(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-11
(45)【発行日】2025-09-22
(54)【発明の名称】歯科用光重合装置
(51)【国際特許分類】
A61C 13/15 20060101AFI20250912BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20250912BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20250912BHJP
F21W 131/202 20060101ALN20250912BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250912BHJP
【FI】
A61C13/15
F21S2/00 611
F21V5/04
F21W131:202
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021505329
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2019056297
(87)【国際公開番号】W WO2020026075
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-20
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】524062087
【氏名又は名称】ソルベンタム インテレクチュアル プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルラッハ,コルビニアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェルカー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,アンジェリカ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/102933(WO,A2)
【文献】特開2000-024007(JP,A)
【文献】特表2013-530763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0294066(US,A1)
【文献】特表2008-534212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0024971(US,A1)
【文献】特表2012-516011(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/00-5/90
A61C 13/15
A61C 19/06
F21S 2/00
F21V 5/04
F21W 131/202
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内先端部分とハンドル部分とを備え、更に重合用光源と光混合要素とを備える歯科用光重合装置であって、前記重合用光源は、少なくとも、第1の発光ピーク波長を示す第1のLED、及び第2の発光ピーク波長を示す第2のLEDを備え、前記第1のLED及び前記第2のLEDはそれぞれ、380nm~495nmの波長範囲内の可視光を発するように構成され、前記第1の発光ピーク波長と前記第2の発光ピーク波長とは、少なくとも10nmだけ互いに異なり、前記光混合要素は、後方部分と、隣接する前方部分とを有する固体透明体で形成され、前記後方部分は、中心軸が光軸を形成し、かつ底面が正方形である、切頭角錐の形状を有し、前記前方部分は、凸形状を有し、前記後方部分は、前記光混合要素の後端部を形成し、前記前方部分は、前記光混合要素の前端部を形成し、前記後端部は、第1の対角線寸法を形成し、
前記前端部は、より大きい第2の対角線寸法を形成し、前記光混合要素は、前記後端部が前記重合用光源に面するように、かつ前記前端部が前記重合用光源とは反対側を向くように配置されて
おり、
前記第1の発光ピーク波長は、440nm~460nmの範囲内の特定の波長であり、前記第2の発光ピーク波長は、460nm~485nmの範囲内の特定の波長である、歯科用光重合装置
。
【請求項2】
前記口腔内先端部分は、後端部及び前端部を有する光ガイドを備え、
前記光ガイドの前記前端部は、前記歯科用光重合装置の光出力を形成し、前記光ガイド
の前記後端部
は、前記光混合要素の前記前端部と隣接するように配置されている、請求項1に記載の歯科用光重合装置。
【請求項3】
