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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】フィラー造粒物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20250911BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20250911BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20250911BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250911BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20250911BHJP
   B01J 2/20 20060101ALI20250911BHJP
   B01J 2/28 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEX
C08J3/12 CEP
C08J3/22 CFD
C08L101/16
C08K3/013
C08K5/10
B01J2/20
B01J2/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021138920
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2023032657
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 朗
(72)【発明者】
【氏名】木谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 理沙
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051989(JP,A)
【文献】特開2000-140604(JP,A)
【文献】特開2010-229305(JP,A)
【文献】特開2002-220549(JP,A)
【文献】特開昭50-075230(JP,A)
【文献】特開2003-073539(JP,A)
【文献】特開2006-328240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C09C 1/00-3/12
C09D 15/00-17/00
C01B 33/20-39/54
C08K
C08L
B29B 7/00-11/14;13/00-15/06
B01J 2/00-2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂に対する溶融混練用原料としてのフィラー造粒物の使用であって、
該フィラー造粒物が、
フィラーと、結着剤と、分散剤を含み、
該フィラーの嵩密度が、0.01kg/L~1kg/Lであり、
該結着剤が、水溶性ポリマーを含み、
該フィラーの含有割合が、該フィラーと該結着剤と該分散剤との合計量100重量部に対して、80重量部~99.9重量部であり、
該水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド系ポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリル酸部分中和物、架橋型ポリアクリル酸系ポリマー、ポリビニルピロリドン系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアミド系ポリマー,ポリアミン系ポリマー、水溶性ポリアミド系ポリマー、水溶性ポリエステル系ポリマー、水溶性セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
該フィラー造粒物の木屋式硬度計における破壊応力が、1kg~5kgである、
フィラー造粒物の使用。
【請求項2】
前記フィラーが、粉体状である、請求項1に記載のフィラー造粒物の使用。
【請求項3】
前記分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のフィラー造粒物の使用。
【請求項4】
前記分散剤の含有割合が、前記フィラーと前記結着剤と前記分散剤との合計量100重量部に対して、0.1重量部~15重量部である、請求項1から3のいずれかに記載のフィラー造粒物の使用。
【請求項5】
前記生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂および天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から4のいずれかに記載のフィラー造粒物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラー造粒物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生分解性樹脂が環境対応の観点から注目されている。生分解性樹脂を含む樹脂組成物においては、フィラーを添加して、高機能化が図られることがある。フィラーは粉体であることも多いが、粉体状のフィラーは、一般に嵩密度が小さく、移送における流動性が悪いために、輸送、貯蔵、梱包、加工機への供給安定性、等のハンドリング上の問題や、作業環境や人体に対する安全性において解決すべき課題が多い。また、粉体状フィラーは、装置(例えば、押出機)へ供給に、供給口でのフィードネックが生じやすく、また、吐出量が上がらず、フィラー濃度が高い樹脂組成物を安定に、高い生産速度で得ることが困難となることがある。特許文献1では、粉砕処理をしたセルロース繊維を水溶性の熱可塑性重合体によって繊維成形体とし、同繊維成形体を熱可塑性樹脂に溶融混練して樹脂組成物を得る方法が示されている。しかしながら当該樹脂組成物では、繊維直径が1mm以上の凝集塊の有無が分散性の尺度となっているレベルであって、好ましいフィラー分散性が得られ難いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-105203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、樹脂組成物を調製する際のフィラーの供給安定性および供給精度を向上させ得、高い生産性で安定的に樹脂組成物を得ることを可能とするフィラー造粒物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィラー造粒物は、フィラーと、結着剤と、分散剤を含み、該フィラーの嵩密度が、0.01kg/L~1kg/Lであり、該結着剤が、水溶性ポリマーを含み、該フィラーの含有割合が、該フィラーと該結着剤と該分散剤との合計量100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である。
