(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】椅子用荷重支持部材および椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/14 20060101AFI20250909BHJP
A47C 7/32 20060101ALI20250909BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
A47C7/14 C
A47C7/32
A47C7/00 B
(21)【出願番号】P 2021181146
(22)【出願日】2021-11-05
【審査請求日】2024-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 義徳
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-268497(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0004702(KR,A)
【文献】特開2007-195953(JP,A)
【文献】特開2003-135200(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01192881(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/14
A47C 7/32
A47C 7/00
A47C 5/06
A47C 4/30
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離間して配置された一対の第一杆体と、
一対の前記第一杆体の間に張設され、着座者の荷重を受ける荷重受面が形成された張材と、
一対の前記第一杆体に架け渡され、前記張材が取り付けられる第二杆体と、
前記張材が前記第二杆体に取り付けられた取付け部を覆うカバー体と、を備え
、
前記第一杆体は、座の外殻である座フレームを構成する側杆部と、背凭れの外殻である背フレームを構成する縦杆部と、を備え、
前記張材は、一対の前記側杆部の間に張設された第1張材であり、
一対の前記縦杆部の間に、第2張材が張設され、
前記カバー体は、主板部と、前記主板部から延出する前板部とを有し、前記主板部の下面と前記前板部の後面とによって、前記取付け部の少なくとも一部を収容する凹部が形成され、
前記第2張材は、前記カバー体に取り付けられた第2取付け部を有し、
前記第1張材は、前記取付け部から延び、前記前板部の下端部において前記第2張材に近接または当接する、
椅子用荷重支持部材。
【請求項2】
前記取付け部は、前記張材が前記第二杆体を囲んでループ状に折り返された保持部である、請求項1記載の椅子用荷重支持部材。
【請求項3】
前記第二杆体は、前記凹部に係合する、請求項
1または2に記載の椅子用荷重支持部材。
【請求項4】
前記第二杆体は、弾性的に撓み変形可能である、請求項1~
3のうちいずれか1項に記載の椅子用荷重支持部材。
【請求項5】
前記側杆部と前記縦杆部とは連結部において連結され、
前記背フレームは、一対の前記縦杆部の上端部どうしを連結する上杆部を有し、
前記第二杆体は、前記第一杆体とは別体であって、前記縦杆部の、前記上杆部に比べて前記連結部に近い位置に設けられている、
請求項1~
4のうちいずれか1項に記載の椅子用荷重支持部材。
【請求項6】
請求項1~
5のうちいずれか1項に記載の椅子用荷重支持部材と、
前記椅子用荷重支持部材を支持する支持構造体と、を備える椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子用荷重支持部材および椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前貫と、座貫と、背貫と、背部のウェビングと、座部のウェビングと、を備える椅子が開示されている。座部のウェビングは前貫と座貫に張設されている。背部のウェビングは背貫と座貫に張設されている。背部のウェビングの一方の端縁部と、座部のウェビングの一方の端縁部とは、掛止めによって座貫に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の椅子において、ウェビング(張材)と座貫(杆体)との取り付け構造は、見栄えが好ましいとはいえなかった。そのため、外観の点で改善が求められていた。
【0005】
本発明の一態様は、杆体に張材が張設された構造において、外観を良好にできる椅子用荷重支持部材および椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る椅子用荷重支持部材は、離間して配置された一対の第一杆体と、一対の前記第一杆体の間に張設され、着座者の荷重を受ける荷重受面が形成された張材と、一対の前記第一杆体に架け渡され、前記張材が取り付けられる第二杆体と、前記張材が前記第二杆体に取り付けられた取付け部を覆うカバー体と、を備える。
