(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】インクジェットインク、硬化物の形成方法および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09D  11/322       20140101AFI20250909BHJP        
   C09D  11/101       20140101ALI20250909BHJP        
   C09D  11/30        20140101ALI20250909BHJP        
   B41M   5/00        20060101ALI20250909BHJP        
   B41J   2/01        20060101ALI20250909BHJP        
   B41J   2/18        20060101ALI20250909BHJP        
【FI】
C09D11/322 
C09D11/101 
C09D11/30 
B41M5/00 120 
B41M5/00 100 
B41J2/01 127 
B41J2/01 501 
B41J2/18 
(21)【出願番号】P 2023163742
(22)【出願日】2023-09-26
【審査請求日】2025-01-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮野  雅士
(72)【発明者】
【氏名】森  恒
【審査官】郡上  祐輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-162646(JP,A)      
【文献】特開2007-238400(JP,A)      
【文献】特開2019-111827(JP,A)      
【文献】特開2001-207086(JP,A)      
【文献】特開2014-028484(JP,A)      
【文献】特表2022-513139(JP,A)      
【文献】特開2015-081294(JP,A)      
【文献】特開2014-166698(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J      2/01
B41M      5/00
C09D    11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  重合性化合物と、無機粒子と、シリカ粒子とを有し、
  前記シリカ粒子は、疎水化処理されており、かつ重合性基を有さず、
  前記シリカ粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径よりも小さく、
  
前記無機粒子の含有量に対する前記シリカ粒子の含有量の比率(シリカ粒子の含有量(質量基準)/無機粒子の含有量(質量基準))は、0.0004以上0.3以下であり、
  
有機溶剤を実質的に含有しない、
            
  活性エネルギー線硬化型のインクジェットインク。
【請求項2】
  前記重合性化合物は、(メタ)アクリレートを含む、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
  前記(メタ)アクリレートは、芳香環を有する単官能重合性化合物を含む、
  請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
  水を実質的に含
有しない、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
  前記シリカ粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径の1/20以下である、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
  前記シリカ粒子の含有量は、前記インクジェットインクの全質量に対して0.01質量%以上5質量%以下である、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
  前記無機粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5μm以下である、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
  前記無機粒子のD
50/D
90は、0.1以上0.9以下である、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
  前記無機粒子は、蓄光顔料である、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
  熱硬化剤を含む、
  請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
  請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを基材に付与する工程と、
  前記付与されたインクジェットインクに活性エネルギー線を照射する工程と、
  を有する、硬化物の形成方法。
【請求項12】
  前記基材に付与する工程は、前記インクジェットインクを循環させながら行う、
  請求項11に記載の硬化物の形成方法。
【請求項13】
  請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェットインクにより形成された硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、インクジェットインク、硬化物の形成方法および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
  白色顔料としての酸化チタンや導電性粒子などの無機粒子を含有するインクジェットインクが知られている。無機粒子は、貯蔵中や吐出前の待機中にインク中で沈降しやすく、沈降したら再分散しにくいという問題がある。
【0003】
  この問題を解決するため、特許文献1に記載のインクジェット記録用インク組成物では、溶媒として水および有機溶媒を含む水系インクにおいて、表面にシラノール基を有するシリカ粒子を、無機顔料と併用している。
【0004】
  なお、同様にシリカ粒子を含有する特許文献2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクでは、シリカ粒子の凝集による沈降を抑制するため、表面が(メタ)アクリレート化合物により修飾されているシリカ粒子を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
               【文献】特開2013-181055号公報
               【文献】特開2019-157062号公報
             
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
  特許文献1には、シリカ粒子によって、沈降した無機顔料を再分散しやすくできると記載されている。しかし、本発明者らの知見によると、重合性化合物を含む活性エネルギー線硬化型のインクジェットインクでは、特許文献1と同様のシリカ粒子を使用しても、沈降した無機顔料が再分散しやすくはならなかった。また、特許文献2に記載のような表面が(メタ)アクリレート化合物により修飾されているシリカ粒子を使用しても、活性エネルギー線硬化型のインクジェットインクにおいて沈降した無機顔料は再分散しやすくならなかった。
【0007】
  また、本発明者らの別の知見によると、特許文献1や特許文献2と同様のシリカ粒子を添加した活性エネルギー線硬化型のインクジェットインクでは、インクジェットヘッドからの射出曲がりが生じやすくなったり、インクジェットヘッドや流路などの部材の耐久性が低下しやすくなったりするという問題も生じた。
【0008】
  本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、沈降した無機粒子の再分散性に優れ、かつ、インクジェットヘッドからの射出曲がりや、インクジェットヘッドや流路などの部材の耐久性の低下が生じにくい活性エネルギー線硬化型のインクジェットインク、当該インクジェットインクを用いた硬化物の形成方法、および当該形成方法により形成された硬化物を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
  上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[10]の活性エネルギー線硬化型のインクジェットインクに関する。
  [1]重合性化合物と、無機粒子と、シリカ粒子とを有し、
  前記シリカ粒子は、疎水化処理されており、かつ重合性基を有さず、
  前記シリカ粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径よりも小さく、
  前記シリカ粒子の質量基準の含有量は、前記無機粒子の質量基準の含有量よりも少ない、
  活性エネルギー線硬化型のインクジェットインク。
  [2]前記重合性化合物は、(メタ)アクリレートを含む、
  [1]に記載のインクジェットインク。
  [3]前記(メタ)アクリレートは、芳香環を有する単官能重合性化合物を含む、
  [2]に記載のインクジェットインク。