1つの実施形態においては、上記フィラーが、粉体状である。
1つの実施形態においては、上記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド系ポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリル酸部分中和物、架橋型ポリアクリル酸系ポリマー、ポリビニルピロリドン系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアミド系ポリマー,ポリアミン系ポリマー、水溶性ポリアミド系ポリマー、水溶性ポリエステル系ポリマー、水溶性セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記分散剤の含有割合が、前記フィラーと前記結着剤と前記分散剤との合計量100重量部に対して、0.1重量部~15重量部である。
本発明の別の局面によれば、上記フィラー造粒物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記フィラーと、上記結着剤と、上記分散剤とを混合する混合工程と、該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、生分解性樹脂に対する溶融混練用原料としての、上記フィラー造粒物の使用が提供される。
1つの実施形態においては、上記生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂および天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂組成物を調製する際のフィラーの供給安定性および供給精度を向上させ得、高い生産性で安定的に樹脂組成物を得ることを可能とするフィラー造粒物を提供することができる。本発明のフィラー造粒物は、生分解性樹脂を含む樹脂組成物を得る際に、特に好ましく用いることができ、生分解性樹脂由来の特性が阻害されることなく、効率的にフィラー由来の特性が付与された樹脂組成物が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.フィラー造粒物の概要
本発明のフィラー造粒物は、フィラーと、結着剤と、分散剤とを含む。フィラーは、嵩密度が0.01kg/L~1kg/Lである。代表的には、フィラーは粉体状である。結着剤は、水溶性ポリマーを含む。上記フィラーの含有割合は、フィラーと結着剤と分散剤との合計量100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である。
【0008】
本発明のフィラー造粒物は、フィラー含有樹脂組成物の製造で使用され、樹脂組成物の溶融混練時に添加して用いられ得る。このようにして、本発明のフィラー造粒物を用いれば、フィラー由来の機能を有するフィラー含有樹脂組成物が得られ得る。本発明のフィラー造粒物は、フィラーが結着剤によって粒状化された構成であり、上記フィラー造粒物を用いて上記フィラー含有樹脂組成物を調製すれば、当該樹脂組成物の組成安定性と生産性向上を図ることができる。具体的には、上記フィラー造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該フィラー造粒物を用いれば、フィラー含有樹脂組成物の組成精度(組成安定性)と生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができ、さらに、設備の切り替え清掃の時間を大幅に短縮できる。また、分散剤を添加することにより、多量のフィラーを含みながらも優れた生産効率で製造され得、かつ、品質安定性(形状安定性、ペレット硬度の均一性、低微粉混入)に優れるフィラー造粒物を得ることができる。分散剤を含むフィラー造粒物は、高濃度にフィラーを含有するにも拘わらず、当該フィラー造粒物を使用して得られたフィラー含有樹脂組成物は、優れたフィラー分散性を有する。
【0009】
1つの実施形態においては、上記フィラー含有樹脂組成物は、生分解性樹脂を含む(以下、生分解性樹脂を含むフィラー含有樹脂組成物を、フィラー含有生分解性樹脂組成物ということもある)。本発明のフィラー造粒物は、結着剤として水溶性ポリマーを含むため、当該フィラー造粒物を用いれば、フィラーと生分解性樹脂との親和性を高めることができる。このため、上記フィラー造粒物と、生分解性樹脂とを併用することにより、高フィラー含有量であっても、フィラー分散性が顕著に優れるフィラー含有生分解性樹脂組成物を、高い組成精度と高生産性で得ることができる。上記水溶性ポリマーは、経時において、生分解性樹脂の分解とともに消失するため、環境負荷の点で有利である。
【0010】
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物は、半湿式造粒法により製造される。半湿式造粒法によれば、上記効果が顕著となる。
【0011】
上記フィラー造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、上記フィラー造粒物は円筒状(ペレット状)である。
【0012】