【0007】
本態様によれば、張材の取付け部がカバー体で覆われるため、取付け部は外から見えにくくなる。そのため、取付け部によって椅子の外観が損なわれることがない。よって、外観が良好な椅子が得られる。
【0008】
前記取付け部は、前記張材が前記第二杆体を囲んでループ状に折り返された保持部であることが好ましい。
本態様によれば、取付け部の構造が簡略であるため、取付け部の作製が容易である。
【0009】
前記カバー体には、前記第二杆体の少なくとも一部を収容する凹部が形成されていることが好ましい。
本態様によれば、取付け部を外から見えにくくすることができる。
【0010】
前記第二杆体は、前記凹部に係合することが好ましい。
本態様によれば、第二杆体の変位を規制できるため、第二杆体およびカバー体の位置決めが容易となる。
【0011】
前記第二杆体は、弾性的に撓み変形可能であることが好ましい。
本態様によれば、カバー体が湾曲形状である場合に、第二杆体はカバー体に応じた形状となる。そのため、カバー体に対する第二杆体の位置決めは容易となる。
本態様によれば、張材に入力された着座荷重に応じて第二杆体が撓み変形することで、柔軟な着座感が得られる。
【0012】
前記第一杆体は、座の外殻である座フレームを構成する側杆部と、背凭れの外殻である背フレームを構成する縦杆部と、を備え、前記張材は、一対の前記側杆部の間に張設され、前記側杆部と前記縦杆部とは連結部において連結され、前記背フレームは、一対の前記縦杆部の上端部どうしを連結する上杆部を有し、前記第二杆体は、前記第一杆体とは別体であって、前記縦杆部の、前記上杆部に比べて前記連結部に近い位置に設けられていることが好ましい。
【0013】
本態様によれば、第二杆体は、連結部に近い位置に設けられているため、第一杆体と一体に形成しにくい位置にあるといえる。しかし、第二杆体は第一杆体とは別体であるため、第一杆体と一体成形する必要はない。そのため、製造用の金型の構造は複雑とならない。よって、製造コストを抑制できる。
【0014】
本発明の他の態様は、前記椅子用荷重支持部材と、前記椅子用荷重支持部材を支持する支持構造体と、を備える椅子を提供する。
本態様によれば、張材の取付け部がカバー体で覆われるため、外観が良好な椅子が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、杆体に張材が張設された構造において、外観を良好にできる椅子用荷重支持部材および椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】実施形態における椅子の一部断面状態の斜視図である。
【
図3】実施形態における椅子本体および支基の斜視図である。
【
図4】実施形態における椅子本体の一部断面状態の斜視図である。
【
図5】実施形態における椅子本体の一部断面状態の分解斜視図である。
【
図6】実施形態における椅子の一部を拡大した分解斜視図である。
【
図7】実施形態における第1連結フレームおよび第2連結フレームの、長さ方向に沿う断面図である。
【
図8】実施形態における第1連結フレームおよび第2連結フレームの、長さ方向に直交する断面図である。
【
図9】実施形態における椅子の一部の斜視図である。
【
図10】実施形態における椅子の、第1連結フレームおよび第2連結フレームの断面を示す斜視図である。
【
図11】実施形態における椅子の、第1連結フレームおよび第2連結フレームの断面を示す斜視図である。
【
図12】実施形態における椅子の、第1連結フレームおよび第2連結フレームの断面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の、相対的または絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表す。
【0018】
図1は、椅子1の側面図である。
図2は、椅子1の一部断面状態の斜視図である。
図1および
図2に示すように、椅子1は、支持構造体2と、椅子本体3と、肘掛け4と、を備えている。
【0019】
以下の説明において、前後、上下、左右等の向きは、椅子1に正規姿勢で着座した人(着座者)を基準として定める。図中における矢印UPは上方を示す。矢印FRは前方を示す。RHは右方を示す。椅子1において、前後方向および左右方向で中央から離間する側を外側といい、中央に向かう側を内側という場合がある。左右方向は、椅子1の幅方向である。平面視は、上下方向から見ることをいう。側面視は、左右方向から見ることをいう。
【0020】
<支持構造体2>
図1に示すように、支持構造体2は、脚部11と、支基12と、を備えている。
