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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】二次電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20250909BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20250909BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20250909BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/533
H01M10/0587
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023551844
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2022036431
(87)【国際公開番号】W WO2023054582
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2021162795
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】五木田 泰男
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/177149(WO,A1)
【文献】特開2002-289251(JP,A)
【文献】国際公開第2020/199248(WO,A1)
【文献】特開2010-061877(JP,A)
【文献】特開2022-025413(JP,A)
【文献】特開2009-016188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/50-598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置されたセパレータと、から構成される電極構成層が巻回されて成る電極巻回体を有して成り、
前記電極巻回体は、巻回軸に沿って中央に延在する中央空洞を有して成り、
前記電極巻回体の端面において、前記正極および前記負極のいずれか一方の電極は、他方の電極よりも集電体が外側に延在する集電体延在部を備え、
前記中央空洞の近傍の前記集電体延在部は前記中央空洞に向かって折り返すように屈曲しており、前記電極構成層が前記端面から前記電極巻回体の内部側へとずれており、
前記集電体延在部は、前記端面にて、巻回軸方向に対して垂直な平面を成すように屈曲しており、
前記中央空洞に向かって折り返すように屈曲した前記集電体延在部の先端と、前記他方の電極とが、離隔している、二次電池。
【請求項2】
前記電極巻回体の最内周に配置される電極が、前記他方の電極である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
断面視で、前記中央空洞の近傍における前記端面と前記他方の電極との間の距離は、前記電極巻回体のより外周側における前記距離よりも相対的に長い、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記距離は、前記電極巻回体の内周側から外周側に向かって漸次減じられる、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
断面視で、前記電極構成層の端輪郭は、前記端面に対して前記内部側へと傾斜している、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記中央空洞の近傍の前記端輪郭と、より外周側の前記端輪郭とは、互いに異なる傾斜角を有する、請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータから構成される電極構成層を巻回し、中央空洞を残しつつ電極巻回体を形成する工程と、
前記電極巻回体の端面を整形する工程と、を含んで成り、
前記電極巻回体を形成する工程は、
前記端面において、前記正極および前記負極のいずれか一方の電極の集電体延在部が他方の電極よりも外側に延在する状態で巻回することと、
前記中央空洞の近傍において、前記電極構成層が前記端面から前記電極巻回体の内部側へとずれるように巻回することと、を含んで成り、
前記整形する工程は、前記集電体延在部が、前記端面にて、巻回軸方向に対して垂直な平面を成し、前記集電体延在部の先端と前記他方の電極とが離隔するように、前記中央空洞の近傍の前記集電体延在部を前記中央空洞に向かって折り返すように屈曲させることを含んで成る、二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記電極構成層の前記ずれによって、前記電極構成層の端輪郭を前記内部側へと傾斜させる、請求項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記ずれが、前記内部側から前記端面に向かって前記電極構成層をらせん状に巻回させることに起因するずれである、請求項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記整形する工程が、前記集電体延在部を外側から押圧し、巻回軸方向に対して垂直な平面を形成することを含んで成る、請求項に記載の二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池およびその製造方法に関する。特に、正極、負極およびセパレータを含む電極構成層から成る電極組立体を備えた二次電池、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電および放電の繰返しが可能であり、様々な用途に用いられている。例えば、携帯電話、スマートフォンおよびノートパソコンなどのモバイル機器に二次電池が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-519689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、従前の二次電池に克服すべき課題があることに気づき、そのための対策をとる必要性を見出した。具体的には、以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0005】
特許文献1は、電極巻回体において、極板の端部の箔状体に集電体が溶接された二次電池を開示している。かかる二次電池では、箔状体に対して高周波振動による整形処理が施され、整形された箔状体に集電体が溶接される。整形処理に際して高周波振動を用いることによって、極板の箔状体は軟化され、箔状体同士が互いに絡み合うように整形される。
【0006】
このような整形処理につき、本願発明者らは、高周波振動によって圧縮された箔状体が電極巻回体に不都合な現象をもたらし得ることを見出した。具体的には、箔状体の圧縮に際して、電極巻回体の中央の空洞に圧縮された箔状体が入り込み、電極同士が接触してショートが発生する虞があることを見出した。
【0007】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示の主たる目的は、短絡防止の点でより好適な構造を有する二次電池、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る二次電池は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置されたセパレータと、から構成される電極構成層が巻回されて成る電極巻回体を有して成り、前記電極巻回体は、巻回軸に沿って中央に延在する中央空洞を有して成り、前記電極巻回体の端面において、前記正極および前記負極のいずれか一方の電極は、他方の電極よりも外側に集電体が延在する集電箔延在部を備え、前記中央空洞の近傍の前記集電箔延在部は前記中央空洞に向かって折り返すように屈曲しており、前記電極構成層が前記端面から前記電極巻回体の内部側へとずれている。
