(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】鉛蓄電池監視装置及び鉛蓄電池監視方法
(51)【国際特許分類】
   H01M  10/48        20060101AFI20250909BHJP        
   G01R  31/00        20060101ALI20250909BHJP        
   G01R  31/389       20190101ALI20250909BHJP        
   G01R  31/392       20190101ALI20250909BHJP        
   H02J   7/00        20060101ALI20250909BHJP        
   G01R  31/379       20190101ALI20250909BHJP        
【FI】
H01M10/48 P 
H01M10/48 301 
G01R31/00 
G01R31/389 
G01R31/392 
H02J7/00 Q 
G01R31/379 
(21)【出願番号】P 2024074458
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2022526875の分割
【原出願日】2021-05-13
【審査請求日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2020093851
 
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野  英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野  登夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤  広和
(72)【発明者】
【氏名】紀平  裕也
(72)【発明者】
【氏名】春木  一夫
(72)【発明者】
【氏名】綿野  伊吹
【審査官】高野  誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192562(JP,A)      
【文献】特開2019-190939(JP,A)      
【文献】特開2019-061872(JP,A)      
【文献】国際公開第2013/069423(WO,A1)    
【文献】国際公開第2013/069328(WO,A1)    
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J      7/00  -  7/12
H02J      7/34  -  7/36
H02J    13/00
H01M    10/42  -10/48
G01R    31/36  -31/396
G01R    31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池に取り付けられて監視データを計測する複数の監視ユニットと、
  前記複数の監視ユニットと順次無線通信接続する管理ユニットと、を備え、
  前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の内部抵抗と温度とを含む監視データを前記管理ユニットが受信する第1監視動作と、
  前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の温度を含む監視データを前記管理ユニットが受信する第2監視動作と、を実行し、
  前記管理ユニットは、
前記監視データに基づく各鉛蓄電池
が正常、注意、又は警告のいずれの状態であるかを
、正常であっても示す遠隔監視画面を作成
し、
            
  前記管理ユニットは、ローカルネットワークを介して接続される端末へ、前記遠隔監視画面を出力する、鉛蓄電池監視装置。
【請求項2】
  前記遠隔監視画面は、各鉛蓄電池
の温度又は内部抵抗を表示する、請求項1に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項3】
  前記遠隔監視画面は、各鉛蓄電池
の温度又は内部抵抗の推移を表示する、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項4】
  前記遠隔監視画面は、各鉛蓄電池の状態として正常であることを表示する、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項5】
  前記管理ユニットは、端末からのリクエストに応じて前記遠隔監視画面を前記端末に表示させる、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項6】
  前記端末は、前記鉛蓄電池の保守員端末である、請求項5に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項7】
  前記複数の監視ユニットはそれぞれ、前記管理ユニットへ監視データを送信後にスリープ状態へ遷移する、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項8】
  前記管理ユニットが受信した監視データは、前記管理ユニットと直接又は間接的に通信接続する他の装置にて保存され、演算処理される、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池監視装置。
【請求項9】
  管理ユニットが、直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池に取り付けられた複数の監視ユニットと順次無線通信接続し、
  前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の内部抵抗と温度とを含む監視データを前記管理ユニットが受信する第1監視動作を実行し、
  前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の温度を含む監視データを前記管理ユニットが受信する第2監視動作を実行し、
  前記管理ユニットは、
前記監視データに基づく各鉛蓄電池
が正常、注意、又は警告のいずれの状態であるかを
、正常であっても示す遠隔監視画面を作成
し、
            
  前記管理ユニットは、ローカルネットワークを介して接続される端末へ、前記遠隔監視画面を出力する、鉛蓄電池監視方法。
【請求項10】
  前記管理ユニットは、前記複数の鉛蓄電池の保守員端末との通信を、前記監視ユニットとの通信媒体と異なる通信媒体を介して接続し、
  前記管理ユニットは、保守員端末からのリクエストに応じて前記遠隔監視画面を前記保守員端末で表示させる、請求項9に記載の鉛蓄電池監視方法。
【請求項11】
  前記保守員端末は、前記管理ユニットが受信した監視データを取得し、演算処理を実行する、請求項10に記載の鉛蓄電池監視方法。
         
