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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-09
(45)【発行日】2025-09-18
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/14 20060101AFI20250910BHJP
【FI】
A47C7/14 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021152190
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044260
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】新村 直也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 泰崇
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-236875(JP,A)
【文献】特開2015-084860(JP,A)
【文献】特開2008-142209(JP,A)
【文献】特開2015-146949(JP,A)
【文献】特開2008-183073(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01161901(EP,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0004984(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/14
A47C 7/02
A47C 1/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座受に対して座本体を前位置と後位置との間で前後方向にスライド移動可能に支持させた座を備えてなる椅子であって、
前記座本体が、前記座受よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたシェル状をなす支持部材と、この支持部材に支持され当該支持部材よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッションと、この座クッション及び前記支持部材の周縁部を被覆する座張地とを備えたものであり、
前記支持部材の外周端縁に、下方に突出し外側面が前記座クッションの内面に添接し得るサポート壁が形成されたものであり、
前記後位置において、前記支持部材の前端部が前記座受の前端部と略同一かそれよりも後に位置し得るものであり、
前記支持部材の前部に位置する前記サポート壁が前記座受に対して干渉しない上下寸法に設定されているものであり、
前記支持部材が、平面視又は底面視において前部が前方に凸をなすように湾曲した形状を有するとともに後部が後方に凸をなすように湾曲した形状を有するものであり、
前記後位置において、前記支持部材の前部における左右方向中央部の端部が、前記座受の前部における左右方向中央部の端部と略同一の前後方向位置に位置するものであり、
前記後位置において、前記支持部材の前部における左右方向両側部の端部が、前記座受の前部における左右方向両側部の端部よりも後に位置するものである椅子。
【請求項2】
座受に対して座本体を前位置と後位置との間で前後方向にスライド移動可能に支持させた座を備えてなる椅子であって、
前記座本体が、前記座受よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたシェル状をなす支持部材と、この支持部材に支持され当該支持部材よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッションと、この座クッション及び前記支持部材の周縁部を被覆する座張地とを備えたものであり、
前記支持部材の外周端縁に、下方に突出し外側面が前記座クッションの内面に添接し得るサポート壁が形成されたものであり、
前記後位置において、前記支持部材の前端部が前記座受の前端部と略同一かそれよりも後に位置し得るものであり、
前記支持部材の前部に位置する前記サポート壁が前記座受に対して干渉しない上下寸法に設定されているものであり、
前記支持部材の前部における左右両側部分に形成された前記サポート壁の上下寸法が、前記支持部材の両側部における前後方向中央部に形成された前記サポート壁の上下寸法よりも短く形成されている椅子。
【請求項3】
前記支持部材が、中央部に配設された支持部材本体と、この支持部材本体の周縁部に段部を介して外側方に延設され下面が前記支持部材本体の下面よりも上側に位置する周縁壁部と、この周縁壁部の全周端縁に設けられた前記サポート壁とを備えたものであり、
前記周縁壁部の下に前記座張地の端縁が配設されている請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記座受の上部に前記支持部材本体の下面に添接し得る下受け領域が形成されたものであり、前記下受け領域が正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている請求項記載の椅子。
【請求項5】
前記支持部材が、正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている請求項1、2、3又は4記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィス等において好適に使用される椅子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種の椅子の座においては、座面を有した座本体を、当該座本体の下に配された座受に対して前後方向にスライド移動可能に支持させたものがある。
【0004】
座本体は、シェル状に形成された支持部材と、この支持部材の上に載せ置かれたクッションと、このクッション及び支持部材の周縁部を被覆する座張地とを備えていることが一般的である。
【0005】
従来のものでは、支持部材の前後及び左右方向の幅寸法は、クッションにおける前後及び左右方向の幅寸法に対して略同等に設定されているものが殆どであった。このため、従来における支持部材の周端縁は、座張地と協働してクッションの周縁部を下から支持するのに好適な形状である略水平の形状又は上方に突出した形状をなしていた。
【0006】
ところが、これまでの支持部材における周端縁の形状では、支持部材よりも大きなクッションを適切に支持し難いものとなっている。すなわち、従来の支持部材では、当該支持部材よりも外方にオーバーハングしたクッションの周縁部を、座張地を利用しても安定的に支持させ難いものとなっていた。
【0007】
また、この種の座では、座本体を構成する支持部材の底面側に、クッションを包んだ座張地の端部がギャザー状に窄んだ状態で位置することになる。
【0008】
ところが、従来のものでは、座張地の端部に出現したギャザー状の形態部分に起因して、座クッションにおける周縁部の下端部分に良好な外観を阻害する凹凸が出現し易いものとなっていた。
【0009】
換言すれば、従来の椅子においては、座本体における前下端部の見え掛かりの外観を整えるための設計が難しいものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-180783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、座受に対して座本体を好適に前後方向にスライド移動することができ、支持部材よりも大きな座クッションを安定的に設けた座本体を得るとともに座本体における周縁部の好適な外観を形成し得る設計の自由度に優れた椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0013】
