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特許7740797中継装置、中継方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】中継装置、中継方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20250909BHJP
   G08G 1/097 20060101ALI20250909BHJP
   G08G 1/07 20060101ALI20250909BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20250909BHJP
   H04W 76/18 20180101ALI20250909BHJP
【FI】
H04W24/04
G08G1/097 A
G08G1/07 A
H04W4/40
H04W76/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021078322
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172518
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 直矢
(72)【発明者】
【氏名】葉山 幸治
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218590(JP,A)
【文献】特開2020-047233(JP,A)
【文献】国際公開第2019/175966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
G08G 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置であって、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部と、
前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部と、
前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部と、
前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部と、を備え、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力し、
前記アップリンク情報には、
時刻情報を含むが日付情報を含まない第1アップリンク情報が含まれ、
前記通信制御部は、
前記第1アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する日付情報を前記第1アップリンク情報に追加し、前記日付情報付きの前記第1アップリンク情報を前記記憶部に記憶させる、中継装置。
【請求項2】
前記第1アップリンク情報には、
前記交通信号制御機が前回サイクルにおいて実行した制御内容を表す信号制御実行情報が含まれる請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置であって、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部と、
前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部と、
前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部と、
前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部と、を備え、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力し、
前記アップリンク情報には、
時刻情報及び日付情報の双方を含まない第2アップリンク情報が含まれ、
前記通信制御部は、
前記第2アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する時刻情報及び日付情報を前記第2アップリンク情報に追加し、前記時刻情報及び前記日付情報付きの前記第2アップリンク情報を前記記憶部に記憶させる、中継装置。
【請求項4】
前記第2アップリンク情報には、
前記交通信号制御機の今回サイクルにおける動作状態を表す信号動作状態情報が含まれる請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置であって、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部と、
前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部と、
前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部と、
前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部と、を備え、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力し、
前記記憶部は、
前記アップリンク情報の格納領域を有する不揮発性メモリを含み、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、検出時点よりも所定時間前からの前記アップリンク情報を前記不揮発性メモリに書き込む、中継装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、
前記アップリンク情報を常にバッファリングするリングバッファが設定された揮発性メモリを有し、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記リングバッファの読み取りポイントから書き込みポイントまでのデータを前記不揮発性メモリに書き込む請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する、中継装置が実行する中継方法であって、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部から前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部に下りフレームを中継するステップと、
前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継するステップと、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記上りフレームに含まれるアップリンク情報を自装置の記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力するステップと、
