップ3aは、図示しない外部のバスバーと電気的に接続されることにより、外部端子としての機能を有する。外部キャップ3aには、脆弱部分3e(薄肉部分)が設けられている。外部キャップ3aは、ケース2の内圧が上昇した場合、脆弱部分3eを起点に壊れやすくなっている。これにより、ガスがケース2の外に速やかに排出される。
【0036】
導電膜3bは、ケース2のZ1側の開口を封口するように設けられている。導電膜3bは、捲回電極体1側(Z2側)に突出する突出部3fを含む。突出部3fは、正極タブリード13と接触している。これにより、導電膜3bは、正に帯電している。また、導電膜3bは、外部キャップ3aと電気的に接続されている。これにより、外部キャップ3aも正に帯電している。なお、突出部3fは、ガスケット3cおよびボトムディスク3dの各々を貫通するように設けられている。
【0037】
導電膜3bには、外部キャップ3aと同様に、脆弱部分3g(薄肉部分)が設けられている。導電膜3bは、ケース2の内圧が上昇した場合、脆弱部分3gを起点に壊れやすくなっている。導電膜3bが内圧の上昇により壊れた場合、導電膜3bと正極タブリード13との接触が解除される。その結果、導電膜3bの正の帯電が解消されるとともに、外部キャップ3aの正の帯電が解消される。その結果、蓄電セル100の充放電が停止される。
【0038】
ケース2には、外部キャップ3aの外周縁にかしめられるかしめ部2cが設けられている。絶縁層6は、かしめ部2cと、外部キャップ3a(および導電膜3b)とを絶縁するように設けられている。
【0039】
再び
図2を参照して、X1側の未塗工部11bには、X方向に互いに隣接し合う第1部分11c、第2部分11d、および、第3部分11eが設けられる。具体的には、X1側から順に、第1部分11c、第2部分11d、第3部分11eの順で配置されている。なお、第1部分11cのX方向における幅W11、第2部分11dのX方向における幅W12、および、第3部分11eのX方向における幅W13は、互いに等しい。
【0040】
図4に示すように、正極集電体11は、未塗工部11b同士(第1部分11c、第2部分11d、および、第3部分11e)が重ねられる重なり部14が形成されるように折り曲げられている(折り畳まれている)。
図4では、重なり部14の未塗工部11b同士は、Y方向に重ねられている。重なり部14は、第1部分11cが第2部分11dと第3部分11eとにより挟まれるように形成されている。
【0041】
重なり部14は、未塗工部11bが折り曲げられることによって形成されている。すなわち、未塗工部11bの領域内に折り曲げ部11f(
図2の破線参照)が形成されている。折り曲げ部11fは、Z方向に沿って延びるように設けられている。
【0042】
ここで、捲回電極体1には、正極板10(負極板20)、電極合材層(12、22)、および、タブリード(13、23)等の様々な部材が含まれる。このため、従来の構成では、捲回電極体の径方向厚みを均一にすることが困難な場合がある。この場合、捲回電極体において段差が生じやすくなるため、捲回電極体がケース等により拘束された状態において、捲回電極体に局所的に加重がかかる。
【0043】
そこで、本実施形態の蓄電セル100は、
図5に示すように、正極タブリード13が重なり部14に配置されるように構成されている。これにより、重なり部14における厚み(重なり部14と正極タブリード13との合計厚み)を容易に大きくすることができる。その結果、未塗工部11bと塗工部11aとの厚みの差に起因して捲回電極体1に段差(径方向における段差)が形成されるのを抑制することができる。なお、正極タブリード13は、重なり部14の正極集電体11に、たとえば溶接されている。
【0044】
正極タブリード13は、X方向において、重なり部14の領域内に納められている。言い換えると、正極タブリード13のX方向における幅W1は、重なり部14のX方向における幅W2よりも小さい。正極タブリード13は、X方向において、重なり部14の中央に配置されている。なお、幅W1と幅W2とは、互いに等しくてもよい。
【0045】
本実施形態では、重なり部14は、X方向において、正極板10のX1側の端部10aに設けられている。すなわち、捲回電極体1が捲回された状態で、重なり部14は、捲回電極体1の捲き終わり部に設けられている。
【0046】
図6に示すように、正極集電体11は、Y方向における厚みt1を有する。なお、厚みt1は、正極集電体11の金属箔板1枚分の厚みである。したがって、重なり部14のY方向における厚みt11は、厚みt1の3倍(t11=3×t1)である。なお、厚みt1は、本開示の「塗工部に対応する集電体の径方向における厚み」の一例である。
【0047】
正極タブリード13は、Y方向における厚みt2を有する。したがって、重なり部14に対応する正極板10の厚みt12は、重なり部14の厚みt11と正極タブリード13の厚みt2との合計(t12=t11+t2)である。なお、
図2に示す例では、正極タブリード13の厚みt2は、正極集電体11の厚みt1よりも大きい。厚みt2が厚みt1以下であってもよい。なお、厚みt12は、本開示の「第1厚み」の一例である。
【0048】
