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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】車両用ホイールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 3/00 20060101AFI20250909BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20250909BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20250909BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20250909BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20250909BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20250909BHJP
   B60B 3/02 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
B60B3/00 A
B05D7/14 P
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B05D3/02 Z
B05D5/06 C
B60B3/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021113969
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010107
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 智浩
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-221575(JP,A)
【文献】特開2016-013804(JP,A)
【文献】特開昭64-070175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 3/00
3/02
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の車両用ホイールのホイール本体を形成する形成工程と、
前記ホイール本体に、有色のクリヤ塗膜を形成するための第1の塗料を塗布する第1の塗布工程と、
前記ホイール本体のうち、前記第1の塗料が塗布された領域上に、無色のクリヤ塗膜を形成するための第2の塗料を塗布する第2の塗布工程と、
前記ホイール本体に塗布された前記第1の塗料と前記第2の塗料とを焼付け乾燥させ、前記有色のクリヤ塗膜と前記無色のクリヤ塗膜とを形成する焼付け乾燥工程と、
を含む車両用ホイールの製造方法であって、
前記第1の塗料の焼付け乾燥時の流動性は、前記第2の塗料の焼付け乾燥時の流動性よりも低い、車両用ホイールの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ホイールの製造方法であって、
前記形成工程では、切削加工を用いることにより前記ホイール本体の表面に光輝面を形成すると共に前記光輝面の縁にはエッジ部が残存し、
前記第1の塗布工程では、前記ホイール本体のうち、少なくとも前記光輝面と前記エッジ部とを含む領域に前記第1の塗料を塗布し、
前記第2の塗布工程では、前記光輝面と前記エッジ部とを含む前記領域に塗布された前記第1の塗料の上に前記第2の塗料を塗布する、車両用ホイールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、車両用ホイールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば意匠性を高めるために、ホイール本体の一部を切削して光輝面を形成し、この光輝面の上に有色のカラークリヤコート層を形成し、そのカラークリヤコート層の上に、艶消し用のトップクリヤコート層を形成する、車両用ホイールの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-221575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の製造方法では、カラークリヤコート層を形成するための塗料を焼付け乾燥した時に、カラークリヤコート層に、いわゆる額縁現象が発生する。すなわち、ホイール本体の光輝面の縁に残存するエッジ部付近に塗布された塗料は、表面部分においてシンナーが速く揮発するため、表面張力が高くなり、内部の塗料が引っ張られる。その結果、カラークリヤコート層のうち、ホイール本体のエッジ部付近に塗布された部分の膜厚が厚くなる。このように、カラークリヤコート層に膜厚のバラツキが生じると、例えばホイール表面の見た目の色の濃さに差が生じ、ホイールの美観に影響を与える。
