(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-09
(45)【発行日】2025-09-18
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20250910BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20250910BHJP
【FI】
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
A61F13/496 100
(21)【出願番号】P 2021177031
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2024-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑畑 耕平
(72)【発明者】
【氏名】中尾 佑馬
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-228307(JP,A)
【文献】特開2020-103562(JP,A)
【文献】特表2019-502497(JP,A)
【文献】特開2017-104197(JP,A)
【文献】特開2016-022235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性本体と、複数の熱可塑性シートを含み前記吸収性本体の非肌側に配置され、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部を有する外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交する横方向と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、
着用者の腹側に配置される腹側部と、
着用者の背側に配置される背側部と、
前記腹側部の前記横方向における側縁部と前記背側部の前記横方向における側縁部とがそれぞれ接合された一対のサイド接合部と、を有し、
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の少なくとも一方は、
着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位に当接する領域であり、前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置された第1の収縮部と、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、前記第1の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第1の収縮部よりも前記縦方向において前記レッグ開口部側に位置する第2の収縮部と、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、前記第2の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第2の収縮部よりも前記縦方向において前記レッグ開口部側に位置する第3の収縮部と、を含み、
前記第1の収縮部、前記第2の収縮部及び前記第3の収縮部は、前記吸収性本体の前記縦方向の両端部の一方から前記第3の収縮部の前記レッグ開口部側の端部までを3等分することにより定義され、
前記第1の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第1の収縮力は、前記第2の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第2の収縮力より高く、
前記第3の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第3の収縮力は、前記第2の収縮部の前記第2の収縮力より高く、
前記一対のサイド接合部の前記縦方向において少なくとも前記第2の収縮部に配置され、前記腹側部の前記側縁部及び前記背側部の前記側縁部と共に前記一対のサイド接合部により接合された、補強シートを有する
パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記補強シートは、
前記一対のサイド接合部に亘って前記横方向に前記第2の収縮部を覆うように配置され、
前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、
前記補強シート接合部は、前記縦方向において前記第2の収縮部の内側に配置される
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記補強シート接合部は、前記縦方向の成分を含むように配置される
請求項2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記補強シートは、前記縦方向において前記第2の収縮部の前記縦方向の両端をまたぐように配置され、
前記補強シート接合部は、前記第2の収縮部の前記縦方向の前記両端をまたぐように、前記外装体に配置される
請求項2又は3に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記補強シート接合部は、前記補強シートに塗工された接着剤を含む
請求項2乃至4の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記補強シートは、前記一対のサイド接合部の前記縦方向において少なくとも前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を連続的に覆うように配置される
請求項1乃至5の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の前記少なくとも一方は、
前記外装体の前記縦方向の端部が、前記ウエスト開口部から前記縦方向に折り返された折り返し部を有し、
前記補強シートは、前記折り返し部により構成される
請求項6に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
前記補強シートは、
前記一対のサイド接合部に亘って前記横方向に前記第2の収縮部を覆うように配置され、
前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、
前記補強シート接合部は、前記縦方向において前記折り返し部の前記縦方向において少なくとも前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を連続的に覆うように配置される
請求項7に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
前記外装体の前記腹側部は、前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を含み、
前記外装体の前記背側部は、前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を含み、
前記腹側部の前記第2の収縮部と、前記背側部の前記第2の収縮部とは、前記縦方向において重ならない位置に配置される
請求項1乃至8の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
前記補強シートは、前記縦方向において前記第2の収縮部と前記第3の収縮部との境界をまたいで前記第3の収縮部の少なくとも一部を覆うように
配置される
請求項1乃至9の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
前記補強シートは、前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、
前記補強シート接合部は、前記第2の収縮部と前記第3の収縮部
との境界をまたぐように、前記外装体に配置される
請求項
1乃至10の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
前記外装体は、前記複数の熱可塑性シートとして、内層シートと、前記内層シートよりも非肌側に配置された外層シートとを有し、
前記補強シートは、前記第2の収縮部を跨ぐように配された前記外層シートで構成される折り返し部であり、前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、前記補強シート接合部は接着剤により構成され、前記折り返し部に前記接着剤が塗工される
請求項1乃至11の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項13】
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の前記少なくとも一方は、前記第1の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第1の収縮部よりも前記縦方向において前記ウエスト開口部側に位置する第4の収縮部をさらに含み、
前記第4の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第4の収縮力は、前記第1の収縮部の前記第1の収縮力より低い
請求項1乃至12の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項14】
前記複数の熱可塑性シートの少なくとも1つは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記複数の高密度部の前記縦方向のピッチは、前記第2の収縮部の前記複数の弾性部材の前記縦方向のピッチより短い
請求項1乃至13の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項15】
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第2のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第1のシートの前記複数の高密度部の前記縦方向のピッチと、前記第2のシートの前記複数の高密度部の前記縦方向のピッチとは、異なる
請求項1乃至14の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項16】
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第2のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第1のシートにおける前記複数の高密度部の面積の割合と、前記第2のシートにおける前記複数の高密度部の面積の割合とは、異なる
請求項1乃至14の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項17】
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第2のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第1のシートの前記複数の高密度部のパターンと、前記第2のシートの前記複数の高密度部のパターンとは、異なる
請求項1乃至14の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項18】
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートの繊維配向度と、前記第2のシートの繊維配向度とは、異なる