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、鉛蓄電池監視装置及び鉛蓄電池監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
  特許文献1は、蓄電システムにおいて、中継盤が、上位の電力制御装置と下位の各蓄電池盤とに通信接続されることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  本発明の一態様は、鉛蓄電池監視装置及び鉛蓄電池監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
  本発明の一態様に係る鉛蓄電池監視装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池に取り付けられて監視データを計測する複数の監視ユニットと、前記複数の監視ユニットと順次無線通信接続する管理ユニットと、を備える。鉛蓄電池監視装置は、前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の内部抵抗と温度とを含む監視データを前記管理ユニットが受信する第1監視動作と、前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の温度を含む監視データ(内部抵抗を含まない)を前記管理ユニットが受信する第2監視動作と、を実行する。
【0006】
  本発明の他の一態様に係る鉛蓄電池監視方法は、管理ユニットが、直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池に取り付けられた複数の監視ユニットと順次無線通信接続し、前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の内部抵抗と温度とを含む監視データを前記管理ユニットが受信する第1監視動作を実行し、前記複数の監視ユニットから順次、各鉛蓄電池の温度を含む監視データ(内部抵抗を含まない)を前記管理ユニットが受信する第2監視動作を実行する。
【発明の効果】
【0007】
  上記態様により、鉛蓄電池の放電を必要とする内部抵抗については計測頻度を抑えつつ、鉛蓄電池の劣化・寿命に大きな影響を及ぼす温度については計測頻度を高めて、鉛蓄電池の状態を高精度に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
            
            【
図2】コントロールユニットの構成を示すブロック図である。
 
            【
図3】コントロールユニットとセンサユニットとの間の通信を示す概略図である。
 
            【
図4】Webブラウザ上の遠隔監視画面を示す図である。
 
            【
図5】コントロールユニットにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
 
            【
図6】センサユニットにおける処理手順の一例を示すフローチャートである。
 
            
            【
図8】第1監視動作と第2監視動作の一例を示す図である。
 
            【
図9】第1監視動作と第2監視動作の他の例を示す図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0009】
  蓄電システムでは、多数の蓄電池が直列及び/又は並列に接続される。数百個の蓄電池で構成される大規模な蓄電システムもある。大規模な蓄電システムにおいて個々の蓄電池を遠隔監視することに対するニーズが高まっている。そのような蓄電池監視の実現のために、蓄電池それぞれに取り付けられた複数の監視ユニットと、それら監視ユニットからデータを取得する管理ユニットとを有線接続すると、ネットワーク敷設コストがかさんでしまう。
  ワイヤリングコスト及び通信コストを低減しながら、蓄電池の遠隔監視を実現できる技術が求められている。
【0010】
  近距離無線通信規格の中では、IoT用途で、Bluetooth Low Energyが注目されている(以下、BLEという)。BLEにより、安価に無線通信を行うことができる。
【0011】
  以下、図面を参照しながら、鉛蓄電池監視装置の実施形態を説明する。
図1に示す鉛蓄電池監視装置は、直列及び/又は並列に接続された複数の鉛蓄電池1のそれぞれに取り付けられる複数のセンサユニット(監視ユニット)20と、複数のセンサユニット20と無線通信接続が可能なコントロールユニット(管理ユニット)10とを備える。
 
【0012】
  ここで、複数の鉛蓄電池1が直列に接続されたものをバンクと称し、複数のバンクが並列に接続されたものをドメインと称してもよい。
【0013】
  コントロールユニット10と、複数のセンサユニット20とは、監視対象である複数の鉛蓄電池を格納している蓄電池盤に設置されてもよい。例えば、蓄電池盤の開閉蓋の内側に、コントロールユニット10が取り付けられる。複数のセンサユニット20は、蓄電池盤内に並べられる複数の鉛蓄電池1の上にそれぞれ設置される。
【0014】
  コントロールユニット10は、Webサーバ機能を有し、ネットワーク接続されたコンピュータ(PC)や、タブレット等の端末によるアクセスを受け付けてもよい。
【0015】
  図2は、コントロールユニット10の構成を示すブロック図である。コントロールユニット10は、制御部100、記憶部110、表示部30、操作部40、第1通信部51、第2通信部52、第3通信部53を備える。
 