【0005】
なお、このような塗料の表面張力の不均一に起因するカラークリヤコート層の膜厚のバラツキは、ホイール本体がエッジ部を有する場合に限られず、例えば、ホイール本体が複雑で曲面が急に変化している形状を有する場合などにも生じることがある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される車両用ホイールの製造方法は、金属製の車両用ホイールのホイール本体を形成する形成工程と、前記ホイール本体に、有色のクリヤ塗膜を形成するための第1の塗料を塗布する第1の塗布工程と、前記ホイール本体のうち、前記第1の塗料が塗布された領域上に、無色のクリヤ塗膜を形成するための第2の塗料を塗布する第2の塗布工程と、前記ホイール本体に塗布された前記第1の塗料と前記第2の塗料とを焼付け乾燥させ、前記有色のクリヤ塗膜と前記無色のクリヤ塗膜とを形成する焼付け乾燥工程と、を含む車両用ホイールの製造方法であって、前記第1の塗料の焼付け乾燥時の流動性は、前記第2の塗料の焼付け乾燥時の流動性よりも低い。
【0009】
本車両用ホイールの製造方法では、有色のクリヤ塗膜を形成するための第1の塗料の焼付け乾燥時の流動性は、無色のクリヤ塗膜を形成するための第2の塗料の焼付け乾燥時の流動性よりも低い。このため、有色のクリヤ塗膜では、無色のクリヤ塗膜に比べて、表面張力の不均一に起因する膜厚のバラツキを抑制することができる。また、無色のクリヤ塗膜における膜厚のバラツキは、有色のクリヤ塗膜における膜厚のバラツキに比べて、ホイールの美観に与える影響が小さい。これにより、本車両用ホイールの製造方法によれば、クリヤ塗膜の膜厚のバラツキの影響が抑制された車両用ホイールを製造することができる。
【0010】
(2)上記車両用ホイールの製造方法において、前記形成工程では、切削加工を用いることにより前記ホイール本体の表面に光輝面を形成すると共に前記光輝面の縁にはエッジ部が残存し、前記第1の塗布工程では、前記ホイール本体のうち、少なくとも前記光輝面と前記エッジ部とを含む領域に前記第1の塗料を塗布し、前記第2の塗布工程では、前記光輝面と前記エッジ部とを含む前記領域に塗布された前記第1の塗料の上に前記第2の塗料を塗布するとしてもよい。
【0011】
切削加工によりエッジ部が形成されたホイールを用いる場合、特にエッジ部付近で額縁現象による有色のクリヤ塗膜の膜厚のバラツキが顕著に生じやすい。また、切削加工により形成された光輝面は、有色のクリヤ塗膜を透過し光輝面で反射する光によって、有色のクリヤ塗膜の膜厚のバラツキに起因する色むらの影響が顕著に現れやすい。これに対して、本車両用ホイールの製造方法によれば、そのようなエッジ部や光輝面を有するホイールを用いる場合でも、クリヤ塗膜の膜厚のバラツキが、効果的に抑制された車両用ホイールを製造することができる。
【0012】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、車両用ホイール、その製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における車両用ホイール100の外観構成を概略的に示すXZ平面図である。
図2】車両用ホイール100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】車両用ホイール100の製造工程を示すフローチャートである。
図4】車両用ホイール100の製造工程の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.実施形態:
A-1.車両用ホイール100の構成:
