(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-11
(45)【発行日】2025-09-22
(54)【発明の名称】エラストマーシート、及び静電型センサ
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20250912BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20250912BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20250912BHJP
【FI】
B62D1/06
H05K1/02 J
H05K1/02 P
H05B3/20 347
(21)【出願番号】P 2022056307
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2024-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛正
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2022/0090982(US,A1)
【文献】国際公開第2014/123222(WO,A1)
【文献】特開2016-027532(JP,A)
【文献】特開昭63-033122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/06
H05K 1/02
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元曲面を有する巻付け対象部材に巻き付けられるエラストマー製のエラストマーシートであって、
前記エラストマーシートの巻付け方向の中央に位置する中央領域と、
前記エラストマーシートの前記巻付け方向の端部に位置する一対の端領域と、を備え、
前記中央領域および前記一対の端領域は、前記エラストマーシートにおける前記巻付け方向に交差する交差方向の断面形状が、前記交差方向に延伸または圧縮可能な波形状に形成されており、
前記交差方向について、前記中央領域が延伸または圧縮する割合と、前記一対の端領域が延伸または圧縮する割合と、が異なるように構成されている、エラストマーシート。
【請求項2】
前記中央領域および前記一対の端領域の一方は延伸可能に構成され、他方は圧縮可能に構成されている、請求項1に記載のエラストマーシート。
【請求項3】
さらに、前記エラストマーシートの前記巻付け方向において前記中央領域と前記一対の端領域との境界に位置し、前記巻付け対象部材の巻付ける前の状態における前記交差方向の断面形状が平坦な平板状に形成された境界領域を備える、請求項2に記載のエラストマーシート。
【請求項4】
前記中央領域と、前記一対の端領域とは、前記巻付け方向に連続して配置されている、請求項2に記載のエラストマーシート。
【請求項5】
前記中央領域と前記一対の端領域の少なくとも一方は、前記交差方向の断面形状が前記交差方向の全長に亘って波形状に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のエラストマーシート。
【請求項6】
前記中央領域と前記一対の端領域の少なくとも一方は、前記巻付け対象部材の巻付ける前の状態における前記交差方向の断面形状がサイン波形状に形成されている、請求項5に記載のエラストマーシート。
【請求項7】
前記サイン波形状の振幅は、前記交差方向における延伸または圧縮する割合が小さいほど小さくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど大きくされている、請求項6に記載のエラストマーシート。
【請求項8】
前記サイン波形状の振幅が、前記中央領域から前記一対の端
領域に接近するにしたがって連続的に小さくされている、請求項6または7に記載のエラストマーシート。
【請求項9】
前記サイン波形状の振幅が、前記中央領域から前記一対の端
領域に接近するにしたがって段階的に小さくされている、請求項6または7に記載のエラストマーシート。
【請求項10】
前記中央領域と前記一対の端領域の少なくとも一方は、
前記交差方向の断面形状が前記交差方向に延伸または圧縮可能に形成され、前記交差方向に所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部と、
前記交差方向において隣り合う蛇腹部同士を接続し、前記巻付け方向および前記交差方向と直交する方向について前記蛇腹部よりも厚肉に形成された支持部と、
を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載のエラストマーシート。
【請求項11】
前記交差方向についての前記蛇腹部の幅寸法は、前記交差方向における延伸または圧縮する割合が小さいほど小さくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど大きくされ、
前記交差方向についての前記支持部の幅寸法は、前記交差方向における延伸または圧縮する割合が小さいほど大きくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど小さくされる、請求項10に記載のエラストマーシート。
【請求項12】
前記交差方向についての前記蛇腹部の幅寸法は、前記一対の端
領域に接近するにしたがって連続的に大きくされており、且つ、前記交差方向についての前記支持部の幅寸法は、前記一対の端
領域に接近するにしたがって連続的に小さくされている、請求項10または11に記載のエラストマーシート。
【請求項13】
前記交差方向についての前記蛇腹部の幅寸法は、前記一対の端
領域に接近するにしたがって段階的に大きくされており、且つ、前記交差方向についての前記支持部の幅寸法は、前記一対の端
領域に接近するにしたがって段階的に小さくされている、請求項10または11に記載のエラストマーシート。
【請求項14】
前記巻付け対象部材は、中心軸線が凸状曲線となる軸部材であって、
前記中央領域は、前記軸部材の周方向のうち前記凸状曲線の曲率中心から遠い側の面に位置し、前記交差方向に延伸可能に形成され、
前記一対の端領域は、前記軸部材の周方向のうち前記凸状曲線の曲率中心に近い側の面に位置し、前記交差方向に圧縮可能に形成されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のエラストマーシート。
【請求項15】
前記巻付け対象部材は、円環状の軸部材であって、
前記中央領域は、前記軸部材における前記円環状の外周側の面に位置し、前記交差方向に延伸可能に形成され、
前記一対の端領域は、前記軸部材における前記円環状の内周側の面に位置し、前記交差方向に圧縮可能に形成されている、請求項14に記載のエラストマーシート。
【請求項16】
前記中央領域は、前記交差方向の断面形状が前記交差方向の全長に亘って波形状に形成され、
前記一対の端領域は、
前記交差方向の断面形状が前記交差方向に延伸または圧縮可能に形成され、前記交差方向に所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部と、
前記交差方向において隣り合う蛇腹部同士を接続し、前記巻付け方向および前記交差方向と直交する方向について前記蛇腹部よりも厚肉に形成された支持部と、
を備える、請求項14または15に記載のエラストマーシート。
【請求項17】
前記中央領域および前記一対の端領域は、
前記交差方向の断面形状が前記交差方向に延伸または圧縮可能に形成され、前記交差方向に所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部と、
前記交差方向において隣り合う蛇腹部同士を接続し、前記巻付け方向および前記交差方向と直交する方向について前記蛇腹部よりも厚肉に形成された支持部と、
を備える、請求項14または15に記載のエラストマーシート。
【請求項18】
前記中央領域および前記一対の端領域は、
前記交差方向の断面形状が前記交差方向の全長に亘って波形状に形成され、且つ、前記巻付け方向に連続して配置されている、請求項14または15に記載のエラストマーシート。
【請求項19】
エラストマー製のエラストマー層と、前記エラストマー層の第一面に配置される電極層と、を備える、請求項1~18のいずれか1項に記載のエラストマーシート。
【請求項20】
前記エラストマー層の第一面に複数の前記電極層が並列に配置される、請求項19に記載のエラストマーシート。
【請求項21】
請求項19または請求項20に記載のエラストマーシートが、さらに、前記エラストマー層の前記第一面と反対側の第二面に配置される第二電極シートを備える、静電型センサ。
【請求項22】
請求項19または請求項20に記載のエラストマーシートが、さらに、前記エラストマー層の前記第一面と反対側の第二面に配置される、ヒータ線およびシールド線を兼用するヒータ兼シールド線と基材シートとが一体化されたヒータシートを備える、静電型センサ。
【請求項23】