前記アップリンク情報に、時刻情報を含むが日付情報を含まない第1アップリンク情報が含まれる場合に、前記第1アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する日付情報を前記第1アップリンク情報に追加し、前記日付情報付きの前記第1アップリンク情報を前記記憶部に記憶させるステップと、を含む、中継方法。
【請求項8】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する、中継装置が実行する中継方法であって、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部から前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部に下りフレームを中継するステップと、
前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継するステップと、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記上りフレームに含まれるアップリンク情報を自装置の記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力するステップと、
前記アップリンク情報に、時刻情報及び日付情報の双方を含まない第2アップリンク情報が含まれる場合に、前記第2アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する時刻情報及び日付情報を前記第2アップリンク情報に追加し、前記時刻情報及び前記日付情報付きの前記第2アップリンク情報を前記記憶部に記憶させるステップと、を含む、中継方法。
【請求項9】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する、中継装置が実行する中継方法であって、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部から前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部に下りフレームを中継するステップと、
前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継するステップと、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記上りフレームに含まれるアップリンク情報を自装置の記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力するステップと、を含み、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に行われる処理は、検出時点よりも所定時間前からの前記アップリンク情報を、前記記憶部に含まれる当該アップリンク情報の格納領域を有する不揮発性メモリに書き込むことである、中継方法。
【請求項10】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部、
前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部、
前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部、及び、
前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部、として機能させ、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力し、
前記アップリンク情報には、
時刻情報を含むが日付情報を含まない第1アップリンク情報が含まれ、
前記通信制御部は、
前記第1アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する日付情報を前記第1アップリンク情報に追加し、前記日付情報付きの前記第1アップリンク情報を前記記憶部に記憶させる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部、
前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部、
前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部、及び、
前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部、として機能させ、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力し、
前記アップリンク情報には、
時刻情報及び日付情報の双方を含まない第2アップリンク情報が含まれ、
前記通信制御部は、
前記第2アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する時刻情報及び日付情報を前記第2アップリンク情報に追加し、前記時刻情報及び前記日付情報付きの前記第2アップリンク情報を前記記憶部に記憶させる、コンピュータプログラム。
【請求項12】
通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部、
前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部、
前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部、及び、
前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部、として機能させ、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力し、
前記記憶部は、
前記アップリンク情報の格納領域を有する不揮発性メモリを含み、
前記通信制御部は、
前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、検出時点よりも所定時間前からの前記アップリンク情報を前記不揮発性メモリに書き込む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継装置、中継方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交通管制センターに設置された中央装置と、1又は複数の回線集約装置(中継装置)と、1又は複数の端末装置とを含む交通管制システムが記載されている。
