(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】射出成形機、及び射出成形の管理装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20250909BHJP
G06F 3/04845 20220101ALI20250909BHJP
【FI】
B29C45/17
G06F3/04845
(21)【出願番号】P 2022061238
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2024-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】上遠野 智祐
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-189936(JP,A)
【文献】特開2016-045883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
G06F 3/04845
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸及び第2軸が表されている、射出成形に関するグラフを表示するように構成されている表示制御部と、
ユーザ
の指として検出された点を第1の方向に移動させる動作を指令
として検知
した結果である第1ジェスチャの入力を受け付けるように構成されている受付部と、を有し、
前記表示制御部は、前記第1ジェスチャ
として受け付けた前記第1の方向が前記第1軸の方向の場合に、前記グラフが示される枠内の表示範囲を前記第1軸の方向に拡大又は縮小し、
前記第1の方向が前記第1軸及び前記第2軸の両方を含む方向の場合に、前記グラフを前記第1軸及び前記第2軸の方向に拡大又は縮小するように構成されている、
射出成形機。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記第1の方向が前記第1軸及び前記第2軸の両方を含む方向の場合に、前記点が移動した前記第1軸の方向の距離に基づいて、前記表示範囲に対する、前記第1軸の方向の拡大率又は縮小率を決定し、前記点が移動した前記第2軸の方向の距離に基づいて、前記表示範囲に対する、前記第2軸の方向の拡大率又は縮小率を決定して、前記表示範囲に対して、前記第1軸の方向及び前記第2軸の方向の各々について拡大又は縮小する、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
第1軸及び第2軸が表されている、射出成形に関するグラフを表示するように構成されている表示制御部と、
ユーザの指として検出された点を第1の方向に移動させる動作を指令として検知した結果である第1ジェスチャの入力を受け付けるように構成されている受付部と、を有し、
前記表示制御部は、前記第1ジェスチャに基づいて、前記グラフが示される枠内の表示範囲を前記第1軸の方向に拡大若しくは縮小、前記第2軸の方向に拡大若しくは縮小、又は、前記第1軸及び前記第2軸の方向に拡大若しくは縮小するように構成され、
前記表示制御部に表示されている前記グラフに表されている前記第1軸又は前記第2軸に前記指が接していることを検知された状態で前記第1ジェスチャの入力を前記受付部が受け付けた場合に、前記表示制御部は、前記指が接していると検知された軸の方向に、前記表示範囲を拡大又は縮小する、
射出成形機。
【請求項4】
前記受付部は、前記第1ジェスチャに応じて、前記枠内で前記表示範囲を拡大した後に、前記第1ジェスチャと異なる第2ジェスチャの入力を受け付けるように構成され、
前記表示制御部は、前記第2ジェスチャに対応する方向に、前記枠内の前記表示範囲を移動させるように構成されている、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の射出成形機。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記枠内の任意の軸方向の最大値及び最小値の少なくとも一つを表す表示欄を、さらに表示し、
前記枠内で表示される前記表示範囲の拡大又は縮小に応じて、前記表示欄に表されている前記最大値及び最小値の少なくとも一つを変更する、
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の射出成形機。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記表示範囲の拡大又は縮小する際、表示装置の表示領域において、所定の座標軸が、前記枠に対して固定して表示するように構成されている、
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の射出成形機。
【請求項7】
第1軸及び第2軸が表されている、射出成形機による射出成形に関するグラフを表示するように構成されている表示制御部と、
ユーザ
の指として検出された点を第1の方向に移動させる動作を指令
として検知
した結果である第1ジェスチャの入力を受け付けるように構成されている受付部と、を有し、
前記表示制御部は、前記第1ジェスチャ
として受け付けた前記第1の方向が前記第1軸の方向の場合に、前記グラフが示される枠内の表示範囲を前記第1軸の方向に拡大又は縮小し、
前記第1の方向が前記第1軸及び前記第2軸の両方を含む方向の場合に前記グラフを前記第1軸及び前記第2軸の方向に拡大又は縮小するように構成されている、