図1は、本実施形態における車両用ホイール100(以下、単に「ホイール100」という)の外観構成を概略的に示すXZ平面図である。図2は、本実施形態におけるホイール100のXY断面構成を概略的に示す説明図である。図2には、図1のII-IIの位置におけるホイール100のスポーク部210のXY断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Y軸方向は、ホイール100の回転軸に平行な方向であるとし、以下、「ホイール軸方向」というものとするが、ホイール100は実際にはそのような向きとは異なる向きで配置されてもよい。以下、ホイール100の径方向を「ホイール径方向」という。
【0015】
図2に示すように、ホイール100は、ホイール素材102の表面に、カラーベースコート層300と、カラークリヤコート層310と、トップクリヤコート層320と、が形成されている。なお、ホイール素材102は、後述する成形工程(図3のS110)で成形された後、塗装工程(S120,S140,S150)、切削工程(S130)および焼付け乾燥工程(S160)を経てホイール100に成る。ここで、各工程で使用されるホイール100の素材は、便宜上、ホイール素材102と説明する。なお、カラークリヤコート層310が特許請求の範囲における有色のクリヤ塗膜の一例であり、トップクリヤコート層320が特許請求の範囲における無色のクリヤ塗膜の一例である。
【0016】
ホイール素材102は、例えばアルミニウム合金やマグネシウム合金などの軽金属により形成されている。ホイール素材102は、略円筒状のホイールリム10と、該ホイールリム10の内周側に配置されたホイールディスク20と、を備える。本実施形態のホイール素材102は、ホイールリム10とホイールディスク20とが一体成形された、いわゆる1ピースタイプのホイールである。以下、ホイール100(ホイール素材102)に対してホイール軸方向の一方側(Y軸正方向側)を「アウター側」といい、ホイール軸方向の他方側(Y軸負方向側)を「インナー側」という。ホイール100が車両本体(図示せず)に装着された場合、ホイール100のアウター側は、車両本体とは反対側に向けられ、ホイール100のインナー側は、車両本体側に向けられる。ホイール100のアウター側の面が意匠面とされる。
【0017】
(ホイールリム10)
図1に示すように、ホイールリム10は、全体として略円筒状であり、円筒部(図示しない)と、一対のフランジ部110(図1ではアウター側のフランジ部110のみ図示)とを含む。円筒部は、ウェル部等が形成された円筒状である。一対のフランジ部110は、ホイール軸方向(Y軸方向)視で略円環状であり、円筒部におけるホイール軸方向の両端にそれぞれ位置する。一対のフランジ部110によって、ホイール100に装着されたタイヤ(図示せず)がホイール軸方向に位置ずれしないように保持される。
【0018】
(ホイールディスク20)
ホイールディスク20は、ホイールリム10におけるアウター側に位置しており、ハブ取付部220と、複数(本実施形態では5本)のスポーク部210とを含む。ハブ取付部220は、略円盤状であり、ホイール軸方向(Y軸方向)視でホイールディスク20の略中央に位置している。ハブ取付部220の略中心には、車両本体のハブ(図示せず)が連結されるハブ孔222が形成されている。また、ハブ孔222の周囲には、ホイール100を車両本体のハブに固定するための複数のボルト孔224が形成されている。
【0019】
複数のスポーク部210は、ホイールリム10とハブ取付部220との間に放射状に配置されている。各スポーク部210は、ホイール径方向に延びている。互いに隣り合うスポーク部210同士の間には、開口部(風孔部)12が形成されている。開口部12は、略三角形状であるが、これに限らず、例えば略矩形状でもよい。各スポーク部210は、ホイールリム10のフランジ部110まで延びている。
【0020】
図1に示すように、ホイール素材102のうちアウター側の外表面(意匠面)は、光輝面230と、複数の傾斜面250と、を有する。また、ホイール素材102は、光輝面230と傾斜面250とが交わるエッジ部240を有している。
【0021】
光輝面230は、光輝面230の法線がホイール軸方向に平行もしくは交差する方向に延びる面である。具体的には、光輝面230は、ホイール素材102におけるアウター側の外表面のうち、ハブ取付部220とスポーク部210とにおける最もアウター側に位置する面である。光輝面230は、ホイール軸方向に略垂直な平坦状の面である。各傾斜面250は、ホイール素材102におけるアウター側の外表面のうち、開口部12を画定している枠状部分である。各傾斜面250は、光輝面230に対して傾斜している面である。具体的には、図2に示すように、傾斜面250は、アウター側に向かって開口部12の開口面積が拡張するようにホイール軸方向(Y軸方向)に対して傾斜している。なお、傾斜面250は、平面状でもよいし、曲面状でもよい。
