(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-11
(45)【発行日】2025-09-22
(54)【発明の名称】乗り物
(51)【国際特許分類】
A61G 5/04 20130101AFI20250912BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20250912BHJP
B62K 17/00 20060101ALI20250912BHJP
【FI】
A61G5/04 707
A61G5/04 701
A61G5/12 701
B62K17/00
(21)【出願番号】P 2022017896
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2024-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢田 渉
(72)【発明者】
【氏名】野原 大督
(72)【発明者】
【氏名】山本 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】五島 正基
(72)【発明者】
【氏名】坂本 友和
【審査官】比嘉 貴大
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-026119(JP,U)
【文献】特開2005-021531(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0433513(KR,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0028385(US,A1)
【文献】特開2013-005918(JP,A)
【文献】特開2010-070358(JP,A)
【文献】実開平01-135920(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/04
A61G 5/12
B62K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物であって、
車体フレームと、
前記車体フレームに設けられ、床面上を移動可能な駆動ユニットと、
前記車体フレームの上方に配置され、使用者の臀部を支持するシートと、
前記車体フレームと前記シートとの間に設けられ、前記シートを低位置及び高位置の間で昇降させる昇降装置と、
前記シートの左側部及び右側部の少なくとも一方に設けられた操作装置とを有し、
前記操作装置は、上方を向く操作面を有する操作パネルと、前記操作パネルの後部から上方かつ前方に延びるレバーと、前記操作面に設けられた複数の操作子とを有し、
上方から見て、複数の前記操作子の少なくとも1つは、前記レバーと重
なりを有する位置に配置されている乗り物。
【請求項2】
前記シートは、前記使用者の臀部に接触するパッドを有し、
前記パッドの前部の左右の側部は、上方から見て前方に向けて左右内方に傾斜し、
前記レバーの前端部と前記パッドとの左右方向における距離が、前記レバーの後端部と前記パッドとの左右方向における距離より大きい請求項1に記載の乗り物。
【請求項3】
前記パッドは、左右の側部に上方に突出した左右一対の土手部を有し、
前記操作面は、前記土手部の上縁よりも下方に配置されている請求項2に記載の乗り物。
【請求項4】
前記レバーは、その後端を中心として、略水平に延びる初期位置と、前方に向けて上方に傾斜した操作位置との間で、回動可能に前記シートに支持され、
前記操作パネルは、前記初期位置に位置する前記レバーの先端を下方から支持するレバーサポートを有する請求項3に記載の乗り物。
【請求項5】
前記レバーは、前記初期位置において前記土手部の上縁と同じ高さに配置されている請求項4に記載の乗り物。
【請求項6】
複数の前記操作子の少なくとも1つは、前記駆動ユニットを操作するためのジョイスティックであり、上方から見て、前記レバーの前端部と前記パッドとの間に配置されている請求項2~5のいずれか1つに記載の乗り物。
【請求項7】
前記操作装置は、前記シートの左側部及び右側部に左右一対設けられている請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【請求項8】
前記使用者の膝部を拘束するための左右のニーベルトが、左右の前記操作パネルの前部から延びている請求項7に記載の乗り物。
【請求項9】
前記シートから下方に延び、下端にローラを備えた少なくとも1つの第1脚と、
前記シートから下方に延び、下端に当接部材を備え、上下方向に変位可能な少なくとも1つの第2脚とを有し、
前記レバーは伝達機構を介して前記第2脚に接続され、
前記シートが前記高位置にあるときに、前記ローラ及び前記当接部材は前記床面から離れ、
前記シートが前記低位置にあるときに、前記ローラ及び前記当接部材が前記床面に接触可能であり、
前記シートが前記低位置にあるときに、前記レバーが操作されることによって、前記当接部材が前記床面から離れる請求項1~8のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【請求項10】
複数の前記操作子の少なくとも1つは点灯する請求項1~9のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【請求項11】
前記操作パネルは、前記レバーの下方において、前記操作面から下方に凹む凹部を有し、
複数の前記操作子の少なくとも1つが前記凹部の底部に配置されている請求項1~10のいずれか1つの項に記載の乗り物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットと、駆動ユニットに昇降装置を介して設けられたシートとを有する乗り物に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ユニットと、駆動ユニットに昇降装置を介して設けられたシートとを有する乗り物が特許文献1に記載されている。駆動ユニットは、倒立振子制御された駆動輪を有する。特許文献1に係る乗り物は、使用者が乗り降りし易いように、乗降時に走行時よりもシートの位置を低下させる。また、乗り物は、乗降時の車体の姿勢を安定させるために、シートが低位置に位置するときに接地する支持脚を有する。支持脚が接地した状態で乗り物が走行できるように、支持脚の下端にはローラが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る乗り物では、電源のオンオフや、シートの昇降、進行方向の操作等の各種の操作を受け付ける操作子が必要になる。