請求項1乃至14の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等のパンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型吸収性物品は、一般に、吸収性本体と、外装体と、腹側の外装体と背側の外装体とが側端部で接合されたサイド接合部(サイドシール部)と、を備えている。腹側の外装体と背側の外装体とがサイド接合部によって接合されることで、パンツ型吸収性物品のウエスト部分が形成される。
一方で、パンツ型吸収性物品の着用後には、衛生上の観点等から、サイド接合部を引き裂いて廃棄することがある。このため、サイド接合部は、着用動作時(パンツ型吸収性物品を履かせる際)及び着用時には剥がれることがなく、廃棄時には容易に引き裂くことができる機能が求められている。
【0003】
使い捨ておむつ等のパンツ型吸収性物品のずれ落ち防止や履き心地の向上には、着用者の腸骨稜から上前腸骨棘にかけての部位(即ち、体型的に括れた部分であり、骨が体表近くにまで存在すると共に皮膚の変動が少ない部分)の収縮力を高めることが有用である。また、ずれ落ち防止や履き心地の向上には、上記部位の下側の部位(即ち、着用者の姿勢の変化により皮膚が大きく伸縮する部分)の収縮力を低くしておむつを強くフィットさせないようにすることが有用である。特許文献1は、ギャザーの間隔を広くすることによって収縮力を弱めたパンツ型吸収性物品を開示する。
【0004】
特許文献2は、腰骨部のギャザーピッチを広くし、通気性を向上するパンツ型吸収性物品を開示する。特許文献3は、積層枚数に応じた量の結合強度低減剤を配置することで、廃棄時に容易に引き裂くことが可能なパンツ型吸収性物品を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-125087号公報
【文献】特開2020-103562号公報
【文献】特開2009-148465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
履き心地の向上や風合い向上のためには、外装体が柔らかい材料で作製される。廃棄時に、柔らかい材料で作製された外装体のサイド接合部を引き裂いて行くと、ギャザー間隔の広い部分(即ち、収縮力が弱い部分)で、破り終えた側が大きく収縮し、接合部を破る力が幅方向に働き、外装体が横裂けすることがある。
【0007】
本発明の課題は、履き心地の良さと、廃棄時の引き裂き容易性及び横裂け防止とを両立させることが可能なパンツ型吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態に係るパンツ型吸収性物品は、
吸収性本体と、複数の熱可塑性シートを含み前記吸収性本体の非肌側に配置され、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部を有する外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交する横方向と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、
着用者の腹側に配置される腹側部と、
着用者の背側に配置される背側部と、
前記腹側部の前記横方向における側縁部と前記背側部の前記横方向における側縁部とがそれぞれ接合された一対のサイド接合部と、を有し、
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の少なくとも一方は、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置された第1の収縮部と、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、前記第1の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第1の収縮部よりも前記縦方向において前記レッグ開口部側に位置する第2の収縮部と、を含み、
前記第1の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第1の収縮力は、前記第2の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第2の収縮力より高く、前記単位幅は前記縦方向の幅であり、
前記一対のサイド接合部の前記縦方向において少なくとも前記第2の収縮部に配置され、前記腹側部の前記側縁部及び前記背側部の前記側縁部と共に前記一対のサイド接合部により接合された、補強シートを有する。
【0009】
本発明のパンツ型吸収性物品によれば、履き心地の良さと、廃棄時の引き裂き容易性及び横裂け防止とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品を示す模式的な斜視図である。
【
図2】上記パンツ型吸収性物品の肌対向面側を示す模式的な平面図であり、上記パンツ型吸収性物品を展開し、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた態様を示す図である。
【
図3】上記パンツ型吸収性物品のサイド接合部を示す模式的な平面図である。
【
図4】上記サイド接合部の模式的な断面図であり、腹側部又は背側部の一方を示す図である。
【
図5】上記パンツ型吸収性物品の着用者を模式的に示す。
【
図7】外層シート及び内層シートの複数の高密度部のパターンの一例を示す。
【
図8】外層シート及び内層シートの複数の高密度部のパターンの一例を示す。
【
図9】外層シート及び内層シートの繊維配向度の一例を示す。
【
図14】補強シート接合部及び接合強度低下部の塗工パターンの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
[パンツ型使い捨ておむつの全体構成]
図1及び
図2には、本発明の実施形態に係るパンツ型吸収性物品として、パンツ型使い捨ておむつ1が示されている。パンツ型使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
【0013】
図1に示すように、おむつ1は、ウエスト開口部1W及び一対のレッグ開口部1Lを備え、着用時に、着用者の胴回り及び股間部に着用される。ウエスト開口部1Wは、ウエスト開口端Waを有する。おむつ1は、縦方向X、横方向Yを有する。縦方向Xは、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる。横方向Yは、縦方向Xに直交し、着用者の左右方向に対応する。さらに、
図2等に示すように、おむつ1の縦方向X及び横方向Yに直交する方向を、厚み方向Zとする。
本明細書において、「ウエスト側」とは、縦方向Xにおいて、ウエスト開口部1Wのウエスト開口端Waに近づく側を意味し、「レッグ側」とは、縦方向Xにおいて、ウエスト開口端Waから遠ざかる側を意味する。
本明細書において、「横方向Y内側」とは、横方向Yにおいて、パンツ型吸収性物品(おむつ1)を横方向Yに2等分する縦中心線CLに近づく側を意味し、「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。
本明細書では、厚み方向Zに関しては、パンツ型吸収性物品(おむつ1)の着用時において着用者の肌に近い側を肌側、着衣に近い側を非肌側という事がある。また、「肌対向面」とは、パンツ型吸収性物品(おむつ1)又はその構成部材における、着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い面を意味する。「非肌対向面」とは、パンツ型吸収性物品(おむつ1)又はその構成部材における、肌対向面とは反対側(着衣側)に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌から遠い面を意味する。
【0014】
着用者がおむつ1を着用する際には、まず、一対のレッグ開口部1Lに脚を通し、おむつ1を胴体側に引き上げ、おむつ1を着用者の胴回り及び股間部に配置する。本明細書において、この一連の動作を、「着用動作」と称する。着用動作は、おむつ1の着用者ではなく、介助者によって行われることもある。このため、本明細書では、着用動作の主体を、「介助者等」とする。
また、本明細書において、着用者の通常想定される適正な着用位置におむつ1が配置された状態を、「着用時」と称する。
【0015】
図1及び
図2に示すように、おむつ1は、吸収性本体4と、吸収性本体4の非肌対向面側に配置された外装体5と、を備える。
なお、
図2は、おむつ1を展開し、各部の弾性部材を伸張させて、弾性部材の影響を一切排除した状態の設計寸法となるように平面状に広げた形態を示す。この態様をおむつ1の「展開伸長状態」とも称する。おむつ1を展開するとは、後述するサイド接合部8の腹側部5a及び背側部5bを分離することを意味する。
【0016】
吸収性本体4は、外装体5の肌対向面側に固定されている。吸収性本体4は、吸収体40を少なくとも有し、さらに、表面シート2、裏面シート(図示せず)等を有していてもよい。例えば、吸収性本体4は、裏面シート、吸収体40及び表面シート2が厚み方向Zに積層された構成を有する。吸収体40は、液保持性の吸収性コアを含み、さらに、当該吸収性コアを被覆するコアラップシートを含んでいてもよい。吸収性本体4は、縦方向Xの両端部として、着用者の腹側に配置される吸収性本体腹側端部4Aと、着用者の背側に配置される吸収性本体背側端部4Bとを有する。
吸収性本体4に含まれる各構成(裏面シート、吸収体40、表面シート2等)に用いられる材料としては、当該技術分野において用いられるものを特に制限なく用いることができる。
【0017】
外装体5は、複数の熱可塑性シート50を含む。外装体5は、例えば、複数の熱可塑性シート50の積層体として構成される。
熱可塑性シート50は、熱可塑性樹脂を主体とするシート材である。熱可塑性シート50は、好ましくは90質量%以上の熱可塑性樹脂を含み、より好ましくは100質量%の熱可塑性樹脂で構成される。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。熱可塑性繊維は、短繊維でも長繊維でも良い。熱可塑性繊維としては、芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型等の複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。
【0018】
外装体5は、着用者の腹側に配置される腹側部5aと、着用者の背側に配置される背側部5bと、を少なくとも有する。本実施形態の外装体5は、さらに、腹側部5a及び背側部5bの間に位置し着用者の股間部に配置される股下部5cを含む。この例において、腹側部5a、股下部5c、及び背側部5b、は、縦方向Xに沿って配置されている。また、外装体5は、股下部5cにおいて横方向Y内側に括れた形状を有する。これにより、着用者の脚繰りに沿ったレッグ開口部1L(
図1参照)が形成される。
外装体5の外縁は、縦中心線CLに関して線対称(左右対称)に構成されることが好ましい。
【0019】
さらに、外装体5は、腹側部5aの横方向Yにおける側縁部5dと、背側部5bの横方向Yにおける側縁部5eとがそれぞれ接合された、一対のサイド接合部8を有する。つまり、右側のサイド接合部8は、腹側部5aの右側の側縁部5dと、背側部5bの右側の側縁部5eとが、厚み方向Zに重ねられて接合された構成を有する。左側のサイド接合部8は、腹側部5aの左側の側縁部5dと、背側部5bの左側の側縁部5eとが、厚み方向Zに重ねられて接合された構成を有する。
サイド接合部8は、詳細を後述するように、ヒートシールや超音波シールなどによって接合されることが好ましい。
【0020】
[収縮部]
図2に示す様に、外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203を含む。腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方を、横方向Yに延びる4本の帯状領域に区分し、該4本の帯状領域を、ウエスト開口部1Wからレッグ開口部1Lに向かって順に、第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203とする。第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203には、それぞれ、横方向Yに延びる複数の弾性部材10が配置される。