  [4]水を実質的に含有せず、かつ、有機溶剤を実質的に含有しない、
  [1]~[3]のいずれかに記載のインクジェットインク。
  [5]前記シリカ粒子の平均粒子径は、前記無機粒子のメディアン径の1/20以下である、
  [1]~[4]のいずれかに記載のインクジェットインク。
  [6]前記シリカ粒子の含有量は、前記インクジェットインクの全質量に対して0.01質量%以上5質量%以下である、
  [1]~[5]のいずれかに記載のインクジェットインク。
  [7]前記無機粒子の平均粒子径は、0.5μm以上5μm以下である、
  [1]~[6]のいずれかに記載のインクジェットインク。
  [8]前記無機粒子のD50/D90は、0.1以上0.9以下である、
  [1]~[7]のいずれかに記載のインクジェットインク。
  [9]前記無機粒子は、蓄光顔料である、
  [1]~[8]のいずれかに記載のインクジェットインク。
  [10]熱硬化剤を含む、
  [1]~[9]のいずれかに記載のインクジェットインク。
【0010】
  上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[11]~[12]の硬化物の形成方法に関する。
  [11][1]~[10]のいずれかに記載のインクジェットインクを基材に付与する工程と、
  前記付与されたインクジェットインクに活性エネルギー線を照射する工程と、
  を有する、硬化物の形成方法。
  [12]前記基材に付与する工程は、前記インクジェットインクを循環させながら行う、
  [11]に記載の硬化物の形成方法。
【0011】
  上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[13]の硬化物に関する。
  [13][1]~[10]のいずれかに記載のインクジェットインクにより形成された硬化物。
【発明の効果】
【0012】
  本発明によれば、沈降した無機粒子の再分散性に優れ、かつ、インクジェットヘッドからの射出曲がりや、インクジェットヘッドや流路などの部材の耐久性の低下が生じにくい活性エネルギー線硬化型のインクジェットインク、当該インクジェットインクを用いた硬化物の形成方法、および当該形成方法により形成された硬化物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
  1.インクジェットインク
  本発明の一実施形態は、活性エネルギー線硬化型のインクジェットインク(以下、単に「インク」ともいう。)に関する。上記インクは、重合性化合物と、無機粒子と、疎水化処理されたシリカ粒子と、を有する。
【0014】
  本実施形態に関するインクでは、無機顔料よりも小さい粒子であるシリカ粒子が、無機顔料の表面に吸着すると考えられる。シリカ粒子は、無機顔料の表面への吸着により、沈降した無機粒子のパッキングや無機粒子同士の凝集を抑制する。これにより、シリカ粒子は沈降した無機粒子を再分散させやすくすると考えられる。
【0015】
  本実施形態に関するインクは、重合性化合物を含む活性エネルギー線硬化型インクである。そして、上記インクが含む疎水化処理されたシリカ粒子は、液体成分である重合性化合物に濡れやすい。そのため、本実施形態に関するインクでは、シリカ粒子が良好に分散する。この良好に分散したシリカが無機粒子に良好に吸着するため、本実施形態に関するインクは、沈降した無機粒子が再分散しやすくなると考えられる。なお、特許文献1に記載のシリカ粒子は、親水化処理されたものである。このようなシリカ粒子は、重合性化合物への濡れ性が良好ではない。そのため、特許文献1に記載のシリカ粒子は無機粒子に吸着しにくく、沈降した無機粒子の再分散性を高めにくかったと考えられる。
【0016】
  また、本実施形態に関するインクは、重合性基を有さないシリカ粒子を含む。特許文献2に記載の、表面が(メタ)アクリレート化合物により修飾されているシリカ粒子は、インクの保存中、流動中やインクジェットヘッド内部で加熱されたときなどに、表面の(メタ)アクリロイル基が重合反応する。そして、上記シリカ粒子は、この重合反応によりシリカ粒子同士が凝集して、無機粒子の表面から離脱しやすい。そのため、上記シリカ粒子は、沈降した無機粒子の再分散性を高めにくかったと考えられる。
【0017】
  なお、沈降した無機粒子が再分散できないと、吐出されるインクジェットインク中の無機粒子の濃度が変動しやすかったり、インクジェットインクの粘度が変動して吐出が不安定になったりする。また、吐出前のインクジェットインクをインク流路やインクジェットヘッド中で循環させるときにも、インクジェットインクの循環が安定しにくかったりする。本実施形態では、シリカ粒子が沈降した無機粒子を再分散させやすくして、これらの問題を生じにくくする。
【0018】
  また、無機粒子は通常、硬度が高い。そして、インク中で凝集した硬度が高い無機粒子は、インクジェットヘッドまたはインク流路の部材に接触してこれらの部材を劣化させることがある。さらには、凝集した無機粒子は、ノズル面に貼り付いてノズルプレート吐出面の撥水膜を剥がしたり、ノズル開口部を削って変形させたりして、インクの射出曲がりや射出不良を生じさせることがある。これに対し、本実施形態では、重合性化合物に良好に濡れたシリカ粒子が無機粒子に良好に吸着して、無機粒子の凝集を抑制する。また、本実施形態で使用するシリカ粒子は、インクの保存中、流動中インクジェットヘッド内部で加熱されたときなどにも無機顔料の表面から離脱しにくく、無機粒子の凝集を引き起こしにくい。そのため、本実施形態に関するインクは、インクジェットヘッドなどの部材の耐久性や、インクの射出性などを低下させにくい。
【0019】
  以下、各成分について説明する。
【0020】
  1-1.重合性化合物
  重合性化合物は、活性エネルギー線の照射により重合および架橋する化合物である。
【0021】
  重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーおよびこれらの混合物とすることができる。
【0022】
  重合性化合物は、単官能の化合物でもよいし、多官能の化合物でもよい。硬化物を柔軟にしたいときは単官能の化合物を含むことが好ましく、硬化物の硬度を高めたいときは他官能の化合物を含むことが好ましい。また、これらのバランスをとる観点から、重合性化合物は、単官能の化合物および多官能の化合物の両方を含んでもよい。
【0023】
  重合性化合物は、ラジカル重合性化合物でもよく、カチオン重合性化合物でもよい。また、重合性化合物は、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物との組み合わせて用いてもよい。
【0024】
  ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物である。
【0025】
  ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、および不飽和ウレタンなどが含まれる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
【0026】
  なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。(メタ)アクリレートは、それ自体の熱安定性が高いためインクの熱安定性も高めることができる。そのため、(メタ)アクリレートを含むインクは、インクジェットヘッド内部での熱安定性が高く、射出曲がりがより生じにくい。(メタ)アクリレートは、後述するモノマーであってもよいし、オリゴマーであってもよいし、モノマーとオリゴマーの混合物、変性物、重合性官能基を有するオリゴマーなどであってよい。
【0027】
  なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを示し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを示し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを示す。
【0028】
  単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノキシ(メタ)アクリレート、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-o-フェニルフェノールプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸およびt-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0029】
  多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートを含む2官能の(メタ)アクリレート、ならびに、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートを含む3官能以上の(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0030】
  (メタ)アクリレートは、変性物であってもよい。変性物である(メタ)アクリレートの例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびエチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを含むエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ならびにカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクタム変性(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0031】