また、乗り物には制動装置等の他の装置が設けられる場合があり、その場合に更に操作子が増え、各操作子のレイアウトが問題になる。また、シートに着座した使用者が容易に操作子を操作できるようにシートの左右の側部に配置した場合、使用者が乗り物に乗降する際に意図せず操作子に触れてしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、乗り物において、使用者による操作子の誤操作を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、乗り物(1)であって、車体フレーム(2)と、前記車体フレームに設けられ、床面上を移動可能な駆動ユニット(3)と、前記車体フレームの上方に配置され、使用者の臀部を支持するシート(4)と、前記車体フレームと前記シートとの間に設けられ、前記シートを低位置及び高位置の間で昇降させる昇降装置(5)と、前記シートの左側部及び右側部の少なくとも一方に設けられた操作装置(60)とを有し、前記操作装置は、上方を向く操作面(60A)を有する操作パネル(60B)と、前記操作パネルの後部から上方かつ前方に延びるレバー(34)と、前記操作面に設けられた複数の操作子(61)とを有し、上方から見て、複数の前記操作子の少なくとも1つは、前記レバーと重なりを有する位置に配置されている。
【0007】
この態様によれば、乗り物において、使用者による操作子の誤操作を防止することができる。操作子の少なくとも1つがレバーの下方に配置されるため、使用者が意図せずに操作子に触れることが抑制される。レバーの下方に配置される操作子は、電源スイッチ等の乗り物の挙動に大きな影響を与える操作子であるとよい。
【0008】
上記の態様において、前記シートは、前記使用者の臀部に接触するパッド(19)を有し、前記パッドの前部の左右の側部(19C)は、上方から見て前方に向けて左右内方に傾斜し、前記レバーの前端部と前記パッドとの左右方向における距離が、前記レバーの後端部と前記パッドとの左右方向における距離より大きくてもよい。
【0009】
この態様によれば、使用者は、レバーの前部とパッドとの隙間を通して、レバーの下方に配置された操作子を操作することができる。
【0010】
上記の態様において、前記パッドは、左右の側部に上方に突出した左右一対の土手部(19D)を有し、前記操作面は、前記土手部の上縁よりも下方に配置されてもよい。
【0011】
この態様によれば、使用者がレバーの下方に配置された操作子に意図せずに触れることが一層防止される。
【0012】
上記の態様において、前記レバーは、その後端を中心として、略水平に延びる初期位置と、前方に向けて上方に傾斜した操作位置との間で、回動可能に前記シートに支持され、前記操作パネルは、前記初期位置に位置する前記レバーの先端を下方から支持するレバーサポート(36)を有してもよい。
【0013】
この態様によれば、レバーが初期位置においてレバーサポートによって支持されているため、使用者は乗り物への乗降時にレバーを手すりとして利用することができる。
【0014】
上記の態様において、前記レバーは、前記初期位置において前記土手部の上縁と同じ高さに配置されてもよい。
【0015】
この態様によれば、乗り物への乗降時に、使用者がレバーを手すりとして利用し易くなる。
【0016】
上記の態様において、複数の前記操作子の少なくとも1つは、前記駆動ユニットを操作するためのジョイスティックであり、上方から見て、前記レバーの前端部と前記パッドとの間に配置されてもよい。
【0017】
この態様によれば、使用者はレバーに阻害されることなく、ジョイスティックを操作することができる。
【0018】
上記の態様において、前記操作装置は、前記シートの左側部及び右側部に左右一対設けられてもよい。
【0019】
この態様によれば、使用者が左右の手の一方に障害を有する場合でも、他方の手で乗り物を操作することができる。
【0020】
上記の態様において、前記使用者の膝部を拘束するための左右のニーベルト(55)が、左右の前記操作パネルの前部から延びてもよい。
【0021】
この態様によれば、操作パネルを利用してニーベルトを取り付けることができる。
【0022】
上記の態様において、前記シートから下方に延び、下端にローラ(23)を備えた少なくとも1つの第1脚(24)と、前記シートから下方に延び、下端に当接部材(26)を備え、上下方向に変位可能な少なくとも1つの第2脚(27)とを有し、前記レバーは伝達機構(33)を介して前記第2脚に接続され、前記シートが前記高位置にあるときに、前記ローラ及び前記当接部材は前記床面から離れ、前記シートが前記低位置にあるときに、前記ローラ及び前記当接部材が前記床面に接触可能であり、前記シートが前記低位置にあるときに、前記レバーが操作されることによって、前記当接部材が前記床面から離れてもよい。
【0023】
この態様によれば、レバー操作によって第2脚を操作することができる。
【0024】
上記の態様において、複数の前記操作子の少なくとも1つは点灯してもよい。
【0025】
この態様によれば、使用者は操作子の点灯に基づいて操作子の位置や作動状態を認識することができる。
【0026】
上記の態様において、前記操作パネルは、前記レバーの下方において、前記操作面から下方に凹む凹部(60C)を有し、複数の前記操作子の少なくとも1つが前記凹部の底部に配置されてもよい。
【0027】
この態様によれば、使用者による操作子の誤操作を一層確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の構成によれば、乗り物において、使用者による操作子の誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】シートが低位置にあるときの乗り物を左方から見た側面図
【
図2】シートが高位置にあるときの乗り物を左方から見た側面図
【
図9】シートが低位置にあり、第2脚が退避位置にあるときの乗り物を左方から見た側面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗り物の実施形態について説明する。本実施形態では、乗り物は倒立振子型車両として構成されている。
【0031】
図1及び
図2に示すように、乗り物1は、車体フレーム2と、車体フレーム2に設けられ、床面上を移動可能な少なくとも1つの駆動ユニット3と、車体フレーム2の上方に配置され、使用者の臀部を支持するシート4と、車体フレーム2とシート4との間に設けられた昇降装置5と、駆動ユニット3及び昇降装置5を制御する制御装置6とを有する。
