(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】マルチモード光ファイバ、内視鏡システム、および内視鏡システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/07 20060101AFI20250911BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20250911BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20250911BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
A61B1/07 732
A61B1/00 500
A61B1/00 732
G02B6/02 421
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2023546063
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2022052041
(87)【国際公開番号】W WO2022162140
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】102021102091.3
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】316018133
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティテュート フュア フォトニサ テヒノロギエン イー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツィツマー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】シルベイラ,ベアトリツ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-114215(JP,A)
【文献】特表2009-531151(JP,A)
【文献】特表2014-522483(JP,A)
【文献】特表2013-506866(JP,A)
【文献】特開2004-258387(JP,A)
【文献】特表2005-533610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 6/02
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸(2)を有するマルチモード光ファイバであって、クラッディング(12)によって囲まれた単一のファイバコア(11)を有し、
内視鏡システム(13)への接続のための近位端(3)と、
試料(14)への導入のための遠位端(4)と
を備え、
前記遠位端(4)は、
前記光軸(2)に実質的に平行に広がり、前記光軸(2)に対して半径方向に光を透過させるように設計され、実質的に平坦な面、球面の一部分、または放物面の一部分であり、前記ファイバコア(11)の境界面である光透過面(5)を有し、かつ
光反射面(6)であって、好ましくは、前記遠位端(4)における前記光軸(2)、前記光透過面(5)の法線、および前記光反射面(6)の法線が実質的に1つの平面内に位置し、かつ前記光反射面(6)と前記光軸(2)との間の角度が30°と60°の間であるように広がる、光反射面(6)を有する、マルチモード光ファイバ。
【請求項2】
前記光透過面(5)は、前記光軸(2)に平行に広がり、あるいは前記光透過面(5)は、前記光軸(2)に対して2°と10°の間、特には4°~6°の角度にて傾斜している、請求項1に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項3】
前記光反射面(6)と前記光軸(2)との間の角度は、40°と50°の間であり、特には約45°である、請求項1または2に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項4】
前記光透過面(5)と前記光反射面(6)との間に鋭利なエッジ(8)が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項5】
前記光反射面(6)は、実質的に平坦な面、球面の一部分、または放物面の一部分である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項6】
前記光透過面(5)および/または前記光反射面(6)は、特には集束イオンビームによって、前記マルチモード光ファイバ(1)の前記遠位端(4)を研磨および/または切削することによって生成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項7】