請求項19または請求項20に記載のエラストマーシートが、さらに、前記エラストマー層の前記第一面と反対側の第二面に貼り付けられる、ヒータ線およびシールド線を兼用するヒータ兼シールド線を備える、静電型センサ。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか一項に記載のエラストマーシートと、
前記エラストマーシートの第一面に配置される第一電極シートと、を備える静電型センサ。
【請求項25】
前記エラストマーシートの前記第一面に、複数の前記第一電極シートを備える、請求項24に記載の静電型センサ。
【請求項26】
前記エラストマーシートの前記第一面と反対側の第二面に配置される第二電極シートを備える、請求項24に記載の静電型センサ。
【請求項27】
前記エラストマーシートの前記第一面と反対側の第二面に配置される、ヒータ線およびシールド線を兼用するヒータ兼シールド線と基材シートとが一体化されたヒータシートを備える、請求項24に記載の静電型センサ。
【請求項28】
前記エラストマーシートの前記第一面と反対側の第二面に貼り付けられる、ヒータ線およびシールド線を兼用するヒータ兼シールド線を備える、請求項24に記載の静電型センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマーシート、及び静電型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三次元曲面を有する巻付け対象部材にシートを巻き付ける技術が開示されている。特許文献1においては、巻付け対象部材がステアリングホイールである例が記載されている。
【0003】
三次元曲面を有する巻付け対象部材にシートを巻き付ける際、シートに、比較的に大きな皺が、不均一に発生することが懸念される。なぜならば、三次元曲面は伸縮することなしに平面に展開することができる曲面ではないからである。このため、平面状をなすシートを三次元曲面に巻き付けると、シートのいずれかの部分において、シートの周長に差異が生じる部分が生じる。特許文献1に記載された技術においては、延伸可能なシートのうち、ステアリングホイールの内周部分に巻き付けられる部分に切り込みを形成することにより、周長の差を切り込みで吸収させることが行われている。これにより、皺の発生が抑制されることが期待された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術によっても、シートを、巻付け対象部材の曲面に沿わせながら巻き付ける作業は難渋する。なぜならば、ステアリングホイールの外周部分においてはシートを延伸させながら巻き付けることになる一方で、ステアリングホイールの内周部分においては、逆にシートを圧縮させつつ切り込みによって周長の差異を吸収させながら巻き付けることになるからである。このように、皺が発生しないようにしながら、1枚のシートを巻き付ける際に、ある部分ではシートを延伸させつつ、別の部分ではシートを圧縮させつつ巻付け対象部材に巻き付けるのは、非常に煩わしい。このため、シートの巻き付け作業の効率化が望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、巻き付け作業の効率が向上されたエラストマーシートおよび静電型センサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
三次元曲面を有する巻付け対象部材に巻き付けられるエラストマー製のエラストマーシートであって、
前記エラストマーシートの巻付け方向の中央に位置する中央領域と、
前記エラストマーシートの前記巻付け方向の端部に位置する一対の端領域と、を備え、
前記中央領域および前記一対の端領域は、前記エラストマーシートにおける前記巻付け方向に交差する交差方向の断面形状が、前記交差方向に延伸または圧縮可能な波形状に形成されており、
前記交差方向について、前記中央領域が延伸または圧縮する割合と、前記一対の端領域が延伸または圧縮する割合と、が異なるように構成されている、エラストマーシートにある。
【0008】
本発明の他の態様は、上記のエラストマーシートを用いた静電型センサにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、エラストマーシートには波形状が形成されている。この波形状の波長を広げるように変形させることにより、エラストマーシート自体を延伸させる場合に比べて、容易にエラストマーシートを延伸させることができる。同様に、波形状の波長を狭めるように変形させることにより、エラストマーシート自体を圧縮させる場合に比べて、容易にエラストマーシートを圧縮することができる。上記の波形状は、エラストマーシートの中央領域が延伸または圧縮する割合と、一対の端領域が延伸または圧縮する割合とが、異なるように構成されている。これにより、予め形成された波形状を広げるかまたは狭めるという簡単な作業により、エラストマーシートにおいて、中央領域と、一対の端領域の延伸割合または圧縮割合を変えることができる。この結果、エラストマーシートの巻付け作業の効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の他の態様によれば、本発明のエラストマーシートを静電型センサに適用することが可能となるので、静電型センサを巻付け対象物に巻き付ける作業の効率を向上させることができる。
【0011】
以上より、本形態によれば、巻付け作業の効率が向上されたエラストマーシートおよび静電型センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1のステアリングを示す正面図である。
【
図3】実施形態1の静電型センサを示す平面図である。
【
図5】実施形態1のエラストマーシートを示す平面図である。
【
図6】実施形態1のエラストマーシートを示す一部拡大平面図である。
【
図7】
図6におけるA-A線~G-G線断面図である。
【
図8】
図2におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】実施形態2のエラストマーシートを示す一部拡大平面図である。
【
図10】実施形態2において、
図2におけるVIII-VIII線に対応する断面図である。
【
図11】実施形態3のエラストマーシートを示す一部拡大平面図である。
【
図12】実施形態3において、
図2におけるVIII-VIII線に対応する断面図である。
【
図13】実施形態4のエラストマーシートの端領域を示す断面図である。
【
図14】実施形態5において、
図1におけるII-II線に対応する断面図である。
【
図15】実施形態6の静電型センサを示す断面図である。
【
図16】実施形態7の静電型センサを示す平面図である。
【
図17】実施形態7の静電型センサを示す断面図である。
【
図18】他の実施形態にかかる略D字形状をなすステアリングを示す正面図である。
【
図19】他の実施形態にかかる四角形状をなすステアリングを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
1.適用対象
本形態の静電型センサには、エラストマーシートと、エラストマーシートとは別部材の電極層と、を備える構成や、エラストマーシートが、エラストマー層と、電極層と、を備える構成などがある。エラストマーシートまたは静電型センサは、例えば、基材の取付面に取り付けられる。基材は、任意の部材であって、金属、樹脂、その他の材料により形成される。
【0014】
本形態においては、基材の取付面は、曲面、複合平面(複数の平面により形成された形状)、平面と曲面の複合形状などの三次元形状に形成されている。
【0015】
エラストマーシートは、基材の取付面(表面)に配置されている。エラストマーシートは、全体として、柔軟である。つまり、エラストマーシートは、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。
【0016】
エラストマーシートまたは静電型センサは、一対の対象電極の間の静電容量の変化を利用して、センサとして機能するように構成されている。エラストマーシートまたは静電型センサは、一対の対象電極のうち少なくとも1つを備えればよく、一対の対象電極を備える構成に限定されるものではない。また、本形態においては、静電型センサは、シールド電極を備えるように構成されている。
【0017】
静電型センサは、例えば、対象電極間の静電容量の変化を利用して、外部からの押込力などを検出するセンサ、電位を有する導電体の接触または接近を検出するセンサとして構成することができる。
【0018】
静電型センサが押込力を検出する場合には、外部からの押込力、振動、および、音など(以下、外部からの押込力など)の入力に起因して絶縁体が変形することにより対象電極間の静電容量が変化し、対象電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力などを検出する。
【0019】
また、静電型センサが接触または接近を検出するセンサとして構成される場合には、電位を有する導電体の接触または接近により、対象電極間の静電容量が変化し、変化した対象電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触または接近を検出する。
