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  • 特許-水処理システムおよびその運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-11
(45)【発行日】2025-09-22
(54)【発明の名称】水処理システムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20250912BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20250912BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20250912BHJP
   B01D 61/48 20060101ALI20250912BHJP
   C02F 1/469 20230101ALI20250912BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20250912BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/08
B01D61/18
B01D61/48
C02F1/469
C02F1/42 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024035869
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2025-06-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】前田 臨太郎
(72)【発明者】
【氏名】石渡 一行
(72)【発明者】
【氏名】竹沢 幸男
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和幹
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-31982(JP,A)
【文献】特開2023-073654(JP,A)
【文献】特開2023-041226(JP,A)
【文献】特開2007-143822(JP,A)
【文献】特開2014-124482(JP,A)
【文献】特開2019-107617(JP,A)
【文献】特開2023-63877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/42-1/469
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水を貯留するタンクと、
膜分離装置とイオン交換装置とを含む水処理手段と、
前記水処理手段に供給される被処理水の前処理を行う前処理手段と、
前記タンクから前記前処理手段を経由して前記水処理手段に至る給水ラインと、
前記水処理手段で得られた処理水を流通させて前記タンクに還流させる第1の還流ラインと、
前記第1の還流ラインから分岐して前記前処理手段の上流側または下流側で前記給水ラインに接続し、前記第1の還流ラインを流れる処理水を前記前処理手段に還流させる第2の還流ラインと、
前記前処理手段に対して前記第2の還流ラインが接続された側と反対側で前記給水ラインに接続し、前記前処理手段に還流される処理水を外部に排出させる排出ラインと、を有する水処理システム。
【請求項2】
前記前処理手段と、前記給水ラインと前記第2の還流ラインとの接続部と、前記給水ラインと前記排出ラインとの接続部とをバイパスするように、前記給水ラインに接続されたバイパスラインと、
前記給水ラインと前記前処理手段とを連通させ、前記給水ラインと前記バイパスラインとの連通を遮断し、前記前処理手段と前記第2の還流ラインとの連通を遮断し、前記前処理手段と前記排出ラインとの連通を遮断する第1の連通状態と、前記給水ラインと前記前処理手段との連通を遮断し、前記給水ラインと前記バイパスラインとを連通させ、前記前処理手段と前記第2の還流ラインとを連通させ、前記前処理手段と前記排出ラインとを連通させる第2の連通状態と、前記給水ラインと前記前処理手段との連通を遮断し、前記給水ラインと前記バイパスラインとを連通させ、前記前処理手段と前記第2の還流ラインとの連通を遮断する第3の連通状態とを選択的に切り替える流路切替手段と、を有する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記給水ラインと前記第1の還流ラインとを介して前記タンクと前記水処理手段との間を循環する処理水を加熱し、該加熱した処理水により、前記タンク、前記前処理手段を含む前記給水ライン、前記水処理手段、および前記第1の還流ラインを殺菌する殺菌処理を実行する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記殺菌処理を実行する前に、前記流路切替手段を制御して前記第1の連通状態または前記第3の連通状態に切り替えた状態で、前記給水ラインに供給される被処理水を前記水処理手段で処理する第1の処理と、前記流路切替手段を制御して前記第2の連通状態に切り替えた状態で、前記給水ラインに供給される被処理水を前記水処理手段で処理する第2の処理とを実行する、請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記殺菌処理を実行する前に、前記流路切替手段を制御して前記第1の連通状態に切り替えた状態で前記第1の処理を実行した後、前記流路切替手段を制御して前記第2の連通状態に切り替えた状態で前記第2の処理を実行するか、または、前記流路切替手段を制御して前記第2の連通状態に切り替えた状態で前記第2の処理を実行した後、前記流路切替手段を前記第3の連通状態に切り替えた状態で前記第1の処理を実行する、請求項3に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記前処理手段が複数設けられている、請求項4に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記第2の還流ラインと前記排出ラインと前記バイパスラインは、前記前処理手段の数に応じてそれぞれ複数設けられ、
前記制御手段は、前記前処理手段ごとに前記第2の処理を実行する、請求項5に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記複数の前処理手段は、前記給水ラインに直列に配置され、
前記第2の還流ラインは、前記複数の前処理手段の下流側で前記給水ラインに接続され、前記排出ラインは、前記複数の前処理手段の上流側で前記給水ラインに接続され、