【0009】
また、本開示に係る製造方法は、正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータから構成される電極構成層を巻回し、中央空洞を残しつつ電極巻回体を形成する工程と、前記電極巻回体の端面を整形する工程と、を含んで成り、前記電極巻回体を形成する工程は、前記端面において、前記正極および前記負極のいずれか一方の電極の集電体延在部が他方の電極よりも外側に延在する状態で巻回することと、前記中央空洞の近傍において、前記電極構成層が前記端面から前記電極巻回体の内部側へとずれるように巻回することと、を含んで成り、前記整形する工程は、前記中央空洞の近傍の前記集電箔延在部を折り返すように屈曲させることを含んで成る。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る二次電池は、短絡防止の点でより好適な構造を有する。
【0011】
具体的には、電極巻回体の端面において、正極および負極のいずれか一方の電極は、他方の電極よりも外側に集電体が延在する集電体延在部を備えている。かかる集電体延在部は、電極巻回体の中央に設けられている中央空洞に向かって折り返すように屈曲した形状を有する。中央空洞の近傍に位置する電極構成層は、電極巻回体の端面から内部側へとずれ込むように配置されている。このような構造により、中央空洞の近傍では、屈曲した集電体延在部と電極構成層とが互いに離間され、電極巻回体における短絡をより好適に防止することができる。
【0012】
また、本開示に係る二次電池の製造方法は、電極巻回体の形成工程において、一方の電極の集電体延在部が電極巻回体の端面から延在した状態で、中央空洞の近傍を構成する電極構成層が電極巻回体の内部側へとずれるように巻回する。次いで、整形工程において、集電体延在部を屈曲させて電極巻回体の端面を整形する。上述の工程により、集電体延在部と電極構成層とを互いに離間させ、より好適に短絡を防止できる二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、電極構成層を例示的に示した模式的断面図である。
図2図2は、本開示の二次電池の一例の外観を示す模式的斜視図である。
図3図3は、図2の二次電池において、巻回軸を通るA-A線断面を矢印方向で見た模式的断面図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係る二次電池を構成する電極巻回体を示す模式的斜視図である。
図5図5は、図4の電極巻回体の中央付近のB-B断面を矢印方向で見た模式的部分断面拡大図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る二次電池を構成する電極巻回体の構成部材を説明するための模式図である。
図7図7は、本開示の一実施形態に係る電極巻回体の巻回態様を説明するための模式的斜視図である。
図8図8は、本開示の一実施形態に係る巻回後の電極巻回体を示す模式的斜視図である。
図9図9は、図8の電極巻回体の中央付近のC-C線断面を矢印方向で見た模式的断面図である。
図10図10は、本開示の一実施形態に係る巻回後の電極巻回体の中央付近の模式的部分断面拡大図である。
図11図11は、本開示の一実施形態に係る電極巻回体の構成部材を示す模式図である。
図12図12は、本開示の一実施形態に係る端面整形を説明するための模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本開示の一実施形態に係る二次電池をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本開示の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観または寸法比などは実物と異なり得る。
【0015】
本明細書で直接的または間接的に説明される“上下方向”および“左右方向”は、図中における上下方向および左右方向に相当する。また、本明細書で直接的または間接的に説明される「断面視」は、二次電池を構成する電極巻回体の巻回軸に沿う方向、または巻回軸に対して垂直な方向に沿って二次電池を切り取った仮想的な断面に基づいている。また、本明細書で用いる「平面視」とは、巻回軸の方向に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材もしくは部位または同じ意味内容を示すものとする。
【0016】
また、本明細書でいう「巻回軸に対して垂直」および「略垂直」とは、必ずしも完全な「垂直」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、巻回軸と成す角度が、90°±20°の範囲、例えば90°±10°までの範囲)を含んでいる。
【0017】
また、本明細書でいう「略平行」とは、必ずしも完全な「平行」でなくてよく、それから僅かにずれた態様(例えば、完全な平行から±20°の範囲、例えば±10°までの範囲)を含んでいる。
【0018】
[二次電池の基本構成]
本明細書でいう「二次電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本開示に係る二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば蓄電デバイスなども対象に含まれ得る。
【0019】
図1は、例示的な電極巻回体50の模式的断面図を示している。本開示に係る二次電池は、正極1、負極2およびセパレータ3を含む電極構成層5を備える電極巻回体50を備える。図示されるように、電極巻回体50は、電極構成層5が巻回状に巻かれた巻回構造を有していてよい。つまり、電極巻回体50は、正極1、負極2、および正極1と負極2との間に配置されたセパレータ3を含む帯状または長尺状に比較的長く延在する電極構成層5が、ロール状に巻回している巻回構造を有してよい。本開示に係る二次電池では、このような電極巻回体50が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。
【0020】
正極1は、少なくとも正極材層12および正極集電体11から構成されている(図5参照)。正極1では、正極集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられており、正極材層には、電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極巻回体における正極は、正極集電体の両面に正極材層が設けられているものでもよいし、あるいは、正極集電体の片面のみに正極材層が設けられているものでもよい。正極集電体は、両面または片面の全面に正極材層を有さなければならないというわけではない。例えば、正極集電体の長尺辺側(巻回前)に位置する片側端部または両端部には、後述する“集電体延在部”が供されるべく、両面に正極材層が設けられていない部分を有していてよい。
【0021】
負極2は、少なくとも負極材層22および負極集電体21から構成されている(図5参照)。負極2では、負極集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられており、負極材層には、電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極巻回体における負極は、負極集電体の両面に負極材層が設けられているものでもよいし、あるいは、負極集電体の片面にのみ負極材層が設けられているものでもよい。負極集電体は、両面または片面の全面に負極材層を有さなければならないというわけではない。例えば、負極集電体の長尺辺側(巻回前)に位置する片側端部または両端部には、“集電体延在部”が供されるべく、両面に負極材層が設けられていない部分を有していてよい。
【0022】
