(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-09
(45)【発行日】2025-09-18
(54)【発明の名称】ハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具
(51)【国際特許分類】
B23B 31/40 20060101AFI20250910BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20250910BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20250910BHJP
【FI】
B23B31/40
F16H1/32 B
F16H55/17 Z
(21)【出願番号】P 2023580497
(86)(22)【出願日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 CN2023084237
(87)【国際公開番号】W WO2024197553
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】202310305045.9
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520154254
【氏名又は名称】江蘇科技大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.2 Mengxi Road,Zhenjiang,Jiangsu 212003,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 秋実
(72)【発明者】
【氏名】李 浩強
(72)【発明者】
【氏名】陳 志賀
(72)【発明者】
【氏名】王 国偉
(72)【発明者】
【氏名】趙 可龍
(72)【発明者】
【氏名】党 敬
(72)【発明者】
【氏名】王 文博
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-139382(JP,U)
【文献】国際公開第2017/102558(WO,A1)
【文献】実公昭37-013199(JP,Y1)
【文献】実開昭53-046077(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第112091254(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105014112(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109578551(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/20
B23B 31/40
F16H 1/32
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張スリーブとマンドレルとを含み、前記拡張スリーブの内部にマンドレルが同軸に取り付けられ、拡張スリーブの外側にフレクスプラインが取り付けられ、前記マンドレルと拡張スリーブとの間は複数のボールを介して接続され、マンドレルが軸方向の力の作用を受けて変位する時、ボールが力を受ける方向と同じ方向に転動するように駆動し、拡張スリーブの内径を拡張して、フレクスプラインを緊張
し、
前記拡張スリーブは外壁にその周方向に沿って複数の開口溝が間隔をおいて開けられる緊張リングを含み、隣接する2本の開口溝の間の緊張リングの内壁にいずれも、緊張リングの軸方向に沿って間隔をおいて分布する複数の凹溝が開けられる、ことを特徴とす
るハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項2】
前記凹溝は、第1の大ボール凹溝と第1の小ボール凹溝とを含む、ことを特徴とする請求項
1に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項3】
前記マンドレルの緊張リングに合わせる円周面に、第2の大ボール凹溝と第2の小ボール凹溝とを含む複数の凹溝が間隔をおいて設けられ、第2の大ボール凹溝と第1の大ボール凹溝との間に大ボールが設けられ、第2の小ボール凹溝と第1の小ボール凹溝との間に小ボールが設けられる、ことを特徴とする請求項
2に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項4】
前記拡張スリーブの内輪郭及びマンドレルの外輪郭はいずれも連続的なパラメータ化方程式である、ことを特徴とする請求項1に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項5】
前記拡張スリーブの内輪郭は、拡張スリーブの大円弧部ABと、拡張スリーブの遷移直線部BCと、拡張スリーブの小円弧部CDとを含む、ことを特徴とする請求項1又は
4に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項6】
前記拡張スリーブの大円弧部ABは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数21】
式中、x
ABは曲線AB上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
ABは曲線AB上の任意の点の直交座標系における縦座標値であり、nは拡張スリーブの軸方向の長さであり、D
Rはカップ状フレクスプラインの内径であり、
前記拡張スリーブの遷移直線部BCは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数22】
式中、y
BCは直線BC上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
BCは直線BC上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記拡張スリーブの小円弧部CDは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数23】
式中、x
CDは曲線CD上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
CDは曲線CD上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値である、ことを特徴とする請求項
5に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項7】
前記マンドレルの外輪郭は、マンドレルの大円弧左部EFと、マンドレルの大円弧遷移直線部FGと、マンドレルの大円弧右部GHと、マンドレルの円弧遷移直線部HIと、マンドレルの小円弧左部IJと、マンドレルの小円弧遷移直線部JKと、マンドレルの小円弧左部KLとを含む、ことを特徴とする請求項1又は
4に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項8】
前記マンドレルの大円弧左部EFは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数24】