射出成形の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、及び射出成形の管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から射出成形機においては、射出成形中の各種プロセス、又はユーザによる設定内容に関する情報を表示装置に表示する技術が提案されている。
【0003】
近年、射出成形機において操作を容易にするためにジェスチャ入力を可能とするタッチパネルが搭載される傾向にある。当該タッチパネルでは、様々なジェスチャ入力が可能となる。
【0004】
例えば、特許文献1は、成形品の3次元形状を表した画像データを表示する技術が提案されている。当該特許文献1では、ジェスチャの入力を受け付けた場合に、成形品の3次元形状の表示倍率を変更している。
【0005】
ところで、射出成形機においては、成形品の表示に限らず、様々な情報が表示される。例えば、射出成形機において、射出成形中の各種プロセス、又はユーザによる設定内容に関する情報を、所定の画面において波形描画機能を用いて表示する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
波形描画機能を用いて表示されたグラフ等について、ユーザは様々な確認を行う必要がある。表示されたグラフ等について詳細や微妙な変化を把握したい場合には拡大する操作が必要とされる。また、表示されたグラフ等について全体の波形を把握したい場合には縮小する操作が必要とされる。
【0008】
当該所定の画面において、波形描画機能で描画されたグラフ等の拡大又は縮小する操作
として、特許文献1の機能を波形に適用とする場合、グラフや目盛線等を含む画像全体の拡大又は縮小表示が行われることになる。このような画像全体の拡大の場合、拡大に応じてグラフの一部(例えば目盛り線)が表示範囲から外れてしまう可能性がある。ユーザは、グラフを確認するための基準が表示範囲から外れてしまった場合、グラフに示された内容を詳細に把握するのは難しい。
【0009】
本発明の一態様は、グラフが示される枠内で表示範囲の拡大又は縮小することで、ユーザは枠を基準としてグラフの内容を認識できるので、グラフで示される状況の把握が容易になる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る射出成形機は、第1軸及び第2軸が表されている、射出成形に関するグラフを表示するように構成されている表示制御部と、ユーザの指として検出された点を第1の方向に移動させる動作を指令として検知した結果である第1ジェスチャの入力を受け付けるように構成されている受付部と、を有し、前記表示制御部は、前記第1ジェスチャとして受け付けた前記第1の方向が前記第1軸の方向の場合に、前記グラフが示される枠内の表示範囲を前記第1軸の方向に拡大又は縮小し、前記第1の方向が前記第1軸及び前記第2軸の両方を含む方向の場合に、前記グラフを前記第1軸及び前記第2軸の方向に拡大又は縮小するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、容易な操作によってグラフで示される状況の把握が容易になるので、利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る射出成形機の制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の表示制御部が出力する表示画面を例示した図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るタッチパネルに対するジェスチャ操作の入力を受け付けた場合を示した概念図である。
【
図6】
図6は、実施形態の表示制御部が出力する表示画面を例示した図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る受付部が受け付け可能なジェスチャ操作の遷移を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2は、第1の実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0015】
図1~
図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0016】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0017】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0018】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0019】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0020】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0021】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0022】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0023】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0024】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0025】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0026】