前記光反射面(6)は、コーティング、特には誘電体コーティングおよび/または金属コーティングを備える、請求項1~6のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項8】
前記光透過面(5)は、コーティング、特には誘電体コーティングを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項9】
前記マルチモード光ファイバ(1)の直径は、50μmと300μmの間、特には80μmと150μmの間である、請求項1~8のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ。
【請求項10】
試料(14)を検査するための内視鏡システムであって、コヒーレント光源(15)と、光検出器(18)と、請求項1~9のいずれか1項に記載のマルチモード光ファイバ(1)とを備え、前記コヒーレント光源(15)は、前記マルチモード光ファイバ(1)の前記近位端(3)へと光を導入するように配置され、前記光検出器(18)は、前記マルチモード光ファイバ(1)の前記近位端(3)から出射する光を検出するように配置される、試料(14)を検査するための内視鏡システム。
【請求項11】
請求項10に記載の内視鏡システム(13)の作動方法であって、前記コヒーレント光源(15)により前記試料(14)内の多数の対象点(7)を前記マルチモード光ファイバ(1)によって次々に照明して前記マルチモード光ファイバ(1)を通って前記対象点(7)から反射された光を、前記光検出器(18)によって検出する検出工程を備えた、方法。
【請求項12】
前記マルチモード光ファイバ(1)の光透過特性が、前記試料(14)を検査する前に測定および/または計算される、請求項11に記載の
内視鏡システム(13)の作動方法。
【請求項13】
前記マルチモード光ファイバ(1)が、その光軸(2)を中心にして前記試料(14)に対して回転させられ、結果として、前記マルチモード光ファイバ(1)の前記遠位端(4)の周りの円筒状の領域における前記試料(14)の記録が得られる、請求項11~1
2のいずれか1項に記載の
内視鏡システム(13)の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、マルチモード光ファイバ、試料を検査するための内視鏡システム、および内視鏡システムによって試料を検査するための方法に関する。
【0002】
背景
ホログラフィック内視鏡検査と称されるマルチモード光ファイバをプローブとして備える内視鏡システムによる内視鏡検査は、試料の高解像度画像を得る可能性を提供し、このプロセスにおいて、試料に最小限の悪影響しか与えない。ここで考慮される試料は、例えば動物またはヒトであり、例えば、とりわけこれらの試料の脳内のニューロンおよびニューロンネットワークの検査が当てはまる。
【0003】
この点に関し、マルチモード光ファイバの典型的な直径が約100μmにすぎないという事実から、試料への悪影響はわずかである。しかしながら、試料は、マルチモード光ファイバの導入経路に沿ってわずかに損傷を被り、動物またはヒトの例においては、結果として組織に細長い裂け目が生じ、マルチモード光ファイバの直前の組織も導入時の圧力によって損傷する。
【0004】
これらの問題にもかかわらず、試料の良好な画像を得るために、例えば、マルチモード光ファイバの直前の損傷した領域の代わりに、マルチモード光ファイバの前方の短い距離に位置する像面が検査される。このプロセスにおいて、試料の損傷は、検査される像面の領域において、仮にあったとしてもごくわずかである。しかしながら、この点に関し、検査光が試料の一部を通って伝播しなければならず、画像の品質の低下が認められるという問題が生じる。
【0005】
概要
本発明の目的は、前述の欠点を克服するマルチモード光ファイバ、マルチモード光ファイバを備える内視鏡システム、および内視鏡システムによって試料を検査するための方法を提案することである。この目的は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の改良が、従属請求項および以下の説明から明らかになるであろう。
【0006】
本発明の一態様は、内視鏡システムへの接続のための近位端と試料への導入のための遠位端とを備える光軸を有するマルチモード光ファイバに関する。この場合に、遠位端は、光軸に実質的に平行に広がり、光軸に対して半径方向に光を透過するように設計された光透過面を有する。さらに、遠位端は、光反射面であって、好ましくは、遠位端における光軸、光透過面の法線、および光反射面の法線が、実質的に1つの平面内に位置し、かつ光反射面と光軸との間の角度が30°と60°の間であるように広がる、光反射面を有する。本発明のこの態様を、以下に開示されるすべての実施形態と組み合わせることができる。