特許文献1の交通管制システムでは、回線集約装置は、通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により複数の端末装置(交通信号制御機、光ビーコン、車両感知器及び交通情報板など)と通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-87144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
交通信号制御機を遠隔制御する交通管制システムでは、中央装置が交通信号制御機に提供するダウンリンク情報には、信号制御指令などがある。交通信号制御機が中央装置に提供するアップリンク情報には、信号制御実行情報及び信号動作状態情報などがある。
一方、モバイル回線は電波状況によって通信が安定しないことがある。このため、回線集約装置から中央装置までの通信路にモバイル回線が含まれる場合には、モバイル回線の通信断の期間中に上記の各情報が伝送されないことが懸念される。
【0005】
上記の情報のうち、中央装置が交通信号制御機の管理情報として収集する、信号制御実行情報及び信号動作状態情報などのアップリンク情報が欠損すると、交差点付近で交通事故が発生した場合の状況照会に対応できない可能性がある。
本開示は、中央装置が収集するアップリンク情報の欠損を防止できる中継装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る装置は、通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置であって、前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部と、前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部と、前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部と、前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部と、を備え、前記通信制御部は、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力する。
【0007】
本開示の一態様に係る方法は、通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する、中継装置が実行する中継方法であって、前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部から前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部に下りフレームを中継するステップと、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継するステップと、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を自装置の記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力するステップと、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部、前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部、前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部、及び、前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部、として機能させ、前記通信制御部は、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力する。
【0009】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備えるシステム及び装置として実現できるだけでなく、かかる特徴的な構成をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現することができる。また、本開示は、システム及び装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、中央装置が収集するアップリンク情報の欠損を防止できる中継装置等が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、交通管制システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、信号制御指令のフォーマットの一例を示す定義図である。
図3図3は、信号制御実行情報のフォーマットの一例を示す定義図である。
図4図4は、信号動作状態情報のフォーマットの一例を示す定義図である。
図5図5は、回線集約装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、通信制御部のアップリンク動作の変化例を示す状態遷移図である。
図7図7は、アップリンク情報の伝送経路の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の中継装置は、通信路にモバイル回線を含む上位側伝送方式により中央装置と通信し、通信路として有線媒体を用いる下位側伝送方式により交通信号制御機と通信する中継装置であって、前記上位側伝送方式に基づく信号処理を実行する上位側送受信部と、前記下位側伝送方式に基づく信号処理を実行する下位側送受信部と、前記上位側送受信部から前記下位側送受信部に下りフレームを中継し、前記下位側送受信部から前記上位側送受信部に上りフレームを中継する通信制御部と、前記上りフレームに含まれるアップリンク情報の記憶領域を有する記憶部と、を備え、前記通信制御部は、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記アップリンク情報を前記記憶部に記憶させ、前記モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、前記記憶部が記憶する前記アップリンク情報を含む上りフレームを前記上位側送受信部に出力する。
【0013】
本実施形態の中継装置によれば、通信制御部が、モバイル回線の通信断を検出した場合に、アップリンク情報を記憶部に記憶させ、モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、記憶部が記憶するアップリンク情報を含む上りフレームを上位側送受信部に出力する。
このため、モバイル回線の通信断の期間中に交通信号制御機が送信したアップリンク情報を、モバイル回線の通信復旧後に中央装置に提供することができる。従って、中央装置が収集するアップリンク情報の欠損を防止することができる。
【0014】