脚部11は、多岐脚14と、脚柱15と、を備えている。多岐脚14の各脚部には、床面Fを走行可能なキャスタ16が取り付けられている。脚部11は床面Fに設置される。
【0021】
脚柱15は、多岐脚14の中央部に立設されている。脚柱15には、椅子1の昇降機構であるガススプリング17が内蔵されている。ガススプリング17は、例えば、内筒17aが昇降かつ相対回転可能に支持された構成である。
【0022】
図3は、椅子本体3および支基12の斜視図である。
図3では、張材111,112を省略している。
図1に示すように、支基12は、脚柱15(内筒17a)の上端部に固定されている。
図3に示すように、支基12は、ケーシング21と、昇降操作機構22と、傾動機構23と、傾動調整機構24と、を備えている。
【0023】
ケーシング21は、箱型に形成されている。ケーシング21は、ケース本体31と、一対の前方延在部32と、後部ケース33と、を備えている。
一対の前方延在部32は、ケース本体31における左右方向の両端部から斜め前方に延びている。後部ケース33は、ケース本体31における左右方向の中央部から後方に突出している。
【0024】
昇降操作機構22は、操作ロッド142を備えている。操作ロッド142は、ケース本体31から突出している。昇降操作機構22は、操作ロッド142によって、ガススプリング17を操作することができる。
傾動機構23は、背凭れ支持軸(図示略)を備えている。背凭れ支持軸は、後部ケース33を左右方向に貫通する軸部材である。
傾動調整機構24は、操作ロッド62を備えている。傾動調整機構24は、操作ロッド62を操作することで、背凭れ101の回動しやすさを調整することができる。
【0025】
<椅子本体3>
図1および
図2に示すように、椅子本体3は、座100と、背凭れ101と、を備えている。
座100は、側面視において前後方向に延びている。座100の一部は、前方に向かうに従い下降するように傾斜している。座100の上面は、着座者の臀部から大腿部に至る範囲を下方から支持する座面100aを構成する。座面100aは、着座者の荷重を受ける荷重受面である。座100は、支基12に対して前後方向にスライド移動可能に支持されている。
【0026】
背凭れ101は、座100の後端から、概略、上方に延びている。本実施形態では、背凭れ101は、側面視において、緩やかなS字状またはZ字状をなす。背凭れ101の前面は、着座者の腰部および背部を後方から支持する背受け面101aを構成する。背受け面101aは、着座者の荷重を受ける荷重受面である。
【0027】
背凭れ101は、座100に対して左右方向に沿う軸線O1回りに回動可能に設けられている。背凭れ101は、傾動機構23の背凭れ支持軸の軸線O2回りに回動可能に支基12に連結されている。座100は、支基12に対する背凭れ101の軸線O2回りの回動、および座100に対する背凭れ101の軸線O1回りに回動に伴い、支基12に対して前後方向にスライド移動可能である。
【0028】
以下、椅子本体3の具体的な構成について説明する。
椅子本体3は、シェル110と、第1張材111(座用張材)と、第2張材112(背凭れ用張材)と、を備えている。
シェル110は、椅子本体3の外殻を形成する枠状の部材である。シェル110は、座フレーム120と、背フレーム123と、を備えている。
【0029】
座フレーム120は、座100の外殻を構成する。背フレーム123は、背凭れ101の外殻を構成する。座フレーム120および背フレーム123は、例えば、樹脂材料等によって成形されている。椅子本体3は、「椅子用荷重支持部材」の例である。
【0030】
図3に示すように、座フレーム120は、平面視において後方に開口するU字状に形成されている。具体的に、座フレーム120は、前杆部130と、一対の側杆部131と、を備えている。
【0031】
前杆部130は、座100の前端部において、左右方向に延びている。
一対の側杆部131は、前杆部130の両端部からそれぞれ後方に延びている。一対の側杆部131は、左右方向に離間して配置されている。
【0032】
背フレーム123は、本体フレーム151と、支持フレーム152と、を備えている。
本体フレーム151は、正面視において、矩形枠状に形成されている。本体フレーム151は、一対の縦杆部155と、上杆部157と、第1連結フレーム158(
図4参照)と、第2連結フレーム159と、を備えている。
【0033】
一対の縦杆部155は、左右方向に離間して配置されている。縦杆部155は、下部フレーム150と、主杆部153と、を備えている。
下部フレーム150の前端は、側杆部131の後端に回動自在に連結されている。側杆部131と下部フレーム150とが連結された箇所を「連結部122」という。すなわち、側杆部131と縦杆部155(詳しくは下部フレーム150)とは、連結部122において軸線O1回りに回動自在に連結されている。
【0034】
