(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】パウチ容器用包装体およびパウチ容器包装物
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20250911BHJP
B65D 51/22 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
B65D75/62 A
B65D51/22 110
(21)【出願番号】P 2021574604
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2021000797
(87)【国際公開番号】W WO2021153227
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020014363
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(72)【発明者】
【氏名】神長 政弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴史
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165171(JP,A)
【文献】特開2013-086802(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02143658(EP,A1)
【文献】特開2006-062692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/62
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天側を塞ぐ天面シートを有する容器本体と、
前記天面シートの外面に固定され且つ軸方向に延びる注出空間を有するスパウトと、を備えるパウチ容器用包装体であって、
前記スパウトは、前記天面シートに固定される固定部、前記固定部に対して相対回転可能である回転部および前記天面シートを切り裂く切裂部を有し、
前記天面シートは、前記固定部が固定された状態で平坦である平坦部を有し、
前記切裂部は、初期状態において前記平坦部から離れて位置しており、且つ前記回転部が回転されることに伴って、前記平坦部の外面から内面に向かう方向に回転しつつ移動することにより、前記平坦部を切り裂
き、
前記回転部は、前記固定部に螺合する第1筒状部を有し、
前記第1筒状部の前記軸方向先端側に前記切裂部が形成されており、
前記切裂部は、前記軸方向先端に向かうほど回転方向に向かって突出するように傾斜している、パウチ容器用包装体。
【請求項2】
前記固定部は、平坦な環状のフランジ部を有しており、
前記フランジ部が、前記天面シートの外面に固定されている、請求項1に記載のパウチ容器用包装体。
【請求項3】
前記スパウトは、前記切裂部が前記天面シートの切り裂きを開始した以降の前記回転部の回転を360°未満に規制する回転角規制手段を有する、請求項1または2に記載のパウチ容器用包装体。
【請求項4】
前記第1筒状部の軸方向先端側には、前記切裂部の先端側から回転方向と逆方向に向かうほど軸方向基端側に向かって傾斜する傾斜端縁が設けられている、請求項
1ないし3のいずれかに記載のパウチ容器用包装体。
【請求項5】
前記天面シートには、隣接する部位よりも切り裂きが容易である切裂容易線が形成されており、
前記切裂容易線は、前記軸方向に沿って見て前記切裂部の回転軌道の少なくとも一部と重なる、請求項1ないし
4のいずれかに記載のパウチ容器用包装体。
【請求項6】
天側を塞ぐ天面シートを有する容器本体と、
前記天面シートの外面に固定され且つ軸方向に延びる注出空間を有するスパウトと、を備えるパウチ容器用包装体であって、
前記スパウトは、前記天面シートに固定される固定部、前記固定部に対して相対回転可能である回転部および前記天面シートを切り裂く切裂部を有し、
前記天面シートは、前記固定部が固定された状態で平坦である平坦部を有し、
前記切裂部は、初期状態において前記平坦部から離れて位置しており、且つ前記回転部が回転されることに伴って、前記平坦部の外面から内面に向かう方向に回転しつつ移動することにより、前記平坦部を切り裂き、
前記天面シートには、隣接する部位よりも切り裂きが容易である切裂容易線が形成されており、
前記切裂容易線は、前記軸方向に沿って見て前記切裂部の回転軌道の少なくとも一部と重なり、
前記切裂容易線は、前記軸方向に沿って見て前記切裂部の回転軌道の末端付近に設けられた、前記切裂部の回転軌道に対して径方向外側に位置する外方誘導部を有する
、パウチ容器用包装体。
【請求項7】
前記スパウトは、前記固定部に対して前記回転部を回転させないよう阻止し且つ取り外し可能である帯状部を有する、請求項1ないし
6のいずれかに記載のパウチ容器用包装体。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれかに記載のパウチ容器用包装体と、
前記容器本体に密閉状態で収容された被包装物と、
を備える、パウチ容器包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器用包装体およびパウチ容器包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
パウチ容器包装物は、たとえばスポーツドリンク等の飲料、アイスクリームやゼリー等の食品、あるいは医薬品等の被包装物を包装するのに適した容器包装物として広く使用されている。また、パウチ容器の被包装物を注出する部材として、容器本体に固定されたスパウトが用いられている。特許文献1には、スパウトを有するパウチ容器包装物の一例が開示されている。同文献に開示されたパウチ容器包装物では、未使用の状態において、スパウトが容器本体に進入しておらず、容器本体が密閉状態で維持されている。使用時において被包装物を注出する際には、スパウトの一部を回転させて容器本体をスパウトによって突き破る。これにより、未使用状態における被包装物の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、同文献に開示されたパウチ容器包装物は、スパウトに設けられた尖った先端部分を容器本体に押し付けることにより、この先端部分によって容器本体を突き破る構成である。このような構成では、たとえば容器本体の延性によって容器本体を十分に突き破れないことが起こりうる。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より確実に容器本体を開封可能なパウチ容器用包装体およびパウチ容器包装物を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるパウチ容器用包装体は、天側を塞ぐ天面シートを有する容器本体と、前記天面シートの外面に固定され且つ軸方向に延びる注出空間を有するスパウトと、を備えるパウチ容器用包装体であって、前記スパウトは、前記天面シートに固定される固定部、前記固定部に対して相対回転可能である回転部および前記天面シートを切り裂く切裂部を有し、前記天面シートは、前記固定部が固定された状態で平坦である平坦部を有し、前記切裂部は、初期状態において前記平坦部から離れて位置しており、且つ前記回転部が回転されることに伴って、前記平坦部の外面から内面に向かう方向に回転しつつ移動することにより、前記平坦部を切り裂く。