  (メタ)アクリレートは、重合性オリゴマーであってもよい。重合性オリゴマーである(メタ)アクリレートの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、および直鎖(メタ)アクリルオリゴマーなどが含まれる。
【0032】
  カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、およびオキセタン化合物などが含まれる。
【0033】
  エポキシ化合物の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサンおよびビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテルなどの脂環式エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールのジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびグリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなど)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどを含む脂肪族エポキシ化合物、ならびに、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などを含む芳香族エポキシ化合物などが含まれる。
【0034】
  ビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、およびオクタデシルビニルエーテルなどを含むモノビニルエーテル化合物、ならびにエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、およびトリメチロールプロパントリビニルエーテルなどを含むジまたはトリビニルエーテル化合物などが含まれる。
【0035】
  オキセタン化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、3,3’-(オキシビスメチレン)ビス(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタンおよびジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどが含まれる。
【0036】
  重合性化合物は、分子内に芳香環を有する化合物を含むことが好ましい。芳香環は構造的に安定なため水素引き抜きされにくい。そのため、分子内に芳香環を有する重合性化合物は、インクの硬化時に発生した多量のラジカルにより水素引き抜き反応が生じることによる、硬化物の黄変が、生じにくい。また、分子内に芳香環を有する化合物は、単官能の重合性化合物であることが好ましい。末端に芳香環を有する重合性化合物は、無機粒子への濡れ性が高いため、沈降した無機粒子を再分散させやすくする。
【0037】
  芳香環を有する重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
  芳香環を有する重合性化合物の例には、フェノール4EO変性(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-o-フェニルフェノールプロピル(メタ)アクリレート、EO変性o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジ(メタ)アクリレート(A-BPEF)、ビスフェノールA型10EO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型PO変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型EO変性ジ(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが含まれる。これらのうち、フェノール4EO変性(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシ化フェノール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-o-フェニルフェノールプロピル(メタ)アクリレート、EO変性o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0039】
  重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して30質量%以上97質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。芳香環を有する単官能重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0040】
  1-2.無機粒子
  無機粒子の種類は特に限定されない。無機粒子は、インクにより形成される硬化物に色調や導電性や絶縁性や放熱性や負の熱膨張係数などの特徴を付与する顔料粒子であってもよいし、顔料とは別に添加されて硬化物の物性を調整する粒子であってもよい。
【0041】
  無機粒子は、炭素以外の原子を主成分として含む粒子であればよい。主成分として含むとは、無機粒子の全質量に対して50質量%以上が炭素以外の原子であることを意味する。
【0042】
  無機粒子の例には、
  シリカ粒子、
  酸化チタン粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子および酸化鉄粒子などの金属酸化物粒子
  水酸化マグネシウム粒子、水酸化アルミニウム粒子、および水酸化カルシウム粒子などの金属水酸化物粒子
  窒化珪素粒子、窒化チタン粒子、および窒化アルミニウム粒子などの窒化物粒子
  銀粒子などの光輝顔料粒子(あるいは導電性粒子)、
  ガラスビーズ、およびガラスフレークなどのガラス粒子、
  ケイ酸マグネシウム粒子などのケイ酸塩粒子、
  カオリン粒子、焼成カオリン粒子、クレー、タルク、ゼオライトなどのセラミック粒子、
  パール顔料粒子などの複数の材料が複合化された粒子、ならびに、
  所定の波長の光を吸収して光エネルギーを蓄積し、蓄積された光のエネルギーを吸収した光とは異なる波長の光として長時間放出することができる蓄光顔料粒子
  などが含まれる。
【0043】
  蓄光顔料の例には、金属化合物である母結晶が賦活処理されたものが含まれる。
【0044】
  上記母結晶の例には、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化ゲルマニウム、硫化ストロンチウム、硫化イットリウムなどの硫化物、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、アルミナ、酸化セリウムなどの金属酸化物、アルミン酸カルシウム、アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸バリウムなどのアルミン酸塩、などが含まれる。これらのうちアルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4:Eu,Dy)が好ましい。
【0045】
  上記母結晶を賦活処理する賦活剤の例には、ユウロピウム、テルビウム、イットリウム、ジルコニウム、ジスプロシウム、およびバリウムなどが含まれる。これらのうち、ユウロピウム、ジスプロシウムが好ましい。
【0046】
  蓄光顔料の励起スペクトルのピーク波長は、300nm以上400nm以下であることが好ましい。蓄光顔料の励起スペクトルのピーク波長が上記範囲にあると、太陽光により、蓄光顔料を十分に励起させることができ、硬化物を屋外での使用に適応させやすい。
【0047】
  蓄光顔料の発光スペクトルのピーク波長は、例えば、400nm以上700nm以下とすることができ、硬化物の視認性をより高める観点からは450nm以上600nm以下であることが好ましい。
【0048】
  これらの無機粒子のうち、光輝顔料粒子、酸化亜鉛粒子、蓄光顔料粒子が好ましい。さらには、シリカ粒子が吸着しやすく沈降後の再分散性を高めやすいため、酸化亜鉛粒子、パール顔料粒子、および蓄光顔料粒子がより好ましく、蓄光顔料粒子がさらに好ましい。
【0049】
  無機粒子の形状は特に限定されず、球形であってもよいし、平板状やウイスカー状などの非球形であってもよい。これらのうち、シリカ粒子による沈降後の再分散性の向上効果を高めやすいことから、球形が好ましい。たとえば、無機粒子は、長径と短径との比率であるアスペクト比が1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがより好ましい。
【0050】
  無機粒子の長径および短径はそれぞれ、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)などで撮像した画像中に写されたインク中の無機粒子のうち、任意に選択した1000個の無機粒子の、画像中の長径の平均、および画像中の短径の平均、とすることができる。
【0051】
