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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-09
(45)【発行日】2025-09-18
(54)【発明の名称】汚物抜取ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/00 20060101AFI20250910BHJP
   F16L 27/053 20060101ALI20250910BHJP
   B61D 35/00 20060101ALN20250910BHJP
【FI】
F16L33/00 A
F16L33/00 B
F16L27/053
B61D35/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021188774
(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公開番号】P2023075707
(43)【公開日】2023-05-31
【審査請求日】2024-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513090150
【氏名又は名称】株式会社旭テクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂井 喜一
(72)【発明者】
【氏名】狭間 智也
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-058397(JP,A)
【文献】特開2009-014011(JP,A)
【文献】実開昭50-122911(JP,U)
【文献】特開平09-317921(JP,A)
【文献】特開2002-369776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0284116(US,A1)
【文献】中国実用新案第210101644(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/00
F16L 27/053
B61D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の汚物タンクに接続されるように構成された汚物抜取ホースであって、
ホース本体と、
前記ホース本体に接続されたカプラーと、
を備え、
前記カプラーは、
前記汚物タンクに設けられた排出バルブに脱着可能な接続部と、
前記ホース本体の端部に固定されると共に、前記接続部の前記ホース本体に対する姿勢が可変となるように前記接続部を保持する継手部と、
を有する、汚物抜取ホース。
【請求項2】
請求項1に記載の汚物抜取ホースであって、
前記接続部は、前記ホース本体と連通する流路が設けられた球体部を有し、
前記継手部は、
前記ホース本体と接続された連結配管と、
前記連結配管に固定されると共に、前記球体部を回転可能に収容するソケットと、
を有する、汚物抜取ホース。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の汚物抜取ホースであって、
前記ホース本体は、
外周面に螺旋状の溝が設けられたサクションホースと、
前記サクションホースの外周面に取り付けられ、前記サクションホースを軸方向に圧縮するコイルバネと、
を有する、汚物抜取ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、汚物抜取ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
汚物タンクを有する鉄道車両では、定期的に汚物の抜取が行われる。汚物タンクからの汚物の抜取は、車両基地に設けられた抜取設備に連結された汚物抜取ホースによって行われる。
【0003】
汚物抜取ホースの先端には、汚物タンクの排出バルブに接続可能なカプラーが設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-169015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
汚物の抜取を効率よく行うため、汚物抜取ホースは一定の大きさの径を有する。また、撓みの発生による汚物の滞留を防ぐために、汚物抜取ホースは一定の剛性を有する。そのため、汚物抜取ホースは伸縮性が乏しい。
【0006】
一方で、車両基地において、車両の停止位置のずれに起因して、抜取設備に対する汚物タンクの排出バルブの位置は必ずしも同じにならない。このような位置ずれを吸収するためには、汚物抜取ホースを持ち抱えながら取り回すことで、カプラーの位置及び向きを作業者が調整する必要がある。しかし、伸縮性が乏しい汚物抜取ホースの取り回しは容易ではない。
【0007】
これに対し、汚物抜取ホースに複数の回転可能なクランク部を設け、クランク部にて汚物抜取ホースを回転させることで、カプラーの位置を調整することができる。しかしながら、カプラーを排出バルブに接続するには、汚物抜取ホースを持ち抱えた状態でのカプラーの微調整が必要であり、作業者の負担が依然として大きい。
【0008】
本開示の一局面は、汚物タンクへの接続作業における作業者の負担を小さくできる汚物抜取ホースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、鉄道車両の汚物タンクに接続されるように構成された汚物抜取ホースである。汚物抜取ホースは、ホース本体と、ホース本体に接続されたカプラーと、を備える。カプラーは、汚物タンクに設けられた排出バルブに脱着可能な接続部と、ホース本体の端部に固定されると共に、接続部のホース本体に対する姿勢が可変となるように接続部を保持する継手部と、を有する。