正極1および負極2に含まれる電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれる正極活物質」および「負極材層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極1と負極2の間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であってよい。つまり、本開示に係る二次電池は、非水電解質を介してリチウムイオンが正極1と負極2との間で移動して電池の充放電が行われる非水電解質二次電池となっていてよい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本開示に係る二次電池は、いわゆる“リチウムイオン電池”に相当し、正極1および負極2がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する。
【0023】
正極材層の正極活物質は例えば粒状体から構成されるところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極材層に含まれていてよい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質は例えば粒状体から構成されるところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれてよく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層はそれぞれ“正極合材層”および“負極合材層”などと称すこともできる。
【0024】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であってよい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であってよい。つまり、本開示に係る二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として好ましくは含まれていてよい。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものであってよい。このような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0025】
正極材層に含まれ得るバインダーは、特に限定されない。例えば、正極材層のバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロエチレン共重合体およびポリテトラフルオロエチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0026】
正極材層に含まれ得る導電助剤は、特に限定されない。例えば、正極材層の導電助剤としては、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0027】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であってよい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物および/またはリチウム合金などであってよい。
【0028】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(例えば、天然黒鉛および/もしくは人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ならびに/またはダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、および/またはLaなどの金属とリチウムとの2元、3元または、それ以上の合金であってよい。このような酸化物は、例えば、その構造形態としてアモルファスとなっていてよい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。
【0029】
負極材層に含まれ得るバインダーは、特に限定されない。例えば、負極材層のバインダーとしては、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0030】
負極材層に含まれ得る導電助剤は、特に限定されない。例えば、負極材層の導電助剤としては、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラック等のカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブや気相成長炭素繊維等の炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀等の金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極材層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
【0031】
正極および負極に用いられる正極集電体および負極集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。このような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網および/またはエキスパンドメタル等であってよい。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものであってよい。例えば、正極集電体は、アルミニウム箔であってよい。一方、負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレスおよびニッケル等から成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものであってよい。例えば、負極集電体は銅箔であってよい。
【0032】
正極および負極の間に用いられるセパレータは、正負極の接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極との間の電気的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。例えば、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ、または、ポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成される積層体であってもよい。
【0033】
セパレータの表面は、無機粒子コート層や接着層等により覆われていてもよい。セパレータの表面が接着性を有していてもよい。なお、本開示において、セパレータは、その名称によって特に拘泥されるべきでない。例えば、セパレータは、同様の機能を有する固体電解質、ゲル状電解質、絶縁性の無機粒子などであってもよい。
【0034】
本開示の二次電池では、正極、負極、およびセパレータを含む電極構成層から成る電極巻回体が電解質と共に外装体に封入されている。正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有する場合、電解質は有機電解質・有機溶媒などの“非水系”の電解質であってよい。すなわち、電解質が非水電解質となっていてよい。電解質では電極(正極および/または負極)から放出された金属イオンが存在することになり、それゆえ、電解質は電池反応における金属イオンの移動を助力することになる。
【0035】
非水電解質は、溶媒と溶質とを含む電解質である。具体的な非水電解質の溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものであってよい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0036】
鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。あくまでも例示にすぎないが、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられてよく、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物を用いてよい。非水電解質の溶質は、常套の溶質であることができる。具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPFおよび/またはLiBFなどのLi塩が用いられてよい。