  インク中の無機粒子のメディアン径は特に限定されず、0.2μm以上20μm以下とすることができ、0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。メディアン径がより大きいほど、無機粒子へのシリカ粒子の吸着量を多くしやすく、シリカ粒子により沈降後の再分散性を高めやすい。また、メディアン径がより大きいほど、沈降した無機粒子がパッキングされにくく、再分散しやすい。メディアン径がより小さいほど、インクジェットヘッドからの吐出性が良好となり、また凝集したとしてもインクジェットヘッドなどの部材を損傷させにくい。
【0052】
  無機粒子のメディアン径は、体積基準の粒度分布における累積値が50%となる粒径(D50)を用いることができる。
【0053】
  インク中の無機粒子の体積基準の粒度分布における累積値が90%となる粒径(D90)は、1.0μm以上20μm以下とすることができ、1.5μm以上10μm以下であることが好ましく、2.0μm以上8μm以下であることがさらに好ましい。無機粒子へのシリカ粒子の吸着量を多くしやすく、シリカ粒子により沈降後の再分散性を高めやすい。また、D90がより大きいほど、沈降した無機粒子がパッキングされにくく、再分散しやすい。D90がより小さいほど、インクジェットヘッドからの吐出性が良好となり、また凝集したとしてもインクジェットヘッドなどの部材を損傷させにくい。
【0054】
  また、無機粒子は、D50/D90が0.2以上0.8以下であることが好ましく、0.3以上0.6以下であることがより好ましい。D50/D90がより小さいほど、粒度分布をブロードにして無機粒子が密にパッキングされた硬化物を形成させることができ、硬化物の耐候性を向上させることができる。
【0055】
  なお、無機粒子のD50およびD90は、粒径測定装置、たとえば、LUMiSizer、LUM  Japan株式会社製を使用して測定した値とすることができる。
【0056】
  無機粒子の比重は、2以上6以下とすることができ、2.5以上5以下とすることが好ましく、3以上4.5以下とすることがより好ましい。比重がより大きいほど、インク中で無機粒子が沈降しやすく、シリカ粒子による沈降後の再分散性の向上効果が顕著にみられる。
【0057】
  無機粒子は、分散剤により分散されていてもよい。無機粒子は、1種類のみの分散剤により分散されていてもよいし、2種類以上の分散剤により分散されていてもよい。
【0058】
  分散剤の例には、ヒドロキシ基を有するカルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びステアリルアミンアセテートなどが挙げられる。顔料分散剤の市販品の例には、Solsperseシリーズ(Avecia社製、「Solsperse」は同社の登録商標)や、PBシリーズ(味の素ファインテクノ社製)、EFKAシリーズ(BASF社製、「EFKA」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0059】
  分散剤の含有量は、無機粒子の全質量に対して、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0060】
  無機粒子の含有量は、当該無機粒子の用途に応じて設定すればよい。たとえば、無機粒子の含有量は、インクの全質量に対して1質量%以上60質量%以下とすることができ、2質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、3質量%以上30質量%以下とすることがより好ましい。無機粒子の含有量がより少ないほど、沈降した無機粒子の再分散性が高まる。
【0061】
  1-3.シリカ粒子
  シリカ粒子は、その平均粒子径が無機粒子のメディアン径よりも小さい粒子である。無機粒子よりも小さいシリカ粒子は、無機粒子の表面に吸着しやすく、無機粒子のパッキングや凝集を抑制しやすい。そして、これによりシリカ粒子は、沈降した無機粒子を再分散させやすくすると考えられる。また、同様の理由により、シリカ粒子は、無機顔料を含むインクを使用したときの、インクジェットヘッドなどの部材の耐久性や、インクの射出性などの低下を抑制すると考えられる。
【0062】
  シリカ粒子は、二酸化ケイ素(SiO2)により構成される粒子であってもよいし、主成分としての二酸化ケイ素と他の物質とを含む粒子であってもよい。また、シリカ粒子は、コアと、二酸化ケイ素を含むシェルと、を含むコアシェル型の粒子であってもよい。なお、主成分として含むとは、粒子の全質量に対する50質量%以上が二酸化ケイ素であることを意味する。沈降した無機粒子の再分散性および循環安定性を高める観点からは、シリカ粒子は、二酸化ケイ素のみにより構成される粒子であることが好ましい。シリカ粒子は、天然物であってもよいし合成物であってもよいが、平均粒子径や粒度分布を調整しやすいことから、合成物が好ましい。
【0063】
  合成物であるシリカ粒子は、乾式法で製造されたシリカ粒子であってもよいし、湿式法で製造されたシリカ粒子であってもよい。乾式法で製造されたシリカ粒子の例には、燃焼法で製造された燃焼シリカ粒子、および爆燃法で製造された爆燃シリカ粒子などが含まれる。湿式法で製造されたシリカ粒子の例には、沈降法で製造された沈降シリカ粒子、ゲル法で製造されたシリカゲル、コロイダルシリカ、およびゾルゲルシリカなどが含まれる。これらのうち、無機粒子への吸着性が高いことから、燃焼シリカ、爆燃シリカ、およびゾルゲルシリカが好ましく、ゾルゲルシリカがより好ましい。
【0064】
  シリカ粒子は、疎水化処理されている。疎水化処理されたシリカ粒子は、重合性化合物に濡れやすく、インク中で良好に分散しやすい。そのため、疎水化処理されたシリカ粒子は、インク中で無機表面の表面に吸着しやすく、沈降した無機粒子の再分散性を高めたり、部材の耐久性や射出性などの低下を抑制したりしやすい。
【0065】
  疎水化処理の方法は特に限定されず、疎水基(アルキル基など)を有するシランカップリング剤、疎水基(アルキル基など)を有するチタンカップリング剤、ポリシロキサン、ジシラザン、シリコーンオイルおよび長鎖脂肪酸などによる処理を行えばよい。疎水化処理はたとえば、チルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、およびビニルトリクロロシランなどを含むクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o-メチルフェニルトリメトキシシラン、p-メチルフェニルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、i-ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、およびγ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等を含むアルコキシシラン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどを含むポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、およびジメチルテトラビニルジシラザンなどを含むジシラザン、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、および末端反応性シリコーンオイルなどを含むシリコーンオイル、ならびに、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、およびアラキドン酸などの長鎖脂肪酸またはその塩などにより行うことができる。
【0066】
  なお、本明細書において、上記疎水化処理には、重合性基を含めるような処理は含めない。重合性基の例には、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、およびビニル基などが含まれる。水酸基やシラノール基は重合性化合物と反応しないため、重合性基には含まれない。
【0067】
  疎水化処理されたシリカ粒子は、シリカ粒子の疎水化度が30%以上80%以下であることが好ましく、50%以上75%以下であることがより好ましい。
【0068】
  なお、上記シリカ粒子の疎水化度は、50mlのイオン交換水に0.2質量%のシリカ粒子を投入し、マグネティックスターラーで攪拌しながらビュレットからメタノールを滴下し、シリカ粒子の全量が沈んだ終点における、メタノール-水混合溶液中のメタノール質量分率とする。
【0069】
  シリカ粒子の平均粒子径は、無機粒子のメディアン径の1/2以下であることが好ましく、1/10以下であることがより好ましく、1/20以下であることがさらに好ましく、1/50以下であることが特に好ましい。無機粒子のメディアン径に対するシリカ粒子の平均粒子径の比率が小さいほど、無機粒子の表面にシリカ粒子を吸着させやすくすることができる。特に、シリカ粒子の平均粒子径を無機粒子のメディアン径の1/20以下とすることで、無機粒子の表面積に対するシリカ粒子の比表面積の比率の割合をより大きくして、無機粒子の表面にシリカ粒子をより吸着させやすくすることができる。無機粒子のメディアン径に対するシリカ粒子の平均粒子径の比率の下限値は特に限定されないが、1/500以上であることが好ましい。
【0070】
  シリカ粒子の平均粒子径は0.005μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.01μm以上1.0μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上0.5μm以下であることがさらに好ましい。シリカ粒子の平均粒子径がより小さいほど、沈降した無機粒子の再分散性が高まる。シリカ粒子の平均粒子径をある程度大きくすると、シリカ粒子が付着した無機粒子の比表面積を小さくして、無機粒子によるノズル面の傷つけを生じにくくすることができる。