間隙が前記光混合要素と前記重合用光源との間に設けられている、請求項
2に記載の歯科用光重合装置。
【請求項4】
前記第1のLED及び前記第2のLEDが光を発するために同時に作動される動作モードを有する、請求項1に記載の歯科用光重合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも10nmだけ異なる第1の発光ピーク波長及び第2の発光ピーク波長を示す第1のLED及び第2のLEDと、第1のLED及び第2のLEDから発せられされた光を、均一な光強度分布を有する光ビームに混合するための光混合要素と、を有する歯科用光重合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性又は光硬化型材料は、歯の修復のための歯科医療において広く使用されている。このような材料の多くは、天然の歯のものに似た光学特性を提供するように作製される。更に、このような材料は、通例、正確に、及び簡便に配置し、即座に硬化させることができ、硬化した材料は、通例、比較的耐久性がある。したがって、これらの材料は、例えば、アマルガムのような見た目があまり良くなく、経時的自硬性の材料に対する好ましい代替物となる。
【0003】
光硬化性材料はしばしば、重合性マトリクス材料と、着色剤を含む充填材料とを含み、最初は、概して柔らかいか、又は流動性があり、したがって、これらの材料は、所望の場所及び形状に適用することができる。例えば、歯の修復のために、修復後の歯が天然の歯に類似するように、歯科材料を歯の空洞に充填し、成形することができる。一旦所望の形状が形成されると、材料は、所望の波長の光に曝露することにより硬化させることができる。典型的には、光は歯科材料内の光開始剤を活性化し、これがマトリクス材料を重合させる。
【0004】
約450~500nm(ナノメートル)の波長内の青色光で硬化可能な歯科材料を使用するのが、歯科医術では一般的になっている。したがって、このような歯科材料を硬化させるために使用される発光素子は、典型的には、上記の波長範囲内で光を発する。このような発光素子は、例えば、3M Deutschland GmbH、Germanyから商品名Elipar(商標)S10として入手可能である。
【0005】
国際公開第2015/164180(A1)号は、青色光を発するように適応された歯科用光照射装置を開示している。
装置は、光源と、光源から発せられた光をコリメートする手段と、光ガイドとを有する。光コリメート手段は、平凸レンズと、円錐形中空リング状構造によって形成された反射体とを含む。反射体は、その内部断面がレンズに向かって広がるように構成される。
【0006】
既存の装置はいくらかの利点をもたらすが、最大化された信頼性及び効率をもって歯科材料の硬化をもたらす光装置を提供することが依然として望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は歯科用光重合装置に関する。歯科用光重合装置は口腔内先端部分とハンドル部分とを備える。歯科用光重合装置は、重合用光源と光混合要素とを更に備える。
【0008】
重合用光源は、少なくとも、第1のLED及び第2のLED(発光ダイオード(light emitting diode))を含む。第1のLEDは第1の発光ピーク波長を示し、第2のLEDは第2の発光ピーク波長を示す。第1のLED及び第2のLEDはそれぞれ、380nm~495nmの波長範囲内の可視光を発するように構成されている。第1の発光ピーク波長と第2の発光ピーク波長とは少なくとも10nmだけ互いに異なる。
【0009】
光混合要素は、後方部分と、隣接する前方部分とを有する固体透明体で形成されている。後方部分は、底面が正方形である、切頭角錐の形状を有する。角錐の中心軸は光軸を形成する。更に、前方部分は凸形状を有する。後方部分は、光混合要素の後端部を形成し、前方部分は、光混合要素の前端部を形成する。
【0010】
後端部は、第1の対角線寸法を形成する。更に、前方部分に隣接する後方部分は、より大きい第2の対角線寸法を形成する。光混合要素は、後端部が重合用光源に面するように配置されている。光混合要素は、前端部が重合用光源とは反対側を向くように配置されている。
【0011】
本発明は、均一な光を発するように適応された歯科用光重合装置を提供する点で、有利である。具体的には、歯科用光重合装置によって光軸に沿って発せられた光ビームは、光軸と垂直な平面内において均一な(又は実質的に均一な)光強度分布を有する。これは、その外周における光ビームは、その内周における光ビームと同じ(又は本質的に同じ)光強度を有することを意味する。これは、歯科材料の区域が、歯科材料を硬化させるために適した強度で全面的に照射されるため、歯科材料を、最大化された効率で硬化させることを可能にする。更に、これにより、歯科材料に不十分な光強度で照射するリスクが最小限に抑えられるため、信頼性が最大化される。