【0037】
図2は、本開示の二次電池100の一例の外観を示す模式的斜視図である。電極巻回体を収容する外装体60は、ハードケースであってよく、本体部61および蓋部62などの部材から成ってよい。例えば、本体部61は、外装体60の側面とそれに連続する主面(典型的には、例えば底面または下面)を備えるカップ状の部材であってよい。蓋部62は、かかるカップ状の本体部61に対して蓋をするように組み合わされる(好ましくは、本体部61の内側の中空部を、その外部から遮断するように設けられる)部材であってよい。外装体60が本体部61および蓋部62から構成される場合、本体部61と蓋部62とは、電極巻回体、電解質、および所望により電極端子などが収容された後、密封される。外装体60の密封方法としては、特に限定されず、例えばレーザー照射法などが挙げられる。
【0038】
本体部61および蓋部62を構成する材料としては、二次電池の分野でハードケース型外装体を構成し得るあらゆる材料が使用可能である。そのような材料は、電子の移動が達成され得る導電性材料であってもよいし、または電子の移動が達成され得ない絶縁材料であってもよい。外装体の材料は、電極取り出しの観点からいえば、導電性材料であることが好ましい。
【0039】
導電性材料としては、例えば銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよび/またはステンレス鋼などの導電性材料が挙げられる。絶縁材料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料が挙げられる。
【0040】
導電性および剛性の観点からいえば、本体部および蓋部はともに、ステンレス鋼から構成されていてよい。なお、ステンレス鋼とは、「JIS G 0203 鉄鋼用語」に規定されている通り、クロムまたはクロムとニッケルとを含有させた合金鋼で、一般にはクロム含有量が全体の約10.5%以上の鋼をいう。そのようなステンレス鋼の例示としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼および/または析出硬化系ステンレス鋼が挙げられる。
【0041】
外装体の本体部および蓋部の寸法は、主として電極巻回体の寸法に応じて決定される。例えば、電極巻回体を収容したとき、外装体内での電極巻回体の移動が防止される程度の寸法を外装体が有していてよい。電極巻回体の移動を防止することにより、衝撃などによる電極巻回体の損傷を防止し、二次電池の安定性を向上させることができる。
【0042】
外装体は、ラミネートフィルムから成るパウチなどのフレキシブルケースであってもよい。ラミネートフィルムとしては、少なくとも金属層(例えば、アルミニウムなど)と接着層(例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなど)とが積層される構成であり、付加的に保護層(例えば、ナイロンおよび/またはポリアミドなど)が積層される構成であってもよい。
【0043】
外装体の厚み寸法(すなわち、肉厚寸法)は、特に制限されるわけではないが、10μm以上200μm以下であってよく、例えば50μm以上100μm以下であってよい。外装体の厚み寸法は、任意の10箇所における測定値の平均値が用いられる。
【0044】
二次電池には、一般に電極端子が設けられている。かかる電極端子は、例えば、正極の電極端子と負極の電極端子とが互いに外装体の別の面に設けられてよい。つまり、電極巻回体の巻回軸方向において対向する外装体端部の各々に、正極および負極の電極端子がそれぞれ設けられていてよい。
【0045】
電極端子には、導電率が大きい材料を用いられてよい。電極端子の材質としては、特に制限するわけではないが、銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよびステンレス鋼から成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0046】
電極端子は、特に制限されず、いずれの構成を有していてもよい。例えば、電極端子は、単一の材料から構成されてよく、複数の材料から構成されてもよい。複数の材料から構成される電極端子(以下、「電極端子構造体」とも称する)は、例えばリベット部、内側端子、および/またはガスケット部から成ってよい。
【0047】
リベット部および内側端子は、電子の移動が達成され得る材料から構成されていればよい。例えば、リベット部および内側端子は、それぞれ、銀、金、銅、鉄、錫、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよび/またはステンレス鋼などの導電性材料から構成される。ガスケット部は、絶縁材料から構成されていればよい。例えば、ガスケット部は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料から構成される。
【0048】
電極端子構造体は、特に限定されないが、例えば、外装体の開口部に嵌合して挿通されていてよい。電極端子構造体は、主として電極を外部に導出するための導電性のリベット部、かかるリベット部と外装体との電気的な絶縁を確保しつつ、電解質の漏出を防止するための外側ガスケット部、リベット部と電極巻回体との電気的接続を確保するための内側端子、およびかかる内側端子と外装体との電気的な絶縁を確保しつつ、電解質の漏出を防止するための内側ガスケット部を含んでいてもよい。
【0049】
[本開示の二次電池の特徴]
図2は、本開示の二次電池100の一例の外観を示す模式的斜視図である。また、図4は、本開示の二次電池を構成する電極巻回体50の一例の外観を示す模式的斜視図である。図において、二次電池100および電極巻回体50は略円柱形状を有しているが、必ずしもそれに限定されない。例えば、電極巻回体50は、略楕円柱形状を有していてもよい。つまり、巻回軸に沿う方向から見た電極巻回体50の断面視形状は、特に限定されず、例えば、略円形、略楕円形または略角形などであることができる。本明細書において、略角形とは、当該形状における角や面の精度を問わず、角や隅に面取りや丸みなどを有する形状を包含する。
【0050】
図3は、図2の二次電池において、巻回軸Pを通り、かつA-A線断面を矢印方向で見た模式的断面図である。外装体に収容されている電極巻回体50は、巻回軸に沿って中央に延在する中央空洞55(図5参照)を有して成る。換言すれば、本開示の一実施形態において、電極構成層5(図5参照)は、巻回中心に中空部分が設けられるように巻回されていてよい。中央空洞55は、巻回軸P方向に長い略円筒状の形状であってよい。平面視における中央空洞55の形状は、例えば巻回軸Pを略中心として所定の内径を有する略円形状、または略楕円形状であってよい。図3に示されるように、かかる中央空洞55には、例えば、センターピン90が挿入されていてよい。
【0051】
センターピン90は、巻回軸P方向の両端が開口していてよく、電極巻回体50の一方の端部から他方の端部にまでわたる長さを有していてよい。センターピン90の平面視における断面形状は、特に限定されず、例えば略円形状、略楕円形状、または略C字形状を有していてよい。センターピン90の直径は、巻回軸方向にわたって一定であってもよく、または軸方向の少なくとも一端において先細り形状を有していてもよい。センターピン90の材質としては、特に限定されないものの、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、チタン、およびステンレス鋼から成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0052】
電極巻回体50の巻回中心に挿通されるセンターピン90は、二次電池の安全性の向上に寄与する。具体的には、外部からの衝撃または充放電の繰返しによる電極の膨張に起因する、電極巻回体50の変形を抑制し得る。さらに、二次電池内部においてガスが発生した場合、センターピン90の端部の開口を介してガスを巻回軸方向に排気することで、二次電池の変形および破裂を抑制し得る。
【0053】