【0020】
静電型センサは、例えば、ポインティングデバイスであるマウスやジョイスティックの表面、車両部品の表面などに適用できる。車両部品としては、アームレスト、ドアノブ、シフトレバー、ステアリング、ドアトリム、センタートリム、センターコンソール、天井などが含まれる。本形態ではステアリングに取り付けられる場合について説明する。ステアリングは巻付け対象部材の一例である。多くの場合、巻付け対象部材は、金属や硬質樹脂などの可撓性を有しない材料により形成されている。そして、静電型センサは、対象者の状態の検出を行うように構成することができる。
【0021】
また、本形態においては、静電型センサは、ヒータ機能を有する。従って、静電型センサは、対象者の状態の検出に加えて、対象者への熱の付与を行うことができる。
【0022】
2.ステアリング10の構造
ステアリング10の構造について
図1~
図2を参照して説明する。ステアリング10は、
図1に示すように、コア部11と、リング部12と、コア部11とリング部12とを連結する複数の連結部13,13,13とを備える。リング部12が、人間の手が接触したことを検出するセンサの機能を有する。
【0023】
リング部12は、中心軸線が凸状曲線となる軸部材とされる。本形態のリング部12は、円形リング形状に形成されている。本形態では、円形リング形状が凸状曲線の一例とされている。リング部12の曲率中心から遠い側の面は、リング部12の外周面14とされ、リング部12の曲率中心から近い側の面はリング部12の内周面15とされる。ただし、リング部12は、円形に限られず、任意の形状に形成することができる。リング部12の軸直角断面形状は、
図2に示すように、例えば、円形状に形成されている。従って、リング部12の表面は、全面に亘って、単一平面ではなく、三次元曲面を有している。
【0024】
ステアリング10の詳細構成について、
図2を参照して説明する。特に、リング部12の詳細構成について説明する。
【0025】
リング部12は、芯体16、樹脂内層材17、エラストマーシート21、及び、表皮材18を備える。芯体16は、リング部12の中心部を構成し、リング部12の形状に対応する形状に形成されている。つまり、芯体16は、円形リング形状に形成され、円形状の軸直角断面を有している。従って、芯体16の表面は、全面に亘って、単一平面ではなく、曲面を有している。ここで、芯体16の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、楕円形状、卵形状、U字形状、C字形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。本形態の芯体16は、アルミニウム、マグネシウム等の金属により形成されており、導電性を有する。芯体16の材質は、金属以外の材料を適用することができる。
【0026】
樹脂内層材17は、芯体16の外面において、芯体16のリング形状の全周に亘って、且つ、芯体16の円断面形状の全周に亘って被覆する。本形態においては、樹脂内層材17の軸直角断面は円形状に形成されている。樹脂内層材17は、リング部12の径方向の外周側にやや偏心して配置されている。仮に、芯体16がU字形状の軸直角断面を有する場合には、樹脂内層材17は、芯体16の軸直角断面における径方向外側に加えて、芯体16のU字形状の凹所にも充填される。樹脂内層材17は、芯体16の外面側に射出成形により成形されており、芯体16の外面に直接的に接合されている。樹脂内層材17の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、卵形状、楕円形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。樹脂内層材17は、例えば、発泡樹脂により成形されている。樹脂内層材17は、例えば、発泡ウレタン樹脂を用いる。なお、樹脂内層材17は、非発泡樹脂を用いることもできる。
【0027】
樹脂内層材17の外面には、エラストマーシート21が巻き付けられている。エラストマーシート21は、静電型センサ20を構成する。エラストマーシート21については、後に詳述する。
【0028】
表皮材18は、エラストマーシート21の外面(エラストマーシート21における芯体16とは反対側の面)において、エラストマーシート21のリング形状の全周(
図1における周方向全周)に亘って、且つ、エラストマーシート21の軸直角断面形状の全周(
図2における周方向全周)に亘って被覆する。つまり、表皮材18は、第一電極層25aがエラストマー層24の第一面側に露出している場合には、第一電極層25aの被覆材としても機能する。表皮材18は、エラストマーシート21の外面側に巻き付けられ射出成形により成形されており、エラストマーシート21の外面に接合されている。表皮材18は、例えば、ウレタン樹脂により成形されている。表皮材18の外面は、意匠面を構成する。そこで、表皮材18は、非発泡ウレタン樹脂、又は、僅かに発泡させたウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0029】
3.静電型センサ20の全体構成
実施形態1の静電型センサ20の全体構成について、
図3および
図4を参照して説明する。
図4は、説明を容易にするために、厚みを誇張して図示している。なお、詳細には指摘しないが、他の図面においても厚みが誇張されている。静電型センサ20は、少なくとも、エラストマーシート21、ヒータ兼シールド線22、絶縁体シート23(基材シートの一例)を備える。エラストマーシート21は、エラストマー層24と、第一電極層25a、第二電極層25bを備える。ただし、エラストマーシート21が静電型センサ20としての機能を有しない場合には、第一電極層25および第二電極層25bは省略してもよい。
【0030】
図3に示すように、エラストマーシート21は、長尺の平面状に形成されている。ただし、エラストマーシート21は、可撓性を有し、かつ、伸縮可能に構成されることにより、任意の形状とすることができる。つまり、
図3に示すエラストマーシート21は、変形前の初期形状を示す。
【0031】
第一電極層25aおよび第二電極層25bは、導電性を有する可撓性のシート状に形成されている。第一電極層25aは第一電極シートに対応し、第二電極層25bは第二電極シートに対応する。ただし、第一電極層25aおよび第二電極層25bはシート状でなくてもよく、電線等の複数の導電部材がエラストマー層24と一体に形成されることにより、エラストマーシート21全体がシート状に形成される構成としてもよい。
【0032】
エラストマー層24は、例えばエラストマーを主成分として含んで形成されている。従って、エラストマー層24は、柔軟である。つまり、エラストマー層24は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。エラストマー層24は、例えば、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーを主成分として含んで形成されている。エラストマー層24は、熱可塑性エラストマー自身により形成されるようにしても良いし、熱可塑性エラストマーを素材として加熱することによって架橋されたエラストマーを主成分として形成されるようにしても良い。
【0033】
また、エラストマー層24は、熱可塑性エラストマー以外のゴム、樹脂や他の材料などを含んでいても良い。例えば、エラストマー層24がエチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムを含む場合には、エラストマー層24の柔軟性が向上する。エラストマー層24の柔軟性を向上させるという観点から、エラストマー層24に可塑剤などの柔軟性付与成分を含有させてもよい。さらに、エラストマー層24は、反応硬化性エラストマー、熱硬化性エラストマーを主成分として構成されるようにしても良い。
【0034】
さらに、エラストマー層24は、熱伝導性の良好な材料が好適である。そこで、エラストマー層24は、熱伝導率の高い熱可塑性エラストマーを用いるようにしても良いし、熱伝導率を高めることができるフィラーを含有させるようにしても良い。
【0035】
第一電極層25aおよび第二電極層25bは、エラストマー層24の第一面、すなわちエラストマー層24の表面(
図4の上面)側に、エラストマー層24の面方向に配列されている。第一電極層25aおよび第二電極層25bは、検出用電極を構成する。第一電極層25aおよび第二電極層25bは、導電性を有する。さらに、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、柔軟である。つまり、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。第一電極層25aおよび第二電極層25bは、例えば、導電性布、導電性エラストマー、金属箔などにより形成されている。
【0036】