【0016】
  制御部100は、プロセッサを有しており、記憶部110に記憶してあるプログラムに基づいて第1通信部51、第2通信部52、第3通信部53を制御する。
【0017】
  記憶部110は、不揮発性メモリを用いる。記憶部110は予めプログラムを記憶する。記憶部110は、制御部100によって取得される蓄電池情報を記憶する。
【0018】
  表示部30は、例えば液晶パネルである。操作部40は、液晶パネルに内蔵されるタッチパネルである。操作部40は物理ボタンを含んでもよい。
【0019】
  第1通信部51は、センサユニット20と無線通信接続を実現する無線通信モジュールである。コントロールユニット10は、第1通信部51によって複数のセンサユニット20と通信接続する。第1通信部51は、BLEによって通信を実現する。第2通信部52は、
図1に示した顧客(鉛蓄電池1によるバックアップ電源などの蓄電システムを所有する顧客)のネットワークと接続するための接続モジュールであって、例えば有線LANに対応するネットワークカードである。第3通信部53は、ネットワーク接続された保守員のコンピュータ(PC)や、タブレット端末との通信接続を可能とする通信モジュールである。第3通信部53は例えばUSB(Universal Serial Bus)である。第3通信部53は、無線LANによって保守員のタブレット端末等との通信を実現してもよい。
 
【0020】
  図3は、コントロールユニット10とセンサユニット20との間の通信を示す概略図である。コントロールユニット10から複数のセンサユニット20に同報送信されるメッセージには、特定のセンサユニット20の識別情報が含まれている。
  メッセージは、MACアドレス格納部と、メッセージ本体とを含んでもよい。MACアドレス格納部に、特定のセンサユニット20の識別情報を格納してもよい。
 
【0021】
  コントロールユニット10は、Webサーバ機能を有し、複数の鉛蓄電池1の全体的な状態を表すアイコンを含む画面表示用の画面データを作成する。
【0022】
  図4は、コントロールユニット10にネットワーク接続されたWebブラウザ端末に表示される遠隔監視画面の例を示す。遠隔監視画面は、全体ステータスのアイコンと、蓄電池電圧状態のアイコンと、蓄電池内部抵抗状態のアイコンと、を含む。
 
【0023】
  全体ステータスのアイコンとして、「正常」を示すアイコンのほか、「注意」を示すアイコンや、「警告」を示すアイコンが用意されてもよい。蓄電池電圧状態のアイコンと蓄電池内部抵抗状態のアイコンについても、同様に、「注意」や「警告」を示すアイコンが用意されてもよい。
【0024】
  上述の鉛蓄電池監視装置では、コントロールユニット10から複数のセンサユニット20に同報送信されるメッセージに、特定のセンサユニット20の識別情報を含め、その識別情報を用いて、コントロールユニット10と当該特定のセンサユニット20との間の通信を確立する。
  そのため、複数のバンクを含むドメインの形態の蓄電池群を持つ蓄電システムのように、数百個の鉛蓄電池1に付随する数百個のセンサユニット20が設けられる場合でも、それらセンサユニット20から順次、コントロールユニット10で監視データを確実に取得できる。
【0025】
  鉛蓄電池監視装置では、センサユニット20と、コントロールユニット10とが、同一の蓄電池盤に設置される。監視装置を備えていない既設の蓄電池盤にも、比較的容易に、この鉛蓄電池監視装置を取り付ける(後付けする)ことが可能である。
【0026】
  センサユニット20は、当該センサユニット20が接続されている鉛蓄電池1の電圧、内部抵抗、及び温度、の監視データを、コントロールユニット10に無線送信する。そのため、鉛蓄電池1の健康状態(SOH)を監視できる。
  後述するように、各センサユニット20は、当該センサユニットが取り付けられた鉛蓄電池1の温度を、内部抵抗よりも高い頻度で計測する。各センサユニット20は、鉛蓄電池1の内部抵抗と温度とを計測してコントロールユニット10に無線送信する第1監視動作と、鉛蓄電池1の温度を計測してコントロールユニット10に無線送信する第2監視動作とを実行する。
【0027】
  コントロールユニット10は、複数の鉛蓄電池1の監視データ(数値データ)について、閾値との比較や、統計処理を行って、全体的な状態を決定してもよい。
  コントロールユニット10にLAN接続する端末のWebブラウザにて、鉛蓄電池1の遠隔監視を行うことができる。複数の鉛蓄電池1の全体的な状態を表すアイコンにより、蓄電システムの状態の把握が容易になる。
【0028】
  図5は、コントロールユニット10における処理手順の一例を示すフローチャートである。コントロールユニット10は、所定のタイミングで、バンク単位で以下の処理を実行する。コントロールユニット10は、全てのバンクについて順に処理を実行する。コントロールユニット10は、内蔵するメモリに、以下の処理を実行するタイミング、接続対象のセンサユニット20の識別情報を記憶している。
 