図3に示されるように、本開示の二次電池は、電極端子81および外装体60のいずれか一方と電極巻回体50とを電気的に接続する集電板70(71、72)をさらに有して成ってよい。図示されるように、集電板70は、電極巻回体50の端面の少なくとも一部と電気的に接続されてよい。換言すれば、集電板70は、電極巻回体50の端面の少なくとも一部を覆うように、電極巻回体50と互いに組み合わされていてよい。すなわち、電極巻回体50を構成する正極および負極は、電極巻回体50の端面の少なくとも一部に接続される集電板70を介して、電極端子81または外装体60と、それぞれ電気的に接続されてよい。すなわち、正負極の集電板70は、電極端子81および/または外装体60を介して、外部へと電気的に導出されてよい。
【0054】
集電板70は、電子の移動が達成され得る材料から構成されてよい。例えば、集電体70は、銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケル、および/またはステンレス鋼などの導電性材料から構成されていてよい。集電板の形態は特に限定されず、例えば帯状、平板状、または略円板状であってよい。また、図3に示されるように、集電板70は、電極端子81および/または外装体60との接続のための長尺部76を備えてよい。長尺部76は、集電板70と一体部材として構成されてよい。一体部材として構成されることで、二次電池の組立における長尺部76と集電板との接続工程を省略することができる。
【0055】
図4は、本開示の一実施形態に係る二次電池の電極巻回体50の模式的斜視図を示す。図5は、図4の電極巻回体50の中央付近50’における、巻回軸Pを通るB-B線断面を矢印方向で見たときの模式的断面拡大図である。図5に示されるように、本開示の二次電池は、正極1、負極2、および正極1と負極2との間に配置されているセパレータ3から成る電極構成層5を含み、通常は電解質(図示せず)をさらに含む。また、本開示の一実施形態に係る二次電池の電極巻回体50において、正極1および負極2の少なくとも一方の電極は、集電体延在部40を有している。本開示における「集電体延在部」とは、電極において、極材層を有していない集電体が電極の端辺から延在している部分を意味する。換言すれば、「集電体延在部」とは、電極巻回体の端面を構成する端辺のいずれか一方から延在する集電体の露出部分(好ましくは、極材層が設けられていない部分)であってよい。既述したように、本開示の二次電池において、正極および/または負極の集電体は、金属箔であってよい。それゆえ、「集電体延在部」は、「集電体露出部」、または「集電箔延在部」などと称すこともできる。
【0056】
本開示の一実施形態の二次電池は、電極巻回体50の端部において、正極1および負極2のいずれか一方の集電体延在部40を備える。より詳細には、電極巻回体50の端部において、正極1および負極2のいずれか一方の電極は、他方の電極よりも外側に集電体が延在している集電体延在部40を有して成る。ここで、「外側」とは、巻回軸P方向における電極巻回体50の外側を意味する。すなわち、本開示の二次電池は、巻回軸P方向に負極2よりも長く延在している正極集電体延在部41、および正極1よりも長く延在している負極集電体延在部42のいずれか一方を有して成る。また、一実施形態において、電極巻回体50は、正極集電体延在部41および負極集電体延在部42の両方を備えていてもよく、正極集電体延在部41と負極集電体延在部42とは、電極巻回体50において互いに異なる端部にて延在していてもよい。つまり、正極集電体延在部41および負極集電体延在部42は、巻回軸P方向に沿って、互いに対向する方向に延在していてよい。
【0057】
図5に示されるように、巻回軸Pを通る断面視で、集電体延在部40は、少なくとも一部が略直線状であってよい。ここで、「略直線状」とは、直線状に限定されず、図5に示すように、集電体延在部が僅かな角度(180°に近い内角)で屈曲して連続するものを含む。例えば、「略直線状」は、約150°以上、または約160°以上の内角で屈曲して連続するものを含む。図5に示されるように、本開示の一実施形態において、集電体延在部40は略直線状に延在し、端面51の近傍において屈曲していてよい。屈曲した集電体延在部40の少なくとも一部は、電極巻回体の端面51に露出していてよい。換言すれば、電極巻回体の端面51は、屈曲した集電体延在部40の少なくとも一部によって構成されていてよい。すなわち、集電体延在部40の少なくとも一部は、電極巻回体の端面51において、巻回軸Pに対して略垂直な略平面を供するように屈曲していてよい。電極巻回体の端面51に略平面が形成されることで、集電板70(図3参照)と電極巻回体の端面51とがより広い接続面積で接続され得る。ここで、本明細書における「略平面」とは、端的に言えば、巨視的に見て平面状であることを意味する。つまり、物理的に厳密な意味で平らな面ではなく、微視的に見た場合、微小な凹凸が存在する形状、または全体的もしくは部分的に微小な歪みがある場合を包含する。
【0058】
本開示において、「屈曲」は、湾曲および/または折曲を少なくとも包含する。湾曲とは、断面視において湾状(または弓状)に曲がること(すなわち、略曲線的に曲がること)であって、丸みを帯びた曲がりを意味し、撓曲も包含する。折曲は、断面視において鋭角状に、または角張って折れ曲がること(すなわち、略直線的に曲がること)である。本開示の二次電池において、集電体延在部40は、複数の屈曲形状を繰り返す波形状を有してよい。すなわち、巻回軸Pを通る断面視において、集電体延在部40は、屈曲形状に起因して蛇行するように延在していてよい。
【0059】
中央空洞55の近傍に位置する集電体延在部40は、電極巻回体50の巻回中心に向かうように屈曲していてよい。また、中央空洞55の近傍に位置付けられる集電体延在部40は、電極巻回体50の外周側に位置する集電体延在部40よりも曲率が大きくてよい。具体的には、集電体延在部40は、中央空洞55の近傍において、中央空洞55に向かって折り返すように屈曲していてよい。すなわち、中央空洞55の近傍において、かかる集電体延在部40は、電極巻回体の端面51から巻回軸P方向に延び、内周側に向かって曲がった後、電極巻回体50の内部側に向かって曲がる形状を有していてよい。内部側に向かって屈曲している集電体延在部40の端部は、中央空洞55内に位置していてよい。より具体的には、電極巻回体の端面51側に位置する中央空洞55の内側側面(すなわち、内壁面)は、折り返された集電体延在部40によって形成されていてよい。特に、最も中央空洞55に近接している集電体延在部40は、電極巻回体の端面51に向かって凸状を成すように大きく屈曲していてよい。すなわち、中央空洞55に近接している集電体延在部40の先端は、より外周側の集電体延在部40の先端よりも内部側に配置され得る。
【0060】
かかる形状により、集電体延在部40は、電極巻回体の端面51における中央空洞55の開口部分の形状保持を助力し得る。中央空洞55の開口部分は、電極巻回体の端面51において、内側に屈曲した集電体延在部40によって画定され得る。このような屈曲形状は、例えば「折り返し形状」、「略U字(または略V字)形状」、「極大点を有する曲線形状」または「鋭角を成して曲がる形状」などと称すこともできる。折り返すように屈曲した集電体延在部40によって中央空洞55の開口部分が構成されることで、図5に示す断面視にて、開口部分における集電体延在部40の密度はより増加し得る。そのため、外部からの衝撃等による中央空洞55の開口部分の変形がより好適に防止され得る。
【0061】
さらに、断面視にて、正極1、負極2、およびセパレータ3から成る電極構成層5は、中央空洞55の近傍において、巻回軸P方向の一端に向かってずれていてよい。具体的には、中央空洞55の近傍において、電極構成層5は、断面視にて電極巻回体の端面51から内部側へとずれた構造を有していてよい。ここで、本明細書における「ずれた構造」とは、電極構成層5の端辺の位置が、巻回軸P方向において一定ではない構造を意味する。巻回軸Pを通る断面視において、中央空洞55の近傍に位置する電極構成層5の少なくとも一方の端部は、より外周側に位置する電極構成層5の端部よりも電池内部側に配置されていてよい。
【0062】
