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特許7742101モーフィング翼、飛行制御装置、飛行制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】モーフィング翼、飛行制御装置、飛行制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64C 3/38 20060101AFI20250911BHJP
   G06N 3/04 20230101ALI20250911BHJP
   G06N 3/08 20230101ALI20250911BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250911BHJP
【FI】
B64C3/38
G06N3/04
G06N3/08
G06N20/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021113444
(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公開番号】P2023009836
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 大地
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049600(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176502(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0144992(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109760833(CN,A)
【文献】中国特許第108482645(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/56
B64C 3/38
B64C 39/02
G06N 3/04
G06N 3/08
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向への展開と、前記第1方向とは反対の方向である第2方向への格納と、が可能なリンク機構と、
前記リンク機構における前記第1方向に直交する一方の側である前方に取り付けられた複数の前翼カバーと、
前記リンク機構における前記第1方向に直交する他方の側である後方に取り付けられた複数の風切羽と、
を備え、
前記前翼カバー及び前記風切羽が、前記前方から前記後方に向けて流線形であり、
前記リンク機構を格納した時、前記風切羽が隣り合う前記風切羽の内部に格納される、
モーフィング翼。
【請求項2】
前記リンク機構は、
前記第1方向の側において前記前方に取り付けられた前初列リンクと、前記第1方向の側における前記後方に取り付けられた後初列リンクと、を備える初列リンクと、
前記第2方向の側において前記前方に取り付けられた前次列リンクと、前記第2方向の側における前記後方に取り付けられた後次列リンクと、を備える次列リンクと、
を備え、
複数の前記風切羽は、前記前初列リンク及び前記後初列リンク又は前記前次列リンク及び前記後次列リンクにおいてそれぞれ回動可能に取り付けられる、
請求項1に記載のモーフィング翼。
【請求項3】
前記前翼カバーは、
前記初列リンクに設けられる第1前翼カバーと、
前記次列リンクに設けられる第2前翼カバーと、
前記第1前翼カバーと前記第2前翼カバーとの間に設けられる第3前翼カバーと、
を備える、
請求項2に記載のモーフィング翼。
【請求項4】
複数の前記風切羽は、
前記初列リンクに取り付けられた初列風切と、
前記次列リンクに取り付けられた次列風切と、
を備え、
前記リンク機構の展開時において、前記初列風切において隣り合う前記風切羽の長手方向同士がなす角度が、前記第1方向に位置する前記風切羽の長手方向同士ほど大きい、
請求項2又は3に記載のモーフィング翼。
【請求項5】
前記初列風切における前記風切羽は、前記リンク機構が展開するのに応じて、隣り合う前記風切羽の長手方向とのなす角度が大きくなるように構成される、
請求項4に記載のモーフィング翼。
【請求項6】
前記リンク機構の展開時において、前記第1方向の側の端部に位置する複数の前記風切羽では、各風切羽の短手方向が前記前方から前記後方に向かう方向に面し、かつ、各風切羽の短手方向が前記前方から前記後方に向けて流線形であり、かつ、隣り合う前記風切羽の前記後方の端部同士の間に隙間を備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載のモーフィング翼。
【請求項7】
前記第1方向の側の端部に位置する複数の前記風切羽が弾性変形する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のモーフィング翼。
【請求項8】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のモーフィング翼を備える飛行体を制御する飛行制御装置であって、
前記リンク機構を伸縮させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記飛行体が着陸する際に、前記駆動部を制御して前記リンク機構を前記第1方向に延伸させる、
飛行制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記飛行体の姿勢を表す姿勢情報を取得し、
深層強化学習を用いて学習されたモデルに対して、前記取得した姿勢情報を入力することで得られた前記モデルの出力結果に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項8に記載の飛行制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、更に、前記モーフィング翼のひずみ又は圧力のうち少なくとも一方を含む変位情報を取得し、前記モデルに対して、前記取得した変位情報を入力することで得られた前記モデルの出力結果に基づいて、前記駆動部を制御する、
請求項9に記載の飛行制御装置。
【請求項11】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のモーフィング翼を備える飛行体を制御する飛行制御装置が、
前記飛行体が着陸する際に、前記リンク機構を伸縮させる駆動部を制御して前記リンク機構を延伸させる、
飛行制御方法。
【請求項12】
請求項1から7のうちいずれか一項に記載のモーフィング翼を備える飛行体を制御する飛行制御装置に、
前記飛行体が着陸する際に、前記リンク機構を伸縮させる駆動部を制御して前記リンク機構を延伸させることを実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーフィング翼、飛行制御装置、飛行制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
また、ある決められた方向に伸縮可能なパンタグラフ機構によって展開及び格納が可能なモーフィング翼の構造が開示されている。(例えば、特許文献1)
飛行性能を革新的に向上、拡張するために、翼の面積、形状を大きく変形させるモーフィング翼技術がある。(例えば、非特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-030950号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Eric Chang, Laura Y. Matloff, Amanda K. Stowers, David Lentink, ‘Soft biohybrid morphing wings with feathers underactuated by wrist and finger motion’, [online]. 16 January 2020, SCIENCE ROBOTICS, [Retrieved on 18 June 2021]. <URL: https://robotics.sciencemag.org/content/5/38/eaay1246/tab-figures-data>