式中、y
EFは曲線EF上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
EFは曲線EF上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの大円弧遷移直線部FGは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数25】
式中、y
FGは直線FG上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
FGは直線FG上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの大円弧右部GHは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数26】
式中、x
GHは曲線GH上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
GHは曲線GH上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、
前記マンドレルの円弧遷移直線部HIは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数27】
式中、y
HIは直線HI上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
HIは直線HI上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの小円弧左部IJは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数28】
式中、y
IJは曲線IJ上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
IJは曲線IJ上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの小円弧遷移直線部JKは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数29】
式中、y
JKは曲線JK上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
JKは曲線JK上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの小円弧左部KL、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数30】
式中、y
KLは曲線KL上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
KLは曲線KL上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である、ことを特徴とする請求項
7に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【請求項9】
前記緊張リングの一端にフランジが接続され、各開口溝のフランジに近い一端にいずれも開口が設けられる、ことを特徴とする請求項
1に記載
のハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレクスプラインの拡張スリーブ治具に関し、特にパラメータ化されたハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ状フレクスプラインは、ロボットの関節用のハーモニック減速機の中核部品の一つであり、ハーモニック減速機は、大きな減速比と高い伝動精度を有する装置であるため、カップ状フレクスプラインには高い加工精度と表面品質が求められている。カップ状フレクスプラインは薄肉部品に属し、精密な仕上げ及び歯車削り過程において、内部から高精度の治具による緊張及び支持が必要である。
【0003】
図1に示すように、従来の円錐形の拡張スリーブ治具は、内部の円錐形のマンドレルが移動することにより、外部の拡張スリーブを緊張させるように駆動する。しかし、円錐形の拡張スリーブは次のような問題が存在する。先ず、円錐形の拡張スリーブ治具が緊張した後、在拡張スリーブの端面に反りが形成され、フレクスプラインのカップ底部とカップ体との接続箇所を損傷する。また、動作状態では、円錐形の拡張スリーブのマンドレルの外表面と拡張スリーブの内表面に摺擦が形成され、一定の時間が経過すると摩耗が発生しやすくなり、テーパ角が小さくなり、挟着の精度が低下し、フレクスプラインの加工精度が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、パラメータ化された輪郭の記述を採用し、拡張スリーブ治具の挟着精度及び精度の維持性を向上させるパラメータ化されたハーモニック減速機のフレクスプラインの拡張スリーブ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
技術案は次のとおりである。本発明は拡張スリーブとマンドレルとを含み、前記拡張スリーブの内部にマンドレルが同軸に取り付けられ、拡張スリーブの外側にフレクスプラインが取り付けられ、前記マンドレルと拡張スリーブとの間は複数のボールを介して接続され、マンドレルが軸方向の力の作用を受けて変位する時、ボールが力を受ける方向と同じ方向に転動するように駆動し、拡張スリーブの内径を拡張して、フレクスプラインを緊張する。
【0006】
前記拡張スリーブは外壁にその周方向に沿って複数の開口溝が間隔をおいて開けられる緊張リングを含み、隣接する2本の開口溝の間の緊張リングの内壁にいずれも、緊張リングの軸方向に沿って間隔をおいて分布する複数の凹溝が開けられる。
【0007】
前記凹溝は、第1の大ボール凹溝と第1の小ボール凹溝とを含む。
【0008】
前記マンドレルの緊張リングに合わせる円周面に、第2の大ボール凹溝と第2の小ボール凹溝とを含む複数の凹溝が間隔をおいて設けられ、第2の大ボール凹溝と第1の大ボール凹溝との間に大ボールが設けられ、第2の小ボール凹溝と第1の小ボール凹溝との間に小ボールが設けられ、ボールの転動によって摩擦を低下させ、治具の使用寿命を延ばす。
【0009】
前記拡張スリーブの内輪郭及びマンドレルの外輪郭はいずれも連続的なパラメータ化方程式であり、パラメータ化された方程式によって、溝が開けられた拡張スリーブの内輪郭とマンドレルの外輪郭を正確に記述し、治具の設計の精度を向上させる。
【0010】
前記拡張スリーブの内輪郭は、拡張スリーブの大円弧部ABと、拡張スリーブの遷移直線部BCと、拡張スリーブの小円弧部CDとを含む。
【0011】
前記拡張スリーブの大円弧部ABは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数1】
式中、x
ABは曲線AB上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
ABは曲線AB上の任意の点の直交座標系における縦座標値であり、nは拡張スリーブの軸方向の長さであり、D
Rはカップ状フレクスプラインの内径であり、