【0010】
このような構成によれば、カプラーの接続部の姿勢がホース本体に対し可変とされているため、汚物抜取ホース全体を動かすことなく、接続部の位置及び向きを調整できる。これにより、カプラーを排出バルブへ接続するための微調整が容易に行えるため、汚物タンクへの接続作業における作業者の負担を小さくできる。
【0011】
本開示の一態様では、接続部は、ホース本体と連通する流路が設けられた球体部を有してもよい。継手部は、ホース本体と接続された連結配管と、連結配管に固定されると共に、球体部を回転可能に収容するソケットと、を有してもよい。このような構成によれば、簡潔かつ信頼性の高い接続部の可変構造を実現できる。
【0012】
本開示の一態様では、ホース本体は、外周面に螺旋状の溝が設けられたサクションホースと、サクションホースの外周面に取り付けられ、サクションホースを軸方向に圧縮するコイルバネと、を有してもよい。このような構成によれば、圧縮されたサクションホースの復元力によって、ホース本体の伸張性が向上する。そのため、汚物抜取ホースの汚物タンクへの接続時におけるホース本体の取り回しが容易となる。その結果、汚物タンクへの接続作業における負担低減効果を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態における汚物抜取ホースの使用例を示す模式図である。
図2図2Aは、図1の汚物タンクの排出バルブの模式的な正面図であり、図2Bは、図2AのIIB-IIB線での模式的な断面図である。
図3図3は、図1の汚物抜取ホースの模式的な断面図である。
図4図4は、図3の汚物抜取ホースにおけるカプラーの接続部の模式的な正面図である。
図5図5は、図1の汚物抜取ホースにおいて球体部を回転させた状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す汚物抜取ホース1は、鉄道車両100の汚物タンク101から汚物を抜き取って、車両基地内の汚物処理槽200へ排出するための器具である。
【0015】
汚物タンク101は、図2A及び図2Bに示す排出バルブ102を有する。排出バルブ102は、バルブ本体102Aから径方向外側に突出した爪状の被係合部102Bを有する。
【0016】
図1に示す汚物抜取ホース1は、第1端部1Aが汚物タンク101に接続されるように構成されている。汚物抜取ホース1の第2端部1Bは、汚物処理槽200に接続されている。汚物抜取ホース1は、ホース本体2と、カプラー3とを備える。
【0017】
<ホース本体>
図3に示すように、ホース本体2は、サクションホース21と、コイルバネ22とを有する。
【0018】
(サクションホース)
サクションホース21は、蛇腹状の筒体であり、外周面に螺旋状の溝21Aを有する。サクションホース21の外周面には、軸方向(つまり長手方向)に沿って山部と谷部とが交互に設けられている。
【0019】
サクションホース21は、例えば、円筒体と、円筒体に対し螺旋状に巻き付けられた紐状の補強部材とを有する。補強部材によって、螺旋状の溝21Aが円筒体の表面に構成される。
【0020】
サクションホース21は、螺旋状の溝21Aによって軸方向に伸縮可能である。サクションホース21の構成材料としては、例えばナイロン等の可撓性を有する樹脂が用いられる。
【0021】
(コイルバネ)
コイルバネ22は、サクションホース21の外周面に取り付けられている。具体的には、コイルバネ22は、サクションホース21の外周面の螺旋状の溝21Aに挿入されるように、サクションホース21に巻き付けられている。
【0022】
コイルバネ22は、サクションホース21を軸方向に圧縮している。そのため、サクションホース21のうち、コイルバネ22が取り付けられた部分は、コイルバネ22が取り付けられていない部分(例えば上流側端部2A)よりも軸方向に縮んでいる。
【0023】
コイルバネ22は、例えば、自然長から軸方向に伸張させた状態でサクションホース21に取り付けられる。コイルバネ22の構成材料としては、例えばステンレス等の金属が用いられる。
【0024】
<カプラー>
カプラー3は、接続部31と、継手部32とを有する。
【0025】
(接続部)
接続部31は、汚物タンク101に設けられた排出バルブ102に脱着可能な部位である。接続部31は、ベース配管311と、係合部312と、球体部313と、ハンドル314とを有する。
【0026】
ベース配管311は、排出バルブ102に直接連結される直管状の部位である。ベース配管311の排出バルブ102と連結される側(つまり上流側)の面には、係合部312が設けられている。また、ベース配管311の排出バルブ102とは反対側(つまり下流側)の端部は、球体部313に挿入されている。
【0027】
係合部312は、排出バルブ102の被係合部102Bに係合可能な部位である。図4に示すように、係合部312は、ベース配管311の中心軸を挟んで対向する位置に設けられた第1フック312A及び第2フック312Bを有する。
【0028】
図3に示すように、第1フック312A及び第2フック312Bは、それぞれ、ベース配管311の端部からベース配管311の軸方向に突出している。第1フック312A及び第2フック312Bは、弾性変形可能である。また、第1フック312A及び第2フック312Bは、ベース配管311と一体品として成形されている。
【0029】