【文献】M. Di Luca, S. Mintchev, G. Heitz, F. Noca and D. Floreano, ‘Bioinspired morphing wings for extended flight envelope and roll control of small drones’, [online]. 06 February 2017, INTERFACE FOCUS, [Retrieved on 18 June 2021]. <URL: https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsfs.2016.0092>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のモーフィング翼は、各構成部品がフラットな形状で設計され、翼を展開する際には単純に重なり合うだけだった。つまり、展開して状態の翼が流線形を有さず、公知の一般的な飛行機の翼型に比べて空力性能が大きく劣る旨の課題があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、高い飛行性能を備えたモーフィング翼の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るモーフィング翼は、第1方向への展開と、前記第1方向とは反対の方向である第2方向への格納と、が可能なリンク機構と、前記リンク機構における前記第1方向に直交する一方の側である前方に取り付けられた複数の前翼カバーと、前記リンク機構における前記第1方向に直交する他方の側である後方に取り付けられた複数の風切羽と、を備え、前記前翼カバー及び前記風切羽が、前記前方から前記後方に向けて流線形であり、前記リンク機構を格納した時、前記風切羽が隣り合う前記風切羽の内部に格納される。
【0008】
この発明によれば、前翼カバー及び風切羽が流線形である。これにより、空力性能を向上し、より飛行性能に優れたモーフィング翼とすることができる。更に、リンク機構を格納した時、風切羽が隣り合う風切羽の内部に格納される。これにより、リンク機構を格納した時のモーフィング翼の大きさを最小限にすることができる。よって、より運搬性を向上することができる。
【0009】
また、前記リンク機構は、前記第1方向の側において前記前方に取り付けられた前初列リンクと、前記第1方向の側における前記後方に取り付けられた後初列リンクと、を備える初列リンクと、前記第2方向の側において前記前方に取り付けられた前次列リンクと、前記第2方向の側における前記後方に取り付けられた後次列リンクと、を備える次列リンクと、を備え、複数の前記風切羽は、前記前初列リンク及び前記後初列リンク又は前記前次列リンク及び前記後次列リンクにおいてそれぞれ回動可能に取り付けられていてもよい。
【0010】
この発明によれば、風切羽は、初列リンク及び連結部材又は前初列リンク及び後初列リンクにおいてそれぞれ回動可能に取り付けられる。このように1つの風切羽がリンク機構における二か所に取り付けられることで、風切羽が不規則に動くことをリンク機構によって規制することができ、かつ、リンク機構によって風切羽の位置及び向きを制御することができる。
【0011】
また、前記前翼カバーは、前記初列リンクに設けられる第1前翼カバーと、前記次列リンクに設けられる第2前翼カバーと、前記第1前翼カバーと前記第2前翼カバーとの間に設けられる第3前翼カバーと、を備えていてもよい。
【0012】
この発明によれば、初列リンクに設けられる第1前翼カバーと、次列リンクに設けられる第2前翼カバーと、を備える。これにより、前翼カバーがリンク機構の展開及び格納に追従することができる。更に、第1前翼カバーと第2前翼カバーとの間に設けられる第3前翼カバーを備える。これにより、リンク機構が展開したとき、前翼カバーに隙間が生じることを防ぐことができる。よって、モーフィング翼まわりの空気の流れが乱れることを防ぐことができる。よって、より空力性能の向上に寄与することができる。
【0013】
また、複数の前記風切羽は、前記初列リンクに取り付けられた初列風切と、前記次列リンクに取り付けられた次列風切と、を備え、前記リンク機構の展開時において、前記初列風切において隣り合う前記風切羽の長手方向同士がなす角度が、前記第1方向に位置する前記風切羽の長手方向同士ほど大きくてもよい。
【0014】
この発明によれば、リンク機構の展開時において、初列風切において隣り合う風切羽の長手方向同士がなす角度が、第1方向に位置する風切羽の長手方向同士ほど大きい。言い換えれば、第2方向の側に位置する風切羽ほど、隣り合う風切羽の長手方向同士がなす角度が小さい。このことで、第2方向の側において風切羽同士の間に隙間が生じて、揚力が低下することを防ぐことができる。
また、初列風切に位置する風切羽は、第1方向の側に位置する風切羽ほど、隣り合う風切羽の長手方向同士がなす角度が大きい。よって、初列風切の第1方向側の端部に位置する風切羽は、長手方向が第1方向の側に向き、短手方向が前方から後方に向かう方向に位置する。これにより、展開した状態におけるモーフィング翼全体の大きさを大きくすることができる。よって、より揚力を向上することができる。
【0015】
また、前記初列風切における前記風切羽は、前記リンク機構が展開するのに応じて、隣り合う前記風切羽の長手方向とのなす角度が大きくなるように構成されていてもよい。
【0016】
この発明によれば、初列風切における風切羽は、リンク機構が展開するのに応じて、連結部材を介して連結された隣り合う風切羽の長手方向とのなす角度が大きくなるように構成される。つまり、リンク機構が格納したときは、隣り合う風切羽の長手方向とのなす角度は小さくなる。これにより、リンク機構が格納したときの初列風切の収まりをよくすることができる。よって、格納時のモーフィング翼の全体の大きさを小さくし、運搬性の向上に寄与することができる。
【0017】
また、前記リンク機構の展開時において、前記第1方向の側の端部に位置する複数の前記風切羽では、各風切羽の短手方向が前記前方から前記後方に向かう方向に面し、かつ、各風切羽の短手方向が前記前方から前記後方に向けて流線形であり、かつ、隣り合う前記風切羽の前記後方の端部同士の間に隙間を備えていてもよい。
【0018】
この発明によれば、リンク機構の展開時において、第1方向の側の端部に位置する複数の風切羽が、前方から後方に向けて流線形である。これにより、展開状態のモーフィング翼について、揚力を最大限確保することができる。更に、隣り合う風切羽との間に隙間を備える。これにより、前記隙間に気流を逃がすことで、翼の端部において発生する空気の流れの乱れを抑え、失速を防ぐことができる。よって、安定した飛行に寄与することができる。
【0019】
また、前記第1方向の側の端部に位置する複数の前記風切羽が弾性変形してもよい。
【0020】
この発明によれば、第1方向の側の端部に位置する複数の風切羽が、弾性変形する。これにより、モーフィング翼の展開時において、モーフィング翼の端部における流れによって受ける力に対して受動的に変形する。これにより、翼の端部において発生する空気の流れの乱れを抑えることができる。よって、安定した飛行に寄与することができる。
【0021】
また、本発明に係る飛行制御装置は、前記モーフィング翼を備える飛行体を制御する飛行制御装置であって、前記リンク機構を伸縮させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記飛行体が着陸する際に、前記駆動部を制御して前記リンク機構を前記第1方向に延伸させる。
【0022】
この発明によれば、制御部は、飛行体が着陸する際に、駆動部を制御してリンク機構を第1方向に延伸させる。これにより、着陸時における飛行体の揚力を確保し、安定した着陸に寄与することができる。
【0023】
また、前記制御部は、前記飛行体の姿勢を表す姿勢情報を取得し、深層強化学習を用いて学習されたモデルに対して、前記取得した姿勢情報を入力することで得られた前記モデルの出力結果に基づいて、前記駆動部を制御してもよい。
【0024】
この発明によれば、飛行の制御に深層強化学習を用いる。これにより、飛行現場の環境に応じた飛行制御を行うことで、より効率的かつ安全に飛行することができる。
【0025】