上記フィラー造粒物が円筒状である場合、上記フィラー造粒物の直径は、例えば、2mm~5mmである。また、フィラー造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~7mmである。このような形状であれば、樹脂(特に生分解性樹脂)に好ましく組み合わせて用いられる得るフィラー造粒物を得ることができる。フィラー造粒物の直径は、造粒の際のディスクプレートのダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。フィラー造粒物を、組み合わせて用いられる樹脂(特に生分解性樹脂)のペレットサイズに合わせることにより、ハンドリング性が向上し、また、溶融コンパウンドにおけるフィラーの分散性が良くなる。
【0013】
上記フィラー造粒物の木屋式硬度計における破壊応力は、好ましくは0.05kg~10kgであり、より好ましくは0.5kg~7kgであり、さらに好ましくは1kg~5kgである。このような範囲であれば、ハンドリング性とフィラー分散性に優れる。ここで、破壊応力とは、20粒(好ましくは25粒)以上について測定した平均の崩壊応力を示す。
【0014】
上記フィラー造粒物の水分量は、任意の適切な水分量とされ得る。上記フィラー造粒物の水分量は、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以下である。
【0015】
上記フィラー造粒物の嵩密度は、フィラーの種類に応じて、任意の適切な嵩密度とされ得る。フィラーが、ミネラル(天然鉱物)の場合、上記フィラー造粒物の嵩密度は、好ましくは0.5kg/L~2.0kg/Lである。嵩密度を上げることで、樹脂(特に生分解性樹脂)との溶融混練を行う際に、フィラー造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。
【0016】
A-1.フィラー
上記のとおり、フィラーの嵩密度は、0.01kg/L~1kg/Lである。フィラーの嵩密度は、好ましくは0.1kg/L~0.8kg/Lであり、より好ましくは0.2kg/L~0.6kg/Lである。フィラーの嵩密度は、升を用いて、フィラーを当該升に自然落下させてすり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで算出される(単位:kg/L)。上記のとおり、1つの実施形態においては、上記フィラーは粉体状である。本発明のフィラー造粒物においては、フィラー(特に、嵩密度が低く粉体状であるフィラー)について、供給安定性および供給精度を向上させ得る点で有利であり、高い生産性で安定的にフィラー含有樹脂組成物を得ることが可能となる。上記フィラーのサイズは、任意の適切なサイズとすることができる。フィラーの数平均粒子径は、例えば、10nm~100μmである。フィラーのサイズはレーザー回折法により求めることができる。
【0017】
上記のとおり、上記フィラーの含有割合は、フィラーと結着剤と分散剤との合計量100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である。このような範囲であれば、フィラー由来の特性が効率的に付与されたフィラー含有樹脂組成物を得ることができる。上記フィラーの含有割合は、フィラーと結着剤と分散剤との合計量100重量部に対して、好ましくは82重量部~99重量部であり、より好ましくは85重量部~98重量部であり、さらに好ましくは87重量部~97重量部であり、さらに好ましくは90重量部~96重量部である。1つの実施形態においては、上記フィラーの含有割合は、フィラー造粒物100重量部に対して、90重量部~99.9重量部である。
【0018】
上記フィラー造粒物中のフィラーの体積含有割合は、好ましくは40体積%~95体積%であり、より好ましくは50体積%~90体積%、さらに好ましくは60体積%~85体積%である。
【0019】
上記フィラーとしては、フィラー含有樹脂組成物および/または当該フィラー含有樹脂組成物から得られる成形体に要求される特性に応じて、任意の適切なフィラーを用いることができる。
【0020】
上記フィラーによって付与できる特性・効果としては、例えば、増量化または軽量化、補強(高剛性化、高弾性率化、高強度化)、寸法安定性、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度、熱伝導性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、電磁波吸収性、光反射性、光散乱性、熱線輻射性、難燃性、放射線防護、紫外線防護、脱湿、脱水、脱臭、ガス吸収、ガスバリア、アンチブロッキング、吸油、抗菌性、生分解促進性、バイオ度向上(天然物由来成分量の比率向上)等が挙げられる。
【0021】
例えば、増量の目的では、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレーが好適である。補強の目的では、ワラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、繊維状マグネシウム化合物(MOS)、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー等が好適である。抗菌付与の目的では、カテキン、銀イオン担持ゼオライト、銅フタロシアニン、等が好適である。ガスバリア性付与の目的では、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラー、等が好適である。軽量化の目的では、シリカバルーン、ガラスバルーン、セノスフィア、パーライト、シラスバルーン、等のバルーン系が好適である。導電性付与の目的では、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔、が好適である。磁性付与の目的では、各種磁性材料、各種フェライト系、磁性酸化鉄、サマコバ(Sm-Co)、Nd-Fe-B、等が好適である。熱伝導性付与の目的では、アルミナ、AlN、BN、BeO、等が好適である。圧電性付与の目的では、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、等が好適である。制振性付与の目的では、マイカ、黒鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、炭素繊維、フェライト、等が好適である。