【0032】
本実施形態では、左右一対の駆動ユニット3が車体フレーム2の左右の側部に設けられている。各駆動ユニット3は、倒立振子制御された駆動輪8を有する。本実施形態では、各駆動ユニット3は、摩擦式駆動装置である。
図4に示すように、摩擦式駆動装置は、車体フレーム2に回転可能に支持された一対のドライブディスク10と、ドライブディスク10のそれぞれに回転可能に支持された複数のドライブローラ11と、左右のドライブディスク10の間に配置され、ドライブローラ11に接触する環状の駆動輪8と、一対のドライブディスク10をそれぞれ独立して回転させる一対のアクチュエータ12とを有する。一対のドライブディスク10は互いに同軸に配置され、それらの回転軸線は左右方向に延びている。
図1に示すように、各アクチュエータ12は、電動モータ12Aと、電動モータ12Aの回転力を対応するドライブディスク10に伝達する伝達機構12Bとを有する。伝達機構12Bは、例えばベルト伝達機構であるとよい。電動モータ12Aはドライブディスク10の上方に配置されているとよい。
【0033】
図1及び
図4に示すように、駆動輪8は、環状をなし、一対のドライブディスク10の間にドライブディスク10と同軸に配置されている。また、駆動輪8は、複数のドライブローラ11に接触し、中心軸線回り及び環状の軸線回りに回転可能となっている。駆動輪8は、例えば円環状の芯体13と、芯体13に回転可能に支持された複数のドリブンローラ14とを有する。各ドリブンローラ14は、環状の芯体13の軸線を中心として回転可能に芯体13に支持されている。各ドリブンローラ14は、ドライブディスク10から荷重を受けて芯体13に対して回転する。
【0034】
一対のドライブディスク10が同じ回転速度で同じ方向に回転すると、駆動輪8はドライブディスク10と同じ回転速度で同じ方向に回転する。一対のドライブディスク10の回転方向又は回転速度に差が生じると、駆動輪8のドリブンローラ14が芯体13に対して回転する。これにより、駆動ユニット3は床面に対して左右方向に推進力を発生させることができる。
【0035】
車体フレーム2の後部にはバッテリが支持されている。また、車体フレーム2の内部又は後部には、制御装置6が支持されている。
【0036】
昇降装置5は、シート4を低位置及び高位置の間で昇降させる装置である。シート4は、昇降装置5に支持されたシートフレーム18と、シートフレーム18の上部に支持されたパッド19とを有する。使用者はパッド19に着座することができる。昇降装置5は、車体フレーム2とシートフレーム18とに結合されている。昇降装置5は、上下方向に伸縮することによって、車体フレーム2に対してシートフレーム18を上下に変位させる。昇降装置5は、例えば電動モータによって駆動されるボールねじ機構又はラックアンドピニオン機構であってもよく、リニアモータであってもよい。また、昇降装置5は、コンプレッサからの圧縮空気によって伸縮するエアシリンダであってもよい。
【0037】
昇降装置5は、例えば、車体フレーム2に支持されたベースと、ベースに上下に移動可能に設けられ、シートフレーム18に結合された可動体と、ベースに対して可動体を移動させるボールねじ機構と、ボールねじ機構を駆動する電動モータとを有するとよい。
【0038】
図2に示すように、シート4の高位置は、シート4の低位置に対して鉛直上方に位置するとよい。他の実施形態では、シート4の高位置は、シート4の低位置に対して側方にオフセットしてもよい。
【0039】
図3に示すように、シートフレーム18は、前後に延びる左右一対のサイドメンバ18Aと、左右に延び、左右のサイドメンバ18Aの前端に結合したフロントメンバ18Bと、左右に延び、左右のサイドメンバ18Aの後端に結合したリヤメンバ18Cとを有する。シートフレーム18は、平面視において、四角形の枠形に形成されている。また、シートフレーム18は、左右のサイドメンバ18Aから左右内方に延びと共に、フロントメンバ18B又はリヤメンバ18Cに結合した複数のインナプレート21を有する。複数のインナプレート21は、面が上下を向いている。各インナプレート21は、昇降装置5の上端に結合されている。各インナプレート21、左右のサイドメンバ18A、フロントメンバ18B、及びリヤメンバ18Cは、パッド19を下方から支持する。
【0040】
乗り物1は、シート4から下方に延び、下端にローラ23を備えた少なくとも1つの第1脚24と、シート4から下方に延び、下端に当接部材26を備えた少なくとも1つの第2脚27とを有する。本実施形態では、乗り物1は、4つの第1脚24と、4つの第2脚27とを有する。
【0041】
シートフレーム18の4つの角部のそれぞれには、下方に突出する脚支持部29が設けられている。前左の脚支持部29は左側のサイドメンバ18Aの前端とフロントメンバ18Bの左端との結合部に設けられている。前右の脚支持部29は右側のサイドメンバ18Aの前端とフロントメンバ18Bの左端との結合部に設けられている。後左の脚支持部29は左側のサイドメンバ18Aの後端とリヤメンバ18Cの左端との結合部に設けられている。後右の脚支持部29は右側のサイドメンバ18Aの後端とリヤメンバ18Cの右端との結合部に設けられている。
【0042】
各第1脚24及び各第2脚27は、対応する脚支持部29を介してシートフレーム18に結合されている。各脚支持部29には、1つの第1脚24と、1つの第2脚27とが接続されている。各第1脚24は互いに同様の構成を有し、各第2脚27は互いに同様の構成を有する。
【0043】
第1脚24は、脚支持部29に回動可能に結合されている。第1脚24は、車体フレーム2に近接して配置された収納位置と、収納位置よりも車体フレーム2から側方に離れた展開位置との間で回動可能である。
【0044】
第1脚24は、関節24Aによって互いに結合された第1脚上部24B及び第1脚下部24Cを有してもよい。第1脚上部24Bの上端は対応する脚支持部29に回動可能に結合されている。第1脚下部24Cの上端は、第1脚上部24Bの下端に回動可能に結合されている。第1脚上部24Bの下端と第1脚下部24Cの上端との接続部が関節24Aを構成する。脚支持部29に対する第1脚上部24Bの回動軸線と、第1脚上部24Bに対する第1脚下部24Cの回動軸線とは互いに平行に配置されているとよい。他の実施形態では、関節24Aが省略され、第1脚上部24B及び第1脚下部24Cは一体に形成されてもよい。また、脚支持部29と第1脚上部24Bとが一体に形成され、第1脚下部24Cが関節24Aを介して第1脚上部24Bに接続されてもよい。