また、前記制御部は、更に、前記モーフィング翼のひずみ又は圧力のうち少なくとも一方を含む変位情報を取得し、前記モデルに対して、前記取得した変位情報を入力することで得られた前記モデルの出力結果に基づいて、前記駆動部を制御してもよい。
【0026】
この発明によれば、飛行の制御にモーフィング翼のひずみ又は圧力のうち少なくとも一方を含む変位情報を用いる。飛行体の姿勢が変化する前に、モーフィング翼の変位情報を取得して制御を行うことで、より制御を機敏に行うことができる。よって、より機動性の向上に寄与することができる。
【0027】
また、本発明に係る飛行制御方法は、前記モーフィング翼を備える飛行体を制御する飛行制御装置が、前記飛行体が着陸する際に、前記リンク機構を伸縮させる駆動部を制御して前記リンク機構を延伸させる。
【0028】
この発明によれば、飛行体が着陸する際に、リンク機構を伸縮させる駆動部を制御してリンク機構を延伸させる。これにより、より鳥に近い飛行及び着陸を行うことができる。
【0029】
また、本発明に係るプログラムは、前記モーフィング翼を備える飛行体を制御する飛行制御装置に、前記飛行体が着陸する際に、前記リンク機構を伸縮させる駆動部を制御して前記リンク機構を延伸させることを実行させる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高い飛行性能を備えたモーフィング翼の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態のモーフィング翼及び飛行制御装置を備える飛行体の構成の一例を示す図である。
図2】第1実施形態のモーフィング翼の構成の一例を示す図である。
図3】モーフィング翼の格納状態を示す図である。
図4】モーフィング翼の展開状態を示す図である。
図5】モーフィング翼の格納時に、風切羽が隣り合う風切羽の内部に格納された状態を示す図である。
図6】風切羽の全体図である。
図7】モーフィング翼の端部に位置する風切羽の全体図である。
図8】リンク機構と風切羽との取り付け状態を示す図である。
図9】前翼カバーの全体図である。
図10】モーフィング翼のスイープ動作を説明するための図である。
図11】モーフィング翼のツイスト動作を説明するための図である。
図12】第1実施形態の飛行制御装置の構成の一例を示す図である。
図13】クォータニオンフィードバックを用いた姿勢制御系の一例を示す図である。
図14】制御部の一連の処理の流れを示すフローチャートである。
図15】飛行体の飛行の様子を模式的に示す図である。
図16】制御の第2例の飛行制御装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明のモーフィング翼、飛行制御装置、飛行制御方法、及びプログラムの実施形態について説明する。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のモーフィング翼140及び飛行制御装置200を備える飛行体100の構成の一例を示す図である。飛行体100は鳥を模しており、例えば、プロペラ110と、垂直尾翼120と、水平尾翼130と、モーフィング翼140と、飛行制御装置200とを備える。
【0034】
図中Σは慣性座標系の一つの地球固定座標Σを表し、Oは地球固定座標Σの原点を表し、X軸は真北を表し、Y軸は東を表し、Z軸は鉛直下方を表している。また、慣性主軸を機体固定座標系として定義した場合、図中X軸は、飛行体100の重心を原点としたときの機体の慣性主軸を表し、Z軸は、機体の下方向を表し、Y軸は、機体の進行方向右側の方向を表している。言い換えれば、X軸はロール軸Xを表し、Z軸はヨー軸Zを表し、Y軸はピッチ軸Yを表している。
【0035】
プロペラ110は、例えば、飛行体100の機体の先端に設けられ、機体の軸心周り(図中X軸周り)に回転可能に取り付けられる。
【0036】
垂直尾翼120及び水平尾翼130は、例えば、飛行体100の機体の末端といった機体の重心から離れた位置に設けられる。
【0037】
モーフィング翼140は、飛行体100の機体の左右両側に設けられる。モーフィング翼140には、スイープ機構と、ツイスト機構と、リンク機構とが含まれる。スイープ機構は、ヨー軸Z周りにモーフィング翼140を回動させるための機構である。ツイスト機構は、ピッチ軸Y周りにモーフィング翼140を回動させるための機構である。
リンク機構は、ピッチ軸Y方向に関してモーフィング翼140を畳んだり展開したりするための機構である。つまり、リンク機構は、モーフィング翼140において、図2に示すピッチ軸Yの正の方向である第1方向への展開と、第1方向とは反対の方向、すなわちピッチ軸Yの負の方向である第2方向への格納と、を可能とする機構である。
図2に示すモーフィング翼140は、図1に示す飛行体100の右側に設けられたものである。第1方向及び第2方向の関係は、図1に示す飛行体100の左側に設けられたモーフィング翼140においては反転する。すなわち、図1に示す飛行体100の左側に設けられたモーフィング翼140においては、ピッチ軸Yの負の方向が第1方向で、ピッチ軸Yの正の方向が第2方向となる。
【0038】
飛行制御装置200は、プロペラ110、垂直尾翼120、水平尾翼130、及びモーフィング翼140を制御することで、飛行体100を離陸させたり、着陸させたり、飛行中に旋回させたり、ホバリングさせながら降下させたりする。
【0039】
[モーフィング翼140の構成]
以下、モーフィング翼140の構成について説明する。図1及び図2は、第1実施形態のモーフィング翼140の構成の一例を示す図である。モーフィング翼140は、例えば、ヨー軸回動部材141と、ピッチ軸回動部材142と、レール部材143と、第1スライダ144と、第2スライダ145と、リンク部150と、風切羽160と、前翼カバー180と、を備える。
【0040】
ヨー軸回動部材141及びピッチ軸回動部材142は、モーフィング翼140と飛行体100の機体とを互いに連結する。ヨー軸回動部材141は、ヨー軸Z周りに回動する。ピッチ軸回動部材142は、ピッチ軸Y周りに回動する。
【0041】
レール部材143は、その長手方向がロール軸Xと略平行となるように、ヨー軸回動部材141及びピッチ軸回動部材142を介して飛行体100の機体に取り付けられる。
【0042】
第1スライダ144は、レール部材143に取り付けられる。第1スライダ144は、レール部材143上において、レール部材143の長手方向、すなわちロール軸X方向にスライドする。
第2スライダ145は、レール部材143に取付けられる。第2スライダ145は、レール部材143上において、レール部材143の長手方向、すなわちロール軸X方向にスライドする。
上述したリンク機構は、レール部材143と、第1スライダ144と、第2スライダ145と、リンク部150と、を合わせたものである。
【0043】
リンク部150は、第1スライダ144及び第2スライダ145によって稼働する。リンク部150には複数の風切羽160が設けられる。リンク部150は、第1リンク151と、次列リンク152と、第2リンク153と、前初列リンク154と、翼端リンク155と、連結部材156(後初列リンク)と、を備える。
【0044】
第1リンク151の一端は、ヨー軸Zの周りに回動可能なように、ピッチ軸回動部材142に取り付けられ、第1リンク151の他端は、ヨー軸Zの周りに回動可能なように、第2リンク153の両端部の間における1箇所に取り付けられる。また、第1リンク151の両端部の間における1箇所は、ヨー軸Zの周りに回動可能なように、前次列リンク152aの両端部の間における1箇所に取り付けられる。
【0045】
次列リンク152は、リンク部150において第2方向の側に位置する。次列リンク152は、互いに平行に位置する前次列リンク152aと、後次列リンク152bと、を備える。
前次列リンク152a及び後次列リンク152bは、第1リンク151と交差する。図2に示すように、前次列リンク152aと後次列リンク152bとは平行に設けられ、いずれも一端が第1スライダ144にヨー軸Z周りに回動可能なように取り付けられ、他端が前初列リンク154の一端にヨー軸Z周りに回動可能なように取り付けられている。
【0046】
前次列リンク152aは、第1方向に直交する一方の側である前方、すなわち飛行体100の進行方向の側に位置し、後次列リンク152bは、第1方向に直交する他方の側である後方の側に位置する。また、前次列リンク152aには、第1リンク151が回動可能に取付けられ、後次列リンク152bには取付けられていない点で相違する。