遮音性付与の目的では、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。摺動性付与の目的では、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、タルク、高分子量ポリエチレン、等が好適である。電磁波吸収付与の目的では、電磁波吸収フェライト、黒鉛、木炭粉、カーボンマイクロコイル(CMC)、カーボンナノチューブ(CNT)、PZT、等が好適である。光反射、光散乱付与の目的では、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ、等が好適である。熱線輻射付与の目的では、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、MOS、アルミナ、木炭粉末、等が好適である。難燃化の目的では、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、赤燐、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ドーソナイト、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、等が好適である。放射線防護の目的では、鉛粉、硫酸バリウム、等が好適である。「紫外線防護」の目的では、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、等が好適である。脱湿、脱水の目的では、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。脱臭、ガス吸収の目的では、ゼオライト、活性白土、等が好適である。アンチブロッキング(フィルムの圧着防止)の目的では、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、球状微粒子(シリコーンやアクリルビーズ)、等が好適である。吸油(印刷インク吸収、速乾性等)の目的では、毬藻状炭酸カルシウム、毬藻状ゾノトライト、等が好適である。吸水の目的では、吸水用の高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、等が好適である。バイオ度向上の目的には、セルロース系材料(木粉、木繊維、おがくず、木屑、新聞用紙、紙、亜麻、麻、麦わら、もみ殻、ケナフ、ジュート、サイザル、ピーナッツの殻、大豆の外皮、等)、でんぷん、天然ゴム、等が好適である。
【0022】
A-2.結着剤
上記のとおり、結着剤は、水溶性ポリマーを含む。結着剤は、粉体状のフィラーをつなぎ合わせ、適度な崩壊応力を有する造粒物を得るために使用される。1つの実施形態においては、単独あるいは複数の水溶性ポリマーの組み合わせとすることができる。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド系ポリマー(例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO))、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリル酸部分中和物(例えば、低分子ポリアクリル酸ナトリウム、高分子ポリアクリル酸ナトリウム)、架橋型ポリアクリル酸系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、ポリビニルアミド系ポリマー,ポリアミン系ポリマー、水溶性ポリアミド系ポリマー、水溶性ポリエステル系ポリマー、水溶性セルロース(例えば、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))、多糖類(例えば、タンパク質、デンプン、デキストリン、プルラン等)等が挙げられる。水溶性ポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、水溶性(すなわち、水に対して可溶である性質)とは、25℃の水に10重量%以上溶解させることが可能であることを意味する。
【0023】
結着剤中、上記水溶性ポリマーの含有割合は、結着剤100重量部に対して、好ましくは80重量部以上であり、より好ましくは90重量部以上であり、さらに好ましくは95重量部以上であり、特に好ましくは100重量部である。
【0024】
1つの実施形態においては、結着剤を含むポリマー液(ポリマー溶液、ポリマー分散液)を用いてフィラー造粒物が製造される。ポリマー液はフィラー表面を効率的に、かつ均一にコーティングできるために、粉落ちが少なく、崩壊硬度が大きく、嵩密度が大きなフィラー造粒物を得ることができる。さらに、フィラー含有樹脂組成物における、フィラーの分散性を大きく向上させることができる。
【0025】
上記結着剤(または、結着剤を含むポリマー液)として、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH;クラレ社製のエバール(登録商標))、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH;三菱ケミカル社製のニチゴーGポリマー(登録商標))、ポリビニルピロリドン(Kシリーズ;日本触媒社製)、東レ社製のAQナイロン(登録商標;水溶性ポリアミド)、イーストマンケミカル社製のイーストマンAQ(登録商標;水性スルホポリエステル分散液)、Ascend Performanceから販売されている、水で希釈されて水性ポリマー分散液を形成する、ヘキサン-1、6-ジアミンおよびアジピン酸の塩(AH塩)、互応化学社製のプラスコート(登録商標;水溶性ポリエステル)サイデン化学社製のサイデングルー(登録商標;デキストリン系接着剤)等が挙げられる。
【0026】
上記結着剤の含有割合は、上記フィラーのサイズ、形状、吸水性、吸油性、嵩密度等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。上記結着剤の含有割合は、上記フィラーと結着剤と分散剤との合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、好ましくは0.5重量部~18重量部であり、より好ましくは1重量部~18重量部であり、さらに好ましくは3重量部~15重量部である。このような範囲であれば、フィラー同士の結着力が好ましく発揮され、ハンドリング性に優れたフィラー造粒物を得ることができる。