前記制御手段は、前記複数の前処理手段に対してまとめて前記第2の処理を実行する、請求項5に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記給水ラインに設けられ、前記第2の処理の実行中に前記水処理手段に供給される被処理水の温度を所定の温度に調整する温度調整手段を有する、請求項3から7のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項9】
医薬品製造に使用される純水を製造する用途に用いられる、請求項1から7のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項10】
被処理水を貯留するタンクと、膜分離装置とイオン交換装置とを含む水処理手段と、前記水処理手段に供給される被処理水の前処理を行う前処理手段と、を有する水処理システムの運転方法であって、
前記タンクとは別の供給源から前記前処理手段と前記水処理手段とに被処理水を供給し、該水処理手段で得られた処理水を前記タンクに還流させる工程と、
前記処理水を前記タンクに貯留する前または貯留した後に、前記タンクとは別の供給源から前記前処理手段を介さずに前記水処理手段に被処理水を供給し、該水処理手段で得られた処理水を前記前処理手段に流通させる工程と、を含む、水処理システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医薬品製造などに使用される純水(精製水や注射用水など)を製造する装置として、工業用水、井水、市水などの原水を透過水と濃縮水とに分離する膜分離装置と、膜分離装置からの透過水をイオン交換体に通水することで脱イオン水(純水)を製造する電気式脱イオン水製造装置とを組み合わせたものが知られている。このような純水製造装置では、医薬品製造などに使用される純水を製造するという性質上、日本薬局方の要求を担保するために、例えば60℃以上の熱水を系内に通水することで系内の生菌数を低減させる殺菌処理が定期的に行われている。
【0003】
上述した純水製造装置の殺菌方法として、膜分離装置と電気式脱イオン水製造装置に一括して熱水を通水して殺菌する方法がある。この方法には、膜分離装置と電気式脱イオン水製造装置を個別に殺菌する場合に比べて、水使用量や工程数を削減することでより効率的な殺菌処理が可能になるというメリットがある一方、次のようなデメリットもある。すなわち、殺菌処理中に膜分離装置に対して通常運転時と同等の供給圧力で熱水を供給することができず、したがって、通常運転時と同様の膜分離処理が行えないため、電気式脱イオン水製造装置に対する給水の水質基準を満たさなくおそれがある。そこで、特許文献1には、純水製造装置で製造された純水を加熱して系内に通水する方法が記載されている。具体的には、純水製造装置で製造された純水を原水タンクに一旦貯留し、その純水を加熱して膜分離装置と電気式脱イオン水製造装置に順次供給した後に原水タンクに還流させることで、熱水を系内で循環させる方法が記載されている。この方法によれば、加熱殺菌用の熱水として純水製造装置で製造される純水が用いられるため、殺菌処理中の電気式脱イオン水製造装置へのイオン負荷を軽減することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-74109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、原水タンクに純水を貯留する過程で、原水タンクから膜分離装置までの給水ラインには原水が流れるため、その内部にはイオン負荷の高い原水が滞留することになる。したがって、給水ラインに、軟水器、活性炭ろ過器、フィルタなど、保有水量が比較的大きい前処理装置が設けられていると、その内部にイオン負荷の高い原水が滞留することになり、系内のイオン総量が大きくなってしまう。その結果、殺菌処理中に電気式脱イオン水製造装置へのイオン負荷が増大し、殺菌処理後の純水製造時の処理水質に悪影響を及ぼすおそれがある。このような水質悪化は、同じくイオン交換樹脂を備えたイオン交換装置においても同様に発生する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、処理水の水質悪化を抑制する水処理システムおよびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の水処理システムは、被処理水を貯留するタンクと、膜分離装置とイオン交換装置とを含む水処理手段と、水処理手段に供給される被処理水の前処理を行う前処理手段と、タンクから前処理手段を経由して水処理手段に至る給水ラインと、水処理手段で得られた処理水を流通させてタンクに還流させる第1の還流ラインと、第1の還流ラインから分岐して前処理手段の上流側または下流側で給水ラインに接続し、第1の還流ラインを流れる処理水を前処理手段に還流させる第2の還流ラインと、前処理手段に対して第2の還流ラインが接続された側と反対側で給水ラインに接続し、前処理手段に還流される処理水を外部に排出させる排出ラインと、を有している。
【0008】
また、本発明の水処理システムの運転方法は、被処理水を貯留するタンクと、膜分離装置とイオン交換装置とを含む水処理手段と、水処理手段に供給される被処理水の前処理を行う前処理手段と、を有する水処理システムの運転方法であり、タンクとは別の供給源から前処理手段と水処理手段とに被処理水を供給し、水処理手段で得られた処理水をタンクに還流させる工程と、処理水をタンクに貯留する前または貯留した後に、タンクとは別の供給源から前処理手段を介さずに水処理手段に被処理水を供給し、水処理手段で得られた処理水を前処理手段に流通させる工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理水の水質悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の各実施形態に共通する構成要素については、図面に同じ符号を付して重複する説明は適宜省略する。本明細書では、本発明の水処理システムとして、医薬品製造などに使用される純水、具体的には精製水または注射用水を製造する純水製造装置を例に挙げて説明する。なお、本明細書において、精製水とは、常水を、蒸留、イオン交換、逆浸透、限外ろ過、またはそれらの組み合わせにより精製したものを意味し、注射用水とは、精製水を滅菌し、発熱性物質(エンドトキシン)試験や無菌試験に適合したものを意味する。このような精製水および注射用水としては、例えば、日本薬局方で規定されたものを例示することができる。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。なお、図示した純水製造装置の構成は、単なる一例であり、本発明を制限するものではなく、装置の使用目的や用途、要求性能に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0013】