下部フレーム150は、後方に向かうに従い上昇するように傾斜している。下部フレーム150の後端部の内面(左右方向の内側の面)には、保持凹部154(
図5参照)が形成されている。
【0035】
主杆部153は、下部フレーム150の後端から上方に向けて延びている。詳しくは、主杆部153は、第1部分153aと、第2部分153bとを備える。第1部分153aは、下部フレーム150の後端から、上方に向かうに従い前進するように傾斜して延びる。第2部分153bは、第1部分153aの上端から、上方に向かうに従い後退するように傾斜して延びる。
【0036】
座フレーム120の側杆部131と、背フレーム123の縦杆部155とは、第一杆体124を構成する。一対の第一杆体124は、左右方向に離間して配置されている。一対の第一杆体124は、左右方向に並んで対向配置されている。
【0037】
上杆部157は、左右方向に延びる。上杆部157は、一対の縦杆部155の上端部に架け渡されている。上杆部157は、一対の縦杆部155の上端部どうしを連結する。
【0038】
図4は、椅子本体3の一部断面状態の斜視図である。
図5は、椅子本体3の一部断面状態の分解斜視図である。
図4および
図5に示すように、第1連結フレーム158は、左右方向に延在する杆体である。第1連結フレーム158の長さ方向に直交する断面は、例えば、円形状である。第1連結フレーム158は、例えば、金属製である。第1連結フレーム158は、一対の下部フレーム150の後端部に架け渡されている。第1連結フレーム158は、一対の下部フレーム150の後端部どうしを連結する。第1連結フレーム158は、第一杆体124とは別体である。第1連結フレーム158は、「第二杆体」の例である。
【0039】
第1連結フレーム158は、弾性的に撓み変形可能である。第1連結フレーム158は、例えば、第1連結フレーム158に曲げ方向の力を加えたときに、撓み変形が目視により確認できる程度の曲げ特性を有する。
第1連結フレーム158は、上杆部157に比べて連結部122に近い位置に設けられている(
図3参照)。
【0040】
図5に示すように、第1連結フレーム158の両端部は、それぞれホルダ40を介して縦杆部155に結合されている。すなわち、第1連結フレーム158の一端部は、第1のホルダ40を介して一方の縦杆部155に結合されている。第1連結フレーム158の他端部は、第2のホルダ40を介して他方の縦杆部155に結合されている。
【0041】
図6は、椅子1の一部を拡大した分解斜視図である。
図7は、第1連結フレーム158および第2連結フレーム159の、長さ方向に沿う断面図である。
図6および
図7に示すように、ホルダ40は、ホルダ本体41と、締結具42(ボルト)と、受け具43(ナット)とを備える。ホルダ本体41は、ブロック状に形成されている。ホルダ本体41には、第1挿通孔41aと、第2挿通孔41bと、第3挿通孔41cとを有する。
図7に示すように、ホルダ本体41には、受け具43を保持する嵌合凹部41dが形成されている。ホルダ40は、縦杆部155の保持凹部154に嵌合する。
【0042】
図6および
図7に示すように、第1連結フレーム158の端部は、ホルダ40の第1挿通孔41aに挿入されている。
【0043】
図4および
図5に示すように、第2連結フレーム159は、杆部171と、カバー体172とを備える。
第2連結フレーム159は、一対の縦杆部155に架け渡されている(
図3参照)。詳しくは、第2連結フレーム159は、一対の下部フレーム150の後端部に架け渡されている。第2連結フレーム159は、一対の下部フレーム150の後端部どうしを連結する。
【0044】
杆部171は、左右方向に延在する杆体である。杆部171の長さ方向に直交する断面は、例えば、円形状である。杆部171は、例えば、金属製である。杆部171は、一対の縦杆部155に架け渡されている。詳しくは、杆部171は、一対の下部フレーム150の後端部に架け渡されている。杆部171の端部は、ホルダ40の第2挿通孔41b(
図6参照)に挿入されている。
杆部171は、弾性的に撓み変形可能である。杆部171は、例えば、杆部171に曲げ方向の力を加えたときに、撓み変形が目視により確認できる程度の曲げ特性を有する。
【0045】
図8は、椅子1の第1連結フレーム158および第2連結フレーム159の、長さ方向に直交する断面図である。
図5および
図8に示すように、カバー体172は、前板部173と、主板部174と、複数の保持板175、とを備える。カバー体172は、「カバー体」の例である。
【0046】
主板部174は、左右方向に延在する長板状に形成されている。主板部174は、後方に向かうに従い下降するように傾斜している主部174Aを有する。主板部174は、第1連結フレーム158が後方に変位するのを規制することができる。
【0047】