【0029】
  コントロールユニット10は、センサユニット20の識別情報を1つ選択する(ステップS201)。コントロールユニット10は、選択した識別情報を含む接続リクエストメッセージをBLEによって送信し(ステップS202)、選択した識別情報のセンサユニット20との通信接続(ペアリング)が確立したか否かを判断する(ステップS203)。
【0030】
  ステップS203において通信接続が確立したと判断した場合(S203:YES)、コントロールユニット10は、計測リクエストを、通信接続しているセンサユニット20へ送信し(ステップS204)、計測リクエストに応じて計測して得られる監視データを受信できたか否か判断する(ステップS205)。
【0031】
  監視データを受信できたと判断された場合(S205:YES)、コントロールユニット10は、スリープ指示を、通信接続しているセンサユニット20へ送信し(ステップS206)、通信接続を切断し(ステップS207)、処理を次のステップS208へ進める。
【0032】
  コントロールユニット10は、対象バンクに含まれる全てのセンサユニット20の識別情報を選択したか否かを判断する(ステップS208)。全て選択していないと判断された場合(S208:NO)、コントロールユニット10は、処理をステップS201へ戻し、次のセンサユニット20の識別情報を選択する。
【0033】
  全て選択したと判断された場合(S208:YES)、コントロールユニット10は、バンクに対する処理を終了する。
【0034】
  ステップS203にて通信接続が確立していないと判断された場合(S203:NO)、コントロールユニット10は、処理をステップS203へ戻して待機する。コントロールユニット10は、所定待機時間で所定回数試行し、通信確立ができなかった場合、処理をステップS207へ進める。
【0035】
  ステップS205で受信できないと判断された場合(S205:NO)、コントロールユニット10は、処理をステップS205へ戻して待機する。
コントロールユニット10は、所定待機時間で所定回数試行し、データを受信できなかった場合、処理をステップS207へ進める。
【0036】
  図6は、センサユニット20における処理手順の一例(第1監視動作)を示すフローチャートである。センサユニット20は、例えば2秒又は3秒毎と間欠的に、スリープ状態からBLEの通信デバイスを起動させ(ステップS301)、自身への接続リクエストを受信できたか否かを判断する(ステップS302)。
 
【0037】
  接続リクエストを受信できなかったと判断された場合(S302:NO)、センサユニット20は、再度スリープ状態へ遷移し(ステップS303)、処理を終了する。
【0038】
  ステップS302で接続リクエストを受信できたと判断された場合(S302:YES)、センサユニット20は全体を起動し(ステップS304)、計測リクエストを受信したか否かを判断する(ステップS305)。計測リクエストを受信したと判断された場合(S305:YES)、センサユニット20は、自装置が取り付けられている鉛蓄電池における電圧、内部抵抗、及び、温度の監視データを計測する(ステップS306)。センサユニット20は、計測によって得られた監視データを、計測リクエストに対する応答としてコントロールユニット10へ送信する(ステップS307)。
【0039】
  センサユニット20は、スリープ指示を受信したか否かを判断し(ステップS308)、受信したと判断した場合、スリープ状態へ遷移し(ステップS303)、処理を終了する。
【0040】
  センサユニット20は、ステップS305で計測リクエストを受信できなかったと判断された場合(S305:NO)、処理をステップS305へ戻して待機する。センサユニット20は、所定待機時間で所定回数試行し、計測リクエストを受信できなかった場合、処理をステップS303へ進める。
【0041】
  センサユニット20は、ステップS308でスリープ指示を受信できなかったと判断された場合(S308:NO)、処理をステップS308へ戻して待機する。センサユニット20は、所定待機時間で所定回数試行し、スリープ指示を受信できなかった場合、処理をステップS303へ進める。
【0042】
  まとめると、
図5及び
図6に示した鉛蓄電池監視装置は、以下の動作を実行している。
  コントロールユニット10は、予め記憶してある複数のセンサユニット20の識別情報を順次選択し、選択したセンサユニット20との間の通信を確立すべく、選択したセンサユニット20の識別情報を含む接続リクエストメッセージを複数のセンサユニット20へ送信し、通信が確立されたセンサユニット20に、監視データの計測リクエストを送信する。
  複数のセンサユニット20はそれぞれ、間欠的に、スリープ状態からコントロールユニット10との無線通信のために起動して自機の識別情報を含む接続リクエストメッセージを受信したか否かを判断し、前記接続リクエストメッセージを受信しない場合には、スリープ状態へ遷移し、接続リクエストメッセージを受信した場合には、前記計測リクエストの受信に応じて当該センサユニット20が接続されている鉛蓄電池の監視データを計測し、計測した監視データをコントロールユニット10に無線送信してから、スリープ状態へ遷移する。コントロールユニット10よりスリープ指示を受信するか、又はコントロールユニット10との通信接続が切断されると、センサユニット20はスリープ状態へ遷移する。
 