【0021】
第4の収縮部204は、ウエスト開口部1Wのウエスト開口端Waに最も近い最上端の弾性部材10から、吸収性本体腹側端部4A又は吸収性本体背側端部4Bまでの縦方向Xに亘る領域である。第1の収縮部201は、第4の収縮部204と縦方向に連続し、第4の収縮部204よりも縦方向Xにおいてレッグ開口部1L側に位置する。第2の収縮部202は、第1の収縮部201と縦方向に連続し、第1の収縮部201よりも縦方向Xにおいてレッグ開口部1L側に位置する。第3の収縮部203は、第2の収縮部202と縦方向に連続し、第2の収縮部202よりも縦方向Xにおいてレッグ開口部1L側に位置する。第3の収縮部203の縦方向Xの下端(股下部5c寄りの端部)は、レッグ端部8bに最も近い最下端の弾性部材10である。第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203は、第4の収縮部204の下端(即ち、吸収性本体腹側端部4A又は吸収性本体背側端部4B)から第3の収縮部203の下端(股下部5c寄りの端部)までを3等分することにより定義される。第4の収縮部204と、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203との縦方向Xの長さ(幅)は、同一でもよいし、異なってもよい。なお、図面において、第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203の縦方向Xの長さ(幅)の割合は、複数の図面相互間で一致していない場合があり、図面はあくまでも説明のための模式的なものである。
【0022】
第1の収縮部201の横方向Yの単位幅当たりの平均収縮力である第1の収縮力は、第4の収縮部204の横方向Yの単位幅当たりの平均収縮力である第4の収縮力より高い。第1の収縮部201の第1の収縮力は、第2の収縮部202の横方向Yの単位幅当たりの平均収縮力である第2の収縮力より高い。第3の収縮部203の横方向Yの単位幅当たりの平均収縮力である第3の収縮力は、第2の収縮部202の第2の収縮力より高い。
【0023】
第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203には、弾性部材10が、それぞれ横方向Yに亘って配置されている。弾性部材10は、外層シート51と内層シート52との間に、ホットメルト接着剤等の接着剤によって伸長状態にて接合されている。各収縮部の単位幅当たりの平均収縮力を異ならせるには、各収縮部に使用する弾性部材10の本数、材質、太さを異ならせる方法、弾性部材の伸長率を異ならせる方法、これらを組み合わせた方法等がある。
【0024】
本実施形態では、
図2に示す様に、第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203に配置される弾性部材10の間隔を異ならせることで、各収縮部の単位幅当たりの平均収縮力を異ならせる。即ち、単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い第1の収縮部201及び第3の収縮部203は、弾性部材10が相対的に狭い間隔で配置される。一方、単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い第4の収縮部204及び第2の収縮部202は、弾性部材10が相対的に広い間隔で配置される。
【0025】
本実施形態のおむつ1において、第1の収縮部201は、
図5に示すように、おむつ1を着用したときに着用者の腸骨稜9aから上前腸骨棘9bにかけての部位に当接する領域であり、第3の収縮部203は、おむつを着用したときに着用者の転子9cが位置する部位に当接する領域である。
図5中、符号9dは坐骨を示す。
第1の収縮部201の単位幅当たりの第1の平均収縮力と第3の収縮部203の単位幅当たりの第3の平均収縮力とが、それぞれ、第2の収縮部202の単位幅当たりの第2の平均収縮力より高いため、第1の収縮部201により腸骨稜9aから上前腸骨棘9bにかけての部位を強く締め付けることができると共に、第3の収縮部203により、転子9cが位置する部位を強く締め付けることができ、それにより、優れたずれ落ち防止性能が得られる。
【0026】
このようにして、優れたずれ落ち防止性能が第1の収縮部201及び第3の収縮部203により得られるため、第2の収縮部202の単位幅当たりの第2の平均収縮力や、第4の収縮部204の単位幅当たりの第4の平均収縮力である単位幅当たりの第4の平均収縮力は低くすることができる。
【0027】
第2の収縮部202が当接される着用者の部位は、着用者の姿勢の変化により皮膚が大きく伸縮する部分である。例えば、起立した状態から四つ這いの状態に変化したとき、該部位の皮膚は大きく伸長する。
そのため、第2の収縮部202の単位幅当たりの第2の平均収縮力を低くして、皮膚が大きく伸長する部分にはおむつを強くフィットさせないようにすることで、皮膚の伸縮との連動によるずれ落ちを防止でき、ずれ落ち防止性能が一層向上する。また、皮膚が大きく伸長するところに、おむつを強くフィットさせないことにより、はき心地も一層向上し、また、着用者の肌にゴム跡や赤みが付けたりすることも防止することができる。
【0028】
また、第4の収縮部204の単位幅当たりの第4の平均収縮力を低くすることで、前方に膨らんだ形状の腹部にゴム跡が付いたり肌が赤くなったりすることを防止することができ、また、ウエスト開口端Waが開き易いので、おむつ1を着用させ易くなる。
【0029】
ずれ落ち防止性能や履き心地の向上等の観点から、第1の収縮部201の単位幅当たりの第1の平均収縮力は、2.0~9.0cN/mm、特に2.0~7.0cN/mmであることが好ましく、第2の収縮部202の単位幅当たりの第2の平均収縮力は、0.4~6.0cN/mm、特に0.4~3.5cN/mmであることが好ましく、第1の収縮部201の単位幅当たりの第1の平均収縮力と第2の収縮部202の単位幅当たりの第2の平均収縮力の差は、0cN/mm超であり、0.2~6.0cN/mmであることが好ましく、特に0.2~3.0cN/mmであることが好ましい。
また、ずれ落ち防止性能や履き心地の向上等の観点から、第3の収縮部203の単位幅当たりの第3の平均収縮力は、2.0~9.0cN/mm、特に2.0~7.0cN/mmであることが好ましく、第3の収縮部203の単位幅当たりの第3の平均収縮力と第2の収縮部202の単位幅当たりの第2の平均収縮力との差は、0cN/mm超であり、0.2~6.0cN/mmであることが好ましく、特に特に0.2~3.0cN/mmであることが好ましい。
【0030】
また、着用者に肌にゴム跡や赤みを付けることを防止する観点及び履きやすさ(履かせやすさ)の観点から、第4の収縮部204の単位幅当たりの第4の平均収縮力は、0.2~9.0cN/mm、特に0.2~4.0cN/mmであることが好ましく、第1の収縮部201の単位幅当たりの第1の平均収縮力と第4の収縮部204の単位幅当たりの第4の平均収縮力の差は、0cN/mm超であり、0.2~6.0cN/mm、特に0.4~3.0cN/mmであることが好ましい。
【0031】
[各収縮部の収縮力の測定方法] おむつ1を
図2に示すように展開して平面状に拡げ、該おむつ1を、横方向Yと平行な直線に沿って切断して、腹側部5a及び背側部5bそれぞれから第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203をそれぞれ切り出す。この切り出しの際には、外装体5のみならず、吸収性本体4等を含むおむつ1全体を切断する。
切り出した各収縮部(測定サンプル)の長手方向の両端(サイドシール部を形成していた部分のすぐ内側)を、テンシロン引張試験機(ORIENTEC社製「RTC-1210A」)のチャックに挟み、該測定サンプルを300mm/minの速度で長手方向に伸長させる。外装体5の内寸を、弾性部材により外包材のシートが収縮していない状態(換言すれば弾性部材を配さずに外包材のみを伸展させた状態)で測定した外装体5のサイドシール部間の長さ、とする。外装体5の内寸を100(例えば350mm)としたときの、80相当(例えば280mm)の長さまで伸長させた後に、71相当(例えば250mm)の長さまで300mm/minの速度で収縮させたときの引張り荷重(cN)を収縮力とする。外装体5の内寸を100としたときの71相当の長さにおける戻りの力を規定した理由は、本実施形態のおむつ1を着用する主たる対象者である幼児の腹回りの長さがおむつ1内寸と比して71%程度となるからである。なお、ここで言う腹回りの長さは、幼児の姿勢が変化したときの腹回りの周長の変化を考慮し、立位および座位で測定した腹回りの平均値である。単位幅当たりの平均収縮力は、本測定の収縮力を測定幅(切断した幅)で割って求める。
【0032】
[サイド接合部の構成]
図2に示すように、一対のサイド接合部8は、縦方向Xの両端部を構成する、ウエスト端部8aと、レッグ端部8bと、をそれぞれ有する。
ウエスト端部8aは、サイド接合部8におけるウエスト側の端部である。
レッグ端部8bは、サイド接合部8におけるレッグ側の端部である。
各サイド接合部8は、全体として、ウエスト端部8aからレッグ端部8bまで、縦方向Xに延びる構成を有する。
【0033】
ウエスト端部8aからレッグ端部8bまでそれぞれ延びる一対のサイド接合部8によって、腹側部5aと背側部5bとが着用者の胴周りに沿った筒状となり、おむつ1のウエスト開口部1W及びレッグ開口部1Lが形成される。サイド接合部8は、着用動作時及び着用時には、腹側部5aと背側部5bとが剥がれることなく、接合された状態を維持することが好ましい。
本明細書において、おむつ1の着用動作時及び着用時に、サイド接合部8の腹側部5aと背側部5bとが意図せずに分離することを「剥がれる」と表現する。
一方で、着用後におむつ1を交換する際には、おむつ1に付着した排泄物を衛生的に処理する観点から、介助者等が、サイド接合部8の腹側部5aと背側部5bとを分離して、おむつ1を展開してから廃棄することがある。
本明細書において、おむつ1の廃棄時に、サイド接合部8及び/又はその周囲に外力を加えて、意図的にサイド接合部8の腹側部5aと背側部5bを分離する動作を、「引き裂く」と表現する。
このように、サイド接合部8は、着用動作時及び着用時においては剥がれを防止でき、かつ、廃棄時においては横裂けすることなく容易に引き裂ける構成を有することが好ましい。
【0034】
[外装体の構成例]
図4に示すように、外装体5は、複数の熱可塑性シート50として、例えば、外層シート51と、内層シート52と、を含むことが好ましい。外層シート51は、内層シート52よりも非肌側に配置され、外装体5の非肌対向面を構成する。内層シート52と外層シート51との間には、後述する弾性部材10が配置されていることが好ましい。
【0035】
上述の様に、外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、ウエスト開口部1Wからレッグ開口部1Lに向かって順に、第4の収縮部204(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)、第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)及び第3の収縮部203(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を含む。
【0036】