【0022】
カラーベースコート層300は、ホイール素材102の傾斜面250にベース塗料で塗装して形成された有色(例えば黒基調色)の層である。カラーベースコート層300は、有彩色の層でもよいし無彩色の層でもよい。ホイール素材102の光輝面230の表面には、カラーベースコート層300は形成されていない。ベース塗料は、例えば有色の顔料である。
【0023】
カラークリヤコート層310は、カラー塗料で塗装して形成された有色の層であり、ホイール100のアウター側の外表面全体(光輝面230、傾斜面250)に形成されている。カラークリヤコート層310は、有彩色の層でもよいし無彩色の層でもよい。本実施形態では、カラークリヤコート層310は、有色、かつ、光透過性を有する層であり、カラークリヤコート層310を介して光輝面230および傾斜面250(カラーベースコート層300)の表面を視認可能である。
【0024】
トップクリヤコート層320は、クリヤ塗料で塗装して形成された光透過性を有する層であり、ホイール100のアウター側の外表面全体(光輝面230、傾斜面250)に対してカラークリヤコート層310の上に形成されている。
【0025】
A-2.ホイール100の製造方法:
上述したホイール100の製造方法について説明する。図3は、ホイール100の製造工程を示すフローチャートであり、図4は、ホイール100の製造工程の一部を示す説明図である。
【0026】
まずは、図3に示すように、軽金属製の加工前のホイール素材102を成形する(S110)。加工前のホイール素材102は、軽金属材料を用いて、例えば公知の鋳造法または鍛造法により成形される。図4(A)には、加工前のホイール素材102のXY断面が示されている。
【0027】
次に、加工前のホイール素材102のアウター側の外表面全体(最表面230X、傾斜面250)に、ベース塗料を塗布した後に焼付け乾燥させ、カラーベースコート層300を形成する(S120)。カラーベースコート層300は、有彩色の層でもよいし無彩色の層でもよい。図4(B)には、加工前のホイール素材102における最表面230Xと傾斜面250との両方にカラーベースコート層300が形成された状態のXY断面が示されている。なお、ベース塗料は、例えば有色の顔料である。
【0028】
次に、加工前のホイール素材102のうち、アウター側の最表面230Xを含む部分を切削加工して光輝面230(切削面)を形成する(S130)。図4(C)には、図4(B)の加工前のホイール素材102に対して、最表面230Xを含む部分が切削された後のホイール素材102のXY断面が示されている。光輝面230は、略平坦状の面である。光輝面230が形成されたことにより、切削後のホイール素材102には、光輝面230と傾斜面250とが交わるエッジ部240が形成される。切削加工は、例えばフライス盤や旋盤を用いた機械加工機を用いて行うことができる。なお、切削後のホイール素材102は、特許請求の範囲における、形成工程にて形成されるホイール本体の一例であり、S110~S130の工程は、特許請求の範囲における形成工程の一例である。
【0029】
次に、切削後のホイール素材102のアウター側の表面全体(光輝面230、傾斜面250)に、カラークリヤ塗料310Pを例えば吹き付け塗装により塗布する(S140)。図4(D)には、光輝面230と傾斜面250との全体にわたってカラークリヤ塗料310Pが塗布されている切削後のホイール素材102のXY断面が示されている。なお、カラークリヤ塗料310Pは、特許請求の範囲における第1の塗料の一例であり、S140の工程は、特許請求の範囲における第1の塗布工程の一例である。
【0030】
次に、カラークリヤ塗料310Pの塗布後のホイール素材102のアウター側の表面全体(光輝面230、傾斜面250)に、無色クリヤ塗料320Pを例えば吹き付け塗装により塗布する(S150)。図4(E)には、光輝面230と傾斜面250との全体にわたって、カラークリヤ塗料310Pの上に無色クリヤ塗料320Pが塗布されている切削後のホイール素材102のXY断面が示されている。なお、無色クリヤ塗料320Pは、特許請求の範囲における第2の塗料の一例であり、S150の工程は、特許請求の範囲における第2の塗布工程の一例である。
【0031】