(2) 本実施形態の中継装置において、前記アップリンク情報は、時刻情報を含むが日付情報を含まない第1アップリンク情報が含まれる場合には、前記通信制御部は、前記第1アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する日付情報を前記第1アップリンク情報に追加し、前記日付情報付きの前記第1アップリンク情報を前記記憶部に記憶させることが好ましい。
この場合、中央装置は、第1アップリンク情報に含まれる日付情報と時刻情報の組み合わせにより、複数の第1アップリンク情報の時間的順序を判断できるようになる。
【0015】
(3) 本実施形態の中継装置において、前記第1アップリンク情報には、前記交通信号制御機が前回サイクルにおいて実行した制御内容を表す信号制御実行情報が含まれることが好ましい。
その理由は、現行規格書(例えば「U形交通信号制御機 U形通信アプリケーション規格」)に定められた信号制御実行情報は、時刻情報を含むが日付情報を含まないので、第1アップリンク情報として相応しいからである。
【0016】
(4) 本実施形態の中継装置において、前記アップリンク情報に、時刻情報及び日付情報の双方を含まない第2アップリンク情報が含まれる場合には、前記通信制御部は、前記第2アップリンク情報を含む前記上りフレームの受信時刻に対応する時刻情報及び日付情報を前記第2アップリンク情報に追加し、前記時刻情報及び前記日付情報付きの前記第2アップリンク情報を前記記憶部に記憶させることが好ましい。
この場合、中央装置は、第2アップリンク情報に含まれる時刻情報と日付情報の組み合わせにより、第2アップリンク情報の発生時刻と複数の第2アップリンク情報の時間的順序を判断できるようになる。
【0017】
(5) 本実施形態の中継装置において、前記第2アップリンク情報には、前記交通信号制御機の今回サイクルにおける動作状態を表す信号動作状態情報が含まれることが好ましい。
その理由は、現行規格書(例えば「U形交通信号制御機 U形通信アプリケーション規格」)に定められた信号動作状態情報は、日付情報及び時刻情報の双方を含まないので、第2アップリンク情報として相応しいからである。
【0018】
(6) 本実施形態の中継装置において、前記記憶部は、前記アップリンク情報の格納領域を有する不揮発性メモリを含み、前記通信制御部は、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、検出時点よりも所定時間前からの前記アップリンク情報を前記不揮発性メモリに書き込むことが好ましい。
【0019】
この場合、アップリンク情報が不揮発性メモリに格納されるので、中継装置に電源断が発生しても、記憶されたアップリンク情報は消去されない。
また、検出時点よりも所定時間前からのアップリンク情報が不揮発性メモリに書き込まれるので、書き込まれたアップリンク情報が、中央装置が欠損と判断する時点から遅れたデータとなる可能性を低減でき、情報の有用性を高めることができる。
【0020】
(7) 本実施形態の中継装置において、前記通信制御部は、前記アップリンク情報を常にバッファリングするリングバッファが設定された揮発性メモリを有し、前記モバイル回線の通信断を検出した場合に、前記リングバッファの読み取りポイントから書き込みポイントまでのデータを前記不揮発性メモリに書き込むことが好ましい。
この場合、検出時点よりも所定時間前からのアップリンク情報を読み出し可能な不揮発性メモリを、リングバッファを設定するだけで簡単に実装可能となる。
【0021】
(8) 本実施形態の中継方法は、上述の(1)~(7)の中継装置が実行する方法である。従って、本実施形態の中継方法は、上述の(1)~(7)の中継装置と同様の作用効果を奏する。
(9) 本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の(1)~(7)の中継装置としてコンピュータを機能させるプログラムである。従って、本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の(1)~(7)の中継装置と同様の作用効果を奏する。
【0022】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0023】
〔システムの全体構成〕
図1は、交通管制システム10の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の交通管制システム10は、中央装置1、1又は複数の回線集約装置2、及び1又は複数の端末装置3などを備える。
中央装置1は、交通管制センターなどに設置される。回線集約装置2は、中央装置1から比較的遠方の交差点又は道路などに設置される中継装置の一種である。端末装置3は、回線集約装置2から比較的近い交差点又は道路などに設置される。
【0024】
本実施形態において、中央装置1から端末装置3へ向かう下り方向の伝送信号に含まれる情報を「ダウンリンク情報DL」という。端末装置3から中央装置1に向かう上り方向の伝送信号に含まれる情報を「アップリンク情報UL」という。
中央装置1と回線集約装置2との通信を「上位側通信」といい、上位側通信に採用される伝送方式を「上位側伝送方式」という。回線集約装置2と端末装置3との通信を「下位側通信」といい、下位側通信に採用される伝送方式を「下位側伝送方式」という。
【0025】
上位側伝送方式は、例えば「UD形伝送方式」である。UD形伝送方式は、社団法人新交通管理システム協会(UTMS協会)により定められた「UD形インターフェース規格」に準じる伝送方式であり、IP(Internet Protocol)通信が可能な伝送方式である。
下位側伝送方式は、例えば「U形伝送方式」である。U形伝送方式は、UTMS協会により定められた「U形インターフェース規格」に準じる伝送方式であり、IP通信が不能なシリアル通信の伝送方式である。
【0026】
下位側伝送方式は、U形伝送方式に限らず、UTMS協会が定める他の伝送方式(例えばM形伝送方式又はS9形伝送方式)であってもよい。また、下位側伝送方式は、上位側伝送方式と同じ方式(例えばUD形伝送方式)であってもよい。
1つの回線集約装置2に2つ以上の端末装置3が接続される場合には、下位側伝送方式は、少なくとも2種類の伝送方式が混在していてもよい。
【0027】
中央装置1は、例えばPC(Personal Computer)サーバよりなり、所定の上位側伝送方式に基づく通信が可能な通信装置(図示せず)を有する。端末装置3は、例えば、交差点の交通信号機に含まれる信号灯器の点灯状態を制御する交通信号制御機よりなる。
回線集約装置2に接続される端末装置3には、交通信号制御機の他に、光ビーコン、車両感知器、及び交通情報板などの交通管制用のデバイスが含まれていてもよい。また、交通信号制御機3の下位側に、他の1又は複数の端末装置が接続されていてもよい。
【0028】
回線集約装置2は、上位側伝送方式に基づく中央装置1との上位側通信と、下位側伝送方式に基づく1又は複数の端末装置3との下位側通信との、双方の通信が可能な中継装置(ゲートウェイ)の一種である。
