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特許7741009三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20250909BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20250909BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20250909BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20250909BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250909BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20250909BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20250909BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20250909BHJP
   B22F 10/12 20210101ALI20250909BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/165
B29C64/379
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B22F12/90
B29C64/129
B22F10/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022027655
(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公開番号】P2023124079
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2025-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】324012246
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-056574(JP,A)
【文献】特開2020-142498(JP,A)
【文献】特開2019-072967(JP,A)
【文献】特開2020-044833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072637(US,A1)
【文献】特表2020-506094(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B29C 64/165
B29C 64/379
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B33Y 50/02
B22F 12/90
B29C 64/129
B22F 10/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する三次元造形装置であって、
硬化層の形成に寄与しない光からなる画像を投影するプロジェクタを備え、
前記プロジェクタは、造形物の三次元データを前記硬化層の積層方向に射影した画像を造形槽の上方から前記造形槽に投影する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する三次元造形装置であって、
硬化層の形成に寄与しない光からなる画像を投影するプロジェクタを備え、
前記プロジェクタは、造形物の三次元データに基づいて積層する硬化層を形成するための各硬化層の二次元データを重ね合わせた画像を造形槽の上方から前記造形槽に投影する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
前記プロジェクタは、前記造形槽において造形物が造形された造形位置に画像を投影する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
前記プロジェクタは、前記造形槽において造形物が造形される予定の造形位置に画像を投影する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4のいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
粉末材料を硬化させる硬化液を吐出するヘッドを有するキャリッジを備え、
前記プロジェクタは、前記キャリッジに搭載されている
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項6】
造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する造形工程と、