【0045】
第1脚下部24Cの下端には、ローラ23が回転可能に結合されている。ローラ23は、第1脚下部24Cに対して回転軸が鉛直軸回りに回転するキャスターであるとよい。他の実施形態では、ローラ23に代えてボールが第1脚下部24Cの下端に支持されてもよい。
【0046】
前左の第1脚24の下端は、収納位置から展開位置に向けて前方かつ左方に移動する。前右の第1脚24の下端は、収納位置から展開位置に向けて前方かつ右方に移動する。後左の第1脚24の下端は、収納位置から展開位置に向けて後方かつ左方に移動する。後右の第1脚24の下端は、収納位置から展開位置に向けて後方かつ右方に移動する。各第1脚24の収納位置から展開位置への移動方向は適宜変更してよい。
【0047】
第1脚24は、回動範囲を規制する複数のストッパ24Dを有する。複数のストッパ24Dは、第1脚24の内部に設けられているとよい。ストッパ24Dは、脚支持部29材及び第1脚上部24Bの上端の接続部と、第1脚上部24Bの下端及び第1脚下部24Cの上端の接続部とに設けられているとよい。
【0048】
第1脚24は、第1脚24を展開位置から収納位置に向けて付勢する付勢部材(不図示)を有する。詳細には、脚支持部29材及び第1脚上部24Bの上端の接続部と、第1脚上部24Bの下端及び第1脚下部24Cの上端の接続部とに付勢部材が設けられているとよい。付勢部材は、捩じりばねや、引張りコイルばね、圧縮コイルばね等であるとよい。各第1脚24は、ローラ23が床面に押されることによって、収納位置から展開位置に変位する。脚支持部29材及び第1脚上部24Bの上端の接続部と、第1脚上部24Bの下端及び第1脚下部24Cの上端の接続部とにダンパ(不図示)が設けられてもよい。ダンパは、回転ダンパやピストンダンパであるとよい。
【0049】
第2脚27は、上下方向に伸縮可能であり、伸長方向に付勢されている。第2脚27は、対応する脚支持部29から下方に延びる第2脚上部27Aと、第2脚上部27Aに上下方向に移動可能に支持された第2脚下部27Bとを有する。例えば、第2脚上部27Aは直線状に延びるパイプによって形成され、第2脚下部27Bは第2脚上部27Aを受容する摺動可能に受容するパイプによって形成されているとよい。
【0050】
第2脚下部27Bの下端には、当接部材26が設けられている。当接部材26は、第2脚下部27Bよりも高い可撓性を有することが好ましい。また、当接部材26は、第2脚下部27Bよりも高い摩擦係数を有することが好ましい。当接部材26は、例えばゴム又はエラストマーによって形成されているとよい。当接部材26が接地することによって、ローラ23を介して接地する乗り物1を停止状態に維持することができる。第2脚27の下端に設けられた当接部材26と床面との摩擦力によって、乗り物1は停止状態に維持される。当接部材26と床面との摩擦力によって乗り物を停止状態に維持するため、駆動ユニット3に電力を供給する必要がなく、エネルギー効率を改善することができる。また、乗り物1を停止させることによって、シート4を高位置に移動させ、倒立振子制御を開始する際に、乗り物1の重心位置の決定が容易になる。
【0051】
脚支持部29と第2脚下部27Bとの間には、第2脚下部27Bを第2脚上部27Aに対して下方に付勢する付勢部材が介装されている。付勢部材は、圧縮コイルばねであるとよい。付勢部材は、第2脚下部27Bの内部に配置され、第1脚上部24Bの下端に当接しているとよい。第2脚27は、付勢部材によって伸長方向に付勢されている。
【0052】
第2脚27は、伸縮動作を減衰するダンパ27Cを有する。ダンパ27Cは、ピストンダンパであってよい。ダンパ27Cは、上下に延び、第2脚上部27Aに結合された上端と、第2脚下部27Bに結合された下端とを有する。ダンパ27Cの上端は、第2脚上部27Aに代えて、第2脚上部27Aが結合された脚支持部29に結合されてもよい。
【0053】
第2脚27は、対応する第1脚24よりも車体フレーム2側に設けられている。前左の第2脚27は前左の第1脚24よりも右方かつ後方に配置され、前右の第2脚27は前右の第1脚24よりも左方かつ後方に配置され、後左の第2脚27は後左の第1脚24よりも右方かつ前方に配置され、後右の第2脚27は後右の第1脚24よりも左方かつ前方に配置されている。
【0054】
隣り合う2つの第2脚27の下部は、連結部材31によって互いに接続されている。本実施形態では、前左の第2脚下部27Bと前右の第2脚下部27Bとが左右に延びる連結部材31によって接続され、後左の第2脚下部27Bと後右の第2脚下部27Bとが左右に延びる連結部材31によって接続されている。
【0055】
図2に示すように、シート4が高位置にあるときに、各ローラ23及び各当接部材26は床面から離れている。シート4が高位置にあるときに、各当接部材26の下端は各ローラ23の下端よりも下方に配置されている。
図1に示すように、シート4が低位置にあるときに、各ローラ23及び各当接部材26は床面に接触する。シート4が高位置から低位置に移動するときに、各ローラ23よりも各当接部材26が先に床面に接触する。これにより、シート4が低位置に移動するときに、早期に乗り物を停止状態にすることができる。
【0056】
各第2脚27が、上下方向に伸縮可能に形成されているため、各当接部材26が確実に床面に接触することができる。また、各第2脚27がダンパ27Cを有するため、シート4が低位置に到達するときの衝撃を低下させることができる。隣り合う2つの第2脚下部27Bが連結部材31によって連結されているため、各第2脚27の剛性が増加する。これにより、各第2脚27は乗り物1の移動を一層確実に規制することができる。
【0057】
各第1脚24は床面に押されて、収納位置から展開位置に移動する。これにより、第1脚24の接地点間の距離が広がり、低位置における乗り物1の姿勢が安定する。
【0058】
図5に示すように、各第2脚27の第2脚下部27Bは、伝達機構33を介して少なくとも1のレバー34に接続されている。本実施形態では、左右一対のレバー34が設けられている。左右一対のレバー34及びその支持構造は左右対称形であるため、以下に左側のレバー34及びその支持構造について説明する。
【0059】
サイドメンバ18Aの後部には、後側レバーサポート36が設けられている。後側レバーサポート36は、対応するサイドメンバ18Aから上方に延びている。レバー34の基端部は、後側レバーサポート36に回動可能に結合されている。レバー34の回動軸線は、左右方向に延びている。レバー34は、基端部から前方に水平に延びた初期位置と、初期位置に対して上方かつ後方に回動した操作位置との間で回動する。