【0043】
  図7は、第1監視動作の際の通信手順を示す概略図である。第1監視動作は、例えば1日に1回行われる。コントロールユニット10が
図5のフローチャートに示した手順を実行し、センサユニット20がそれに応じて
図6のフローチャートに示した手順を実行することによるセンサユニット20における起動時間が示されている。
図7に示すように、センサユニット20は、BLEの通信デバイスで接続リクエストを受信できたか否かを間欠的に判断し、受信できたときのみ当該センサユニットが取り付けられている鉛蓄電池1の監視データ(電圧、内部抵抗、温度)を計測し、計測した監視データをコントロールユニット10に無線送信している。コントロールユニット10が、順次複数のセンサユニット20との間で第1監視動作を行う間、後述する第2監視動作は行わない。
 
【0044】
  上述のように、鉛蓄電池監視装置は、例えば1日に1回、第1監視動作を実行し、各鉛蓄電池1から電圧、内部抵抗、温度を取得する。代替的に、第1監視動作において、各鉛蓄電池1から内部抵抗と温度とを取得してもよい。これら監視データの中で、特に温度は、鉛蓄電池1の劣化・寿命に大きな影響を及ぼす。
【0045】
  鉛蓄電池1の温度は、環境温度などの影響を受けて、1日の間で変動することが多い。1日に1回計測された温度に基づいて各鉛蓄電池1の劣化を推定するよりも、1日に複数回計測した温度から1日の平均温度を求め、平均温度に基づいて各鉛蓄電池1の劣化を推定するほうが、推定精度が高まると期待される。
【0046】
  他方、内部抵抗の計測には、各鉛蓄電池1から微弱な放電を行う必要があり、1日に複数回、第1監視動作を実行して温度とともに内部抵抗を計測すると、各鉛蓄電池1は、1日に複数回放電することになる。蓄電システムがバックアップ電源として用いられる場合、複数の鉛蓄電池1は電力系統から常に充電(例えば、浮動充電)されているため、内部抵抗計測のために微弱な放電が行われた後、鉛蓄電池1は充電される。微弱とはいえ、放電と充電が行われる(サイクルする)ため、内部抵抗の計測回数を増やすと鉛蓄電池1の劣化が早く進むことが想定される。
【0047】
  図8は、鉛蓄電池監視装置が、各鉛蓄電池1から電圧、内部抵抗、温度を計測し取得する第1監視動作と、各鉛蓄電池1から温度のみを計測し取得する第2監視動作とを実行する様子を示す。
図8では、1日に1回、第1監視動作を実行し、第1監視動作の実行タイミングとは別のタイミングで、1日に3回、第2監視動作を実行している。本実施形態の鉛蓄電池監視装置は、第1監視動作の実行タイミングとは別のタイミングで、第1監視動作より多い回数、第2監視動作を実行している。鉛蓄電池監視装置は、第1監視動作を1回実行した後、第2監視動作を、時間をあけて連続して複数回実行してもよい。例えば鉛蓄電池監視装置は、午前1時から、第1監視動作を1回実行し、それから6時間経過する度に第2監視動作を3回実行する。第1監視動作と第2監視動作の実行順序は、
図8に示す例に限定されない。鉛蓄電池監視装置は、第1監視動作を1回実行した後、第2監視動作を、時間をあけて連続して2回実行してもよいし、時間をあけて連続して4回以上実行してもよい。
 
