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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】抗菌性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/20 20060101AFI20250909BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20250909BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
B65D81/20 C
B32B27/18 F
B32B27/32 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021098087
(22)【出願日】2021-06-11
(65)【公開番号】P2022189488
(43)【公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 健佑
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 良美
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-016158(JP,A)
【文献】特開2015-098146(JP,A)
【文献】特開平09-248883(JP,A)
【文献】特開2021-049657(JP,A)
【文献】特開2015-189138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
B65D 67/00-79/02
B65D 81/18-81/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装体の製造方法であって、
前記包装体は、抗菌性フィルムを含んで構成され、
前記抗菌性フィルムは、
基材層と、
前記基材層に積層されるシール層と、を備え、
前記基材層は、プロピレン系樹脂を含む材料によって構成され、
前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体、および、抗菌剤を含む材料によって構成され、
前記抗菌剤は、粒子を含み、
前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径は、前記シール層の厚さよりも大きく、
前記包装体の製造方法は、
前記包装体の内部に内容物を封入する工程と、
以下の式(1)で算出される脱気指数が4.56×10 -5 以下となるように脱気する工程と、を含む
脱気指数=脱気度合/封入する内容物の重量(g)・・・(1)
ただし、脱気度合は、前記包装体の内表面積S(mm 2 )に対する包装体の体積V(ml)の比である
包装体の製造方法
【請求項2】
前記シール層の厚さに対する前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径の比率は、20/3以下である
請求項1に記載の包装体の製造方法
【請求項3】
前記シール層の厚さに対する前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径の比率は、4以下である
請求項2に記載の包装体の製造方法
【請求項4】
前記シール層の厚さに対する前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径の比率は、4/3以下である
請求項3に記載の包装体の製造方法
【請求項5】
前記シール層を構成する材料における前記抗菌剤の割合は、0.02重量%~2.00重量%の範囲に含まれる
請求項1~4のいずれか一項に記載の包装体の製造方法
【請求項6】
前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径は、0.5μm~6.0μmの範囲に含まれる
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カット野菜等の内容物を収容する包装体に使用される抗菌性フィルムを開示している。この抗菌性フィルムは、基材層と、基材層に積層されるシール層と、を備える。シール層は、抗菌剤を含む材料によって構成される。このため、包装体内において、内容物に付着している細菌が繁殖することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-49657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、内容物に付着している細菌の繁殖を抑制できる効果の高い抗菌性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る抗菌性フィルムは、基材層と、前記基材層に積層されるシール層と、を備え、前記基材層は、プロピレン系樹脂を含む材料によって構成され、前記シール層は、プロピレン系ランダム共重合体、および、抗菌剤を含む材料によって構成され、前記抗菌剤は、粒子を含み、前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径は、前記シール層の厚さよりも大きい。