前記造形物の三次元データを前記硬化層の積層方向に射影した画像を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成された画像を、プロジェクタによって前記硬化層の形成に寄与しない光により造形槽の上方から前記造形槽に投影する投影工程と
を有することを特徴とする造形物の造形位置の表示方法。
【請求項7】
造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する造形工程と、
造形物の三次元データに基づいて積層する硬化層を形成するための各硬化層の二次元データを重ね合わせた画像を生成する生成工程と、
前記生成工程で生成された画像を、プロジェクタによって前記硬化層の形成に寄与しない光により造形槽の上方から前記造形槽に投影する投影工程と
を有することを特徴とする造形物の造形位置の表示方法。
【請求項8】
請求項6または7のいずれか1項に記載の造形物の造形位置の表示方法において、
前記投影工程は、前記造形工程の後に実行される
ことを特徴とする造形物の造形位置の表示方法。
【請求項9】
請求項6または7のいずれか1項に記載の造形物の造形位置の表示方法において、
前記投影工程は、前記造形工程の前に実行される
ことを特徴とする造形物の造形位置の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法に関する。さらに詳細には、本発明は、粉末材料を原料として三次元形状の造形物を造形する三次元造形装置および粉末材料を原料として造形された三次元形状の造形物の造形位置や粉末材料を原料として三次元形状の造形物が造形される予定の造形位置を表示する造形物の造形位置の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉末材料を原料として三次元形状の造形物を造形する手法として、硬化液(バインダー)により粉末材料を結合して硬化させて形成した層である硬化層を積層することにより造形物を造形する粉末固着積層方式が広く知られている。
【0003】
従来、こうした粉末固着積層方式による三次元造形装置は、上部が開放した粉末材料を貯留する供給槽と、供給槽から粉末材料を供給されて三次元形状の造形物を造形する上部が開放した造形槽と、供給槽から造形槽に供給された粉末材料のうちで造形槽に充填しきれなかった粉末材料や造形槽において造形に用いられなかった粉末材料を回収する上部が開放した排出槽と、造形槽に供給された粉末材料に対して当該粉末材料を硬化する硬化液を吐出する単数または複数のヘッドとを有して構成されている。
【0004】
こうした粉末固着積層方式による三次元造形装置において所望の三次元形状の造形物を造形する際には、まず、供給槽から造形槽に粉末材料を供給して敷き詰め、造形槽に所定の厚さの粉末材料よりなる粉末材料層を形成する。
【0005】
次に、この造形槽に形成された粉末材料層に対して、造形予定の三次元形状の造形物を積層方向と直交する平面方向に沿って切断した際の断面形状を示す断面画像データたる二次元データ(スライスデータ)に基づいて、単数または複数のヘッドから粉末材料を硬化する硬化液を吐出して、当該二次元データに基づく断面形状を硬化させた粉末材料層たる硬化層を形成する。
【0006】
その後、断面形状を硬化させた硬化層上に所定の厚さの新たな粉末材料層を形成し、この粉末材料層に対して、上記により硬化させた断面形状の次の断面形状を表す二次元データに基づいてヘッドから硬化液を吐出し、当該二次元データに基づく断面形状を硬化させた粉末材料層たる硬化層を形成する。
【0007】
そして、上記した処理を繰り返し行い、全ての二次元データに基づく断面形状を順次硬化させた硬化層を形成して積層することにより、所望の三次元形状の造形物を造形する。
【0008】
なお、上記した二次元データ(スライスデータ)は、造形予定の三次元形状の造形物をあらわす三次元データから公知の技術により生成することができる。
【0009】
ところで、上記したような従来の三次元造形装置によれば、造形槽において造形された三次元形状の造形物は当該造形槽に供給された粉末材料の中に埋もれてしまっており、作業者は造形槽における造形位置に造形した造形物を視認することができないため、作業者にとって造形された造形物を造形槽内から取り出すことは容易ではないということが指摘されていた。
【0010】
こうした指摘に鑑みて、例えば、特許文献1として提示する特開2019-72967号公報には、造形槽内から造形後の造形物を取り出しやすくするために、造形槽内において造形物が造形される造形プレートに貫通穴を設け、当該造形プレートよりも下方にある造形テーブルを下降させることにより、造形槽内に貯留されている硬化していない粉末材料を当該造形テーブルに落下させて、作業者が造形物を造形槽内から取り出し易くするようにした三次元造形装置が提案されている。
【0011】
しかしながら、上記した特開2019-72967号公報に開示された三次元造形装置によれば、造形槽の構成が煩雑化するため、より簡素な構成により作業者が造形槽内から容易に三次元形状の造形物を取り出すことのできる新たな手法の提案が要望されていた。
【0012】