【0047】
第2リンク153は、次列リンク152と平行となるように、その一端が第2スライダ145にピッチ軸Yの周りに回動可能に取り付けられ、他端が前初列リンク154の両端部の間に1箇所にピッチ軸Yの周りに回動可能に取り付けられる。
前初列リンク154は、リンク部150において第1方向の側における前方に位置する。前初列リンク154は、その一端がヨー軸Zの周りに回動可能なように、前次列リンク152aの他端に取り付けられ、他端が翼端リンク155の一端に取り付けられる。
翼端リンク155は、前初列リンク154の他端に取り付けられる。翼端リンク155には、翼端羽根が取り付けられる(後述する)。
【0048】
第1リンク151と前次列リンク152aとの取り付け位置、第2リンク153と第1リンク151との取り付け位置、及び第2リンク153と前初列リンク154との取り付け位置は、リンク部150における、第1スライダ144及び第2スライダ145のスライド量と、リンク部150において必要とする展開及び格納の動き代を適宜検討の上決定する。
【0049】
連結部材156は、前初列リンク154の後方において、前初列リンク154の長手方向に沿って複数設けられる。連結部材156は、第1連結部材156aと、第2連結部材156bと、第3連結部材156cと、第4連結部材156dと、を備える。
連結部材156は、前初列リンク154の後方において、複数の風切羽160の間に設けられる。具体的には、第1連結部材156aは、第1次列風切羽171と第6初列風切羽166との間に設けられる。第2連結部材156bは、第6初列風切羽166と第5初列風切羽165との間に設けられる。第3連結部材156cは、第5初列風切羽165と第4初列風切羽164との間に設けられる。第4連結部材156dは、第4初列風切羽164と第3初列風切羽163との間、第3初列風切羽163と第2初列風切羽162との間、第2初列風切羽162と第1初列風切羽161との間にそれぞれ設けられる。
リンク部150の各構成部品は剛性及び強度が高く、かつ軽量なものが好ましい。例えば、CFRP(カーボンサンドイッチ材)、アルミニウム、プラスチックによって形成されることが好ましい。
なお、上述の前初列リンク154と連結部材156とを合わせて、初列リンクと呼称してもよい。
【0050】
風切羽160は、リンク部150において後方の側に複数取り付けられる。風切羽160は、例えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)をはじめとする、ある程度のたわみを許容するシート形状(例えば数百[μm]程度の厚さ)の部材である。
複数設けられた風切羽160の外形は、いずれも前方から後方に向けて流線形である点で共通する。以下、風切羽160の構成部品について、第1次列風切羽171を例に挙げて説明する。なお、詳細形状と、特に記載している事項と、を除き、複数設けられた風切羽160の概略構成は、少なくとも、本体部と、補強材と、取付部材と、を備えている点でいずれも同じである。
【0051】
第1次列風切羽171は、本体部171aと、補強材171bと、取付部材171cと、を備える。本体部171aは、第1次列風切羽171の外形を形成する。本体部171aが流線形であることによって、第1次列風切羽171の機能を担保する。本体部171aは、例えば、曲率を持ったCFRPによって形成される。このように形成されることで、風切羽160は、図6に示すように、前方及び長手方向の両脇に向けて開口している。
【0052】
補強材171bは、本体部171aにおける材料同士の間の隙間に設けられる。これにより、本体部171aを補強する。補強材171bは、例えば、バルサ材や、プラスチックが好適に用いられる。プラスチックを用いる場合は、3Dプリンタによって形成されてもよい。
取付部材171cは、補強材171bに連結され、本体部171aをリンク部150に取り付けるために用いる。具体的には、図8に示すように、取付部材171cがリンク部150を上下方向から挟むように形成される。この状態において、取付部材171cとリンク部150とをピン等によって回動可能に連結する。この固定方法は、リンク部150におけるいずれの回動可能な固定部においても同様であるとする。
【0053】
複数備えられた風切羽160は、初列風切160wと、次列風切170wと、に分類される。
初列風切160wは、複数の風切羽160のうち、前初列リンク154に取り付けられたものをいう。本実施形態において、初列風切160wは、第1初列風切羽161と、第2初列風切羽162と、第3初列風切羽163と、第4初列風切羽164と、第5初列風切羽165と、第6初列風切羽166と、を備える。初列風切160wにおける複数の風切羽160は、前初列リンク154及び連結部材156にそれぞれ回動可能に取り付けられる。以下、初列風切160wのうち、特に第1初列風切羽161と、第2初列風切羽162と、第3初列風切羽163とをまとめて、翼端羽根と呼称することがある。
【0054】
図4に示すように、リンク機構が展開したモーフィング翼140において、初列風切160wにおいて隣り合う風切羽160の長手方向同士がなす角度は、第1方向に位置する風切羽160の長手方向同士ほど大きい。初列風切160wにおける風切羽160は、リンク部150が展開するのに応じて、連結部材156を介して連結された隣り合う風切羽160の長手方向とのなす角度が大きくなるように構成される(後述する)。これにより、初列風切160wは、隣り合う風切羽160の後方の端部同士の間に隙間を備える。なお、前記隙間は、図4に示す平面視において、隣り合う風切羽160が位置しない領域のことをいう。ここでいう角度は、X-Y平面における角度であり、Z軸に関する角度成分は含まれていない。
これにより、鳥の備える初列風切と同様の構成とする。鳥の初列風切は、上述のように隣り合う風切羽との隙間によって、隙間に気流を逃がす。これにより、失速を抑制する役割を有する。
【0055】
初列風切160wにおける翼端羽根とそれ他の風切羽160とは、以下の点で相違する。すなわち、図4に示すように、リンク部150を展開した時、その他の風切羽160は長手方向が前方から後方に向けて位置するのに対し、翼端羽根は、短手方向が前方から後方に向けて位置する。
このため、図6に示すように、その他の風切羽160は長手方向が流線形であるのに対し、図7に示すように、翼端羽根を構成する風切羽160は、短手方向に流線形である。これにより、モーフィング翼140の翼端における失速の抑制に寄与する。
【0056】
また、上述のように形成された隙間に気流を流すことに加えて、翼端羽根における風切羽160が弾性変形してもよい。つまり、モーフィング翼140の端において生じる流れの乱れを抑えるために、翼端羽根における風切羽160が、空気の流れに合わせて受動的に弾性変形してもよい。翼端羽根の風切羽160を弾性変形可能とするために、例えば、翼端羽根の風切羽160のみ弾性を有する材質を用いてもよいし、図7に示すように風切羽160に折り目を付けることで変形しやすくしてもよい。
【0057】
次列風切170wは、複数の風切羽160のうち、次列リンク152に取り付けられたものをいう。本実施形態において、次列風切170wは、第1次列風切羽171と、第2次列風切羽172と、第3次列風切羽173と、第4次列風切羽174と、を備える。次列風切170wにおける複数の風切羽160は、前次列リンク152a及び後次列リンク152bにおいてそれぞれ回動可能に取り付けられる。
次列風切170wにおいて隣り合う風切羽160は、いずれも長手方向が平行である。図2図3図4に示すように、初列風切160wにおける風切羽160は、隣り合う風切羽160と略平行に位置する。なお、ここでいう角度は、X-Y平面における角度であり、Z軸に関する角度成分は含まれていない。
【0058】
次に、リンク部150における初列風切160w及び次列風切170wとの取り付け構造と、リンク部150の展開および格納による風切羽160の動きについて説明する。
まず、次列風切170wを構成する風切羽160について、第1次列風切羽171を挙げて説明する。図6に示すように、取付部材171cは、前次列リンク152a及び後次列リンク152bに、それぞれピッチ軸Yの周りに回動可能に取り付けられる。このとき、取付部材171cにおける2つの取り付け点間の直線の長さは、前次列リンク152a及び後次列リンク152bと第1スライダ144との取り付け点間の直線の長さと等しい。また、前述の2つの直線は、平行となるように取り付けられる。第2次列風切羽172、第3次列風切羽173、第4次列風切羽174においても同様に取り付けられる。