請求項1に記載の発明は、座受に対して座本体を前位置と後位置との間で前後方向にスライド移動可能に支持させた座を備えてなる椅子であって、前記座本体が、前記座受よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたシェル状をなす支持部材と、この支持部材に支持され当該支持部材よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッションと、この座クッション及び前記支持部材の周縁部を被覆する座張地とを備えたものであり、前記支持部材の外周端縁に、下方に突出し外側面が前記座クッションの内面に添接し得るサポート壁が形成されたものであり、前記後位置において、前記支持部材の前端部が前記座受の前端部と略同一かそれよりも後に位置し得るものであり、前記支持部材の前部に位置する前記サポート壁が前記座受に対して干渉しない上下寸法に設定されているものであり、前記支持部材が、平面視又は底面視において前部が前方に凸をなすように湾曲した形状を有するとともに後部が後方に凸をなすように湾曲した形状を有するものであり、前記後位置において、前記支持部材の前部における左右方向中央部の端部が、前記座受の前部における左右方向中央部の端部と略同一の前後方向位置に位置するものであり、前記後位置において、前記支持部材の前部における左右方向両側部の端部が、前記座受の前部における左右方向両側部の端部よりも後に位置するものである椅子である。
請求項2に記載の発明は、座受に対して座本体を前位置と後位置との間で前後方向にスライド移動可能に支持させた座を備えてなる椅子であって、前記座本体が、前記座受よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたシェル状をなす支持部材と、この支持部材に支持され当該支持部材よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッションと、この座クッション及び前記支持部材の周縁部を被覆する座張地とを備えたものであり、前記支持部材の外周端縁に、下方に突出し外側面が前記座クッションの内面に添接し得るサポート壁が形成されたものであり、前記後位置において、前記支持部材の前端部が前記座受の前端部と略同一かそれよりも後に位置し得るものであり、前記支持部材の前部に位置する前記サポート壁が前記座受に対して干渉しない上下寸法に設定されているものであり、前記支持部材の前部における左右両側部分に形成された前記サポート壁の上下寸法が、前記支持部材の両側部における前後方向中央部に形成された前記サポート壁の上下寸法よりも短く形成されている椅子である。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記支持部材が、中央部に配設された支持部材本体と、この支持部材本体の周縁部に段部を介して外側方に延設され下面が前記支持部材本体の下面よりも上側に位置する周縁壁部と、この周縁壁部の全周端縁に設けられた前記サポート壁とを備えたものであり、前記周縁壁部の下に前記座張地の端縁が配設されている請求項1又は2記載の椅子である。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記座受の上部に前記支持部材本体の下面に添接し得る下受け領域が形成されたものであり、前記下受け領域が正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている請求項記載の椅子である。
【0018】
請求項に記載の発明は、前記支持部材が、正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている請求項1、2、3又は4記載の椅子である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、座受に対して座本体を好適に前後方向にスライド移動することができ、支持部材よりも大きな座クッションを安定的に設けた座本体を得るとともに座本体における周縁部の好適な外観を形成し得る設計の自由度に優れた椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における正面図。
図3】同実施形態における背面図。
図4】同実施形態における右側面図。
図5】同実施形態における平面図。
図6】同実施形態における分解斜視図。
図7】同実施形態における分解斜視図。
図8】同実施形態における分解斜視図。
図9】同実施形態における分解斜視図。
図10】同実施形態における分解斜視図。
図11】同実施形態における分解斜視図。
図12】同実施形態における分解斜視図。
図13】同実施形態における座の分解正面図。
図14】同実施形態における座本体の底面図。
図15図14におけるA-A線断面図。
図16図14におけるB-B線断面図。
図17】同実施形態における座本体の分解右側面図。
図18】同実施形態における座受と支持部材(座本体)との位置関係を示す平面図。
図19】同実施形態における座受と支持部材(座本体)との位置関係を示す平面図。
図20】同実施形態における座受と支持部材(座本体)との位置関係を示す左側面図。
図21】同実施形態における座受と支持部材(座本体)との位置関係を示す左側面図。
図22】同実施形態における分解斜視図。
図23】同実施形態における部分拡大斜視図。
図24】同実施形態における部分拡大正面図。
図25】同実施形態における部分拡大背面図。
図26】同実施形態における部分拡大左側面図。
図27】同実施形態における部分拡大斜視図。
図28】同実施形態における張り部材の構造を説明するための正面図。
図29】同実施形態における張り部材の構造を説明するための部分拡大正面図。
図30図29におけるC-C線断面図。
図31】同実施形態における張り部材の一部を破断した部分拡大正面図。
図32】同実施形態における規制機構の部分拡大平面図。
図33図32におけるD-D線断面図。
図34】同実施形態における規制機構の部分拡大斜視図。
図35】同実施形態における下枠材カバー(カバー体)の平面図。
図36】同実施形態における下枠材カバー(カバー体)の正面図。
図37】同実施形態における下枠材カバー(カバー体)の底面図。
図38】同実施形態における下枠材カバー(カバー体)の背面図。
図39図3におけるE-E線断面図。
図40図3におけるF-F線断面図。
図41】同実施形態における下枠材カバー(カバー体)の姿勢を説明するための図39対応の断面図。
図42】同実施形態における下枠材カバー(カバー体)の姿勢を説明するための図39対応の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図1~42を参照して説明する。
【0022】
この実施形態は、本発明を、オフィス等において好適に使用される事務用の回転椅子(以下、単に「椅子」という。)に適用したものである。
【0023】
椅子は、脚Aと、脚Aに対して旋回可能に支持された支持基部Bと、支持基部Bの上に配された座Cと、支持基部Bに対して背支持体Dを介して後傾動作可能に支持された背凭れEと、背凭れEに対して取り付けられたランバーサポートRとを備えたものである。
【0024】
椅子は、支持基部Bと背支持体Dとの間に、背凭れEの後傾可能な度合いを設定し得る後傾度合設定機構Xが設けられている。椅子は、背支持体Dと後傾度合設定機構Xを構成する回転部材x2の下側をカバーする下カバー体Iを備えている。
【0025】
以下、椅子の各構成について詳述する。
【0026】
<<脚A>>
脚Aは、先端にキャスタa11を有した複数本の脚羽根a1と、脚羽根a1の基端部に立設された脚支柱a2とを備えたものである。
【0027】
<<支持基部B>>
支持基部Bは、座C及び背凭れEを支持するものである。支持基部Bは、上向きに開放された合成樹脂の一体成型品である支持基部本体1を主体に構成されている。支持基部本体1は、脚支柱a2の上端部に連結されている。
【0028】
支持基部Bは、前軸jk2をスライド移動可能に支持し得る長孔状の前軸支持部MSを備えている。支持基部Bは、前軸jk2を介して座Cの前部を支持し得るものとなっている。
【0029】
支持基部本体1には、当該支持基部本体1内に収容された反力ばねHGを伸縮させることにより背凭れEの後傾動作に対する反力を調整し得る反力調整レバー11が回転可能に支持されている。
【0030】
<<座C>>
座Cは、支持基部Bの上に配設されている。座Cは、アウターシェルとも称される合成樹脂製の座受c1と、着座面を有し座受c1に支持された座本体c2と、座本体c2に対して上位置と下位置との間で上下動可能に支持され上位置にあるときに座本体c2を前後方向にスライド移動可能な状態にさせ得る操作部材c3を備えている。
【0031】
座受c1と座本体c2との間には、座本体c2における前後方向の移動範囲を規制する規制機構Vが複数設けられている。規制機構Vは、座受c1と座本体c2との間の前後各二箇所の合計四箇所に設けられている。
【0032】
座Cの前部は、前軸jk2を介して支持基部Bに対して移動可能に支持されている。また、座Cの前後方向中央部は後軸jk3を保持した背支持体Dを介して支持基部Bに支持されている。座Cの前後方向中央部は後軸jk3に対して回転可能に支持されたものとなっている。