また、上記したような従来の三次元造形装置において、例えば、大型の三次元形状の造形物を作製する際には、当該造形物を支えるための部材であるサポート材を予め造形槽内において当該造形物が造形される予定の位置である造形位置に配置しておき、当該サポート材を利用して当該造形物の造形を行うようにしていた。
【0013】
従来、こうしたサポート材を造形槽内に設置する際には、三次元形状の造形物が造形される予定の造形位置を作業者が目測して、この作業者の目測による造形位置にサポート材を配置するようにしていた。
【0014】
このため、作業者の目測によりサポート材を配置した位置と実際に三次元形状の造形物が造形される造形位置との間で位置ずれが生じてしまう場合があり、この場合にはサポート材により当該造形物を十分に支えることができないということが指摘されていた。
【0015】
こうした指摘に鑑みて、例えば、特許文献2として特許第6763993号公報には、3Dプリンタにおいて、3Dオブジェクトデータから3Dオブジェクトの境界を検出し、印刷ステージに3Dオブジェクトが収まるか否かを判定する方法が提案されている。
【0016】
しかしながら、上記した特許第6763993号公報に開示された方法によれば、煩雑な処理手順より3Dオブジェクトデータから3Dオブジェクトの境界を検出しているため、より簡素な手法により作業者が三次元形状の造形物が造形される予定の位置の造形位置を取得することのできる新たな手法の提案が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2019-72967号公報
【文献】特許第6763993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、従来の技術の有する上記したような種々の要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の技術と比較するとより簡素な手法を用いることにより、作業者が造形槽内から容易に三次元形状の造形物を取り出すことを可能にした三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法、ならびに、作業者が三次元形状の造形物が造形される予定の造形位置を取得することを可能にした三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記した目的を達成するために、本発明による三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法は、プロジェクタを用いて三次元形状の造形物にかかる画像を造形槽に投影するようにしたものである。
【0020】
従って、本発明による三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法によれば、プロジェクタにより画像を投影するという簡素な手法により、作業者は、造形槽における造形された三次元形状の造形物の造形位置や、造形槽において三次元形状の造形物が造形される予定の造形位置を視認することができるようになる。
【0021】
このため、作業者は、造形槽内から造形された三次元形状の造形物を容易に取り出すことができるようになり、また、三次元形状の造形物が造形される予定の造形位置にサポート材を適切に設置することができるようになる。
【0022】
即ち、本発明は、造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する三次元造形装置であって、硬化層の形成に寄与しない光からなる画像を投影するプロジェクタを備え、上記プロジェクタは、造形物の三次元データを上記硬化層の積層方向に射影した画像を造形槽の上方から上記造形槽に投影するようにしたものである。
【0023】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形された位置または造形される予定の位置を視認することができるようになる。
【0024】
また、本発明は、造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する三次元造形装置であって、硬化層の形成に寄与しない光からなる画像を投影するプロジェクタを備え、上記プロジェクタは、造形物の三次元データに基づいて積層する硬化層を形成するための各硬化層の二次元データを重ね合わせた画像を造形槽の上方から上記造形槽に投影するようにしたものである。
【0025】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形された位置を視認することができるようになる。また、上記した本発明によれば、三次元造形装置で投影する画像を生成することができるようになる。
【0026】
また、本発明は、上記した本発明において、上記プロジェクタは、上記造形槽において造形物が造形された造形位置に画像を投影するようにしたものである。
【0027】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形された位置を確実に視認することができるようになる。