次に、ホイール素材102に形成されたカラークリヤ塗料310Pおよび無色クリヤ塗料320Pを焼付け乾燥させて、カラークリヤコート層310およびトップクリヤコート層320を形成する(S160)。なお、S160の工程は、特許請求の範囲における焼付け乾燥工程の一例である。ホイール素材102にトップクリヤコート層320が形成されることにより、ホイール100の腐食等が防止される。
【0032】
ここで、カラークリヤ塗料310Pの焼付け乾燥時の流動性は、無色クリヤ塗料320Pの焼付け乾燥時の流動性よりも低い。ここでいう流動性は、塗料の流れやすさを意味し、カラークリヤ塗料310Pと無色クリヤ塗料320Pとの流動性の高低は、両塗料を同一条件下で対象物に塗布した後に焼付け乾燥する際の流れやすさで判断する。例えば、カラークリヤ塗料310Pは、有色の顔料に防錆剤を配合したものとし、無色クリヤ塗料320Pは、光透過性を有する顔料に、カラークリヤ塗料310Pに比べて防錆剤の配合割合が少ないもの(防錆剤が配合されていないものを含む)としてもよい。
【0033】
また、カラークリヤ塗料310Pは、例えば組成物1,2に、着色顔料、体質顔料、メタリック顔料などを配合、さらに必要に応じて有機溶剤で希釈することにより作製することができる。これにより、エッジ部240に塗着した塗料が焼付中に流動することなく、エッジ部240の塗膜形成性が良好で、しかも透明性、耐候性、平滑性、付着性および物理的性質などのすぐれた有色の塗膜を得ることができる。
<組成物1>:特公平6-89295号公報に開示されたアルミホイール用塗料組成物
(A)熱硬化性樹脂100重量部あたり、(B)粒径50~50mμの透明性微粉末シリカおよび(または)アルミナを5~35重量部含有してなる塗料であって、かつ(C)該塗料中の有機溶剤組成が、沸点が130℃以下の極性有機溶剤10~70重量%と沸点が105℃~250℃の非極性有機溶剤90~30重量%とからなり、そして、(D)塗装時の固形分含有率を20~50重量%に調整してなるアルミホイール用塗料組成物。
<組成物2>:特許第6270728号に開示されたアルミホイール用塗料組成物
構成する単量体の合計に対して、下記の式(1)で表される窒素含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1)を5~35質量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)を1~10質量%及びその他のラジカル重合性不飽和単量体(a3)を55~94質量%の混合物を反応させることによって得られる共重合体樹脂(A)、並びに共重合体樹脂(A)の固形分合計100質量部に対して、ヒュームドシリカ(B)を1~30質量部、マグネシウムを含有するリン酸系化合物(C)を0.1~10質量部含む、アルミニウムホイール用のプライマー塗料組成物。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子又はCHを表し、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す)
【0034】
A-3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態のホイール100の製造方法では、切削後のホイール素材102に、カラークリヤ塗料310Pが塗布され(S140)、そのカラークリヤ塗料310Pの上に、無色クリヤ塗料320Pが塗布され(S150)、その後、焼付け乾燥される(S160)。カラークリヤ塗料310Pの焼付け乾燥時の流動性は、無色クリヤ塗料320Pの焼付け乾燥時の流動性よりも低い。このため、カラークリヤ塗料310Pは、無色クリヤ塗料320Pに比べて、焼付け乾燥時における表面張力の差が生じにくく、額縁現象の発生が抑制される。その結果、カラークリヤコート層310における膜厚のバラツキは、トップクリヤコート層320における膜厚のバラツキに比べて小さい。また、トップクリヤコート層320は、カラークリヤコート層310に比べて光透過性が高い。このため、仮に、トップクリヤコート層320に膜厚のバラツキが発生したとしても、カラークリヤコート層310における膜厚のバラツキよりも目立ちにくい。このため、本実施形態によれば、例えば、カラークリヤ塗料310Pの焼付け乾燥時の流動性が無色クリヤ塗料320Pの焼付け乾燥時の流動性よりも高い場合に比べて、クリヤ塗膜(カラークリヤコート層310、トップクリヤコート層320)の膜厚のバラツキに起因する意匠性への影響が抑制されたホイール100を製造することができる。
【0035】