【0033】
<座受c1>
座受c1は、上部において座本体c2を支持し得る大きさを有したシェル状の形態をなしている。
【0034】
座受c1は、平面視又は底面視において前部が後方に凸をなすように僅かに湾曲した形状をなしている。座受c1は、平面視又は底面視において後部が後方に凸をなすように湾曲した形状をなしている。座受c1は、四つの角部が丸みを帯びたものであり、全体として横長の略矩形状をなしたものである。
【0035】
座受c1は、図19及び図21に示すように、平面視又は底面視において座本体c2の前部が座受c1の前端縁よりも前に大きく迫り出した前位置(F)と、図18及び図20に示すように、前位置(F)よりも後に位置した後位置(N)との間で、座本体c2を前後方向にスライド移動可能に支持し得るものである。
【0036】
座受c1は、上部において座本体c2を支持し得るシェル形状の主要部を構成する座受本体caと、座受本体caから上向きに突設された略T字状をなす四本の抜止突起Wとを備えている。抜止突起Wは、規制機構Vを構成するものである。この実施形態では、座受本体caと抜止突起Wとは合成樹脂により一体に形成されている。
【0037】
[座受本体ca]
座受本体caは、上面に支持部材本体c211の下面に添接し得る下受け領域Lが形成された座受ベースc10と、座受ベースc10における下面側の前部における左右方向中央部に設けられた前の下延壁c11と、座受ベースc10における下面側の左右方向中央部に左右に対をなして下方に延設されるとともに前の下延壁c11の両端部から後方に向かって延設された左右の下延壁c12と、座受ベースc10における下面側の後部における左右方向中央部に設けられるとともに左右の下延壁c12の後部間を繋ぐように設けられた後の下延壁c13とを備えている。
【0038】
座受ベースc10は、上面側に剛性を確保するための前後方向及び左右方向に延びてなる複数のリブが露出して設けられている。座受ベースc10には、上面側に立設された各リブの上端部によって、支持部材本体c211の下面に添接及び摺接し得る下受け領域Lが形成されている。
【0039】
下受け領域Lは、支持部材本体c211の下面が添接及び摺接し得る部位をなしている。下受け領域Lには、座本体c2が前後方向にスライド移動する際に、支持部材本体c211の下面が摺接し得るようになっている。下受け領域Lは、正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている。
【0040】
座受ベースc10の両側端縁は、前後方向に略直線状に延びている。座受ベースc10の両側端縁における上端部y1は、座受本体caにおいて最も上に位置する部分を構成している。
【0041】
座本体c2が後位置(N)にある場合には、座受ベースc10の左右両側端縁における上端部y1の前部分が、支持部材c21の前部における左右両側部分cfに位置しているサポート壁c214と交差する位置に配設されている。
【0042】
一方で、座本体c2が前位置(F)にある場合には、座受ベースc10の左右両側端縁における上端部y1の後部分が、支持部材c21の後部における左右両側部分crに位置しているサポート壁c214と交差する位置に配設されている。
【0043】
座受ベースc10における前右部には、上下方向に貫通し操作部材c3が配設される前後方向に延びた座受スリットcsが設けられている。
【0044】
座受ベースc10における前左部の下面側には、脚支柱a2を構成する図示しないガススプリングに作用し、脚支柱a2を上下方向に伸縮操作し得る操作片CHがフラップ動作可能に枢支されている。
【0045】
座受ベースc10における下面側の前後方向中央部には、後軸jk3を回転可能に保持し得る後軸保持部ceが設けられている。後軸保持部ceは底面視において、座受ベースc10における左右の下延壁c12の間に設けられている。
【0046】
[抜止突起W]
抜止突起Wは、規制機構Vを構成するものである。抜止突起Wは、支持部材c21の四箇所に設けられた案内部Jに対応するように、座受本体caの四箇所に立設されている。抜止突起Wは、座受本体caに立設された正面視及び背面視において略T字状の外観をなしている。
【0047】
抜止突起Wは、座本体c2の支持部材c21に設けられた案内部Jと係わり合うことにより座本体c2を座受c1に対して離脱不能に支持し得るとともに座本体c2を座受c1に対して前後スライド可能に位置決めし得るものとなっている。
【0048】
なお、規制機構Vを構成する抜止突起Wの詳細については後述する。
【0049】
<座本体c2>
座本体c2は、座受c1に対して前位置(F)と後位置(N)との間で前後方向にスライド移動し得るように構成されている。
【0050】
座本体c2は、座受c1よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたシェル状をなす支持部材c21と、支持部材c21に支持され当該支持部材c21よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッションc22と、座クッションc22及び支持部材c21の周縁部を外側から被覆する座張地c23とを備えたものである。
【0051】
座本体c2が後位置(N)にある場合には、平面視又は底面視において、座受c1の前部における左右の角部cxが、支持部材c21の前部における左右の角部czよりも前側に位置するものとなっている。
【0052】
つまり、座本体c2は、後位置(N)において、支持部材c21の前部における左右方向中央部の端部y3が、座受c1の前部における左右方向中央部の端部y4と略同一の前後方向位置に位置するように構成されている。
【0053】
さらに、座本体c2は、後位置(N)において、支持部材c21の前部における左右方向両側部の前端部y5が、座受c1の前部における左右方向両側部の前端部y6よりも後に位置するように構成されている。
【0054】
なお、座本体c2が前位置(F)にある場合には、平面視又は底面視において、座受c1の後縁部が、支持部材c21の後縁部よりも後に位置するものとなっている。
【0055】
[支持部材c21]
支持部材c21は、インナーシェルとも称される合成樹脂製のものである。支持部材c21は、座クッションc22の下面に添着され着座者の荷重を均等に支持する役割を担っている。
【0056】
支持部材c21は、正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている。
【0057】
支持部材c21は、平面視又は底面視において前部が前方に凸をなすように湾曲した形状を有している。支持部材c21は、平面視又は底面視において後部が後方に凸をなすように湾曲した形状を有している。支持部材c21は、四つの角部が丸みを帯びたものであり、全体として横長の略矩形状をなしたものである。
【0058】
この実施形態では、支持部材c21における前部の湾曲度合いが、座受c1における前部の湾曲度合いよりも大きく設定されている。なお、支持部材c21における後部の湾曲度合いは、座受c1における後部の湾曲度合いと略同一又は極めて近似するように設定されている。
【0059】
すなわち、支持部材c21の前部における外縁形状は、座受c1の前部における外縁形状と相違した形状をなしている。一方で、支持部材c21の後部における外縁形状は、座受c1の後部における外縁形状と近似した形状をなしている。
【0060】
支持部材c21は、前後方向及び左右方向の中央部に配設された支持部材本体c211と、支持部材本体c211の周縁部に段部c212を介して外側方に延設され下面が支持部材本体c211の下面よりも上側に位置する周縁壁部c213と、周縁壁部c213における外周端縁の全周に下方に突出するように設けられたサポート壁c214とを備えたものである。
【0061】
支持部材本体c211は、比較的フラットな板状をなしており、着座者の荷重を受けて柔軟に撓み得る形態をなしている。支持部材本体c211は、前後方向中央部に前後方向に延びるように設けられ座クッションc22の凹部c222に対応させて左右方向に複数設けられた座中央部スリットc215と、規制機構Vを構成するものであり座受c1に設けられた抜止突起Wが係合し得る前後方向に延びた案内部Jと、上下方向に貫設され操作部材c3を上下動可能且つ下方に抜け出し不能に支持し得る操作部材保持孔c216を備えている。
【0062】
案内部Jの詳細については後述する。
【0063】