【0027】
A-3.分散剤
上記分散剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。分散剤(界面活性剤)における親水性/疎水性バランスは、分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。分散剤を使用することにより、フィラー造粒物の生産性(吐出速度)を向上させることができ、さらには、加工機の清掃性を高めることができる。
【0028】
また、分散剤を含むフィラー造粒物を用いて、樹脂組成物の溶融混練を行い、フィラー含有樹脂組成物を製造すれば、分散剤の界面活性剤的作用により、フィラー分散性を高めることができる。
【0029】
上記分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸アマイド、アクリルアミド、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
【0030】
1つの実施形態においては、分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールと炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸のエステル類が用いられる。
【0032】
上記脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは 1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。上記脂肪酸アマイドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類が挙げられる。
【0033】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0034】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、太陽化学社製の「チラバゾールP-4」、「チラバゾールVR-01」、「チラバゾールVR-08」(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、「チラバゾールH-818」(縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステル)、等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
上記分散剤の含有割合は、上記フィラーと結着剤と分散剤との合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~15重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部であり、さらに好ましくは1重量部~5重量部である。
【0036】
A-4.その他の成分
上記フィラー造粒物は、必要に応じて、任意の適切なその他の成分(添加剤)さらに含み得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、脱酸素剤、着色剤等が挙げられる。添加剤は、液体、粉体、ペレット、顆粒の形態、またはマスターバッチ等の形態で、フィラー造粒時、あるいは樹脂コンパウンドの工程で配合することができる。1つの実施形態においては、上記添加剤は、ポリマー液にブレンドし、半湿式造粒機で造粒処理してフィラー造粒物に配合することができる。
【0037】
B.フィラー造粒物の製造方法
上記フィラー造粒物は、任意の適切な方法により、製造することができる。上記フィラー造粒物は、例えば、上記フィラーと、上記結着剤と、上記分散剤とを含む混合物を、半湿式造粒法に供することにより得ることができる。
【0038】
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物の製造方法は、フィラーと、結着剤と、分散剤とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。1つの実施形態においては、混合工程において、結着剤は、結着剤を含む水系液(水溶液または水系分散液)として添加される。また、1つの実施形態においては、上記混合工程においては、分散剤がさらに添加される。
【0039】
結着剤を含む水系液が水溶液(均一系)である場合、結着剤を含む水系液(水溶液)中の結着剤の含有割合は、水系液100重量部に対して、好ましくは1重量部~70重量部であり、より好ましくは3重量部~50重量部であり、さらに好ましくは5重量部~30重量部である。このような範囲であれば、フィラー同士が好ましく結着して構成されたフィラー造粒物を安定して得ることができる。
【0040】
結着剤を含む水系液が水系分散液(不均一系)である場合、結着剤を含む水系液(水系分散液)中の結着剤の固形分濃度は、好ましくは1重量%~70重量%であり、より好ましくは3重量%~60重量%であり、さらに好ましくは5重量%~50重量%である。このような範囲であれば、水系液とフィラーとを混合する際に、好ましく粘度調整され、結着剤の分散性に優れた混合液を得ることができる。このような混合液を用いれば、フィラー同士が好ましく結着して構成されたフィラー造粒物を安定して得ることができる。
【0041】
結着剤を含む水系液の混合割合は、フィラー100重量部に対して、好ましくは1重量部~70重量部であり、より好ましくは5重量部~50重量部であり、さらに好ましくは10重量部~30重量部である。
【0042】
混合工程においては、その他の成分(例えば、上記添加剤)、溶媒(好ましくは、水)等をさらに混合してもよい。1つの実施形態においては、これらの成分を添加することにより、結着剤を含む水系液と粉体状熱可塑性ポリマーとフィラーとの混合が適正化される。添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