図4においては、第一電極層25aおよび第二電極層25bが導電性布である場合を図示する。第一電極層25aおよび第二電極層25bが導電性布により形成される場合について詳細に説明する。導電性布は、導電性繊維により形成された織物または不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電性材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレンなどの樹脂繊維の表面に、銅やニッケルなどをメッキすることにより形成される。
【0037】
この場合、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、エラストマー層24自身の融着(熱融着)によりエラストマー層24に接合される。さらに、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、布であるため、複数の貫通孔を有する。従って、エラストマー層24の一部分が、第一電極層25aおよび第二電極層25bの貫通孔に入り込む。つまり、第一電極層25aおよび第二電極層25bの少なくとも一部は、エラストマー層24に埋設された状態となる。
【0038】
第一電極層25aおよび第二電極層25bが導電性エラストマーにより形成される場合について詳細に説明する。この場合、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、エラストマーを母材とし、導電性フィラーを含有させることにより形成されている。第一電極層25aおよび第二電極層25bの母材であるエラストマーは、エラストマー層24と主成分を同種とするとよい。特に、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、熱可塑性エラストマーにより形成されるようにするとよい。
【0039】
ただし、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、エラストマー層24の軟化点よりも高い軟化点を有する材料により形成されている。これは、エラストマー層24自身の融着(熱融着)によりエラストマー層24に第一電極層25aおよび第二電極層25bを接合する際に、エラストマー層24を第一電極層25aおよび第二電極層25bよりも先に軟化させるためである。その結果、エラストマー層24の厚みを所望の厚みとすることができる。
【0040】
ここで、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、エラストマー層24自身の融着(熱融着)によりエラストマー層24に接合される。さらには、第一電極層25aおよび第二電極層25bがエラストマーを表層に位置するように形成されている場合には、第一電極層25aおよび第二電極層25b自身の融着(熱融着)により、第一電極層25aおよび第二電極層25bとエラストマー層24とが接合される。つまり、第一電極層25aおよび第二電極層25bとエラストマー層24とは、相互の融着によって接合される。なお、第一電極層25aおよび第二電極層25bとエラストマー層24とは、いずれか一方のみの融着によって接合されるようにしても良い。
【0041】
第一電極層25aおよび第二電極層25bが金属箔により形成される場合について詳細に説明する。金属箔は、導電性布と同様に、複数の貫通孔を有するのが好適である。従って、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、可撓性を有し、貫通孔の変形に伴い面方向への伸長を可能とする。金属箔は、導通可能な金属材料であればよく、例えば、銅箔、アルミニウム箔などを適用できる。さらに、第一電極層25aおよび第二電極層25bは、導電性布である場合と同様に、エラストマー層24自身の融着(熱融着)によりエラストマーシート21に接合される。
【0042】
1つのヒータ兼シールド線22は、エラストマー層24の第二面、すなわちエラストマー層24の裏面(
図4の下面)側に配置されている。
図3において、ヒータ兼シールド線22は、便宜上、面状に図示しているが、面状に図示する領域内に配線されている。ヒータ兼シールド線22は、ヒータ線およびシールド電極線を兼用するように構成されている。ヒータ兼シールド線22は、ヒータ線として機能するために、熱抵抗を有するように形成されている。さらに、ヒータ兼シールド線22は、所定の電圧を印加することによりシールド電極として機能するように構成されている。
【0043】
ヒータ兼シールド線22は、
図4に示すように、例えば、導電線22aと、導電線22aを被覆する導電線被覆材22bとを備えて構成されている。導電線22aは、熱抵抗を有するようにするために、例えば、芯線と、芯線の周囲に螺旋状に巻回された周回線とを備える。ただし、導電線22aは、当該構成に限られず、導電性を有し、かつ、熱抵抗を有するようにすれば良い。
【0044】
さらに、ヒータ兼シールド線22は、柔軟である。つまり、ヒータ兼シールド線22は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。ヒータ兼シールド線22は、例えば、導電性布、導電性エラストマー、金属箔などにより形成されている。
【0045】
本形態においては、ヒータ兼シールド線22の一部が、エラストマー層24に接触した状態で配置されている。ヒータ兼シールド線22の一部が、エラストマー層24に埋設されるようにしても良い。従って、ヒータ兼シールド線22は、直接、エラストマー層24に熱を伝達することができる。
【0046】
特に、ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22bは、エラストマー層24自身の融着(熱融着)によりエラストマー層24に接合される。さらには、ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22bが熱可塑性エラストマーを含んで形成されている場合には、ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22b自身の融着(熱融着)により、ヒータ兼シールド線22とエラストマー層24とが接合される。つまり、ヒータ兼シールド線22とエラストマー層24とは、相互の融着によって接合される。なお、ヒータ兼シールド線22とエラストマー層24とは、いずれか一方のみの融着によって接合されるようにしても良い。
【0047】
ヒータ兼シールド線22は、第一電極層25aおよび第二電極層25bのほぼ全面に対向して配置されている。
【0048】
絶縁体シート23は、エラストマー層24の第二面、すなわちエラストマー層24の裏面(
図4の下面)側に配置されている。さらに、絶縁体シート23は、ヒータ兼シールド線22に対して第一電極層25aおよび第二電極層25bとは反対側に配置されている。つまり、絶縁体シート23は、エラストマー層24との間に、ヒータ兼シールド線22を挟んでいる。本形態においては、絶縁体シート23は、エラストマー層24と同一の面形状に形成されており、エラストマー層24に対して全面に亘って対向している。ただし、絶縁体シート23は、エラストマー層24とは異なる面形状としても良い。
【0049】
絶縁体シート23は、例えばエラストマーを主成分として含んで形成されている。従って、絶縁体シート23は、柔軟である。つまり、絶縁体シート23は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。絶縁体シート23は、例えば、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーを主成分として含んで形成されている。絶縁体シート23は、熱可塑性エラストマー自身により形成されるようにしても良いし、熱可塑性エラストマーを素材として加熱することによって架橋されたエラストマーを主成分として形成されるようにしても良い。
【0050】
また、絶縁体シート23は、熱可塑性エラストマー以外のゴム、樹脂や他の材料などを含んでいても良い。例えば、絶縁体シート23がエチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムを含む場合には、絶縁体シート23の柔軟性が向上する。絶縁体シート23の柔軟性を向上させるという観点から、絶縁体シート23に可塑剤などの柔軟性付与成分を含有させてもよい。
【0051】
絶縁体シート23は、エラストマー層24自身の融着により、エラストマー層24の第二面に接合される。絶縁体シート23が熱可塑性エラストマーを含んで形成されている場合には、絶縁体シート23自身の融着により、エラストマー層24と絶縁体シート23とが接合される。
【0052】
さらに、絶縁体シート23は、ヒータ兼シールド線22の一部に接触した状態で配置されている。特に、絶縁体シート23は、ヒータ兼シールド線22の一部を埋設している。そして、絶縁体シート23は、絶縁体シート23自身の融着により、ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22bに接合している。
【0053】