【0060】
サイドメンバ18Aの前部には、前側レバーサポート37が設けられている。前側レバーサポート37は、対応するサイドメンバ18Aから上方かつ後方に延びている。前側レバーサポート37の上端には、初期位置にあるレバー34の先端部を受容するレバー受け部37Aが形成されている。前側レバーサポート37は、初期位置に位置するレバー34の先端を下方から支持する。
【0061】
前側レバーサポート37は、左右において対応するレバー34を初期位置にロックするロック装置38を有する。ロック装置38は、前側レバーサポート37に変位可能に支持され、ロック爪38A及びタブ38Bを有する変位部材38Cと、変位部材38Cを付勢する付勢部材(不図示)とを有する。変位部材38Cは、前側レバーサポート37に回動可能又はスライド移動可能に設けられているとよい。変位部材38Cは、ロック爪38Aがレバー受け部37A内に突出する突出位置と、ロック爪38Aが前側レバーサポート37内に退避した解除位置との間で変位可能である。タブ38Bは、前側レバーサポート37から外方に突出している。タブ38Bは、前側レバーサポート37から下方に突出しているとよい。付勢部材は、変位部材38Cを突出位置に向けて付勢している。レバー34の先端には、ロック爪38Aを受容する係止孔38Dが形成されている。ロック爪38Aが係止孔38Dに突入することによって、レバー34は初期位置に維持される。変位部材38Cが解除位置に移動すると、レバー34は初期位置から操作位置に向けて回動することができる。使用者は、タブ38Bを操作することによって、変位部材38Cを解除位置に移動させることができる。
【0062】
複数の第2脚27のそれぞれが伝達機構33に接続されている。伝達機構33は、一対のレバー34の一方の変位に応じて、第2脚27のそれぞれを変位させる。伝達機構33は、一対のレバー34の一方の変位に応じて前記第2脚27のそれぞれを上方に引き上げる。また、伝達機構33は、一対のレバー34の一方の変位をレバー34の他方に伝達させない。
【0063】
伝達機構33は、左右一対の入力部材41、駆動軸42、左右一対の第1リンク43、左右一対の第2リンク44、左右一対のコントロールケーブル45、及び左右一対のロックアーム46を有する。伝達機構33において、左右一対の要素は同一の構成であるため、一方について説明する。
【0064】
入力部材41は、後側レバーサポート36に回動可能に支持されている。入力部材41の回動軸線は、レバー34の回動軸線と同軸に配置されている。入力部材41は、初期位置と操作位置との間で回動する。レバー34には第1押圧部34Aが設けられている。第1押圧部34Aは、レバー34に結合されたピンであってよい。レバー34が初期位置から操作位置に回動するとき、第1押圧部34Aが入力部材41を押圧し、入力部材41が初期位置から操作位置に回動する。一方、レバー34が初期位置にあるときに、入力部材41は第1押圧部34Aから離れて操作位置に回動することができる。すなわち、入力部材41はレバー34に離接可能になっている。
【0065】
駆動軸42は左右に延びている。駆動軸42の左端は左側の後側レバーサポート36に回動可能に支持され、駆動軸42の右端は右側の後側レバーサポート36に回動可能に支持されている。駆動軸42は、左右一対の第1アーム42Aと左右一対の第2アーム42Bとを有する。左側の第1アーム42A及び左側の第2アーム42Bは駆動軸42の左端に設けられ、右側の第1アーム42A及び右側の第2アーム42Bは駆動軸42の右端に設けられている。第1アーム42A及び第2アーム42Bは駆動軸42の径方向に突出している。左側の第1アーム42Aは第1リンク43によって左側の入力部材41に接続され、左側の第2アーム42Bは第2リンク44によって後左の第2脚下部27Bに接続されている。右側の第1アーム42Aは第1リンク43によって右側の入力部材41に接続され、右側の第2アーム42Bは第2リンク44によって後右の第2脚下部27Bに接続されている。
【0066】
コントロールケーブル45は、管状のアウタケーシング45Aと、アウタケーシング45Aの内部に摺動可能に支持されたインナケーブル45Bとを有する。左側のコントロールケーブル45のアウタケーシング45Aの一端は左側の後側レバーサポート36に結合され、他端は前左の第2脚上部27A又は脚支持部29に結合されている。左側のコントロールケーブル45のインナケーブル45Bの一端は左側の入力部材41に接続され、他端は前左の第2脚下部27Bに接続されている。同様に、右側のコントロールケーブル45のアウタケーシング45Aの一端は右側の後側レバーサポート36に結合され、他端は前右の第2脚上部27A又は脚支持部29に結合されている。左側のコントロールケーブル45のインナケーブル45Bの一端は右側の入力部材41に接続され、他端は前右の第2脚下部27Bに接続されている。
【0067】
各第2脚27は付勢部材によって伸長する方向に付勢されている。後側の第2脚27の付勢力は、第2リンク44、駆動軸42、及び第1リンク43を介して入力部材41に伝達され、入力部材41は初期位置に付勢されている。また、前側の第2脚27の付勢力は、コントロールケーブル45を介して入力部材41に伝達され、入力部材41は初期位置に付勢されている。
【0068】
ロックアーム46は後側レバーサポート36に回動可能に支持されている。ロックアーム46は、入力部材41の周囲に配置され、付勢部材によって入力部材41側に付勢されている。入力部材41が操作位置にあるときに、ロックアーム46は入力部材41を係止して入力部材41を操作位置に維持する。ロックアーム46と入力部材41とは、入力部材41が操作位置にあるときに互いに係合する係合部を有するとよい。レバー34の先端部には、解除ボタン34Cが設けられている。解除ボタン34Cは、伝達部材34Dを介してロックアーム46と接続されている。解除ボタン34Cが押し込まれると、解除ボタン34Cの移動に応じて伝達部材34Dがロックアーム46側に移動し、伝達部材34Dがロックアーム46を入力部材41から離れる方向に押す。これにより、ロックアーム46による入力部材41の係止が解除され、入力部材41は付勢部材の付勢力を受けて初期位置に復帰することができる。解除ボタン34Cと伝達部材34Dとは例えばカムによって接続しているとよい。伝達部材34Dは付勢部材によってロックアーム46から離れる側に付勢されている。
【0069】