【0006】
上記抗菌性フィルムは、例えば、縦ピロー包装機によって、筒状の抗菌性フィルムの背面および底面のシール層がヒートシールされる。次に、上方の開口からカット野菜等の内容物が収容され、脱気されながら、上方の開口が閉じるようにシール層がヒートシールされることによって、内容物を収容した状態の包装体が製造される。
【0007】
上記抗菌性フィルムによれば、抗菌剤の粒子の最頻粒子径がシール層の厚さよりも大きいため、シール層から抗菌剤の粒子が露出する。このため、包装体に収容されている内容物と抗菌剤に含まれる粒子とが接触する、または、内容物と抗菌剤に含まれる粒子との距離が近い。このため、抗菌剤に含まれる粒子が、シール層内に存在する場合よりも、内容物に付着している細菌の繁殖を抑制できる効果が高い。
【0008】
本発明の第2観点に係る抗菌性フィルムは、前記シール層の厚さに対する前記抗菌剤の最頻粒子径の比率は、20/3以下である。
【0009】
上記抗菌性フィルムによれば、シール層の良好なシール性を維持しつつ、細菌の繁殖を抑制できる効果が高められる。
【0010】
本発明の第3観点に係る抗菌性フィルムは、前記シール層の厚さに対する前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径の比率は、4以下である。
【0011】
上記抗菌性フィルムによれば、シール層の良好なシール性を維持しつつ、細菌の繁殖を抑制できる効果がより高められる。
【0012】
本発明の第4観点に係る抗菌性フィルムは、前記シール層の厚さに対する前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径の比率は、4/3以下である。
【0013】
上記抗菌性フィルムによれば、シール層の良好なシール性を維持しつつ、細菌の繁殖を抑制できる効果がより高められる。
【0014】
本発明の第5観点に係る抗菌性フィルムは、前記シール層を構成する材料における前記抗菌剤の割合は、0.02重量%~2.00重量%の範囲に含まれる。
【0015】
上記抗菌性フィルムによれば、細菌の繁殖を抑制できる効果がより高められる。
【0016】
本発明の第6観点に係る抗菌性フィルムは、前記抗菌剤の粒子の最頻粒子径は、0.5μm~6.0μmの範囲に含まれる。
【0017】
上記抗菌性フィルムによれば、シール層を構成する材料に抗菌剤が含まれる場合に、包装体に使用される抗菌性フィルムのシール層として一般的に求められる厚さを維持した上で、シール層の良好なシール性が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に関する抗菌性フィルムによれば、内容物に付着している細菌の繁殖を抑制できる効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の抗菌性フィルムの断面図。
図2A】実施例1~4の抗菌性フィルムの諸元を示す表。
図2B】実施例5~9の抗菌性フィルムの諸元を示す表。
図2C】比較例1、2の抗菌性フィルム、および、参考例のフィルムの諸元を示す表。
図3A】実施例1~4の抗菌性フィルムの第1試験~第3試験の結果を示す表。
図3B】実施例5~9の抗菌性フィルムの第1試験~第3試験の結果を示す表。
図3C】比較例1、2の抗菌性フィルム、および、参考例のフィルムの第1試験~第3試験の結果を示す表。
図4A】実施例1~4の抗菌性フィルムの第2試験の追加試験の結果を示す表。
図4B】実施例5~9の抗菌性フィルムの第2試験の追加試験の結果を示す表。
図4C】比較例1、2の抗菌性フィルム、および、参考例のフィルムの第2試験の追加試験の結果を示す表。
図5】第5試験の結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る抗菌性フィルムについて説明する。
【0021】
<1.抗菌性フィルムの構成>
図1は、抗菌性フィルム10の層構成の一例を示す断面図である。抗菌性フィルム10は、内容物を収容する包装体に使用される。内容物は、例えば、青果物である。青果物は、例えば、キャベツ、レタス、または、ニンジン等のカット野菜、ならびに、ねぎ、もやし、ほうれん草、ブロッコリー、または、ピーマン等の野菜である。
【0022】
抗菌性フィルム10は、基材層20およびシール層30を含む。なお、以下に示す基材層20およびシール層30を構成する材料、および、材料の含有量等に関する諸元については、先行技術文献(特開2021-49657号公報)に記載の事項を適用できるため、その詳細についての説明を省略する。
【0023】
抗菌性フィルム10の厚さは、任意に選択可能である。抗菌性フィルム10が包装体の製造に用いられる観点から、抗菌性フィルム10の厚さは、10μm~50μmの範囲に含まれることが好ましい。
【0024】
基材層20は、抗菌性フィルム10によって包装体が製造された場合に、最も外側、換言すれば、外部空間に面する層である。基材層20の厚さは、任意に選択可能である。抗菌性フィルム10が包装体の製造に用いられる観点から、基材層20の厚さは、2μm~49μmの範囲に含まれることが好ましい。本実施形態では、基材層20の厚さは、26μmである。