【0028】
また、本発明は、上記した本発明において、上記プロジェクタは、上記造形槽において造形物が造形される予定の造形位置に画像を投影するようにしたものである。
【0029】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形される予定の位置を造形前に視認することができるようになる。
【0030】
また、本発明は、上記した本発明において、粉末材料を硬化させる硬化液を吐出するヘッドを有するキャリッジを備え、上記プロジェクタは、上記キャリッジに搭載されているようにしたものである。
【0031】
従って、上記した本発明によれば、造形槽の上方から画像を造形槽に投影することができるようになる。
【0032】
また、本発明は、造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する造形工程と、上記造形物の三次元データを上記硬化層の積層方向に射影した画像を生成する生成工程と、上記生成工程で生成された画像を、プロジェクタによって上記硬化層の形成に寄与しない光により造形槽の上方から上記造形槽に投影する投影工程とを有するようにしたものである。
【0033】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形された位置または造形される予定の位置を視認することができるようになる。
【0034】
また、本発明は、造形槽において粉末材料の硬化層を積層させて三次元形状の造形物を造形する造形工程と、造形物の三次元データに基づいて積層する硬化層を形成するための各硬化層の二次元データを重ね合わせた画像を生成する生成工程と、上記生成工程で生成された画像を、プロジェクタによって上記硬化層の形成に寄与しない光により造形槽の上方から上記造形槽に投影する投影工程とを有するようにしたものである。
【0035】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形された位置を視認することができるようになる。また、上記した本発明によれば、三次元造形装置で投影する画像を生成することができるようになる。
【0036】
また、本発明は、上記した本発明において、上記投影工程は、上記造形工程の後に実行されるようにしたものである。
【0037】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形された位置を確実に視認することができるようになる。
【0038】
また、本発明は、上記した本発明において、上記投影工程は、上記造形工程の前に実行されるようにしたものである。
【0039】
従って、上記した本発明によれば、造形物が造形される予定の位置を造形前に視認することができるようになる。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、以上説明したように構成されているので、従来の技術と比較するとより簡素な手法によって、作業者は造形槽内から三次元形状の造形物を容易に取り出すことができるようになり、また、作業者は三次元形状の造形物が造形される予定の造形位置を取得することができるようになるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の実施の形態の一例による三次元造形装置の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図である。
図2図2は、図1に示す三次元造形装置のA矢視における内部構造を模式的に示す説明図である。
図3図3は、造形物をあらわす三次元データを硬化層の積層方向に射影した画像である射影画像を模式的に示す説明図である。
図4図4は、各硬化層を形成するための二次元データを当該硬化層の積層方向に重ね合わせた画像である重ね合わせ画像を模式的に示す説明図である。
図5図5は、図1に示す三次元造形装置における制御装置の本発明の実施に関連する機能的構成を示すブロック構成説明図である。
図6図6は、三次元造形装置における造形物の造形後にプロジェクタにより画像を投影した状態を模式的に示す説明図である。
図7図7は、三次元造形装置における造形物の造形前にプロジェクタにより画像を投影した状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形装置および造形物の造形位置の表示方法の実施の形態の一例を詳細に説明することとする。
【0043】
(I) 本発明による三次元造形装置の全体の構成の説明
【0044】
図1には、本発明の実施の形態の一例による三次元造形装置の構成を模式的に示す概略構成斜視説明図があらわされている。
【0045】
また、図2には、図1に示す三次元造形装置のA矢視における内部構造を模式的に示す説明図があらわされている。
【0046】
さらに、図3には、造形物をあらわす三次元データを硬化層の積層方向に射影した画像である射影画像を模式的に示す説明図があらわされている。
【0047】
さらにまた、図4には、各硬化層を形成するための二次元データを当該硬化層の積層方向に重ね合わせた画像である重ね合わせ画像を模式的に示す説明図があらわされている。