【0043】
混合工程においては、常温下で各成分を配合し、任意の適切な混合機を用いて、均一化することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。
【0044】
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。好ましくは、フィラーの表面が結着剤で十分かつ均一に被覆されるように、混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
【0045】
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。生産性と得られるフィラー造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
【0046】
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。ここで、ディスク孔にはテーパーが設けられており、上記混合物が孔を通過する過程で、ダイス孔の外周から圧縮応力が与えられる仕組みになっている。このテーパーのついた孔の長さを有効長と呼ぶ。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状のフィラー造粒物を得ることができる。造粒物前駆体(結果としてフィラー造粒物)の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。ディスクの裏面とカッター間の距離は通常、1mm~30mmの範囲であり、好ましくは5mm~20mmの範囲であり、より好ましくは5mm~10mmの範囲である。
【0047】
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
【0048】
乾燥工程における乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。乾燥工程後、振動ふるい等で処理を行うことで、微粉を除去したフィラー造粒物が得られ得る。乾燥工程では、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。
【0049】
C.樹脂とフィラー造粒物の溶融コンパウンド
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物は、生分解性樹脂に対する溶融混練用原料として使用される。すなわち、1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物と生分解性樹脂との溶融コンパウンドが提供される。当該生分解性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーまたはコポリマー、あるいは、これらのホモポリマーまたはコポリマーを変性した物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル系樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーまたはンダムポリマー等)、あるいは、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等を挙げることができる。また、天然ゴムを用いてもよい。上記樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶融コンパウンドの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは2軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、2軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練された組成物はペレット化される。
【実施例
【0050】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0051】
[実施例1]
結着剤溶液(ポリビニルアルコールの15%水溶液;クラレ社製、商品名「PVA103」;ケン化度98%以上;表中、「B-1」)22重量部と、分散剤(ポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステル;太陽化学社製、商品名「チラバゾールH818」;表中、「C-1」)3.75重量部とを、1Lのプラ容器に投入し、室温下で攪拌羽根を用いて20分間攪拌して、混合物Aを得た。次いで、粉体用ニーダー(ダルトン社製、商品名「KDHJ-10」;処理量:6L)に、フィラー(マイカ;Chuzhou Grea Minerals Co.社製、商品名「GM-4」;平均粒子径:18μm;表中、「A-1」)100重量部を投入し、回転数30rpmで攪拌羽根を攪拌させながら、混合物Aを当該粉体用ニーダーに投入した。その後、6分間の攪拌処理を行い、混合物Bを得た。
混合物Bを、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ペレット状の造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で4時間乾燥させて、フィラー造粒物MB-1を得た。
【0052】
[実施例2~4]
表1に示すフィラー、結着剤および分散剤を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フィラー造粒物MB-2~MB-4を得た。なお、実施例3については乾燥処理を行わなかった。
【0053】
[比較例1]
結着剤溶液および分散剤を添加せず、フィラー(GM-4)100重量部に水道水20重量部を配合して得られた混合物について、造粒を試みたが、結着力がなく容易に崩壊して造粒物を得ることができなかった。
【0054】
実施例1~4および比較例1で用いた各成分の具体的な内容は、表2に示すとおりである。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
<評価>
実施例1~4および比較例1で得られたフィラー造粒物を下記の評価に供した。結果を表3に示す。