使用者が左側のレバー34の一方を初期位置から操作位置に向けて回動させると、左側のレバー34の第1押圧部34Aが左側の入力部材41を押し、左側の入力部材41が初期位置から操作位置に向けて回動する。左側の入力部材41が回動すると、左側の第1リンク43によって駆動軸42が回動する。駆動軸42が回動すると、左右の第2リンク44が上方に移動し、左右の第2リンク44が後左及び後右の第2脚下部27Bを付勢力に抗して上方に引き上げる。すなわち、
図9に示すように、後左及び後右の第2脚27が収縮する。
【0070】
また、駆動軸42が回転すると、右側の第1リンク43によって右側の入力部材41が初期位置から操作位置に回動する。このとき、右側の入力部材41は右側のレバー34に対して独立して回動するため、右側のレバー34は初期位置に維持される。すなわち、一対のレバー34の一方の変位はレバー34の他方に伝達されない。
【0071】
左右の入力部材41が操作位置に向けて回動すると、対応するコントロールケーブル45によって前左及び前右の第2脚下部27Bが対応する付勢部材の付勢力に抗して上方に移動する。すなわち、前左及び前右の第2脚27が収縮する。
【0072】
シート4が低位置にあるときに、使用者がレバー34を操作位置に回動させると全ての第2脚27が収縮し、当接部材26は床面に接触した使用位置から床面から離れた退避位置に移動する。このように、シート4が低位置にあるときに、レバー34の位置に応じて当接部材26が使用位置と退避位置との間で変位する。左右の第1リンク43、駆動軸42、左右の第2リンク44、及び左右のコントロールケーブル45は、入力部材41の変位に応じて第2脚27のそれぞれを変位させる出力部材として機能する。
【0073】
図3に示すように、乗り物1は、シート4から下方に延びる少なくとも1つの支持部材51を有する。支持部材51は、その下部に使用者の足裏を支持するフットレスト51Aを有する。本実施形態では、乗り物1は、左右一対の支持部材51を有する。各支持部材51は、シート4に対して上下に変位可能に設けられている。
【0074】
シート4は、上下に延びる筒状の受け部53を有する。受け部53は、左右一対の支持部材51に対応して、左右一対設けられている。左側の受け部53は前左の脚支持部29に設けられ、右側の受け部53は前右の脚支持部29に設けられている。支持部材51は、受け部53に摺動可能に支持された軸部51Bと、軸部51Bの上部に設けられたストッパ51Cとを有する。軸部51Bの下部には、フットレスト51Aが結合されている。ストッパ51Cは、受け部53の上端に当接することによって受け部53に対する軸部51Bの下限位置を定める。軸部51Bは、例えばパイプ材によって形成されているとよい。
【0075】
シート4が低位置にあるときに、左右のフットレスト51Aの下端が連結部材31の上面に当接し、かつストッパ51Cが受け部53から上方に離れた位置に配置される。この状態で、軸部51Bの下端は床面から離れている。シート4が低位置から高位置に向けて移動すると、前左及び前右の第2脚27が伸長し、受け部53が支持部材51に対して上昇する。これにより、シート4の上昇に応じてシート4とフットレスト51Aとの距離が大きくなる。その後、更にシート4が上昇すると、受け部53がストッパ51Cに当接する。
【0076】
各軸部51Bの下端にはローラ51Dが設けられてもよい。この場合、軸部51Bの下端がローラ51Dを介して床面に当接するとよい。これにより、支持部材51が接地した状態で乗り物1は走行することができる。
【0077】
左右の軸部51Bは、左右に延びる連結部材54によって互いに結合されているとよい。左右の軸部51Bは、前左の第2脚27と前右の第2脚27との間に配置されている。左右のフットレスト51Aは、対応する軸部51Bから前方かつ左右内方に延びている。
【0078】
シート4が低位置にあるときに、軸部51Bの下端がローラ51Dを介して床面に当接し、かつストッパ51Cが受け部53から上方に離れた位置に配置される。シート4が低位置から高位置に向けて移動すると、受け部53が支持部材51に対して上昇する。この間、支持部材51は接地した状態に維持される。これにより、シート4の上昇に応じてシート4とフットレスト51Aとの距離が大きくなる。その後、更にシート4が上昇すると、受け部53がストッパ51Cに当接する。受け部53がストッパ51Cに当接した状態でシート4が更に上昇すると、支持部材51はシート4と一体に上昇し、軸部51Bの下端が床面から離れる。
【0079】
シート4が高位置にあるとき、ストッパ51Cは受け部53と当接している。シート4が高位置から低位置に向けて移動すると、支持部材51は受け部53と共に下降する。その後、シート4がある高さに到達したときに、支持部材51の軸部51Bの下端がローラ51Dを介して床面に当接し、支持部材51の下降が終了する。その後、受け部53がストッパ51Cから離れ、支持部材51に対して下方に移動する。これにより、シート4の下降に応じてシート4とフットレスト51Aとの距離が小さくなる。このように、シート4が高位置にあるときのシート4とフットレスト51Aとの距離L2(
図2参照)が、シート4が低位置にあるときのシート4とフットレスト51Aとの距離L1(
図1参照)より大きくなるように、支持部材51が変位する。
【0080】
軸部51Bは受け部53に対して上下方向に移動する。そのため、シート4が低位置にあるときのフットレスト51Aのシート4に対する角度及び前後位置は、シート4が高位置にあるときのフットレスト51Aの前記シート4に対する角度及び前後位置と同じである。これにより、シート4が低位置から高位置に移動してもフットレスト51Aのシート4に対する角度及び前後位置が変化しないため、使用者の姿勢が安定する。
【0081】
シート4が高位置にあるときに、第2脚27の当接部材26の下端が第1脚24のローラ23の下端よりも下方に配置され、かつ軸部51Bのローラ51Dの下端が当接部材26の下端よりも上方に配置されている。これにより、当接部材26が支持部材51よりも先に接地する。これにより、当接部材26によって乗り物1の移動が規制された状態で、支持部材51が安定性良く接地することができる。
【0082】
パッド19の上面は、使用者の臀部及び大腿部に当接する。パッド19の上面の前部は使用者の大腿部に当接し、パッド19の上面の前部は使用者の臀部に当接する。
図6~
図8に示すように、パッド19の前部の上面は、前方に向けて下方に傾斜した傾斜面19Aを有する。詳細には、傾斜面19Aは、パッド19の前端から前後方向における中央部まで延びている。傾斜面19Aは、パッド19の前後方向における中央部を越えて後方に延びていてもよい。これにより、シート4に着座した使用者の大腿部は、膝側に向けて下方に傾斜する。
【0083】