なお、トグル機構150の構成は、
図1および
図2に示す構成に限定されない。例えば
図1および
図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0027】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0028】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0029】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0030】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0031】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0032】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(
図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0033】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0034】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0035】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0036】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0037】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0038】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0039】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0040】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0041】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0042】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0043】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0044】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0045】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0046】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0050】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0052】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、シリンダ310内で計量された成形材料を、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(
図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(
図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0066】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0067】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0069】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0070】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0071】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0072】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0073】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0074】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0075】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0076】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0077】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0078】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0079】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0080】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0081】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0082】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0083】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0084】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0085】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0086】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0087】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0088】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0089】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、
図1~
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704と、通信インターフェース705とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。さらに、制御装置700は、通信インターフェース705を用いて、管理装置20(
図3参照)との間で情報の送信、及び受信を行ってもよい。
【0090】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0091】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0092】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0093】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0094】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0095】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0096】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。タッチパネル770は、表示された画面領域に操作を受け付け可能とする。また、タッチパネル770の画面領域には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0097】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0098】
(第1の実施形態)
図3は、一実施形態に係る射出成形機10の制御装置700のCPU701の構成要素を機能ブロックで示す図である。
図3に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。
図3に示すように、制御装置700のCPU701は、受付部712と、表示制御部713と、を備える。また、制御装置700は、記憶媒体702に、情報記憶部711を備える。
【0099】
情報記憶部711は、ユーザにより設定された設定情報、各種センサによる実績値、及び制御装置700による監視結果又は統計値を示した、ログ情報を記憶する。
【0100】
受付部712は、入力インターフェース703を介して、タッチパネル770からのユーザの操作を受け付ける。
【0101】
本実施形態に係る受付部712は、タッチパネル770からのユーザの操作として、ジェスチャ操作を受け付け可能としている。
【0102】
ジェスチャ操作とは、ユーザが行う身体動作の特定の組み合わせを検知して、あらかじめ定義された処理を実行することをいう。
【0103】
本実施形態では、タッチパネル770が、ユーザの指等による動作の組み合わせを検知する例について説明する。しかしながら、本実施形態は、ジェスチャ操作の受け付けをタッチパネル770によるものに制限するものではなく、ユーザの動作を指令として検出可能であればよく、例えば、撮像装置を用いて、ユーザの動作の組み合わせを指令として検出してもよい。さらに、ジェスチャ操作の他の例としては、ユーザの体の動きに制限するものではなく、例えばユーザの視線の動きを指令として検出してもよい。さらには、ジェスチャ操作として、ユーザの音声、又は口の動きを指令として検出してもよい。
【0104】
本実施形態に係る受付部712は、ジェスチャ操作として、ピンチイン、ピンチアウト、及びスワイプを受け付け可能とする。
【0105】
ピンチインとは、例えば、2本の指をタッチパネル770に接触させた後、接触させた状態を維持したまま、2本の指でつまむように間隔を狭くさせる操作をいう。
【0106】
ピンチアウトとは、例えば、2本の指をタッチパネル770に接触させた後、接触させた状態を維持したまま、2本の指でつまんだものを離すように間隔を広くさせる操作をいう。
【0107】
スワイプとは、例えば、指をタッチパネル770に接触させた後、接触させた状態を維持したまま、指をタッチパネル770上で滑らせる操作をいう。
【0108】
なお、本実施形態においては、受付部712が受け付けるジェスチャ操作を、ピンチイン、ピンチアウト、及びスワイプに制限するものではなく、他のジェスチャ操作を受け付けてもよい。
【0109】