【0025】
基材層20を構成する材料は、プロピレン系樹脂を含む材料である。プロピレン系樹脂は、例えば、ホモプロピレン重合体(HPP)、または、プロピレン系ランダム重合体である。プロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2~10のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができ、具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等のα-オレフィンを挙げることができる。基材層20を構成する材料は、プロピレン系樹脂の他に、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、および、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0026】
シール層30は、抗菌性フィルム10によって包装体が製造された場合に、最も内側、換言すれば、内容物を収容する内部空間に面する層である。シール層30は、基材層20に積層される。本実施形態では、シール層30は、基材層20に直接的に積層される。シール層30は、任意の中間層を介して基材層20に積層されてもよい。シール層30の厚さは、任意に選択可能である。抗菌性フィルム10が包装体の製造に用いられる観点から、シール層30の厚さは、1μm~8μmの範囲に含まれることが好ましい。本実施形態では、シール層30の厚さは、1.5μmである。
【0027】
シール層30を構成する材料は、プロピレン系ランダム共重合体および抗菌剤を含む材料である。シール層30を構成する材料に含まれるプロピレン系ランダム共重合体は、二元共重合体または三元共重合体である。本実施形態では、シール層30を構成する材料に含まれるプロピレン系ランダム共重合体は、三元共重合体である。抗菌剤は、例えば、無機系抗菌剤または有機系抗菌物質である。無機系抗菌剤としては、例えば、金属イオンを含む金属化合物を挙げることができ、具体的には、例えば、銀イオン、銅イオン、または、亜鉛イオンを含む金属化合物が挙げられる。
【0028】
本実施形態では、抗菌剤に含まれる金属化合物等の粒子の最頻粒子径は、抗菌剤に含まれる粒子がシール層30から内部空間側に露出するように、シール層30の厚さよりも大きい。抗菌性能を高める観点のみに着目した場合、抗菌剤に含まれる粒子の最頻粒子径が大きい程、抗菌性能が高められる。しかし、シール層30の厚さに対して、抗菌剤に含まれる粒子の最頻粒子径が大きすぎると、シール層30のシール性が低下し、通常のヒートシールの温度条件では、良好なシール性が得られないおそれがある。このような観点から、シール層30の厚さに対する抗菌剤の粒子の最頻粒子径の比率(以下では、「比率RA」という)は、20/3以下であることが好ましい。比率RAは、4以下であることがさらに好ましい。比率RAは、4/3以下であることがさらに好ましい。なお、最頻粒子径は、粒子分布の極大値を示す粒径であり、例えば、フロー式粒子像分析装置またはレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0029】
また、シール層30を構成する材料に抗菌剤が含まれる場合に、包装体に使用される抗菌性フィルム10のシール層30として一般的に求められる厚さを維持した上で、シール層30の良好なシール性が得られることが好ましい。このような観点から、抗菌剤の粒子の最頻粒子径は、0.5μm~6.0μmの範囲に含まれることが好ましい。
【0030】
シール層30を構成する材料における抗菌剤の割合は、任意に選択可能である。好ましい例では、シール層30を構成する材料における抗菌剤の割合は、0.02重量%~2.00重量%の範囲に含まれることが好ましい。
【0031】
<2.抗菌性フィルムの作用および効果>
抗菌性フィルム10は、例えば、縦ピロー包装機によって、筒状の抗菌性フィルム10の背面および底面のシール層30がヒートシールされる。次に、上方の開口からカット野菜等の内容物が収容され、脱気されながら、上方の開口が閉じるようにシール層30がヒートシールされることによって、内容物を収容した状態の包装体が製造される。
【0032】
抗菌性フィルム10によれば、抗菌剤の粒子の最頻粒子径がシール層30の厚さよりも大きいため、シール層30から抗菌剤の粒子が露出する。このため、包装体に収容されている内容物と抗菌剤に含まれる粒子とが接触する、または、内容物と抗菌剤に含まれる粒子との距離が近い。このため、抗菌剤に含まれる粒子が、シール層30内に存在する場合よりも、内容物に付着している細菌の繁殖を抑制できる効果が高い。
【0033】
<3.実施例>
本願発明者(ら)は、実施例の抗菌性フィルム、比較例の抗菌性フィルム、および、参考例のフィルムを製造し、抗菌性フィルムの特性を評価する試験を実施した。試験は、第1試験、第2試験、第3試験、第4試験、および、第5試験を含む。なお、以下では、説明の便宜上、実施例および比較例の抗菌性フィルムを構成する要素のうち、実施形態と同じ要素には、実施形態と同様の符号を付して説明する。なお、実施例の抗菌性フィルム、および、比較例の抗菌性フィルムにおいては、抗菌剤として、Ag-Zn系抗菌剤を用いた。