上位側通信の通信路には、例えばLTE(Long Term Evolution)又は第5世代移動通信システム(5G)などの規格に従う無線媒体(モバイル回線)5が含まれる。下位側通信の通信路は、例えば専用線又は自営線などの有線媒体(通信ケーブル)6よりなる。
【0029】
中央装置1は、配下の交通信号制御機3向けのダウンリンク情報DLを含む、上位側伝送方式に基づく伝送信号を無線基地局4に送信する。無線基地局4は、受信した伝送信号を回線集約装置2に転送する。
回線集約装置2は、受信した伝送信号からダウンリンク情報DLを抽出し、抽出したダウンリンク情報DLを含む、下位側伝送方式に基づく伝送信号を生成する。回線集約装置2は、生成した伝送信号を所定の宛先の交通信号制御機3に送信する。
【0030】
交通信号制御機3は、中央装置1向けのアップリンク情報ULを含む、下位側伝送方式に基づく伝送信号を回線集約装置2に送信する。
回線集約装置2は、受信した伝送信号からアップリンク情報ULを抽出し、抽出したアップリンク情報ULを含む、上位側伝送方式に基づく伝送信号を生成する。回線集約装置2は、生成した伝送信号を無線基地局4に送信する。無線基地局4は、受信した伝送信号を中央装置1に転送する。
【0031】
〔ダウンリンク情報とアップリンク情報の具体例〕
中央装置1が実行する交通信号制御機3に対する遠隔制御の制御方式には、大別して「歩進制御タイプ」と「テーブル制御タイプ」が存在する。
歩進制御タイプは、中央装置1が、信号灯器の点灯又は消灯を指令する制御信号(「歩進指令」と呼ばれる。)を交通信号制御機3に送信する方式である。この場合、中央装置1は、信号灯器の階梯(ステップ)ごとの継続時間を定めた信号制御プランを決定し、決定した信号制御プランにおいて階梯が切り替わる時刻に歩進指令を送信する。
【0032】
テーブル制御タイプは、中央装置1が、信号制御プランの元データとなる「信号制御指令」(図2参照)を交通信号制御機3に送信する方式である。この場合、交通信号制御機3は、受信した信号制御指令に基づいて信号制御プランを決定する。
交通信号制御機3は、自機で決定した信号制御プランに従って、自機から電力供給する交通信号機に含まれる信号灯器を点灯又は消灯させる。信号制御プランは、1サイクルごとに当該1サイクル分以上の所定時間分だけ決定される。
【0033】
交通管制システム10では、テーブル制御方式が採用されている。従って、中央装置1が生成するダウンリンク情報DLには、「信号制御指令」(図2参照)が含まれる。
テーブル制御方式では、中央装置1は信号制御プランを決定しないので、交通信号制御機3の制御実績を中央装置1が管理する必要がある。従って、交通信号制御機3が生成するアップリンク情報ULには、「信号制御実行情報」(図3参照)及び「信号動作状態情報」(図4参照)が含まれる。
【0034】
信号制御実行情報は、交通信号制御機3が前回サイクルにおいて実行した制御内容を表す情報である。信号動作状態情報は、交通信号制御機3の今回サイクルにおける動作状態を表す情報である。
なお、以下において、信号制御指令、信号制御実行情報、及び信号動作状態情報を、それぞれ「制御指令」、「実行情報」及び「状態情報」と略記することがある。
【0035】
図2は、信号制御指令のフォーマットの一例を示す図である。図3は、信号制御実行情報のフォーマットの一例を示す図である。図4は、信号動作状態情報のフォーマットの一例を示す図である。
図2から図4に示すフォーマットは、UTMS協会により定められた「U形交通信号制御機 U形通信アプリケーション規格」に規定されたフォーマットである。従って、各フォーマットに含まれる情報の詳細は、当該規格書に記載されている。
【0036】
中央装置1は、車両感知器が計測する感知器信号などに基づいて交通感応制御を実行すると、信号制御指令を生成し、生成した信号制御指令を、制御対象である配下の交通信号制御機3に宛てて送信する。
図2に示すように、信号制御指令に格納される情報には、次回サイクルにおいて交通信号制御機3に実行させるサイクル長(秒)、スプリットn(n=1~6)、及びオフセット基準時刻などが含まれる。
【0037】
信号制御指令のオフセット基準時刻は、オフセットを開始する先頭ステップの時刻情報である。オフセット基準時刻は、(時)(分)(秒)がそれぞれビットD0~D7のバイナリ値で表現され、時刻の数値範囲は00時00分00秒~23時59分59秒である。
【0038】
交通信号制御機3は、前回サイクル分の信号制御実行情報を生成し、生成した実行情報を今回サイクルの開始時に中央装置1に宛てて送信する。
図3に示すように、信号制御実行情報に格納される情報には、前回サイクルのサイクル開始時刻(最初の階梯の開始時刻)、実行された各階梯の秒数、実行された端末感応制御の種別を表す感応実行種別、及び、車両感知器が計測する感知器情報(交通量及び占有時間)などが含まれる。
【0039】
信号制御実行情報のサイクル開始時刻は、サイクルが開始された先頭ステップの時刻情報である。サイクル開始時刻は、(時)(分)(秒)がそれぞれビットD0~D7のバイナリ値で表現され、時刻の数値範囲は00時00分00秒~23時59分59秒である。
上記の通り、信号制御実行情報には、前回サイクルのサイクル開始時刻が含まれるが、日付情報は含まれていない。
【0040】
交通信号制御機3は、実行情報の場合よりも短い所定周期(例えば毎秒)で信号動作状態情報を生成し、生成した状態情報を所定周期ごとに中央装置1に宛てて送信する。
図4に示すように、信号動作状態情報には、実行中の現示状態と階梯番号を含む実行階梯情報、及び、自機の動作異常(タイマ異常やCPU異常など)を通知するための動作状況などが含まれる。実行階梯情報は、階梯が進行するタイミングで必ず中央装置1に送信される。なお、信号動作状態情報には、日付情報及び時刻情報は含まれない。
【0041】
〔回線集約装置の内部構成〕
図5は、回線集約装置2の内部構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、回線集約装置2は、複数の電子機器が収容された筐体20と、筐体20に接続された無線通信機21とを備える。
無線通信機21は、LTE又は5Gなどのモバイル通信規格に則った無線通信と、上位側伝送方式に則った有線通信とが可能な通信装置よりなる。
【0042】
回線集約装置2の筐体20に収容される電子機器には、上位側送受信部22、複数の下位側送受信部23、通信制御部24、記憶部25、及び同期処理部26などが含まれる。
筐体20は、上位側伝送方式(例えばUD形伝送方式)に準拠する1つの上位側ポートPと、下位側伝送方式(例えばU形伝送方式)に準拠する複数の下位側ポートQi(i=1,2……n)とを有する。
【0043】
上位側ポートPには、上位側送受信部22が電気的に接続され、上位側送受信部22は通信制御部24に電気的に接続される。
上位側ポートPには、上位側伝送方式に準拠する有線媒体(通信ケーブル)7の一端が接続される。有線媒体7の他端には、無線通信機21が接続される。
【0044】