表示制御部713は、表示画面等のデータをタッチパネル770に表示する制御を行う。本実施形態に係る表示制御部713は、射出成形機10による成形処理の工程ごとに、当該工程においてユーザが設定した設定情報(パラメータの一例)、又は当該工程で検出された実績値(パラメータの一例)による変化を波形で示した波形データ(グラフの一例)を含む表示画面を、タッチパネル770に出力してもよい。なお、本実施形態は、タッチパネル770に表示画面等を出力する例について説明するが、データの出力先をタッチパネル770に制限するものではない。例えば、表示制御部713は、ネットワークを介して接続された情報処理装置(例えば管理装置20)に表示画面等のデータを出力してもよい。
【0110】
本実施形態においては射出成形機10のタッチパネル770に表示される表示画面に対して操作を行う場合について説明する。しかしながら、本実施形態は、ジェスチャ操作の受け付け及びジェスチャ操作に応じた表示の切り替えを行う装置を、射出成形機10に制限するものではない。例えば、射出成形機10と通信ネットワーク25を介して接続されている管理装置20において、ジェスチャ操作を受け付け可能にすると共に、ジェスチャ操作に応じた表示の切り替えを行ってもよい。
【0111】
管理装置20は、制御装置700の通信インターフェース705から、情報記憶部711に記憶されたログ情報を受信する。これにより、管理装置20は、射出成形機10のタッチパネル770に表示される画面と同様の画面を表示できる。また、管理装置20は、タッチパネル21と接続されている。そして、タッチパネル21からジェスチャ操作の入力を受け付けることができる。管理装置20がジェスチャ操作の入力を受け付けた際の画面の表示は、以下に示す制御装置700の表示と同様として説明を省略する。
【0112】
図4は、本実施形態の表示制御部713が出力する表示画面を例示した図である。
図4に示されるように、表示画面1400では、X軸単位欄1401と、Y軸単位欄1402と、X軸欄1403と、5個のチャネル欄(第1チャネル欄1411~第5チャネル欄1415)と、波形データ欄1420と、が示されている。本実施形態では、チャネル欄とは、表示する項目を選択するための欄とする。
【0113】
図4に示される表示画面では、射出成形機10のショット毎の設定情報、及び各種センサで検出された実績値を表示する。本実施形態の表示画面では、現在のショットの実績値をリアルタイムに表示することもできる。
【0114】
受付部712は、タッチパネル770を介して、上述した欄に対する選択操作又は入力操作を受け付ける。そして、表示制御部713は、受け付けた選択操作又は入力操作に応じて、タッチパネル770に表示する表示画面(例えば、5個のチャネル欄、又は波形データ欄1420)を切り替える。
【0115】
例えば、受付部712は、X軸単位欄1401、Y軸単位欄1402、及びX軸欄1403に対する、タッチパネル770を介した選択操作、又は入力操作を受け付ける。表示制御部713は、受け付けた操作に応じて、表示される波形データ欄1420を切り替える。
【0116】
X軸単位欄1401は、波形データ欄1420のX軸に表示する単位を選択するための欄である。例えば、"時間"や"スクリュ位置"などが選択可能である。Y軸単位欄1402は、波形データ欄1420のY軸に表示する単位を選択するための欄である。Y軸単位欄1402は、例えば、"比率"や"工学単位"などが選択可能である。X軸欄1403は、波形データ欄1420に表示するX軸(例えば時間)の範囲を設定するための欄である。
【0117】
5個のチャネル欄(第1チャネル欄1411~第5チャネル欄1415)は、波形データ欄1420に波形データ(グラフの一例)として表示する項目を選択するための欄である。つまり、本実施形態では、波形データ欄1420に各チャネルに割り当てられた項目に関する波形データを5個表示可能としている。
【0118】
第1チャネル欄1411は、Ch-1に項目を設定するための欄である。同様に、第2チャネル欄1412~第5チャネル欄1415は、Ch-2~Ch-5に項目を設定するための欄とする。
【0119】
第1チャネル欄1411は、項目欄1411Aと、最大値欄1411B(表示欄の一例)と、最小値欄1411C(表示欄の一例)と、を有する。同様に、第2チャネル欄1412~第5チャネル欄1415は、項目欄1412A~1415Aと、最大値欄1412B~1415B(表示欄の一例)と、最小値欄1412C~1415C(表示欄の一例)と、を有する。
【0120】
項目欄1411Aが、タッチパネル770を介して押下された場合に、表示制御部713が、複数の項目が表示されたメニュー画面を出力する。そして、受付部712は、当該メニュー画面から、Ch―1に設定したい項目の選択を受け付ける。なお、項目欄1412A~1415Aについても同様として説明を省略する。Ch―1に設定したい項目とは、例えば、情報記憶部711に記憶されている、ユーザにより設定された設定情報を示す項目、各種センサによる実績値を示す項目、又は制御装置700による監視結果を示す項目とする。なお、本実施形態は、設定可能な項目を、設定情報を示す項目、各種センサによる実績値を示す項目、又は制御装置700による監視結果を示す項目に制限するものではなく、射出成形機10で射出成形することで得られたパラメータに関する項目であればよい。なお、本実施形態では説明を容易にするために、項目欄1411Aに設定される項目を"〇××"とした。
【0121】