【0048】
三次元造形装置10は、その全体の動作を、例えば、マイクロコンピューターなどにより構築されるコンピューターシステムにより構成された制御装置200により制御されるものであり、制御装置200を内蔵した筐体12の内部に、上方端部に位置する開口部14aから内部に粉末材料を供給されて貯留する供給槽14と、供給槽14から供給される粉末材料を充填されて三次元形状の造形物が作製される上部が開放した造形槽16と、供給槽14から造形槽16に供給された粉末材料のうちで造形槽16に充填しきれなかった粉末材料や造形槽16において造形に用いられなかった粉末材料を回収する上部が開放した排出槽18とがそれぞれ形成されている。
【0049】
より詳細には、供給槽14と造形槽16と排出槽18とは、XYZ直交座標系におけるY軸方向に沿って並設されており、前方側から後方側に向かって、供給槽14、造形槽16、排出槽18の順で並んで配設されている。
【0050】
供給槽14は、内部に昇降板20が配設されており、この昇降板20は、モーター(図示せず。)により供給槽14内部を昇降可能な構成となっている。
【0051】
そして、供給槽14では、内部に粉末材料が貯留された状態で、昇降板20が上昇することにより、貯留された粉末材料を上昇させ、これにより、上方の開口部14aから所定量の粉末材料を上昇させることとなる。なお、こうして開口部14aから上昇した所定量の粉末材料は、キャリッジ22がY軸方向を前方側から後方側に移動することにより、キャリッジ22の後方側に設けられたローラー24によって前方側から後方側に押し進められ、供給槽14の後方側に位置する造形槽16に供給されることとなる。
【0052】
即ち、供給槽14においては、制御装置200により、粉末材料を供給槽14内に貯留する際には昇降板20が下降するように制御され、粉末材料を造形槽16に供給するときには昇降板20が上昇するように制御される。
【0053】
造形槽16は、内部に昇降板26が配設されており、この昇降板26は、モーター(図示せず。)により造形槽16内部を昇降可能な構成となっている。
【0054】
そして、造形槽16においては、上方の開口部16aと同じ高さ位置たる初期位置に位置する昇降板26を下降することにより、造形槽16内に所定量の粉末材料を充填可能な空間が形成される。
【0055】
こうして形成された空間には、ローラー24により前方側から後方側に押し進められた所定量の粉末材料が充填されることとなり、これにより、造形槽16に供給槽14から粉末材料が供給されて粉末材料層が形成されることになる。
【0056】
排出槽18は、内部に昇降板32が配設されており、この昇降板32は、モーター(図示せず。)により排出槽18内部を昇降可能な構成となっている。
【0057】
そして、排出槽18においては、上方の開口部18aと同じ高さ位置たる初期位置に位置する昇降板32を徐々に下降することにより、排出槽18内に粉末材料を収容可能な空間が徐々に拡大するように構成されている。
【0058】
こうして形成された空間には、供給槽14から造形槽16に供給された粉末材料のうちで造形槽16に充填しきれなかった粉末材料や造形槽16において造形に用いられなかった粉末材料が排出されて回収されることとなる。
【0059】
即ち、ローラー24により前方側から後方側に押し進められた所定量の粉末材料のうち、造形槽16に充填できなかった粉末材料や造形槽16において造形に用いられなかった粉末材料が、開口部18aから排出槽18に落下して収容されることとなる。
【0060】
ここで、粉末材料が開口部18aから排出槽18に落下して収容される際に、粉末材料による大量の粉塵が発生する。三次元造形装置10においては、こうした大量の粉塵の発生を抑制するため、排出槽18に収容されている粉末材料の排出量に応じて昇降板32を徐々に下降するようにして、粉末材料が開口部18aから落下する落下距離が短くなるように調整している。
【0061】
また、三次元造形装置10は、筐体12の上面部12aにおいて、Y軸方向に沿って延長して配設されたガイド部材28を備えている。
【0062】
このガイド部材28上に、当該ガイド部材28に沿ってY軸方向にモーター(図示せず。)により移動自在にキャリッジ22が配設されている。
【0063】
そして、キャリッジ22には、造形槽16に形成された粉末材料層に対して硬化液を吐出して硬化層を形成するためのヘッドとして、単数または複数のヘッド102が固定的に配設されている。このヘッド102には、硬化液を貯留したカートリッジ30から硬化液が供給される。
【0064】
なお、本実施の形態においては、3個のヘッド102が配設された場合について図示している。
【0065】
より詳細には、キャリッジ22はヘッドマウントプレート104を備えており、ヘッド102はヘッドマウントプレート104に固定されて装着されている。
【0066】
なお、ヘッド102とヘッドマウントプレート104とは、なるべく緊密に密着させるように精度よく配置される。
【0067】
符号106は、ヘッド102とヘッドマウントプレート104とを被覆する箱状のカバーである。