図4において、ヒータ兼シールド線22は、絶縁体シート23への埋設深さの方が、エラストマー層24への埋設深さより深く設定されている。ただし、埋設深さは、両者を同程度としても良いし、エラストマー層24への埋設深さを深くしても良い。
【0054】
ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22bが熱可塑性エラストマーを含んで形成されている場合には、ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22b自身の融着(熱融着)により、ヒータ兼シールド線22と絶縁体シート23とが接合される。つまり、ヒータ兼シールド線22と絶縁体シート23とは、相互の融着によって接合される。なお、ヒータ兼シールド線22と絶縁体シート23とは、いずれか一方のみの融着によって接合されるようにしても良い。
【0055】
さらに、絶縁体シート23は、高い断熱性を有する材料が好適である。つまり、絶縁体シート23は、エラストマー層24より熱伝導率が低くなるように形成されている。特に、絶縁体シート23は、エラストマー層24より熱伝導率が低い材料として、発泡樹脂を含んで形成すると良い。発泡樹脂の空気層により、高い断熱性能を発揮することができる。
【0056】
そして、絶縁体シート23は、発泡樹脂により形成される場合において、エラストマー層24側の面が、発泡樹脂のセルが開いたオープンセル状態に形成されると良い。この場合、絶縁体シート23は、エラストマー層24の一部が含侵されることにより、エラストマー層24に接合されている。従って、エラストマー層24と絶縁体シート23との接合力が高まる。さらに、絶縁体シート23は、ヒータ兼シールド線22の導電線被覆材22bの一部が含侵されることにより、ヒータ兼シールド線22に接合されるようにしても良い。
【0057】
4.エラストマーシート21の形状
エラストマーシート21の形状について
図5~
図8を参照して説明する。
図5においては、説明の便宜のため、第一電極層25a、第二電極層25b、ヒータ兼シールド線22および絶縁体シート23については省略してある。
図5には、ステアリング10に巻き付けられる前の状態のエラストマーシート21が示される。
【0058】
エラストマーシート21は長手方向に長尺な略長方形状に構成されている。以下の説明では、エラストマーシート21の長手方向Xと直交する2つの方向のうち、エラストマーシート21の表面と直交する方向を厚さ方向Zとし、エラストマーシート21の表面に沿う方向を、エラストマーシート21をステアリング10のリング部12に巻き付ける巻き付け方向Yとする。エラストマーシート21は、側縁から外方に突出する突片を有していてもよい。突片には、第一電極層25a、第二電極層25bまたはヒータ兼シールド線22と外部回路とを接続するための端子が取り付けられるようにすることができる。
【0059】
エラストマーシート21は、ステアリング10のリング部12に、巻付け方向Yに沿って巻き付けられる。エラストマーシート21の長手方向Xは、巻付け方向Yと交差する交差方向となっている。エラストマーシート21は、巻付け方向Yについて、中央位置付近の中央領域30と、巻付け方向Yの一対の端縁寄りの端領域31と、中央領域30と端領域31との間に位置する境界領域32と、を備える。
【0060】
中央領域30および一対の端領域31は、長手方向Xの全域にわたって、長手方向Xに延伸または圧縮可能な波形状に形成されている。中央領域30および一対の端領域31に形成された波形状は、エラストマーシート21を加熱して軟化させた後に、プレス加工することにより形成される。
【0061】
図7には、
図6におけるA-A線断面図、B-B線断面図、C-C線断面図、D-D線断面図、E-E線断面図、F-F線断面図およびG-G線断面図を示す。A~Gの符号は、断面図の切断面の符号と一致するようになっている。
【0062】
図7のA-A線断面図、B-B線断面図およびC-C線断面図に示すように、本形態においては、巻付け方向Yについて、エラストマーシート21の中央領域30は、エラストマーシート21の長手方向Xの全域にわたって、長手方向Xに延伸または圧縮可能な波形状に形成されている。中央領域30に形成された波形状は滑らかな曲面により構成されている。中央領域30は、ステアリング10に巻き付けられる前の状態における長手方向Xの断面形状がサイン波形状に形成されている。サイン波形状とは、中央領域30の断面形状がサイン波と一致する場合を含むとともに、サイン波と異なっていても、サイン波と認定可能な程度な場合を含む。
【0063】
図7のA-A線断面図、B-B線断面図およびC-C線断面図に示すように、エラストマーシート21の中央領域30に形成された波形状の振幅は、巻付け方向Yにおける中央領域30の中央位置が最も大きく、一対の端領域31に接近するにしたがって小さくなるように形成されている。すなわち、符号A、B、Cの順に、波形状の振幅は小さくなるように形成されている。本形態では、波形状の振幅は、巻付け方向Yの中央位置から一対の端領域31に接近するにしたがって連続的に変化するように形成されている。ただし、波形状の振幅は、巻付け方向Yの中央位置から一対の端領域31に接近するにしたがって、段階的に小さくなるように形成されていてもよい。この場合、ステアリング10の三次元曲面の曲率が段階的に変化する場合に効果的である。
【0064】
中央領域30におけるエラストマーシート21の厚さ寸法は、巻付け方向Yの中央位置が最も薄く、一対に端領域31に向かうにしたがって連続的に薄くなるように形成されている。これは、プレス加工によりエラストマーシート21が延伸されることに起因する。巻付け方向Yにおける中央位置が最も延伸されることにより、エラストマーシート21の厚さ寸法が最も小さくなっている。
【0065】
中央領域30における波形状の波長は、巻付け方向Yの中央位置と、一対の端領域31寄りの位置とで同じに形成されている。
【0066】
図7の符号Dが付された断面図は、
図6のD-D線断面図である。D-D線断面図は、エラストマーシート21の中央領域30と端領域31との間に位置する境界領域32の断面図となっている。境界領域32は平板状をなしている。境界領域32の厚さ寸法は、長手方向Xおよび巻付け方向Yについて均一であってもよいし、不均一であってもよい。エラストマーシート21が加熱されたときに、中央領域30が撓んだ状態で形状が固定された場合であってもよい。
【0067】
図7のE-E線断面図、F-F線断面図およびG-G線断面図に示すように、一対の端領域31には、長手方向Xに所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部33と、長手方向Xにおいて隣り合う蛇腹部33同士を接続する支持部34と、を有する。蛇腹部33は、巻付け方向Yから見てM字形状に形成されており、1つの平面が折れ曲がった形状に形成されている。なお、M字形状は波形状の一例である。
【0068】
蛇腹部33を構成する平面同士が、互いに接近するように変形することにより、蛇腹部33は長手方向Xについて圧縮される。また、蛇腹部33を構成する平面同士が、離れるように変形することにより、蛇腹部33は長手方向Xについて延伸される。
【0069】
長手方向Xについての蛇腹部33の長さ寸法は、中央領域30からエラストマーシート21の一対の端領域31に接近するにしたがって連続的に大きくなるように形成されている。ただし、長手方向Xについての蛇腹部33の長さ寸法は、中央領域30からエラストマーシート21の一対の端領域31に接近するにしたがって段階的に大きくなるように形成されていてもよい。この場合、ステアリング10の三次元曲面が段階的に変化する場合に効果的である。また、長手方向Xについての蛇腹部33の長さ寸法は、長手方向Xにおける延伸または圧縮する割合が小さいほど小さくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど大きくされている。
【0070】
厚さ方向Zについて、支持部34の厚さ寸法は、蛇腹部33の厚さ寸法よりも大きくされている。エラストマーシート21がプレス加工される際、蛇腹部33から支持部34へと樹脂が移動することにより、長手方向Xについての蛇腹部33の長さ寸法が大きいほど支持部34の厚さ寸法は大きく形成されている。また、長手方向Xについての支持部34の長さ寸法は、長手方向Xにおける延伸または圧縮する割合が小さいほど大きくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど小さくされている。
【0071】
図8に、ステアリング10にエラストマーシート21が巻き付けられた状態の一部拡大断面図を示す。説明の便宜のため、表皮材18は省略してある。
図8の上側は、ステアリング10のリング部12を構成する樹脂内層材17の外周面14となっており、
図8の下側は、リング部12を構成する樹脂内層材17の内周面15となっている。
【0072】
リング部12を構成する樹脂内層材17の外周面14には、エラストマーシート21の中央領域30が取り付けられる。中央領域30の波形状は長手方向Xに延伸することにより、リング部12を構成する樹脂内層材17の外周面14に沿う滑らかな曲面形状に変形している。これにより、エラストマーシート21の中央領域30には、大きな皺が不均一に形成されることが抑制される。