最大値欄1411B、及び最小値欄1411Cは、数値を入力可能な欄である。そして、受付部712は、最大値欄1411B、又は最小値欄1411Cに、タッチパネル770を介して設定された数値の入力を受け付ける。なお、最大値欄1412B~1415B、及び最小値欄14112C~1415Cについても同様として説明を省略する。
【0122】
各チャネル欄には、"入"又は"切"を設定可能に表示している。"入"の場合は当該項目の波形データを表示することを示し、"切"の場合は当該項目の波形データを表示しないことを示している。
【0123】
図4に示される例では、項目欄1411Aには、"〇××"が設定され、最大値欄1411Bには、"100.00"が設定され、最小値欄1411Cには、"-100.00"が設定された例とする。
【0124】
図4に示される例では、Ch-2~Ch-5の項目欄1412A~1415Aには特に項目が設定されていない場合について説明する。なお、Ch-2~Ch-5の項目欄1412A~1415Aに項目が設定された場合には、Ch―1と同様に、ユーザからの操作に応じて表示される内容が更新される。
【0125】
波形データ欄1420は、5個のチャネル欄(第1チャネル欄1411~第5チャネル欄1415)の各々に設定されている項目毎の値(実績値の変化、又は設定情報の変化)を波形で示した波形データを表示する。
【0126】
波形データ欄1420の波形データ1421は、第1チャネル欄1411(Ch―1)に設定された項目の検出結果の変化を示している。
【0127】
波形データ1421を表示するための波形データ欄1420の枠内の最大値は最大値欄1411Bに設定された値であり、波形データ1421を表示するための波形データ欄1420の枠内の最小値は最小値欄1411Cされた値とする。
【0128】
このように、本実施形態に係る表示制御部713は、射出成形機10で射出成形することで得られたパラメータを表す波形データ1421(グラフの一例)を、波形データ欄1420に表示する。
【0129】
そして、受付部712は、タッチパネル770によるユーザの動作の検知結果であるジェスチャ操作の入力を受け付ける。
【0130】
図5は、本実施形態に係るタッチパネル770に対するジェスチャ操作の入力を受け付けた場合を示した概念図である。
図5に示される例では、タッチパネル770に、波形データ欄1420が表されている。なお、
図5に示されるタッチパネル770では、説明を容易にするために、波形データ欄1420に表されている波形データ、及び、チャネル欄1411~1415等を省略する。
【0131】
図5に示されるタッチパネル770に係る表示領域1500は、ユーザからジェスチャ操作を受け付け可能な領域となる。
【0132】
まず、受付部712が、ユーザから波形データ欄1420の選択を受け付る。なお、波形データ欄1420の選択は、ジェスチャ操作で行われてもよい。波形データ欄1420を選択するためのジェスチャ操作は、例えば、波形データ欄1420が表されてる表示領域のタッチとする。なお、本実施形態は、波形データ欄1420を選択するための操作をタッチに制限するものではなく、他のジェスチャ操作でもよいし、ジェスチャ操作以外の操作でもよい。
【0133】
そして、受付部712が、ユーザから波形データ欄1420の選択を受け付けた後、波形データ欄1420に対するジェスチャ操作を受け付ける。
図5に示される例では、ジェスチャ操作として、ピンチアウトの操作を受け付けている。
【0134】
図5に示される例では、受付部712は、ジェスチャ操作として、2点1511、1512の2点を検出する。点1511は、ユーザの人差し指が接触した点であり、点1512は、ユーザの親指が接触した点である。
【0135】
その後、受付部712は、点1511から点1513までの移動を受け付けると共に、点1512から点1514までの移動を受け付ける。このように、受付部712は、最初に検知した2点が広がることを検出したので、ピンチアウトのジェスチャ操作が行われたと認識する。
【0136】
本実施形態においては、表示制御部713は、最後に検出した2点1513、1514との間の距離と、最初に検出した2点1511、1512との間の距離と、の間の比率に、所定の定数を乗算することで、拡大率・縮小率を導出する。
【0137】
図5に示される例では、Y軸方向にピンチアウトのジェスチャ操作を受け付けた例とする。Y軸方向にピンチアウトのジェスチャ操作を受け付けた場合に、波形データ欄1420に表示される波形データ(グラフの一例)についてY軸方向のみ拡大してもよいし、Y軸方向及びX軸方向の各々について拡大してもよい。Y軸方向及びX軸方向の各々について拡大する場合、例えば、Y軸方向及びX軸方向の各々について、上述した手法で導出した拡大率を用いてもよい。
【0138】
なお、
図5に示される例では、Y軸方向にピンチアウトのジェスチャ操作を受け付けた例とするが、X軸方向にピンチアウトのジェスチャ操作を受け付けた場合についても同様に、X軸方向のみ拡大してもよいし、X軸方向及びY軸方向の各々について拡大してもよい。さらに、X軸方向及びY軸方向を組み合わせた方向にピンチアウトのジェスチャ操作を受け付けた場合には、Y軸方向及びX軸方向の各々について拡大してもよい。拡大率は、上述した通りの手法で導出するものとして説明を省略する。
【0139】
また、
図5に示される例では、ピンチアウトのジェスチャ操作を受け付けた場合の例であるが、受付部712は、ピンチインのジェスチャ操作も受け付けることもできる。ピンチインのジェスチャ操作を受け付けた場合、波形データ欄1420に表示される波形データ(グラフの一例)を縮小する。縮小率は上述した手法で導出される。なお、ピンチインのジェスチャ操作は、例えば、ピンチアウトのジェスチャ操作に対応する縮小が行われるものであって、X軸方向、Y軸方向、X軸方向とY軸方向の組み合わせのうちいずれであってもよい。