下位側ポートQiには、下位側送受信部23が1対1対応で電気的に接続され、複数の下位側送受信部23は、それぞれ通信制御部24に電気的に接続される。
複数の下位側ポートQiのうちの少なくとも1つには、下位側伝送方式に準拠する有線媒体6(図1参照)の一端が接続される。有線媒体6の他端には、交通信号制御機3が接続される。下位側ポートQiには、交通信号制御機3以外の交通管制用のデバイス(光ビーコン、車両感知器、及び交通情報板など)を接続することもできる。
【0045】
上位側送受信部22は、上位側伝送方式に基づく所定の信号処理(変復調及びAD/DA変換など)を実行する通信インターフェースである。上位側送受信部22は、上位側ポートPから入力された伝送信号(搬送信号)を復調して下りフレームを再生する。
上位側送受信部22は、再生した下りフレームを通信制御部24に出力する。上位側送受信部22は、通信制御部24から入力された上りフレームを所定周波数の伝送信号に変調する。上位側送受信部22は、変調した伝送信号を上位側ポートPに出力する。
【0046】
無線通信機21は、アンテナから受信した伝送信号(電波)から下りフレームを再生する。無線通信機21は、再生した下りフレームを所定周波数の伝送信号に変調し、変調した伝送信号を有線媒体7に出力する。
無線通信機21は、有線媒体7から受信した伝送信号(搬送信号)から上りフレームを再生する。無線通信機21は、再生した上りフレームを所定周波数の伝送信号(電波)に変調し、変調した伝送信号をアンテナから送出する。
【0047】
下位側送受信部23は、下位側伝送方式に基づく所定の信号処理(変復調及びAD/DA変換など)を実行する通信インターフェースである。下位側送受信部23は、下位側ポートQiから入力された伝送信号(搬送信号)を復調して上りフレームを再生する。
下位側送受信部23は、再生した上りフレームを通信制御部24に出力する。下位側送受信部23は、通信制御部24から入力された下りフレームを所定周波数の伝送信号に変調する。下位側送受信部23は、変調した伝送信号を下位側ポートQiに出力する。
【0048】
通信制御部24は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)などを含む演算処理装置よりなる。記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)及びSDD(Solid State Drive)のうちの少なくとも1つの不揮発性メモリを含む補助記憶装置よりなる。記憶部25には、フラッシュROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、又はSDカードなどが含まれていてもよい。
通信制御部24は、記憶部25に格納されたコンピュータプログラムをメインメモリ(RAM)に読み出し、当該プログラムに従って各種の情報処理を行う。
【0049】
通信制御部24には、CPUに代えて或いはCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを含む集積回路が含まれていてもよい。
通信制御部24は、各送受信部22,23から入力される上り下り各方向の通信フレームに対して、フォーマット変換を伴う中継処理を実行可能である。
【0050】
具体的には、通信制御部24は、上位側送受信部22から入力される上位側伝送方式(例えばUD形伝送方式)の下りフレームを、下位側伝送方式(例えばU形伝送方式)のフォーマットに変換する。
通信制御部24は、変換後の下位側伝送方式(例えばU形伝送方式)の下りフレームを、所定の宛先の交通信号制御機3に対応する下位側送受信部23に出力する。なお、通信制御部24には、変換後の下りフレームをどの下位側送受信部23に出力するかを決定するための情報が予め設定されている。
【0051】
上記とは逆に、通信制御部24は、下位側送受信部23から入力される下位側伝送方式(例えばU形伝送方式)の上りフレームを、上位側伝送方式(例えばUD形伝送方式)のフォーマットに変換する。
通信制御部24は、変換後の上位側伝送方式(例えばUD形伝送方式)の上りフレームを、上位側送受信部22に出力する。
【0052】
なお、上位側伝送方式と下位側伝送方式が同じ方式である場合(例えば双方がUD形伝送方式の場合)には、通信制御部24は上記のフォーマット変換を行わず、MACアドレスやIPアドレスなどに基づくルーティングが行われる。ルーティングに必要な経路情報は、予め通信制御部24に設定される。
【0053】
記憶部25は、アップリンク情報ULの記憶領域を有する。記憶領域に格納されるアップリンク情報ULには、前述の信号制御実行情報と信号動作状態情報が含まれる。
通信制御部24は、上位側通信に用いられるモバイル回線の通信状態に応じて、上りフレームに含まれるアップリンク情報ULを記憶部25に蓄積したり、蓄積したアップリンク情報ULを中央装置1に送信したりすることができる。
【0054】
具体的には、通信制御部24は、モバイル回線の通信断を検出すると、上位側送受信部22から入力される上りフレームからアップリンク情報ULを抽出し、抽出した情報を記憶部25に記憶させる(データ蓄積処理)。
通信制御部24は、モバイル回線の通信断状態において通信復旧を検出すると、記憶部25から読み出したアップリンク情報ULを含む上位側伝送方式の上りフレームを生成し、生成した上りフレームを上位側送受信部に出力する(蓄積データの送信処理)。
【0055】
同期処理部26は、所定の同期方式により、中央装置1などの他の通信ノードと時刻同期を図るための処理部である。通信制御部24は、同期処理部26が生成するローカル時刻に従って、通信フレームの受信時刻及び送信タイミングなどを決定する。
同期処理部26の同期方式は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機の出力に基づく同期方式や、NTP(Network Time Protocol)及びPTP(Precision Time Protocol)などの通信フレームを用いた同期方式などを採用し得る。
【0056】
〔通信制御部のアップリンク動作〕
図6は、通信制御部24のアップリンク動作の変化例を示す状態遷移図である。
図6に示すように、電源オンによる起動後の通常状態(状態S1)においては、通信制御部24は、「通常のアップリンク処理」を実行する。
通常のアップリンク処理は、下位側送受信部23から入力される上りフレームをフォーマット変換してから、上位側送受信部22に出力する処理である。なお、上位側と下位側とで伝送方式が同じである場合は、フォーマット変換は不要である。
【0057】
通常状態(状態S1)においてモバイル回線の通信断(条件C1)を検出することにより、通信断状態(状態S2)になると、通信制御部24は、アップリンク情報ULの「データ蓄積処理」を実行する。
通信断状態(状態S2)においてモバイル回線の通信復旧(条件C2)を検出することにより、復旧状態(状態S3)になると、通信制御部24は、「通常のアップリンク処理」と「蓄積データの送信処理」とを実行する。