おむつ1の廃棄時に、外装体5のサイド接合部8をウエスト端部8aからレッグ端部8bに向けて縦方向Xに引き裂いて行く場合、第1の収縮部201(弾性部材10が相対的に狭い間隔で配置され、単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、第2の収縮部202(弾性部材10が相対的に広い間隔で配置され、単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、第1の収縮部201が大きく収縮し、サイド接合部8を縦方向Xに引き裂く力が横方向Yに働き、第2の収縮部202が横方向Yに横裂けするおそれがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、第2の収縮部202(弾性部材10が相対的に広い間隔で配置され、単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を補強する補強シートを有する。
【0038】
[補強シートの構成例]
補強シートは、外装体5の縦方向Xの端部103が、ウエスト開口端Waから縦方向Xに折り返された折り返し部100により構成される。以下、補強シートを折り返し部100と称し、補強シートと折り返し部100とが同一物であることを意味する。
図4に示すように、折り返し部100は、外装体5の外層シート51の縦方向Xの端部103が、ウエスト開口部1W側にあるウエスト開口端Waから股下部5cに向けて縦方向Xに肌側に折り返されることにより構成される。折り返し部100は、外装体5の内層シート52に対向する。
【0039】
折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第2の収縮部202に配置される。好ましくは、折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第1の収縮部201及び第2の収縮部202を連続的に覆うように配置される。折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bに亘って配置されてもよい。第2の収縮部202が補強されることにより、第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、第1の収縮部201が大きく収縮しても、第2の収縮部202が補強されているため、第2の収縮部202が横方向Yに横裂けするのを防止する。
【0040】
好ましくは、折り返し部100は、縦方向Xにおいて第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bをまたぐように配置される。好ましくは、折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第1の収縮部201及び第2の収縮部202を連続的に覆うように配置される。これにより、第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、第1の収縮部201が補強されているため第1の収縮部201が大きく収縮するのを緩和しつつ、第2の収縮部202が補強されているため、第2の収縮部202が横方向Yに横裂けするのを防止することができる。さらに、縦方向Xに連続する第1の収縮部201と第2の収縮部202の両方に折り返し部100が積層され積層枚数が変化しないので、第1の収縮部201から第2の収縮部202に亘って縦方向Xに連続的に引き裂きやすい。
【0041】
本例では、折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて、第4の収縮部204、第1の収縮部201及び第2の収縮部202を覆い、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aを覆うように配置される。折り返し部100が、ウエスト開口端Waの第4の収縮部204(即ち、引き裂き始め)から第1の収縮部201及び第2の収縮部202を覆い、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aを覆うように配置されるので、サイド接合部8をウエスト端部8aからレッグ端部8bに向けて縦方向Xに連続的に引き裂きやすい。
【0042】
折り返し部100は、一対のサイド接合部8に亘って横方向Yに少なくとも第2の収縮部202を覆うように配置される。本例では、折り返し部100は、一対のサイド接合部8に亘って横方向Yに、第4の収縮部204、第1の収縮部201及び第2の収縮部202を覆い、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aを覆うように配置される。折り返し部100は、腹側部5aの横方向Yにおける側縁部5dと、背側部5bの横方向Yにおける側縁部5eと共に、一対のサイド接合部8により接合される。
【0043】
この様に、折り返し部100は、横方向Yの両端が一対のサイド接合部8により外装体5に接合され、さらに、縦方向Xの一端が外装体5の端部103に連続している。即ち、折り返し部100は、一対のサイド接合部8及び外装体5の端部103の3辺で、外装体5に対する配置が固定される。このため、折り返し部100が面的に外装体5の内層シート52に接合されなくても、折り返し部100の外装体5に対する配置は固定される。一方、以下に説明するように、折り返し部100が面的に外装体5の内層シート52に接合されてもよい。
【0044】
[補強シート接合部の構成例]
折り返し部100は、折り返し部100が外装体5に接合される補強シート接合部101を有する。補強シート接合部101は、例えば、複数のシール部又はホットメルト接着剤により構成される。シール部は、例えば、加圧手段及び/又は加熱手段によって接合され、具体的には、ヒートシールや超音波シールなどによって接合される。ホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、又はポリオレフィン系の材料を用いることができる。
【0045】
図6は、補強シート接合部の構成例を示す。
図6のAは、補強シート接合部101が複数のシール部により構成される例を示す。
図6のB、C、Dは、補強シート接合部101がホットメルト接着剤により構成される例を示す。
【0046】
補強シート接合部101は、縦方向Xにおいて第2の収縮部202の内側に配置される(A、B、C、D)。折り返し部100を、外装体5の腹側部5a又は背側部5bに対して、サイド接合部8だけで接合するのではなく、さらに補強シート接合部101によって面的に接合することで、折り返し部100と接合された第2の収縮部202の強度が高まり、第2の収縮部202がさらに横裂けしにくくなる。
【0047】
補強シート接合部101は、縦方向Xの成分を含むように配置されるのが好ましい。例えば、補強シート接合部101は、縦方向Xに延びるシール部が横方向Yに間隔をあけて配置される(A)。あるいは、補強シート接合部101は、縦方向Xの成分を含む直線又は曲線を含む波形に配置される(B、D)。あるいは、補強シート接合部101は、縦方向Xの成分を含む曲線を含むスパイラル状に配置される(C)。ここでいうスパイラル状とは、円形又は楕円形に近い形状を一つの単位形状として、複数の単位形状が横方向Yに沿って繰り返し配置された形状を意味する。補強シート接合部101が、縦方向Xの成分を含むように配置されることで、第2の収縮部202の縦方向Xの強度が高くなり、仮に第2の収縮部202が横方向Yに横裂けしても強度が高い補強シート接合部101との接合部分により横裂けが防御される。これにより、全体として第2の収縮部202が横裂けしにくくなる。
【0048】
好ましくは、補強シート接合部101は、第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bをまたぐように、外装体5に配置される(C、D)。言い換えれば、補強シート接合部101は、第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bをまたぐように、第1の収縮部201の第2の収縮部202と隣接する領域から、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aに亘って配置される。これにより、第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bをまたぐように縦方向Xの成分を含むように配置された補強シート接合部101が存在するため、第1の収縮部201が大きく収縮するときに縦方向Xの襞が形成され、縦方向Xの接合が強く第2の収縮部202が縦方向Xに連続して引き裂きやすくなる。更には、縦方向Xの成分を含む補強シート接合部では横方向Yへの材料の強度が高くできる。これにより、第2の収縮部202がさらに横裂けしにくくなる。
【0049】
図4に示す様に、さらに好ましくは、補強シート接合部101は、縦方向Xにおいて折り返し部100の縦方向Xの両端に亘って配置される。上述の様に、本例では、折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて、第4の収縮部204、第1の収縮部201及び第2の収縮部202を覆い、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aを覆うように配置される。従って、補強シート接合部101は、縦方向Xにおいて、折り返し部100のウエスト開口端Waから端部103に亘って配置される。これにより、縦方向Xに連続する第1の収縮部201と第2の収縮部202の両方に折り返し部100が積層され積層枚数が変化せず、且つ、縦方向Xに亘って全面的に接合されているので、第1の収縮部201から第2の収縮部202に亘って縦方向Xに連続的に引き裂きやすい。
【0050】
補強シート接合部101がホットメルト接着剤により構成される場合(B、C、D)、補強シート接合部101は、折り返し部100に対向する外装体5の内層シート52ではなく、折り返し部100に塗工される。外層シート51及び内層シート52を含む外装体5と、外層シート51で構成される折り返し部100とを比較すると、折り返し部100の破断強度の方が低い。装着時の動作等で破断強度が低い折り返し部100が破れるのを防止するために、折り返し部100に補強シート接合部101を塗工して折り返し部100の破断強度を高くすることができる。
【0051】
折り返し部100又は折り返し部100に対向する外装体5の内層シート52のどちらに接合剤が塗工されているかは、以下の様に判断することができる。補強シート接合部101で接合された折り返し部100と、折り返し部100に対向する外装体5の内層シート52とを剥がし、弾性部材10の収縮を伸ばして伸長状態とする。これらの接合面に、接合剤に反応するトナーを振りかける。トナーの着色量又は蛍光量の有無により、塗工部と非塗工部を二値化し、塗工面積率を算出する。トナーの着色量又は蛍光量の面積率がより多い片側が、接合剤の塗工面である。
【0052】
[サイド接合部]
上述の様に、サイド接合部8は、着用動作時及び着用時においては剥がれを防止でき、かつ、廃棄時においては横裂けすることなく容易に引き裂ける構成を有することが好ましい。上記観点から、サイド接合部8の少なくとも一方は、複数のサイドシール部Sを含む。なお、一対のサイド接合部8は、同様の構成を有していることが好ましい。
また、本明細書において、各部位の寸法及び角度は、説明のない限り、各部の弾性部材を伸長させない自然状態において測定したものとする。
【0053】
サイドシール部Sは、腹側部5a及び背側部5bの双方の熱可塑性シート50が融着して接合された部分である。サイドシール部Sは、例えば、加圧手段及び/又は加熱手段によって接合され、具体的には、ヒートシールや超音波シールなどによって接合される。
複数のサイドシール部Sは、縦方向Xに離間して配置され、横方向Yにそれぞれ延びる。
複数のサイドシール部Sが縦方向Xに離間して配置されていることで、一つのサイドシール部Sが剥がれた場合に、縦方向Xに沿ってサイド接合部8全体が剥がれることを防止できる。