【0140】
表示制御部713は、波形データ欄1420に波形データ(グラフの一例)を表示する際、導出された縮小率又は拡大率に応じて、波形データ(グラフの一例)毎に、波形データ欄1420に表示可能なY軸方向及びX軸方向の最小値及び最大値を算出する。そして、表示制御部713は、Y軸方向及びX軸方向において、算出された最小値及び最大値の範囲内で、波形データ(グラフの一例)毎に再表示を行う。
【0141】
また、本実施形態では、波形データ毎に再表示を行う際に、表示制御部713が、波形データ欄1420に表示されるスケール(目盛り線、及び目盛)の粒度を変更してもよい。
【0142】
図6は、本実施形態の表示制御部713が出力する表示画面を例示した図である。
図6に示される画面例は、受付部712が、
図4に示される波形データ欄1420の選択を受け付けた後に、ピンチアウトによるジェスチャ操作を受け付けた画面例とする。
【0143】
図6に示されるように、表示画面1600は、表示画面1400と比べて、波形データ欄1420に対するピンチアウトの操作に合わせて、X軸欄1603、第1チャネル欄1611、及び波形データ欄1620が変更されている。また、ピンチアウトによるジェスチャ操作を受け付けた場合であっても、表示画面1400に表示されている波形データ欄1420と、表示画面1600に表示されている波形データ欄1620と、の位置座標は同一となる。
【0144】
このように、表示制御部713は、波形データ欄1420内の表示範囲の拡大又は縮小する際、表示装置760の表示領域において、波形データ(グラフの一例)が表示される波形データ欄1620の位置座標を維持するように表示制御を行う。本実施形態に係る、拡大又は縮小の対象となる表示範囲は、少なくとも波形データ欄1620に表されている波形データを含んでいればよく、さらに、スケール(目盛り線、及び波形データ欄1420に示された目盛)を含んでもよい。
【0145】
さらに、表示制御部713は、表示範囲の拡大又は縮小にかかわらず、表示装置760の表示領域において、波形データ欄1620の枠の左辺にX座標軸を固定して表示し、波形データ欄1620の枠の下辺にY座標軸を固定して表示してもよい。また、X座標軸及びY座標軸に目盛り(例えば数値)を表示してもよい(例えば
図7参照)。なお、本実施形態は、所定の座標軸の配置を、左辺及び下辺に制限するものではなく、右辺又は上辺に配置してもよい。さらには波形データ欄1620内に座標軸を配置してもよい。
【0146】
図6に示される表示画面1600は、ピンチアウトのジェスチャ操作に応じてY軸方向及びX軸方向の各々について拡大された例とする。
図6に示される例では、拡大率が2倍の場合について説明する。なお、拡大率は、上述したように、ピンチアウトを行う時の指の拡げ方に応じて変更される。
【0147】
表示制御部713は、ピンチアウト又はピンチアウト(第1ジェスチャの一例)に応じて、波形データ欄1420の枠内で表示範囲の拡大又は縮小する。なお、本実施形態は、表示範囲の拡大又は縮小するジェスチャ操作としてピンチイン又はピンチアウトを用いた例について説明するが、拡大又は縮小するジェスチャ操作を、ピンチイン又はピンチアウトに制限するものではなく、他のジェスチャ操作であってもよい。
【0148】
図6に示されるように、波形データ欄1620の枠内で表示範囲の拡大又は縮小された場合に、表示制御部713は、チャネル欄の各々に設定されている最小値及び最大値、並びに、X軸欄1603に設定されている値を更新する。
【0149】
第1チャネル欄1611においては、最大値欄1611B(表示欄の一例)に"50.00"が設定され、最小値欄1611C(表示欄の一例)に"-50.00"が設定されている。このように、
図4で示した最大値欄1411Bの"100.00"及び最小値欄1411Cに"-100.00"から、拡大率に応じて変更されている。さらに、X軸欄1603も、拡大率に応じて"1"に変更されている。
【0150】
このように、表示制御部713は、波形データ欄1420の枠内に表示される表示範囲の拡大又は縮小する際に、拡大又は縮小される表示範囲に応じて、チャネル欄に表されている最大値及び最小値の少なくとも一つを変更する。これにより、ユーザは、ジェスチャ操作した後に波形データ欄1620に表示される波形データを、具体的な数値として認識できる。
【0151】
また、
図6に示されるように、波形データ欄1420の枠内で表示範囲の拡大した際に、表示制御部713は、細かいスケール(目盛り線、及び目盛り)を表示してもよい(換言すれば、スケール(目盛り線、及び目盛り)の粒度を変更してもよい)。これにより、ユーザは、時間と共に変化する波形データの具体的な数値の認識できる。
【0152】
また、表示制御部713は、情報記憶部711に記憶されたログ情報を参照した上で、変更された最大値及び最小値の間における、実績値又は設定情報等によって生成された、波形データ1621を、波形データ欄1420の枠内に表示する。
【0153】
つまり、本実施形態では、表示制御部713は、波形データ1621を再表示する際に、単なる拡大、縮小ではなく、ログ情報を参照して波形データを再生成する。つまり、拡大する前にはつぶれていた情報が、波形データを拡大表示する際に、詳細な変化として表示される。これにより、ユーザは、拡大表示された波形データを参照することで、具体的な状況を把握できる。
【0154】