【0071】
  シリカ粒子の平均粒子径は、メーカー公表値とすることができる。また、粒径測定装置および動的光散乱法を用いて体積平均径として測定することもできる。たとえば、シリカ粒子を含むスラリーを、シリカ粒子の含有量が0.1質量%になるようイオン交換水で希釈し、希釈スラリーにレーザー光を照射し、シリカ無機粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出されたシリカ粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、キュムラント解析法によりシリカ粒子のZ平均粒径を求める。粒径測定装置としては、たとえば、スペクトリス社製ゼータサイザーナノZSを使用することができる。粒径測定装置には、データ解析ソフトが搭載されており、データ解析ソフトが測定データを自動的に解析することでZ平均粒径を算出できる。
【0072】
  シリカ粒子の形状は、球形であることが好ましい。たとえば、シリカ粒子は、長径と短径との比率であるアスペクト比が1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.2以下であることがより好ましい。シリカ粒子の長径および短径は、上述した無機粒子の長径および短径と同様に測定することができる。
【0073】
  シリカ粒子の含有量は、インクの全質量に対して0.01質量%以上5質量%以下とすることができ、0.01質量%以上3質量%以下とすることが好ましく、0.01質量%以上2質量%以下とすることがより好ましく、0.01質量%以上1.5質量%以下とすることがさらに好ましい。シリカ粒子の含有量が0.01質量%以上であると、沈降した無機粒子の再分散性が高まる。シリカ粒子の含有量が5質量%以下であると、無機粒子に吸着しなかったシリカ粒子による射出性の低下や、インクジェットヘッドなどの部材の損傷などが抑制される。
【0074】
  また、無機粒子の含有量に対するシリカ粒子の含有量の比率(シリカ粒子の含有量(質量基準)/無機粒子の含有量(質量基準))は、0.0004以上0.3以下であることが好ましく、0.004以上0.2以下であることがより好ましく、0.01以上0.1以下であることがさらに好ましい。
【0075】
  1-3.その他の成分
  インクは、光重合開始剤、有機顔料、染料、熱硬化剤、界面活性剤、蛍光増白剤、ゲル化剤、および重合禁止剤などのその他の成分をさらに含有してもよい。
【0076】
  光重合開始剤は、インクがラジカル重合性化合物を含むときはラジカル開始剤とすることができ、インクがカチオン重合性化合物を含むときはカチオン開始剤(光酸発生剤)とすることができる。なお、電子線の照射により重合を開始させるときには、インクは光重合開始剤を含まなくてもよい。
【0077】
  ラジカル重合開始剤の例には、水素引き抜き型の光重合開始剤、および分子内開裂型の光重合開始剤などが含まれる。水素引き抜き型の光重合開始剤には、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤、および分子間水素引き抜き型の光重合開始剤などが含まれる。
【0078】
  分子内水素引き抜き型の光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により励起され、分子内で水素引き抜き反応を生成してラジカルを発生させる光重合開始剤である。分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、フェニルグリオキシル酸メチルなどのベンゾイルギ酸メチル系光重合開始剤、オキシフェニル酢酸-2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシ-エトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]エチルエステルとの混合物などのオキシフェニル系光重合開始剤、などが含まれる。これらのうち、重合中の重合性化合物の分子鎖からの水素の引き抜きを生じにくいことから、ベンゾイルギ酸メチル系光重合開始剤などのグリオキシル酸構造を有する化合物であることが好ましい。
【0079】
  分子内水素引き抜き型の光重合開始剤の市販品の例には、Omnirad  MBF、Omnirad  754(いずれもIGM  Resins社製、「Omnirad」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0080】
  分子間水素引き抜き型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線の照射により励起され、他の分子から水素を引き抜いてラジカルを発生させる光重合開始剤である。分子間水素引き抜き型の光重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系などが含まれる。
【0081】
  分子間水素引き抜き型の光重合開始剤の市販品の例には、Omnirad  500(IGM  Resins社製)、Speedcure  ITX(Sartomer社製、「Speedcure」はアルケマ  フランス社の登録商標)などが含まれる。
【0082】
  分子内開裂型の光重合開始剤の例には、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、および2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどのアセトフェノン系の開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、およびベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン系の開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイン)フェニルフォスフィンオキシドなどのアシルフォスフィンオキシド系の開始剤などが含まれる。
【0083】
  分子内開裂型の光重合開始剤の市販品の例には、Omnirad  127、Omnirad  184、Omnirad  651、Omnirad  2959、Omnirad  819、およびEsacure  One(いずれもIGM  Resins社製)、などが含まれる。
【0084】
  光重合開始剤の含有量は、重合性の全質量に対して3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。上記含有量を3質量%以上とすることで、インクの硬化性および密着性をより高めることができる。
【0085】
  有機顔料の例には、画像形成用のインクに用いられる、赤色顔料、黄色顔料、青色顔料、白色顔料などが含まれる。これらの顔料は、公知のものを用いることができる。染料の例には、画像形成用のインクに用いられる、赤色染料、黄色染料、青色染料などが含まれる。これらの染料は、公知のものを用いることができる。
【0086】
  熱硬化剤の例には、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミンなどのアミン化合物、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体などのアミノ樹脂、ブロックイソシアネート化合物、シクロカーボネート化合物、環状(チオ)エーテル化合物、ビスマレイミド、カルボジイミド樹脂、芳香族アミン、アミン化合物とエポキシ化合物との反応物、ならびに、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水-3-クロロフタル酸、無水-4-クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水クロレンデック酸、無水マレイン酸などの酸無水物などが含まれる。
【0087】
  熱硬化剤を使用するときは、硬化触媒を併用してもよい。硬化触媒の例には、イミダゾール誘導体類、グアナミン類、ポリアミン類、これらの有機酸塩、エポキシアダクト、トリアジン誘導体類、三級アミン類、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類などが含まれる。
【0088】
  熱硬化剤の含有量は特に限定されないが、たとえばインクの全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下とすることができる。
【0089】
  なお、インクは、熱硬化剤を含むときには、重合性化合物として、熱硬化剤と反応する官能基であるエポキシ基、オキセタン基およびカルボキシル基などを有する化合物を含むことが好ましい。一方で、重合性化合物が熱硬化剤と反応する官能基を含まない場合においても、熱硬化剤の発熱反応によって、重合性化合物の重合を促進することができる。
【0090】
  界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、および脂肪酸塩類などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類およびポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類などのノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、および第四級アンモニウム塩類などのカチオン性界面活性剤、ならびにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤などが含まれる。
【0091】
  界面活性剤の含有量は特に限定されないが、たとえばインクの全質量に対して0.001質量%以上1.0質量%未満とすることができる。
【0092】
  ゲル化剤は、インクを常温(25℃)ではゲル状態とし、加熱時(たとえば80℃)にはゾル状態とする化合物である。たとえば、ゲル化剤は、インクのゲル化温度より高い温度でインクに含有される液体成分(重合性化合物および有機溶剤など)に溶解し、インクのゲル化温度以下の温度で結晶化する化合物であることが好ましい。ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却したときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度を意味する。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、レオメータ(たとえばAnton  Paar社製、MCR300)で粘度を測定しながら冷却していったときに、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
【0093】
  ゲル化剤の例には、ケトンワックス、エステルワックス、石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、硬化ヒマシ油、変性ワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、ヒドロキシステアリン酸、N-置換脂肪酸アミドおよび特殊脂肪酸アミドを含む脂肪酸アミド、高級アミン、ショ糖脂肪酸のエステル、合成ワックス、ジベンジリデンソルビトール、ダイマー酸ならびにダイマージオールが含まれる。
【0094】
  ゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上3.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0095】
  重合禁止剤の例には、N-オキシル系重合禁止剤、フェノール系重合禁止剤、キノン系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤などが含まれる。重合禁止剤は、インク中に1種のみ含まれてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれてもよい。
【0096】
  N-オキシル系重合禁止剤の例には、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-ピペリジン-N-オキシルなどが含まれる。N-オキシル系重合禁止剤の市販品の例には、Irgastab  UV10(BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標))が含まれる。
【0097】
  フェノール系重合禁止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(ブチル化ヒドロキシトルエン:BHT)、4-メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノールなどが含まれる。
【0098】
  キノン系重合禁止剤の例には、ハイドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、p-tert-ブチルカテコールなどが含まれる。
【0099】
  アミン系重合禁止剤の例には、アルキル化ジフェニルアミン、N,N′-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、フェノチアジンなどが含まれる。
【0100】
  ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤の例には、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅などが含まれる。
【0101】
  重合禁止剤の含有量は特に限定されないが、たとえばインクの全質量に対して0.01質量%以上0.5質量%以下とすることができる。
【0102】
  インクは、水および有機溶剤などの、重合性化合物以外の溶剤を含んでもよい。
【0103】
  有機溶剤の例には、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、ジオール、トリオール、グリコールエーテル、ポリ(グリコール)エーテル、ラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、長鎖アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、グリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、オレイン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、牛脂脂肪酸メチル、米糠脂肪酸メチル、菜種脂肪酸メチル、大豆脂肪酸メチル、パルミチン酸n-ブチル、ステアリン酸n-ブチル、菜種脂肪酸n-ブチル、大豆脂肪酸n-ブチル、米糠脂肪酸i-ブチル、菜種脂肪酸i-ブチル、パルミチン酸オクチル、オレイン酸オクチル、菜種脂肪酸オクチル、植物脂肪酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、およびパルミチン酸イソプロピルアミド、アミン、エーテル、カルボン酸、エステル、オルガノスルフィド、オルガノスルホキシド、スルホン、アルコール誘導体、カルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブ、エーテル誘導体、アミノアルコールおよびケトンなどが含まれる。
【0104】
  なお、シリカ粒子は水に濡れにくい。そのため、水はシリカ粒子を凝集させやすく、無機粒子へのシリカ粒子の吸着を阻害しやすい。無機粒子にシリカ粒子を吸着させやすくし、沈降した無機粒子を再分散させやすくしたり、インクジェットヘッドなどの部材の耐久性の低下を抑制したり、インクの射出性の低下を抑制したりする観点からは、インクは水を実質的に含有しないことが好ましい。
【0105】
  また、疎水化処理をしたシリカ粒子は有機溶剤に過剰に濡れてしまう。そのため、有機溶剤は、シリカ粒子の周囲に強く付着してかえってシリカ粒子を無機粒子に近づけにくくし、無機粒子へのシリカの吸着を阻害することがある。無機粒子にシリカ粒子を吸着させやすくし、沈降した無機粒子を再分散させやすくしたり、インクジェットヘッドなどの部材の耐久性の低下を抑制したり、インクの射出性の低下を抑制したりする観点からは、インクは有機溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。
【0106】
  本明細書において、インクがある成分を実質的に含有しないとは、インクの全質量に対する当該成分の含有量が5質量%以下であることを意味する。上記した観点からは、インクの全質量に対する水の含有量は、0質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。また、インクの全質量に対する有機溶剤の含有量は、0質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0107】
  1-4.インクの物性
  インクの粘度は特に限定されないが、25℃における粘度が5mPa・s以上1000mPa・s以下とすることが好ましく、20mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましい。インクの保管や待機は25℃程度で行われることが多い。そして、25℃における粘度が低いほど、沈降した無機顔料を再分散させやすい。一方で、25℃における粘度を適度に高めることで、無機顔料の沈降を抑制することができる。
【0108】
  組成物の25℃における粘度は、レオメータにより、せん断速度1000/secの条件で求めた値とすることができる。レオメータは、Anton  Paar社製  ストレス制御型レオメータ  PhysicaMCRシリーズを用いることができる。コーンプレートの直径は75mm、コーン角は1.0°とすることができる。
【0109】
  インクは、体積抵抗率が1011Ω・m以上の硬化膜を形成できるものであることが好ましい。硬化膜の表面抵抗率は、ハイレスタUX(日東精工アナリテック社製、MCP-HT800)を用いて測定することができる。
【0110】
  1-5.インクの調製方法
  インクは、上述した各成分を混合して、調製することができる。このとき、無機粒子以外の成分を先に混合し、得られた混合物に対して無機粒子を後から添加してもよい。
【0111】
  また、無機粒子を分散剤により分散させるときは、無機粒子と分散剤と液体成分とを含む分散液をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して混合してもよい。このとき、分散剤などの溶解性を高めるため、無機粒子および分散剤などを加熱しながら混合して分散液を調製することが好ましい。
【0112】