【0048】
  図9に示すように、鉛蓄電池監視装置は第2監視動作において、電圧と温度とを計測し取得してもよい。つまり、第2監視動作では、内部抵抗以外の鉛蓄電池1の監視データを取得する。
図9の場合より、
図8のように第2監視動作において温度のみを計測する場合のほうが、センサユニット20が早期にスリープ状態に遷移できる。
  
図8及び
図9は、第1監視動作において、電圧、内部抵抗、温度を取得する例を示しているが、代替的に、第1監視動作において、内部抵抗と温度とを取得してもよい。
 
【0049】
  上記構成により、鉛蓄電池1の放電を必要とする内部抵抗については計測頻度を抑えつつ、鉛蓄電池1の劣化・寿命に大きな影響を及ぼす温度については計測頻度を高めて、鉛蓄電池1の状態を高精度に把握することが可能となる。
【0050】
  数百個の鉛蓄電池1で構成される大規模な蓄電システムを監視する場合、コントロールユニット10が、無線通信を介して、各センサユニット20と順次接続して全ての鉛蓄電池1から監視データを取得するまでに、相当の時間を要する。最初の鉛蓄電池1について温度を計測した時点における環境温度は、最後の鉛蓄電池1について温度を計測した時点における環境温度と異なっている可能性がある。1日1回の温度計測を行う場合、高い温度が計測された鉛蓄電池について、劣化の進行が早いと誤判断する可能性がある。これに対し、1日複数回の温度計測を行い、その日における各鉛蓄電池1の平均温度を用いて劣化推定を行うことで、推定精度が高まると期待される。
【0051】
  平均温度を用いた劣化推定は、コントロールユニット10で行ってもよい。代替的に、コントロールユニット10から第3通信部53(
図2参照)を介して保守員の端末に各鉛蓄電池1の平均温度を含む監視データを送信し、保守員の端末で劣化推定を行ってもよい。また、保守員の端末から、ネットワーク接続された遠隔の情報処理装置(遠隔監視サーバなど)に監視データを送信し、その情報処理装置で劣化推定を行ってもよい。
 
【0052】
  各鉛蓄電池1の所定期間(1日)における平均温度を求め、劣化推定に用いる例を説明したが、所定期間は1日には限定されない。平均温度は、コントロールユニット10で計算してもよいし、保守員端末や遠隔の情報処理装置で計算してもよい。
  平均温度を、コントロールユニット10で計算し、平均温度と、毎回の計測値とを、記憶部110(
図2参照)にログデータとして記憶してもよい。こうすることで、平均温度の推移に加え、1日単位(所定期間単位)の温度推移も確認・把握できるようになる。
 
【0053】
  複数のセンサユニット20がそれぞれ、鉛蓄電池1の内部抵抗と温度とを計測してコントロールユニット10に無線送信する第1監視動作と、鉛蓄電池1の温度を計測してコントロールユニット10に無線送信する第2監視動作とを実行する例を説明した。各監視パラメータの計測タイミングは、実施形態の例に限定されない。
  上述したように、内部抵抗の計測には、各鉛蓄電池1から微弱な放電を行う必要がある。複数の鉛蓄電池1が直列に接続されたバンクにおいて、一の鉛蓄電池1の内部抵抗を計測する際に、他の鉛蓄電池1の電圧が変動する(例えば電圧が上昇する)可能性がある。この電圧の変動は、一の鉛蓄電池1の内部抵抗計測のために生じた現象であり、他の鉛蓄電池1の状態が実質的に変動したことを示すものではない。通常この電圧変動は、しばらく時間が経過すれば解消する。
  センサユニット20が、内部抵抗計測により変動した電圧を計測してコントロールユニット10に送信することを避けるために、内部抵抗以外の監視パラメータを先ず計測し、その後、内部抵抗を計測してもよい。すなわち、センサユニット20が、鉛蓄電池1の電圧と温度とを計測してコントロールユニット10に送信した後に、センサユニット20が鉛蓄電池1の内部抵抗を計測してコントロールユニット10に送信してもよい。夫々の鉛蓄電池1の監視データとして、内部抵抗の計測時点よりも多くの計測時点で計測された温度をコントロールユニット10で受信できるかぎり、各監視パラメータの計測タイミングは任意に設定できる。
【符号の説明】
【0054】
  1    鉛蓄電池
  10  コントロールユニット(管理ユニット)
  20  センサユニット(監視ユニット)