純水製造装置1は、被処理水(原水)を順次処理して純水を製造し、その純水を純水供給装置(図示せず)に供給するものであり、原水タンク2と、水処理手段としての膜分離装置3と、同じく水処理手段としての電気式脱イオン水製造装置(以下、「EDI装置」ともいう)4とを有している。また、詳細は後述するが、本実施形態の純水製造装置1では、医薬品製造などに使用される純水を製造するという性質上、通常運転の合間に、熱水により系内の生菌数を低減させる殺菌処理が定期的に行われる。純水製造装置1は、そのような殺菌処理を実行する制御部(制御手段)5をさらに有している。
【0014】
膜分離装置3は、原水に含まれる不純物を除去して処理水を生成する装置であり、原水タンク2から供給される原水を、不純物を含む濃縮水と不純物が除去された透過水(処理水)とに分離する逆浸透膜(RO膜)を有している。膜分離装置3の分離膜としては、後述する加熱殺菌用の熱水に対する耐熱性を有する限り、RO膜に限定されず、例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)などを用いることができる。ただし、処理水質の向上の観点から、NF膜またはRO膜を用いることが好ましく、RO膜を用いることがより好ましい。なお、膜分離装置3は、複数のRO膜を有していてもよく、それらは、直列に接続されていてもよく、並列に接続されていてもよく、直列と並列を組み合わせて接続されていてもよい。ここでいう「直列に接続される」とは、被処理水が複数のRO膜で順次処理されることを意味し、隣接する2つのRO膜において、上流側のRO膜で分離された透過水が下流側のRO膜に被処理水として供給されることを意味する。この場合、上流側のRO膜で分離された透過水が下流側のRO膜でさらに処理されるため、より良好な水質の処理水を得ることができる。
【0015】
膜分離装置3には、膜分離装置3に原水を供給する給水ラインL1と、膜分離装置3からの透過水を流通させる透過水ラインL2と、膜分離装置3からの濃縮水(以下、「RO濃縮水」ともいう)を流通させるRO濃縮水ラインL3とが接続されている。給水ラインL1は、原水タンク2から後述する軟水器13を経由して膜分離装置3に至るラインであり、その上流側で開閉弁V1を介して原水タンク2に接続されている。透過水ラインL2は、その下流側でEDI装置4に接続され、RO濃縮水ラインL3は、その下流側で原水タンク2に接続されている。原水タンク2には、開閉弁V2を介して原水供給ラインL4が接続され、後述するように、必要に応じて原水が供給される。また、給水ラインL1と原水供給ラインL4との間には、原水供給ラインL4から原水タンク2を介さずに給水ラインL1に原水を供給するための原水導入ラインL5が設けられている。原水導入ラインL5は、開閉弁V2の上流側で原水供給ラインL4から分岐し、開閉弁V1の下流側で開閉弁V3を介して給水ラインL1に接続されている。なお、原水導入ラインL5の代わりに、外部の原水供給源と給水ラインL1とを直接接続する別のラインが設けられていてもよい。給水ラインL1のうち原水タンク2と開閉弁V1との間には、開閉弁V11を介して原水排出ラインL11が接続されている。
【0016】
給水ラインL1には、送水ポンプ11と、熱交換器12と、軟水器13と、加圧ポンプ14とが設けられている。なお、熱交換器12と軟水器13の位置は逆であってもよい。
【0017】
送水ポンプ11は、加圧ポンプ14と共に、原水タンク2に貯留された原水を膜分離装置3に供給する機能を有し、インバータ(図示せず)によって回転数が制御されるようになっていてもよい。熱交換器12は、季節によって変動する原水の温度を一定温度(例えば25℃)に制御することで、膜分離装置3の処理水質や処理量を安定させるために用いられるとともに、後述する加熱殺菌用の熱水を生成するためにも用いられる。軟水器13は、内部にイオン交換樹脂(例えばカチオン交換樹脂、好ましくはNa型の強酸性アニオン交換樹脂)が充填され、膜分離装置3に供給される原水からカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を除去する機能を有している。なお、図示していないが、軟水器13には、食塩水によるイオン交換樹脂の再生(イオン交換能力の回復)を行うためのラインが接続されている。加圧ポンプ14は、その回転数を制御するインバータ(図示せず)を備えていてもよく、それにより、膜分離装置3への原水の供給圧力を調整する機能を有していてもよい。
【0018】
給水ラインL1のうち熱交換器12と軟水器13との間には、開閉弁V12が設けられ、その下流側近傍には、開閉弁V13を介して置換水排出ラインL12が接続されている。また、給水ラインL1のうち軟水器13と加圧ポンプ14との間には、開閉弁V31が設けられ、その上流側近傍には、開閉弁V32を介して純水還流ラインL21が接続されている。なお、開閉弁V12,V13,V31,V32は、軟水器13と各ラインL1,L13,L21との連通状態を切り替える流路切替手段として機能する。純水還流ライン(第2の還流ライン)L21は、後述する純水返送ラインL9を流れる純水を給水ラインL1から軟水器13に還流させるために、純水返送ラインL9から分岐して軟水器13の下流側で給水ラインL1に接続されている。それに応じて、置換水排出ラインL12は、軟水器13に還流される純水を外部に排出するために、軟水器13の上流側で給水ラインL1に接続されている。ただし、これとは逆に、純水還流ラインL21が、軟水器13の上流側で給水ラインL1に接続され、置換水排出ラインL12が、軟水器13の下流側で給水ラインL1に接続されていてもよい。なお、開閉弁V12,V13の代わりに、給水ラインL1と置換水排出ラインL12との接続部に三方弁が設けられていてもよく、開閉弁V31,V32の代わりに、給水ラインL1と純水還流ラインL21との接続部に三方弁が設けられていてもよい。
【0019】
また、給水ラインL1には、開閉弁V33を備えたバイパスラインL22が接続されている。バイパスラインL22は、給水ラインL1のうち、置換水排出ラインL12との接続部の上流側(具体的には、開閉弁V12の上流側)と純水還流ラインL21との接続部の下流側(具体的には、開閉弁V31の下流側)とを接続し、軟水器13を介さずに膜分離装置3に原水を供給するために設けられている。換言すると、バイパスラインL22は、給水ラインL1と置換水排出ラインL12との接続部と、軟水器13と、給水ラインL1と純水還流ラインL21との接続部とをバイパスするように、給水ラインL1に接続されている。なお、開閉弁V33は、給水ラインL1とバイパスラインL22との連通状態を切り替える流路切替手段として機能する。
【0020】