【0073】
リング部12を構成する樹脂内層材17の内周面15には、エラストマーシート21の一対の端領域31が取り付けられる。一対の端領域の複数の蛇腹部33が互いに接近することにより、エラストマーシート21の一対の端領域31は長手方向Xに圧縮される。蛇腹部33が変形することにより、長手方向Xに隣り合う支持部34同士が互いに接近する。これにより、隣り合う支持部34の間には比較的に狭い隙間が形成され、この隙間の中に、変形した蛇腹部33が収容されるようになっている。支持部34の間に形成された隙間の差し渡し寸法は比較的に小さい。また、隣り合う支持部34の間に規則的に並んで形成されるので均一に配置されるようになっている。このため、エラストマーシート21の一対の端領域31において、大きな皺が不均一に形成されることが抑制される。
【0074】
本形態では、樹脂内層材17に巻き付けられたとき、エラストマーシート21の中央領域30は、樹脂内層材17に巻き付けられる前の状態と比較して約10%延伸される。一方、エラストマーシート21の一対の端領域31は、樹脂内層材17に巻き付けられると、樹脂内層材17に巻き付けられる前に比べて、約10%圧縮される。これにより、エラストマーシート21は、リング部12を構成する樹脂内層材17における外周面14の周長と内周面15の周長との差に対応することができる。ただし、エラストマーシート21が延伸される割合および圧縮される割合は特に限定されない。
【0075】
図2には、リング部12の、軸直角方向の断面を示す。上記したように、エラストマーシート21の中央領域30の厚さ寸法は、比較的に小さく形成され、エラストマーシート21の一対の端領域31に形成された支持部34の厚さ寸法は比較的に大きく形成されている。これにより、樹脂内層材17に巻き付けられた状態のエラストマーシート21の厚さ寸法は、リング部1を構成する樹脂内層材172の外周面14と、リング部12を構成する樹脂内層材17の内周面15とで異なるようになっている。上記したように、樹脂内層材17はリング部12の外周側のやや偏心して配されているので、樹脂内層材17にエラストマーシート21が巻き付けられた状態で、軸直角方向のエラストマーシート21の外形状は円形状になるように構成されている。
【0076】
5.ステアリング10の製造方法
続いて、ステアリング10の製造方法の一例について説明する。なお、ステアリング10の製造方法については以下の記載に限定されない。
【0077】
芯体16の外面に樹脂内層材17を射出成型する。すなわち、芯体16を射出成形型(図示せず)の中に配置し、成形材料を型内に注入することで、樹脂内層材17が成形される。このようにして、芯体16と樹脂内層材17とが一体化される。
【0078】
エラストマー層24、第一電極層25a、第二電極層25b、ヒータ兼シールド線22および絶縁体シート23を所定の形状に形成する。エラストマー層24の表面に第一電極層25aおよび第二電極層25bを接合する。これによりエラストマーシート21が形成される。ヒータ兼シールド線22と絶縁体シート23とを接合する。エラストマーシート21の裏面に、ヒータ兼シールド線22がエラストマーシート21の裏面に対向するようにして、絶縁体シート23およびヒータ兼シールド線22を接合する。エラストマーシート21と、ヒータ兼シールド線22と、絶縁体シート23とが一体化されることにより、静電型センサ20が形成される。
【0079】
静電型センサ20を、エラストマー層24および絶縁体シート23の軟化点以上の温度に加熱する。その後、静電型センサ20を、公知の圧延機(図示せず)によって加圧することにより、静電型センサ20の中央領域30および一対の端領域31に、波形状を形成する。圧延機は一対のローラを有しており、一対のローラの間に静電型センサ20を通過させることにより、静電型センサ20に、ローラの表面に形成された形状を転写させることが可能になっている。すなわち、エラストマーシート21の中央領域30に対応するローラの表面にはサイン波形状に対応する形状を形成しておき、エラストマーシート21の一対の端領域31に対応するローラの表面にはM字形状に対応する形状を形成しておけばよい。
【0080】
続いて、芯体16および樹脂内層材17に、静電型センサ20を巻き付ける。まず、静電型センサ20を、樹脂内層材17に対向するように配置する。次に、リング部12の外周面14に、エラストマーシート21の中央領域30が位置するように取付ける。その後、リング部12の軸直角方向についての周面に沿って、静電型センサ20をリング部12に巻き付ける。このとき、エラストマーシート21の中央領域30においては長手方向Xに延伸させ、一対の端領域31については長手方向Xに圧縮させる。一対の端領域31同士は、互いに当接させた状態で、接着または熱融着させる。
【0081】
芯体16および樹脂内層材17に静電型センサ20を全周に亘って巻き付けた後、樹脂内層材17と静電型センサ20とを、接着または熱融着させる。
【0082】
続いて、表皮材18を所定の形状に形成し、静電型センサ20の外面に巻き付ける。その後、静電型センサ20と、表皮材18とを、接着または熱融着させる。なお、表皮材18は、芯体16、樹脂内層材17および静電型センサ20を射出成形型(図示せず)の中に配置し、成形材料を注入することで形成してもよい。
【0083】
6.実施形態1の効果
続いて、実施形態1の効果について説明する。本実施形態のエラストマーシート21は、三次元曲面を有するステアリング10に巻き付けられるエラストマー製のエラストマーシート21であって、エラストマーシート21の巻付け方向Yの中央に位置する中央領域30と、エラストマーシート21の巻付け方向Yの端部に位置する一対の端領域31と、を備え、中央領域30および一対の端領域31は、エラストマーシート21における巻付け方向Yに交差する長手方向Xの断面形状が、長手方向Xに延伸または圧縮可能な波形状に形成されており、長手方向Xについて、中央領域30が延伸または圧縮する割合と、一対の端領域31が延伸または圧縮する割合と、が異なるように構成されている。
【0084】
エラストマーシート21には波形状が形成されている。この波形状の波長を広げるように変形させることにより、エラストマーシート21自体を延伸させる場合に比べて、容易にエラストマーシート21を延伸させることができる。同様に、波形状の波長を狭めるように変形させることにより、エラストマーシート21自体を圧縮させる場合に比べて、容易にエラストマーシート21を圧縮することができる。上記の波形状は、エラストマーシート21の中央領域30が延伸または圧縮する割合と、一対の端領域31が延伸または圧縮する割合とが、異なるように構成されている。これにより、予め形成された波形状を広げるかまたは狭めるという簡単な作業により、エラストマーシート21において、中央領域30と、一対の端領域31の延伸割合または圧縮割合を変えることができる。この結果、エラストマーシート21の巻付け作業の効率を向上させることができる。
【0085】
また、本形態においては、中央領域30および一対の端領域31の一方は延伸可能に構成され、他方は圧縮可能に構成されている。
【0086】
エラストマーシート21の中央領域30および一対の端領域31の一方を延伸可能に構成し、他方を圧縮可能に構成することにより、例えば、中央領域30に対しては延伸作業を行い、一対の端領域31に対しては圧縮作業を行うことにより、エラストマーシート21を巻き付け対象に巻き付けることができる。これにより、リング部12にエラストマーシート21を巻き付ける際に、中央領域30と、一対の端領域31とで、作業内容を明確に分けることができるので、巻付け作業の効率を向上させることができる。
【0087】
また、本形態のエラストマーシート21は、さらに、エラストマーシート21の巻付け方向Yにおいて中央領域30と一対の端領域31との境界に位置し、ステアリング10のリング部12の巻付ける前の状態における長手方向Xの断面形状が平坦な平板状に形成された境界領域32を備える。
【0088】
中央領域30および一対の端領域31の一方が延伸可能とされ、他方が圧縮可能とされている場合、中央領域30と一対の端領域31との間に、変形しにくい部分が形成される。この部分が骨格構造となるため、エラストマーシート21の強度を向上させることができる。
【0089】
本形態においては、中央領域30と一対の端領域31の少なくとも一方は、長手方向Xの断面形状が長手方向Xの全長に亘って波形状に形成されている。これにより、長手方向Xの全長に亘って、延伸または圧縮可能な構成を容易に形成することができる。
【0090】
本形態においては、中央領域30と一対の端領域31の少なくとも一方は、リング部12の巻付ける前の状態における長手方向Xの断面形状がサイン波形状に形成されている。
【0091】