正極合材層12は、Y方向における厚みt3を有する。したがって、塗工部11aに対応する正極板10の厚みt13は、正極合材層12の厚みt3と、正極集電体11の厚みt1との合計(t13=t3+t1)である。なお、正極合材層12の厚みt3は、正極タブリード13の厚みt2よりも大きい。また、厚みt13は、本開示の「第2厚み」の一例である。
【0049】
本実施形態では、厚みt12は、厚みt13と等しい。言い換えると、正極板10は、重なり部14に対応する箇所と、塗工部11aに対応する箇所との間において、厚みが均一になるように形成されている。
【0050】
以上のように、本実施形態では、正極タブリード13は、正極集電体11の重なり部14に配置されている。これにより、正極タブリード13が配置される箇所における正極板10の厚み(t12)を、正極タブリード13の厚み(t2)等を変更しなくても、容易に大きくすることができる。その結果、捲回電極体1の径方向厚みを容易に均一にすることができる。
【0051】
上記実施形態では、重なり部14が、正極板10のX1側の端部10aに設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。重なり部14の位置は上記実施形態に限られない。
【0052】
図7は、上記実施形態の変形例における正極板110を示す。正極板110は、正極集電体111を含む。
図7に示す例では、未塗工部11bは、正極板110のX1側の端部110aおよびX2側の端部110bに加えて、端部110aと端部110bとの間にも設けられている。なお、正極板110および正極集電体111は、それぞれ、本開示の「第1電極」および「集電体」の一例である。
【0053】
図7に示すように、重なり部114は、端部110aと端部110bとの間の未塗工部11bにより形成されている。正極タブリード13は、重なり部114に取り付けられている。
【0054】
図8は、
図7の正極板110をZ2側から見た図である。重なり部114は、第1部分111cと、第2部分111dと、第3部分111eとが重なり合うことにより形成されている。X1側から順に、第1部分111c、第2部分111d、第3部分111eの順で配置されている。重なり部114は、第2部分111dが第1部分111cと第3部分111eとによりY方向に挟まれるように設けられている。すなわち、重なり部114は、未塗工部11bがミアンダ状に折れ曲がることにより形成されている。
【0055】
上記実施形態では、重なり部14が正極板10のX1側の端部10aに設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。
図9に示すように、重なり部14が正極体10のX2側の端部10bに設けられていてもよい。また、重なり部14が、X1側の端部10aおよびX2側の端部10bの各々に設けられていてもよい。
【0056】
上記実施形態では、正極板10に重なり部14が設けられている例を示したが、本開示はこれに限られない。
図10に示すように、負極板20に、負極集電体21の未塗工部21b同士が重ねられる重なり部24が設けられていてもよい。この場合、負極タブリード23は、重なり部24に取り付けられる。なお、正極板10および負極板20の各々に重なり部14(24)が設けられてもよい。また、
図10に示す例では、重なり部24が負極板20のX1側の端部20aに設けられているが、重なり部24が負極板20のX2側の端部20b、および、端部20aと端部20bとの間に設けられていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、重なり部14に対応する正極板10の厚みt12が、塗工部11aに対応する正極板10の厚みt13と等しい例を示したが、本開示はこれに限られない。
図11に示すように、厚みt12と厚みt13との間に差が生じていてもよい。
図11に示す例では、厚みt12と厚みt13との差分t14は、正極集電体11の金属箔板1枚分の厚みt1よりも小さい(|t12-t13|<t1)。なお、
図11では、厚みt12が厚みt13よりも小さい例が示されているが、厚みt12が厚みt13よりも大きくてもよい。
【0058】
上記実施形態では、未塗工部11bに折り曲げ部11fが形成される例を示したが、本開示はこれに限られない。たとえば、未塗工部11b同士の間の塗工部11aに形成された折り曲げ部に沿って正極集電体11が折り曲げられることによって、上記未塗工部11b同士が重ねられてもよい。
【0059】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 捲回電極体,2 ケース,10、110 正極板(第1電極),10a、10b 端部,11、111 正極集電体(集電体),11a 塗工部,11b 未塗工部,12 正極合材層(電極材料),13 正極タブリード(タブリード),14、114 重なり部,20 負極板(第2電極),100 蓄電セル,R 方向(径方向),t1 厚み(塗工部に対応する集電体の厚み),t2 厚み(タブリードの厚み),t3 厚み(電極材料の厚み),t11 厚み(重なり部の厚み),t12 厚み(第1厚み),t13 厚み(第2厚み),t14 差分,X 方向(捲回方向),Z 方向(軸方向)。