前記拡張スリーブの遷移直線部BCは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数2】
式中、y
BCは直線BC上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
BCは直線BC上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記拡張スリーブの小円弧部CDは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数3】
式中、x
CDは曲線CD上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
CDは曲線CD上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値である。
【0012】
前記マンドレルの外輪郭は、マンドレルの大円弧左部EFと、マンドレルの大円弧遷移直線部FGと、マンドレルの大円弧右部GHと、マンドレルの円弧遷移直線部HIと、マンドレルの小円弧左部IJと、マンドレルの小円弧遷移直線部JKと、マンドレルの小円弧左部KLとを含む。
【0013】
前記マンドレルの大円弧左部EFは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数4】
式中、y
EFは曲線EF上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
EFは曲線EF上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの大円弧遷移直線部FGは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数5】
式中、y
FGは直線FG上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
FGは直線FG上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの大円弧右部GHは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数6】
式中、x
GHは曲線GH上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
GHは曲線GH上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、
前記マンドレルの円弧遷移直線部HIは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数7】
式中、y
HIは直線HI上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
HIは直線HI上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの小円弧左部IJは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数8】
式中、y
IJは曲線IJ上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
IJは曲線IJ上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの小円弧遷移直線部JKは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数9】
式中、y
JKは曲線JK上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
JKは曲線JK上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、
前記マンドレルの小円弧左部KLは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数10】
式中、y
KLは曲線KL上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
KLは曲線KL上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0014】
前記緊張リングの一端にフランジが接続され、各開口溝のフランジに近い一端にいずれも開口が設けられ、フランジは溝が開けられた拡張スリーブを工作機械の接続材に固定するために用いられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有益な効果は次のとおりである。本発明は、パラメータ化された方程式によって、溝が開けられた拡張スリーブの内輪郭とマンドレルの外輪郭を正確に記述し、治具の設計の精度を向上させ、溝が開けられた拡張スリーブとマンドレルとの間にボールが配置され、ボールの転動によって摩擦を低減し、治具の使用寿命を延ばすとともに、サイズが異なる2種類の直径を有するボールを採用し、溝が開けられた拡張スリーブの軸方向の異なる位置での変形が異なり、フレクスプラインのカップ底部とカップ体との接続箇所の損傷を低減し、治具による挟着の精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の円錐形の拡張スリーブの断面図である。
【
図4】本発明のカップ状フレクスプラインの概略図である。
【
図5】本発明の溝が開けられた拡張スリーブの構造概略図である。
【
図7】本発明のパラメータ化された、溝が開けられた拡張スリーブの内輪郭とマンドレルの外輪郭の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を結び付けて本発明をさらに説明する。
【0018】
図2~
図6に示すように、本発明は拡張スリーブ1と、フレクスプライン2と、マンドレル3とを含み、拡張スリーブ1の内部にマンドレル3が取り付けられ、外側にフレクスプライン2が取り付けられ、フレクスプライン2は、
図4に示すカップ状フレクスプラインを採用し、マンドレル3は拡張スリーブ1に同軸に取り付けられ、同軸度の誤差は5μmよりも小さい。マンドレル3と拡張スリーブ1との間は複数のボールを介して接続され、ボールは大ボール5と小ボール4とを含み、ボールの転動によって摩擦を低減し、治具の使用寿命を延ばすとともに、サイズが異なる2種類の直径を有するボールを採用し、溝が開けられた拡張スリーブの軸方向の異なる位置での変形が異なり、フレクスプラインのカップ底部とカップ体との接続箇所の損傷を低減し、治具による挟着の精度を向上させる。マンドレル3が水平方向の左方向の軸方向の力の作用を受けて左に向かって変位する時、ボールが左に向かって転動するように駆動して、拡張スリーブ1の内径を拡張して、フレクスプライン2を緊張させ、それによって、挟着の目的を実現する。
【0019】