図3に示すように、複数のサイドシール部Sは、サイド接合部8全体の接合強度を安定化させる観点から、縦方向Xに等間隔に離間して配置されることが好ましい。
【0054】
「サイドシール部Sが横方向Yに延びる」とは、サイドシール部Sの横方向Yの寸法が縦方向Xの寸法よりも大きいことにより、サイドシール部Sが全体として横方向Yに延びていることを意味する。つまり、サイドシール部Sは、横方向Yに平行に延びる態様に限定されない。
図3に示す例では、サイドシール部Sは、平面視において、横方向Yに延びる長方形状に構成される。
【0055】
[サイドシール部の寸法例]
サイドシール部Sの寸法としては、着用動作時及び着用時の剥がれ防止と引き裂き容易性とを両立させる観点から、以下の例が挙げられる。なお、上述の様に、以下の寸法は、弾性部材を伸長させていない自然状態における寸法である。
サイドシール部Sの横方向Yの長さは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは4mm以下であり、また好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
サイドシール部Sの縦方向Xの長さは、好ましくは0.1m以上、より好ましくは0.3mm以上であり、また好ましくは2mm以下、より好ましくは0.6mm以下であり、また好ましくは0.1mm以上2mm以下、より好ましくは0.3mm以上0.6mm以下である。
サイドシール部Sの横方向Yの長さは、サイドシール部Sの縦方向Xの長さに対して、好ましくは100%以上、より好ましくは400%以上であり、また好ましくは1000%以下、より好ましくは800%以下であり、また好ましくは100%以上1000%以下、より好ましくは400%以上800%以下である。
隣り合うサイドシール部S間の縦方向Xの距離は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また好ましくは10mm以下、より好ましくは4mm以下であり、また好ましくは0.1mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上4mm以下である。
【0056】
[弾性部材の構成例]
図2に示すように、外装体5の腹側部5a及び背側部5bは、横方向Yに延びる複数の弾性部材10を含む。
複数の弾性部材10は、外装体5の複数の熱可塑性シート50間に配置される。例えば、複数の弾性部材10は、外層シート51及び内層シート(不図示)の間に配置されている。
これらの弾性部材10により、おむつ1の胴周りに伸縮性が発揮され、着用動作が容易になるとともに、着用時のフィット性が維持される。
なお、「弾性部材10が横方向Yに延びる」とは、展開伸長状態において弾性部材10が横方向Yに延びることを意味する。但し、上記表現は、弾性部材10が展開伸長状態において横方向Yに平行な態様に限定されず、全体として横方向Yに延びる態様を含むものとする。
さらに、
図2に示すように、外装体5は、上記弾性部材10の他、レッグ開口部1Lの周囲に配置されたレッグ用弾性部材11を含んでいてもよい。
【0057】
弾性部材10,11は、断面が矩形、正方形、円形、多角形状等の糸状(糸ゴム等)若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。弾性部材10,11の材料は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられるもの等を特に制限なく用いることができ、例えば、スチレン-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0058】
腹側部5a及び背側部5b各々の弾性部材10の横方向Y外側の端部は、胴周り全体の伸縮性を確保する観点から、サイド接合部8又はその近傍に位置していることが好ましい。具体的に、当該端部は、サイド接合部8との横方向Yにおける距離が20mm以下であることが好ましく、当該距離が0mmであって当該端部がサイド接合部8内に位置していることがより好ましい。
弾性部材10は、引き裂き時に力が加えられる領域又はその近傍まで配置されることが一般的であり、廃棄時の引き裂き容易性に影響を与えやすい。
【0059】
弾性部材10の伸張率は、パンツ型吸収性物品から取り出された自然長における弾性部材の長さに対する、パンツ型吸収性物品の展開伸長状態において伸長された弾性部材の長さの割合を意味する。
つまり、この伸張率が低いほど、弾性部材10を引っ張った際の弾性力がより小さくなる傾向となる。
なお、弾性部材10の伸張率は、製造時において、外装体5に配置される弾性部材10の伸張の度合いを調整することで、調整することができる。製造時には、例えば、弾性部材10を所定の長さまで伸張させ、コーム等によって弾性部材10に接着剤を塗布し、外装体5の熱可塑性シート50に弾性部材10を固定する。
【0060】
[弾性部材の平均伸張率の測定方法]
おむつ1のサイド接合部8及びサイド補強部105を分離して吸収性本体4を外し、外装体5の腹側部5a及び背側部5bを切り出す。さらに、切り出した部位を横方向Yに平行に切断し、測定対象部位を切り出す。
そして、おむつ1の展開伸長状態における、切り出した各領域の弾性部材10の長さを測定する。この測定値から、外装体5における全ての弾性部材10の最大伸張状態の長さの平均値を算出する。なお、展開伸長状態における弾性部材10の長さは、後述する方法で全ての弾性部材10を取り外した後の、外装体5の横方向Yの長さを測定することによって測定してもよい。
外装体5に接着剤等によって固定された全ての弾性部材10を、トルエン、メチルエチルケトン、ヘプタン等の適当な溶剤を用いて外装体5の他の構成部材から取り外し、外装体5における自然長の弾性部材10の長さを測定する。この測定値から、外装体5における自然長の全ての弾性部材10の長さの平均値を算出する。
そして、外装体5において、自然長における弾性部材10の長さの平均値に対する、展開伸長状態における弾性部材10の長さの平均値の割合を算出し、これを外装体5の弾性部材10の平均伸張率とする。
【0061】
複数の弾性部材10の平均伸張率は、好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上であり、好ましくは500%以下、より好ましくは400%以下である。
【0062】
[外層シートの構成例]
複数の熱可塑性シート50は、外装体5の非肌側を構成する外層シート51と、外層シート51に隣接する内層シート52と、を含む。複数の熱可塑性シート50を構成する外層シート51と、内層シート52とは、廃棄時の引き裂き容易性を向上させる観点から、スパンボンド不織布で構成されることが好ましい。スパンボンド不織布は、シート形成性の観点から、上述の熱可塑性樹脂のうち、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含んでいることが好ましく、より好ましくは、ポリプロピレンを含んでいることがより好ましい。ポリプロピレンとしては、α-オレフィン等が挙げられる。
【0063】
外層シート51に用いられるスパンボンド不織布は、繊維同士を確実に融着してシートを形成する観点から、低密度部と、低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有することが好ましい。複数の高密度部は、例えば、繊維が圧着されて融着した複数のエンボス部である。エンボス部は、例えば、エンボス凸ロールとフラットロールなどによる熱圧着により間欠的に形成されたもの、超音波融着により形成されたもの、間欠的に熱風を加えて部分融着させて形成されたものなどが挙げられる。高い生産性と低い装置コストという観点から、エンボス部は熱圧着により形成されたものが好ましい。
エンボス部の平面形状は、円形状、楕円形状、多角形状、又はこれらに類似する形状等の任意の形状を採り得る。
エンボス部は、一定のパターンで形成されることが好ましいが、ランダムなパターンで形成されていてもよい。例えば、エンボス部は、縦方向X及び横方向Yにおいて略一定の間隔(ピッチ)で配置され、かつ、横方向Yに沿った各列が隣接する列と相互に半ピッチずつずれて配置されている。
複数の高密度部は、エンボス部に代えて、ピン開孔周縁のフィルム化した部位により構成されてもよい。
【0064】
図7は、外層シート51及び内層シート52の、低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部(エンボス部)のパターンの一例を示す。
【0065】
外層シート51又は内層シート52のうち、一方のシートを第1のシート310と称し、他方のシートを第2のシート320と称する。外層シート51又は内層シート52のうち、どちらが第1のシート310でもよいし、どちらが第2のシート320でもよい。
【0066】
第1のシート310は、低密度部312内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部311を有する。第2のシート320は、低密度部322内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部321を有する。第1のシート310又は第2のシート320の少なくともいずれか一方の複数の高密度部311、321の縦方向XのピッチP1は、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)の複数の弾性部材10の縦方向XのピッチP2(
図4参照)より短いことが好ましい。複数の高密度部311、321の縦方向XのピッチP1は、1個の高密度部311、321の重心位置と、縦方向Xに最も近くに位置する別の1個の高密度部311、321の重心位置との距離を意味する。複数の弾性部材10の縦方向XのピッチP2は、縦方向Xに最も近くに位置する2個の弾性部材10の縦方向Xの距離を意味する。高密度部311、321の縦方向Xのピッチが、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)の複数の弾性部材10の縦方向Xのピッチより短いことにより、高密度部311、321が第2の収縮部202の複数の弾性部材10間に配置される。これにより、第2収縮部202内に材料強度の高い高密度部が存在することで第2収縮部202の裂け強度が高くなり、第2の収縮部202の横裂けを防止することができる。
【0067】
第1のシート310の複数の高密度部311の縦方向XのピッチP3と、第2のシート320の複数の高密度部321の縦方向XのピッチP4とは、異なるのが好ましい。これにより、第1のシート310と第2のシート320とが積層された積層シート330において、縦方向Xの大部分をカバーするように高密度部311、321が存在するため、外装体5の縦方向Xの大部分の材料強度が高くなり横裂けしにくい。
【0068】
第1のシート310における複数の高密度部311の面積の割合と、第2のシート320における複数の高密度部321の面積の割合とは、異なるのが好ましい。これにより、第1のシート310と第2のシート320とが積層された積層シート330において、複数の高密度部311、321の位置が、縦方向X及び横方向Yからなる面方向でずれる。これにより、縦方向X及び横方向Yからなる面方向の大部分をカバーするように高密度部311、321が存在するため、外装体5の縦方向Xの大部分の材料強度が高くなり横裂けしにくい。
【0069】
図8に示す様に、第1のシート310の複数の高密度部311のパターンと、第2のシート320の複数の高密度部321のパターンとは、異なるのが好ましい。高密度部311、321のパターンとは、高密度部311、321の重心位置同士で結ぶ直線で形成されるパターンの、形や大きさが異なることを意味する。高密度部311、321のパターンが異なることにより、第1のシート310と第2のシート320とが積層された積層シート330において、複数の高密度部311、321の位置が、縦方向X及び横方向Yからなる面方向で重複し難くなる。これにより、縦方向X及び横方向Yからなる面方向の大部分をカバーするように高密度部311、321が存在するため、外装体5の材料強度が高くなり横裂けしにくい。なお、