【0012】
好ましくは、第1及び第2の対角線寸法はそれぞれ、光軸と垂直に延びる。更に、第1の対角線寸法は、好ましくは、光混合要素の後端部を形成する正方形状の表面によって形成される。第2の対角線寸法は、好ましくは、後方部分及び前方部分の間の移行部における正方形状の断面によって形成される。第2の対角線寸法は、前方部分への移行部における直接対向する辺の間で測定される。好ましくは、前方部分は光軸に対して軸対称である。
【0013】
好ましくは、重合用光源及び光混合要素は、重合用光源から発せられた光が光混合要素を通るように光学的に結合されている。光混合要素は、好ましくは、光が光混合要素を通過する際に光を混合するように構成されている。光は、好ましくは、光が光混合要素によって複数回反射されるように混合される。好ましくは、反射は、光混合要素と、光混合要素を包囲する空気との間の全反射に基づく。好ましくは、光混合要素はコーティングされておらず、特に、鏡面仕上げされていなくてもよい。
【0014】
本明細書において参照するとき、第1の発光ピーク波長は、第1のLEDから発せられる光スペクトルにわたって、光強度が第1の発光ピーク波長において最大値を形成することを意味する。更に、本明細書において参照するとき、第2の発光ピーク波長は、第2のLEDから発せられる光スペクトルにわたって、光強度が第2の発光ピーク波長において最大値を形成することを意味する。
【0015】
一実施形態では、第1の発光ピーク波長は、440nm~460nmの範囲内の特定の波長であり、第2の発光ピーク波長は、460nm~485nmの範囲内の特定の波長である。本実施形態は、カンファーキノンを光開始剤として含む歯科材料を重合させる場合に特に有利になり得る。したがって、他の光開始剤を含む歯科材料を重合させる場合、第1及び第2の発光ピーク波長の代替的な範囲が用いられ得る。一実施例では、第1の発光ピーク波長は、457nmであり、第2の発光ピーク波長は、469nmである。本発明の第1及び第2のLEDとして用いることができるLEDは、指定された範囲内の発光ピーク波長を有するものが通常利用可能であることに留意されたい。本発明の歯科用光重合装置を提供するために、可能な限り互いに遠く離れた発光ピーク波長を示すLEDが選択されてもよい。45nmの差を達成するために、440nmの第1の発光ピーク波長を示す第1のLED、及び485nmの第2の発光ピーク波長を示す第2のLEDを用いることが好ましいであろうが、10nmの差が、大量の歯科用光重合装置を生産するために利点を有することが見出されている。これは、LEDの発光ピーク波長は、典型的には、正規分布に従うので、これにより、極端な発光ピーク波長のみのLEDを用いることは経済的に不利になると考えられるためである。
【0016】
一実施形態では、口腔内先端部分は、後端部及び前端部を有する光ガイドを備える。光ガイドの前端部は、好ましくは、歯科用光重合装置の光出力を形成する。光ガイドの前端部は光ガイドの湾曲部分によって形成され得る。光ガイドの前端部は、好ましくは、患者の歯内又は上の歯科材料に光を照射するために用いられる光ガイドのその端部である。このような湾曲部分は患者の口内へのアクセスの促進をもたらす。更に、光ガイドは、後端部が光混合要素の前端部に隣接するように配置されている。それゆえ、光混合要素の前端部は、光ガイド、具体的には、光ガイドの後端部に面する。
【0017】
一実施形態では、間隙が光混合要素と重合用光源との間に設けられている。光混合要素と重合用光源との間の間隙は、好ましくは、空気間隙である。光混合要素と重合用光源との間の間隙は、好ましくは、0.1mm~1mm、及び好ましくは、0.5mmの幅を有する。
【0018】
一実施形態では、歯科用光重合装置は、光混合要素の前端部と光ガイドの後端部との間に配置された、透き通った、又は透明なパネルを有するハウジングを備える。透明パネルは、好ましくは、光混合要素の前端部から、及び光ガイドの後端部から離間されている。光混合要素の前端部と透明パネルとの間の間隔は、好ましくは、0.1mm~3mm、好ましくは、0.5mmである。更に、光ガイドの後端部と透明パネルとの間の間隔は、好ましくは、0.1mm~3mm、好ましくは、0.5mmである。
【0019】