【0059】
これにより、次列風切170wにおいては、各構成部品によって平行四辺形が形成される。これにより、リンク部150において次列リンク152の角度が変わっても、風切羽160の向きが一定となる。よって、図3及び図4に示すように、第1スライダ144が動いて次列リンク152の角度が変動しても、次列風切170wを構成する風切羽160はいずれも常に長手方向が前方から後方に向かう方向に面する。よって、上述のように、次列風切170wにおける風切羽160は、隣り合う風切羽160と常に略平行に位置する。
【0060】
次に、初列風切160wを構成する風切羽160について説明する。初列風切160wが取付けられる初列リンクは、次列風切170wを構成する次列リンク152と下記の点で相違する。すなわち、次列リンク152は平行に設けられた前次列リンク152aと後次列リンク152bとによって構成されるのに対し、前初列リンク154は、後次列リンク152bに相当する部位に、連結部材156が設けられている。
【0061】
図2に示すように、隣り合う風切羽160の間に位置する連結部材156の長さはそれぞれ異なる。また、取り付け点間の長さが、それぞれ異なる。
上述のように、次列風切170wにおいては、各構成部品によって平行四辺形が形成される。これに対し、初列風切160wにおいては、連結部材156によって取り付け点間の長さを適宜調整することで、平行四辺形とならないようにする。これにより、リンク部150によって前初列リンク154及び連結部材156の角度が変わることに伴い、風切羽160の角度が変動するようにする。
【0062】
例えば、第1連結部材156aの長さは、前初列リンク154と第1次列風切羽171及び第6初列風切羽166との取り付け点間の直線の長さより長い。更に、第6初列風切羽166と前初列リンク154及び第1連結部材156aとの取り付け点間の直線の長さは、第1次列風切羽171と前初列リンク154及び第1連結部材156aとの取り付け点間の直線の長さより長い。
【0063】
これにより、図4に示すように、リンク部150が展開して第1次列風切羽171の取付部材171cと前初列リンク154との角度が直角に近くなると、第6初列風切羽166と第1連結部材156aとの取り付け点が、第6初列風切羽166と前初列リンク154との取り付け点よりも第1方向の側に位置する。よって、第6初列風切羽166は、隣に位置する第1初列風切羽161に対して角度が生じる。
【0064】
この関係は、第6初列風切羽166と第5初列風切羽165との間における第2連結部材156b、及び第5初列風切羽165と第4初列風切羽164との間における第3連結部材156cのように、第1方向に位置するにつれて顕著となるようにする。これにより、上述のように、初列風切160wにおける風切羽160は、リンク部150が展開するのに応じて、連結部材156を介して連結された隣り合う風切羽160の長手方向との隙間が大きくなる。
【0065】
初列風切160wの翼端羽根以外及び次列風切170wにおいて、複数設けられた風切羽160は、リンク部150の展開及び格納に合わせて、以下の通りとなる。すなわち、図5に示すように、リンク部150を格納した時、一方の翼端羽が、隣り合う翼端羽根の内部に格納される。これにより、リンク部150を格納した時、隣り合う風切羽160が互いに干渉することを防ぐことに加えて、格納時のモーフィング翼140の大きさを小さくし、運搬性の向上に寄与する。
【0066】
上記機能を担保するため、それぞれの風切羽160の大きさは、リンク部150が格納した時における隣り合う風切羽160の位置及び大きさを適宜考慮して決定する。また、図5に示すように、リンク部150が格納した時、第2リンク153は、次列風切170wにおける風切羽160の内部に位置する。このため、図6に示すように、第2リンク153との干渉を防ぐために、補強材171b、172b、173b、174bには、切れ込みを設ける。
【0067】
なお、本実施形態において、風切羽160は初列風切160wと次列風切170wとを合わせて計10個設けられているが、これに限らない。すなわち、飛行体100の重量や使用環境等を検討の上、必要に応じて風切羽160の個数及び大きさを増減してもよい。
【0068】
前翼カバー180は、リンク部150における前方に取り付けられる。前翼カバー180は、展開した状態のモーフィング翼140において、前方に向けた風切羽160の開口に空気が流れ込まないようにする。加えて、前翼カバー180は前方から後方に向けて流線形である。これにより、モーフィング翼140を全体として流線形とする。
【0069】
前翼カバー180は、第1前翼カバー181と、第2前翼カバー182と、第3前翼カバー183と、を備える。第1前翼カバー181は、前初列リンク154に設けられる。第2前翼カバー182は、次列リンク152に設けられる。第3前翼カバー183は、第1前翼カバー181と第2前翼カバー182との間に設けられる。
【0070】
以下、前翼カバー180の構成部品について、第1前翼カバー181を例に挙げて説明する。なお、詳細形状と、特に記載している事項と、を除き、複数設けられた前翼カバー180の構成部品は、いずれも同じである。
第1前翼カバー181は、本体181aと、補強部181bと、取付部181cと、を備える。本体181aは、第1前翼カバー181の外形を形成する。本体181aが流線形であることによって、第1前翼カバー181の機能を担保する。本体181aは、例えば、曲率を持ったCFRPによって形成される。このように形成されることで、前翼カバー180は、図9に示すように、後方に向けて開口している。
【0071】
補強部181bは、本体181aにおける材料同士の間の隙間に設けられる。これにより、本体181aを補強する。補強部181bは、例えば、バルサ材や、プラスチックが好適に用いられる。プラスチックを用いる場合は、3Dプリンタによって形成されてもよい。
取付部181cは、補強部181bに連結され、本体181aをリンク部150に取り付けるために用いる。具体的には、取付部181cが前初列リンク154を上下方向から挟むように形成される。この状態において、取付部181cとリンク部150とを連結する。この固定方法は、第2前翼カバー182、第3前翼カバー183においても同様であるとする。
【0072】
第1前翼カバー181は、リンク部150の前次列リンク152aに取り付けられる。第2前翼カバー182は、リンク部150の前初列リンク154に取り付けられる。第3前翼カバー183は、第1次列風切羽171に取り付けられる。これにより、前翼カバー180は、リンク部150の展開及び格納に追従して移動する。
【0073】
図12は、モーフィング翼140のスイープ動作を説明するための図である。スイープ動作とは、ヨー軸Z周りにモーフィング翼140を回動させ、モーフィング翼140を飛行体100の前後に移動させる動作である。ヨー軸Z周りにモーフィング翼140を回動させたときのピッチ軸Yとのなす角度を「スイープ角度αswe」と称する。
【0074】
図11は、モーフィング翼140のツイスト動作を説明するための図である。ツイスト動作とは、ピッチ軸Y周りにモーフィング翼140を回動させ、飛行体100に対してモーフィング翼140を内旋または外旋させる動作である。ピッチ軸Y周りにモーフィング翼140を回動させたときのロール軸Xとのなす角度を「ツイスト角度αtwi」と称する。
【0075】
図2図3図4は、モーフィング翼140のフォールド動作を説明するための図である。フォールド動作とは、ピッチ軸Y方向にモーフィング翼140をパンタグラフのように延伸させてモーフィング翼140を広げたり、ピッチ軸Y方向にモーフィング翼140をパンタグラフのように縮小させてモーフィング翼140を畳んだりする動作である。ピッチ軸Y方向にモーフィング翼140を伸縮させたときの第1リンク151及び第2リンク153のなす角度を「フォールド角度αfol」と称する。
【0076】
図2図3図4は、モーフィング翼140の一連のフォールド動作を説明するための図である。図3の例では、第1スライダ144がレール部材143の末端(ピッチ軸回動部材142が取り付けられた位置の反対側の端部)に位置している。この場合、フォールド角度αfolは、取り得ることが可能な角度範囲の中で最大角をとる。これによって、モーフィング翼140が最大限畳まれた状態となる。