サイン波形状の波長を広げるように変形させると、エラストマーシート21は平坦な面に近づくように変形する。このように、エラストマーシート21を延伸可能な領域にサイン波形状を適用することは、特に有効である。一方、サイン波形状の波長を狭める方向に変形させた場合、サイン波の頂点同士が互いに接近する。この部分は、隣り合うサイン波の頂点同士の間に隙間が形成されるので、完全に平坦にはならない。しかし、サイン波の形状は規則的なので、不規則な皺が形成された場合に比べて、全体として平坦な形状となる。このため、エラストマーシート21を圧縮可能な領域にサイン波形状を適用することができる。
【0092】
本形態においては、サイン波形状の振幅は、長手方向Xにおける延伸または圧縮する割合が小さいほど小さくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど大きくされている。サイン波形状の振幅の大小を調整するという簡易な手法により、エラストマーシート21が延伸または圧縮される割合に容易に対応できる。
【0093】
本形態においては、サイン波形状の振幅が、中央領域30から一対の端領域31に接近するにしたがって連続的に小さくされている。リング部12に形成された三次元曲面の曲率が連続的に変化している場合に有効である。
【0094】
本形態においては、中央領域30と一対の端領域31の少なくとも一方は、長手方向Xの断面形状が長手方向Xに延伸または圧縮可能に形成され、長手方向Xに所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部33と、長手方向Xにおいて隣り合う蛇腹部33同士を接続し、巻付け方向Yおよび長手方向Xと直交する方向について蛇腹部33よりも厚肉に形成された支持部34と、を備える。
【0095】
一対の端領域31に形成された蛇腹部33が圧縮すると、複数の支持部34同士が接近する。すると、複数の支持部34の端面同士が全体として平面を構成するようになる。一方、圧縮した蛇腹部33は、複数の支持部34の間の狭まった空間内に収容される。このため、全体としてエラストマーシート21は平面状となる。このように、エラストマーシート21が圧縮可能な領域に本形態を適用することは特に有効である。
【0096】
本形態においては、長手方向Xについての蛇腹部33の幅寸法は、長手方向Xにおける延伸または圧縮する割合が小さいほど小さくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど大きくされ、長手方向Xについての支持部34の幅寸法は、長手方向Xにおける延伸または圧縮する割合が小さいほど大きくされ、延伸または圧縮する割合が大きいほど小さくされる。
【0097】
また、長手方向Xについての蛇腹部33の幅寸法と、支持部34の幅寸法とを調節することにより、エラストマーシート21が延伸または圧縮される割合に容易に対応できる。
【0098】
本形態においては、長手方向Xについての蛇腹部33の幅寸法は、一対の端領域31に接近するにしたがって連続的に大きくされており、且つ、長手方向Xについての支持部34の幅寸法は、一対の端領域31に接近するにしたがって連続的に小さくされている。
【0099】
リング部12に形成された凸状の曲面の曲率が連続的に変化している場合に有効である。
【0100】
本形態においては、リング部12は、中心軸線が凸状曲線となる軸部材であって、中央領域30は、軸部材の周方向のうち凸状曲線の曲率中心から遠い側の面に位置し、長手方向Xに延伸可能に形成され、一対の端領域31は、軸部材の周方向のうち凸状曲線の曲率中心に近い側の面に位置し、長手方向Xに圧縮可能に形成されている。
【0101】
リング部12が、中心軸線が凸状曲線となる軸部材である場合、リング部12の周方向のうち凸状曲線の曲率中心から遠い側の面の周長は、凸状曲線の曲率中心に近い側の面の周長よりも長くなってしまう。このため、凸状曲線の曲率中心から遠い側と凸状曲線の曲率中心に近い側との周長差が生じる。本形態では、リング部12のうち凸状曲線の曲率中心から遠い側に、エラストマーシート21の中央領域30を宛がい、リング部12のうち凸状曲線の曲率中心に近い側に向けてエラストマーシート21を巻き付ける。すると、エラストマーシート21の一対の端領域31は圧縮可能となっているので、リング部12における凸状曲線の曲率中心から遠い側と凸状曲線の曲率中心に近い側との周長差を吸収することができる。
【0102】
本形態においては、巻付け対象部材は、円環状のステアリング10であって、中央領域30は、ステアリング10における円環状の外周側の面に位置し、長手方向Xに延伸可能に形成され、一対の端領域31は、ステアリング10における円環状の内周側の面に位置し、長手方向Xに圧縮可能に形成されている。
【0103】
巻付け対象部材が円環状である場合、外周側の周長が内周側の周長よりも長くなってしまうため、内周側と外周側との周長に差が生じる。本形態では、リング部12の外周側に、エラストマーシート21の中央領域30を宛がい、リング部12の内周側に向けてエラストマーシート21を巻き付ける。すると、エラストマーシート21の一対の端領域31は圧縮可能となっているので、リング部12における外周側と内周側との周長の差を吸収することができる。
【0104】
本形態においては、中央領域30は、長手方向Xの断面形状が長手方向Xの全長に亘って波形状に形成され、一対の端領域31は、長手方向Xの断面形状が長手方向Xに延伸または圧縮可能に形成され、長手方向Xに所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部33と、長手方向Xにおいて隣り合う蛇腹部33同士を接続し、巻付け方向Yおよび長手方向Xと直交する方向について蛇腹部33よりも厚肉に形成された支持部34と、を備える。
【0105】
本形態は、エラストマーシート21のうち中央領域30を延伸可能領域と設定し、一対の端領域31を圧縮可能領域と設定した場合に特に有効である。以下に理由を説明する。
【0106】
まず、波形状の波長を広げるように変形させると、エラストマーシート21は、ステアリング10の外周面14に沿う滑らかな曲面状に変形する。このため、エラストマーシート21のうち延伸可能な領域に波形状を適用することは、特に有効である。
【0107】
また、蛇腹部33が圧縮すると、複数の支持部34同士が接近する。すると、複数の支持部34の端面同士が全体として平面を構成するようになる。一方、圧縮した蛇腹部33は、複数の支持部34の間の狭まった空間内に収容される。このため、全体としてエラストマーシート21は、ステアリング10の内周面15に沿う滑らかな曲面状となる。このように、エラストマーシート21のうち圧縮可能な領域に本形態を適用することは特に有効である。
【0108】
本形態においては、エラストマーシート21は、エラストマー製のエラストマー層24と、エラストマー層24の第一面に配置される第一電極層25aおよび第二電極層25bと、を備える。これにより、エラストマーシート21の第一面に電気回路を形成することができる。
【0109】
本形態においては、エラストマー層24の第一面に第一電極層25aおよび第二電極層25bが並列に配置される。これにより、エラストマー層24の第一面に複数の電極層25a,25bを並列に配置することができる。
【0110】
本形態の静電型センサ20は、エラストマー層24の第一面と反対側の第二面に配置される、ヒータ線およびシールド線を兼用するヒータ兼シールド線22と絶縁体シート23とが一体化されたヒータシートを備える。
【0111】
ヒータ兼シールド線22に電流を流すことによりエラストマーシート21を加温することができる。また、ヒータ兼シールド線22により静電型センサ20の電磁的シールド性が向上する。
【0112】
本形態の静電型センサ20は、シート状の第一電極層25aおよび第二電極層25bを備える。
【0113】
静電型センサ20を巻付け対象物に巻き付ける作業の効率を向上させることができる。
【0114】
本形態においては、静電型センサ20は、エラストマーシート21の第一面と反対側の第二面に配置される、ヒータ線およびシールド線を兼用するヒータ兼シールド線22と絶縁体シート23とが一体化されたヒータシートを備える。
【0115】
エラストマーシート21の第一面に配置された第一電極層25aと、エラストマーシート21の第二面に配置されたヒータシートとの間の静電容量の変化を利用して、センサとして機能させることができる。ヒータ兼シールド線22と基材シートとが一体化されているので静電型センサ20を薄型化することができる。
【0116】
(実施形態2)
続いて、実施形態2について、
図9~
図10を参照して説明する。
図9に示すように、本形態の静電型センサ20aに係るエラストマーシート21aは、中央領域30aに、長手方向Xに所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部33aと、長手方向Xに隣り合う蛇腹部33a同士を接続する支持部34aと、備える。厚さ方向Zについて、支持部34aは、蛇腹部33aよりも厚肉に形成されている。すなわち、厚さ方向Zについて支持部34aの厚さ寸法は、蛇腹部33aの厚さ寸法よりも大きく形成されている。
【0117】