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記固定部は、平坦な環状のフランジ部を有しており、前記フランジ部が、前記天面シートの外面に固定されている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記スパウトは、前記切裂部が前記天面シートの切り裂きを開始した以降の前記回転部の回転を360°未満に規制する回転角規制手段を有する。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記回転部は、前記固定部に螺合する第1筒状部を有し、前記第1筒状部の前記軸方向先端側に前記切裂部が形成されている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記切裂部は、前記軸方向先端に向かうほど回転方向に向かって突出するように傾斜している。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1筒状部の軸方向先端側には、前記切裂部の先端側から回転方向と逆方向に向かうほど軸方向基端側に向かって傾斜する傾斜端縁が設けられている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記天面シートには、隣接する部位よりも切り裂きが容易である切裂容易線が形成されており、前記切裂容易線は、前記軸方向に沿って見て前記切裂部の回転軌道の少なくとも一部と重なる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記切裂容易線は、前記軸方向に沿って見て前記切裂部の回転軌道の末端付近に設けられた、前記切裂部の回転軌道に対して径方向外側に位置する外方誘導部を有する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記スパウトは、前記固定部に対して前記回転部を回転させないよう阻止し且つ取り外し可能である帯状部を有する。
【0015】
本発明の第2の側面によって提供されるパウチ容器包装物は、本発明の第1の側面によって提供されるパウチ容器用包装体と、前記容器本体に密閉状態で収容された被包装物と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より確実に容器本体を開封することができる。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体を示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物を示す正面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿う要部拡大断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトを示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトを示す分解正面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトを示す分解断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体の容器本体の本体シートを示す要部断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体の容器本体の天面シートを示す要部断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封を示す要部正面図である。
【
図11】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封を示す要部正面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封を示す要部正面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封を示す要部正面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封における、(a)は回転角を示す模式図であり、(b)は要部拡大斜視図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封における、(a)は回転角を示す模式図であり、(b)は要部拡大斜視図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封における、(a)は回転角を示す模式図であり、(b)は要部拡大斜視図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封における、(a)は回転角を示す模式図であり、(b)は要部拡大斜視図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封における、(a)は回転角を示す模式図であり、(b)は要部拡大斜視図である。
【
図19】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器包装物の開封における、(a)は回転角を示す模式図であり、(b)は要部拡大斜視図である。
【
図20】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトの第1変形例を示す分解正面図である。
【
図21】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトの第2変形例を示す分解正面図である。
【
図22】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトの第3変形例を示す分解正面図である。
【
図23】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトの第4変形例を示す分解正面図である。
【
図24】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体のスパウトの第5変形例を示す断面図である。
【
図25】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体の容器本体の天面シートの第1変形例を示す要部拡大斜視図である。
【
図26】本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体の容器本体の天面シートの第2変形例を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