給水ラインL1には、脱炭酸装置と紫外線殺菌器が設けられていてもよい。脱炭酸装置は、原水を脱炭酸処理して、原水に含まれる炭酸ガスを除去する機能を有し、紫外線殺菌器は、給水ラインL1を流れる原水を紫外線照射により殺菌するために用いられる。脱炭酸装置としては、例えば、脱炭酸膜や脱炭酸塔などが挙げられる。また、給水ラインL1には、膜分離装置3に供給される原水から残留塩素を除去するために、活性炭ろ過器が設けられていてもよく、原水に還元剤を注入する手段が設けられていてもよい。なお、膜分離装置3に供給される原水の前処理を行う前処理手段として、軟水器13の代わりに、活性炭ろ過器が設けられていてもよく、その場合、活性炭ろ過器の下流側に、活性炭ろ過器から生じる微粉炭を捕捉して除去するフィルタが設けられていてもよい。
【0021】
透過水ラインL2には開閉弁V4が設けられ、その下流側近傍には、透過水返送ラインL6が接続されている。透過水返送ラインL6は、開閉弁V5を介して透過水ラインL2から分岐し、原水タンク2に接続されている。なお、原水タンク2上部のスペースに余裕がある場合には、開閉弁V4,V5は、原水タンク2に近接する位置に設けられていてもよい。また、開閉弁V4,V5の代わりに、透過水ラインL2と透過水返送ラインL6との接続部に三方弁が設けられていてもよい。透過水ラインL2のうち上記接続部の上流側には、膜分離装置3からの透過水中に溶存する酸素や二酸化炭素を除去する膜脱気装置が設けられていてもよい。RO濃縮水ラインL3には、好ましくは原水タンク2に近接する位置に開閉弁V14が設けられ、その上流側近傍には、開閉弁V15を介してRO濃縮水排出ラインL13が接続されている。なお、開閉弁V14,V15の代わりに、RO濃縮水ラインL3とRO濃縮水排出ラインL13との接続部に三方弁が設けられていてもよい。
【0022】
EDI装置4は、イオン交換体による被処理水の脱イオン化(脱塩)処理と、イオン交換体の再生処理とを同時に行う装置であり、透過水ラインL2を通じて膜分離装置3から供給される透過水を処理して脱イオン水(純水)を製造するものである。EDI装置4には、EDI装置4からの純水を流通させる純水ラインL7と、EDI装置4からの濃縮水(以下、「EDI濃縮水」ともいう)を流通させるEDI濃縮水ラインL8とが接続されている。純水ラインL7は、その下流側で純水供給装置の純水タンク(図示せず)に接続され、EDI濃縮水ラインL8は、その下流側で原水タンク2に接続されている。また、図示していないが、EDI装置4には、EDI装置4からの電極水を外部に排出する電極水排出ラインが接続されている。
【0023】
一例として、EDI装置4は、陽極および陰極と、陽極および陰極の間に配置され、カチオン交換体とアニオン交換体との少なくとも一方が充填された脱塩室と、イオン交換膜を介して脱塩室の両側に配置された一対の濃縮室とを有している。脱塩室には、透過水ラインL2を通じて膜分離装置3からの透過水が被処理水として供給され、濃縮室には、同じく膜分離装置3からの透過水が濃縮水として供給される。なお、陽極および陰極をそれぞれ収容する電極室にも、同じく膜分離装置3からの透過水が電極水として供給される。膜分離装置3から脱塩室に透過水が供給されると、透過水中のイオン成分は、脱塩室内のイオン交換体でイオン交換されて除去される。イオン成分が除去された透過水は、脱イオン水(純水)として、脱塩室から純水ラインL7を通じてEDI装置4から排出される。このとき、脱塩室で除去されたイオン成分は、両極間に直流電圧が印加されることで発生する電位差により、イオン交換体から脱離して脱塩室に隣接する濃縮室に移動する。こうして濃縮室に移動したイオン成分は、濃縮室を流れる濃縮水に取り込まれ、EDI濃縮水ラインL8を通じてEDI装置4から排出される。一方で、脱塩室では、水解離反応(水が水素イオンと水酸化物イオンとに解離する反応)が連続的に進行しており、これら水素イオンおよび水酸化物イオンが脱塩室内のイオン交換体に保持されたイオン成分と交換されて、脱塩室内のイオン交換体が再生される。
【0024】
純水ラインL7には開閉弁V6が設けられ、その上流側近傍には、開閉弁V7を介して純水返送ラインL9が接続されている。純水返送ライン(第1の還流ライン)L9は、EDI装置4からの純水(処理水)を流通させて原水タンク2に還流させるために、純水ラインL7から分岐して原水タンク2に接続されている。これにより、例えば、装置起動時や運転再開時、ユースポイントで純水の需要がない場合に純水供給装置の純水タンク(図示せず)内の水位が変動しないときなど、純水製造装置1内で純水の循環運転を行うこともできる。すなわち、純水ラインL7の開閉弁V6が閉鎖され、純水返送ラインL9の開閉弁V7が開放されることで、純水返送ラインL9を通じてEDI装置4で製造される純水を原水タンク2に還流させることができる。なお、開閉弁V6,V7の代わりに、純水ラインL7と純水返送ラインL9との接続部に三方弁が設けられていてもよい。
【0025】
純水ラインL7のうち純水返送ラインL9との接続部の上流側には、フィルタと紫外線殺菌器が設けられていてもよい。フィルタは、EDI装置4から生じる破砕樹脂を捕捉して除去する機能を有し、紫外線殺菌器は、純水ラインL7を流れる純水を紫外線照射により殺菌するために用いられる。なお、製造される純水が医薬品製造用の精製水として使用される場合など、純水の生菌数管理が必要な場合には、紫外線殺菌器は設けられていることが好ましい。EDI濃縮水ラインL8には、(図では離れているが)好ましくは原水タンク2に近接する位置に開閉弁V16が設けられ、その上流側近傍には、開閉弁V17を介してEDI濃縮水排出ラインL14が接続されている。純水返送ラインL9には、純水還流ラインL21との接続部の下流側に開閉弁V18が設けられている。なお、純水返送ラインL9の開閉弁V18の上流側近傍には、後述する殺菌準備工程時に純水を外部に排出するための純水排出ラインが接続されていてもよい。また、開閉弁V16,V17の代わりに、EDI濃縮水ラインL8とEDI濃縮水排出ラインL14との接続部に三方弁が設けられていてもよい。
【0026】
なお、EDI装置4の代わりに、あるいはそれに加えて、膜分離装置3からの透過水を処理するイオン交換装置として、非再生型または再生型の混床式イオン交換樹脂塔が設けられていてもよい。
【0027】