前板部173は、左右方向に延在する長板状に形成されている。前板部173は、主板部174の下面から垂下する。前板部173は、前後方向に対して交差する板状とされている。前板部173は、例えば、前後方向に対してほぼ垂直な板状であってよい。前板部173は、上端部から下方に向かうに従い前進または後退するように傾斜していてもよい。
【0048】
カバー体172の下面側には、前板部173の後面173aと、主板部174の下面174aとによって、収容凹部176が形成されている。収容凹部176は、第1連結フレーム158の少なくとも一部を収容する。収容凹部176は、下向きに開放された凹部である。収容凹部176は、「凹部」の例である。
【0049】
本実施形態では、第1連結フレーム158は、長さ方向の少なくとも一部で収容凹部176に係合する。第1連結フレーム158は、長さ方向の一部(例えば、中央部のみ)で収容凹部176に係合してもよいし、全長にわたって収容凹部176に係合してもよい。
第1連結フレーム158は、収容凹部176に係合すると、例えば、前板部173、主板部174および保持板175によって、前方および後方への変位が規制された状態で収容凹部176に収容される。この場合、収容凹部は、「係合凹部」ともいう。なお、第1連結フレーム158は、収容凹部176に係合していなくてもよい。
【0050】
保持板175は、左右方向に対して交差する板状とされている。保持板175は、例えば、左右方向に対して垂直な板状とされている。保持板175は、前板部173の後面173aから主板部174の下面174aにかけて形成されている。
【0051】
保持板175の後端縁は、後方に向かうに従い上昇するように傾斜している。保持板175の後端縁は、第1連結フレーム158が前方に変位するのを規制することができる。
複数の保持板175は、左右方向(カバー体172の長さ方向)に間隔をおいて形成されている。
【0052】
保持板175には、杆部171が係合する凹部177が形成されている。凹部177は、保持板175の前端縁から、斜め後方に向かって凹状に形成されている。杆部171は、前板部173より後方に配置される。杆部171は、前板部173によって前方移動が規制された状態で凹部177に係合する。
【0053】
カバー体172は、後述する第1張材111の第1保持部113を覆う機能を有する。カバー体172によって、第1保持部113の少なくとも一部は外から見えにくくなる。例えば、第1保持部113はカバー体172に覆われた位置にあるため、前方または後方から見たときに、第1保持部113の少なくとも一部は、カバー体172およびこれを覆う第2張材112によって視認できなくなっている。
【0054】
図9は、椅子1の一部の斜視図である。
図9に示すように、主板部174は、全体として、下向きに凸となる湾曲形状を有する。主板部174の湾曲形状は、例えば、円弧状、楕円弧状などである。主板部174は、長さ方向の中央に近いほど低く位置する。
【0055】
主板部174が湾曲しているため、第1連結フレーム158は、少なくともカバー体172の長さ方向の中央部において収容凹部176に係合しやすくなる(
図4参照)。第1連結フレーム158は、弾性的に撓み変形可能であると、カバー体172の形状に沿う曲げ形状となる。第1連結フレーム158は、下方に凸となるように撓み変形した状態で、自らの弾性により収容凹部176に係合する。
【0056】
図7に示すように、締結具42は、第3挿通孔41cに挿入され、受け具43の孔部に挿通する。締結具42の先端は保持凹部154の最奥面154aに当接する。これにより、ホルダ40の左右方向の変位が規制されるため、ホルダ40は縦杆部155に対して位置決めされる。
【0057】
第1連結フレーム158および第2連結フレーム159を第一杆体124に組み付けるには、次の方法をとることができる。
ホルダ40は、締結具42を後退させ、ホルダ本体41から左右方向の外側への締結具42の突出長さを短くしておく。ホルダ40を第1連結フレーム158および杆部171の両端部にそれぞれ取り付ける。両端部にホルダ40が取り付けられた第1連結フレーム158および杆部171を「ホルダ付きフレーム」という。
【0058】
ホルダ付きフレームに、カバー体172を装着する。ホルダ付きフレームの一端部を、一方の縦杆部155の保持凹部154に深く挿入する。次いで、ホルダ付きフレームを他方の縦杆部155に近づく方向に移動させ、ホルダ付きフレームの他端部を他方の縦杆部155の保持凹部154に挿入する。これにより、ホルダ付きフレームは、両端部がそれぞれ保持凹部154に挿入された状態となる。
【0059】
ホルダ40の締結具42を前進させ、ホルダ本体41から左右方向の外側への締結具42の突出長さを長くする。締結具42の先端は保持凹部154の最奥面154aに当接する。これにより、ホルダ40の左右方向の変位が規制されるため、ホルダ付きフレームは縦杆部155に対して位置決めされる。
【0060】