  また、無機粒子を分散剤により分散させるときに、シリカ粒子をあらかじめ添加して分散してもよい。シリカ粒子をインクに濡らす観点と、無機粒子の間に入り込ませる観点から、あらかじめ分散時に添加しておくことが好ましい。
【0113】
  2.硬化物の形成方法
  上述したインクは、インクジェット法により基材に付与し、硬化させて、硬化物を形成するために用いることができる。
【0114】
  基材への付与は、インクジェットヘッドからインクを吐出して基材に着弾させて行えばよい。
【0115】
  インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型などの電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型などの電気-熱変換方式などのいずれでもよい。
【0116】
  これらのインクジェットヘッド、あるいはインクジェットヘッドを有する画像形成装置は、インクジェットヘッドの内部または外部で、インクを循環させる構成を有していてもよい。インクを循環させながら吐出するとき、インクの循環流路中で無機粒子の沈降が生じると、インクの吐出性が低下することがある。これに対し、本実施形態では沈降した無機粒子の再分散性が良好であるため、インクを循環させるときにも良好な吐出性を保つことができる。
【0117】
  基材の種類は、特に限定されないが、例えば、紙、樹脂フィルム、ABS樹脂板、アクリル樹脂板、アルミニウム板、ガラス板、ポリカーボネート板、布などとすることができる。なお、基材の形状は特に限定されず、板状やフィルム状、シート状のほか、様々な三次元形状であってもよい。また、基材の内部に形成した空間に、各種方法により組成物を付与してもよい。
【0118】
  インクの硬化は、活性エネルギー線の照射により重合性化合物を重合および架橋させて行うことができる。活性エネルギー線の例には、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線などが含まれる。これらのうち、紫外線および電子線が好ましい。上記紫外線は、360nm以上410nm以下にピーク波長を有する光であることが好ましい。また、上記紫外線は、LED光源から照射されることが好ましい。LEDは従来の光源(例えばメタルハライドランプなど)と比較して、輻射熱が少ないことから、LEDを用いると、活性エネルギー線の照射時にインクが溶けにくくなり、光沢ムラなどを生じにくくなる。
【0119】
  活性エネルギー線として紫外線を用いるとき、1回の照射あたりの光量は、500mJ/cm2以上4000mJ/cm2以下であることが好ましい。500mJ/cm2以上であると、重合性化合物の硬化性を向上させることができる。4000mJ/cm2以下であると、硬化物の変色を抑制することができる。
【0120】
  厚みが大きい硬化物を形成するときは、インクの付与および成膜を繰り返して行ってもよい。
【0121】
  なお、無機粒子の表面に吸着したシリカ粒子は、硬化物の内部でも、無機粒子の表面に吸着または付着していると考えられる。そのため、本実施形態で形成される硬化物は、無機粒子の表面がシリカ粒子で保護されており、耐擦性が高い。
【0122】
  このようにして硬化物を作製した後、ニス剤、ラミネートフィルム、およびインクなどにより硬化物を被覆する保護膜を形成したり、所望の形状に後加工したりしてもよい。
【実施例】
【0123】
  以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例の記載に限定されない。
【0124】
[実験1]
  1.材料の用意
  以下の材料を用いて、インクジェットインクを調製した。
【0125】
  1-1.重合性化合物
  モノマー1:  ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル  (2官能、非芳香族)
  モノマー2:  1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル  (2官能、非芳香族)
  モノマー3:  トリエチレングリコールジビニルエーテル  (2官能、非芳香族)
  モノマー4:  3,3’-(オキシビスメチレン)ビス(3-エチルオキセタン)  (2官能、非芳香族)
  アクリレート1:  ジプロピレングリコールジアクリレート  (2官能、非芳香族)
  アクリレート2:  ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート  (2官能、非芳香族)
  アクリレート3:  1,6-ヘキサンジオールジアクリレート  (2官能、非芳香族)
  アクリレート4:  イソボルニルアクリレート  (単官能、非芳香族)
  アクリレート5:  環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート  (単官能、非芳香族)
  アクリレート6:  ベンジルアクリレート  (単官能、芳香族)
  アクリレート7:  フェノール4EOアクリレート  (単官能、芳香族)
  アクリレート8:  2-フェノキシエチルアクリレート  (単官能、芳香族)
  アクリレート9:  グリシジルエーテル基含有エポキシアクリレートオリゴマー(新中村化学工業株式会社製、NKオリゴ  EA-1010N)  (多官能、芳香族)
【0126】
  1-2.無機粒子
  無機粒子1:  酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、Candy  Zinc  1000(「Candy  Zinz」は同社の登録商標))
  無機粒子2:  硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、H-LFM)
  無機粒子3:  パール顔料(メルク社製、Iriodin 111  104259(「Iriodin」は同社の登録商標))
  無機粒子4:蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製、ルミノーバ  G-300F(「ルミノーバ」は同社の登録商標)
    無機粒子5:蓄光顔料(根本特殊化学株式会社製、ルミノーバ  G-300FF)
【0127】
  1-3.シリカ粒子
  シリカ1:  信越化学工業株式会社製、QSG-170(平均粒子径:170nm)疎水化度67%
  シリカ2:  信越化学工業株式会社製、QSG-130(平均粒子径:130nm)疎水化度67%
  シリカ3:  信越化学工業株式会社製、QSG-30(平均粒子径:30nm)疎水化度67%
  シリカ4:  信越化学工業株式会社製、QSG-10(平均粒子径:10nm)疎水化度67%
  シリカ5:  株式会社トクヤマ製、レオロシールMT-10(平均粒子径:15nm)(「レオロシール」は同社の登録商標)
  シリカ6:  株式会社トクヤマ製、レオロシールDM-10(平均粒子径:15nm)
  シリカ7:  株式会社トクヤマ製、レオロシールHM-20L(平均粒子径:12nm)
  シリカ8:  株式会社トクヤマ製、レオロシールZD-30ST(平均粒子径:7nm)
  シリカ9:  株式会社トクヤマ製、シルフィルNHM-3N(平均粒子径:150nm、「シルフィル」は同社の登録商標)
  シリカ10:  株式会社トクヤマ製、サンシールSP-01MS(平均粒子径:100nm)(「サンシール」は同社の登録商標)
  シリカ11:  株式会社トクヤマ製、サンシールSP-01P(平均粒子径:100nm)
  シリカ12:  株式会社トクヤマ製、サンシールSP-04MS(平均粒子径:400nm)
  シリカ13:  株式会社トクヤマ製、サンシールSP-03P(平均粒子径:300nm)
  シリカ14:  株式会社トクヤマ製、サンシールSP-10M(平均粒子径:1000nm)
  シリカ15:  株式会社トクヤマ製、サンシールSP-10P(平均粒子径:1000nm)
  シリカ16:  株式会社トクヤマ製、レオロシールQS-09(平均粒子径:20nm)
  シリカ17:  株式会社トクヤマ製、シルフィルNSS-3N(平均粒子径:150nm)
  シリカ18:  株式会社トクヤマ製、サンシールSS-03(平均粒子径:300nm)
  シリカ19:  株式会社アドマテックス製、SC2300-SVJ(平均粒子径:500nm)
  シリカ20:  株式会社アドマテックス製、SC2500-SMJ(平均粒子径:500nm)
  シリカ21:  日産化学株式会社製、PGM-AC-4130Y(平均粒子径:45nm)
  シリカ22:  日産化学株式会社製、MEK-AC-4130Y(平均粒子径:45nm)
【0128】
  なお、シリカ1~シリカ15は、疎水化処理されており、重合性基を含まないシリカ粒子である。シリカ16~シリカ18は、疎水化処理されていないため親水性であり、重合性基を含まないシリカ粒子である。シリカ19は、疎水化処理されており、重合性基であるビニル基を含むシリカ粒子である。シリカ20は、疎水化処理されており、重合性基であるメタクリロイル基を含むシリカ粒子である。シリカ21は、疎水化処理されており、重合性基であるアクリロイル基を含むシリカ粒子である。シリカ22は、疎水化処理されており、重合性基であるアクリロイル基を含むシリカ粒子である。
【0129】
  1-4.光重合開始剤
  開始剤1:  IGM  RESINS  BV社製、Omnirad  MBF
  開始剤2:  IGM  RESINS  BV社製、Omnirad  754
  開始剤3:  IGM  RESINS  BV社製、Omnirad  819