パッド19の後部の上面には、下方に凹む凹部19Bが設けられている。凹部19Bには使用者の座骨が突入する。凹部19Bは、使用者の座骨を係止し、使用者の座骨がパッド19に対して前後に移動することを抑制する。
【0084】
パッド19の前部の左右の側部19Cは、上方から見て前方に向けて左右内方に傾斜している。パッド19は、左右の側部に上方に突出した左右一対の土手部19Dを有する。左右一対の土手部19Dは、使用者の臀部が左右に移動することを抑制する。パッド19の後部には、上方に向けて突出する背凭れ部19Eが設けられてもよい。
【0085】
シート4は、使用者の膝部をパッド19の前部に拘束するためのニーベルト55を有する。ニーベルト55は、左側のサイドメンバ18A又は左側の前側レバーサポート37に結合された左側のニーベルト55と、右側のサイドメンバ18A又は右側の前側レバーサポート37に結合された右側のニーベルト55とを有する。左右のニーベルト55は、バックル及びタング等の結合部材55Cによって互いに着脱可能に結合される。
【0086】
図6及び
図7に示すように、乗り物1は、シート4の左側部及び右側部の少なくとも一方に設けられた操作装置60を有する。本実施形態では、操作装置60はシート4の左側部及び右側部の両方に設けられている。これにより、使用者が左右の手の一方に障害を有する場合でも、他方の手で乗り物を操作することができる。左右の操作装置60は、同一の構成を有することが好ましい。
【0087】
操作装置60は、上方を向く操作面60Aを有する操作パネル60Bと、操作面60Aに設けられた複数の操作子61とを有する。レバー34は、操作装置60の一部を構成し、操作パネル60Bの後部から上方かつ前方に延びている。
【0088】
操作パネル60Bは、前側レバーサポート37の下部及び後側レバーサポート36を覆うように配置されている。操作パネル60Bは、前側レバーサポート37、後側レバーサポート36、及びシートフレーム18の少なくとも1つに支持されているとよい。操作パネル60Bはパッド19の側部19Cに沿って前後に延びている。レバー34は、操作パネル60Bの上方を前後に延びている。パッド19の前部の側部19Cが左右内方に傾斜して延びているため、レバー34の前端部とパッド19との左右方向における距離が、レバー34の後端部とパッド19との左右方向における距離より大きくなっている。前側レバーサポート37の上部は、操作パネル60Bから上方に突出している。
【0089】
図7に示すように、複数の操作子61は、電源スイッチ61A、昇降スイッチ61B、移動方向スイッチ61C、走行モード切替スイッチ61Dを含むとよい。電源スイッチ61A、昇降スイッチ61B、移動方向スイッチ61C、走行モード切替スイッチ61Dは、左右の操作装置60のそれぞれに設けられているとよい。複数のスイッチは、制御装置6に接続されている。
【0090】
上方から見て、複数の操作子61の少なくとも1つは、レバー34と重なりを有する位置に配置されている。操作パネル60Bは、レバー34の下方において、操作面60Aから下方に凹む凹部60Cを有する。複数のスイッチの少なくとも1つが凹部60Cの底部に配置されているとよい。本実施形態では、電源スイッチ61Aと昇降スイッチ61Bとがレバー34と重なる位置に配置されている。また、電源スイッチ61Aと昇降スイッチ61Bとが凹部60Cの底部に配置されている。レバー34が操作子61の少なくとも1つの上方に配置されることによって、使用者が意図せずに操作子61に触れることが抑制される。これにより、使用者による操作子61の誤操作を防止することができる。レバー34の下方に配置されるスイッチは、電源スイッチ61Aや昇降スイッチ61Bといった乗り物1の挙動に大きな影響を与える操作子61であるとよい。操作子61が凹部60Cに配置されることによって、使用者による操作子61の誤操作を一層確実に防止することができる。使用者は、レバー34の前部とパッド19との隙間を通して、レバー34の下方に配置された電源スイッチ61A及び昇降スイッチ61Bを操作する。
【0091】
操作面60Aは、土手部19Dの上縁よりも下方に配置されている。これにより、使用者が操作面60Aに配置された操作子61及びレバー34の下方に配置された操作子61に意図せずに触れることが一層防止される。レバー34は、初期位置において土手部19Dの上縁と同じ高さに配置されている。
【0092】
移動方向スイッチ61Cは、駆動ユニット3を操作するためのスイッチである。移動方向スイッチ61Cは、ジョイスティックであるとよい。移動方向スイッチ61Cは、上方から見て、レバー34の前端部とパッド19との間に配置されている。これにより、使用者はレバー34に阻害されることなく、ジョイスティックである移動方向スイッチ61Cを操作することができる。
【0093】
複数の操作子61の少なくとも1つは点灯してもよい。使用者は操作子61の点灯に基づいて操作子61の位置や作動状態を認識することができる。複数の操作子61の少なくとも1つは、点灯することによって乗り物1の状態を表示するとよい。例えば、電源スイッチ61Aは、乗り物1の電源がオンであるとき、すなわち起動状態であるときに点灯するとよい。また、昇降スイッチ61Bは、昇降装置5が駆動しているときに点灯するとよい。また、走行モード切替スイッチ61Dは、選択された走行モードに応じて発光色を変化させてもよい。
【0094】
制御装置6は、使用者による電源スイッチ61Aの操作に応じて、乗り物1の電源をオン・オフする。制御装置6は、使用者による昇降スイッチ61Bの操作に応じて、昇降装置5を駆動させ、シート4を昇降させる。制御装置6は、使用者による走行モード切替スイッチ61Dの操作に応じて、乗り物1の走行モードを旋回移動モードと平行移動モードとの間で切り替える。
【0095】
制御装置6は、シート4が低位置にあり、かつレバー34が操作位置にあるときに、使用者による移動方向スイッチ61Cに応じて、駆動ユニット3を制御し、乗り物1を走行させる。シート4の位置及びレバー34の位置は、制御装置6に接続されたセンサによって検出されるとよい。制御装置6は、旋回移動モードが選択されているときには、移動方向スイッチ61Cの横方向操作に対して乗り物1を対応する横方向に旋回させるとよい。また、制御装置6は、平行移動モードが選択されているときには、移動方向スイッチ61Cの横方向操作に対して乗り物1を対応する横方向に平行移動させるとよい。
【0096】