【0007】
本発明のさらなる態様も、マルチモード光ファイバに関する。この点において、マルチモード光ファイバは、直径が複数の光モードを伝播させることができるように充分に大きいファイバコアを有する光ファイバまたは光導波路を意味すると理解される。当然ながら、これは使用される光の波長に依存し、通常は可視スペクトルの範囲内の光、すなわち約380nm~750nmの範囲内の波長を有する光が使用される。したがって、「マルチモード光ファイバ」という用語の同義語として、ファイバコアが充分に大きな直径を有するという条件で、本発明の文脈内で「光ファイバ」または「光導波路」という用語を使用することも可能である。
【0008】
マルチモード光ファイバは、光軸を有する。直線状の曲がっていないマルチモード光ファイバを仮定すると、光軸は、マルチモード光ファイバの回転対称の軸に相当する。したがって、光軸は、マルチモード光ファイバの長手方向に延び、結果として、マルチモード光ファイバは、光軸に垂直な断面において円形に見える。
【0009】
さらに、マルチモード光ファイバは、クラッディングによって囲まれた単一のファイバコアを有する。この場合、ファイバコアは、光軸を含むマルチモード光ファイバの最も内側の領域を指す。ファイバコアを円筒状に取り囲むクラッディングの結果として、ファイバコアにおける光の全反射は、マルチモード光ファイバの周囲の媒質と無関係であり、したがって、例えばマルチモード光ファイバに沿って媒質が変化することに起因する乱れが防止される。しかしながら、クラッディングを屈折率の段階的なプロファイルによって形成することも考えられる。
【0010】
加えて、マルチモード光ファイバは、近位端を有する。この点において、マルチモード光ファイバは、近位端によって内視鏡システムに接続される。
【0011】
さらに、マルチモード光ファイバは、近位端の反対側の遠位端を有する。この点で、マルチモード光ファイバの遠位端が、試料へと導入される。試料は、無機または有機試料、例えば動物またはヒトであってよい。
【0012】
マルチモード光ファイバの遠位端は、光軸に実質的に平行に広がる光透過面を有する。この場合、光軸の方向は、マルチモード光ファイバの遠位端の領域における方向を意味すると理解される。実質的に平行とは、光軸と光透過面との間の角度が15°未満、特には10°未満、さらに特には5°未満であることを意味する。この点において、光透過面は、光軸に対して半径方向に光を透過するように設計される。これにより、光を光透過面を通ってマルチモード光ファイバから出射させること、およびマルチモード光ファイバの外部からの光を光透過面を通ってマルチモード光ファイバに入射させることの両方が可能である。
【0013】
この点において、光透過面は、実質的に平坦な面である。これにより、マルチモード光ファイバの幾何学的形状がきわめて単純になり、したがって、光反射面を介し、光透過面を通過し、再び戻るマルチモード光ファイバからの光プロファイルを簡単に表すことができる。
【0014】
この代案として、光透過面は、球面の一部分または放物面の一部分である。これらの特定の表面形状は、変更される光の集束をもたらし、したがって、試料の特別な検査に有用となり得る。球面の一部分または放物面の一部分の場合、光透過面の位置合わせ、例えば角度は、光透過面を近似する平面の意味で理解されるべきである。
【0015】
光透過面は、ファイバコアの境界面でもある。すなわち、ファイバコアは、とりわけ、光透過面によって境界付けられる。
【0016】
加えて、遠位端は、光反射面を有する。この点で、光反射面は、好ましくは、遠位端における光軸と、光透過面の法線と、光反射面の法線とが、実質的に1つの平面内に位置するように広がる。加えて、光反射面と光軸との間の角度は、30°と60°の間である。したがって、光透過面を通ってマルチモード光ファイバに進入する光は、光反射面によって反射され、結果として、マルチモード光ファイバ内を光軸に沿って伝播することができる。同様に、マルチモード光ファイバの近位端を出る光は、光反射面によって反射され、結果として、やはり光透過面を通ってマルチモード光ファイバから出ることができる。
【0017】
このように、全体として、マルチモード光ファイバ内を光軸に沿って伝搬する光は、光反射面および光透過面によって光軸に対して半径方向に偏向される。したがって、マルチモード光ファイバに接続された内視鏡システムは、マルチモード光ファイバの遠位端において光軸に対して半径方向である試料の領域を検査することを可能にする。試料へのマルチモード光ファイバの導入は、特にはマルチモード光ファイバの前方の領域において、試料材料がそこで圧縮されるがゆえに、試料を損傷させる。対照的に、光軸に対する半径方向においては試料材料の損傷が著しく小さく、したがって、光軸に対して半径方向に位置する領域における試料の検査は、損傷を受けておらず、あるいは損傷がわずかでしかない試料材料を含む。したがって、マルチモード光ファイバの導入後に試料を治癒させる必要がなく、あるいはそのような治癒を短期間に限定することができる。さらに、光軸に対して半径方向の光透過面の直前の損傷を受けていない試料材料または損傷がわずかでしかない試料材料を検査することができるため、検査される像面がマルチモード光ファイバから遠く離れている必要がない。