一実施形態では、歯科用光重合装置は、第1のLED及び第2のLEDが光を発するために同時に作動させられる動作モードを有する。動作モードは、好ましい、又はデフォルトの動作モードであり得る。動作モードは、更に、唯一の動作モードであり得る。任意選択的に、歯科用光重合装置は、第1のLED及び第2のLEDのそれぞれを選択的に個々に用いることができる更なる動作モードを有し得る。
【0020】
一実施形態では、第1のLEDは、第1の発光ピーク波長からプラス若しくはマイナス9nmの波長範囲にわたって光が発せられる第1の発光範囲を示し、第2のLEDは、第2の発光ピーク波長からプラス若しくはマイナス10nmの波長範囲にわたって光が発せられる第2の発光範囲を示す。第1の発光範囲及び第2の発光範囲は、FWHM値(半値全幅(Full Width at Half Maximum)値)に基づいて定義される。例えば、第1のLEDは、光が441nm~459nmの波長範囲(FWHM)にわたって発せられる第1の発光範囲を示し得、第2のLEDは、光が449nm~469nmの波長範囲(FWHM)にわたって発せられる第2の発光範囲を示し得る。第1の発光範囲内では、第1の発光ピーク波長の外側の波長において発せられる光はいずれも、第1の発光ピーク波長において発せられる光よりも低い光強度を示す。更に、第2の発光範囲内では、第2のLEDの第2の発光ピーク波長の外側の波長において発せられる光はいずれも、第2の発光ピーク波長において発せられる光よりも低い光強度を示す。
【0021】
第1のLEDとして用いられ得る好適なLEDは、例えば、Philips Lumileds,USAから、商品名Luxeon Z Color Royal Blueの下で入手可能である。第2のLEDとして用いられ得る好適なLEDは、例えば、Philips Lumileds,USAから、商品名Luxeon Z Color Blueの下で入手可能である。
【0022】
一実施形態では、光混合要素は、モノリシックに形成されている。好ましくは、光混合要素はポリメチルメタクリレート(PMMA)又はガラスで作製されている。例えば、光混合要素は一体に射出成形され得る。
【0023】
一実施形態では、光混合要素の第1の対角線寸法は、第1の辺長を有する正方形によって規定される。好ましくは、第1の辺長は、2mm~6mmの範囲内にある。好ましくは、光混合要素の第2の対角線寸法は、第2の辺長を有する正方形によって規定される。好ましくは、第2の辺長は、8mm~15mmの範囲内にある。光混合要素の第1の辺長は、好ましくは、3.5mmである。光混合要素の第2の辺長は、好ましくは、8mmである。
【0024】
光混合要素の長さは、好ましくは、10mm~20mmの範囲内、及び好ましくは、特に、13mmである。光混合要素の長さは、好ましくは、第2の辺長よりも大きく、好ましくは、第2の辺長の少なくとも2倍である。光混合要素の長さが大きいほど、より良好な均一性をもたらすことが見出されている。他方で、光混合要素の長さは、過度の強度損失を回避するために制限されなければならない。本明細書において指定された長さを用いることで、均一性を最大化することと、損失を最小限に抑えることとの間の適切なバランスが確認された。
【0025】
一実施形態では、光混合要素の前方部分は、球面形状を有する。球面形状は、好ましくは、12mm~25mm、好ましくは、17mmの半径に基づく。更に、光混合要素の後方部分は、好ましくは、第1の対角線寸法から第2の対角線寸法に向かって寸法が増大する。光混合要素は、好ましくは、完全に透明であり、空気によって包囲されている。具体的には、光混合要素は、コーティング及び/又は鏡面仕上げされた外面を全く含まなくてもよい。それゆえ、光混合要素を通る光の反射は、光混合要素と周囲空気との境界における全反射に基づく。
【0026】
一実施形態では、歯科用光重合装置は、重合用光源をオン又はオフに切り替えるためのアクティベータボタンを更に備える。歯科用光重合装置は、作動された重合用光源が自動的に停止されるまでの期間を予め選択するためのセレクタボタンと、を更に備え得る。歯科用光重合装置は、更に、電池給電式であり得る。具体的には、ハンドル部分が、歯科用光重合装置に給電するための電池を備え得る。歯科用光重合装置は無線式であり得る。具体的には、歯科用光重合装置は電源コードを有しなくてもよい。更に、電池は、例えば、非接触方式で、再充電可能であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯科用光重合装置の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯科用光重合装置の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る歯科用光重合装置に用いられ得る重合用光源の詳細図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る歯科用光重合装置に用いられ得る光混合要素の詳細図である。