レバー34が初期位置において前側レバーサポート37によって下方から支持されているため、使用者は乗り物1への乗降時にレバー34を手すりとして利用することができる。また、レバー34が、初期位置において土手部19Dの上縁と同じ高さに配置されているため、乗り物1への乗降時に、使用者がレバー34を手すりとして利用し易くなる。
【0097】
図6に示すように、左右のニーベルト55は、左右のサイドメンバ18A又は前側レバーサポート37から操作パネル60Bの前端部を通過して外部に延びている。ニーベルト55は、パッド19の前端部と共に使用者の膝部を拘束し、使用者をシート4に安定良く着座させる。また、シートフレーム18には使用者の腰部をシート4に拘束する腰ベルト71が設けられている。腰ベルト71は、左側のサイドメンバ18Aの後部から左側の操作パネル60Bの後部を通過して延びる左側の腰ベルト71と、右側のサイドメンバ18Aの後部から右側の操作パネル60Bの後部を通過して延びる右側の腰ベルト71とを有する。左右の腰ベルト71の先端には、着脱可能に互いに結合する結合部材72が設けられている。
【0098】
乗り物1の下部には、アウタシェル75が取り付けられてもよい。各第2脚27と、各支持部材51の軸部51Bと、各第1脚24の第1脚上部24Bとは、アウタシェル75の内部に配置されるとよい。各第1脚24の第1脚下部24Cの下端は、アウタシェル75の外部に突出するとよい。
【0099】
以上のように構成した乗り物1の動作について説明する。
図1に示すように、シート4が低位置にあり、かつレバー34が初期位置にあるとき、左右の駆動ユニット3の駆動輪8と、各第1脚24のローラ23と、各第2脚27の当接部材26と、各支持部材51の下端とが接地している。この状態では、各当接部材26が接地しているため、乗り物1は水平方向への移動が規制されている。この状態を乗り物1の停止状態という。乗り物1が停止状態にあるとき、使用者は乗り物1に乗降することができる。その際、使用者は左右のレバー34を手摺として使用することができる。
【0100】
乗り物1の停止状態において、使用者がレバー34を初期位置から操作位置に移動させると、
図9に示すように、各第2脚27が上方に収縮し、各当接部材26が床面から離れる。この状態を低位置走行可能状態という。低位置走行可能状態では、使用者は移動方向スイッチ61Cを操作することによって、乗り物1を走行させることができる。使用者がレバー34を操作位置に移動させると、ロックアーム46が入力部材41を係止して入力部材41を操作位置に維持する。これにより、使用者はレバー34を初期位置に戻して、ロック装置38に係止させることができる。使用者が解除ボタン34Cを押すと、各第2脚27が伸長して、各当接部材26が接地し、乗り物1は停止状態になる。
【0101】
乗り物1の停止状態において、使用者が昇降スイッチ61Bを操作すると、制御装置6が昇降装置5を駆動させ、
図2に示すようにシート4が低位置から高位置に移動する。シート4の上昇に応じて、各第1脚24のローラ23及び各第2脚27の当接部材26は床面から離れる。このとき、各支持部材51は、ストッパ51Cが受け部53に当接するまでは連結部材31に維持されるため、フットレスト51Aとシート4との距離が増加する。
【0102】
各支持部材51が床面から離れた後は、左右の駆動ユニット3の駆動輪8のみが接地する。このとき、乗り物1の姿勢は倒立振子制御によって維持される。この状態では、制御装置6は使用者の体重移動に起因する乗り物1の重心の変位を検知し、駆動ユニット3を制御して乗り物1を走行させる。
【0103】
シート4が低位置から高位置に移動することによって、シートに着座した使用者の膝が伸び(膝角度が大きくなり)、膝の前方への飛び出し量が減少する。これにより、使用者を含む乗り物1のフットプリント、すなわち使用者を含む乗り物1を上方から見た占有面積が小さくなる。その結果、乗物は狭い場所での移動が容易になる。また、シート4が低位置から高位置に移動することによって、シート4に着座した使用者の視線が高くなる。また、シート4に着座した使用者の足が上下に延びるため、使用者の背筋が伸び、使用者の姿勢が安定し易くなる。この結果、シート4が高位置に上昇しても、使用者は安心感を得ることができる。これにより、使用者に安心感を与えつつ視線を高くすることができる乗り物を提供することができる。フットレスト51Aが設けられた支持部材51が重力によって、シート4に対して変位するため、支持部材51の動力が不要である。そのため、乗り物1のエネルギー効率を改善することができる。
【0104】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。制御装置6は、入力部材41がロックアーム46に係止されていない場合に昇降装置5の操作を禁止してもよい。また、制御装置6は、シート4が低位置にあり、かつレバー34が初期位置にある場合に、昇降装置5によるシート4の上昇を許可するとよい。この構成によれば、第2脚27が退避位置にある状態でシート4が高位置に位置することを禁止することができる。
【0105】
乗り物1は、シート4が高位置にあるときに、レバー34を初期位置に維持する規制機構を有してもよい。規制機構は、例えばロック装置38の動きを規制するアクチュエータと、アクチュエータを制御する制御装置6によって構成されるとよい。制御装置6は、シート4の位置を検出し、シート4が高位置にあるときにアクチュエータを駆動し、ロック装置38の変位部材38Cをロック位置に維持するとよい。一方、制御装置6は、シート4が低位置にあるときにアクチュエータを変位部材38Cから離し、変位部材38Cの回転を許容するとよい。
【符号の説明】
【0106】
1 :乗り物
2 :車体フレーム
3 :駆動ユニット
4 :シート
5 :昇降装置
6 :制御装置
18 :シートフレーム
19 :パッド
19A :上面
19B :凹部
19C :側部
19D :土手部
19E :背凭れ部
21 :インナプレート
23 :ローラ
24 :第1脚
24A :関節
24B :第1脚上部
24C :第1脚下部
24D :ストッパ
26 :当接部材
27 :第2脚
27A :第2脚上部
27B :第2脚下部
27C :ダンパ
31 :連結部材
33 :伝達機構
34 :レバー
36 :後側レバーサポート
37 :前側レバーサポート
38 :ロック装置
41 :入力部材
42 :駆動軸
43 :第1リンク
44 :第2リンク
45 :コントロールケーブル
46 :ロックアーム
51 :支持部材
51A :フットレスト
51B :軸部
51C :ストッパ
51D :ローラ
53 :受け部
55 :ニーベルト
60 :操作装置
60A :操作面
60B :操作パネル
60C :凹部
61 :操作子