【0034】
図2A図2Cは、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムに関する諸元を示す表である。図2Cに示されるように、比較例1、2の抗菌性フィルム10は、比率RAが1以下である。参考例のフィルムには、シール層30を構成する材料に抗菌剤が含まれていない。図3A図3Cは、第1試験~第3試験の結果を示す表である。なお、第1試験~第3試験は、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムについて、包装体を製造する前、すなわち、フィルム単体の状態における特性を評価する試験である。
【0035】
<3-1.第1試験>
第1試験は、フィルムの抗菌性を評価する試験である。第1試験では、JIS Z2801に基づいて、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムの抗菌性を評価した。図2A図2Cの抗菌性の項目における「〇」は、抗菌活性値が2.0以上の場合を示し、「×」は、抗菌活性値が2.0未満の場合を示している。実施例1~9、および、比較例1、2の抗菌性フィルム10では、シール層30を構成する材料に抗菌剤が含まれているため、抗菌性の評価が高いことが把握できる。
【0036】
<3-2.第2試験>
第2試験は、2枚のフィルムをヒートシールした場合のシール強度を確認する試験である。第2試験では、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムのそれぞれについて、MD(Machine Dirrection)方向70mm×TD(Transverse Dirrection)方向200mmにカットした2枚のフィルムを、シール層が向かい合うように重ねた後、ヒートシール機(東洋精機製作所製 HG-100-2)にて、所定条件でヒートシールすることによって測定用サンプルを製造した。所定条件は、シール温度150℃、ゲージ圧力0.26MPa、および、シール時間0.5秒である。
【0037】
次に、得られた測定用サンプルのヒートシール部分が最端となるように、かつ、ヒートシール部分の面積がMD方向10mm×TD方向10mmとなるように、MD方向10mm×TD方向50mmの大きさに測定用サンプルをカットした。カットした測定用サンプルを計測スタンド(イマダ製 MX-500N)に取り付けたデジタルフォースゲージ(イマダ製 ZTS-100N)を用いてTD方向に引っ張り、ヒートシールした部分の剥離を行い、ヒートシール強度をそれぞれの測定用サンプルについて5回測定した。図3A図3Cに示されるシール強度の項目は、測定されたヒートシール強度をそれぞれ1.5倍した5回の平均値である。
【0038】
図3Bに示されるように、第2試験におけるヒートシール条件では、実施例9の抗菌性フィルム10のシール強度がやや低いことが確認された。これは、比率RAが、比較的大きいためであると考えられる。
【0039】
また、本願発明者(ら)は、第2試験の追加試験として、ヒートシールの所定条件のうち、シール温度が135℃、140℃、145℃の場合についても、第2試験と同様の方法によってシール強度を測定した。図4A図4Cは、第2試験の追加試験の結果である。
【0040】
図4A、4Bに示されるように、比率RAが4/3である実施例1、4、5、8の抗菌性フィルム10では、ヒートシールの際のシール温度が比較的低温であっても、良好なシール性が得られることが確認された。
【0041】
<3-3.第3試験>
第3試験は、フィルムの透過性を評価する試験である。第3試験では、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムのそれぞれを、MD方向cm×TD方向10cmの短冊状に切断し、測定用サンプルを製造した。それぞれの測定用サンプルについて、シール層を光源側に向けてセットし、ヘイズメーター(日本電色工業社製NDH5000)によりヘイズ値(%)を測定した。測定回数は4回である。図3A図3Cに示されるヘイズ値の項目は、4回の平均値である。
【0042】
図3A図3Cに示されるように、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムは、包装体として一般的に求められる程度の透過率であることが確認された。
【0043】
<3-4.第4試験>
第4試験は、フィルムのヤング率、酸素透過度、および、二酸化透過度を確認する試験である。第4試験では、実施例1および4の抗菌性フィルム10のヤング率、酸素透過度、および、二酸化透過度を測定した。
【0044】
実施例1の抗菌性フィルム10のヤング率は、MD/TD=0.9/2.2(GPa)であった。実施例4の抗菌性フィルム10のヤング率は、MD/TD=2.1/5.0(GPa)であった。実施例1の抗菌性フィルム10の基材層20には、SEBSが含まれるため、基材層20がHPP単体で構成される実施例4の抗菌性フィルム10よりも軟らかい性質を有することが確認された。このため、実施例1の抗菌性フィルム10は、実施例4の抗菌性フィルム10よりも、包装体を製造したあと、好適に脱気できると考えられる。