周縁壁部c213は、支持部材本体c211よりも外側に位置し、当該支持部材本体c211よりも上に配設されている。支持部材本体c211と周縁壁部c213との間に介設された段部c212は、支持部材本体c211よりも周縁壁部c213を上に位置させるためのものである。この実施形態では、段部c212は、支持部材本体c211の外周端縁に立設された壁部分を主体に構成されている。
【0064】
周縁壁部c213は、底面視において支持部材本体c211の外側を囲むように配設されている。周縁壁部c213の下面側には、座張地c23の端縁y2が配設されるようになっている。
【0065】
支持部材c21には、周縁壁部c213、段部c212、及び、サポート壁c214により略下向きコ字状に囲まれてなり、座張地c23の端縁y2を収容し得る下方に開放された空間srが形成されている。
【0066】
なお、周縁壁部c213における四つの角部分、及び、周縁壁部c213における前部及び後部の左右方向中央部には、座張地c23の端縁y2を引っ掛けるための引っ掛け片cnが設けられている。
【0067】
サポート壁c214は、支持部材c21における外周端縁の全周に設けられた下方に突出する形状をなしたものである。サポート壁c214は、周縁壁部c213の外周端縁から下方に向かって延設された壁状をなしている。
【0068】
サポート壁c214は、座クッションc22の周縁部Gを座張地c23と協働して安定的に保持させる役割を担うものであり、外側面smが座クッションc22の内面たる垂設部c221の内側面snに添接し得るものとなっている。
【0069】
この実施形態では、支持部材c21の前部及び後部に位置するサポート壁c214が座受c1に対して干渉しない上下寸法に設定されている。より具体的に言えば、支持部材c21の前部における全域(左右両側部分cf及びその間の領域)に形成されたサポート壁c214の上下寸法が、他の部分のサポート壁c214の上下寸法よりも短く設定されている。
【0070】
なお、他の部分のサポート壁c214とは、支持部材c21の左右両側部における前後方向中央部分に位置しているサポート壁c214を挙げることができる。
【0071】
支持部材c21の前部における左右両側部分cf(すなわち、支持部材c21の前部における左右の角部分)は、正面視において、座受本体caの両側端部に合致する左右方向の位置に設定されている。座受本体caの両側端部における上端部y1は、座受本体caにおいて最も上に位置する部分を構成している。
【0072】
つまり、支持部材c21のサポート壁c214は、座クッションc22の周縁部Gを座張地c23との協働によって安定的に保持させるために全体として上下方向に延びたものとなっているが、座本体c2が前後方向にスライド移動する際に、座受本体caの両側端部における上端部y1に対して干渉しないようにするため、前部における左右両側部分cfに位置する部分の上下寸法が極端に短く設定されたものとなっている。
【0073】
なお、支持部材c21のサポート壁c214は、後部における左右両側部分crに位置する部分の上下寸法も前部における左右両側部分cfと同様に短く設定されたものとなっている。
【0074】
支持部材c21の前部における左右両側部分cfに位置し他の箇所と比較して相対的に上下寸法が短く設定されたサポート壁c214の高さは、後方すなわち支持部材c21の左右両側部における前後方向中央部分に向かって漸次高くなるようになだらかに復帰するものとなっている。
【0075】
支持部材c21の後部における左右両側部分crに位置し、他の箇所と比較して相対的に上下寸法が短く設定されたサポート壁c214の高さは、支持部材c21の後端部における左右方向中央部分に向って漸次高くなるようになだらかに復帰するものとなっている。
【0076】
[座クッションc22]
座クッションc22は、発泡材であるウレタンフォーム材を主体に作られたものである。座クッションc22の下面には、シェル状の部材である支持部材c21が取り付けられている。底面視において、座クッションc22の外縁形状は、支持部材c21の外縁形状と近似した形状をなしている。
【0077】
座クッションc22は、支持部材c21に対して上側から外嵌し得るような形状をなしている。
【0078】
座クッションc22は、底面視において、支持部材c21よりも大きな形状をなしている。換言すれば、座クッションc22における前後方向及び左右方向の寸法は、支持部材c21の前後方向及び左右方向の寸法よりも長く設定されている。
【0079】
座クッションc22における周縁部には、サポート壁c214の外側面smに添接し得る内面である内側面snを有した垂設部c221が設けられている。垂設部c221は、座クッションc22の周縁部において下方に垂下するような形態をなす部位である。垂設部c221は、サポート壁c214よりも外側に配設されている。
【0080】
なお、座クッションc22における垂設部c221を含む周縁部Gは、支持部材c21よりも外側方に迫り出した形状をなしている。換言すれば、座クッションc22における周縁部Gは支持部材c21に対してオーバーハングしたものとなっている。
【0081】
また、座クッションc22の下面側における前後方向中央部には、支持部材c21に設けられた座中央部スリットc215に対応させて下向きに開放された複数の凹部c222が設けられている。
【0082】
[座張地c23]
座張地c23は、伸縮性のある生地を主体に構成されたものである。座張地c23は、座クッションc22における上面、外側面、及び、周縁部Gの下面(垂設部c221の下面)を外側から被覆し得るとともに支持部材c21の周端縁に垂下するように設けられたサポート壁c214を空間sr側から被覆し得るものとなっている。
【0083】
座張地c23は、座クッションc22、及び、支持部材c21における周縁部の下面側をくるんだ状態で、端縁y2が図示しない紐部材により絞り込まれることにより、全体が緊張された状態で座クッションc22及び支持部材c21に取り付けられている。
【0084】
すなわち、座張地c23の端縁y2は、当該端縁y2により形成された開口が小さくなる方向(小径化する方向)に絞り込まれるようになっている。作業者による絞り込み作業が終了した後の座張地c23の端縁y2は、支持部材c21の周縁壁部c213の下に配設され、引っ掛け片cnに引っ掛けられるようになっている。
【0085】
座クッションc22の周縁部G、特に、サポート壁c214の外側に位置している座クッションc22の垂設部c221は、緊張された座張地c23による端縁y2方向への引っ張り力を受けてサポート壁c214に対して密着され安定的に支持されたものとなっている。
【0086】
特に、この実施形態では、支持部材c21における前部の湾曲度合いが、座受c1における前部の湾曲度合いよりも大きく設定されているため、座張地c23が座クッションc22の周縁部Gを皺の出現等を抑制しつつバランスよく包みやすいものとなっている。
【0087】
つまり、支持部材c21における左右の角部czが、座受c1の角部cxよりも角張っていないため、座張地c23は、その端縁y2を支持部材c21の底面側において略円環状をなすように絞り込んだ場合でも、座クッションc22の周縁部Gに対して絞り込み圧力の不均衡を生じさせ難いものとなっている。その結果、この実施形態の座本体c2は、座クッションc22の外面側に皺が生じ難い構成になっている。
【0088】
しかも、座張地c23の内面側では、支持部材c21のサポート壁c214によって座クッションc22における周縁部Gの垂設部c221が好適に裏当て支持されているため、座クッションc22にもサポート壁c214の存在によって座張地c23の緊張に伴う凹凸が出現し難いものとなっている。
【0089】
また、サポート壁c214の下端縁は、座張地c23に対して圧接されるものとなる。このため、座張地c23の端縁y2に生ずるギャザー状の皺が、サポート壁c214の下端縁によって好適に遮断され、座クッションc22側に影響を与え難いようになっている。
【0090】
このため、この実施形態の座Cにおいては、正面側から見た場合に、座受c1の上端部近傍に位置する座本体c2の見え掛かりを凹凸や皺等の出現が抑制された見栄えの良いものとすることができるものとなっている。
【0091】
換言すれば、この実施形態における座本体c2は、正面視における下端部の見え掛かりが良好なものとなるように構成されている。
【0092】
<操作部材c3>
操作部材c3は、座本体c2に対して上位置と下位置との間で上下動可能に支持されている。操作部材c3の操作端である下端部は、座受スリットcsを通じて座受c1の下に露出したものとなっている。
【0093】