純水製造装置1の通常運転(純水製造)時には、原水タンク2に貯留された原水が膜分離装置3やEDI装置4などで順次処理され、こうして得られた純水が純水ラインL7を通じて純水供給装置(図示せず)に供給される採水工程が行われる。具体的には、原水タンク2に貯留された原水は、送水ポンプ11の作動により、給水ラインL1を通じて熱交換器12および軟水器13に供給される。熱交換器12において一定温度(例えば25℃)に調節された原水は、軟水器13において硬度成分が除去された後、加圧ポンプ14の作動により膜分離装置3に供給され、そこで膜分離処理により透過水とRO濃縮水とに分離される。透過水は、透過水ラインL2を通じてEDI装置4に供給され、RO濃縮水は、その全てがRO濃縮水ラインL3からRO濃縮水排出ラインL13を通じて外部に排出される。EDI装置4に供給された透過水は、脱塩処理によりイオン成分が除去された後、純水として純水ラインL7を通じて純水供給装置(図示せず)へと送られる。このとき、EDI濃縮水は、その全てがEDI濃縮水ラインL8を通じて原水タンク2に返送され、EDI装置4からの電極水は、後述する熱水殺菌工程中も含め常時、その全てが電極水排出ライン(図示せず)を通じて外部に排出される。
【0028】
なお、原水タンク2には水位センサ(図示せず)が設けられ、上述した採水工程時には、その水位センサにより検知された原水タンク2内の水位に応じて、原水供給ラインL4を通じて原水タンク2に原水が供給される。具体的には、原水タンク2内の水位が所定の下限水位以下になると、原水供給ラインL4の開閉弁V2が開放されて原水が供給され、原水タンク2内の水位が所定の上限水位に達すると、原水供給ラインL4の開閉弁V2が閉鎖されて原水の供給が停止される。
【0029】
本実施形態の純水製造装置1では、医薬品製造などに使用される純水を製造するという性質上、上述した採水工程の合間に、熱水により系内の生菌数を低減させる殺菌処理が定期的に行われる。以下、この熱水殺菌方法について詳細に説明する。
【0030】
(殺菌準備工程)
殺菌準備工程は、純水製造装置1を熱水により殺菌するための準備として、純水製造装置1の系内を純水で置換する工程であり、第1の準備工程から第3の準備工程までの3つのステップからなる。
【0031】
[第1の準備工程]
第1の準備工程は、純水製造装置1の通常運転(純水製造)時に原水タンク2に貯留されていた原水を外部に排出する工程である。
【0032】
第1の準備工程では、まず、給水ラインL1の開閉弁V1が閉鎖されるとともに、送水ポンプ11が停止され、それと同時に、加圧ポンプ14が停止されることで、純水製造装置1の通常運転が停止される。そして、原水排出ラインL11の開閉弁V11が開放され、原水タンク2内の原水が原水排出ラインL11を通じて外部に排出される。その後、原水タンク2に設けられた水位センサ(図示せず)により、例えば、原水タンク2内の水位が所定の下限水位以下になったことが確認されると、原水排出ラインL11の開閉弁V11が閉鎖され、原水の排出が停止されることで第1の準備工程が終了する。
【0033】
原水の排出は、原水タンク2が完全に空になるまで行ってもよいが、その場合、送水ポンプ2の吸込側に空気が取り込まれ、以下の第2の準備工程で送水ポンプ11が起動される際にその空気を含んだ水が送水ポンプ11に流れてしまい、送水ポンプ11が破損するおそれがある。そのため、原水の排出は、送水ポンプ11の起動時の空気混入を抑制する観点から、原水タンク2が完全に空になるまでは行わずに、原水タンク2内に所定量の原水を残した状態で終了することが好ましい。ただし、送水ポンプ11として自動エア抜き弁を備えたものを用いる場合には、原水タンク2を完全に空にするまで原水の排出を行ってもよい。
【0034】
[第2の準備工程]
第2の準備工程は、第1の準備工程でほぼ空になった原水タンク2に純水を貯留する工程である。第2の準備工程が実行されることで、軟水器13を含む給水ラインL1を除いて、系内のほとんどが純水で置換される。
【0035】
原水排出ラインL11の開閉弁V11が閉鎖されることで第1の準備工程が終了すると、原水導入ラインL5の開閉弁V3が開放され、送水ポンプ11と加圧ポンプ14が起動される。このとき、給水ラインL1の開閉弁V12,V31は開放され、置換水排出ラインL12の開閉弁V13と純水還流ラインL21の開閉弁V32とバイパスラインL22の開閉弁V33とは閉鎖されている。そのため、給水ラインL1は軟水器13に連通されており、給水ラインL1とバイパスラインL22との連通、軟水器13と置換水排出ラインL12との連通、および、軟水器13と純水還流ラインL21との連通はそれぞれ遮断されている(第1の連通状態)。こうして、原水供給ラインL4を流れる原水が原水タンク2を介さずに原水導入ラインL5を通じて給水ラインL1に供給されることを除いて、純水製造装置1において採水工程時と同様の純水製造が行われ、第2の準備工程が開始される。
【0036】
第2の準備工程(第1の処理)では、純水ラインL7の開閉弁V6が閉鎖され、純水返送ラインL9の開閉弁V7,V18が開放されることで、EDI装置4で得られた純水(処理水)は、純水ラインL7から純水返送ラインL9を通じて、原水タンク2に供給されて貯留される。こうして、原水タンク2と、膜分離処置3およびEDI装置4と、膜分離処置3およびEDI装置4から原水タンク2までの各ラインL2,L6~L7,L9とが純水(透過水を含む)で置換される。なお、RO濃縮水は、採水工程時と同様に、RO濃縮水ラインL3からRO濃縮水排出ラインL13を通じて外部に排出される。EDI濃縮水も、EDI濃縮水ラインL8の開閉弁V16が閉鎖され、EDI濃縮水排出ラインL14の開閉弁V17が開放されることで、EDI濃縮水ラインL8からEDI濃縮水排出ラインL14を通じて外部に排出される。
【0037】
なお、第2の準備工程では、採水工程時と同様に、膜分離装置3の処理水質や処理量を安定させるために、熱交換器12により原水の温度が一定温度(例えば25℃)に調節されることが好ましい。また、原水タンク2への純水の供給(貯留)は、純水返送ラインL9に流入した純水を一定量、図示しない純水排出ラインを通じて外部に排出した後に開始されてもよい。そのタイミングは、制御部5が有するタイマを用いて決定されてもよく、純水の流通経路(すなわち、純水ラインL7、純水返送ラインL9、および純水排出ライン)内に設けられた水質検出手段(図示せず)を用いて決定されてもよく、その両方を用いて決定されてもよい。水質検出手段としては、特に限定されず、例えば、導電率計や比抵抗計を用いることができる。
【0038】
第2の準備工程は、例えば、水位センサ(図示せず)により原水タンク2内の水位が所定の上限水位に達したことが確認されるまで行われる。なお、後述する熱水殺菌工程では、系内の保有水量が多いほど、純水の加熱や冷却に要する時間が長くなるため、このときの上限水位は、熱水殺菌を実施するために必要な保有水量が確保される限り、できるだけ低く設定されていることが好ましい。ただし、上述したように、熱水殺菌工程中はEDI装置4からの電極水が常時外部に排出されるため、系内の保有水量は減り続けることになる。したがって、上限水位としては、そのような排出分を見込んだ最小限の保有水量となるような水位に設定されていることが好ましい。
【0039】