【0045】
実施例1の抗菌性フィルム10の酸素透過度は、3110(cm3/m2・24h・atm)であり、二酸化透過度は、11100(cm3/m2・24h・atm)であった。実施例4の抗菌性フィルム10の酸素透過度は、1920(cm3/m2・24h・atm)であり、二酸化透過度は、5400(cm3/m2・24h・atm)であった。実施例1の抗菌性フィルム10は、実施例4の抗菌性フィルム10よりも通気性が高いことが確認された。
【0046】
<3-5.第5試験>
第5試験は、フィルムを用いて包装体を製造した場合の細菌の繁殖を抑制する効果について確認する試験である。第5試験では、実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10、および、参考例のフィルムについて、内容物としてカットキャベツ130gを包装体に収容し、縦型ピロー包装機(株式会社大生機械)にセットし、脱気しながら内容物が封入された包装体を製造した。得られた包装体は、縦240mm、横195mmのサイズであり、後述する脱気度合毎にそれぞれ5個ずつ製造した。得られた包装体の上部、下部、および、背張り部(背面)のシール幅は、いずれも10mmである。これらの包装体を10℃の環境下で120時間(5日間)保管した。5日経過後、内容物を包装体から取り出し、内容物10gをリン酸緩衝液90ccでホモジナイズ処理を行った。得られた10倍希釈液を1mL採取し、9mLのリン酸緩衝液で希釈することでさらに10倍希釈された試料液を得た。次に、適当な希釈倍率まで薄めた希釈液を3M社製のペトリフィルム培地にて35℃、48時間培養を行い、一般生菌数を数えた。
【0047】
第5試験では、内容物を封入した包装体の脱気指数と、一般生菌数との関係を確認した。包装体の脱気指数とは、包装体に封入する内容物1g当たりの包装体の内部空間の容積として、以下の式(1)によって定義される、本願発明者(ら)が独自に定義した指数である。
脱気指数=脱気度合/封入する内容物の重量(本試験では、130g)・・・(1)
【0048】
式(1)における脱気度合は、包装体の内表面積S(mm2)に対する包装体の体積V(ml)の比である。なお、包装体の体積は、例えば、水を溜めたバケツに包装体を沈め、バケツから溢れた水の体積を測定することによって求めることができる。
【0049】
図5は、第5試験の結果を示す表である。図5では、参考例のフィルムを用いて製造した包装体における一般生菌数を1とした場合の実施例1~9の抗菌性フィルム10、比較例1、2の抗菌性フィルム10を用いて製造した包装体における一般生菌数の比率を示している。
【0050】
図5に示されるように、実施例1~9の抗菌性フィルム10を用いて製造した包装体の方が、比較例1、2の抗菌性フィルム10を用いて製造した包装体よりも、一般生菌数が少ないこと、換言すれば、細菌の繁殖を抑制する効果が高いことが確認された。これは、実施例1~9の抗菌性フィルム10は、比率RAが1よりも大きいためであると考えられる。また、脱気指数が小さい程、一般生菌数が少ないことが確認された。これは、脱気指数が小さい程、換言すれば、包装体に封入する内容物1g当たりの包装体の内部空間の容積が小さい程、包装体のシール層30から露出した抗菌剤の粒子と内容物との距離が近いため、または、包装体のシール層30から露出した抗菌剤の粒子と内容物とがより密着するためであると考えられる。
【0051】
<4.変形例>
上記実施形態は本発明に関する抗菌性フィルムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する抗菌性フィルムは、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0052】
<4-1>
シール層30を構成する材料は、任意に変更可能である。例えば、シール層30を構成する材料は、消臭剤を含んでいてもよい。消臭剤としては、例えば、無機系消臭剤を挙げることができる。無機系消臭剤としては、例えば、リン酸ジルコニウム;アルミノ珪酸塩(ゼオライト)、アルミノ珪酸亜鉛;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化鉄、酸化チタン、ミョウバン等の金属酸化物を挙げることができる。
【0053】
<4-2>
上記実施形態では、縦ピロー包装機によって、1枚の抗菌性フィルム10から包装体を製造したが、例えば、2枚以上の抗菌性フィルム10をヒートシールすることによって包装体を製造してもよい。
【0054】
<4-3>
上記実施形態では、抗菌性フィルム10のシール層30同士をヒートシールによって接合したが、抗菌性フィルム10のシール層30同士をシールする手段は、任意に変更可能である。例えば、抗菌性フィルム10のシール層30同士をインパルスシール、高周波シール、または、超音波シールによってシールしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10:抗菌性フィルム
20:基材層
30:シール層
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5