操作部材c3は、無負荷時においては、座クッションc22の付勢力を受けて下位置に位置するようになっている。操作部材c3は、使用者の操作力を受けて座クッションc22の付勢力に抗して上位置に位置変更し得るものとなっている。
【0094】
操作部材c3は、下位置にあるときに座本体c2を座受c1の所定の位置に位置決めし得るものとなっている。一方で、操作部材c3は、上位置にあるときに座受c1との前後方向への移動規制状態が解かれ座本体c2を座受c1に対して前後方向にスライド移動可能な状態にし得るものとなっている。
【0095】
<規制機構V>
規制機構Vは、座受c1及び支持部材c21の前部側の左右及び後部側の左右の四箇所に配設されている。四箇所の各規制機構Vのそれぞれが、座受c1に抜止突起Wと、支持部材c21に設けられ抜止突起Wが相対移動可能且つ離脱不能に係合し得る前後方向に延びた案内部Jとを主体に構成されている。
【0096】
[抜止突起W]
抜止突起Wは、柱状をなし上下方向に延びた起立部w1と、起立部w1の先端部に設けられ当該起立部w1より幅寸法が長く設定された抜止部w2とを備えている。抜止突起Wは、正面視又は背面視において略T字状をなしている。
【0097】
起立部w1は、四角柱状をなし基端部が座受ベースc10に対して一体に連結されている。
【0098】
抜止部w2は、左右方向に長手をなす略矩形ブロック状をなしたものである。抜止部w2の左右方向中央部は起立部w1の上端部に一体に連設されている。
【0099】
着座者が座Cに着座した状態で、座本体c2を前後方向にスライド移動する操作をした場合には、支持部材本体c211が撓み変形することに伴い、抜止部w2における左右両端部の下面が、対応する案内部Jにおける左右の沿設部j2の上面側に対してそれぞれ摺接し得るものとなっている。
【0100】
[案内部J]
案内部Jは、支持部材本体c211における前後四箇所の角部分に設けられている。案内部Jは、前後方向に延びてなり起立部w1を前後方向に相対移動可能に案内し得る案内スリットj1と、案内スリットj1に沿って左右両側部に隣設され抜止部w2の下面が係合し得る左右の沿設部j2と、案内スリットj1及び沿設部j2を取り囲む立壁部j3を備えている。
【0101】
沿設部j2は、前後方向に延びてなる沿設部本体j21と、沿設部本体j21の上に突設された凸状部j22とを備えたものである。
【0102】
沿設部本体j21は前後方向に延びた略板状をなしたものである。
【0103】
凸状部j22は、抜止突起Wにおける抜止部w2の下面に対して摺接し得るものである。凸状部j22は、左右の沿設部j2のそれぞれに設けられている。凸状部j22が、横断面視において略半円状をなしているものであり、前後方向に延びたレール状をなしている。凸状部j22は、沿設部本体j21に対して互いに平行をなすように二本設けられている。
【0104】
なお、沿設部本体j21に平行に突設された凸状部j22の間には潤滑剤であるグリース等を好適に溜まらせることができるようになっている。
【0105】
発明者らは、従来の椅子では、「座本体を前後方向にスライド移動させる際に、何らかの部材同士が摺動することによる異音が発生する場合がある。」という不具合を発見した。そして、不具合の解消に向けた探求をした結果、発明者等は、「座本体に対して着座者が着座していない無負荷状態では抜止突起の抜止部と案内部の沿設部とが緊密に係合していないにもかかわらず、座本体に対して着座者が着座した場合には、支持部材本体が撓み変形することに起因して、抜止部と沿設部とが緊密に係合する場合がある。」ことを突き止めた。そして、発明者等は、「抜止部と沿設部とが緊密に係合する際に異音が生ずる場合がある。」という知見を得るに至った。
【0106】
この実施形態では、規制機構Vを構成する案内部Jの沿設部j2に凸状部j22を設けている。このため、着座者が座Cに着座した状態で、座本体c2を前後方向にスライド移動する操作をした場合であっても、抜止部w2の下面に対して沿設部j2は凸状部j22が点的に接触するだけであり、面的に接触することによる異音の発生や滑り悪さが好適に回避されるものとなる。
【0107】
このため、この実施形態の規制機構Vの構成であれば、座本体c2がスライド移動する際に生じ得る異音が発生し難いだけでなく、座本体c2を座受c1に対して円滑にスライド移動させることができるものとなっている。
【0108】
<<背支持体D>>
背支持体Dは、支持基部Bと背凭れEの間、及び、支持基部Bと座Cとの間に介設されている。背支持体Dは、座Cの座受c1に設けられた後軸保持部ceに係わり合う左右方向に延びた後軸jk3を備えている。
【0109】
背支持体Dは、前後方向に延びてなる起立板状をなし主軸jk1を介して支持基部Bの支持基部本体1に枢支された左右一対のアームd1と、左右一対のアームd1における後部間を結合する起立板状をなす結合部材d2と、左右一対のアームd1における主軸jk1よりも前側の部位に支持された左右方向に延びてなる後軸jk3と、左右一対のアームd1よりも左右方向中央部側に配設され上部が後軸jk3に連結された左右一対の受け軸支持部材d3と、左右一対の受け軸支持部材d3の下部間に連結された受け軸d4を備えたものである。
【0110】
<左右のアームd1>
左右のアームd1は、金属製のものである。左右のアームd1は、前後方向に延びてなる部位である左右のアーム本体d11を有した起立壁状をなしている。左右のアームd1は、支持基部本体d1における左右の側壁14よりも外側に配設されている。
【0111】
左右のアームd1は、前後方向に延びてなり前端部において主軸jk1を支持し得る左右のアーム本体d11と、左右のアーム本体d11の前端部から斜め前上方に一体に延設され上端部において座Cに係合する後軸jk3を支持する左右の前アーム部d12と、左右のアーム本体d11と左右の前アーム部d12との間に設けられ主軸jk1を保持し得る左右方向に貫通した主軸挿通孔d13とを備えている。
【0112】
左右のアーム本体d11は、前後方向に略直線状に延びてなるものである。左右のアーム本体d11の後部間は、結合部材d2により連結されている。左右のアームd11の後端部は、結合部材d2よりも後に突出したものとなっており、その突出部分dtが背凭れEの下枠材4に設けられた背支持体連結部41に内嵌し得るものとなっている。
【0113】
左右のアーム本体d11における結合部材d2が止着された部分よりも前には左右方向に貫通した図示しない軸孔が設けられており、それら軸孔には後傾度合設定レバーx1が回転可能に支持されている。
【0114】
<結合部材d2>
結合部材d2は、金属製のものである。結合部材d2は、左右方向に延びてなる起立板状をなしたものである。結合部材d2の左右両端部は、左右のアームd1の内側部に対して溶接により剛結されている。
【0115】
結合部材d2には、背凭れEを取り付けるためのねじvが螺着されるナット部ntが設けられている。
【0116】
なお、背支持体Dには、左右のアームd1の後部、及び、当該左右のアームd1の後部間を繋ぐ結合部材d2によって平面視又は底面視においてH字状に構成された背凭れ取付部が形成されている。
【0117】
<後軸jk3>
後軸jk3は、左右方向に延びてなり左右の前アーム部d12の上端部に連結されたものである。
【0118】
<左右の受け軸支持部材d3>
左右の受け軸支持部材d3は、反力ばねHGに押圧される受け軸d4を支持するものである。左右の受け軸支持部材d3は、下端部において受け軸d4の両端部を剛結させている。
【0119】
<受け軸d4>
受け軸d4は、左右方向に延びたものであり支持基部本体1の内部に配設されている。受け軸d4は、支持基部Bに配設された反力ばねHGの付勢力を直接的に受ける部位をなしている。
【0120】
<<下カバー体I>>
下カバー体Iは、背支持体Dに対して装着される合成樹脂による一体成型品である。下カバー体Iは、左右一対のアームd1における前部を下方から覆う左右のアームカバー部i1と、左右のアームカバー部i1の後端部に連設され支持基部Bよりも後の領域を下方から覆う後カバー部i2と、後カバー部i2の後端縁から立設され背支持体Dの結合部材d2における左右方向中央部の背面に添接しつつ上端縁に対して係合する後係合爪i3を備えている。
【0121】
アームカバー部i1の前後方向中央部の上端部には、左右一対のアームd1の上端部に係合する前係合爪i11が設けられている。
【0122】
後カバー部i2は、左右一対のアームd1の後部間に配された回転部材x2を外部から視認されないように覆い隠している。
【0123】
後係合爪i3は、上端部が結合部材d2の上端縁に引っ掛かるとともに背フレームMの下枠材4と結合部材d2との間に挟まれるものとなっている。
【0124】