切削加工によりエッジ部240が形成されたホイール素材102を用いる場合、特にエッジ部240付近で額縁現象によるカラークリヤコート層310の膜厚のバラツキが顕著に生じやすい。また、切削加工により形成された光輝面230は、カラークリヤコート層310を透過し光輝面230で反射する光によって、カラークリヤコート層310の膜厚のバラツキに起因する色むらの影響が顕著に現れやすい。これに対して、本実施形態によれば、そのような光輝面230やエッジ部240を有するホイール素材102を用いる場合でも、カラークリヤコート層310の膜厚のバラツキが、効果的に抑制されたホイール100を製造することができる。
【0036】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0037】
上記実施形態では、ホイール100(ホイール素材102)は、1ピースタイプのホイールであるとしたが、これに限らず、ホイールリム10とホイールディスク20とが別体である、いわゆる2ピースタイプのホイールであるとしてもよい。また、上記実施形態では、車両用ホイールとして、スポーク部210を備えるホイール100を例示したが、これに限らず、スポーク部を備えないホイールでもよい。
【0038】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。第1の塗料は、焼付け乾燥により有色のクリヤ塗膜を形成する塗料であれば、無色の塗料でもよい。また、第2の塗料は、焼付け乾燥により光透過性を有する無色のクリヤ塗膜を形成する塗料であれば、例えば艶消しのような不透明な塗料でもよい。
【0039】
上記実施形態におけるホイール100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、切削加工(S130)では、例えば、公知のマシニングセンタなどの切削機を用いて行ってもよい。
【0040】
上記実施形態では、第1の塗料の塗布対象のホイール(特許請求の範囲におけるホイール本体)は、形成工程(S110~S130)により形成されたホイール素材102であったが、これに限らず、カラーベースコート層300の形成(S120)と切削による光輝面230の形成(S130)との少なくともいずれか一方が施されていないホイール素材102でもよい。また、第1の塗料の塗布対象のホイールは、切削以外の加工が施されたり、ベースコート以外の塗装が施されたりしたものでもよい。
【0041】
上記実施形態では、第1の塗料の塗布対象のホイールは、エッジ部240を有するホイール素材102であったが、これに限らず、互いに隣り合い、かつ、ホイール軸方向に対する傾斜角度が異なる2つの表面同士が交わる稜線部分、鋭角状にとがった部分や曲面を有する形状のホイールであれば、額縁現象が生じるおそれがあるため、本発明を適用することにより、額縁現象による有色のクリヤ塗膜の膜厚のバラツキが抑制された車両用ホイールを製造することができる。
【0042】
上記実施形態において、カラークリヤコート層310は、ホイール100のアウター側の外表面の一部だけに形成されてもよい。また、カラークリヤコート層310は、不透明な層でもよい。また、トップクリヤコート層320は、ホイール100のアウター側の外表面の一部だけに形成されてもよい。
【0043】
上記実施形態では、いわゆる2コート1ベーク方式で、ホイール素材102にカラークリヤコート層310およびトップクリヤコート層320を形成した(図3参照)が、いわゆる2コート2ベーク方式で、ホイール素材102にカラークリヤコート層310およびトップクリヤコート層320を形成してもよい。すなわち、図3において、ホイール素材102にカラークリヤ塗料310Pを塗布し(S140)、その後に、塗布されたカラークリヤ塗料310Pを乾燥する工程を加え、その後に、ホイール素材102に無色クリヤ塗料320Pを塗布し(S150)、乾燥してもよい。なお、この2コート2ベーク方式におけるカラークリヤ塗料310Pの乾燥工程および無色クリヤ塗料320Pの乾燥工程は、特許請求の範囲における乾燥工程の一例である。
【符号の説明】
【0044】
10:ホイールリム 12:開口部 20:ホイールディスク 100:ホイール 102:ホイール素材 110:フランジ部 210:スポーク部 220:ハブ取付部 222:ハブ孔 224:ボルト孔 230:切削面 230X:最表面 240:エッジ部 250:傾斜面 300:カラーベースコート層 310:カラークリヤコート層 310P:カラークリヤ塗料 320:トップクリヤコート層 320P:無色クリヤ塗料
図1
図2
図3
図4