なお、ホルダ本体41の位置決め構造としては、保持凹部154の最奥部に、雌ネジを有する挿通孔が形成され、締結具42がこの挿通孔に締結される構造を採用してもよい。ホルダ本体41の位置決め構造としては、インサート成形などにより、締結具42が締結される受け具(ナット)が保持凹部154の最奥部に埋設された構造を採用してもよい。
【0061】
図3に示すように、支持フレーム152は、下部フレーム150どうしを連結する。支持フレーム152は、一対の下部フレーム150に架け渡されている。支持フレーム152は、一対の接続フレーム160と、支基連結部161と、を備えている。
接続フレーム160は、各下部フレーム150から左右方向の内側に向けて延びている。支基連結部161は、一対の接続フレーム160どうしを連結している。
【0062】
図2に示すように、第1張材111は、座フレーム120の外周縁に留められることで、座フレーム120の開口部を上方から塞ぐ。詳しくは、第1張材111は、座フレーム120の外周縁および下部フレーム150の外周縁に留められている。第1張材111は、例えば、第1張材111の周縁に設けられた板状の縁材を、座フレーム120および下部フレーム150に形成された溝に挿入することによって、座フレーム120および下部フレーム150に留められている。第1張材111の左右の側縁は、側杆部131および下部フレーム150に留められている。第1張材111の前縁は、前杆部130に留められている。
【0063】
第1張材111は、座面100aを構成する。第1張材111は、一対の側杆部131の間、および一対の下部フレーム150の間に張設されている。第1張材111は、「張材」の例である。
【0064】
第2張材112は、背フレーム123の外周縁に留められることで、背フレーム123の開口部を前方から塞ぐ。詳しくは、第2張材112は、第2張材112の周縁に設けられた板状の縁材を、背フレーム123に形成された溝に挿入することによって、背フレーム123に留められている。第2張材112の左右の側縁は、主杆部153に留められている。第2張材112の上縁は、上杆部157に留められている。
第2張材112は、背受け面101aを構成する。第2張材112は、一対の縦杆部155(詳しくは、主杆部153)の間に張設されている。
【0065】
第1張材111および第2張材112は、例えば、多孔シート状の張材である。第1張材111および第2張材112は、例えば、伸縮性を有する合成樹脂製繊維がメッシュ状に組み合わされて形成されたメッシュ材である。第1張材111および第2張材112は、座100に対する背凭れ101の回動等に追従して変形することができる。第1張材111および第2張材112は、透視性を有する。すなわち、厚さ方向に透視可能(すなわち一方の面側から背面側を透視可能)であってもよい。
多孔シート状の張材としては、メッシュ材のほか、多数の貫通孔を形成したパンチング材を挙げることができる。第1張材111および第2張材112は、多孔シート状に限らず、例えば、布状、フィルム状等に形成されていてもよい。
【0066】
図8に示すように、第1張材111の後端部には、第1張材111が第1連結フレーム158を囲んでループ状に折り返された第1保持部113が形成されている。折り返されて重ねられた第1張材111は、結合部114において縫合、溶着などにより互いに結合される。結合部114では、第1張材111は、互いに同じ面が重ねられて結合されている。すなわち、結合部114では、第1張材111のオモテ面同士またはウラ面同士が重ねられている。本実施形態では、結合部114は、筒状部113Aから斜め下向き前方に延出する。
【0067】
第1保持部113は、第1連結フレーム158を囲む筒状部113Aと、結合部114とを含む。第1保持部113(詳しくは、筒状部113A)には、第1連結フレーム158が挿通している。第1保持部113は、第1張材111を第1連結フレーム158に取り付ける構造である。第1保持部113は、「取付け部」および「保持部」の例である。
【0068】
第1保持部113および第1連結フレーム158は、カバー体172に覆われている。側面視において、第1保持部113の少なくとも一部は、カバー体172の収容凹部176に収容されている。本実施形態では、側面視において、第1保持部113および第1連結フレーム158は、全体が収容凹部176に収容されている。そのため、第1保持部113は、外部から見えにくくなっている。第1保持部113および第1連結フレーム158は、保持凹部154(
図5参照)に挿入された部分以外、平面視においてカバー体172に包含される位置にある。
【0069】
図10は、椅子1の、第1連結フレーム158および第2連結フレーム159の断面を示す斜視図である。
図11は、椅子1の、第1連結フレーム158および第2連結フレーム159の断面を示す斜視図である。
図10および