【0018】
いくつかの実施形態において、光透過面は、光軸に平行に広がる。その場合、光軸に対して正確に半径方向の試料の検査が好ましい。
【0019】
いくつかの実施形態において、光透過面は、光軸に対して2°と10°の間、特には4°~6°の角度で傾斜している。この点で、光反射面および光透過面を介するマルチモード光ファイバに対する光の入力および出力結合の場合に、まず光透過面で屈折し、次いで光反射面によって反射され、その後に光透過面において全反射によって再び反射する光のビームプロファイルが可能である。これにより、光を比較的大きな角度範囲からマルチモード光ファイバに入力結合させることが可能になり、より高い光学的分解能が可能となる。
【0020】
いくつかの実施形態において、光反射面と光軸との間の角度は、40°と50°の間であり、特には約45°である。とりわけ、光軸に平行に広がる光透過面の場合、光軸に対して45°傾斜した光反射面が、マルチモード光ファイバへの光の最適な入力および出力結合をもたらす。対照的に、光透過面が光軸に対して角度αだけ傾斜している場合、光軸に対して垂直な光の入力および出力結合は、光反射面が光軸に対して45°から角度βの半分を引いた角度だけ傾斜しているときにもたらされ、ここで、n2sin(β)=n1sin(α)であり、n2はマルチモード光ファイバの屈折率であって、n1はマルチモード光ファイバの周囲の媒質の屈折率である。
【0021】
いくつかの実施形態においては、光透過面と光反射面との間に鋭利なエッジが形成される。この鋭利なエッジは、光透過面と光反射面とが1つに集まることによって生成される。この点で、光透過面と光反射面との間の角度は、30°と60°の間であり、特には約45°である。光透過面と光反射面とが1つに集まる場所に丸みが存在しない場合、このエッジは、種々の試料材料を切断するのに充分に鋭利であり、マルチモード光ファイバが試料へと導入されるときに単に材料を押しのけるだけではない。これは、試料材料の破壊をさらに低減し、したがって試料の検査を改善する。
【0022】
いくつかの実施形態において、光反射面は、実質的に平坦な面である。これにより、マルチモード光ファイバの幾何学的形状がきわめて単純になり、したがって、光反射面を介し、光透過面を通過し、再び戻るマルチモード光ファイバからの光プロファイルを簡単に表すことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、光反射面は、球面の一部分または放物面の一部分である。これらの特定の表面形状は、光のマルチモード光ファイバへの入力および出力結合時に集束をもたらし、したがって試料の特別な検査に有用となり得る。球面の一部分または放物面の一部分の場合、光反射面の位置合わせ、例えば角度は、光反射面を近似する平面の意味で理解されるべきである。
【0024】
いくつかの実施形態において、光透過面および/または光反射面は、マルチモード光ファイバの遠位端を研磨することによって生成される。結果として、特には平坦な面および球面の一部分を、光透過面および/または光反射面として生成することができる。この点において、表面の平滑性は、研磨手段の細かさに依存する。
【0025】
いくつかの実施形態において、光透過面および/または光反射面は、特には集束イオンビームによって、切削によって生成される。このやり方で生成される光透過面および/または光反射面は、複雑な形状も有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、光反射面は、コーティング、特には誘電体コーティングおよび/または金属コーティングを備える。結果として、コーティングのない光反射面と比較して反射係数が高められ、光収率、したがって得られる画像の品質の改善がもたらされる。この場合、コーティングは、例えば蒸着やスパッタリングによって光反射面に適用される。
【0027】
いくつかの実施形態において、光透過面は、コーティング、特には誘電体コーティングを備える。結果として、例えば、コーティングのない光反射面と比較して透過係数を高めることが可能であり、その結果、光収率が改善され、邪魔な反射が低減され、したがって得られる画像の全体的な品質が改善される。この場合、コーティングは、例えば蒸着やスパッタリングによって光反射面に適用される。
【0028】