以下の説明において、上下方向の上側を「天」側、下側を「底」側と呼ぶ場合がある。また、上下方向、前後方向の語句は、構成を説明する便宜であり、パウチ容器用包装体やパウチ容器包装物の姿勢が、常にその方向に拘束されるものではない。本開示における「第1」、「第2」等の用語は、単に識別の便宜として用いたものであり、それらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0021】
<第1実施形態>
図1~
図9は、本発明の第1実施形態に係るパウチ容器用包装体およびパウチ容器包装物を示している。本実施形態のパウチ容器用包装体A1は、容器本体1およびスパウト2を備えている。パウチ容器用包装体A1は、パウチ容器包装物B1に用いられる包装体である。
【0022】
図1は、パウチ容器用包装体A1を示す正面図である。
図2は、パウチ容器用包装体A1を示す平面図である。
図3は、パウチ容器包装物B1を示す正面図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う要部拡大断面図である。
図5は、パウチ容器用包装体A1のスパウトを示す分解斜視図である。
図6は、パウチ容器用包装体A1のスパウトを示す分解正面図である。
図7は、パウチ容器用包装体A1のスパウトを示す分解断面図である。
図8は、パウチ容器用包装体A1の容器本体の本体シートを示す要部断面図である。
図9は、パウチ容器用包装体A1の容器本体の天面シートを示す要部断面図である。
【0023】
〔容器本体1〕
容器本体1は、パウチ容器包装物B1において被包装物7を密閉状態で収容するものである。容器本体1は、一対の本体シート11および天面シート12を有する。なお、パウチ容器用包装体A1およびパウチ容器包装物B1における容器本体1の具体的な構成は何ら限定されない。容器本体1は、一対の本体シート11および天面シート12のみを有する構成であってもよいし、さらにサイドガゼットシートや底ガゼットシート等を有する構成であってもよい。
【0024】
一対の本体シート11は、y方向に重なり合っている。一対の本体シート11の形状や大きさは特に限定されない。本体シート11の形状は、たとえば矩形状、多角形状等の種々の形状が適宜選択され、本実施形態においては、全体として略矩形状である。本体シート11は、パウチ容器包装物B1が未使用の状態において、容器本体1の密閉状態を維持しうるように構成されており、内部に通じる貫通孔や切断部分を有さない。なお、容器本体1を構成する一対の本体シート11は、互いに別体のシート材料からなるものに限定されない。たとえば、1枚のシート材料の幅方向両端同士を接合することにより形成された筒状シートを平坦に折りたたむことにより、y方向に重なりあう一対の本体シート11を形成してもよい。
【0025】
天面シート12は、一対の本体シート11の天側(
図1および
図3における図中z方向上側)を塞いでいる。天面シート12の形状や大きさは特に限定されない。天面シート12の形状は、たとえば矩形状、多角形状、円形状、楕円形状等の種々の形状が適宜選択され、本実施形態においては、
図2に示すように略八角形状である。天面シート12は、パウチ容器包装物B1が未使用の状態において、容器本体1の密閉状態を維持しうるように構成されており、内部に通じる貫通孔や切断部分を有さない。また、
図4に示すように、天面シート12は、平坦部125を有する。平坦部125は、後述の固定部3が固定された状態で、平坦である部位である。
【0026】
一対の本体シート11および天面シート12は、通常、樹脂フィルムから構成される。該樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性等、包装物としての基本的な性能を備えることが要求される。また、後述のシール部17は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シートにはヒートシール性も要求される。また、後述のスパウト2は、天面シート12に対してたとえば超音波溶着によって固定される。シートとしては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラントフィルム層とを有する複層シートが好適であり、高いガスバリア性や遮光性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラントフィルム層との間にバリア層を設けることが好適である。なお、ベースフィルム層そのものにバリア性を付与してもよい。この場合は、バリア層をベースフィルム層として用い、バリア層とシーラントフィルム層とを有する複層シートとなる。
【0027】
図8に示すように、本実施形態においては、本体シート11が、ベースフィルム層101、シーラントフィルム層102およびバリアフィルム層104が積層された構成である場合を例に説明する。また、
図9に示すように、天面シート12が、ベースフィルム層101、シーラントフィルム層102、シーラントフィルム層103およびバリアフィルム層104が積層された構成である場合を例に説明する。
【0028】
図8に示すように、本体シート11においては、外面側にベースフィルム層101が配置されており、内面にシーラントフィルム層102が露出している。また、ベースフィルム層101とシーラントフィルム層102との間にバリアフィルム層104が介在している。なお、
図8においては、図中y方向左方が外面側であり、右方が内面側である。
【0029】
天面シート12においては、外面にシーラントフィルム層103が露出しており、内面にシーラントフィルム層102が露出している。ベースフィルム層101は、シーラントフィルム層102とシーラントフィルム層103との間に介在している。バリアフィルム層104は、ベースフィルム層101とシーラントフィルム層102との間に介在している。なお、バリアフィルム層104は、ベースフィルム層101とシーラントフィルム層103との間に介在していてもよい。また、ベースフィルム層101の両側にバリアフィルム層104が設けられた構成であってもよい。なお、
図10においては、図中z方向上側が外面側であり、下側が内面側である。
【0030】
本実施形態においては、天面シート12は、切裂容易線120を有する。切裂容易線120は、平坦部125に設けられており、隣接する部位よりも切り裂きが容易とされた線状部分である。切裂容易線120は、たとえば外面側のシーラントフィルム層103から凹んだ溝によって構成されている。切裂容易線120の具体的構成は何ら限定されず、たとえば、空洞部分によって構成されていてもよい。このような空洞部分は、たとえば、
図9に示す天面シート12を構成するシーラントフィルム層103、ベースフィルム層101、バリアフィルム層104およびシーラントフィルム層103のうち、ベースフィルム層101のみがレーザー光の照射によって変質し、空洞が形成されたものが挙げられる。ただし、被包装物7を保護する観点から、切裂容易線120は、バリアフィルム層104を貫通しない構成が好ましい。切裂容易線120は、たとえば、天面シート12の材料シートに対してシーラントフィルム層103側からレーザー光を照射することによって形成できる。切裂容易線120が設けられる箇所やその機能については、後述する。