【
図6】本発明に係る歯科用光重合装置から決定された光強度分布をまとめたものである。
【
図7】本発明に係る歯科用光重合装置から発せられた光の異なる波長についての光強度曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、歯科用光重合装置1を示す。歯科用光重合装置1は、口腔内先端部分2及びハンドル部分3を有する。口腔内先端部分2は、光ガイド21の自由端部において光出力22を形成する光ガイド21を含む。本実施例の歯科用光重合装置1は、オン/オフボタン4及びタイマ設定ボタン5を更に有する。オン/オフボタン4は、ユーザが重合光装置1を選択的に作動させ、停止することを可能にする。更に、タイマ設定ボタン5は、ユーザが、重合光装置1が、オン/オフボタン4を介した作動時に、作動状態に自動的に維持されている期間を調整することを可能にする。オン/オフボタンは、歯科用光重合装置が作動状態に自動的に維持されている間に、ユーザが歯科用光重合装置をオフに切り替えることを更に可能にする。例えば、オン/オフボタン4を最初に押して放すことは、タイマ設定ボタン5を介して選択された期間にわたって歯科用光重合装置1を作動させる。オン/オフボタンを更に押すことが全くなければ、歯科用光重合装置1は期間にわたって作動状態のままとどまる。しかし、歯科用光重合装置1は、歯科用光重合装置1が作動状態に維持されている間にオン/オフボタンを押すこと(及び放すこと)によって、随時オフに切り替えることができる。歯科用光重合装置1はユーザによってハンドル部分3において使用のために保持され得る。
【0029】
図2は、歯科用光重合装置1を断面図で示す。歯科用光重合装置1は、青色光を光ガイド21の光入力23に向けて発するための重合用光源6を備える。光混合要素7が重合用光源6と光入力23との間に配置されている。
【0030】
口腔内先端部分2は、口腔内先端部分2をハンドル部分3上に取り外し可能に装着するための取り付け具24を含む。ハンドル部分3は密閉ハウジング31を含む。ハウジング31は、重合用光源6、光混合要素7、電池32、及び電子回路機構33を密閉封入している。本実施例では、ハウジング31は、透明パネル34によって閉じられた窓を有する。したがって、透明パネル34は光混合要素と光ガイド21の光入力23との間に配置されている。
【0031】
本実施例における歯科用光重合装置1は、全面的無線装置である。これは、歯科用光重合装置1が、例えば、電源コードを有せず、電池32によって給電されることを意味する。電池32は、例えば、ハウジング31上に設けられた接点(図示せず)を介して、又は無線で再充電可能である。電池32を充電するために、充電装置(図示せず)が提供され得る。
【0032】
図3は、重合用光源6をより詳細に示す。重合用光源6は、第1のLED61及び第2のLED62を含む。第1及び第2のLED61、62は、380nm~495nmの可視の紫色及び青色光のスペクトル)内の、異なるが重なり合う波長範囲における光を発するように構成されている。それゆえ、重合用光源6全体は、個々の第1及び第2のLED61、62の波長範囲に対して拡大された波長範囲にわたる光を発するように構成されている。具体的には、本実施例では、第1のLED61は、457nmの第1の発光ピーク波長における光を発するように構成されており、第2のLED62は、469nmの第2の発光ピーク波長における光を発するように構成されている。
図7に示されるように、結果として生じた、歯科用重合光装置1から発せられた光の曲線(実線として示される)は、光強度Iが約454nm~472nmの波長範囲にわたって本質的に同じである平坦域Pを形成する。それゆえ、カンファーキノンを含む歯科用複合材料は、増大した効率で硬化させられ得る。
図7の図において破線で示される曲線はカンファーキノンの吸収スペクトルを表す。
【0033】
本実施例では、第1のLED61及び第2のLED62は、電子回路板63上に接着され、透明カバー64によって封入されたダイの形態で設けられている。透明カバー64は、第1のLED61及び第2のLED62から発せられた光が透過される平坦面64aを有する。
【0034】
図4は、重合用光源6及び光混合要素7をより詳細に示す。