また、本実施形態においては、受付部712が、タッチパネル770がピンチアウト又はピンチインの入力を受け付けている最中に、2点間の距離の変化に応じて、表示制御部713が、波形データの拡大又は縮小が(アニメーションのように)連続的に変化するような表示を行ってもよい。これにより、ユーザが所望する拡大率又は縮小率に設定することができるので、視認性を向上させることができる。
【0155】
図7は、本実施形態に係る受付部712が受け付け可能なジェスチャ操作の遷移を示した図である。
図7に示されるように、表示制御部713は、第1波形データ欄1701を表示している。第1波形データ欄1701においては、Y軸方向の最大値yd、最小値yaであって、X軸方向の最大値xd、最小値xaである。
【0156】
そして、第1波形データ欄1701が表示されている間に、受付部712がピンチアウトの操作1711を受け付けた場合に、表示制御部713は、第2波形データ欄1702を表示する。
【0157】
第2波形データ欄1702は、第1波形データ欄1701の表示範囲が拡大された波形データ欄である。Y軸方向の最大値yc(<yd)、最小値yb(>ya)であって、X軸方向の最大値xc(<xd)、最小値xb(>xa)である。
【0158】
そして、第2波形データ欄1702が表示されている間に、受付部712がピンチインの操作1712を受け付けた場合に、表示制御部713は、再び第1波形データ欄1701を表示できる。
【0159】
また、第2波形データ欄1702が表示されている間、受付部712が、スワイプ(第2ジェスチャの一例)を受け付けた場合、スワイプで示された方向に応じて、(表示倍率が変更されることなく)表示範囲が移動する。なお、本実施形態は、表示範囲を移動させるジェスチャ操作の一例として、スワイプを用いた例について説明するが、表示範囲を移動させるジェスチャ操作をスワイプに制限するものではなく、他のジェスチャ操作でもよい。
【0160】
例えば、第2波形データ欄1702が表示されている間に、受付部712が、左方向に指を移動させるスワイプの操作1713を受け付けた場合に、表示制御部713は、第3波形データ欄1703を表示する。第3波形データ欄1703は、第2波形データ欄1702と同様に、Y軸方向の最大値yc、最小値ybである。そして、第3波形データ欄1703は、第2波形データ欄1702と比べてX軸正方向に移動している。これにより、第3波形データ欄1703のX軸の最大値xdとなる。
【0161】
そして、第3波形データ欄1703が表示されている間に、受付部712が、右方向に指を移動させるスワイプの操作1714を受け付けた場合に、表示制御部713は、第2波形データ欄1702を表示できる。
【0162】
また、第3波形データ欄1703が表示されている間に、受付部712が、ピンチインの操作1715を受け付けた場合に、表示制御部713は、再び第1波形データ欄1701を表示できる。
【0163】
このように、受付部712は、ピンチアウト(第1ジェスチャの一例)に応じて、波形データ欄の枠内で表示範囲を拡大した後に、ピンチイン、ピンチアウトと異なるスワイプ(第2ジェスチャの一例)の入力を受け付けることができる。
【0164】
そして、表示制御部713は、スワイプで指が移動した方向に対応する方向に、波形データ欄の枠内の表示範囲を移動させる。これにより、ユーザが所望した波形データの領域を確認することができる。
【0165】
本実施形態では、
図7に示されるように、ユーザのジェスチャ操作に応じて波形データ欄の表示態様を切り替えることができる。
【0166】
<作用>
上述した実施形態においては、ピンチイン又はピンチアウトに応じて、波形データ欄の枠内で表示範囲を拡大又は縮小する。つまり、ユーザは、容易な操作で、波形データ欄に表示されている波形データ(グラフの一例)の拡大又は縮小できる。したがって、ユーザは、拡大又は縮小表示された波形データを参照することで、当該波形データが指し示す状況の把握が容易になるので、利便性を向上できる。
【0167】
上述した実施形態においては、受付部712が、ピンチアウトに応じて、波形データ欄で表示範囲を拡大した後に、スワイプの入力を受け付けた場合に、表示制御部713が、スワイプに対応する方向に、表示範囲を移動させるので、ユーザは、容易な操作で所望した表示範囲を確認できる。
【0168】
上述した実施形態においては、表示制御部713が、チャネル欄に、波形データにおける、波形データ欄のY軸方向の最大値及び最小値を表示している。そして、表示制御部713は、波形データ欄内で表示される表示範囲の拡大又は縮小に応じて、最大値及び縮小値のうち少なくとも一つを変更する。これにより、ユーザは、波形データ欄に表示されている波形データが示す数値の把握が容易になる。
【0169】
上述した実施形態においては、表示制御部713は、表示範囲の拡大又は縮小する際、タッチパネル770の表示領域で波形データ欄の枠が表示される位置座標を維持している。換言すれば、波形データ欄の枠外に表示されている情報(例えば、チャネル欄等)の表示が維持されるので、波形データ欄内で所望する表示を行うと共に、枠外に表示されている情報も維持されるので、当該情報の確認も容易になる。つまり、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0170】
以上、本発明に係る射出成形機、及び射出成形の管理装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0171】
10 射出成形機
700 制御装置
770 タッチパネル
711 情報記憶部
712 受付部
713 表示制御部
20 管理装置
21 タッチパネル