【0031】
ここで、ベースフィルム層101、シーラントフィルム層102,103、及びバリアフィルム層104の構成材料を例示する。なお、これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、共押出しラミネーション、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーション等により行うことができる。
【0032】
ベースフィルム層101を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ-ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)等から構成される一層または二層以上の延伸または未延伸フィルムが例示できる。
【0033】
シーラントフィルム層102,103を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン-オレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層または二層以上の延伸または未延伸フィルムが例示できる。
【0034】
バリアフィルム層104としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物等を蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。
【0035】
なお、上述した空洞部分からなる切裂容易線120を有する天面シート12の好ましい一構成例としては、ポリエチレン系シーラントフィルム層(シーラントフィルム層103)、ポリエステル系又はポリアミド系ベースフィルム層(ベースフィルム層101)、金属薄膜(バリアフィルム層104)、ポリエチレン系シーラント層(シーラントフィルム層103)の少なくとも4層を含む積層フィルムが挙げられる。
【0036】
シール部17は、一対の本体シート11および天面シート12の適所同士が接合された部位であり、容器本体1が密閉状態で被包装物7を収容することを実現する。シール部17の具体的構成は何ら限定されず、本実施形態においては、ヒートシールによって形成されている。
図1および
図2に示すように、図示されたパウチ容器用包装体A1においては、シール部17は、一対のサイドシール部171および天側シール部172を有する。
【0037】
一対のサイドシール部171は、一対の本体シート11のx方向両端部分同士が接合された部位である。本実施形態においては、サイドシール部171において、一対の本体シート11のシーラントフィルム層102同士が、ヒートシールによって接合されている。
【0038】
天側シール部172は、
図2に示すように、一対の本体シート11の天側部分と天面シート12の周端縁部分同士が接合された部位である。図示された例においては、一対の本体シート11のシーラントフィルム層102と天面シート12のシーラントフィルム層102とが、ヒートシールによって接合されている。
【0039】
また、
図3に示すように、パウチ容器包装物B1においては、シール部17は、一対のサイドシール部171および天側シール部172に加えて底側シール部173を有する。底側シール部173は、パウチ容器用包装体A1の容器本体1の底側から被包装物7が充填された後に、一対の本体シート11の底側部分同士が接合された部位である。本実施形態においては、底側シール部173において、一対の本体シート11のシーラントフィルム層102同士が、ヒートシールによって接合されている。シール部17が形成されることにより、パウチ容器包装物B1において、被包装物7は、容器本体1内に密閉状態で収容されている。
【0040】
〔スパウト2〕
スパウト2は、パウチ容器包装物B1において被包装物7を注出するためのものである。本実施形態においては、スパウト2は、
図4~
図7に示すように、固定部3、回転部4、キャップ部5および帯状部6を有する。
図4に示すように、スパウト2は、軸方向であるz方向に延びる注出空間21を有している。パウチ容器包装物B1が開封された後は、注出空間21を通じて被包装物7が注出される。スパウト2の材質は特に限定されず、たとえばポリエチレン等の樹脂材料によって構成されている。なお、スパウト2の具体的構成は何ら限定されず、本発明が意図する機能を果たす構成であれば、種々に変更可能である。
【0041】
固定部3は、
図4、
図6および
図7に示すように、天面シート12の外面(図中上面)に固定されている。本実施形態においては、固定部3は、フランジ部31および第2筒状部32を有する。
【0042】
フランジ部31は、xy平面に沿った平坦な形状であり、z方向から見て環状である。フランジ部31のz方向から見た形状は、円環形状、楕円環形状、多角環形状等の種々の形状が選択される。図示された例においては、フランジ部31は、円環形状である。
【0043】
本実施形態においては、
図4に示すように、フランジ部31が天面シート12の外面に固定されている。フランジ部31を固定する手法は何ら限定されず、本実施形態においては、超音波溶着が用いられており、フランジ部31は、天面シート12のシーラントフィルム層103に接合されている。なお、フランジ部31は、接着剤やヒートシールを用いて天面シート12に固定されていてもよい。平坦な環形状のフランジ部31が固定されることにより、天面シート12のうち少なくともz方向から見てフランジ部31と重なる部位およびフランジ部31の内方に位置する部位は、平坦な形状に維持され、上述の平坦部125とされる。
【0044】
図4~
図7に示すように、第2筒状部32は、フランジ部31の内周端に繋がっており、z方向天側(図中上側)に延びる略円筒形状の部位である。図示された例においては、第2筒状部32は、第2ねじ部321および肉厚部322を有する。
【0045】
図4、
図5および
図7に示すように、第2ねじ部321は、第2筒状部32の内周面に形成されている。第2ねじ部321は、回転部4の後述の第1ねじ部411と螺合する部位である。
【0046】
図4および
図7に示すように、肉厚部322は、第2筒状部32のz方向上側に設けられており、z方向を軸方向とした場合の径方向寸法が部分的に大きい部位である。本実施形態の肉厚部322は、テーパ面323および凹部324を有する。
【0047】
図4および
図7に示すように、テーパ面323は、肉厚部322の内周面のz方向上側の一部である。テーパ面323は、z方向上側に向かうほど径方向寸法が大きくなるように傾斜した面である。
【0048】
図5および
図6に示すように、凹部324は、肉厚部322の図中上面から下方に凹んだ部位である。凹部324は、後述の回転部4の凸部421とともに、本発明における回転角規制手段を構成する部位である。