図9に示すように、エラストマーシート21aの表面側から見て、中央領域30aに形成された蛇腹部33aの、長手方向Xについての長さ寸法は、巻付け方向Yについて中央位置が最も大きく形成されており、エラストマーシート21aの
一対の端領域31に接近するにしたがって小さくなるように形成されている。これにより、エラストマーシート21aの中央領域30aの延伸割合が最も大きくなるように構成されている。
【0118】
図10に示すように、本形態においては、リング部12を構成する樹脂内層材17にエラストマーシート21aが巻き付けられた状態で、リング部12を構成する樹脂内層材17の外周面14に、エラストマーシート21aの中央領域30aに形成された蛇腹部33aが取り付けられるようになっている。蛇腹部33aを構成する平面は互いに離れるように広がって延伸されている。蛇腹部33aと、リング部12を構成する樹脂内層材17の外周面14との間には空間が形成されているが、支持部34aによって支持されているので、エラストマーシート21が変形することが抑制される。
【0119】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0120】
本形態においては、中央領域30aおよび一対の端領域31aは、長手方向Xの断面形状が長手方向Xに延伸または圧縮可能に形成され、長手方向Xに所定の間隔を空けて配置された複数の蛇腹部33,33aと、長手方向Xにおいて隣り合う蛇腹部33、33a同士を接続し、巻付け方向Yおよび長手方向Xと直交する方向について蛇腹部33,33aよりも厚肉に形成された支持部34,34aと、を備える。
【0121】
蛇腹部33が圧縮すると、複数の支持部34同士が接近する。すると、複数の支持部34の端面同士が全体として平面を構成するようになる。一方、圧縮した蛇腹部33は、複数の支持部34の間の狭まった空間内に収容される。このため、全体としてエラストマーシート21は平面状となる。このように、エラストマーシート21が圧縮可能な領域に本形態を適用することは有効である。
【0122】
一方、蛇腹部33aが延伸した場合、蛇腹部33aは平坦な面に近づくように変形する。また、蛇腹部33aは支持部34aによって支持されているため、延伸した蛇腹部33aが変形することが抑制されるようになっている。このため、エラストマーシート21aが延伸可能な領域にも、本形態を適用することができる。したがって、エラストマーシート21aの中央領域30および一対の端領域31の双方において、延伸可能または圧縮可能な部分のいずれにも、本形態を適用することができる。
【0123】
(実施形態3)
続いて、実施形態3の静電型センサ20bに係るエラストマーシート21bについて、
図11~
図12を参照して説明する。
【0124】
図11に示すように、本形態のエラストマーシート21bにおいては、中央領域30bと、一対の端領域31bとは、巻付け方向Yに連続して配置されている。中央領域30bおよび一対の端領域31bには、長手方向Xの断面形状が長手方向Xの全長に亘って滑らかな曲面により構成されたサイン波形状が形成されている。サイン波形状は、中央領域30bから一対の端領域31bに至るまで連続している。
【0125】
図12に示すように、リング部12を構成する樹脂内層材17の内周面15においては、サイン波形状は長手方向Xについて圧縮される。これにより、サイン波形状のうち、山形状の部分と谷形状の部分とが互いに接近するように変形する。そして、サイン波形状が長手方向Xに圧縮されたような形状となる。圧縮される前の状態においては、サイン波形状は振幅が一定なので、圧縮された後の状態においても、サイン波形状の振幅は一定となっている。また、圧縮される前の状態においては、サイン波形状の波長は一定であるので、圧縮された後の状態においても、サイン波形状の波長は略一定になっている。これにより、圧縮後の状態において、エラストマーシート21のうち一対の端領域31bにおいて、比較的に大きな皺が、不均一に形成されることが抑制されるようになっている。
【0126】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0127】
(実施形態4)
次に、実施形態4のエラストマーシート21cについて
図13を参照して説明する。
図13に示すように、本形態のエラストマーシート21cにおいては、蛇腹部33cは、巻付け方向Yから見て複数回(本形態では3回)折れ曲がった形状をなしている。これにより、平面が折り曲げられる箇所が多くなるので、蛇腹部33cを長手方向Xについて圧縮または伸縮しやすくなる。蛇腹部33cが折れ曲がる箇所は4つ以上でもよい。蛇腹部33cが複数回折れ曲がった形状は波形状の一例である。
【0128】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。ただし、蛇腹部33cの形状は、例えば、巻付け方向Yから見てN字形状であってもよく、任意の形状を採用することができる。
【0129】
(実施形態5)
次に、実施形態5のエラストマーシート21dについて
図14を参照して説明する。
図14に示すように、エラストマーシート21dの一対の端領域31dは、リング部12に巻き付けられた状態で、互いに離れた位置に配される構成としてもよい。一対の端領域31dの間には隙間が形成されることになるが、この隙間は、リング部12の内周面15の全領域に一様に形成されたものであり、不均一なものではない。このため、エラストマーシート21
dの外面を覆う表皮材18の形状、材質等により、外観が損なわれないようにすることが可能となる。
【0130】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0131】
(実施形態6)
次に、実施形態6の静電型センサ20eに係るエラストマーシート21eについて
図15を参照して説明する。本形態のエラストマーシート21eの第二面には、ヒータ兼シールド線22が取り付けられている。ヒータ兼シールド線22は、エラストマーシート21eに接着または熱融着されている。
【0132】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0133】
本形態によれば、エラストマーシート21eにヒータ兼シールド線22が貼り付けられているので、静電型センサ20eを薄型化することができる。
【0134】
(実施形態7)
次に、本形態の静電型センサ20fに係るエラストマーシート21fについて
図16~
図17を参照して説明する。
図16に示すように、本形態のエラストマーシート21fの第1面には、巻付け方向Yの中央位置に1枚のシート状の第一電極層25aが配置されている。
図17に示すように、エラストマーシート21fの第2面には、エラストマーシート21の厚さ方向Zから見て第一電極シートに重なる位置に、シート状の第二電極層25bが配置されている。第二電極層25bの大きさは、第一電極層25aとほぼ同じに形成されている。ただし、エラストマーシート21fは、エラストマー層24fと、このエラストマー層24の第1面および第2面のそれぞれに、複数の導電部材からなる第一電極層25aおよび第二電極層25bが配置される構成としてもよい。
【0135】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0136】
エラストマーシート21の第一面に配置された第一電極層25aと、エラストマーシート21の第二面に配置された第二電極層25bとの間の静電容量の変化を利用して、センサとして機能させることができる。
【0137】
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0138】
(1)本態様に係る静電型センサ20またはエラストマーシート21は、ステアリング10に限られず、自動車の内装品に適用することができる。
【0139】
(2)ステアリングのリング部の形状は円環状に限られない。例えば、ステアリング40のリング部42は、略D字形状をなして
いてもよい。この場合、ステアリング40の上部は円環の一部を構成する。また、ステアリング40の下部は直線状をなしていてもよいし、また、
図18に示すように、上方に凸状に緩やかに曲がった曲線状に形成されていてもよい。この場合、リング部42を構成する樹脂内層材17の外周面14のうち、リング部42の下部領域に巻き付けられたエラストマーシート21の中央領域30は圧縮されるとともに、リング部42を構成する樹脂内層材17の内周面15のうち、リング部42の下部領域に巻き付けられたエラストマーシート21の一対の端領域31は延伸されるようになっている。
【0140】
(3)また、ステアリング50のリング部52の形状は、例えば、
図19に示すように、略四角形状としてもよく、任意の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0141】
10,40,50 ステアリング
12 リング部
20,20a,20b,20e,20f 静電型センサ
21,21a,21b,21c,21d,21e21f エラストマーシート
30,30a、30b 中央領域
31,31a、31b、31d 端領域
24,24f エラストマー層
25a 第一電極層
25b 第二電極層