(1)造粒性
得られたフィラー造粒物の確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 直径3mmφの造粒物が得られる。
△: フィラーの造粒物の形態になるが、結着力が不足して、崩壊しやすい。
×: フィラーがダイスに目詰まりする、もしくは、フィラーの結着性がなく、粒状物にならない。

(2)造粒速度
時間当たりのフィラー造粒物の製造速度(kg/Hr)を算出した。

(3)嵩密度
乾燥後のフィラー造粒物を1リットルの升に自然落下させ、すり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで、フィラー造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。

(4)ペレットサイズ
フィラー造粒物を20粒取り出し、ノギスを用いて、粒状物の長さと直径を測定し、平均値を算出した。

(5)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、フィラー造粒物に残存する水分量(単位:重量%)を測定した。

(6)崩壊強度測定
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、乾燥後のフィラー造粒物の崩壊応力(単位:kg)を測定した。測定値はフィラー造粒物25粒の平均値とした。

(7)フィラー濃度
フィラー粒状物を1~3g採取し、電気炉にて、るつぼ内で600℃で3時間保持し、バインダー成分を除去して、重量変化からフィラー造粒物中のフィラー濃度を算出した(単位:重量%)。MB-3(実施例3)については、仕込み組成と水分量から算出した。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示す通り、MB-1~MB-4では、安定したペレット形状、高い造粒速度、適切な硬度のペレット状のフィラー造粒物を得ることができる。
【0060】
[実施例5]
生分解性樹脂(ポリ乳酸(PLA);ネイチャー・ワークス社製、商品名「Ingeo 4032D」;融点155~170℃)67重量部とフィラー造粒物(MB-2)33重量部とを、2軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、樹脂組成物のペレットを製造した。
PLA樹脂とでフィラー造粒物は、それぞれ独立に、重量式フィーダーを介して、定量的に2軸押出機に押出機の最上流部のホッパー位置から投入した。
押出機のシリンダー温度は、押出機の前段部を150℃、中段部を200℃、後段部を200℃に設定した。スクリュー回転数は100rpm、吐出速度は20kg/Hrとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
【0061】
[実施例6]
生分解性樹脂およびフィラー造粒物の配合量を、表4に示す通りとしたこと以外は、実施例5と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。
【0062】
[実施例7]
生分解性樹脂(ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、BASF社製、商品名「エコフレックスF Blend C1200」、MFR:3.8g/10min)60重量部と、フィラー造粒物(MB-3)40重量部とを、2軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM37SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、樹脂組成物のペレットを製造した。フィラー造粒物(MB-3)は水分含有量18重量%のものをそのまま使用した。フィラー造粒物(MB-3)に含まれる水分は70~90℃の温度領域において、でんぷんの可塑剤として作用する。
押出機の中流部のバレル上部にオープンベント口を設け開放脱揮させ、更に、下流部のバレル上部2カ所に、ベント口を2カ所設けて、-90kPaで減圧脱揮を行った。
押出機のシリンダー温度は、押出機の前段部を100℃、中段部を180℃、後段部を180℃に設定した。スクリュー回転数は120rpm、吐出速度は20kg/Hrとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
【0063】
[比較例2]
フィラー造粒物(MB-2)50重量部に代えて、タルク粉末(A-2)50重量部を用い、生分解性樹脂(ポリ乳酸(PLA))の配合量を50重量部としたこと以外は、実施例5と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。
比較例2では、タルク粉末(A-2)が押出機への原料供給用ホッパー内でブリッジを生じ、押出機スクリューへの食い込み不良が生じ、安定に生産することができなかった。
実施例5と比較例2の対比により、フィラー造粒物(MB-2)を使用することにより、タルク粉末(A-2)のフィードネックが解消され、生産性を飛躍的に向上させることができ、同時に樹脂中のフィラー良分散性を同時に満足することができる溶融コンパウンドが可能となることがわかる。
【0064】
<評価>
実施例5~7および比較例2で得られた樹脂組成物のペレットを下記の評価に供した。結果を表4に示す。
(a)樹脂組成物中のおけるフィラーの分散性
樹脂組成物のペレットを熱プレスで圧延し、厚み約0.5mmのシートとする。当該シートを透かして、フィラー凝集物の残存を目視観察し、以下の基準で評価した。
AA: フィラーの凝集物がほとんど観察されない良好な分散性状態
A: 比較的小さなフィラーの凝集が微量残存する状態
BB:比較的小さなフィラーの凝集物がかなり多く残存する状態
B:フィラーの凝集物が大きい状態
(分散状態の序列: AA>A>BB>B (左良好))

(b)樹脂組成物ペレットの造粒性
○: 安定に連続造粒が可能
×: 連続生産不能
【0065】
【表4】
【0066】
表4から明らかなように、本発明によれば、熱可塑性樹脂、特に生分解性樹脂に対して、フィラー分散性に優れる樹脂組成物を得ることができる。