光混合要素7は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はガラスから作製された、固体透明体で形成されている。具体的には、光混合要素7は、後方部分71及び隣接する前方部分72を有する。後方部分71は、底面が正方形である、切頭角錐に従って形状設定されている。前方部分72は、光混合要素7の前端部74を形成する球面状の外面を有する。光混合要素7の対称軸は光軸Aを形成する。後方部分71及び前方部分72はモノリシックに形成されている。更に、光混合要素7は内部空隙を含まない。光混合要素7の後端部73における後方部分71は第1の対角線寸法D1を有する(
図5参照)。後端部73は正方形状の後面を形成し、正方形は、第1の対角線寸法D1を1.41で除算したものに対応する第1の辺長E1を有する。後方部分71は、より大きい第2の対角線寸法D2を更に有する(
図5参照)。第2の対角線寸法D2は正方形状の断面に基づき、正方形形状の正方形は、第2の対角線寸法D2を1.41で除算したものに対応する第2の辺長E2を有する。光混合要素7は、後方部分72が重合用光源6に向かい、前方部分71が重合用光源6から離れて配置されている。重合用光源6は、重合用光源6から発せられた光が光混合要素7内へ発せられるよう、光混合要素7の後端部73に隣接して(ただし、それと直接接触しないように)配置されている。具体的には、重合用光源6は、第1のLED61及び第2のLED62が光軸Aに対して対称に配置されるように配置されている。それゆえ、第1のLED61及び第2のLED62から発せられた光は光混合要素7内で概ね均一に混合される。第1のLED61及び第2のLED62が異なる波長範囲における光を発するという事実のために、光混合要素から発せられた光は、概して、光混合要素7内に受光された光の集積を形成する。光混合要素7から発せられた光は、それが光ガイド(
図2に示される)に入る前に、透明パネル34を最後に通る。
【0035】
光混合要素7は、重合用光源6からの光を、光軸Aと垂直な平面内で均一な(又は比較的均一な)光強度分布を有する光に変換するように構成されている。重合用光源から発せられ、光混合要素を透過され、透明パネル34から出た光の光強度分布が、コンピュータソフトウェアを用いてシミュレートされた。シミュレーションは、Synopsys(商標)Inc.,USAから商品名LightToolsの下で入手可能なシミュレーションソフトウェアを用いて実施された。このシミュレーションにおいて、透明パネル34から出た光の光強度分布は、透明パネル34上に直接配置された、及び透明パネル34から更に遠く離れた複数の距離に配置された平面内で決定された。様々な異なる距離における決定を介して、距離の範囲にわたる光強度分布の変化を評価することができる。距離にわたる光強度分布の変化は、患者の口内における歯科用光重合装置1の使用において、例えば、光出力(
図2における22)が、患者の歯から、又は光を照射されるべき場所から様々な距離に配置される場合に問題となり得る。その点について、シミュレーションは透明パネル34に対して遂行されたが、光強度分布の変化は、光ガイドの光出力に対して決定された場合、同じになる(又は本質的に同じになる)ことに留意されたい。これは、光ガイド - 典型的には、平行な透明ファイバの束で形成されている - が、光入力(
図2における23)から光出力(
図2における22)に向かう途中で光(特に、光の向き)を変更しない(又は大幅に変更しない)ためである。
【0036】
光強度分布が決定された場所はM0~M5と称される。対応する距離が表1において与えられている。
【表1】
【0037】
図6に、結果が示されている。場所M0~M5における各光強度分布は、異なる色が異なる光強度を表す2次元フォールスカラー表現100の形で示されている。各表現100は、4x4mmの基準区域の上で決定された光強度を表す。基準区域は、異なる場所M0~M5における光混合要素の光軸と垂直である平面上において規定される。更に、基準区域は、その中心が光軸上にあるように配置されている。光強度の理想的な均一分布は均一な色で表現される。場所M0における表現100は比較的均一に色が付いている。区域の異なる場所における強度の間のずれは、場所M0における
図101及び102において表現されるように、比較的小さい。
図101は表現100の光強度をY軸に沿った曲線の形で示し、それに対して、
図102は表現100の光強度をX軸に沿った曲線の形で示す。両
図101、102の曲線はそれぞれ、基準区域を横切る本質的に全範囲にわたって比較的平坦な部分を示す。これは、光強度分布が比較的均一であることを実証している。場所M0~M3における表現100から認識できるように、光強度分布の均一性は5mmの距離範囲にわたって大幅に変化しない。最大10mmの距離範囲にわたって(M4及びM5参照)、光強度分布は依然として許容可能である。