【0068】
カバー106の前方側の側面106a、即ち、排出槽18の側とは反対側の側面106aには、X軸方向に軸方向が延長して配置された半円筒形状の粉末材料回収部34が設けられている。
【0069】
なお、ローラー24は、キャリッジ22におけるヘッド102の後方側の位置に配設されている。
【0070】
さらに、三次元造形装置10は、キャリッジ22の上部22aに配置されたプロジェクタ100を備えている。
【0071】
このプロジェクタ100は、上記した粉末材料の硬化に寄与しない光を照射するものであって、上記した粉末材料の硬化に寄与しない光からなる画像を造形槽16の上方から造形槽16に向けて投影し、当該画像を造形槽16に投影することによって、作業者が当該画像を視認することができるようにする。
【0072】
ここで、プロジェクタ100により造形槽16に投影される画像は、造形物の三次元データを硬化層の積層方向に射影した画像や、各硬化層を形成するための二次元データを当該硬化層の積層方向に重ね合わせた画像である。
【0073】
なお、本明細書ならびに特許請求の範囲においては、「造形物の三次元データを硬化層の積層方向に射影した画像」を「射影画像」と適宜に称することとし、また、「各硬化層を形成するための二次元データを当該硬化層の積層方向に重ね合わせた画像」を「重ね合わせ画像」と適宜に称することとする。
【0074】
より詳細には、射影画像とは、図3に示すように、三次元形状の造形物400を示す三次元データを積層方向(Z軸方向)と直交する平面(XY平面)、即ち、粉末材料層ならびに硬化層の上面と平行な平面に射影した画像(射影画像)402である。
【0075】
また、重ね合わせ画像は、図4に示すように、三次元造形装置10により三次元形状の造形物500を造形するために、造形物500を示す三次元データから二次元データ(スライスデータ)502を生成するが、その二次元データ502を積層方向に重ね合わせた画像(重ね合わせ画像)504である。
【0076】
即ち、三次元造形装置10においては、造形物の三次元データに基づいて積層する硬化層を形成するための各硬化層の二次元データを生成し、ヘッド102から硬化液を吐出して硬化層を形成するために使用するが、この二次元データを順次記憶しておき、これにより重ね合わせて重ね合わせ画像を形成する。
【0077】
また、三次元造形装置10には、上記したように制御装置200が搭載されており、作業者は操作パネル300に設けられた各種の操作子を操作することによって、当該制御装置200により三次元造形装置10の動作を制御することができる。
【0078】
即ち、操作パネル300には、詳細な図示は省略するが、プロジェクタ100により造形槽16に投影する画像を選択する操作子を含む各種の操作を行うための操作子や当該操作子の操作状況などを表示する表示部などが設けられている。
【0079】
(II) 本発明による三次元造形装置における制御装置の機能的構成の説明
【0080】
図5には、図1に示す三次元造形装置における制御装置の本発明の実施に関連する機能的構成を示すブロック構成説明図があらわされている。
【0081】
制御装置200は、本発明の実施に関連する機能的構成として、上記した粉末材料の硬化に寄与しない光からなる画像を記憶する画像記憶部202と、プロジェクタ200を制御するプロジェクタ制御部204とを有して構成されている。
【0082】
より詳細には、画像記憶部202は、少なくとも、射影画像を記憶する射影画像記憶部202aと、重ね合わせ画像を記憶する重ね合わせ画像記憶部202bとを有して構成されている。
【0083】
ここで、射影画像記憶部202aは、三次元造形装置10で造形した造形物あるいは三次元造形装置10で造形予定の造形物毎に、公知の技術により生成した射影画像を記憶している。
【0084】
また、重ね合わせ画像記憶部202bは、三次元造形装置10で造形した造形物あるいは三次元造形装置10で造形予定の造形物毎に、公知の技術により生成した重ね合わせ画像を記憶している。
【0085】
プロジェクタ制御部204は、作業者が操作パネル300の操作子を操作して、射影画像記憶部202aに記憶された射影画像を選択した場合には、造形槽16において造形された造形物の造形位置、あるいは、造形槽16において造形物を造形する予定の造形位置に、当該選択した射影画像を投影するようにプロジェクタ100を制御する。
【0086】
また、プロジェクタ制御部204は、作業者が操作パネル300の操作子を操作して、重ね合わせ画像記憶部202bに記憶された重ね合わせ画像を選択した場合には、造形槽において造形された造形物の造形位置、あるいは、造形槽において造形物を造形する予定の造形位置に、当該選択した重ね合わせ画像を投影するようにプロジェクタ100を制御する。
【0087】
(III) 本発明による三次元造形装置における動作およびその制御方法の説明
【0088】
以上の構成において、三次元造形装置10は、その全体的な動作を制御装置200により制御されるものであるが、三次元造形物を造形する際の動作については上記において引用した特許文献などに開示された従来の技術を用いればよいので、その詳細な説明は省略するものとして、以下においては、図6ならびに図7を参照しながら本発明の実施に関連する事項についてのみ説明する。