下カバー体Iは、前係合爪i11及び後係合爪i3がそれぞれ背支持体Dにおける対応する部位に係合するため、背支持体Dに対して外れにくい態様で好適に取り付けられたものとなっている。
【0125】
<<後傾度合設定機構X>>
後傾度合設定機構Xは、支持基部Bに対して背支持体Dを介して後傾動作可能に支持された背凭れEの後傾度合いを、使用者の操作によって二以上の複数の中から選択し得るものである。
【0126】
後傾度合設定機構Xは、背支持体Dに回転可能に支持された後傾度合設定レバーx1と、後傾度合設定レバーx1に対して一体的に回転可能に取り付けられ複数の後傾度合いに対応した複数の当たり面が配設された回転部材x2とを備えたものである。
【0127】
<<背凭れE>>
背凭れEは、ねじ挿通孔hを有し背支持体Dにねじvにより取り付けられた背凭れ基部である背フレームMと、背フレームMとは別部材により構成され背フレームMの下基部部分である下枠材4を上側からカバーするカバー体である下枠材カバーQと、背フレームMに張り設けられたメッシュ状の張り部材Pとを備えてなる。
【0128】
<背フレームM>
背フレームMは、外側方に開口した張り部材取付溝mzを有した左右の側枠材2と、上方に開口した張り部材取付溝mzを有し左右の側枠材2の上部間を連結する上枠材3と、左右の側枠材2の下部間を連結する下枠材4と、下方に開口した張り部材取付溝mzを有し上枠材3との間に上の空洞saを形成するとともに下枠材4との間に下の空洞sbを形成した状態で左右の側枠材2同士を連結する中間連結枠材5とを有したものである。
【0129】
この実施形態では、背フレームMを構成する左右の側枠材2、上枠材3、下枠材4、及び、中間連結枠材5が、合成樹脂により一体に成型されたものとなっている。
【0130】
背フレームMは、所定の方向すなわち上下方向に延びてなる第一枠材である左右の側枠材2と当該左右の側枠材2に連設され左右の側枠材2に対して交差する方向である左右方向に延びてなる第二枠材である上枠材3と左右方向に延びてなる中間連結枠材5とによって内部に上の空洞saを形成した上の枠状部waと、左右の側枠材2と下枠材4と中間連結枠材5とによって内部に下の空洞sbを形成した下の枠状部wbとを備えている。
【0131】
上の枠状部waを構成する左右の側枠材2と上枠材3との間にはそれぞれ角部Kが形成されている。
【0132】
背凭れEは、背フレームMに設けられた上の枠状部waに対してのみ背凭れ面pmを構成し得る張り部材Pが張設されたものとなっている。一方で、下の枠状部wbには、張り部材Pが張設されていないものとなっている。
【0133】
[左右の側枠材2]
左右の側枠材2は、上下方向に延びてなるものである。左右の側枠材2は、上下方向中間部に屈曲部23を有し、側面視において略「く」の字状をなしている。
【0134】
左右の側枠材2の外側面には、当該側枠材2の上端から中間連結枠材5の下縁に略対応する高さ位置まで連続する張り部材取付溝mzが形成されている。上下方向に延びてなる左右の側枠材2間には、張り部材Pが張設されている。
【0135】
左右の側枠材2は、外側方に開放された張り部材取付溝mzを有する外枠部分21と、外枠部分21の内側に位置し前部を外枠部分21における前部よりも後方に位置させた内枠部分22とを備えている。
【0136】
着座者の腰部に対応する高さ位置である左右の側枠材2における上下方向中間部、より具体的に言えば、左右の側枠材2における内枠部分22の上下方向中間部には、ランバーサポートRを上下位置変更可能に保持し得るランバーサポート保持部Nが設けられている。
【0137】
[上枠材3]
上枠材3は左右方向に延びてなるものである。上枠材3は、張り部材Pを取り付けるための上方に開放された張り部材取付溝mzが形成された外枠部分31と、外枠部分31の下に配された内枠部分32とを備えている。
【0138】
上枠材3の張り部材取付溝mzにより形成される張り部材Pの端部収容空間zsは、左右の側枠材2の張り部材取付溝mzにより形成される張り部材Pの端部収容空間zsと繋がったものとなっている。換言すれば、上枠材3と左右の側枠材2との間に設けられた角部Kにも端部収容空間zsが形成されている。
【0139】
[角部Kの構成]
背フレームMの角部Kには、上の枠状部waにおける外方すなわち上の枠状部waに囲われていない外部空間側と内方すなわち上の枠状部waに囲われた上の空洞sa側との間を貫通する貫通孔kaが設けられている。
【0140】
貫通孔kaは、角部Kにおける前後方向の厚み方向中央部に設けられたものである。貫通孔kaは、下方に向かって漸次内方に位置するように斜め方向に延びている。
【0141】
貫通孔kaは、上の枠状部waに囲われていない外部空間側に位置する上の開口部kbと、上の枠状部waに囲われている上の空洞sa側に位置する下の開口部kcとを備えている。上の開口部kbは、端部収容空間zsを臨む位置に設けられており、下の開口部kcは、角部Kにおける前面側の下部に設けられた係止部材配設領域ksを臨む位置に設けられている。
【0142】
角部Kを対応する部分における上枠材3の外枠部分31の下部には、上側に向かって凹んだ形状をなす凹み部hcが形成されている。上方に凹んだ凹み部hcにより得られた空間的な領域が、張り部材Pに設けられた係止部材p3が配設される係止部材配設領域ksとなっている。なお、係止部材配設領域ksに配設された係止部材p3は、上の枠状部waの前面側に張設された張り部材本体p1により殆ど視認されないようになっている。
【0143】
背フレームMにおける左右の角部Kに設けられた貫通孔kaには、外側から内側に向かって張り部材Pに設けられた係止部材p3が挿入されるようになっている。貫通孔kaに挿入された係止部材p3の全部又は少なくとも一部分は、貫通孔kaを通り抜けた後に下の開口部kcにより抜け止めすなわち逆戻りが抑制されて係止部材配設領域ksに配設されるようになっている。
【0144】
[下枠材4]
下枠材4は、左右の側枠材2の下部間を繋ぐとともに背支持体Dに連結する部分を有している。また、下枠材4には、上面側に下枠材カバーQが嵌め込まれる嵌合枠部4wが形成されている。
【0145】
下枠材4は、下方を向く外面部を有した下外壁4aと、下外壁4aの両側部から立ち上がり側方を向く外面部を有した左右の側外壁4bと、下外壁4aにおける左右方向中央部の後端縁から上方に延設され後方を向く外面部を有した後外壁4cとを備えている。
【0146】
下枠材4は、下外壁4aにおける左右の前端部e1、左右の側外壁4bにおける前端部e2と上端部e3、後外壁4cにおける上端部e4、及び、水平リブ2aの前端部e5により囲われてなる嵌合枠部4wが設けられている。嵌合枠部4wには、下枠材カバーQが嵌合し得るものとなっている。
【0147】
なお、水平リブ2aは、左右の側枠材2の下端部から前方に延設された板状をなしており、前端部e5が下枠材4の上部に位置したものとなっている。
【0148】
下枠材4には、下外壁4a、左右の側外壁4b、及び、後外壁4cに囲まれた領域内に、左右のアームd1の後端部に外嵌する前方に開放された凹陥状をなす左右のアーム連結部41が設けられている。
【0149】
左右のアーム連結部41は、下外壁4aと、下外壁4aから立設された左右の中間起立壁4dと、左右の中間起立壁4dの上端部から内側方に延設された上壁部4eとによって構成されている。
【0150】
次に、下枠材4に設けられた凹所Uについて説明する。
【0151】
凹所Uは、ねじ挿通孔hが穿設されているとともにねじvの頭部vtが係合し得るねじ係合壁である奥壁u1と、奥壁u1よりも後側であり且つ開口部ukよりも前側に位置した手前壁である起立壁u2と、前後方向に延びてなり内面側が収容空間sdを臨む周壁u3と、前後方向に延びてなりねじ収容空間sdを臨む面を有するとともに起立壁u2の外側端部と奥壁u1の内側端部との間を繋ぐ中間壁u4を備えたものである。
【0152】
奥壁u1の後向面は、ねじvの頭部vtを位置決めする位置決め部を構成するものである。ねじvが挿通されるねじ挿通孔hを有する奥壁u1は、左右に対をなして設けられている。奥壁u1は、その中心部に前後方向に貫通したねじ挿通孔hが形成されている。なお、奥壁u1の反対面である前向面は、背支持体Dにおける結合部材d2の背面に当接するものとなっている。つまり、奥壁u1は、ねじvの頭部vtの位置決め壁と背支持体Dの結合部材d2との係合壁を兼ねたものとなっている。
【0153】
起立壁u2は、背面視において左右に設けられた奥壁u1の内側に設けられている。起立壁u2は、左右方向に長手をなし奥壁u1と略平行をなす姿勢で配されている。起立壁u2の背面は、背面視において視認される面をなしている。起立壁u2は、通過孔u32を通過した下枠材カバーQにおける隠蔽体q2における隠蔽体本体q21の外面と略面一をなすように設定されている。