図8は、異なるパターンを有する第1のシート310及び第2のシート320に加えて、高密度部341及び低密度部342を有する別のシート340の例を示す。
【0070】
図9に示す様に、第1のシート310の繊維配向度と、第2のシート320の繊維配向度とは、異なるのが好ましい。繊維配向度が異なることで、第1のシート310と第2のシート320との横裂けしやすさが異なる。これにより、第1のシート310と第2のシート320とが積層された積層シート330において、第1のシート310と第2のシート320とが横裂けし難くなる。
【0071】
[熱可塑性シートの材料例]
【0072】
外装体5を構成する複数の熱可塑性シート50は、熱可塑性繊維の他、セルロース系繊維を含んだシートで構成されていてもよい。
【0073】
ここで、パンツ型おむつ1において、サイド接合部8は、着用時及び着用中においては剥がれを防止でき、廃棄時においては容易に引き裂ける構成を有することが好ましい。
着用時或いは着用中におけるサイド接合部8における破れ防止性と、使用後の脱衣時における引き裂き容易性との両立の観点から、複数の熱可塑性シート50が熱可塑性繊維に加えてセルロース系繊維を含むことが好ましい。複数の熱可塑性シート50にセルロース系繊維を含めた場合、おむつ1の着用中において、例えば体液である汗がサイド接合部8で吸収されると、体液の吸収によって、サイド接合部8での腹側部5a及び背側部5bの接合強度が変化する。より具体的には、体液吸収後のサイド接合部8は、セルロース系繊維を含むことに起因して、腹側部5a及び背側部5bの接合強度が、吸収前よりも低くなる。その結果、使用後のおむつを着用者から外す際、サイド接合部8を引き裂きやすくすることができる。
【0074】
セルロース系繊維としては、例えば、コットン、パルプ等の天然セルロース系繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース系繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
セルロース系繊維は、短繊維でも長繊維でもよい。使用後の脱衣時におけるサイド接合部8の引き裂きやすさの観点からは、天然セルロース系繊維の単繊維であることが好ましい。特に、セルロース系繊維としてコットンを用いれば、サイド接合部8の横方向Yへの裂けやすさを防止でき、不意な破れを防止することができる。また、セルロース系繊維としてパルプを用いれば、使用後の脱衣時におけるサイド接合部8を均一な力で引き裂くことができる。
【0075】
また、汗をかきやすいウエスト部を構成するシートとして、コットンなどのセルロース系繊維を含むシートを用いることにより、着用者の汗が吸収され、さらっとした着け心地を提供することができる。
【0076】
[外装体5の構成の変形例]
以下、外装体5の構成の各変形例を説明する。
【0077】
[変形例1]
上記実施形態では、補強シートは、外装体5の縦方向Xの端部103が、ウエスト開口端Waから縦方向Xに折り返された折り返し部100により構成される。これに対して、変形例1の補強シート300は、外装体5から独立したシートである。
【0078】
【0079】
補強シート300は、外装体5の内層シート52に対向する。補強シート300は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第2の収縮部202に配置される。好ましくは、折り返し部100は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bに亘って配置される。好ましくは、補強シート300は、縦方向Xにおいて第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bをまたぐように配置される。好ましくは、補強シート300は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第1の収縮部201及び第2の収縮部202を連続的に覆うように配置される。
【0080】
本例では、補強シート300は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて、第1の収縮部201及び第2の収縮部202を覆い、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aを覆うように配置される。
【0081】
補強シート300は、一対のサイド接合部8に亘って横方向Yに少なくとも第2の収縮部202を覆うように配置される。本例では、補強シート300は、一対のサイド接合部8に亘って横方向Yに、第1の収縮部201及び第2の収縮部202を覆い、第3の収縮部203の第2の収縮部202と隣接する領域203aを覆うように配置される。補強シート300は、腹側部5aの横方向Yにおける側縁部5dと、背側部5bの横方向Yにおける側縁部5eと共に、一対のサイド接合部8により接合される。
【0082】
この様に、補強シート300は、横方向Yの両端が一対のサイド接合部8により外装体5に接合されるが、縦方向Xの一端は外装体5の端部103に連続していない。即ち、補強シート300は、一対のサイド接合部8の2辺だけで、外装体5に対する配置が固定される。このため、補強シート300の外装体5に対する配置を固定するため、補強シート接合部101を用いて、補強シート300を面的に外装体5の内層シート52に接合するのが好ましい。補強シート接合部101の構成は上記実施形態と同様である。
【0083】
変形例1も、上記実施形態と同様の効果がある。さらに別の変形例として、外装体5から独立した補強シート300は、一対のサイド接合部8に亘って横方向Yに少なくとも第2の収縮部202を覆うように配置されなくてもよい。具体的には、サイド接合部8で最低限接合可能なサイズの補強シート300を2片準備し、一対のサイド接合部8それぞれにより、2片の補強シート300をそれぞれ接合すればよい。要するに、2片の補強シート300は、一対のサイド接合部8の縦方向Xにおいて少なくとも第2の収縮部202に配置され、腹側部5aの横方向Yにおける側縁部5dと、背側部5bの横方向Yにおける側縁部5eと共に一対のサイド接合部8により接合されればよい。
【0084】
[変形例2]
上記実施形態では、外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203を含む。これに対して、変形例2では、外装体5の腹側部5a又は背側部5bの両方は、それぞれ、第4の収縮部204、第1の収縮部201、第2の収縮部202及び第3の収縮部203を含む。
【0085】
【0086】
変形例2では、吸収性本体腹側端部4A及び吸収性本体背側端部4Bの縦方向Xの位置が異なる。具体的には、吸収性本体背側端部4Bが、吸収性本体腹側端部4Aに比べて、ウエスト開口部1Wのウエスト開口端Wa寄りに(上側に)位置する。外装体5の腹側部5a及び背側部5bの両方は、それぞれ、ウエスト開口部1Wからレッグ開口部1Lに向かって順に、第4の収縮部204(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)、第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)及び第3の収縮部203(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を含む。腹側部5aの第2の収縮部202と、背側部5bの第2の収縮部202とは、縦方向Xにおいて重ならない位置に配置される。
【0087】
上述の様に、おむつ1の廃棄時に、外装体5のサイド接合部8をウエスト端部8aからレッグ端部8bに向けて縦方向Xに引き裂いて行く場合、第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、第1の収縮部201が大きく収縮し、サイド接合部8を縦方向Xに引き裂く力が横方向Yに働き、第2の収縮部202が横方向Yに横裂けするおそれがある。
【0088】
そこで、本変形例では、腹側部5aの第2の収縮部202の横方向Yの端部と、背側部5bの第1の収縮部201又は第3の収縮部203の横方向Yの端部とが、縦方向Xにおいて重なる位置に配置される。背側部5bの第2の収縮部202の横方向Yの端部と、腹側部5aの第1の収縮部201又は第3の収縮部203の横方向Yの端部とが、縦方向Xにおいて重なる位置に配置される。図示の例では、腹側部5aの第2の収縮部202の横方向Yの端部と、背側部5bの第1の収縮部201の横方向Yの端部とが、縦方向Xにおいて重なる位置に配置される。背側部5bの第2の収縮部202の横方向Yの端部と、腹側部5aの第3の収縮部203の横方向Yの端部とが、縦方向Xにおいて重なる位置に配置される。
【0089】
これにより、外装体5のサイド接合部8をウエスト端部8aからレッグ端部8bに向けて縦方向Xに引き裂いて行く場合、腹側部5aの第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、腹側部5aの第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、腹側部5aの第1の収縮部201が大きく収縮しても、腹側部5aの第2の収縮部202が背側部5bの第1の収縮部201に補強されているため、腹側部5aの第2の収縮部202が横方向Yに横裂けし難い。その後、背側部5bの第1の収縮部201(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を引き裂き終え、背側部5bの第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を引き裂き始めるときに、背側部5bの第1の収縮部201が大きく収縮しても、背側部5bの第2の収縮部202が腹側部5aの第3の収縮部203に補強されているため、背側部5bの第2の収縮部202が横方向Yに横裂けし難い。
【0090】
変形例2において、外装体5の構成は、上記実施形態又は各変形例の構成を採用してよい。
【0091】
[変形例3]
図12は、変形例3に係る外装体の構成例を示す。
【0092】
変形例3の外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、上記実施形態と同様の折り返し部100(補強シート)及び補強シート接合部101を有する。
【0093】
補強シート接合部101は、縦方向Xにおいて第2の収縮部202の内側に配置される。言い換えれば、補強シート接合部101は、縦方向Xにおいて第2の収縮部202の縦方向Xの両端202a、202bに亘って配置される。
【0094】
外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、複数の熱可塑性シート50間に配置された接合強度低下部400を有する。接合強度低下部400は、縦方向Xにおいて第3の収縮部203の内側に塗工された接合強度低下剤を含む。接合強度低下部400は、横方向Yにおいて一対のサイド接合部8に配置されてもよい。接合強度低下剤は、補強シート接合部101と同様に、ホットメルト接着剤により構成される。ホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン系(SIS、SBS、SEBS)、又はポリオレフィン系の材料を用いることができる。
【0095】
折り返し部100(補強シート)は、縦方向Xにおいて第2の収縮部202と第3の収縮部203との境界202bをまたいで第3の収縮部203の少なくとも一部を覆うように配置される。折り返し部100の縦方向Xのレッグ開口部1L側の端部102は、縦方向Xにおいて第3の収縮部203の内側に存在する。
【0096】