【0089】
なお、図6には、三次元造形装置における造形物の造形後にプロジェクタにより画像を投影した状態を模式的に示す説明図があらわされている。
【0090】
また、図7には、三次元造形装置における造形物の造形前にプロジェクタにより画像を投影した状態を模式的に示す説明図があらわされている。
【0091】
三次元造形装置10においては、公知の技術により造形物の造形を終了した後においては、造形槽16において造形された造形物は造形槽16に供給された粉末材料の中に埋もれていて、作業者は造形槽16内において造形された造形物の造形位置を視認するができない。
【0092】
このため、三次元造形装置10においては、作業者が操作パネル300の操作子の操作により、記憶部202の射影画像記憶部202aに記憶されている造形された造形物にかかる射影画像を選択すると、プロジェクタ制御部204が当該選択された射影画像を読み出すとともに当該読み出した射影画像を投影するようにプロジェクタ100を制御して、図6に示すように、プロジェクタ100から当該読み出した射影画像を造形槽16における造形物の造形位置に投影する。
【0093】
これにより、作業者は造形物が造形された造形位置を視認しながら造形物を取り出すことが可能となり、造形物を破損することなく容易に取り出すことができる。
【0094】
なお、作業者が操作子の操作により、記憶部202の重ね合わせ画像記憶部202bに記憶されている造形された造形物にかかる重ね合わせ画像を選択した場合にも、上記した射影画像を選択した場合と同様にして、プロジェクタ100から重ね合わせ画像記憶部202bに記憶された重ね合わせ画像が造形槽16における造形物の造形位置に投影されるので、作業者は造形物が造形された造形位置を視認しながら造形物を取り出すことが可能となり、造形物を破損することなく容易に取り出すことができる。
【0095】
また、三次元造形装置10による造形物の造形前においては、作業者が操作パネル300の操作子の操作により、記憶部202の重ね合わせ画像記憶部202bに記憶されている造形する予定の造形物にかかる重ね合わせ画像を選択すると、プロジェクタ制御部204が当該選択された重ね合わせ画像を読み出すとともに当該読み出した重ね合わせ画像を投影するようにプロジェクタ100を制御して、図7に示すように、プロジェクタ100から当該読み出した重ね合わせ画像を、例えば、初期位置まで上昇している造形槽16の昇降板26における造形物が造形される予定の造形位置に投影する。
【0096】
これにより、作業者は、造形槽16の昇降板26に投影された重ね合わせ画像を目安にしてサポート材を適切な位置に配置することができる。
【0097】
その後に、配置したサポート材の厚さ分だけ造形槽16の昇降板26を下方に移動して粉末材料を敷き詰め、こうした粉末材料の敷き詰め後に公知の技術により造形物の造形を行う。
【0098】
なお、作業者が操作子の操作により、記憶部202の射影画像記憶部202aに記憶されている造形する予定の造形物にかかる射影画像を選択した場合にも、上記した重ね合わせ画像を選択した場合と同様にして、プロジェクタ100から射影画像記憶部202aに記憶されている射影画像が造形槽16の昇降板26における造形物が造形される予定の造形位置に投影されるので、作業者は造形槽16の昇降板26に投影された射影画像を目安にしてサポート材を適切な位置に配置することができる。
【0099】
(VI) 本発明による三次元造形装置の作用効果
【0100】
以上において説明したように、三次元造形装置10によれば、プロジェクタ100により射影画像や重ね合わせ画像を投影するという簡素な手法により、作業者は、造形槽16における造形物が造形された造形位置や、造形槽16において造形物が造形される予定の造形位置を視認することができるようになる。
【0101】
このため、作業者は、造形槽16内から造形された造形物を容易に取り出すことができるようになり、また、三次元造形物が造形される予定の造形位置にサポート材を適切に設置することができるようになる。
【0102】
(V) 他の実施の形態および変形例の説明
【0103】
上記した実施の形態は例示に過ぎないものであり、本発明は他の種々の形態で実施することができる。即ち、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0104】
例えば、上記した実施の形態は、以下の(V-1)乃至(V-9)に示すように変形するようにしてもよい。
【0105】
(V-1) 上記した実施の形態においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を参照しながら説明したが、これは説明の便宜上に過ぎないものであって、三次元造形装置10の設置態様を何ら限定するものではないことは勿論であって、また、本発明を何ら限定するものでもないことも勿論である。
【0106】