いくつかの実施形態において、光軸に垂直な断面において測定されるマルチモード光ファイバの直径は、50μmと300μmの間、特には80μmと150μmの間である。マルチモード光ファイバの直径を小さく保ち、すなわち試料の損傷をきわめてわずかにするために、マルチモード光ファイバのクラッディングの厚さは小さく保たれ、特には20μm未満、とりわけ10μm未満または5μm未満に保たれる。より小さい直径を有するマルチモード光ファイバは、試料の損傷をより少なくするが、より大きい直径を有するマルチモード光ファイバにおいては、より多数の光モードが伝播することができ、したがってより高い分解能を有する画像がもたらされる。
【0029】
本発明のさらなる態様は、試料を検査するための内視鏡システムに関する。この点において、試料は、無機または有機試料、例えば動物またはヒトであってよい。
【0030】
ここで、内視鏡システムは、コヒーレント光源と、光検出器と、マルチモード光ファイバとを備え、マルチモード光ファイバは、上記の説明に従って設計される。
【0031】
コヒーレント光源は、例えばレーザである。コヒーレント光源は、マルチモード光ファイバの近位端に光を導入するようなやり方で配置される。このプロセスにおいて、好ましくは、マルチモード光ファイバにおける光モードが、マルチモード光ファイバの遠位端の光透過面の前方の領域内の一点を照明するようなやり方で励起されるように、コヒーレント光源からの光が変更される。
【0032】
光検出器は、マルチモード光ファイバの近位端から出る光を検出するようなやり方で配置される。この点に関し、この光は、光透過面の前方の領域内のコヒーレント光によって照明された点によって発せられ、光透過面、光反射面、およびマルチモード光ファイバを介して近位端へと導かれる。照明および検出を同時に実行することを可能にするために、コヒーレント光源および光検出器は、例えばビームスプリッタを介して内視鏡システムの光学的配置に組み込まれる。
【0033】
マルチモード光ファイバの利点、とりわけ試料材料がマルチモード光ファイバの導入による損傷を受けておらず、あるいはわずかしか損傷を受けていない場所である光軸に対して半径方向の試料の検査が、内視鏡システムにも伝達される。
【0034】
本発明のさらなる態様は、上記の説明による内視鏡システムによって試料を検査するための方法に関する。この点において、試料は、無機または有機試料、例えば動物またはヒトであってよい。内視鏡システムによって達成することができる高い分解能の結果として、それは、例えば動物またはヒトの脳内などのニューロンおよびニューロンネットワークの検査に適する。
【0035】
この方法の過程において、コヒーレント光源が、マルチモード光ファイバによって試料内の多数の対象点を次々に照明するために使用される。異なる対象点の照明は、ここではコヒーレント光の異なる変更によってもたらされる。ここで、照明される対象点は、マルチモード光ファイバの遠位端において光軸に対して半径方向に、光透過面の前方に位置する。対象点は、例えば、格子パターンで次々に照明されてよい。対象点によって発せられ、例えば反射、蛍光、ラマン散乱、誘導ラマン散乱、コヒーレントアンチストークスラマン散乱、自己蛍光、および/または周波数倍増によってもたらされる応答光が、光透過面を通ってマルチモード光ファイバに再び入射し、光反射面で反射され、マルチモード光ファイバを通って近位端に導かれる。そこで、光はマルチモード光ファイバを出て、光検出器によって検出される。結果として、個々の対象点の画像情報が次々と受信される。コヒーレント光のさらなる変更によって、光透過面の前方のさまざまな平面内の対象点を照明し、したがって試料の複数の平面を検査することも可能である。
【0036】
検査される対象点はマルチモード光ファイバの遠位端において光軸に対して半径方向にあるため、試料へのマルチモード光ファイバの導入による損傷を受けておらず、あるいはわずかな損傷しか受けていない試料材料が検査される。
【0037】
いくつかの実施形態においては、マルチモード光ファイバの光透過特性が、試料が検査される前に測定される。このプロセスにおいて、好ましくは、例えば直線状または湾曲など、後に試料に対して有することになるマルチモード光ファイバの形態が維持される。この点において、定められたコヒーレント光が、マルチモード光ファイバの一方側においてマルチモード光ファイバに導入され、結果が、マルチモード光ファイバの他方側において測定される。このようにして、単一の対象点の照明を得るためにコヒーレント光のどのような変更が必要であるかを確認することができる。
【0038】
光透過特性の測定に代え、あるいは加えて、マルチモード光ファイバの光透過特性を、波動伝播に基づくモデリングによって計算することもできる。
【0039】
いくつかの実施形態において、マルチモード光ファイバは、試料を検査するために試料に導入される。この場合、特にはマルチモード光ファイバの遠位端における光透過面と光反射面との間の鋭利なエッジが、試料を切断する。したがって、試料材料は、単に側方に押されるだけでなく、切断され、結果として試料の破壊が低減される。