[第3の準備工程]
第3の準備工程は、軟水器13に純水を通水し、第2の準備工程において純水で置換されなかった軟水器13内を純水で置換する工程である。
【0040】
原水タンク2内の水位が所定の上限水位に達したことが確認されると、第3の準備工程が開始される。第3の準備工程(第2の処理)では、給水ラインL1の開閉弁V12,V31と純水返送ラインL9の開閉弁V18が閉鎖され、バイパスラインL22の開閉弁V33と置換水排出ラインL12の開閉弁V13と純水還流ラインL21の開閉弁V32とが開放される。これにより、給水ラインL1と軟水器13との連通が遮断され、給水ラインL1がバイパスラインL22に連通され、軟水器13が置換水排出ラインL12と純水還流ラインL21とにそれぞれ連通される(第2の連通状態)。こうして、給水ラインL1に供給される原水が軟水器13をバイパスして(すなわち、軟水器13で処理されずに)膜分離装置3に供給されることを除いて、純水製造装置1において第2の準備工程時と同様の純水製造が行われる。そして、純水返送ラインL9を流れる純水は、純水還流ラインL21を通じて給水ラインL1に還流され、軟水器13を採水工程時とは逆向きに流れた後、給水ラインL1から置換水排出ラインL12を通じて外部に排出される。こうして、第2の準備工程において純水で置換されなかった系内のうち、比較的容量の大きい軟水器13に純水が通水され、軟水器13内が純水で置換される。
【0041】
第3の準備工程を終了するか否かは、好ましくは、軟水器13内が純水で十分に置換されたか否かに基づいて判定される。軟水器13内が純水で十分に置換されたか否かは、例えば、置換水排出ラインL12に設けられた水質検出手段(図示せず)の検出結果に基づいて判定することができる。具体的には、置換水排出ラインL12からの排水の水質が所定の水質を満たしていると判定された場合に、軟水器13内が純水で十分に置換されたと判定し、第3の準備工程を終了すると判定することができる。水質検出手段としては、特に限定されず、例えば、導電率計や比抵抗計を用いることができる。あるいは、第3の準備工程は、EDI装置4の脱塩室出口付近に設けられた流量センサ(図示せず)により、純水の積算流量が所定値以上になったことが確認されたタイミングで終了してもよく、予め設定された所定の通水時間が経過したタイミングで終了してもよい。
【0042】
なお、上述した殺菌準備工程では、第2の準備工程において軟水器13を除いた系内の純水置換が行われた後、第3の準備工程において軟水器13内の純水置換が行われるが、その順序は逆であってもよい。すなわち、第1の準備工程の終了後、第3の準備工程が実行され、軟水器13内が純水で置換された後、第2の準備工程が実行され、軟水器13を除く系内が純水で置換されてもよい。ただし、その場合、第2の準備工程では、軟水器13内がすでに純水で置換されているため、上述した場合とは異なり、膜分離装置3には軟水器13をバイパスした原水が供給される。具体的には、給水ラインL1の開閉弁V12,V31と純水還流ラインL21の開閉弁V32とが閉鎖されるとともに、好ましくは置換水排出ラインL12の開閉弁V13が閉鎖され、バイパスラインL22の開閉弁V33と純水返送ラインL8の開閉弁V18とが開放される。これにより、給水ラインL1と軟水器13との連通が遮断され、給水ラインL1がバイパスラインL22に連通され、好ましくは軟水器13と置換水排出ラインL12との連通が遮断され、軟水器13と純水還流ラインL21との連通が遮断される(第3の連通状態)。こうして、給水ラインL1に供給される原水は、軟水器13をバイパスして膜分離装置3に供給され、EDI装置4からの純水は、純水ラインL7から純水返送ラインL9を通じて、原水タンク2に供給されて貯留される。
【0043】
(熱水殺菌工程)
熱水殺菌工程は、純水製造装置1の系内を熱水により殺菌する工程である。具体的には、原水タンク2に貯留された純水を系内で循環させつつ、熱交換器12により60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱し、一定時間保持した後、系内の温度が膜分離装置3による膜分離処理に適した温度になるまで冷却する工程である。
【0044】
第3の準備工程が終了すると、原水導入ラインL5の開閉弁V3が閉鎖され、原水導入ラインL5を通じた給水ラインL1への原水の供給が停止されると同時に、給水ラインL1の開閉弁V1が開放され、原水タンク2から給水ラインL1への純水の供給が開始される。そして、給水ラインL1の開閉弁V12,V31と透過水ラインL2の開閉弁V4と純水返送ラインL9の開閉弁V7,V18とが開放され、バイパスラインL22の開閉弁V33と純水ラインL7の開閉弁V6と純水還流ラインL21の開閉弁V32と置換水排出ラインL12の開閉弁V13とが閉鎖される。これにより、熱水殺菌工程が開始され、原水タンク2に貯留された純水は、軟水器13を含む給水ラインL1、膜分離装置3、透過水ラインL2、EDI装置4、純水ラインL7、および純水返送ラインL9を通じて循環される。それと同時に、熱交換器12に熱媒体(例えば蒸気)が供給され、循環する純水が60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱されて保持される。こうして、高温に保持された純水(熱水)の循環により、純水製造装置1の系内が殺菌される。
【0045】
このとき、透過水返送ラインL6の開閉弁V5が開放されることで、透過水返送ラインL6にも熱水が通水されて殺菌される。また、RO濃縮水ラインL3の開閉弁V14とEDI濃縮水ラインL8の開閉弁V16が開放され、RO濃縮水排出ラインL13の開閉弁V15とEDI濃縮水排出ラインL14の開閉弁V17とが閉鎖されることで、RO濃縮水ラインL3とEDI濃縮水ラインL8にも熱水が通水されて殺菌される。なお、熱水殺菌工程中は、軟水器13で発生するガスを排出するために、軟水器13の上部に設けられたエア抜き弁(図示せず)が常時または間欠的に開放されてもよい。
【0046】
熱水の循環が一定時間行われた後、熱水の冷却が開始される。具体的には、熱交換器12への熱媒体の供給が停止され、その代わりに、熱交換器12への冷媒(例えば冷水)の供給が開始される。これにより、循環する熱水が冷却され、例えば45℃未満になるまで冷却される。
【0047】
なお、熱水殺菌工程での熱水の温度は、熱水の循環経路内に設けられた温度センサ(図示せず)の検出値に基づいて調整される。温度センサの位置は特に限定されないが、熱水の循環方向において熱交換器12からできるだけ離れた位置であることが好ましく、より好ましくは、熱交換器12の入口付近である。すなわち、この付近では、放熱の影響で熱水の温度が最も低くなるため、この付近での熱水の温度が所望の殺菌温度を下回らないように調整することで、系内の十分な殺菌効果を確保することができる。また、RO濃縮水ラインL3やEDI濃縮水ラインL8にも温度センサを設置して、それらに通水される熱水の温度を監視してもよい。熱水殺菌工程での原水の昇温速度は、急激な温度変化による各機器へのダメージを少なくするために、0.1~15℃/minであることが好ましい。また、熱水の降温速度も、急激な温度変化による影響を軽減するために、0.1~15℃/minであることが好ましい。