【0154】
周壁u3は、前後方向に対して略直交する方向を向く内周面を有している。周壁u3の後端部は後外壁4cに至っており、後外壁4cに開口部ukが形成されている。周壁u3は上側に位置する上壁部u31を含んで構成されている。上壁部u31には、ねじ収容空間sdに対応する位置に左右に対をなす通過孔u32が設けられている。通過孔u32は、ねじ収容空間sdを臨む位置に上下方向に貫設されており、下枠材カバーQの隠蔽体q2が通過し得るようになっている。
【0155】
換言すれば、凹所Uは、下枠材4の左右方向中央部に設けられた後方に開放したものである。凹所Uには、背フレームMを背支持体Dに対して連結するためのねじvの頭部vtを収容し得るねじ収容空間sdが形成されている。ねじvは、下枠材4の後方から開口部ukを通じて挿入される。凹所Uは、背面側から見て前方に窪んだ形態をなしている。
【0156】
[中間連結枠材5]
中間連結枠材5は、左右方向に延びてなるものである。中間連結枠材5は、左右の側枠材2における側面視において前傾した部位間に架設されている。
中間連結枠材5は、平面視において後方に向けて凸をなすように湾曲した形状をなしている。中間連結枠材5には、下方に開口した張り部材取付溝mzが形成されている。
【0157】
<<下枠材カバーQ>>
下枠材カバーQは、背凭れ基部の下基部部分である背フレームMの下枠材4の上側を覆うものである。
【0158】
下枠材カバーQは、背フレームMに対して着脱可能な構成をなしている。下枠材カバーQは、ねじvの頭部vtが下枠材4に設けられた位置決め部である奥壁u1に位置決めされた場合に、背フレームMに対する正規の装着位置すなわち嵌合枠部4wに嵌り込む位置に装着されるようになっている。
【0159】
下枠材カバーQは、背フレームMと背支持体Dとを連結するためのねじvの頭部vtが下枠材4における奥壁u1の後面によって適切に位置規制された場合に、下枠材4に設けられた嵌合枠部4wに対して適切に嵌合し得るように構成されている。
【0160】
下枠材カバーQは、下基部部分である下枠材4の上面側を覆う下枠材カバー本体q1と、下枠材カバー本体q1の前後方向中央部から下方に突設されたものでありねじvの頭部vtの後部に係接しつつねじvの頭部vtを外部すなわち後方から視認不能に隠蔽し得る隠蔽体q2と、下枠材カバー本体q1の前端部から下方に向かって延設され下枠材4における左右の前面側を覆う左右一対の前カバー部q3を備えたものである。
【0161】
<下枠材カバー本体q1>
下枠材カバー本体q1は、前後方向及び左右方向に延びてなる板状をなしている。
【0162】
下枠材カバー本体q1は、嵌合枠部4wを構成する左右の側外壁4bにおける上端部e3に対応するカバー側端部t3、嵌合枠部4wを構成する後外壁4cにおける上端部e4に対応するカバー中央後端部t4、嵌合枠部4wを構成する水平リブ2aの前端部e5に対応するカバー左右後端部t5を備えている。
【0163】
下枠材カバー本体q1の後部における左右両側部には円筒状をなし下端部が下枠材4の左右両側部に設けられた下水平リブ4rの上面に当接し得る位置決め突部q11が垂設されている。
【0164】
下枠材カバー本体q1の左右の後端縁すなわちカバー左右後端部t5には、嵌合枠部4wを構成する水平リブ2aの前端部e5に係合し得る係合突起q12が設けられている。
【0165】
<隠蔽体q2>
隠蔽体q2は、下枠材カバー本体q1から垂設された突片状をなし背面側を視認され得る部位とした隠蔽体本体q21と、隠蔽体本体q21の前面側に設けられ前端がねじvの頭部vtに係接し得る頭部係合部q22とを備えたものである。
【0166】
隠蔽体q2は、凹所Uに設けられた奥壁u1のねじ挿通孔hに挿通されたねじvに対応させて左右に対をなして設けられている。
【0167】
[隠蔽体本体q21]
隠蔽体本体q21は、上下方向及び左右方向に長手をなす板状のものであり、下端縁が略半円形状に形成されている。
【0168】
[頭部係合部q22]
頭部係合部q22は、上下方向及び前後方向に長手をなす板状のものであり、上端部が下枠材カバー本体q1に連設されているとともに後端部が隠蔽体本体q21に連設されている。
【0169】
<前カバー部q3>
前カバー部q3は、下方に向かって漸次横幅が狭くなるように形成された略三角形状をなしている。
【0170】
前カバー部q3は、嵌合枠部4wを構成する下外壁4aにおける左右の前端部e1に対応するカバー下端部t1、嵌合枠部4wを構成する左右の側外壁4bにおける前端部e2に対応するカバー前側端部t2を備えている。
【0171】
[下枠材カバーQの位置によるねじvに関する確認機能]
下枠材カバーQは、ねじvがねじ挿入孔hに挿入され、且つ、ねじvの頭部vtが位置決め部である奥壁u1の後面に位置決めされていない場合には、隠蔽体q2が、ねじvの頭部vtを外部から視認不能に隠蔽できない構成をなしている。
【0172】
図41に示すように、ねじvの頭部vtが奥壁u1に至るまで適切に螺合進入していなかった場合には、隠蔽体q2の下端部が頭部vtの上端部に係合することになる。この結果、隠蔽体q2は、奥壁u1の背面側の正規の位置にまで下降することができないことになり、嵌合枠部4wに嵌合するべき下枠材カバー本体q1の周端部が、所定の位置に移動できないものとなる。この状態を視認した作業者は、ねじvがねじ挿通孔hに対して適切に螺合していない(螺合状態が不十分である。ねじvが十分にねじ込まれていない。)ことに気づくことができるようになっている。
【0173】
また、下枠材カバーQは、ねじvがねじ挿通孔hに挿入されていなかった場合には、下枠材カバーQが下枠材4の所定の位置に位置決めされず、がたつくことになるため、下枠材カバー本体q1の縁部と背凭れ基部との間に一定幅の隙間skが生じ得る構成をなしている。
【0174】
図42に示すように、ねじvをねじ挿通孔hに挿入しないまま、背フレームMを背支持体Dに取り付けようとした場合には、下枠材カバーQは、所期の位置に安定することができず、前後方向へのずれ動きが明らかになるように構成されている。この結果、下枠材カバー本体q1の周縁部は、嵌合枠部4wに対してがたつく状態(隙間skが簡単に出現する状態)になる。この状態を視認した作業者は、ねじvがねじ挿通孔hに対して挿入されていないことに気づくことができるようになっている。
【0175】
<張り部材P>
張り部材Pは、メッシュ状の生地を主体に構成され背凭れ面pmを構成し得る張り部材本体p1と、張り部材本体p1の外縁部に取り付けられ左右の側枠材2、上枠材3、及び、中間連結枠材5に設けられた張り部材取付溝mzに保持される被保持部材たる帯状部材p2と、背フレームMにおける角部Kの貫通孔kaを外側から内側に通り抜け当該貫通孔kaにおける下の開口部kcに係止し得る係止部材p3を備えている。
【0176】
張り部材本体p1は、背フレームMにおける上の枠状部waの前面側に張設される正面視において略矩形状をなしたものである。
【0177】
帯状部材p2は、組み付け時において張り部材本体p1の端部とともに張り部材取付溝mz内に圧入されるものである。帯状部材p2は、左右の側枠材2、上枠材3、及び、中間連結枠材5において正面視において略直線状をなす部分に略対応するように、張り部材本体p1の外縁部に取り付けられている。帯状部材p2は、正面視において略直線状に延びてなり張り部材本体p1に縫着された合成樹脂製のものである。
【0178】
なお、帯状部材p2は、背フレームMの角部Kに対応する部分の張り部材部材本体p1には縫着されていないものとなっている。
【0179】
係止部材p3は、角部Kの貫通孔kaに挿入され、その後、上の空洞saを臨む貫通孔kaにおける下の開口部kcに係止し得るものである。
【0180】
係止部材p3は、張り部材本体p1から一体に延設された突片状ないし帯状の生地paにより形成されたものである。
【0181】
係止部材p3は、張り部材本体p1から一体に延設された突片状ないし帯状の生地paを折り曲げて積層化することにより形成されている。より具体的に言えば、係止部材p3は、張り部材本体p1から延設された帯状の生地部分paを単数又は複数回折り返した上で、その折り返しにより出現した塊状の形態(積層化した状態)を維持するべく折り返した部分間を縫い付けしてなるものである。
【0182】
係止部材p3は、伸縮可能な塊状をなしている。係止部材p3は、貫通孔kaの通過時において一時的に圧縮される形態に設定されている。係止部材p3は、貫通孔kaを通過した後は、当該貫通孔kaにより挟圧及び圧縮されていた状態から解放され、貫通孔kaの内部を通過していた時よりも膨んだ形状に復帰することになる。