【0077】
図2の例では、第1スライダ144がレール部材143の末端からピッチ軸回動部材142側の端部へと移動している。この場合、フォールド角度αfolは、図3に例示した角度よりも小さくなるため、モーフィング翼140が図3に例示した状態よりも開いた状態となる。
【0078】
図4の例では、第1スライダ144がピッチ軸回動部材142側の端部へと最大限移動している。この場合、フォールド角度αfolは、取り得ることが可能な角度範囲の中で最小角をとる。これによって、モーフィング翼140が最大限開かれた状態となる。
【0079】
このように、レール部材143上で第1スライダ144が移動することで、モーフィング翼140が畳まれたり開かれたりする。
【0080】
一般的に、飛行体の翼が風を受けにくい場合(風が弱い場合)や、機体着陸時に翼の迎え角を大きくする場合に、翼の表面を流れる気流が剥離する境界層剥離と呼ばれる現象が生じ、飛行体が失速することが知られている。
【0081】
本実施形態では、風切羽160の間に隙間を形成するため、モーフィング翼140が風を受けにくい場合や、モーフィング翼140の迎え角を大きくする場合であっても、境界層剥離が生じることを抑制することができる。この結果、揚力の急速な減少を抑えつつ、安定して飛行することができる。つまり、風切羽160の間に隙間を形成することで、大きな迎角で飛行しているときであっても、隙間に気流を逃がすことができるため、失速を抑制することができる。
【0082】
[飛行制御装置の構成]
以下、飛行制御装置200の構成について説明する。図12は、第1実施形態の飛行制御装置200の構成の一例を示す図である。飛行制御装置200は、例えば、通信部202と、検出部204と、記憶部206と、電源208と、駆動部210と、制御部230を備える。
【0083】
通信部202は、例えば、WAN(Wide Area Network)などのネットワークを介して、外部装置と無線通信を行う。外部装置は、例えば、飛行体100を遠隔操作可能なリモートコントローラであってよい。例えば、通信部202は、外部装置から、飛行体100がとるべき姿勢や速度などを指示するコマンドを受信する。
【0084】
検出部204は、例えば、慣性計測装置である。慣性計測装置は、例えば、三軸式加速度センサと、三軸式ジャイロセンサとを含む。慣性計測装置は、これらのセンサによって検出された検出値を制御部230に出力する。慣性計測装置による検出値には、例えば、水平方向、垂直方向、奥行き方向の各加速度及び/又は角速度や、ピッチ、ロール、ヨーの各軸の速度(レート)などが含まれる。検出部204には、更に、レーダやファインダ、ソナー、GPS(Global Positioning System)受信機などが含まれてもよい。また、検出部204には、更に、垂直尾翼120や、水平尾翼130、モーフィング翼140のひずみを検出する光ファイバセンサや、それら翼にかかる圧力を検出する圧力センサが含まれてもよい。
【0085】
記憶部206は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置により実現される。記憶部206には、ファームウェアやアプリケーションプログラムなどの各種プログラムのほかに、制御部230の演算結果などがログとして格納される。
【0086】
電源208は、例えば、リチウムイオン電池などの二次電池である。電源208は、駆動部210や制御部230に電力を供給する。電源208には、更に、ソーラーパネルなどが含まれてもよい。
【0087】
駆動部210は、例えば、プロペラアクチュエータ212と、スイープアクチュエータ214と、ツイストアクチュエータ216と、フォールドアクチュエータ218と、昇降舵アクチュエータ220と、方向舵アクチュエータ222とを備える。これらのアクチュエータは、例えば、サーボモータであってよい。
【0088】
プロペラアクチュエータ212は、プロペラ110を駆動させ、飛行体100に推力を与える。スイープアクチュエータ214は、ヨー軸回動部材141を駆動させ、ヨー軸Z周りにモーフィング翼140を回動させる。
【0089】
ツイストアクチュエータ216は、ピッチ軸回動部材142を駆動させ、ピッチ軸Y周りにモーフィング翼140を回動させる。フォールドアクチュエータ218は、レール部材143に取り付けられた第1スライダ144をロール軸X方向に駆動させ、ピッチ軸Y方向にモーフィング翼140を展開したり、畳んだりする。
【0090】
昇降舵アクチュエータ220は、水平尾翼130に設けられた昇降舵(不図示)を駆動させ、機首を上げたり、或いは下げたりする。方向舵アクチュエータ222は、垂直尾翼120に設けられた方向舵(不図示)を駆動させ、機体のヨーイングを制御する。
【0091】
制御部230は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサが記憶部206に格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、制御部230は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0092】
[制御部の処理内容]
以下、制御部230の制御内容について説明する。制御部230は、飛行体100が90度のピッチアップ状態にあるときに、プロペラアクチュエータ212を制御することでプロペラ110を駆動させる。これによって、飛行体100は、テールシッタ方式のVTOL(Vertical Take Off and Landing)無人機のように離陸する。テールシッタ方式とは、90度のピッチアップ状態から離陸し、一定の高度で機首を水平に戻して翼が発生する揚力で飛行する飛行方式である。
【0093】
このようなテールシッタ方式は、姿勢変化が大きいため、姿勢誤差の計算にZYXオイラーを用いると離着陸時にZ軸がプラスマイナス90度の時に特異姿勢となり表現ができなくなる。また、鳥を模倣した飛行では、大きな姿勢変動が起こる蓋然性が高くなるため、特異姿勢がない姿勢表現が必要である。この問題を解決するため、姿勢誤差の計算にクォータニオンを採用する。クォータニオンは、三次元の単位ベクトルrとその回転角度ζを使って数式(1)で表される。
【0094】
【数1】
【0095】
目標姿勢をqとし、現在姿勢をqとすると、目標姿勢と現在姿勢の偏差qはクォータニオン行列を用いると、数式(2)で表される。
【0096】
【数2】
【0097】
偏差qは、機体の現在姿勢を目標姿勢に近づけるために、現在の機体固定座標系において、どの軸周りにどれだけ回転すればよいか、ということを示している。例えば、制御部230は、qのベクトル部qex,ey,ezを機体固定座標X、Y、Z軸に対応させてフィードバック制御を行う。
【0098】
図13は、クォータニオンフィードバックを用いた姿勢制御系の一例を示す図である。
例えば、制御部230は、ツイストアクチュエータ216を制御して、飛行体100のX軸における姿勢を制御する。また、制御部230は、昇降舵アクチュエータ220を制御して、飛行体100のZ軸における姿勢を制御する。また、制御部230は、方向舵アクチュエータ222を制御して、飛行体100のY軸における姿勢を制御する。
【0099】
制御部230は、各軸に対応したアクチュエータをPID(Proportional-Integral-Differential Controller)制御を行う。PID制御は、数式(3)~(5)で表される。
【0100】
【数3】
【0101】
【数4】
【0102】
【数5】
【0103】
式中のδは、ツイストの舵角、すなわちツイスト角度αtwiを表しており、δは、昇降舵の舵角を表しており、δは、方向舵の舵角を表している。Κは比例ゲインを表し、Κは積分ゲインを表し、Κは微分ゲインを表している。Κは機体のジャイロモーメントを補正するためのゲインである。
【0104】
軸及びZ軸の制御には、右辺の第三項にプロペラジャイロ効果の影響を考慮した補正項を追加している。ωは、機体がX軸周りに高速で回転することは少ないため、十分小さいとして無視している。
【0105】