球体部313の外形は、球体を平行な2つの平面で切り取った球台である。具体的には、球体部313は、真球からベース配管311の軸方向における両端部を切り取った形状を有する。
【0030】
球体部313は、ベース配管311に固定されている。また、球体部313の内部には、ベース配管311に設けられた第1流路311Aと連通する第2流路313A(つまり中空部)が設けられている。
【0031】
第2流路313Aは、継手部32を介して、ホース本体2と連通している。つまり、球体部313の内部において、排出バルブ102から送り出される流体(つまり汚物)がホース本体2に向かって通過する。
【0032】
なお、接続部31が排出バルブ102に装着された状態で、排出バルブ102のバルブ本体102Aの一部は、ベース配管311及び球体部313の内部(つまり第1流路311A及び第2流路313A内)に挿入される。
【0033】
ハンドル314は、係合部312に連結されている。ハンドル314を把持して係合部312を回転させることで、排出バルブ102の被係合部102Bへ第1フック312A及び第2フック312Bを係合させることができる。
【0034】
(継手部)
継手部32は、ホース本体2の上流側端部2Aに固定されると共に、接続部31のホース本体2に対する姿勢が可変となるように接続部31を保持している。つまり、継手部32は自在継手の構造を有する。継手部32は、連結配管321と、ソケット322とを有する。
【0035】
連結配管321は、ホース本体2に接続された直管状の部位である。具体的には、連結配管321は、ホース本体2の上流側端部2Aに挿入されている。連結配管321は、ホース本体2に対し、回転及び移動をしない。連結配管321に設けられた第3流路321Aは、ホース本体2の内部流路と連通している。
【0036】
ソケット322は、連結配管321に固定されている。具体的には、ソケット322には、連結配管321の上流側の端部が挿入されている。ソケット322と連結配管321とは、例えばネジ等の固定手段によって固定されている。
【0037】
ソケット322は、球体部313を回転可能に収容している。つまり、ソケット322は、球体部313を回転可能に保持する内部空間322Aを有する。球体部313の下流側の端部は、ソケット322の内部に収容されている。球体部313の上流側の端部は、ソケット322から露出している。
【0038】
ソケット322の内部空間322Aのうち、球体部313が配置されていない部分は、球体部313の第2流路313Aと、連結配管321の第3流路321Aとを連通させる流路を構成する。
【0039】
つまり、汚物タンク101の排出バルブ102から排出された流体は、第1流路311A、第2流路313A、内部空間322A、及び第3流路321Aを通過して、ホース本体2に送られる。
【0040】
図5に示すように、球体部313は、ソケット322内で任意の方向に回転可能である。球体部313をソケット322に対して回転させることにより、ホース本体2の位置及び姿勢を変えることなく、ベース配管311及び係合部312の姿勢(つまり向き)を変えることができる。
【0041】
また、球体部313をベース配管311の中心軸周りに回転させることにより、係合部312の位置を調整することができる。これにより、排出バルブ102との位置合わせが容易となる。
【0042】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)カプラー3の接続部31の姿勢がホース本体2に対し可変とされているため、汚物抜取ホース1全体を動かすことなく、接続部31の位置及び向きを調整できる。これにより、カプラー3を排出バルブ102へ接続するための微調整が容易に行えるため、汚物タンク101への接続作業における作業者の負担を小さくできる。
【0043】
(1b)球体部313とソケット322との組合せにより、簡潔かつ信頼性の高い接続部31の可変構造を実現できる。
【0044】
(1c)圧縮されたサクションホース21の復元力によって、ホース本体2の伸張性が向上する。そのため、汚物抜取ホース1の汚物タンク101への接続時におけるホース本体2の取り回しが容易となる。その結果、汚物タンク101への接続作業における負担低減効果を促進できる。
【0045】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0046】
(2a)上記実施形態の汚物抜取ホースにおいて、継手部によって接続部のホース本体に対する姿勢が可変となるように接続部を保持することができれば、接続部は必ずしも球体部を有しなくてもよい。
【0047】
(2b)上記実施形態の汚物抜取ホースにおいて、ホース本体は必ずしもコイルバネを有しなくてもよい。したがって、ホース本体は、サクションホースのみで構成されてもよい。
【0048】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0049】
1…汚物抜取ホース、1A…第1端部、1B…第2端部、2…ホース本体、
2A…上流側端部、3…カプラー、21…サクションホース、21A…溝、
22…コイルバネ、31…接続部、32…継手部、100…鉄道車両、
101…汚物タンク、102…排出バルブ、102A…バルブ本体、
102B…被係合部、200…汚物処理槽、311…ベース配管、
311A…第1流路、312…係合部、312A…第1フック、
312B…第2フック、313…球体部、313A…第2流路、314…ハンドル、
321…連結配管、321A…第3流路、322…ソケット、322A…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5