【0183】
この実施形態の張り部材Pは、角部Kの貫通孔kaを通過した係止部材p3が、貫通孔kaを逆戻りし難いものとなっている。そのため、張り部材Pにおける角部Kに対応する部分が、角部Kから離脱し難い好適な構成を備えたものとなっている。
【0184】
<<ランバーサポートR>>
ランバーサポートRは、背凭れEに対して着脱可能に支持されている。
【0185】
ランバーサポートRは、左右の側枠材2間に上下方向に位置変更可能に架設されている。ランバーサポートRは、張り部材Pの後に位置し、着座者の腰部を支持し得るものである。
【0186】
ランバーサポートRは、背凭れEにおける左右の側枠材2間に上下方向に位置変更可能に架け渡された単一部品であるランバーベースRBと、ランバーベースRBに対して左右方向に位置変更可能に支持された一対すなわち左右のランバーパッドRPとを備えたものである。
【0187】
この実施形態のランバーサポートRは、背凭れEに対して後付け的に装着する作業も、背凭れEから離脱させる作業も、構成部品を一時的に撓ませることにより実行できるようになっている。
【0188】
上述した実施形態であれば、ねじvが視認されることに起因して外観が損なわれることを下枠材カバーQに突設された隠蔽体q2によって好適に抑制し得る構成を有した椅子を提供することができるものとなる。
【0189】
また、上述した実施形態であれば、座受c1に対して座本体c2を好適に前後方向にスライド移動することができ、支持部材c21よりも大きな座クッションc22を安定的に設けた座本体c2を得るとともに座本体c2における周縁部Gの好適な外観、特に、座本体c2における前下端部の見え掛かりの好適な外観を形成し得る設計の自由度に優れた椅子を提供することができるものとなる。
【0190】
また、上述した実施形態であれば、背凭れEにおける上の枠状部waの角部Kに張り部材Pを支持させ得る好適な構成を有した椅子を提供することができるものとなる。
【0191】
また、上述した実施形態であれば、座受c1に対して座本体c2が好適に前後動し得るとともに座本体c2と座受c1とが摺接することに伴って異音が生ずる現象を好適に抑制し得る構成を備えた椅子を提供することができるものとなる。
【0192】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子は、座受c1に対して座本体c2を前位置(F)と後位置(N)との間で前後方向にスライド移動可能に支持させた座Cを備えてなるものである。そして、座本体c2が、座受c1よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定されたシェル状をなす支持部材c21と、支持部材c21に支持され当該支持部材c21よりも前後方向及び左右方向の寸法が大きく設定された座クッションc22と、座クッションc22及び支持部材c21の周縁部を被覆する座張地c23とを備えたものである。
【0193】
そして、支持部材c21の外周端縁に、下方に突出し外側面smが座クッションc22の内側面snに添接し得るサポート壁c214が形成されたものである。後位置(N)において、支持部材c21の前端部すなわち前部における左右方向両側部の前端部y5が座受c2の前端部すなわち前部における左右方向両側部の前端部y6よりも後に位置し得るものであり、支持部材c21の前部に位置するサポート壁c214が座受c1に対して干渉しない上下寸法に設定されている。
【0194】
このため、本実施形態であれば、少なくとも、座受c1に対して座本体c2を好適に前後方向にスライド移動することができ、支持部材c21よりも大きな座クッションc22を安定的に設けた座本体c21を得るとともに座本体c21における周縁部の好適な外観を形成し得る設計の自由度に優れた椅子を提供することができるものとなる。
【0195】
支持部材c21が、平面視又は底面視において前部が前方に凸をなすように湾曲した形状を有するとともに後部が後方に凸をなすように湾曲した形状を有するものであり、後位置(N)において、支持部材c21の前部における左右方向中央部の端部y3が、座受c1の前部における左右方向中央部の端部y4と略同一の前後方向位置に位置するものであり、後位置(N)において、支持部材c21の前部における左右方向両側部の前端部y5が、座受c1の前部における左右方向両側部の前端部y6よりも後に位置するものである。
【0196】
このため、支持部材c21における前部の湾曲度合いが、座受c1における前部の湾曲度合いよりも大きく設定されているため、座張地c23が座クッションc22の周縁部Gを皺の出現等を抑制しつつバランスよく包みやすいものとなっている。
【0197】
つまり、支持部材c21の前部における左右の角部czが、座受c1の前部における左右の角部cxよりも角張っていないため、座張地c23は、その端縁y2を支持部材c21の底面側において略円環状をなすように絞り込んだ場合でも、座クッションc22の周縁部Gに絞り込み圧力の不均衡を生じさせ難く、その結果、座クッションc22の外面側に皺を生じさせ難いものとなっている。
【0198】
しかも、座張地c23の内面側では、支持部材c21のサポート壁c214の外側面smによって座クッションc22の周縁部Gにおける垂設部c221が好適に支持されているため、座クッションc22にも座張地c23の緊張に伴う凹凸が出現し難いものとなっている。
【0199】
このため、この実施形態の座Cにおいては、正面側から見た場合に、座受c1の上端部近傍に位置する座本体c2の見え掛かりを凹凸や皺等の出現が抑制された見栄えの良いものとすることができるものとなっている。
【0200】
換言すれば、この実施形態における座本体c2は、正面視における下端部の見え掛かりが、凹凸や皺等の出現が回避された好適なものとなっている。
【0201】
支持部材c21の前部における左右両側部分cfに形成されたサポート壁c214の上下寸法が、支持部材c21の両側部における前後方向中央部に形成されたサポート壁c214の上下寸法よりも短く形成されている。
【0202】
このため、支持部材c21の前部における左右両側部分cfに形成されたサポート壁c214は、座本体c2が前後方向にスライド移動した場合においても、座受c1の上端部y1と干渉し難いものとなっている。
【0203】
支持部材c21が、中央部に配設された支持部材本体c211と、支持部材本体c211の周縁部に段部c212を介して外側方に延設され下面が支持部材本体c211の下面よりも上側に位置する周縁壁部c213と、周縁壁部c213の全周端縁に設けられたサポート壁c214とを備えたものである。そして、周縁壁部c213の下に座張地c23の端縁y2が配設されている。
【0204】
このため、支持部材c21は、座張地c23の端縁y2が配設される好適な形態をなしたものとなっている。
【0205】
座受c1の上部に支持部材本体c211の下面に添接し得る下受け領域Lが形成されたものであり、下受け領域Lが正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている。
【0206】
このため、座受c1は、着座者を支持し得る好適な形状をなしたものとなっている。
【0207】
支持部材c21が、正面視及び背面視において外側部よりも中央部が下に位置するように湾曲した形状をなしている。
【0208】
このため、支持部材c21は、着座者を支持し得る好適な形状をなしたものとなっている。
【0209】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0210】
座受に対して干渉しない上下寸法に設定されたサポート壁は、支持部材の前部のみならず後部にも設定してよいのはもちろんことである。
【0211】
座受の具体的な形状は、種々の形状を採り得るものであり、上述した実施形態に示されたものに限られるものではない。
【0212】
座本体を構成する支持部材やクッション材の形状は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の形状のものを採用することができるものである。
【0213】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0214】
C…座
(F)…前位置
(N)…後位置
c1…座受
c2…座本体
c21…支持部材
c22…座クッション
c23…座張地
c214…サポート壁
図1
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