例えば、制御部230は、図13に示すように、飛行体100の現在位置と目標位置との誤差距離を用いて目標姿勢を計算する。そして、制御部230は、計算した目標姿勢を基に、ツイストアクチュエータ216、昇降舵アクチュエータ220、及び方向舵アクチュエータ222を制御して、飛行体100の姿勢を制御する。なお、目標姿勢は、コマンドとして外部装置から指示されてもよい。
【0106】
[制御部の処理フロー]
以下、制御部230の一連の処理の流れをフローチャートを用いて説明する。図14は、制御部230の一連の処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定の周期で繰り返し行われてよい。
【0107】
まず、制御部230は、通信部202を介して外部装置からコマンドを取得する(ステップS100)。コマンドには、例えば、飛行体100の取るべき姿勢、すなわち目標姿勢qが含まれる。
【0108】
次に、制御部230は、検出部204の検出結果をもとに、飛行体100の現在姿勢qを計算し、計算した現在姿勢qと目標姿勢qとの偏差qを計算する(ステップS102)。偏差qには、機体固定座標X、Y、Z軸に対応したクォータニオンqex,ey,ezが含まれる。
【0109】
次に、制御部230は、計算した偏差qを基に、ツイストの舵角δ、昇降舵の舵角δ、方向舵の舵角δを制御量として、PID制御によって計算する(ステップS104)。
【0110】
次に、制御部230は、計算した各舵角δ、δ、δに基づく制御信号を各アクチュエータに送り、各アクチュエータを制御する(ステップS106)。これによって本フローチャートの処理が終了する。
【0111】
図15は、飛行体100の飛行の様子を模式的に示す図である。図示の例では、一定の高度で水平飛行している飛行体100が着陸するときの様子を表している。図中Gは、目標とする着陸地点である。着陸地点Gは、一次元の点であってもよいし、二次元の面であってもよいし、三次元の立体的な空間であってもよい。
【0112】
例えば、時刻t1の時点で、通信部202が、外部装置から飛行体100を着陸させるためのコマンドを受信したとする。この場合、制御部230は、スイープアクチュエータ214を制御してモーフィング翼140をヨー軸Z周りに回動させることで、モーフィング翼140を機体の前方に移動させる。これによって、飛行体100の機首が上がる。
また、制御部230は、フォールドアクチュエータ218を制御してモーフィング翼140を更にピッチ軸Y方向にモーフィング翼140を延伸させ、複数の風切羽160の長手方向同士のなす角度を大きくし、隙間を形成させる。また、制御部230は、昇降舵アクチュエータ220を制御して、飛行体100の機首を上げる。これによって、飛行体100は、時刻t2、t3、t4のように、機体を持ち上げながら、90度のピッチアップ状態へと遷移する。この結果、飛行体100は、機体全体の抗力が大きくなるため、速やかに減速することができる。また、減速時に風切羽160の間に隙間を形成させるため、失速を抑制することができる。制御部230は、飛行体100がピッチアップ状態となった場合、プロペラアクチュエータ212を制御して、飛行体100をホバリングさせながら着陸地点Gに降下させる。
【0113】
以上説明した制御部の処理内容によれば、モーフィング翼140がピッチ軸Y方向に延伸するのに応じて、そのモーフィング翼140の風切羽160同士のなす角度を大きくする。これによって、風切羽160の間に隙間が形成されるため、隙間に気流を逃がすことができ、失速を抑制することができる。この結果、飛行体100の飛行性能を向上させることができる。
【0114】
また、上述した制御部の処理内容によれば、モーフィング翼140をピッチ軸Y方向に伸縮させるリンク機構に加えて、更に、モーフィング翼140をヨー軸Z周りに回動させ、モーフィング翼140を機体の前後方向に移動させるスイープ機構と、モーフィング翼140をピッチ軸Y周りに回動させ、飛行体100に対してモーフィング翼140を内旋または外旋させるツイスト機構とを有することで、モーフィング翼140の翼面積や形状の変化量を大きくすることができる。この結果、揚力やモーメントの変化が大きくなり、飛行体100の機敏性を向上させることができる。
【0115】
なお、上述したモーフィング翼140は、スイープ動作、ツイスト動作、及びフォールド動作のそれぞれについて、両翼対称または非対称に行うことができる。また、モーフィング翼140は、飛行構造への適用だけでなく、風力または潮流発電プレードや、その他流体から力を受ける構造に適用可能である。
【0116】
<制御の第2例>
以下、制御の第2例について説明する。制御の第2例では、深層強化学習を用いて、飛行体100の姿勢情報や速度などを基に、スイープ機構、ツイスト機構、及びリンク機構のそれぞれの制御量を決定する点で上述した第1実施形態と相違する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と共通する点については説明を省略する。なお、制御の第2例の説明において、第1実施形態と同じ部分については同一符号を付して説明する。
【0117】
深層強化学習の一つには、例えば、DQN(Deep Q-Network)が含まれる。DQNとは、Q学習と呼ばれる強化学習において、ある時刻tのある環境状態sの下で、ある行動aを選択したときの価値を関数として表した行動価値関数Q(s、a)を、ニューラルネットワークに近似関数として学習させる手法である。
【0118】
図16は、制御の第2例の飛行制御装置200Aの構成の一例を示す図である。制御の第2例の飛行制御装置200Aでは、記憶部206Aにモデル情報300が格納される。
【0119】
モデル情報300は、Q学習によって学習されたモデルMDLを定義した情報(プログラムまたはデータ構造)である。モデルMDLは、例えば、複数の畳み込み層と、それら複数の畳み込み層の出力結果を一つに統合する全結合層とを含むニューラルネットワークによって実現されてよい。
【0120】
モデル情報300には、例えば、各ニューラルネットワークを構成する入力層、一以上の隠れ層(中間層)、出力層の其々に含まれるユニットが互いにどのように結合されるのかという結合情報や、結合されたユニット間で入出力されるデータに付与される結合係数などの各種情報が含まれる。結合情報とは、例えば、各層に含まれるユニット数や、各ユニットの結合先のユニットの種類を指定する情報、各ユニットを実現する活性化関数、隠れ層のユニット間に設けられたゲートなどの情報を含む。ユニットを実現する活性化関数は、例えば、正規化線形関数(ReLU関数)であってもよいし、シグモイド関数や、ステップ関数、その他の関数などであってもよい。ゲートは、例えば、活性化関数によって返される値(例えば1または0)に応じて、ユニット間で伝達されるデータを選択的に通過させたり、重み付けたりする。結合係数は、例えば、ニューラルネットワークの隠れ層において、ある層のユニットから、より深い層のユニットにデータが出力される際に、出力データに対して付与される重みを含む。また、結合係数は、各層の固有のバイアス成分などを含んでもよい。
【0121】
モデルMDLは、例えば、状態変数sが入力されると、行動価値Q(s、a)を出力するように学習される。
【0122】
状態変数sは、例えば、上述した飛行体100の現在姿勢qや目標姿勢q、或いはそれらの偏差qである。また、状態変数sには、姿勢や偏差に代えて、或いは加えて、飛行体100の速度などが含まれてよい。また、検出部204にひずみを検出する光ファイバセンサや圧力を検出する圧力センサが含まれている場合、状態変数sには、それらセンサから取得可能なひずみや圧力が含まれてよい。ひずみや圧力を含む状態変数sは、「変位情報」の一例である。
【0123】
行動aは、例えば、スイープ機構の制御量、ツイスト機構の制御量、リンク機構の制御量、プロペラ110の回転速度、昇降舵の舵角、方向舵の舵角などである。すなわち、行動aは、駆動部210の各アクチュエータの操作量である。また、行動aは、PID制御の比例ゲインΚPや、積分ゲインΚI、微分ゲインΚD、補正ゲインΚjであってもよい。また、行動aは、PID制御やホバリング制御といった種々の制御のうち、いずれの制御を行うのか、或いは行わないのか、といったことを表す指標値であってもよい。
【0124】