接合強度低下部400は、縦方向Xにおいて折り返し部100が第3の収縮部203の少なくとも一部を覆う領域に配置される。言い換えれば、接合強度低下部400の縦方向Xの一端は、第2の収縮部202と第3の収縮部203との境界202bに配置される。一方、接合強度低下部400の縦方向Xの他端は、折り返し部100の縦方向Xのレッグ開口部1L側の端部102と、縦方向Xにおいて重なる位置に配置される。要するに、接合強度低下部400は、折り返し部100が存在する部分と、折り返し部100が存在しない部分との境界(即ち、積層枚数が変わる境界)である折り返し部100の端部102をまたぐように配置される。接合強度低下部400は、積層枚数が変わる境界をまたぐように配置されればよく、図示の様に、接合強度低下部400と補強シート接合部101とが縦方向Xにおいて重ならないように配置されてよい。縦方向Xにおいて重ならないとは、
図12で示す様に、縦方向Xにおいて接合強度低下部400の一端と補強シート接合部101の一端とが一致する(面一)であること、又は、縦方向Xにおいて接合強度低下部400の一端と補強シート接合部101の一端との間に間隔があること(不図示)を意味する。
【0097】
サイド接合部8の一部は、ウエスト開口部1Wからレッグ開口部1Lに向かって順に縦方向Xに、第1の領域501、第2の領域502及び第3の領域503を有する。第1の領域501は、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)を含み、折り返し部100が存在し、積層枚数が3枚(外層シート51、内層シート52、折り返し部100)であり、補強シート接合部101が存在し、接合強度低下部400が存在しない。第2の領域502は、第2の収縮部202(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に低い)及び第3の収縮部203(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を含み、折り返し部100が存在し、積層枚数が3枚(外層シート51、内層シート52、折り返し部100)であり、補強シート接合部101が存在せず、接合強度低下部400が存在する。第3の領域503は、第3の収縮部203(単位幅当たりの平均収縮力が相対的に高い)を含み、折り返し部100が存在せず、積層枚数が2枚(外層シート51、内層シート52)であり、補強シート接合部101が存在せず、接合強度低下部400が存在する。
【0098】
接合強度低下部400の影響を考えない場合、第1の領域501は、補強シート接合部101を含むため、補強シート接合部101を含まない第2の領域502に比べて、同じ積層枚数(3枚)でありながら、強度が相対的に高い。
また、第2の領域502は、積層枚数(3枚)が多いため、第3の領域503(積層枚数が2枚)に比べて、強度が相対的に高い。
【0099】
このため、接合強度低下部400の影響を考えない場合、おむつ1の廃棄時に、外装体5のサイド接合部8を縦方向Xに引き裂いて行くと、第1の収縮部201を引き裂き終え第2の収縮部202を引き裂き始めると、第1の収縮部201が大きく収縮し、引き裂く力が横方向Yに働きやすくなる。第2の収縮部202の中で、第1の領域501(積層枚数が3層、補強シート接合部101が存在)を引き裂き終え、第2の領域502(積層枚数が3層、補強シート接合部101が無し)を引き裂き始めるときに、補強シート接合部101のシール強度が高く破りづらいことから、横方向Yに横裂けするおそれがある。
【0100】
そこで、本変形例では、少なくとも第2の領域502(即ち、縦方向Xにおいて折り返し部100が第3の収縮部203の少なくとも一部を覆う領域を含む)の縦方向Xに亘って接合強度低下部400を設ける。これにより、第1の領域501と第2の領域502とのシール強度差を抑制する。これにより、第1の領域501を引き裂き終え、第2の領域502を引き裂き始めるときに、第1の領域501が大きく収縮するのが抑えられ、第2の領域502が横方向Yに横裂けするのを防止できる。
【0101】
[変形例4]
図13は、変形例4に係る外装体の構成例を示す。
【0102】
変形例4の外装体5の腹側部5a又は背側部5bの少なくとも一方は、変形例3と同様の折り返し部100(補強シート)、及び接合強度低下剤を有する。一方、変形例3と変形例4とは、補強シート接合部101が配置される領域が異なる。
【0103】
変形例3では、
図12に示す様に、接合強度低下部400と補強シート接合部101とが縦方向Xにおいて重ならないように配置される。これに対して、変形例4では、補強シート接合部101は、第2の収縮部202と第3の収縮部203との境界202bをまたぐように、外装体5に配置される。
【0104】
このため、変形例4では、第2の領域502は、ウエスト側領域502cと、レッグ側領域502dと、を有する。ウエスト側領域502cには、補強シート接合部101及び接合強度低下部400が配置される。言い換えれば、ウエスト側領域502cにおいて、補強シート接合部101及び接合強度低下部400の塗工領域が重なる。レッグ側領域502dには、補強シート接合部101が配置されず、接合強度低下部400が配置される。その結果、レッグ側領域502dの強度は変形例3の第2の領域502の強度と変わらないが、ウエスト側領域502cの強度はレッグ側領域502dの強度より低くなる。
【0105】
これにより、第1の領域501と第2の領域502のウエスト側領域502cとの強度の差が小さくなる。これにより、第1の領域501を引き裂き終え、第2の領域502のウエスト側領域502cを引き裂き始めるときに、第1の領域501が大きく収縮するのが抑えられ、第2の領域502のウエスト側領域502cが横方向Yに横裂けするのを防止でき、且つ、縦方向Xに連続的に引き裂きやすい。
【0106】
[変形例5]
上記実施形態及び各変形例では、折り返し部100(補強シート)又は補強シート300は、外装体5の内層シート52に対向し、外装体5の肌側に配置される。これに対して、折り返し部100(補強シート)又は補強シート300は、外装体5の外層シート51に対向し、外装体5の非肌側に配置されてもよい(不図示)。あるいは、折り返し部100(補強シート)又は補強シート300は、外層シート51及び内層シート52の間に挟まれるように配置されてもよい(不図示)。
【0107】
[補強シート接合部及び接合強度低下部]
変形例3及び変形例4の補強シート接合部101及び接合強度低下部400について説明する。特に、補強シート接合部101及び接合強度低下部400が同種のホットメルト接着剤で構成される場合を想定する。
【0108】
[坪量]
外装体5の接合強度低下部400に含まれる接合強度低下剤の坪量は、折り返し部100(補強シート)の補強シート接合部101において補強シートに塗工された接着剤の坪量より高い。接合強度低下部400に含まれる接合強度低下剤の坪量が高い程、強度が弱まる。このように、少なくとも第2の領域502(即ち、縦方向Xにおいて折り返し部100が第3の収縮部203の少なくとも一部を覆う領域)の縦方向Xに亘って接合強度低下剤の坪量の高い接合強度低下部400を設ける。これにより、強度が相対的に高い第2の領域502の強度をさらに弱める。これにより、第2の領域502と第3の領域503との強度の差がさらに小さくなる。これにより、第1の収縮部201を破り終え第2の収縮部202を引き裂き始めるときに、第1の収縮部201が大きく収縮し横方向Yに力が働きやすくなる。また、引き裂く長さが長くなるほど(即ち、第2の収縮部202と第3の収縮部203との境界202bに近づくほど)横方向Yに力が掛かりやすくなる中で、シール強度をより下げることができるので、横裂けを防止できる。
【0109】
[坪量の測定方法]
外装体5から、接合強度低下部400が塗工された領域と、補強シート接合部101が塗工された領域とをそれぞれ切り出す。各領域を溶剤で溶出する。各領域の溶出前の重量から溶出後の重量を減算して重量差を算出する。この重量差が、接合剤塗工量である。接合剤塗工量を塗工面積で除することで坪量が算出される。
【0110】
[パターン]
図14は、補強シート接合部及び接合強度低下部の塗工パターンの例を示す。
【0111】
補強シート接合部101は、折り返し部100(補強シート)に塗工された接着剤を含み、接着剤が塗工された塗工部101Aと、接着剤が塗工されていない非塗工部101Bと、を有する。接合強度低下部400は、接合強度低下剤が塗工された塗工部400Aと、接合強度低下剤が塗工されていない非塗工部400Bと、を有する。
【0112】
接合強度低下部400の接合強度低下剤の塗工部400Aの塗工面積率は、補強シート接合部101の接着剤の塗工部101Aの塗工面積率より高い。接合強度低下部400の接合強度低下剤の塗工部400Aの塗工面積率が高い程、強度が弱まる。このように、少なくとも第2の領域502(即ち、縦方向Xにおいて折り返し部100が第3の収縮部203の少なくとも一部を覆う領域)の縦方向Xに亘って塗工面積率が高い接合強度低下部400を設ける。
【0113】
また、接合強度低下部400の接合強度低下剤の塗工面積率が高いと、接合強度低下部400が一対のサイド接合部8のサイドシール部Sに重なりやすい。これにより、サイドシール部Sの接合強度が弱まる。
【0114】
これにより、強度が相対的に高い第2の領域502の強度をさらに弱める。これにより、第2の領域502と第3の領域503との強度の差がさらに小さくなる。これにより、第1の収縮部201を破り終え第2の収縮部202を引き裂き始めるときに、第1の収縮部201が大きく収縮し横方向Yに力が働きやすくなる。また、引き裂く長さが長くなるほど(即ち、第2の収縮部202と第3の収縮部203との境界202bに近づくほど)横方向Yに力が掛かりやすくなる中で、シール強度をより下げることができるので、横裂けを防止できる。
【0115】
補強シート接合部101の塗工部101Aは、直線状(A)、波形(B)、スパイラル状(C)等のパターンでよい。接合強度低下部400の塗工部400Aは、直線状(D)、波形(E)、スパイラル状(F)等のパターンでよい。接合強度低下部400の接合強度低下剤の塗工部400Aの塗工面積率が補強シート接合部101の接着剤の塗工部101Aの塗工面積率より高い限り、補強シート接合部101の塗工部101Aのパターンと、接合強度低下部400の塗工部400Aのパターンとは、同じでもよいし異なってもよい。例えば、補強シート接合部101の塗工部101Aのパターンが波形(B)、接合強度低下部400の塗工部400Aのパターンが波形(E)、の様に、パターンが同じでもよい。あるいは、補強シート接合部101の塗工部101Aのパターンが波形(B)、接合強度低下部400の塗工部400Aのパターンがスパイラル状(F)、の様に、パターンが異なってもよい。
【0116】
[塗工面積率の測定方法]
外装体5から、接合強度低下部400が塗工された外層シート51又は内層シート52と、補強シート接合部101が塗工された折り返し部100とを剥がし、弾性部材10の収縮を伸ばして伸長状態とする。これらの接合面に、接合剤に反応するトナーを振りかける。トナーの着色量又は蛍光量の有無により、塗工部と非塗工部を二値化し、塗工面積率を算出する。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0118】
例えば、上記実施形態では、外装体5が、腹側部5aと、背側部5bと、股下部5cと、を有すると説明したが、これに限定されない。例えば、外装体5は、股下領域を有さず、腹側領域と背側領域とが分割された構成を有していてもよい。
【0119】
本発明に係るパンツ型吸収性物品は、乳幼児用の使い捨ておむつでなくてもよく、例えば、大人用や子供用の使い捨ておむつであってもよい。更に、本発明に係るパンツ型吸収性物品は、下半身に着用するタイプの吸収性物品であれば、使い捨ておむつでなくてもよい。このようなパンツ型吸収性物品としては、例えば、パンツ型の生理用ナプキンなどが挙げられる。
【0120】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の吸収性物品を開示する。