【0058】
復旧状態(状態S3)において蓄積したアップリンク情報ULのデータ送信完了(条件C3)を検出することにより、通常状態(状態S1)になると、通信制御部24は、「通常のアップリンク処理」のみを実行する。
【0059】
通信制御部24が実行するモバイル回線の通信状態の判定方法としては、例えば、以下の第1方法から第5方法が考えられる。第1方法は、ダウンリンク情報DL(例えば信号制御指令)のデータ欠損率を用いる方法である。
この場合、通信制御部24は、データ欠損率が所定閾値以上である状態が所定時間以上継続する場合に、モバイル回線の通信断と判定し、その後、データ欠損率が所定閾値未満に戻った状態が所定時間以上継続する場合に、モバイル回線の通信復旧と判定する。
【0060】
第1方法において、通信断と通信復旧の判定のチャタリングを防ぐために、通信断判定用の第1閾値と復旧判定用の第2閾値を別の値に設定し、例えば、第1閾値>第2閾値のようにヒステリシスを持たせることが好ましい。
【0061】
第2方法は、中央装置1が回線集約装置2に定期的(例えば1秒ごと)に送信する、モバイル回線の監視用に定義された専用メッセージを用いる方法である。
この場合、通信制御部24は、専用メッセージの受信が所定時間(例えば10秒)以上途絶えた場合に、モバイル回線の通信断と判定し、その後、専用メッセージの定期的な受信が再開した場合に、モバイル回線の通信復旧と判定する。なお、専用メッセージの定期的な受信が再開した場合とは、例えば、1秒ごとに送信される専用メッセージを1秒間隔で連続3回以上受信した場合などである。
【0062】
第3方法は、中央装置1と端末装置3との間で送受信される疎通確認のための通信(例えばPingなど)を用いる方法である。
この場合、通信制御部24は、端末装置3の応答メッセージに記されたパケット損失率が所定閾値以上である状態が所定時間以上継続する場合に、モバイル回線の通信断と判定し、その後、パケット損失率が所定閾値未満に戻った状態が所定時間以上継続する場合に、モバイル回線の通信復旧と判定する。
【0063】
第3方法においても、通信断と通信復旧の判定のチャタリングを防ぐために、通信断判定用の第1閾値と復旧判定用の第2閾値を別の値に設定し、例えば、第1閾値>第2閾値のようにヒステリシスを持たせることが好ましい。
【0064】
第4方法は、無線通信機21が出力するCD(Carrier Detect)信号などの状態信号を用いる方法である。
この場合、通信制御部24は、無線通信機21から通知される状態信号がオフ(不通)になった場合に、モバイル回線の通信断と判定し、その後、状態信号がオン(通信)に戻った場合に、モバイル回線の通信復旧と判定する。
【0065】
第5方法は、中央装置1と回線集約装置2がDATEX-ASNメッセージシーケンスにより通信する場合において、回線集約装置2が応答タイムアウト時間の直前に肯定応答(accept)を出す方法である。
この場合、通信制御部24は、応答を要する電文を自装置2から送信した後に再送時間が経過した場合、或いは過去の通信実績から応答が途絶した可能性がある場合に、モバイル回線の通信断と判定し、遅延した応答が届いた場合、或いは別途DATEX電文の再接続を促すシーケンス電文を受信した場合に、モバイル回線の通信復旧と判定する。
【0066】
なお、DATEX-ASNメッセージシーケンスでは、例えば、以下のタイマTc1~Tc3を含む複数種類のタイマが定義されているが、どのタイマを利用してもよい。
Tc1:クライアント側からのセッション確立要求、及びセッション終了要求時の応答待ちタイマ
Tc2:クライアント側からの情報要求及びファイル受信完了発行時の応答待ちタイマ
Tc3:クライアント側からのセッション維持要求発行周期タイマ
【0067】
〔アップリンク情報の伝送経路〕
図7は、アップリンク情報ULの伝送経路の一例を示す説明図である。
前述の通り、通常状態S1においては、通信制御部24は、通常のアップリンク処理を実行する(図6参照)。
従って、交通信号制御機3が送信したアップリンク情報UL(例えば実行情報及び状態情報)は、回線集約装置2の記憶部25に蓄積されず、回線集約装置2により中央装置1に転送される。
【0068】
前述の通り、通信断状態S2においては、通信制御部24は、データ蓄積処理を実行する(図6参照)。
従って、交通信号制御機3が送信したアップリンク情報UL(例えば実行情報及び状態情報)は、中央装置1に転送されず、回線集約装置2の記憶部25に蓄積される。なお、通信断状態S2においては、交通信号制御機3はダウンリンク情報DL(例えば信号制御指令)を取得できないので、例えば設定秒数で信号灯器を制御したり、自動生成機能によってスプリットを算出したりする。
【0069】
前述の通り、復旧状態S3においては、通信制御部24は、通常のアップリンク処理と蓄積データの送信処理の双方を実行する(図6参照)。
従って、交通信号制御機3が送信したアップリンク情報UL(例えば実行情報及び状態情報)が回線集約装置2により中央装置1に転送されると同時に、記憶部25に蓄積されたアップリンク情報ULが回線集約装置2により中央装置1に送信される。
【0070】
〔日付情報の追加〕
図3に示すように、信号制御実行情報には、サイクル開始時刻(最初の階梯の開始時刻)が含まれるが日付情報は含まれていない。
従って、例えば次の3種類の実行情報A~Cが記憶部25に蓄積されたあと、それらの実行情報A~Cを回線集約装置2が同時に中央装置1に送信した場合、中央装置1は、取得した実行情報A~Cの時間的順序を特定できない。
【0071】
実行情報A:サイクル開始時刻=23時58分20秒(実際の日付は11月10日)
実行情報B:サイクル開始時刻=00時00分20秒(実際の日付は11月11日)
実行情報C:サイクル開始時刻=00時02分20秒(実際の日付は11月11日)
【0072】
すなわち、サイクル開始時刻が午前0時前の実行情報Aと、サイクル開始時刻が午前0時後の実行情報B,Cを同時に中央装置1に送信すると、受信側の中央装置1において、実行情報の時間的順序がA→B→CであるのかB→C→Aであるのかを判断できない。
そこで、本実施形態では、回線集約装置2の通信制御部24は、実行情報のデータ蓄積処理において、実行情報に日付情報を追加して記憶部25に格納する。実行情報に追加する日付は、例えば実行情報を含む上りフレームの受信時刻から決定すればよい。
【0073】
復旧状態になると、通信制御部24は、日付情報が追加された複数の実行情報を記憶部25から読み出し、読み出した実行情報を含む上りフレームを中央装置1に送信する。
従って、中央装置1は、実行情報に含まれる時刻情報と日付情報の組み合わせにより、複数の実行情報の時間的順序を判断できるようになる。
【0074】
〔時刻情報及び日付情報の追加〕
図4に示すように、信号動作状態情報には、時刻情報及び日付情報が含まれていない。