本明細書における「内部側」とは、巻回軸P方向に沿う電極巻回体50の内側を意味する。例えば、図5に示されるように、電極巻回体50の最内周に位置する電極構成層5は、より外周側に位置する電極構成層5よりも内部側(すなわち、図5における下方向)へとずれて位置づけられていてよい。また、電極巻回体50の巻回軸Pに沿って中央に延在する中央空洞55側とも言える。換言すれば、電極巻回体50の外周側に位置する電極構成層5は、中央空洞55の近傍に位置する電極構成層5よりも端面側(すなわち、図5における上方向)に配置されていてよい。これは、電極巻回体50の最内周に位置する電極構成層5に対して、より外周側に位置する電極構成層5が、端面51へとずれていることを意味する。
【0063】
上述のような電極構成層5の「ずれ」は、中央空洞55に向かって折り返された集電体延在部40の先端と、電極構成層5との間を離間させることができる。具体的には、電極構成層5が電極巻回体50の内部側への「ずれ」を有することにより、断面視にて巻回軸Pに沿って略直線状に延在する集電体延在部40の長さ寸法(すなわち、巻回軸Pに沿う長さ寸法)をより長く確保することが可能となる。そのため、中央空洞55の近傍において、集電体延在部40を備える正負極のいずれか一方の電極と、電極構成層5に含まれる他方の電極との間の距離がより好適に確保され得る。そのため、本開示の二次電池は、電極巻回体における短絡の発生をより好適に防止し得る。
【0064】
ここで、「中央空洞の近傍」とは、平面視において、電極巻回体50の直径に対して、0%以上(0%を含まず)30%以下であってよく、例えば0%以上(0%を含まず)20%以下の値の距離であることができる。なお、上述の範囲は、電極巻回体の大きさ、中央空洞の直径、ならびに/または正負極およびセパレータの厚みなどによって適宜変更され得る。あくまでも一例であるが、「中央空洞の近傍」は、平面視において、中央空洞の外周からの径方向距離が0mm以上(0mmを含まず)約3mm以下、または0mm以上(0mmを含まず)約2mm以下の範囲であってよい。
【0065】
本開示の一実施形態に係る二次電池は、正極および負極のいずれか一方の電極が集電体延在部40を備え、他方の電極は、電極巻回体50の最内周に配置される電極であってよい。すなわち、電極巻回体50のいずれか一方の端面において、集電体延在部40を備える電極と、電極巻回体50の最内周に位置付けられる電極とは、互いに異なる電極であってよい。例えば、図5に示されるように、電極巻回体50の端面51において、正極1が集電体延在部40を備える実施形態では、最内周に位置する電極は負極2であってよい。上述した電極構成層5のずれにより、最内周に位置する電極と集電体延在部40とが離間されるため、異なる電極同士の導通がより好適に防止され得る。
【0066】
さらに、後述するように、電極構成層5の内部側へのずれの程度は、電極巻回体50の最内周において最も大きくなり得る。このような電極巻回体において、最内周に位置付けられる電極と、集電体延在部40を備える電極とが互いに異なる電極であることで、中央空洞55の近傍における正負極間の距離がより長く確保され得る。したがって、最内周部における正極と負極とが好適に離間され、電極巻回体における短絡の発生がより好適に防止され得る。
【0067】
本開示の一実施形態では、巻回軸Pを通る断面視で、電極巻回体の中央空洞55の近傍における、集電体延在部40を備えていない電極の端辺と電極巻回体の端面51との間の距離Lは、電極巻回体の外周側における当該距離L’とは異なる。つまり、正負極のいずれか一方が集電体延在部40を有する端面51において、中央空洞55の近傍における端面51と他方の電極との間の距離は、電極巻回体50の内周側および外周側において、互いに異なる距離となる。より具体的には、正極および負極のうち、中央空洞55の近傍において、集電体延在部40を備えていない電極の端辺と電極巻回体の端面51との間の距離Lは、電極巻回体50のより外周側における当該距離L’よりも相対的に長くてよい。
【0068】
上述したように、本開示において、電極巻回体の端面51は屈曲した集電体延在部40によって形成された略平面であり得る。そのため、図5に示されるように、ここでいう「端面」は、電極巻回体の端面51における屈曲した集電体延在部40の露出部分をつなぐ仮想の直線である「端面レベル」とも解され得る。例えば、図5に示されるように、正極1が集電箔延在部40を有する場合、中央空洞55の近傍における端面レベル51から負極2の端辺までの距離Lは、電極巻回体50の外周側における距離L’より長くてよい。つまり、電極巻回体の端面51(または端面レベル)と、当該端面51側にて集電体延在部40を有していない電極とは、中央空洞55の近傍において、より大きく離間していてよい。既述したように、中央空洞55の近傍に位置付けられる集電体延在部40は、中央空洞55の形状保持の観点から、電極巻回体50の外周側に位置する集電体延在部40よりも大きく屈曲し得る。中央空洞55の近傍において、集電体延在部40を有する電極とは異なる電極が端面51からより離間して配置される構造を有することで、屈曲した集電体延在部40による短絡の発生がより好適に防止され得る。
【0069】
巻回軸Pを通る断面視で、電極巻回体50の最外周側における電極巻回体の端面51から集電体延在部40を有していない電極の端辺までの距離をL’、最内周側における当該距離をLとすると、最内周側の距離Lは、最外周側の距離L’の約1.05倍以上約3倍以下、例えば約1.05倍以上約2倍以下、または約1.05倍以上約1.5倍以下の範囲であってよい。なお、上述の範囲は、集電体延在部の長さおよび/または正負極およびセパレータの厚みなどによって適宜変更され得る。
【0070】
また、本開示の一実施形態において、電極巻回体の端面51から、集電体延在部40を有していない電極までの距離は、電極巻回体50の内周側から外周側に向かって漸次減じられる。換言すれば、集電体延在部40を有していない電極と電極巻回体の端面51との距離は、電極巻回体50の外周側から中央空洞55に向かって漸次長くなっていてよい。このような構造により、中央空洞55の近傍において、正負極のいずれか一方の電極の集電体延在部40の先端と他方の電極とがより好適に離間され得る。
【0071】
さらに、電極巻回体の端面51と電極の端部との距離が漸次的に変化することで、隣接する電極との位置ずれをより小さくすることができる。これにより、正負極がセパレータを介して対向している電極反応面積がより広く確保され得る。また、正極材層が負極材層よりはみ出している部分がより減じられるため、金属リチウムの析出に起因する短絡などの発生もより抑制され得る。以上のことから、外周側から内周側に向かって、端面と電極端部とが徐々に大きく離間する本開示の電極巻回体の構造は、電極巻回体における短絡をより好適に防止できる。
【0072】
本開示の二次電池を構成する電極巻回体50において、上述した電極構成層5は、巻回軸Pを通る断面視で、電極構成層の端輪郭5aが傾斜を有する状態でずれていてよい。ここで、「電極構成層の端輪郭」とは、巻回軸Pを通る断面視において、正極1および負極2がセパレータ3を介して対向している層の端辺が為す輪郭を意味する。つまり、電極構成層の端輪郭5aは、電極巻回体の一方の端面において、正極1および負極2がセパレータ3を介して対向している層の複数の端辺をつなぐ仮想の輪郭線である。図5に示されるように、巻回軸Pを通る断面視で、電極構成層の端輪郭5aは、電極巻回体の端面51に対して、電極巻回体50の内部側へと傾斜していてよい。換言すれば、電極構成層の端輪郭5aが電極巻回体の端面51に対して角度をなして、端面51から漸次的に離間するように、中央空洞55に向かって傾斜していてよい。
【0073】
ここで、「傾斜」とは、端輪郭5aが電極巻回体の端面51に対して成す角度が、絶対値でゼロではない態様を意味する。さらに、端輪郭5aは、内部側に向かって端面から漸次的に離間する形状であれば、傾斜角度は一定でなくてもよい。これは、電極構成層の端輪郭が、最外周から最内周にかけて一様に傾斜した線でなくてよいことを意味する。つまり、端輪郭は、直線状であってよく、屈曲および/もしくは湾曲した曲線形状、ならびに/またはステップ状であってもよい。