【0049】
回転部4は、固定部に対して相対回転可能な部材である。
図4および
図7に示すように、回転部4は、全体として筒状であり、固定部3とともに注出空間21を形成している。
図4~
図7に示すように、本実施形態においては、回転部4は、第1筒状部41、鍔部42、外筒部43およびノズル部44を有する。
【0050】
第1筒状部41は、略円筒形状の部位であり、
図4に示すように、固定部3の第2筒状部32の内側に位置する。
図4~
図7に示すように、本実施形態の第1筒状部41は、切裂部410、第1ねじ部411および傾斜端縁412を有する。
【0051】
切裂部410は、回転部4が固定部3および天面シート12に対して相対回転されることに伴って、平坦部125の外面から内面に向かう方向(図中z方向下方)に移動しつつ、z方向に延びる中心軸周りに回転する部位である。本実施形態においては、切裂部410は、回転部4の第1筒状部41の一部として一体的に形成されている。
図4および
図5に示すように、切裂部410は、回転部4のz方向(軸方向)に延びる中心軸から所定距離分離れた位置に設けられている。また、後述の初期状態において、切裂部410の先端は、平坦部125からz方向(軸方向)上側に離れている。なお、本発明における切裂部は、第1筒状部41の一部として一体的に形成されるものに限定されない。切裂部は、回転部4が固定部3および平坦部125に対して相対回転されることに伴って、z方向に延びる中心軸周りに回転しつつ、平坦部125の外面から内面に向かう方向に移動する構成であれば、その具体的構成は何ら限定されない。たとえば、切裂部は、第1筒状部41とは別体の部材によって構成されていてもよい。また、切裂部と第1筒状部41との間に歯車部材を介在させることにより、回転部4が回転させられることにより、回転部4は、z方向の上方に移動し、切裂部はz方向下方に移動する構成であってもよい。
【0052】
切裂部410の具体的な形状やサイズは何ら限定されず、天面シート12の平坦部125を切り裂くことが可能な構成であればよい。本実施形態においては、切裂部410は、たとえば周方向における先端に向かうほど厚さが薄くなる形状とされており、切断刃に類似の形状である。なお、切裂部410は、平坦部125をスムーズに切断可能な鋭利な形状に限定されず、後述の回転部4の回転により、平坦部125を切り裂くことが可能な形状であればよい。また、本実施形態においては、切裂部410は、
図5および
図6によく表れているように、軸方向先端(z方向図中下端)に向かうほど回転方向に向かって突出するように傾斜している。ここで、回転方向とは、回転部4を回転させることによって、切裂部410が平坦部125の外面から内面に向かう方向に移動する際に、切裂部410が回転する方向をいう。また、第1筒状部41の先端において、切裂部410と傾斜端縁412とがなす角は、鋭角となっている。これにより、後述のパウチ容器包装物B1の開封において、切裂部410の先端を平坦部125により突き刺しやすいという利点がある。
【0053】
第1ねじ部411は、
図4~
図7に示すように、第1筒状部41の外周面に形成されている。第1ねじ部411は、固定部3の第2ねじ部321と螺合する。本実施形態においては、この螺合により、回転部4をz方向上方から見て時計回りに回転させると、回転部4が平坦部125の外面から内面に向かう方向(z方向下方)に移動する。
【0054】
傾斜端縁412は、第1筒状部41のz方向下端縁であり、切裂部410の先端に繋がっている。
図4~
図7に示すように、傾斜端縁412は、切裂部410の先端側から回転方向と逆方向に向かうほど軸方向において切裂部410の先端側(z方向下側)から切裂部410の基端側(z方向上側)に向かって傾斜している。
【0055】
鍔部42は、
図4~
図7に示すように、第1筒状部41のz方向(軸方向)上側部分から径方向に飛び出た部位である。図示された例においては、鍔部42は、略円環形状であり、たとえば外径寸法が固定部3の肉厚部322の外形寸法と略同じである。本実施形態の鍔部42は、凸部421を有する。
【0056】
図5および
図6に示すように、凸部421は、鍔部42の図中下面から下方に突出した部位である。凸部421は、上述の固定部3の凹部324とともに、本発明における回転角規制手段を構成する部位である。
【0057】
外筒部43は、
図4および
図7に示すように、第1筒状部41の径方向外側に配置されており、鍔部42からz方向図中下方に延びている。外筒部43の先端部分は、z方向下方に向かうほど薄肉となるテーパ形状とされている。外筒部43は、z方向から見て固定部3のテーパ面323と重なる。
【0058】
ノズル部44は、パウチ容器包装物B1における被包装物7を注出するための部位である。
図4~
図7に示すように、本実施形態においては、ノズル部44は、鍔部42の上部内端縁から、z方向上方に延びている。ノズル部44の形状は、何ら限定されず、図示された例においては、z方向上方に向かうほど直径が小さくなるテーパ筒状である。
【0059】
キャップ部5は、スパウト2の注出空間21をz方向上方から塞ぐ部材である。キャップ部5の具体的構成は何ら限定されない。本実施形態においては、キャップ部5は、回転部4とは別体の部材として構成されており、回転部4に嵌合する構成である。より具体的には、キャップ部5が回転部4の鍔部42に嵌合されると、キャップ部5の一部がノズル部44の先端を塞ぐ構成とされている。なお、キャップ部5は、回転部4に対して螺合等の手法によって固定される構成であってもよい。また、キャップ部5は、回転部4と一体的に形成されてもよく、ノズル部44を塞いだ状態と開放した状態とを取りうるように開閉可能な構成であってもよい。
【0060】
帯状部6は、
図4~
図7に示すように、固定部3の肉厚部322と回転部4の鍔部42との間に設けられている。図示された例においては、帯状部6は、回転部4の第1筒状部41および外筒部43を径方向外側から取り囲んでいる。帯状部6は、固定部3および回転部4から取り外し可能であり、図示された例においては、回転部4に対して複数箇所が繋がっている。また、帯状部6は、つまみ部61を有する。つまみ部61は、帯状部6の一端に設けられており、使用者が摘みやすい形状とされている。帯状部6は、回転部4が固定部3に対して接近することを阻止する機能を果たす。
【0061】
次に、パウチ容器包装物B1の開封について、
図10~
図19を参照しつつ、以下に説明する。
【0062】
図4は、未開封の状態のパウチ容器包装物B1を示している。このパウチ容器包装物B1を開封し、被包装物7を注出するには、まず、
図10および
図11に示すように、たとえば、つまみ部61を摘むことにより、帯状部6を回転部4から取り外す。この状態においては、回転部4は、固定部3に対して未だ回転されていない。この状態を初期状態と呼ぶ。初期状態においては、固定部3の凹部324と回転部4の凸部421との周方向位置が略一致している。また、切裂部410の先端は、平坦部125からz方向(軸方向)上側に離れている。図示された例においては、切裂部410の先端の周方向位置が凹部324および凸部421と略同じである場合を例に説明するが、これは一例であり何ら限定されない。