【0040】
いくつかの実施形態においては、試料の記録が、マルチモード光ファイバが試料へと導入されている間に取得され、結果として、マルチモード光ファイバの経路に沿った試料の記録が生成される。得られる画像が用意されているときに、合成画像を生成することができるように、マルチモード光ファイバが試料へとどれだけ遠くまで挿入されたかを特定するそれぞれの画像に属する情報も存在すると有用である。
【0041】
いくつかの実施形態において、マルチモード光ファイバは、その回転軸を中心にして試料に対して回転させられる。結果として、マルチモード光ファイバの遠位端の周りの円筒状の領域での試料の記録が得られる。
【0042】
マルチモード光ファイバがプローブに導入され、同時に回転させられている間に記録を取得することも可能である。結果として、試料の長い円筒状の領域の記録が得られる。
【0043】
好ましい実施形態を、従属請求項をそれぞれの独立請求項と組み合わせることによって得ることができることは、言うまでもない。
【0044】
本発明を、さらなる明確化のために、図面に示される例示的な実施形態に基づいて説明する。これらの実施形態は、限定としてではなく、あくまでも例として理解されるべきである。
【0045】
図面の簡単な説明
図面において、
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】マルチモード光ファイバの一実施形態の縦断面図を示している。
【
図2】マルチモード光ファイバの別の実施形態の縦断面図を示している。
【
図3】マルチモード光ファイバのさらに別の実施形態の縦断面図を示している。
【
図4】マルチモード光ファイバのさらに別の実施形態の縦断面図を示している。
【
図5】マルチモード光ファイバのさらに別の実施形態の縦断面図を示している。
【
図6】マルチモード光ファイバのさらに別の実施形態の縦断面図を示している。
【
図7】内視鏡システムの一実施形態の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
実施形態の詳細な説明
図において、同じ参照符号は、同じ要素または同等の機能を有する要素のいずれかを示している。すでに説明された要素は、必ずしも後続の図において再び説明されない。
【0048】
図1が、マルチモード光ファイバ1の一実施形態の縦断面図を示している。マルチモード光ファイバ1は、直線状の曲がっていないマルチモード光ファイバ1の場合の回転対称の軸に相当する光軸2を有する。
【0049】
加えて、マルチモード光ファイバ1は、近位端3を有する。内視鏡システムは、マルチモード光ファイバ1を用いた内視鏡検査のために、近位端3に接続される。
【0050】
さらに、マルチモード光ファイバ1は、近位端3の反対側の遠位端4を有する。遠位端4は、マルチモード光ファイバ1を試料へと導入するように設計される。この点において、試料は、無機または有機試料、例えば動物またはヒトであってよい。マルチモード光ファイバ1を備える内視鏡システムで得ることができる高い分解能は、例えば、試料の脳内などのニューロンおよびニューロンネットワークの検査を可能にする。
【0051】
遠位端4は、光軸2に実質的に平行に延びる光透過面5を有する。光は、光透過面5を通って、明確に定義されたやり方でマルチモード光ファイバ1から出ることができ、あるいはマルチモード光ファイバ1に進入することができる。
【0052】
さらに、光透過面5にコーティング、特には誘電体コーティングを設けてもよい。これは、光の透過を改善し、邪魔な反射を低減する。
【0053】
加えて、遠位端4は、光反射面6を有する。この点において、光反射面6は、光軸2と、光透過面5の法線と、光反射面6の法線とが、1つの平面内に位置するように位置する。光反射面6と光軸2との間の角度は、ここでは約45°である。光透過面5を通ってマルチモード光ファイバ1に進入する光は、マルチモード光ファイバ1によって運ぶことができるようなやり方で、光反射面6によって反射される。同様に、マルチモード光ファイバ1の近位端3からの光は、光透過面5を通ってマルチモード光ファイバ1から出ることができるようなやり方で、光反射面5によって反射される。
【0054】
さらに、光反射面6に、コーティング、特には金属おコーティングよび/または誘電体コーティングを設けてもよく、その結果、光反射面6における光反射、したがって光収率が改善される。
【0055】
光反射面6および光透過面5の配置のおかげで、マルチモード光ファイバ1を、光透過面5の前方の遠位端4の領域において光軸2から半径方向に離れた対象点7を検査するために使用することができる。マルチモード光ファイバ1を試料へと導入するときに破壊される試料材料は、主にマルチモード光ファイバ1の前方に位置する試料材料であるため、この側面検査によれば、破壊されておらず、あるいはわずかにしか破壊されていない試料材料を検査することができる。