【0074】
本開示の一実施形態において、中央空洞55の近傍における電極構成層の端輪郭は、より外周側における端輪郭とは異なる角度で傾斜している。すなわち、中央空洞55の近傍の端輪郭と、より外周側の端輪郭とは、電極巻回体の端面51に対して、互いに異なる傾斜角度を有していてよい。具体的には、電極巻回体の端面51に対して、中央空洞55の近傍に位置する電極構成層の端輪郭が成す傾斜角度は、より外周側における端輪郭よりも大きい傾斜角度であることが好ましい。したがって、本開示の一実施形態において、電極構成層5の内部側へのずれの程度は、中央空洞55の近傍において最も大きくなり得る。
【0075】
既述したように、中央空洞55の近傍に位置付けられる集電体延在部40は、中央空洞55の形状保持の観点から、電極巻回体50の外周側に位置する集電体延在部40よりも大きく屈曲していてよい。この場合、中央空洞55の近傍に位置する集電体延在部40の先端は、電極巻回体50のより内部側に配置され得るため、電極構成層5と十分に離間させる必要がある。上述のように、中央空洞55の近傍において電極構成層5がより傾斜した端輪郭5aを有することで、中央空洞の近傍における屈曲した集電体延在部40の先端と電極構成層5との間をより好適に離間することができる。
【0076】
さらに、端輪郭5aは、中央空洞55の近傍において、電極巻回体の端面51に対して内部側に向かって傾斜を有していてよい。例えば、電極構成層5は、中央空洞55の近傍においてのみ傾斜を有し、より外周側においては端面51と略平行であるように配置されていてよい。電極構成層の端輪郭5aの傾斜を端面51の一部のみとすることで、正負極がセパレータ3を介して互いに対向している面積をより多く確保することができる。したがって、電極構成層5の電極反応面積がより広く確保され、二次電池の充放電容量がより向上され得る。すなわち、中央空洞55の近傍において電極構成層の端輪郭5aが傾斜を有することで、二次電池の性能をより向上させつつ、電極巻回体における短絡の発生をより好適に防止することが可能となり得る。
【0077】
[本開示に係る二次電池の製造方法]
次に、本開示の二次電池の製造方法について、図6図11を参照しながら説明する。なお、以下に説明する方法は一例にすぎず、本開示の実施形態に係る二次電池の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0078】
本開示に係る二次電池は、以下の工程を含む製造方法によって製造することができる。つまり、本開示に係る二次電池の製造方法は、正極、負極およびそれらの間に配置されたセパレータから構成する電極構成層を巻回し、巻回軸に沿って中央空洞を残しつつ電極巻回体を形成する工程(電極巻回体の形成工程)、集電体延在部を有する電極巻回体の端部を整形する工程(端面の整形工程)、ならびに電極巻回体を外装体に収容させつつ、外装体内に電解質を注入する工程(収容工程)を含む。
【0079】
(電極巻回体の形成工程)
図6は、本開示の一実施形態に係る二次電池を構成する電極巻回体の構成部材を説明するための模式図である。また、図7は、本開示の一実施形態に係る電極巻回体50の巻回態様を説明するための模式的斜視図である。本工程においては、矩形状を有する正極1、負極2およびセパレータ3を所定の順序で互いに重なるように巻回することで、電極巻回体50を得る。以下に、本開示の一実施形態に係る電極巻回体の形成工程について説明する。
【0080】
本工程において、まずは、正極1、負極2、および2枚のセパレータ3を所定の順序で配置する。図6に示すように、正極1または負極2は、長尺辺側(巻回前)に位置するいずれか一方の端辺において集電体が露出している正極集電体延在部41または負極集電体延在部42を有する。その際、正極1と負極2との間にセパレータ3を重ねて、正極1および負極2のいずれか一方の電極の集電体延在部40が他方の電極よりも外側に延在する状態で配置する。つまり、正極材層と負極材層とは、セパレータ3を介して対向するように互いに重ねられ、電極構成層の長尺辺側(巻回前)のいずれか一方の端辺にて正極集電体延在部41が延在し、他方の端辺にて負極集電体延在部42が延在している状態で配置される。
【0081】
集電体延在部の巻回軸方向の長さ寸法w1(図6参照)は、所望の電極巻回体が得られる限り特に制限されない。例えば、集電体延在部の巻回軸方向の長さ寸法w1(特に、巻回前または後述する端面整形前の長さ寸法)は、通常、約1mm以上約20mm以下であってよく、例えば約2mm以上約15mm以下であってよい。正極集電体延在部41及び負極集電体延在部42は、それぞれ同じ長さ寸法w1を有していてよく、または互いに異なる長さ寸法w1であってもよい。
【0082】
次いで、巻き芯を中心に電極構成層を巻回する。巻回に際しては、中央空洞55を形成する巻き芯の近傍において、集電体延在部を有する端面から電極巻回体の内部へと電極構成層がずれるように巻回する。換言すれば、巻き芯の近傍より外周側の巻回において、集電体延在部を有する端面に向かって、電極構成層の端辺の位置をずらしながら巻回してよい。巻回後、巻き芯を抜くことで、巻回軸Pに沿って電極巻回体を貫通する中央空洞55が形成される。
【0083】
図8は、本開示の一実施形態に係る巻回後の電極巻回体50を示す模式的斜視図である。また、図9は、図8の電極巻回体50の中央付近50’において、巻回軸Pを通るC-C線断面を矢印方向で見た模式的断面拡大図である。図8に示されるように、巻回後の電極巻回体のいずれか一方の端面51は、巻回軸P付近において凹状であって、他方の端面51は巻回軸P付近で凸状をなしていてよい。また、図9に示されるように、正極1、負極2およびセパレータ3の各々は、中央空洞55において、電極巻回体50の内部側に向かってずらされていてよい。このように、電極構成層をずらして巻回することによって、中央空洞55の近傍の電極構成層5が内部側に向かってずれた構造を有する電極巻回体を得ることができる。このずれの形成によって、後述する整形の工程で電極巻回体の内部に大きく折り返される集電体延在部40と電極構成層5とがより離間され、電極巻回体における短絡をより好適に防止することができる。
【0084】
本開示の一実施形態では、集電体延在部40を含む端面51の電極構成層の端輪郭5a(図9参照)が電極巻回体50の内部側へと傾斜するように、電極構成層を巻回する。すなわち、集電体延在部40を有する端面51において、電極巻回体の端面が、内周部分が外周部分より略円錐状にへこむように、電極構成層を漸次ずらしながら巻回してよい。電極構成層の端輪郭5aが傾斜するように電極構成層をずらすことで、隣接する電極との位置ずれを最小限としつつ、短絡の発生をより好適に抑制できる電極巻回体が得られ得る。
【0085】
また、電極構成層のずらしに際して、集電体延在部40を含む電極巻回体の端部において、らせん状に電極構成層を巻回してよい。より詳細には、セパレータ3を介して正極1および負極2を互いに対向させながら、漸次的に巻回軸方向にずれるように電極構成層をらせん状に巻回してよい。つまり、電極構成層の端部を徐々に外側へとずらしつつ、電極構成層を巻回してよい。図10は、電極構成層をらせん状に巻回して得た電極巻回体の、中央付近50’における巻回軸Pを通る部分断面拡大図である。図示されるように、らせん状に巻回した電極巻回体では、正極1と負極2とがセパレータ3を介して対向しながら、電極構成層5がステップ状にずらされている。つまり、らせん状に巻回することで、正極1と負極2とがセパレータ3を介して対向した状態で、漸次的に電極構成層5をずらすことができる。したがって、上述の方法によって、より広い電極反応面積を維持しつつ、短絡をより好適に防止し得る電極巻回体が得られ得る。
【0086】
また、本開示の一実施形態では、正負極の両方が集電体延在部を有し得る。かかる実施形態では、図7に示すように、正極集電体延在部41が負極2およびセパレータ3より外側に延在し、負極集電体延在部42が正極およびセパレータ3より外側に延在する状態で巻回してよい。巻回に際しては、巻き芯の近傍において、巻回軸のいずれか一方の方向に向かって、電極構成層をずらしながら巻回してよい。正負極をより好適に離間させる観点から、電極巻回体50の最内周に配置した電極の集電体延在部を有する端面が中央空洞55の近傍で外側に向かって突出する凸状となり、対向する他方の端面が内部側にへこむ凹状となるように、電極構成層を巻回してよい。