図5に示すように、拡張スリーブ1は、溝が開けれた拡張スリーブを採用し、緊張リング14を含み、緊張リング14の外壁にその周方向に沿って複数の開口溝13が間隔をおいて均一に開けられ、各開口溝13はいずれも緊張リング14の軸方向に沿って分布し、緊張リング14の一端にフランジ11が接続され、各開口溝13のフランジ11に近い一端にいずれも開口12が設けられ、フランジ11は溝が開けられた拡張スリーブを工作機械の接続材に固定するために用いられる。隣接する2本の開口溝13の間の緊張リング14の内壁にいずれも複数の凹溝が開けられ、複数の凹溝は緊張リング14の軸方向に沿って間隔をおいて分布し、複数の凹溝は第1の大ボール凹溝15と第1の小ボール凹溝16とを含み、拡張スリーブ1の内輪郭は連続的なパラメータ化方程式である。
【0020】
図6に示すように、マンドレル3の緊張リング14に合わせる円周面に複数の凹溝が間隔をおいて均一に設けられ、この複数の凹溝は第2の大ボール凹溝32と第2の小ボール凹溝33とを含み、第2の大ボール凹溝32は緊張リング14の第1の大ボール凹溝15に一対一で合わせ、第2の小ボール凹溝33は緊張リング14の第1の小ボール凹溝16に一対一で合わせる。第2の大ボール凹溝32と第1の大ボール凹溝15との間に大ボール5が設けられ、第2の小ボール凹溝33と第1の小ボール凹溝16との間に小ボール4が設けられる。マンドレル3は、引締め軸31とニードル軸34とをさらに含み、引締め軸31に、工作機械のテンションバーに接続されて軸方向の変位を実現する雄ネジが形成され、ニードル軸34の端面に、工作機械の主軸のニードルに接続するためのテーパー孔が設けられる。回動の精度を実現するために、引締め軸31とニードル軸34は同軸に取り付けられ、且つ同軸度は5μm以内である。マンドレル3の外輪郭は連続的なパラメータ化方程式である。
【0021】
図7に示すように、拡張スリーブ1及びマンドレル3の中心軸線を横軸とし、拡張スリーブ1のフランジ端面を縦軸とする直交座標系XOYを作成し、拡張スリーブ1の内輪郭及びマンドレル3の外輪郭を記述するために用いられる。
【0022】
拡張スリーブ1の内輪郭は、拡張スリーブの大円弧部ABと、拡張スリーブの遷移直線部BCと、拡張スリーブの小円弧部CDとを含む。
【0023】
1)拡張スリーブの大円弧部ABは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数11】
式中、x
ABは曲線AB上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
ABは曲線AB上の任意の点の直交座標系における縦座標値であり、nは拡張スリーブの軸方向の長さであり、D
Rはカップ状フレクスプラインの内径である。
【0024】
2)拡張スリーブの遷移直線部BCは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数12】
式中、y
BCは直線BC上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
BCは直線BC上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0025】
3)拡張スリーブの小円弧部CDは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数13】
式中、x
CDは曲線CD上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、は曲線CD上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値である。
【0026】
マンドレル3の外輪郭は、マンドレルの大円弧左部EFと、マンドレルの大円弧遷移直線部FGと、マンドレルの大円弧右部GHと、マンドレルの円弧遷移直線部HIと、マンドレルの小円弧左部IJと、マンドレルの小円弧遷移直線部JKと、マンドレルの小円弧左部KLとを含む。
【0027】
1)マンドレルの大円弧左部EFは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数14】
式中、y
EFは曲線EF上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
EFは曲線EF上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0028】
2)マンドレルの大円弧遷移直線部FGは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数15】
式中、y
FGは直線FG上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
FGは直線FG上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0029】
3)マンドレルの大円弧右部GHは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数16】
式中、x
GHは曲線GH上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値であり、y
GHは曲線GH上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値である。
【0030】
4)マンドレルの円弧遷移直線部HIは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数17】
式中、y
HIは直線HI上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
HIは直線HI上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0031】
5)マンドレルの小円弧左部IJは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数18】
式中、y
IJは曲線IJ上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
IJは曲線IJ上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0032】
6)マンドレルの小円弧遷移直線部JKは、その直線方程式が以下のとおりであり、
【数19】
式中、y
JKは曲線JK上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
JKは曲線JK上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0033】
7)マンドレルの小円弧左部KLは、その曲線方程式が以下のとおりであり、
【数20】
式中、は曲線KL上の任意の点の直交座標系XOYにおける縦座標値であり、x
KLは曲線KL上の任意の点の直交座標系XOYにおける横座標値である。
【0034】
上述したパラメータ化方程式によって形成された溝が開けられた拡張スリーブの内輪郭とマンドレルの外輪郭は、拡張スリーブ治具の設計の精度を効果的に向上させることができ、ボールを用いることにより、拡張スリーブ治具による精度の維持性を向上させるとともに、大ボールと小ボールの直径が異なり、フレクスプラインのカップ底部とカップ体との接続箇所の損傷を低減する。なお、パラメータ化方程式の記述によって、拡張スリーブの軸方向の長さ及びカップ状フレクスプラインの内径だけを決定すれば設計することができ、同類製品の設計及び検知に対して理論モデルを提供する。