【0056】
さらに、光透過面5と光反射面6との間に、鋭利なエッジ8が形成されている。この鋭利なエッジ8は、マルチモード光ファイバ1が試料へと導入されるときに試料材料を切断することができる。結果として、鈍い端部を試料を通って押し込む場合と対照的に、試料があまり破壊されない。
【0057】
マルチモード光ファイバ1の
図2に示される例示的な実施形態においては、
図1の例示的な実施形態とは対照的に、マルチモード光ファイバ1が、光透過面5に近位端3の方向に隣接する傾斜面9を有する。この傾斜面9は、マルチモード光ファイバ1の試料への導入をより容易にし、試料の破壊を抑制する。
【0058】
図3が、マルチモード光ファイバ1の別の例示的な実施形態の縦断面図を示している。ここで、光透過面5は、光軸2に対してわずかな角度だけ傾斜している。したがって、
図2の例示的な実施形態のような傾斜面9は、もはや必要ではない。加えて、光反射面6の傾斜は、光透過面5を通ってマルチモード光ファイバ1に入射する光がマルチモード光ファイバ1へと最適に導入されるようなやり方で構成され、光透過面5を通って出射される光についても同様である。
【0059】
さらに、光透過面5の傾斜は、対象点7から生じる光を、光透過面5を通ってマルチモード光ファイバ1に進入させ、光反射面6によって反射させ、光モードとしてマルチモード光ファイバ1に入力結合させる前に、光透過面5において再び全反射させることができるという利点をもたらす。当然ながら、この光路は、反対方向に延びてもよい。結果として、比較的大きな角度範囲からの光をマルチモード光ファイバ1に入力結合させることができ、これが、分解能の向上につながる。拡張モードの一部である光ビーム10.3を含む3つの例示的な光ビーム10が、
図3に示されている。
【0060】
図4が、マルチモード光ファイバ1のさらに別の例示的な実施形態を示している。
図3の例示的な実施形態と比較すると、光透過面5および光反射面6の両方が、平坦な面ではなく、球面の一部分である。また、2つの面の一方が平坦な面であり、他方が球面の一部分であってもよいと考えられる。さらに、面の一方または両方が、放物面の一部分であってもよい。光透過面5および/または光反射面6のこの形状は、例えば特定の検査を可能にするために、入射光および出射光のビーム経路を変更する。
【0061】
図5が、マルチモード光ファイバ1のさらに別の例示的な実施形態を示しており、ファイバコア11がクラッディング12によって囲まれていることが明示的に示されている。この点において、クラッディング12は、ファイバコア11における光の全反射が、マルチモード光ファイバ1の周囲の媒質と無関係であることを保証し、したがって、例えばマルチモード光ファイバ1に沿って媒質が変化することに起因する乱れが防止される。光透過面5は、ファイバコア11の境界面でもあり、すなわち、ファイバコア11は、とりわけ光透過面5によって境界付けられる。
【0062】
図6が、マルチモード光ファイバ1のさらに別の例示的な実施形態を示しており、この場合、光透過面5は、拡大された光透過面20としてクラッディング12に続いている。また、光反射面6は、拡大された光反射面21としてクラッディング12に続いている。
【0063】
最後に、
図7が、試料14を検査するための内視鏡システム13を示している。マルチモード光ファイバ1が、試料14へと導入され、マルチモード光ファイバ1の光軸2から半径方向に離れ、光透過面5の前方に配置された対象点7を検査するように、位置合わせされる。
【0064】
さらに、内視鏡システム13は、ここではレーザ16および改質器17として概略的に示されているコヒーレント光源15を備え、改質器17は、レーザ16が発する光の波面を改質するように設計される。
【0065】
加えて、内視鏡システム13は、光検出器18を備える。さらに、ビームスプリッタ19が、コヒーレント光源15からマルチモード光ファイバ1へと光を放出すること、および光検出器18を用いてマルチモード光ファイバ1からの光を検出することの両方が可能であるように配置される。
【0066】
内視鏡システム13の動作時に、コヒーレント光源15は、試料内の多数の対象点7が次々に照明され、各々の対象点7が発する応答光が光検出器18によって検出されるようなやり方で動作する。
【0067】
さらに、マルチモード光ファイバ1を、その光軸2を中心にして試料14に対して回転させることができ、結果として、光透過面5の前方の平面内の対象点7だけでなく、マルチモード光ファイバ1の遠位端4の周囲を円筒状に検査することができる。
【0068】
加えて、マルチモード光ファイバ1を試料14へと導入するときにすでに記録を行うことができ、結果として、マルチモード光ファイバ1に沿った長い記録を生成することができる。