【0063】
図14は、初期状態の回転部4(切裂部410)と天面シート12の平坦部125との関係を示している。同図(a)は、天面シート12の平坦部125をz方向(軸方向)下方から見た模式図である。回転軌道40は、切裂部410の先端が回転部4の回転によって描く軌道をz方向に沿って平坦部125に投影した仮想線である。後述のように、本実施形態においては、回転部4が初期状態から平坦部125の切り裂きが完了するまでに略360°回転する構成であり、回転軌道40は、略真円である。なお、初期状態から天面シート12の切り裂きが完了するまでの回転角度は適宜設定可能であり、たとえば540°~1080°であってもよい。このような場合、初期状態から切裂部410が平坦部125に接するまでに、回転部4を0.5~2回転させる余裕があり、この分だけ初期状態において切裂部410の先端を平坦部125からz方向にさらに遠ざけておくことができる。切裂容易線120は、上述したように平坦部125に設けられた、引き裂きが容易とされた線状部分である。同図(a)においては、理解の便宜上、切裂容易線120を点線で示している。また、切裂容易線120の一部が回転軌道40と重なっており、当該部分は、切裂容易線120を示す点線のみ示されている。
【0064】
点P0は、初期状態における切裂部410の先端の周方向位置である。本実施形態の回転部4は、固定部3に対してz方向上方から見て時計回りに回転する構成であるため、同図(a)においては、切裂部410は、反時計回りに回転する。本実施形態の切裂容易線120は、点Pから周方向に離れた位置から設けられている。点Pと切裂容易線120の端部との距離(角度)は特に限定されず、たとえば、15°~60°程度である。切裂容易線120は、z方向(軸方向)から見て回転軌道40に重なる部分を有している。切裂容易線120の全体が回転軌道40と重なる構成であってもよいし、一部が回転軌道40と重なる構成であってもよい。図示された例においては、切裂容易線120のうち1/2以上3/4以下の部分が回転軌道40と重なっている。また、切裂容易線120は、外方誘導部1201を有する。外方誘導部1201は、z方向(軸方向)から見て切裂部410の回転軌道40(切裂容易線120)の末端寄りに設けられており、回転軌道40に対して径方向外側に位置している。切裂容易線120が設けられる角度は何ら限定されず、たとえば45°~345°の角度範囲に設けられる。
【0065】
図14(b)は、天面シート12の平坦部125をz方向(軸方向)斜め下方から見た要部斜視図である。同図(b)に示す初期状態では、平坦部125と、切裂部410とが記載されている。初期状態においては、切裂部410の先端は、平坦部125からz方向上方に離間しており、上述したように周方向位置が点P0にある。なお、同図(a),(b)においては、理解の便宜上、点P0を通り且つy方向に平行な補助線と、当該補助線に対して直角である補助線とを示している。なお、
図15~
図19の記載要領は、
図14の記載要領と同じである。
【0066】
次に、
図10および
図11に示すように帯状部6を取り外した後に、回転部4を固定部3に対して回転させる。本実施形態においては、回転部4とキャップ部5とを一体的に回転させる。
図11および
図15は、切裂部410が周方向において点P1まで回転された状態を示している。この状態においては、回転部4の回転により切裂部410がz方向において平坦部125に接近し、切裂部410の先端が平坦部125に当接している。この状態は、切裂部410による平坦部125の切り裂きが開始する状態である。このため、平坦部125のうち点P0から点P1に至る範囲においては、平坦部125は、切り裂かれていない。本実施形態においては、切裂部410が平坦部125に当接する点P1付近から切裂容易線120が設けられている。
【0067】
図16は、回転部4がさらに回転され、切裂部410が周方向において点P2に到達した状態を示している。
図15に示す状態から
図16に示す状態まで回転部4が回転されることにより、切裂部410は、z方向下方にさらに移動しつつz方向周りに回転し、周方向において点P1から点P2に移動している。これにより、平坦部125は、切裂部410によって一部が切り裂かれている。本実施形態においては、点P1から点P2にかけて切裂部410が切裂容易線120に沿って平坦部125を切り裂いている。
【0068】
図17は、回転部4がさらに回転され、切裂部410が周方向において点P3に到達した状態を示している。
図16に示す状態から
図17に示す状態まで回転部4が回転されることにより、切裂部410は、z方向下方にさらに移動しつつz方向周りに回転し、周方向において点P2から点P3に移動している。これにより、平坦部125は、切裂部410によってさらに切り裂かれている。本実施形態においては、点P2から点P3にかけて切裂部410が切裂容易線120に沿って平坦部125を切り裂いている。平坦部125が点P1から点P3まで切り裂かれることにより、平坦部125には、切裂片122が形成されている。切裂片122は、切裂部410による円弧形状の切裂線121によって区画された部分である。
【0069】
図18は、回転部4がさらに回転され、切裂部410が周方向において点P4に到達した状態を示している。
図17に示す状態から
図18に示す状態まで回転部4が回転されることにより、切裂部410は、z方向下方にさらに移動しつつz方向周りに回転し、周方向において点P3から点P4に移動している。これにより、平坦部125は、切裂部410によってさらに切り裂かれ、図示された例においては、明瞭に平坦である状態が解除されている。本実施形態においては、点P3から点P4にかけて切裂部410が切裂容易線120に沿って天面シート12(平坦部125)を切り裂いている。天面シート12(平坦部125)の切り裂きが進展することにより、切裂片122が拡大している。
【0070】
図12および
図19は、回転部4がさらに回転され、切裂部410が周方向において点P5に到達した状態を示している。点P5は、点P0と略同じ位置である。
図18に示す状態から
図19に示す状態まで回転部4が回転されることにより、切裂部410は、z方向下方にさらに移動しつつz方向周りに回転し、周方向において点P4から点P5に移動している。本実施形態においては、切裂容易線120は、点P0から点P4までの範囲において回転軌道40と重なり、点P4以降は、回転軌道40から径方向外方に位置する外方誘導部1201が設けられている。このため、切裂部410が点P4から点P5に移動するものの、天面シート12(平坦部125)の切り裂きは、外方誘導部1201に沿って進展する。この結果、切裂部410は、点P4から点P5に移動するにつれて、切裂片122に対して径方向内側に位置する挙動を示す。