【0048】
(RO立ち上げ工程)
RO立ち上げ工程は、純水製造装置1の通常運転を再開する前に、膜分離装置3の立ち上げ運転として実施される工程であり、所定の水質を満たす透過水が得られるまで行われる。
【0049】
循環する熱水が冷却され、膜分離装置3による膜分離処理に適した温度(例えば45℃未満)になると、熱水殺菌工程からRO立ち上げ工程に移行され、膜分離装置3において採水工程時と同様の膜分離処置が行われる。このとき、膜分離処置3からの透過水は、透過水ラインL2の開閉弁V4が閉鎖され、透過水返送ラインL6の開閉弁V5が開放されることで、その全てが透過水ラインL2から透過水返送ラインL6を通じて原水タンク2に還流される。一方、RO濃縮水は、RO濃縮水ラインL3の開閉弁V14が閉鎖され、RO濃縮水排出ラインL13の開閉弁V15が開放されることで、RO濃縮水ラインL3からRO濃縮水排出ラインL13を通じて外部に排出される。
【0050】
RO立ち上げ工程は、上述したように、膜分離処置3からの透過水の水質が所定の水質を満たすようになるまで行われる。透過水の水質が所定の水質を満たしたか否かは、例えば、膜分離処置3の二次側の出口付近に設置した導電率センサ(図示せず)により透過水の導電率を検出し、その検出値が所定値(例えば、15μS/cm)以下になったか否かによって判定することができる。また、RO立ち上げ工程を終了するか否かは、透過水の水質が所定の水質を満たしたか否かに加えて、透過水の流量とRO濃縮水の流量がそれぞれ安定したか否かに基づいて判定されてもよい。それぞれの流量が安定したか否かは、流量センサを用いて判定されてもよく、流量が安定するまでの時間を予め試運転で計測しておき、その時間が経過したか否かに基づいて判定されてもよい。
【0051】
(EDI立ち上げ工程)
EDI立ち上げ工程は、純水製造装置1の通常運転を再開する前に、EDI装置4の立ち上げ運転として、RO立ち上げ工程から引き続き実施される工程であり、所定の水質を満たす純水が得られるまで行われる。
【0052】
膜分離処置3からの透過水の水質が所定の水質を満たしたことが確認されると、透過水ラインL2の開閉弁V4が開放されるとともに、透過水返送ラインL6の開閉弁V5が閉鎖され、膜分離処置3からの透過水がEDI装置4に供給される。こうして、EDI立ち上げ工程が開始されると、EDI装置4において採水工程時と同様の脱塩処理が行われ、純水ラインL7の開閉弁V6が閉鎖されるとともに、純水返送ラインL9の開閉弁V7が開放される。これにより、EDI装置4からの純水は、純水ラインL7から純水返送ラインL9を通じて原水タンク2に還流される。また、EDI濃縮水も、EDI濃縮水ラインL8の開閉弁V16が開放され、EDI濃縮水排出ラインL14の開閉弁V17が閉鎖されることで、EDI濃縮水ラインL8を通じて原水タンク2に還流される。
【0053】
EDI立ち上げ工程は、上述したように、EDI装置4からの純水の水質が所定の水質を満たすようになるまで行われる。純水の水質が所定の水質を満たしたか否かは、例えば、EDI装置4の脱塩室出口付近に設置した導電率センサ(図示せず)により純水の導電率を検出し、その検出値が所定値(例えば、1μS/cm)以下になったか否かによって判定することができる。また、EDI立ち上げ工程を終了するか否かは、純水の水質が所定の水質を満たしたか否かに加えて、純水の流量とEDI濃縮水の流量とEDI電極水の流量がそれぞれ安定したか否かに基づいて判定されてもよい。それぞれの流量が安定したか否かは、流量センサを用いて判定されてもよく、流量が安定するまでの時間を予め試運転で計測しておき、その時間が経過したか否かに基づいて判定されてもよい。
【0054】
EDI立ち上げ工程が終了すると、純水ラインL7の開閉弁V6が開放され、純水返送ラインL9の開閉弁V7が閉鎖されることで、純水製造装置1において通常運転が再開され、純水製造装置1で製造された純水が純水ラインL7を通じて液体供給装置(図示せず)に供給される。
【0055】
以上、本実施形態によれば、給水ラインL1のうち、軟水器(前処理手段)13の下流側に純水還流ライン(第2の還流ライン)L21を介して純水返送ライン(第1の還流ライン)L9が接続され、軟水器13の上流側に置換水排出ラインL12が接続されていることで、純水返送ラインL9を流れる純水を軟水器13に還流させて外部に排出することが可能になる。これにより、熱水(加熱された純水)による殺菌処理を実行する前に、軟水器13に純水を通水することが可能になり、従来の方法ではイオン負荷の高い原水が滞留していた軟水器13の内部を純水で置換することが可能になる。その結果、殺菌処理中のEDI装置4へのイオン負荷を低減することができ、殺菌処理後の純水製造時にEDI装置4の処理水質が悪化することを未然に抑制することができる。
【0056】
バイパスラインL22と置換水排出ラインL12の用途は、上述した用途に限定されず、例えば、軟水器13内のイオン交換樹脂の逆洗を行うために、バイパスラインL22と置換水排出ラインL12が使用されてもよい。すなわち、原水タンク2に貯留された原水を逆洗水として軟水器13の出口から流入させ、軟水器13の入口を通じて外部に排出するために、バイパスラインL22と置換水排出ラインL12が使用されてもよい。換言すると、軟水器13には、イオン交換樹脂の逆洗を行うためのラインが接続されているが、そのような既存のラインを置換水排出ラインL12やバイパスラインL22として流用してもよい。
【0057】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。本実施形態は、原水の前処理を行う前処理手段として活性炭ろ過器が追加されている点で第1の実施形態と異なっている。以下、そのような相違点を中心に説明する。
【0058】
本実施形態では、給水ラインL1のうち軟水器13の下流側、具体的には、軟水器13の出口と純水還流ラインL21との接続部との間に、活性炭ろ過器15とフィルタ(図示せず)がこの順に設けられている。活性炭ろ過器15は、上述したように、膜分離装置3に供給される原水から残留塩素を除去する機能を有し、フィルタは、活性炭ろ過器15から生じる微粉炭を捕捉して除去する機能を有している。これに伴い、本実施形態では、バイパスラインL22は、軟水器13と活性炭ろ過器15(およびフィルタ)をバイパスするように給水ラインL1に接続されている。なお、軟水器13と活性炭ろ過器15の位置は逆であってもよいが、軟水器13の下流側に活性炭ろ過器15が設けられていると、原水に含まれる残留塩素が活性炭ろ過器15で除去される前に、軟水器13に原水が通水されることで、軟水器13内での生菌の繁殖を抑制することができる。そのため、活性炭ろ過器15の位置は、図示したように軟水器13の下流側であることが好ましい。