Q学習は、例えば、モーフィング翼140やプロペラ110、昇降舵、方向舵が理想的な状態をとる場合に報酬を高くして、モデルMDLの重みやバイアスを学習する。例えば、決められた着陸地点Gの上空において、飛行体100の姿勢が90度のピッチアップ姿勢であり、飛行体100の速度が静止と見做せる程度の速度にあるときには報酬を高くしてよい。一方、飛行体100が地面や木々に接触したり、決められていた高度から逸脱したりする状態にあるときには、報酬を低く(例えばゼロ)にしてよい。
【0125】
制御部230は、このように行動aに応じて報酬が与えられるように学習されたモデルMDLに対して、飛行体100の現在姿勢qや目標姿勢qなどを状態変数sとして入力する。これら状態変数sが入力されたモデルMDLは、報酬が最も高くなりやすい各アクチュエータの操作量を行動価値Q(s、a)として出力する。
【0126】
制御部230は、モデルMDLによって出力された各アクチュエータの操作量を基に、アクチュエータを制御することで、飛行体100を飛行させる。
【0127】
以上説明した制御の第2例によれば、予めQ学習によって学習されたモデルMDLを利用して各アクチュエータを制御するため、鳥の飛行方法により近づけることできる。この結果、飛行体100の機敏性を更に向上させることができる。
【0128】
また、上述した制御の第2例によれば、スイープ機構、ツイスト機構、及びリンク機構による飛行動作において、入力とその入力に対する応答としての運動との関係に大きな非線形性を伴うものの、非線形性のある環境下でも適した行動を出力できるようにモデルMDLを学習させることができるため、従来制御では困難であった飛行方式を採用することができる。
【0129】
<その他の実施形態(変形例)>
以下、その他の実施形態(変形例)について説明する。上述した実施形態では、飛行体100が、プロペラ110と、垂直尾翼120と、水平尾翼130と、モーフィング翼140と、飛行制御装置200とを備えるものとして説明したがこれに限られない。例えば、飛行体100は、プロペラ110、モーフィング翼140、及び飛行制御装置200のみを備えてもよい。この場合、飛行制御装置200は、ツイスト機構を駆動して、飛行体100のロール軸Xの姿勢を制御したり、スイープ機構を駆動して、飛行体100のピッチ軸Yの姿勢を制御したりしてよい。
【0130】
以上説明したように、本実施形態に係るモーフィング翼140によれば、前翼カバー180及び風切羽160が流線形である。これにより、空力性能を向上し、より飛行性能に優れたモーフィング翼140とすることができる。更に、リンク機構を格納した時、風切羽160が隣り合う風切羽160の内部に格納される。これにより、リンク機構を格納した時のモーフィング翼140の大きさを最小限にすることができる。よって、より運搬性を向上することができる。
【0131】
また、風切羽160は、初列リンク及び連結部材156又は前初列リンク154及び後初列リンクにおいてそれぞれ回動可能に取り付けられる。このように1つの風切羽160がリンク機構における二か所に取り付けられることで、風切羽160が不規則に動くことをリンク機構によって規制することができ、かつ、リンク機構によって風切羽160の位置及び向きを制御することができる。
【0132】
また、初列リンクに設けられる第1前翼カバー181と、次列リンク152に設けられる第2前翼カバー182と、を備える。これにより、前翼カバー180がリンク機構の展開及び格納に追従することができる。更に、第1前翼カバー181と第2前翼カバー182との間に設けられる第3前翼カバー183を備える。これにより、リンク機構が展開したとき、前翼カバー180に隙間が生じることを防ぐことができる。よって、モーフィング翼140まわりの空気の流れが乱れることを防ぐことができる。よって、より空力性能の向上に寄与することができる。
【0133】
また、リンク機構の展開時において、初列風切160wにおいて隣り合う風切羽160の長手方向同士がなす角度が、第1方向に位置する風切羽160の長手方向同士ほど大きい。言い換えれば、第2方向の側に位置する風切羽160ほど、隣り合う風切羽160の長手方向同士がなす角度が小さい。このことで、第2方向の側において風切羽160同士の間に隙間が生じて、揚力が低下することを防ぐことができる。
また、初列風切160wに位置する風切羽160は、第1方向の側に位置する風切羽160ほど、隣り合う風切羽160の長手方向同士がなす角度が大きい。よって、初列風切160wの第1方向側の端部に位置する風切羽160は、長手方向が第1方向の側に向き、短手方向が前方から後方に向かう方向に位置する。これにより、展開した状態におけるモーフィング翼全体の大きさを大きくすることができる。よって、より揚力を向上することができる。
【0134】
また、初列風切160wにおける風切羽160は、リンク機構が展開するのに応じて、連結部材156を介して連結された隣り合う風切羽160の長手方向とのなす角度が大きくなるように構成される。つまり、リンク機構が格納したときは、隣り合う風切羽160の長手方向とのなす角度は小さくなる。これにより、リンク機構が格納したときの初列風切160wの収まりをよくすることができる。よって、格納時のモーフィング翼140の全体の大きさを小さくし、運搬性の向上に寄与することができる。
【0135】
また、リンク機構の展開時において、第1方向の側の端部に位置する複数の風切羽160が、前方から後方に向けて流線形である。これにより、展開状態のモーフィング翼140について、揚力を最大限確保することができる。更に、隣り合う風切羽160との間に隙間を備える。これにより、前記隙間に気流を逃がすことで、翼の端部において発生する空気の流れの乱れを抑え、失速を防ぐことができる。よって、安定した飛行に寄与することができる。
【0136】
また、第1方向の側の端部に位置する複数の風切羽160が、弾性変形する。これにより、モーフィング翼140の展開時において、モーフィング翼140の端部における流れによって受ける力に対して受動的に変形する。これにより、翼の端部において発生する空気の流れの乱れを抑えることができる。よって、安定した飛行に寄与することができる。
【0137】
また、制御部230は、飛行体100が着陸する際に、駆動部210を制御してリンク機構を第1方向に延伸させる。これにより、着陸時における飛行体100の揚力を確保し、安定した着陸に寄与することができる。
【0138】
また、飛行の制御に深層強化学習を用いる。これにより、飛行現場の環境に応じた飛行制御を行うことで、より効率的かつ安全に飛行することができる。
【0139】
また、飛行の制御にモーフィング翼140のひずみ又は圧力のうち少なくとも一方を含む変位情報を用いる。飛行体100の姿勢が変化する前に、モーフィング翼140の変位情報を取得して制御を行うことで、より制御を機敏に行うことができる。よって、より機動性の向上に寄与することができる。
【0140】
また、飛行体100が着陸する際に、リンク機構を伸縮させる駆動部210を制御してリンク機構を延伸させる。これにより、より鳥に近い飛行及び着陸を行うことができる。
【0141】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、モーフィング翼140は、UAVや旅客機など、あらゆる飛行翼構造へ適用してよい。
飛行体100における推力装置は、プロペラ110に限らない。例えば、ジェットエンジン等を用いてもよい。
次列風切170wにおける風切羽160は、隣り合う風切羽160と略平行に位置すると記載したが、これに限らない。次列風切170wにおける風切羽160は、モーフィング翼140全体の風切羽160の位置関係を考慮した上で、初列風切160wと同様に隣り合う風切羽160に対して角度を有していてもよい。この場合は、第2方向の側に位置する風切羽160ほど、前後方向に近い向きとなるようにすることが好ましい。
【0142】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0143】
100 飛行体
140 モーフィング翼
152 次列リンク
152a 前次列リンク
152b 後次列リンク
154 前初列リンク
160 風切羽
160w 初列風切
170w 次列風切
180 前翼カバー
181 第1前翼カバー
182 第2前翼カバー
183 第3前翼カバー
200 飛行制御装置
200A 飛行制御装置
210 駆動部
230 制御部
MDL モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16