図12に示すように、この状態において、凹部324に凸部421が嵌合する。これにより、回転部4のさらなる回転が阻止される。このように、凹部324と凸部421とは、点P0から開始した切裂部410の回転を点P5までに規制するものである。すなわち、凹部324と凸部421とは、切裂部410が天面シート12(平坦部125)の切り裂きを開始した点P1以降の回転部4の回転を360°未満に規制するものであり、本発明における回転角規制手段を構成している。なお、回転規制手段の具体的構成は、凹部324および凸部421からなる構成に限定されない。たとえば、固定部3に形成された凸部と回転部4に形成された凹部とによって、回転規制手段が構成されていてもよい。また、固定部3および回転部4の一方が他方を覆う構成である場合、外側に位置するものの内面に形成された凸部または凹部と、内側に位置するものの外面に形成された凹部または凸部によって回転規制手段が構成されていてもよい。
【0071】
切裂部410の切り裂きにより、天面シート12のうちフランジ部31に囲まれた部分(平坦部125)に、切裂片122の大きさに対応する開口が形成され、容器本体1が開封される。そして、たとえば、
図13に示すように、回転部4からキャップ部5を取り外すことにより、被包装物7をノズル部44から注出することができる。以上の工程により、パウチ容器包装物B1の開封が完了する。
【0072】
次に、パウチ容器用包装体A1およびパウチ容器包装物B1の作用について説明する。
【0073】
本実施形態によれば、
図14~
図19に示すように、切裂部410が、天面シート12の平坦部125の外面から内面に向かう方向に移動しつつ、z方向(軸方向)に延びる中心軸周りに回転軌道40を描くように回転することにより、平坦部125を切り裂く。これにより、平坦部125をより確実に切り裂くことが可能である。たとえば平坦部125を突き破ることによって容器本体1を開封する構成においては、容器本体の延性によって容器本体を十分に突き破れないことが起こりうるが、本実施形態によれば、かかるおそれが少ない。したがって、パウチ容器用包装体A1およびパウチ容器包装物B1によれば、容器本体1をより確実に開封することができる。
【0074】
また、固定部3のフランジ部31は、
図5に示すように、平坦な環状とされている。これにより、
図4および
図7に示すように、平坦部125のうちz方向から見てフランジ部31に重なる部位、およびフランジ部31の内側に位置する部位を平坦により確実に維持することができる。これにより、切裂部410による切り裂きをより容易に行うことができる。
【0075】
図12に示すように、固定部3の凹部324と回転部4の凸部421とによって構成される回転角規制手段を備えることにより、切裂部410による切り裂きを開始した以降の回転部4の回転が、360°未満に規制される。このため、
図19に示すように、平坦部125のうち点P0(点P5)から点P1にわたる範囲を、切裂部410によって切り裂かれない領域として設定することが可能である。これにより、切裂片122が平坦部125から意図せず離脱してしまうことを防止することが可能であり、被包装物7に切裂片122が混入することを抑制することができる。
【0076】
図5および
図6に示すように、切裂部410が回転部4に一体的に形成されており、回転部4を回転させることが、切裂部410そのものの回転となる。これにより、回転部4を回転させる力が、切裂部410へと効率よく伝達され、平坦部125をより確実に切り裂くことができる。
【0077】
また、
図5および
図6に示すように、切裂部410は、z方向(軸方向)先端に向かうほど回転方向に位置するように傾斜している。これにより、
図19に示すように、切裂部410の先端が切裂片122の径方向内側に入り込む格好となり、切裂片122が内側に倒れてしまうことを抑制することができる。これは、切裂片122が天面シート12の開口部分を塞ぐことで被包装物7の注出が阻害されることを抑制するのに好ましい。
【0078】
図5および
図6に示すように、第1筒状部41は、傾斜端縁412を有する。これにより、第1筒状部41は、切裂部410を回転方向と逆方向から支える部位を有する形状となっている。これは、切裂部410による平坦部125の切り裂きにおいて、切裂部410が意図せず変形したり損傷したりすることを抑制するのに好ましい。
【0079】
図9および
図14~
図18に示すように、平坦部125には、切裂容易線120が形成されている。これにより、切裂部410によってよりスムーズに平坦部125を切り裂くことができる。また、平坦部125が意図しない位置で切り裂かれてしまうことを抑制することができる。図示された例においては、切裂容易線120は、点P0から点P1にわたる範囲には、設けられていない。これにより、当該範囲を切り裂かれにくい範囲とすることが可能であり、切裂片122が平坦部125から離脱してしまうことを防止することができる。
【0080】
また、切裂容易線120には、外方誘導部1201が設けられている。外方誘導部1201は、回転軌道40(切裂容易線120)の末端寄りに設けられており、回転軌道40に対して径方向外方に位置している。これにより、平坦部125を回転軌道40よりも径方向外側に切り裂くことが可能であり、
図19に示すように、切裂片122の径方向内側に切裂部410をより確実に位置させることができる。これは、切裂部410による切裂片122の倒れ防止効果を高めるのに好ましい。
【0081】
スパウト2に帯状部6が設けられていることにより、運搬時や陳列時等に、意図せず回転部4が回転させられ、平坦部125が不当に切り裂かれることを防止することができる。
【0082】
図20~
図26は、本発明の他の例を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0083】
<スパウト2 第1変形例>
図20は、スパウト2の第1変形例を示している。本例においては、切裂部410は、z方向に対して略平行な形状であり、z方向に対して傾いていない。
【0084】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、本変形例から理解されるように、切裂部410の傾き等の具体的形状は何ら限定されず、平坦部125を切り裂くことが可能な形状であればよい。
【0085】
<スパウト2 第2変形例>
図21は、スパウト2の第2変形例を示している。本例においては、切裂部410は、軸方向先端(z方向図中下端)に向かうほど回転方向と逆方向に位置するように傾斜している。
【0086】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、本変形例によれば、平坦部125を切り裂く際に切裂部410が意図せず変形することを抑制できる。
【0087】
<スパウト2 第3変形例>
図22は、スパウト2の第3変形例を示している。本例においては、第1筒状部41は、上述した例における傾斜端縁412を有していない。切裂部410は、第1筒状部41のうちz方向下方に突出した部分に設けられている。
【0088】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、本変形例から理解されるように、第1筒状部41は、傾斜端縁412を有さない構成であってもよい。切裂部410の形状および材質等や、天面シート12の厚さおよび材質等によって、本例の形状の切裂部410であっても、平坦部125を適切に切り裂き可能な構成であればよい。