<1>
吸収性本体と、複数の熱可塑性シートを含み前記吸収性本体の非肌側に配置され、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部を有する外装体と、を備え、着用者の腹側から股間部を通って背側に延びる縦方向と、前記縦方向に直交する横方向と、を有するパンツ型吸収性物品であって、
前記外装体は、
着用者の腹側に配置される腹側部と、
着用者の背側に配置される背側部と、
前記腹側部の前記横方向における側縁部と前記背側部の前記横方向における側縁部とがそれぞれ接合された一対のサイド接合部と、を有し、
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の少なくとも一方は、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置された第1の収縮部と、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、前記第1の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第1の収縮部よりも前記縦方向において前記レッグ開口部側に位置する第2の収縮部と、を含み、
前記第1の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第1の収縮力は、前記第2の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第2の収縮力より高く、
前記一対のサイド接合部の前記縦方向において少なくとも前記第2の収縮部に配置され、前記腹側部の前記側縁部及び前記背側部の前記側縁部と共に前記一対のサイド接合部により接合された、補強シートを有する
パンツ型吸収性物品。
<2>
前記第2の平均収縮力に対する前記第1の平均収縮力の差が、0cN/mm超であり、0.2~6.0cN/mmであることが好ましく、特に0.2~3.0cN/mmである、前記<1>に記載のパンツ型吸収性物品。
<3>
前記第1の平均収縮力が、2.0~9.0cN/mm、特に2.0~7.0cN/mmである、前記<1>又は<2>に記載のパンツ型吸収性物品。
<4>
前記第2の平均収縮力が、0.4~6.0cN/mm、特に0.4~3.5cN/mmである、前記<1>乃至<3>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<5>
前記補強シートは、
前記一対のサイド接合部に亘って前記横方向に前記第2の収縮部を覆うように配置され、
前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、
前記補強シート接合部は、前記縦方向において前記第2の収縮部の内側に配置される
前記<1>乃至<5>に記載のパンツ型吸収性物品。
<6>
前記補強シート接合部は、前記縦方向の成分を含むように配置される
前記<5>に記載のパンツ型吸収性物品。
<7>
前記補強シートは、前記縦方向において前記第2の収縮部の前記縦方向の両端をまたぐように配置され、
前記補強シート接合部は、前記第2の収縮部の前記縦方向の前記両端をまたぐように、前記外装体に配置される
前記<5>に又は<6>に記載のパンツ型吸収性物品。
<8>
前記補強シート接合部は、前記補強シートに塗工された接着剤を含む
請求項5乃至7の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<9>
前記補強シートは、前記一対のサイド接合部の前記縦方向において少なくとも前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を連続的に覆うように配置される
前記<1>乃至<8>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<10>
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の前記少なくとも一方は、
前記外装体の前記縦方向の端部が、前記ウエスト開口部から前記縦方向に折り返された折り返し部を有し、
前記補強シートは、前記折り返し部により構成される
<9>に記載のパンツ型吸収性物品。
<11>
前記補強シートは、
前記一対のサイド接合部に亘って前記横方向に前記第2の収縮部を覆うように配置され、
前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、
前記補強シート接合部は、前記縦方向において前記折り返し部の前記縦方向において少なくとも前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を連続的に覆うように配置される
前記<10>に記載のパンツ型吸収性物品。
<12>
前記外装体の前記腹側部は、前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を含み、
前記外装体の前記背側部は、前記第1の収縮部及び前記第2の収縮部を含み、
前記腹側部の前記第2の収縮部と、前記背側部の前記第2の収縮部とは、前記縦方向において重ならない位置に配置される
前記<1>乃至<11>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<13>
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の前記少なくとも一方は、
前記横方向に延びる複数の弾性部材が配置され、前記第2の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第2の収縮部よりも前記縦方向において前記レッグ開口部側に位置する第3の収縮部を含み、
前記第3の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第3の収縮力は、前記第2の収縮部の前記第2の収縮力より高く、
前記補強シートは、
前記縦方向において前記第2の収縮部と前記第3の収縮部との境界をまたいで前記第3の収縮部の少なくとも一部を覆うように配置され、
前記外装体の前記腹側部又は前記背側部の前記少なくとも一方は、
前記複数の熱可塑性シート間に配置され、前記縦方向において前記補強シートが前記第3の収縮部の前記少なくとも一部を覆う領域に塗工された接合強度低下剤を含む接合強度低下部を有する
前記<1>乃至<12>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<14>
前記第2の平均収縮力に対する前記第3の平均収縮力の差が、0cN/mm超であり、0.2~6.0cN/mmであることが好ましく、特に0.2~3.0cN/mmである、前記<13>に記載のパンツ型吸収性物品。
<15>
前記第3の平均収縮力が、2.0~9.0cN/mm、特に2.0~7.0cN/mmである、前記<13>又は<14>に記載のパンツ型吸収性物品。
<16>
前記補強シートは、前記補強シートが前記外装体に接合される補強シート接合部を有し、
前記補強シート接合部は、前記第2の収縮部と前記第3の収縮部との前記境界をまたぐように、前記外装体に配置される
前記<13>乃至<15>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<17>
前記補強シート接合部は、前記補強シートに塗工された接着剤を含み、
前記外装体の前記接合強度低下部に含まれる前記接合強度低下剤の坪量は、前記補強シートの補強シート接合部に含まれる前記接着剤の坪量より高い
前記<13>乃至<16>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<18>
前記補強シート接合部は、
前記補強シートに塗工された接着剤を含み、
前記接着剤が塗工された塗工部と、前記接着剤が塗工されていない非塗工部と、を有し、
前記接合強度低下部は、前記接合強度低下剤が塗工された塗工部と、前記接合強度低下剤が塗工されていない非塗工部と、を有し、
前記接合強度低下部の前記接合強度低下剤の塗工面積率は、前記補強シート接合部の前記接着剤の塗工面積率より高い
前記<13>乃至<17>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<19>
前記複数の熱可塑性シートの少なくとも1つは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記複数の高密度部の前記縦方向のピッチは、前記第2の収縮部の前記複数の弾性部材の前記縦方向のピッチより短い
前記<1>乃至<18>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<20>
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第2のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第1のシートの前記複数の高密度部の前記縦方向のピッチと、前記第2のシートの前記複数の高密度部の前記縦方向のピッチとは、異なる
前記<1>乃至<19>の何れか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
<21>
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第2のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第1のシートにおける前記複数の高密度部の面積の割合と、前記第2のシートにおける前記複数の高密度部の面積の割合とは、異なる
前記<1>乃至<20>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<22>
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第2のシートは、
低密度部と、
前記低密度部内に相互に間隔をあけて配置された複数の高密度部と、を有し、
前記第1のシートの前記複数の高密度部のパターンと、前記第2のシートの前記複数の高密度部のパターンとは、異なる
前記<1>乃至<21>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<23>
前記複数の熱可塑性シートは、第1のシート及び第2のシートを含み、
前記第1のシートの繊維配向度と、前記第2のシートの繊維配向度とは、異なる
前記<1>乃至<22>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<24>
前記第1の収縮部と前記縦方向に連続し、前記第1の収縮部よりも前記縦方向において前記ウエスト開口部側に位置する第4の収縮部と、を含み、
前記第4の収縮部の前記横方向の単位幅当たりの平均収縮力である第4の収縮力は、前記第1の収縮部の前記第1の収縮力より低い
前記<1>乃至<23>の何れか一に記載のパンツ型吸収性物品。
<25>
前記第4の平均収縮力に対する前記第1の平均収縮力の差が、0cN/mm超であり、0.2~6.0cN/mmであることが好ましく、特に0.4~3.0cN/mmである、前記<24>に記載のパンツ型吸収性物品。
<26>
前記第4の平均収縮力が、0.2~9.0cN/mm、特に0.2~4.0cN/mmである、前記<24>又は<25>に記載のパンツ型吸収性物品。
【符号の説明】
【0121】
1…パンツ型吸収性物品(使い捨ておむつ、おむつ)
4…吸収性本体
5…外装体
5a…腹側部
5b…背側部
50…熱可塑性シート
8…サイド接合部
8a…ウエスト端部
8b…レッグ端部
S…シール部
100…折り返し部
101…補強シート接合部
300…補強シート
400…接合強度低下部
201…第1の収縮部
202…第2の収縮部
203…第3の収縮部
204…第4の収縮部