従って、例えば異なる時刻に受信した複数の状態情報が記憶部25に蓄積されたあと、それらの複数の状態情報を回線集約装置2が同時に中央装置1に送信した場合、中央装置1は、状態情報に含まれる実行階梯情報の発生時刻、及び複数の状態情報の時間的順序を特定できない。
【0075】
そこで、本実施形態では、回線集約装置2の通信制御部24は、状態情報のデータ蓄積処理において、状態情報に時刻情報及び日付情報を追加して記憶部25に格納する。状態情報に追加する時刻及び日付は、例えば状態情報を含む上りフレームの受信時刻から決定すればよい。
【0076】
復旧状態になると、通信制御部24は、時刻情報及び日付情報が追加された信号動作状態情報を記憶部25から読み出し、読み出した状態情報を含む上りフレームを中央装置1に送信する。
従って、中央装置1は、状態情報に含まれる時刻情報と日付情報の組み合わせにより、状態情報に含まれる実行階梯情報の発生時刻、及び複数の状態情報の時間的順序を判断することができる。
【0077】
〔蓄積頻度及び情報種別の効率化〕
モバイル回線の通信断の期間中に蓄積されるデータ(例えば、実行情報及び状態情報:以下、「蓄積データ」という。)のうち、どのデータを中央装置1に送信するかを決定する手法としては、例えば、中央装置1からの要求に応じて決定する手法が考えられる。
この手法は、具体的には、中央装置1が所定期間(例えば数日)ごとに実行情報及び状態情報の欠損の有無を判定し、欠損した時間帯の情報再送要求を回線集約装置2に送信する方法である。
【0078】
この場合、回線集約装置2は、情報再送要求により指示される時間帯の蓄積データを記憶部25から抽出し、抽出した蓄積データを含む上りフレームを中央装置1に送信する。
ところで、複数の有線媒体6(例えば4回線)を集約する回線集約装置2の場合、例えば、メモリ容量が1MBでかつ1サイクル平均60秒とすると、信号制御実行情報は246Byteであるから、最大で約0.7日分しか蓄積できない。従って、中央装置1が数日に1回再送要求を行うと、蓄積データに漏れが発生する可能性がある。
【0079】
この問題に対処するにはメモリ容量を増加すればよいが、これでは回線集約装置2の製造コストが増大するので、蓄積データのデータ容量を削減することが好ましい。
蓄積データのデータ容量を削減する手法としては、蓄積頻度の効率化(以下、「手法1」)と、蓄積する情報種別の効率化(以下、「手法2」)とが考えられる。本実施形態では、モバイル回線が通信断の期間だけデータ蓄積処理を実行するので(図6の状態S2)、手法1に適した蓄積頻度であると言える。
【0080】
情報種別の効率化(手法2)の一例としては、信号制御実行情報(図3参照)のうち、前半39Byteの「制御実行情報」の部分をのみを蓄積することが考えられる。制御実行情報より後の情報は、感知器情報などの計測情報などであり、中央装置1においてデータが欠損してもあまり問題とならないからである。
前半39Byteのみを蓄積対象とすれば、例えば、メモリ容量が1MBでかつ1サイクル平均60秒とすると、最大4日分まで蓄積量を増やすことができる。
【0081】
〔揮発性メモリと不揮発性メモリの同時使用〕
蓄積データを揮発性メモリに蓄積すると、電源断時に蓄積データが消去されるので、蓄積データは記憶部25の不揮発性メモリに格納することが好ましい。
しかし、回線集約装置2で常用される不揮発性メモリ(フラッシュROM)は、書き込み回数に上限(例えば1千万回)がある。従って、実行情報や状態情報を無条件で記憶部25に書き込む方法では、書き込み回数が短期間で上限に達する可能性がある。
【0082】
この点、本実施形態では、モバイル回線が通信断の期間だけデータ蓄積処理を実行するので(図6の状態S2)、不揮発性メモリよりなる記憶部25に対する蓄積データの書き込み回数を抑制できるという利点がある。
一方、通信断の検出に応じてデータを蓄積する方法では、中央装置1が欠損と判断する時点からタイミングが若干遅れたデータとなる可能性がある。
【0083】
そこで、通信断の検出を契機とするデータ蓄積処理では、通信断の検出前の所定時間(例えば数秒)分のデータを付加して蓄積することが好ましい。
具体的には、所定のデータ容量を有するリングバッファを通信制御部の24の揮発性メモリに設定しておき、信号制御実行情報及び動作状態情報については当該リングバッファに常にバッファリングしておく。
【0084】
この場合、通信制御部24は、モバイル回線の通信断を検出した時点で、リングバッファの読み取りポイントから書き込みポイントまでのデータを不揮発性メモリにコピーすればよい。このようにすれば、通信断の検出時点よりも所定時間前からの蓄積データを不揮発性メモリにコピーすることができる。
なお、揮発性メモリのリングバッファから不揮発性メモリへのコピーは、通信断の検出時だけでなく、定期的、夜間、又はCPUの軽負荷時に実行してもよい。
【0085】
〔回線集約装置の効果〕
上述の通り、本実施形態の回線集約装置(中継装置)2によれば、通信制御部24が、モバイル回線の通信断を検出した場合に、アップリンク情報ULを記憶部25に記憶させ(図6の状態S2:データ蓄積処理)、モバイル回線の通信復旧を検出した場合に、記憶部25が記憶するアップリンク情報ULを含む上りフレームを上位側送受信部22に出力する(図6の状態S3:蓄積データの送信処理)。
【0086】
このため、モバイル回線の通信断の期間中に交通信号制御機3が送信したアップリンク情報UL(例えば信号制御実行情報及び信号動作状態情報など)を、モバイル回線の通信復旧後に中央装置1に提供することができる。従って、中央装置1が収集するアップリンク情報ULの欠損を防止することができる。
【0087】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0088】
例えば、上述の実施形態において、無線通信機21は筐体20内に収容されていてもよい。また、上位側送受信部22は、筐体20内ではなく、筐体20に接続される無線通信機21に一体化していてもよい。更に、無線通信機21及び上位側送受信部22は、1つの通信基板などのインターフェースに集約した構成であってもよい。
上述の実施形態において、記憶部25は、筐体20の外部に設けられた外付けタイプの補助記憶装置であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 中央装置
2 回線集約装置(中継装置)
3 端末装置(交通信号制御機)
4 無線基地局
5 無線媒体(モバイル回線)
6 有線媒体(通信ケーブル)
7 有線媒体(通信ケーブル)
10 交通管制システム
20 筐体
21 無線通信機
22 上位側送受信部
23 下位側送受信部
24 通信制御部
25 記憶部
26 同期処理部
P 上位側ポート
Qi 下位側ポート
UL アップリンク情報(信号制御実行情報、信号動作状態情報)
DL ダウンリンク情報(信号制御指令)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7