(V-2) 上記した実施の形態においては、三次元造形の手法として硬化液で粉末材料を結合して硬化させる方式について説明したが、粉末材料を硬化させる方式はこれに限られるものではないことは勿論である。例えば、粉末材料にレーザー光を照射することにより当該粉末材料を焼結して硬化させるようにしてもよい。あるいは、粉末材料として光硬化性を有するものを用い、当該粉末材料に紫外線を照射して当該粉末材料を硬化(結合)させるようにしてもよい。
【0107】
(V-3) 上記した実施の形態においては、作業者が操作パネル300の操作子を操作することにより、プロジェクタ100により投影する画像として射影画像か重ね合わせ画像かを選択するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、射影画像か重ね合わせ画像かのいずれか一方のみ記憶するようにしておき、当該記憶しておいた画像を自動的に投影するようにしてもよい。
【0108】
(V-4) 上記した実施の形態においては、供給槽14と造形槽16と排出槽18とをXYZ直交座標系におけるY軸方向に沿って並設し、前方側から後方側に向かって供給槽14、造形槽16、排出槽18の順で並んで配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0109】
(V-5) 上記した実施の形態においては、重ね合わせ画像記憶部202bに重ね合わせ画像を記憶するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、造形物の三次元データに基づいて生成した各層の二次元データを記憶部202に記憶しておき、プロジェクタ100により重ね合わせ画像を投影するタイミングで、記憶部202に記憶された二次元データを重ね合わせて重ね合わせ画像を生成して、この生成した重ね合わせ画像をプロジェクタ100により投影するようにしてもよい。
【0110】
(V-6) 上記した実施の形態においては、射影画像記憶部202aに記憶しておいた射影画像を読み出したり、あるいは、重ね合わせ画像記憶部202bに記憶しておいた重ね合わせ画像を読み出すことにより、プロジェクタ100により画像を投影するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、射影画像や重ね合わせ画像を記憶する記憶部を持たずに、プロジェクタ100に画像を投影するタイミングで射影画像や重ね合わせ画像を生成し、この生成した射影画像や重ね合わせ画像をプロジェクタ100により投影するようにしてもよい。
【0111】
(V-7) 上記した実施の形態においては、三次元造形装置10により射影画像や重ね合わせ画像を生成して記憶する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、三次元造形装置10とは異なる他の装置により射影画像や重ね合わせ画像を生成して、当該生成した射影画像や重ね合わせ画像を三次元造形装置10に記憶しておくようにしてもよい。あるいは、三次元造形装置10とは異なる他の装置により射影画像や重ね合わせ画像を生成したり記憶したりしておき、三次元造形装置10は他の装置により生成した射影画像や重ね合わせ画像を読み出すようにしてもよいし、三次元造形装置10は他の装置に記憶した画像を読み出すようにしてもよい。
【0112】
(V-8) 上記した実施の形態においては、プロジェクタ100は三次元造形装置10のキャリッジ22の上部22aに配置されていたが、プロジェクタ100の配置位置はこれに限定されるものではないことは勿論である。プロジェクタ100の配置位置は、造形槽16に上方から画像を投影できる位置であればよい。また、プロジェクタ100は、三次元造形装置10と別体であってもよい。例えば、プロジェクタ100は、三次元造形装置10の付近に設置された三脚等に固定されていてもよい。
【0113】
(V-9) 上記した実施の形態ならびに上記した(V-1)乃至(V-8)に示す各種の他の実施の形態や変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、粉末材料の硬化層を積層させて造形物を造形する粉末固着積層方式の三次元造形装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0115】
10 三次元造形装置
12 筐体
12a 上面部
14 供給槽
14a 開口部
16 造形槽
16a 開口部
18 排出槽
18a 開口部
20 昇降板
22 キャリッジ
22a 上部
24 ローラー
26 昇降板
28 ガイド部材
30 カートリッジ
32 昇降板
34 粉末材料回収部
100 プロジェクタ
102 ヘッド
104 ヘッドマウントプレート
106 カバー
106a 側面
200 制御装置
202 画像記憶部
202a 射影画像記憶部
202b 重ね合わせ画像記憶部
204 プロジェクタ制御部
300 操作パネル
400 造形物
402 射影画像
500 造形物
502 二次元データ(スライスデータ)
504 重ね合わせ画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7