図11に示すように、第2張材112の下端部には、第2張材112が第2連結フレーム159を囲む筒状とされた第2保持部115が形成されている。第2保持部115の構造は次のとおりである。第2張材112は、第2連結フレーム159の前を下方に延び、前板部173の下端部を経由して第2連結フレーム159の下に回り込んで収容凹部176に入る。
【0070】
第2張材112は、収容凹部176の内面と第1保持部113との間を通って、主板部174の後端部を経由して第2連結フレーム159の後ろに回り込む。第2張材112は、主板部174の上面に沿って前進し、第2連結フレーム159の前で第2張材112の後面に重ねられる。重ねられた第2張材112同士は、結合部116において縫合、溶着などにより結合される。結合部116では、第2張材112は、互いに異なる面(オモテ面とウラ面)が重ねられて結合されている。
【0071】
収容凹部176内において、第2張材112は、第1連結フレーム158によって持ち上げられている。そのため、第2張材112は、前板部173の下端部および主板部174の後端部に当接している。
【0072】
第2保持部115には、第2連結フレーム159が挿通している。第2保持部115は、第2張材112を第2連結フレーム159に取り付ける構造(取付け部)である。
【0073】
第2保持部115の周長は一定であってよい。すなわち、第2保持部115の周長は、左右方向のいずれの位置においても同一であってよい。
第2保持部115は、第2連結フレーム159が挿通していない状態で、左右方向に直線的に延在するように形成されていてもよい。第2保持部115は、直線的な形状であると、カバー体172の湾曲に応じて湾曲している場合に比べて、製造が容易である。直線状の第2保持部115は、結合部116における縫製の見栄えが良くなるという利点もある。
【0074】
第1張材111は、第2保持部115の下端部に近接または当接している。詳しくは、第1張材111は、カバー体172の前板部173の下端部において第2張材112の下面に近接または当接している。第1張材111は、前板部173の下端部によって押下げられていてもよい。第1張材111は、第2保持部115の下端部に近接または当接しているため、第1張材111と第2張材112との間には隙間がない、または隙間が非常に小さい。そのため、椅子1を前方から見ると、第1張材111と第2張材112とは、隙間なく連続する、または、一体性をもって隣り合うように見える。よって、椅子1は、第1張材111および第2張材112が一対の第一杆体124の間に張設された構造について、外観が良好であるといえる。
【0075】
図12は、椅子1の、第1連結フレーム158および第2連結フレーム159の断面を示す斜視図である。
図12に示すように、カバー体172の主板部174は湾曲形状を有する。そのため、主板部174は、長さ方向の端部に近いほど高く位置する。そのため、長さ方向の端部に近い領域では、主板部174は、主部174Aと、端板部174Bとを有する屈曲形状となっている。主部174Aは、後方に向かうに従い下降するように傾斜している。端板部174Bは、主部174Aの後端部から垂下する。端板部174Bの高さ寸法は、長さ方向の端部に近いほど大きい。
【0076】
カバー体172の長さ方向に直交する断面において、主板部174の前端部と、および主板部174の後端部と、第1連結フレーム158の外周面と、前板部173の下端部とを通って主板部174の前端部に至る外接図形(閉じた図形)の周長は、カバー体172の長さ方向の位置によらず、一定であることが望ましい。
【0077】
主板部174が主部174Aと端板部174Bとを有する場合、外接図形は、主部174Aの前端部と、主部174Aの後端部と、端板部174Bの下端部と、第1連結フレーム158の外周面と、前板部173の下端部とを通って主部174Aの前端部に至る図形である。
【0078】
図12において、外接図形S1の周長と、外接図形S2の周長と、外接図形S3の周長とは等しい。
外接図形S1は、カバー体172の端部に近い位置P1で長さ方向に直交する断面の外接図形である。外接図形S2は、カバー体172の端部から離れた位置P2で長さ方向に直交する断面の外接図形である。位置P2は、位置P1よりカバー体172の長さ方向の中央に近い位置である。外接図形S3は、カバー体172の端部からさらに離れた位置P3で長さ方向に直交する断面の外接図形である。位置P3は、位置P2よりカバー体172の長さ方向の中央に近い位置である。
【0079】
位置P1および位置P2における主板部174は、主部174Aと端板部174Bとを有する。位置P2における端板部174Bの高さ寸法は、位置P1における端板部174Bの高さ寸法より小さい。位置P3における主板部174は、端板部174Bをもたない。
【0080】
カバー体172の外接図形の周長が一定であると、第2保持部115の周長を一定とすることができる。そのため、第2保持部115の作製が容易となる。