【0089】
<スパウト2 第4変形例>
図23は、スパウト2の第4変形例を示している。本例においては、第1筒状部41は、突起部413を有する。突起部413は、切裂部410に対して回転方向に位置しており、傾斜端縁412からz方向下方に突出している。ただし、突起部413は、z方向において切裂部410から突出しない大きさである。
【0090】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、突起部413が設けられることにより、
図19に示す状態において切裂片122が内側に倒れることをより確実に抑制することが可能である。これにより、被包装物7をよりスムーズに注出することができる。
【0091】
<スパウト2 第5変形例>
図24は、スパウト2の第5変形例を示している。本例においては、回転部4とキャップ部5とが、ヒンジ49を介して一体的に形成されている。ヒンジ49を回動中心としてキャップ部5を回動させることにより、キャップ部5によって回転部4のノズル部44を塞いだ状態と開放した状態とを任意にとることができる。このようなヒンジ49を介して回転部4とキャップ部5とが一体的に形成された構成は、他の例においても適宜組み合わせて採用することができる。
【0092】
また、本例においては、回転部4は、第3筒状部45を有する。第3筒状部45は、第1筒状部41を囲むよう第1筒状部41の外側に設けられている。第3筒状部45の内面には、第1ねじ部451が形成されている。
【0093】
固定部3は、第4筒状部33を有する。第4筒状部33は、第2筒状部32を囲むように第2筒状部32の外側に設けられている。第2筒状部32の外面には、第2ねじ部321が形成されている。第2ねじ部321および第1ねじ部451は、上述の例における第2ねじ部321および第1ねじ部411と同様に螺合し、固定部3に対する回転部4の動きを規定する。また、本例においては、帯状部6を除去した後に、回転部4を回転させることにより、回転部4を固定部3に対して下降させる際には、第3筒状部45の下端がフランジ部31に当接すること、あるいは第4筒状部33の上端が鍔部42に当接することによって、回転部4の下降が規制される。
【0094】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、本変形例から理解されるように、スパウト2の具体的構成は何ら限定されず、種々の構成を適宜組み合わせて採用することができる。
【0095】
<天面シート12 第1変形例>
図25は、天面シート12の平坦部125の切裂容易線120の変形例を示している。
本例においては、切裂容易線120は、外方誘導部1201および外方誘導部1202を有する。外方誘導部1202は、外方誘導部1201に対して回転方向と逆方向に位置している。また、外方誘導部1202は、外方誘導部1201に対して径方向内側に位置しており、回転軌道40に対して径方向外側に位置している。
【0096】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、外方誘導部1202を設けることにより、回転軌道40に沿った切り裂きから、外方誘導部1202に沿った切り裂き、さらに外方誘導部1201に沿った切り裂きへと誘導することができる。本変形例から理解されるように、切裂容易線120の具体的形状や大きさは何ら限定されない。たとえば、切裂容易線120が、外方誘導部1201,1202等を有しておらず、z方向から見て回転軌道40と一致する構成(単なる円形)であってもよい。さらに、切裂容易線120は、二重や三重の円を構成していてもよい。また、切裂容易線120の一部または全体が、z方向から見て回転軌道40に対して径方向内側に位置する構成であってもよい。さらに、切裂容易線120が始点(たとえば上述の点P0)~終点(たとえば上述の点P5)において、互いに離間した複数の領域によって構成されていてもよい。
【0097】
<天面シート12 第2変形例>
図26は、天面シート12の平坦部125の変形例を示している。本例においては、平坦部125には、上述した例における切裂容易線120が設けられていない。
【0098】
本変形例によっても、より確実に容器本体1を開封することができる。また、切裂容易線120が設けられていない構成であっても、切裂部410の形状および材質等や、天面シート12の厚さおよび材質等によって、平坦部125を切裂部410によって切り裂くことができる。
【0099】
なお、発明者らの試験によれば、平坦部125に外方誘導部1201を有する切裂容易線120が設けられていない場合であっても、上述した点P4から点P5に至る範囲において、平坦部125が回転軌道40に対して径方向外側に引き裂かれ、
図19(b)に示す状態と同様に、切裂部410が切裂片122に対して径方向内側に位置する傾向があることが確認された。この理由としては、まず、回転部4の回転に伴って第1筒状部41がz方向下方に移動すると、第1筒状部41のうち切裂部410に対して回転方向に位置する部分が、z方向において平坦部125と重なる位置まで下降する。この部分は、切裂部410に先行して平坦部125をz方向に押し下げる格好となる。この押し下げにより、平坦部125の切裂線121が進展させられる。そして、この切り裂きの進展が、切裂線121の先端が向く方向、すなわち回転軌道40の接線方向に向かう傾向が認められた。
この結果、切裂部410が切裂片122の径方向内側に位置する挙動が生じたと考えられる。
【0100】
本発明に係るパウチ容器用包装体およびパウチ容器包装物は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るパウチ容器用包装体およびパウチ容器包装物の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0101】
A1 :パウチ容器用包装体
B1 :パウチ容器包装物
1 :容器本体
2 :スパウト
3 :固定部
4 :回転部
5 :キャップ部
6 :帯状部
7 :被包装物
11 :本体シート
12 :天面シート
17 :シール部
21 :注出空間
31 :フランジ部
32 :第2筒状部
33 :第4筒状部
40 :回転軌道
41 :第1筒状部
42 :鍔部
43 :外筒部
44 :ノズル部
45 :第3筒状部
61 :つまみ部
101 :ベースフィルム層
102 :シーラントフィルム層
103 :シーラントフィルム層
104 :バリアフィルム層
120 :切裂容易線
121 :切裂線
122 :切裂片
125 :平坦部
171 :サイドシール部
172 :天側シール部
173 :底側シール部
321 :第2ねじ部
322 :肉厚部
323 :テーパ面
324 :凹部
410 :切裂部
411 :第1ねじ部
412 :傾斜端縁
413 :突起部
421 :凸部
451 :第1ねじ部
1201,1202:外方誘導部