【0087】
使用する正極1、負極2、およびセパレータ3の寸法は、所望の電極巻回体が得られる限り特に限定されない。例えば、セパレータ3の長手方向の長さ寸法は、目的とする二次電池の寸法(特に電極巻回体の巻回数)に応じて、適宜決定されてよい。
【0088】
また、上述の電極巻回体の形成工程において、上述の実施形態とは異なる形状の正極、負極および/またはセパレータを用いることで、電極構成層がずれを有する電極巻回体を得てもよい。ここで、正極、負極および/またはセパレータの「形状」とは、非巻回時における電極および/またはセパレータの平面視形状であり、例えば最大面積の面で載置したときの上面視形状のことである。
【0089】
図11は、本開示の一実施形態に係る電極巻回体の構成部材を示す模式的斜視図である。正極1、負極2およびセパレータ3の各々は、長手方向Sの端辺のいずれか一方の少なくとも一部に傾斜を有しており、幅手方向Rの長さ寸法が長手方向Sに向かって漸次大きくなる形状を有していてよい。正負極のいずれか一方の電極は、傾斜を有する端辺に集電体延在部を有する。他方の電極は、傾斜していない端辺に集電体延在部を有してよい。つまり、正極1および負極2の極材層は、幅手方向Rの長さ寸法が長手方向Sで漸次大きくなる形状を有していてよい。
【0090】
巻回に際して、正極1、負極2およびセパレータ3の幅手方向Rの長さ寸法が相対的に短い端部から巻回を開始する。すなわち、電極巻回体の一方の端部において、正極1および負極2の電極の巻回軸方向の長さ寸法は、巻回方向に漸次大きくなる。したがって、得られる電極巻回体は、電極巻回体のいずれか一方の端面において、正極1および負極2の極材層がセパレータ3を介して対向している部分が電極巻回体の内側に向かってらせん状にずれた形状を有する。つまり、端辺の少なくとも一部に傾斜を有する構成部材を用いることで、巻回中に電極構成層をずらす操作を実施することなく、所望の電極巻回体を得ることができる。
【0091】
(端面の整形工程)
先の工程によって得られた電極巻回体の端面51(図8参照)において、集電体延在部40の少なくとも一部を屈曲させることで、整形された電極巻回体の端面を得る。電極巻回体50の端面は、屈曲された集電体延在部40が電極巻回体50の外周より外側にはみ出すことのないように、集電体延在部40を折り重ねるように屈曲させてよい。また、後続の工程において集電体との接続をより強固にするため、電極巻回体の端面において、屈曲された集電体延在部40の少なくとも一部が巻回軸に対して垂直な方向に略平面を供するように、端面を整形してよい。屈曲は、例えば集電体延在部を外側から押圧することによって実施してよい。
【0092】
整形に際しては、まず、中央空洞の近傍の集電体延在部を外側から押圧する。中央空洞付近の集電体延在部は、中央空洞の開口部分の形状を保持するため、外周側の集電体延在部の押圧に先立って、別個に押圧してよい。中央空洞の近傍の集電体延在部は、中央空洞に向かって内周側に折りたたむように押圧してよい。次いで、中央空洞の開口部分の形状に沿うように、電極巻回体50の内部側に向かって集電体延在部の端部を屈曲させてよい。すなわち、集電体延在部は、中央空洞55に向かって倒された後、中央空洞55に沿って電極巻回体50の内部側に向かって折り返すように屈曲させてよい(図5参照)。このように中央空洞の近傍の集電体延在部を屈曲させることにより、中央空洞の形状を保持しながら、電極巻回体の端面において略平面を形成できる。
【0093】
次いで、より外周側に位置する集電体延在部を押圧する。図12は、本開示の一実施形態に係る端面整形を説明するための模式的平面図である。図示されるように、集電体延在部40は、平面視で、電極巻回体50の外周側から内周側に向かって渦巻状に押圧されてよい。かかる押圧方法により、集電体延在部は、端面において折り重ねられるように倒され、巻回軸に対して垂直な方向に略平面を供し得る。
【0094】
上述の電極巻回体の形成工程および端面の整形工程によって、図5に示されるように、巻回軸Pを通る断面視で、電極構成層の端輪郭5aが電極巻回体の端面に対して電極巻回体の内部側へと傾斜している電極巻回体50を得ることができる。すなわち、上述の工程によって得られる電極巻回体50では、巻回軸Pを通る断面視にて、中央空洞55の近傍における電極構成層の端輪郭5aが、電極巻回体の端面に対して角度をなして、端面から漸次的に離間している。そのため、中央空洞55の近傍の集電体延在部40は、より外周側の集電体延在部40よりも小さく折り返され得る。したがって、中央空洞の近傍において、折り返すように屈曲した集電体延在部の先端と電極構成層との間をより好適に離間することができ、より好適に短絡を防止可能な電極巻回体を得ることができる。
【0095】
電極巻回体の端面の整形手段は、所望の端面が得られる限り特に限定されない。例えば、電極巻回体の端面に対して、外側から押圧部材を押し当て、電極巻回体および/または押圧部材を巻回軸に対して垂直な方向に移動させることによって、端面が整形されてよい。押圧部材は、所望の電極巻回体の端面が得られる限り、その構造、材質、および個数などは特に限定されない。押圧部材としては、例えば、押圧ローラまたは押圧板などを挙げることができる。
【0096】
(集電板の取付工程)
先の工程で整形された電極巻回体の端面に対して、集電板を電気的に接続する。集電板は、電極巻回体の端面に形成された平面に接合するように取り付けられてよい。一例として、集電板および電極巻回体は、レーザー照射法によって溶接されてよい。集電板側からレーザーを照射することにより、集電板と集電板直下の集電体延在部を溶解し、合金化させることで導通が得られる。
【0097】
(収容工程)
集電板が取り付けられた電極巻回体を外挿体に収容させつつ、集電板を電極端子または外装体に電気的に接続し、外装体内に電解液を注入する。以下、外装体が本体部および蓋部から構成され、蓋部に電極端子を設ける場合の一態様について、例示的に説明する。
【0098】
まず、蓋部、電極端子、および当該蓋部と当該電極端子との隙間を埋めるように設けられた絶縁部材とを接着させる。次いで、集電板から延在する長尺部を、電極端子または外装体に向かって予め仮曲げして形状を整えた後、長尺部を電極端子または外装体に接続させる。次いで、外装体の本体部と蓋部とを接着する。最後に、電解液を外装体の注入口(図示せず)から注入し、注入口を封止プラグ(図示せず)で閉塞すればよい。接着は、二次電池の分野で公知であるあらゆる方法によって達成されてよく、例えば、レーザー照射法を用いてよい。
【0099】
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。本開示はこれに限定されず、本開示の要旨を変更しない範囲において種々の態様が考えられることを、当業者は容易に理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示に係る二次電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本開示の二次電池は、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、ならびに、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などにも本開示を利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 正極
11 正極集電体
12 正極材層
2 負極
21 負極集電体
22 負極材層
3 セパレータ
40 集電体延在部
41 正極集電体延在部
42 負極集電体延在部
5 電極構成層
5a 端輪郭
50 電極巻回体
51 端面
55 中央空洞
60 外装体
61 本体部
62 蓋部
70 集電板
76 長尺部
80 電極端子構造体
81 電極端子
82 ガスケット部
90 センターピン
100 二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12