【0081】
<肘掛け4>
図1および
図2示すように、肘掛け4は、接続フレーム160から左右両側にそれぞれ延設された後、座100に対して左右両側で上方に向けて延設されている。肘掛け4は、着座者の腕等を下方から支持する。
【0082】
(本実施形態による効果)
本実施形態の椅子1は、第1張材111の第1保持部113がカバー体172に覆われるため、第1保持部113は外から見えにくくなる。そのため、第1保持部113によって椅子1の外観が損なわれることがない。よって、外観が良好な椅子1が得られる。
【0083】
第1張材111の第1保持部113は、第1張材111が第1連結フレーム158を囲んでループ状に折り返されている。第1保持部113の構造が簡略であるため、第1保持部113の作製は容易である。
【0084】
カバー体172は、第1連結フレーム158の少なくとも一部を収容する収容凹部176を有する。そのため、第1保持部113を外から見えにくくすることができる。
【0085】
第1連結フレーム158は、収容凹部176に係合する。これにより、第1連結フレーム158の前後方向の変位を規制できるため、第1連結フレーム158およびカバー体172の位置決めが容易となる。
【0086】
第1連結フレーム158は、弾性的に撓み変形可能であると、カバー体172が湾曲形状である場合に、カバー体172に応じた形状となる。そのため、カバー体172に対する第1連結フレーム158の位置決めは容易となる。
第1連結フレーム158は、弾性的に撓み変形可能であると、第1張材111に入力された着座荷重に応じて撓み変形することで、柔軟な着座感が得られる。
【0087】
第1連結フレーム158は、連結部122に近い位置に設けられているため、第一杆体124と一体に形成しにくい位置にあるといえる。しかし、第1連結フレーム158は第一杆体124とは別体であるため、第一杆体124と一体成形する必要はない。そのため、製造用の金型の構造は複雑とならない。よって、製造コストを抑制できる。
【0088】
椅子1は、座100の第1張材111と、背凭れ101の第2張材112とが別体であるため、座100が受けた荷重の影響は第2張材112に及びにくい。背凭れ101が受けた荷重の影響は第1張材111に及びにくい。そのため、着座時の第1張材111および第2張材112の変形を抑制できる。よって、着座感に優れた椅子1が得られる。
【0089】
(その他の変形例)
以上、本開示の好ましい実施形態を説明したが、本開示はこれら実施形態に限定されることはない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本開示は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0090】
上述の実施形態では、第1張材111は、ループ状の第1保持部113によって第1連結フレーム158(第二杆体)に取り付けられるが、張材が第二杆体に取り付けられる構造は特に限定されない。例えば、張材は、張材の周縁部に設けられた板状の縁材を第二杆体の溝に挿入することによって第二杆体に取り付けてもよい。この例では、取付け部は、縁材が第二杆体の溝に挿入された箇所である。
張材は、タッカーによって第二杆体に取り付けてもよい。この例では、取付け部は、タッカーによって張材が第二杆体に取り付けられた箇所である。
【0091】
上述の実施形態では、第2張材112は、筒状の第2保持部115によって第2連結フレーム159に取り付けられるが、第2張材が第2連結フレームに取り付けられる構造は、第2連結フレームを囲む筒状の保持部でなくてもよい。例えば、取付け構造として、第2張材の縁材がカバー体の溝に挿入される構造を採用してもよい。
【0092】
上述の実施形態では、カバー体172は、前板部173と主板部174とを備える構造であるが、カバー体の構造は特に限定されない。カバー体は、例えば、主板と、主板の前端から垂下する前板と、主板の後端から垂下する後板とを備えた構造であってもよい。このカバー体は、主板と、前板と、後板とに囲まれた内部空間(収容凹部)に第二杆体および取付け部を収容できる。カバー体は、例えば、半パイプ状の形状であってもよい。このカバー体は、内部空間(収容凹部)に第二杆体および取付け部を収容できる。
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…椅子
2…支持構造体
3…椅子本体(椅子用荷重支持部材)
100…座
100a…座面(荷重受面)
101…背凭れ
111…第1張材(張材)
113…第1保持部(保持部、取付け部)
120…座フレーム
122…連結部
123…背フレーム
124…第一杆体
131…側杆部
155…縦杆部
157…上杆部
158…第1連結フレーム(第二杆体)
172…カバー体
176…収容凹部(凹部)