【0130】
  1-5.熱硬化剤
  熱硬化剤1:  ジシアンジアミド
  熱硬化剤2:  LANXESS社製  ブロックイソシアネートBI7982
  熱硬化剤3:  2-エチル-4-メチルイミダゾール
【0131】
  1-6.有機溶剤
  有機溶剤1:  オレイン酸メチル
  有機溶剤2:  メチルエチルケトン
【0132】
  1-7.その他の成分
  重合禁止剤:  BASF社製、Irgastab  UV-10
【0133】
  2.インクジェットインクの調製
  2-1.分散液の調製
  20質量部の無機粒子1と、80質量部のモノマー1と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液1A-1を調製した。
【0134】
  20質量部の無機粒子1と、80質量部のモノマー2と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液1A-2を調製した。
【0135】
  20質量部の無機粒子1と、80質量部のアクリレート1と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ50質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液1A-3を調製した。
【0136】
  分散時間を2時間に変更した以外は分散液1A-3の調整と同様にして、分散液1Bを調整した。
【0137】
  無機粒子を無機粒子2~無機粒子5に変更した以外は分散液1A-3の調製と同様にして、それぞれ、分散液1C~分散液1Fを調整した。
【0138】
  分散時間を8時間に変更した以外は分散液1Fの調整と同様にして、分散液1Gを調整した。
【0139】
  分散時間を10時間に変更した以外は分散液1Fの調整と同様にして、分散液1Hを調整した。
【0140】
  分散時間を16時間に変更した以外は分散液1Fの調整と同様にして、分散液1Iを調整した。
【0141】
  その後、ストークス沈降法を利用した粒度分布分析装置(LUM  Japan株式会社製、LUMiSizer)により、分散液中の無機粒子のメディアン径を測定した。
【0142】
  2-2.インクの調製
  重合性化合物、分散液、シリカ粒子、光重合開始剤、熱硬化剤、有機溶剤、水、および重合禁止剤を表1~表10に記載の割合で混合し、30μmのポリプロピレンプリーツフィルター(株式会社ロキテクノ製)で濾過して、インク1~インク65を得た。表1~表10中の「無機粒子」および「シリカ粒子」の欄の括弧中に記載した数値は、それぞれの粒子の分散液中のメディアン径および平均粒子径である。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
  3.評価
  上記調製したインク1~インク65について、下記の評価を行った。
【0154】
  3-1.沈降復帰性
  20mLのガラス製のサンプル管に10gの試料を加え、25℃にて3日間静置させて、サンプル管の底に固形分を堆積させた。堆積物を手で上下に激しく手振りすることで、堆積物がほぐれる手振り回数を測定した。
  A  1~10回で堆積物がサンプル管の底からほとんど剥がれる。
  B  11~30回で堆積物がサンプル管の底からほとんど剥がれる。
  C  31回までに堆積物サンプル管の底から剥がれない。
【0155】
  3-2.射出曲がり
  コニカミノルタ製の独立駆動型インクジェットヘッド(360npi、吐出量27pL、1024ノズル)に充填し、ストロボ同期型の液滴観測装置で10分間連続吐出試験を実施した。その後、以下の基準にしたがって射出曲がりを評価した。
  (基準)
  A:評価した256ノズル中、256ノズル全てのノズルが正常に吐出されている。
  B:評価した256ノズル中、射出曲がりノズルが1ノズル以上5ノズル未満観測される。
  C:評価した256ノズル中、射出曲がりノズルが5ノズル以上観測される。
【0156】
  3-3.部材耐久性 
  各インクを付着させたメンテナンス布(ザヴィーナCK:KBセーレン社製)をコニカミノルタ社製KM1024iLHEのノズル面に押し当てて、100回摺擦した後、ノズル面の表面を観察した。
  A  傷がほぼ見られない
  B  やや傷がみられる
  C  大きな傷がみられる
【0157】
  3-4.黄変
  インク1~インク65を160mm×160mmの厚さ2mmのABS板の基材に付与し、UVLED硬化ランプ(Phoseon社製FireJet  FJ100)を用いて波長365nm、照度2W/cm2、光量2000mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させて、300ミクロン膜厚の各硬化物を作成した。得られた硬化物を60℃恒温槽に5日間静置した後の硬化物の様子を下記のように観察した。
  A  試験前と比べて、試験後も変化がほぼみられない
  B  試験前と比べて、硬化膜に色の変化がややみられる
【0158】
  3-5.耐候性
  インク1~インク65を160mm×160mmの厚さ2mmのABS板の基材に付与し、UVLED硬化ランプ(Phoseon社製FireJet  FJ100)を用いて波長365nm、照度2W/cm2、光量2000mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させて、300ミクロン膜厚の各硬化物を作成した。JIS  B  7753:2007に準拠した耐候性試験を、各硬化物に行った。具体的には、それぞれの硬化物を有する基材に対して、サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機(スガ試験機株式会社製、サンシャインウェザーメーターS80)により、300nm以上700nm以下の波長範囲における放射照度を255W/m2とした光の102分間の照射と、18分間の水の噴霧とを、78時間連続して実施した。
  〇  試験前と比べて、試験後も硬化膜に色の変化がほぼみられない
  △  試験前と比べて、試験後に硬化膜の色の変化がややみられる
【0159】
  それぞれのインクの評価結果を表11~表20に示す。表11~表20中の「シリカ径/無機粒子径」の欄に記載した数値は、それぞれのインクに使用した前記無機粒子のメディアン径に対する、シリカ粒子の平均粒子径の割合であり、「A」は1/20以下、「B」は1/20より大きく1/1未満、「C」は1/1以上であることを表す。
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
  表1~表20の結果から明らかなように、重合性化合物と、無機粒子と、疎水化処理されており、かつ重合性基を有さないシリカ粒子とを有し、シリカ粒子の平均粒子径は、無機粒子のメディアン径よりも小さく、シリカ粒子の質量基準の含有量は、無機粒子の質量基準の含有量よりも少ない、活性エネルギー線硬化型のインクジェットインクは、沈降した無機粒子の再分散性に優れていた。また、上記インクジェットインクは、無機顔料を含むが、インクジェットヘッドなどの部材の耐久性の低下や、インクの射出性の低下などが生じにくかった。
【0171】
[実験2]
  無機粒子のD50およびD90による沈降復帰性の違いを確認するため、下記の実験を行った。なお、以下の記載では、実験1と共通する内容については説明を省略し、実験1との相違点について説明を記載する。また、使用した材料およびその略称は実験1と同じなので、説明は省略する。
【0172】
  1.インクジェットインクの調製
  1-1.分散液の調製
  50質量部の無機粒子4と、50質量部のアクリレート1と、を平均粒径が0.3mmのジルコニアビーズ100質量部と共にポリプロピレン製容器に入れ、ペイントシェイカーを用いて、30分間分散処理を行い、ジルコニアビーズを取り除いて分散液2Aを調製した。
【0173】
  無機粒子を無機粒子5に変更した以外は分散液2Aの調整と同様にして、分散液2Bを調整した。
【0174】
  分散時間を8時間に変更した以外は分散液2Bの調整と同様にして、分散液2Cを調整した。
【0175】
  1-2.インクの調製
  重合性化合物、分散液、シリカ粒子、光重合開始剤、熱硬化剤、有機溶剤、水、および重合禁止剤を表21に記載の割合で混合し、30μmのポリプロピレンプリーツフィルター(株式会社ロキテクノ製)で濾過して、インク66~インク73を得た。表21中の「無機粒子」および「シリカ粒子」の欄の括弧中に記載した数値は、それぞれの粒子の分散液中のメディアン径および平均粒子径である。
【0176】
  また、インク66~インク73をジプロピレングリコールジアクリレートで希釈し、粒度分布分析装置(LUMiSizer、LUM  Japan株式会社製)を用いて、各インクに含まれる無機粒子のD50およびD90を測定した。測定されたD50、D90およびD50/D90も、表21に示す。
【0177】
【0178】
  インク66~インク73について、実験1と同様の評価を行った。結果を表22に示す。
【0179】
【0180】
  表21および表22の結果から明らかなように、無機粒子のD90がより大きいほど、無機粒子の沈降復帰性が高くなった。また、無機粒子のD50/D90がより小さいほど、硬化物の耐候性が高くなった
【産業上の利用可能性】
【0181】
  本発明によれば、無機粒子を含むインクジェットインクの使用をより容易にすることができる。そのため、本発明は、インクジェットインクを適用できる用途をさらに広げ、当分野のさらなる発展に寄与すると期待される。