【0059】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の方法で、熱水による殺菌処理が実行される。すなわち、原水タンク2に貯留されていた原水が外部に排出された後(殺菌準備工程の第1の準備工程)、原水タンク2に純水が貯留され、軟水器13および活性炭ろ過器15を含む給水ラインL1を除いて、系内のほとんどが純水で置換される(同第2の準備工程)。その後、軟水器13および活性炭ろ過器15に純水が通水されることで、軟水器13および活性炭ろ過器15内も純水で置換される(同第3の準備工程)。そして、純水製造装置1の系内が熱水により殺菌された後(熱水殺菌工程)、所定の水質を満たす透過水が得られるまで、膜分離装置3の立ち上げ運転が実施される(RO立ち上げ工程)。引き続き、所定の水質を満たす純水が得られるまで、EDI装置4の立ち上げ運転が実施された後(EDI立ち上げ工程)、純水製造装置1の通常運転が再開される。したがって、本実施形態では、第1の実施形態に比べて前処理手段として用いられる機器が増えたとしても、工程数を増加させることなく、熱水殺菌方法を実行することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る純水製造装置の概略構成図である。本実施形態は、軟水器が2系統設けられているとともに、原水の前処理を行う前処理手段として、活性炭ろ過器が追加されている点で第1の実施形態と異なっている。以下、そのような相違点を中心に説明する。
【0061】
本実施形態では、第1の実施形態の軟水器13が並列に2つ設けられ、それに伴い、第1の実施形態の送水ポンプ11も2つ設けられている。具体的には、給水ラインL1の上流側が2つの分岐ラインL1a,L1bに分岐し、それぞれ開閉弁V1a,V1bを介して原水タンク2に接続されている。そして、第1の分岐ラインL1aに、第1の送水ポンプ11aと第1の軟水器13aが設けられ、第2の分岐ラインL1bに、第2の送水ポンプ11bと第2の軟水器13bが設けられている。これにより、軟水器13が1つしか設けられていない第1の実施形態では、軟水器13の再生処理を行うために純水製造装置1の運転を停止せざるを得ないのに対し、本実施形態では、2つの軟水器13a,13bの一方で再生処理を行っている間にも他方で原水を処理することができる。そのため、2つの軟水器13a,13bの一方の機能が低下しても、純水製造装置1の運転を継続することができる。なお、本実施形態では、給水ラインL1の上流側が2つの分岐ラインL1a,L1bに分岐していることに伴い、第1の実施形態の原水導入ラインL5も2つ設けられている。すなわち、第1の分岐ラインL1aには、開閉弁V3aを介して第1の原水導入ラインL5aが接続され、第2の分岐ラインL1bには、開閉弁V3bを介して第2の原水導入ラインL5bが接続されている。
【0062】
また、本実施形態では、第1の実施形態の軟水器13が2つ設けられていることに伴い、第1の実施形態の軟水器13に付随する構成(すなわち、置換水排出ラインL12、純水還流ラインL21、バイパスラインL22、および開閉弁V12,V13,V31~V33)も、第1の分岐ラインL1aと第2の分岐ラインL1bにそれぞれ、第1の実施形態と同様に設けられている。以下、第1の軟水器13aに付随する構成と第2の軟水器13bに付随する構成とを区別するために、第1の軟水器13aに付随する構成には、冒頭に「第1の」を付すとともに符号に添字「a」を付すことがあり、第2の軟水器13bに付随する構成には、冒頭に「第2の」を付すとともに符号に添字「b」を付すことがある。例えば、第1の軟水器13aに付随して設けられた、置換水排出ラインL12、純水還流ラインL21、およびバイパスラインL22は、それぞれ、第1の置換水排出ラインL12a、第1の純水還流ラインL21a、および第1のバイパスラインL22aである。また、第2の軟水器13bに付随して設けられた、置換水排出ラインL12、純水還流ラインL21、およびバイパスラインL22は、それぞれ、第2の置換水排出ラインL12b、第2の純水還流ラインL21b、および第2のバイパスラインL22bである。
【0063】
なお、第1の実施形態では送水ポンプ11と軟水器13との間に設けられていた熱交換器12は、本実施形態では、2つの軟水器13a,13bの下流側、すなわち、給水ラインL1のうち2つの分岐ラインL1a,L1bの合流部の下流側に設けられている。ただし、コストが許せば、第1の実施形態と同様に、送水ポンプ11a,11bと軟水器13a,13bの間にそれぞれ熱交換器12が設けられていてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、給水ラインL1のうち熱交換器12と加圧ポンプ14との間に、活性炭ろ過器15とフィルタ(図示せず)とがこの順に設けられている。活性炭ろ過器15は、膜分離装置3に供給される原水の前処理を行う前処理手段として機能し、上述したように、膜分離装置3に供給される原水から残留塩素を除去するために用いられる。フィルタは、活性炭ろ過器15から生じる微粉炭を捕捉して除去する機能を有している。
【0065】
また、給水ラインL1のうち熱交換器12と活性炭ろ過器15との間には、開閉弁V21が設けられ、その下流側近傍には、開閉弁V22を介して第3の置換水排出ラインL16が接続されている。また、給水ラインL1のうち活性炭ろ過器15と加圧ポンプ14との間には、開閉弁V34が設けられ、その上流側近傍には、開閉弁V35を介して第3の純水還流ラインL23が接続されている。なお、開閉弁V21,V22,V34,V35は、活性炭ろ過器15と各ラインL1,L16,L23との連通状態を切り替える流路切替手段として機能する。第3の純水還流ライン(第2の還流ライン)L23は、純水返送ラインL9を流れる純水を給水ラインL1から活性炭ろ過器15に還流させるために、純水返送ラインL9から分岐して活性炭ろ過器15の下流側で給水ラインL1に接続されている。それに応じて、第3の置換水排出ラインL16は、活性炭ろ過器15に還流される純水を外部に排出するために、活性炭ろ過器15の上流側で給水ラインL1に接続されている。ただし、これとは逆に、第3の純水還流ラインL23が、活性炭ろ過器15の上流側で給水ラインL1に接続され、第3の置換水排出ラインL16が、活性炭ろ過器15の下流側で給水ラインL1に接続されていてもよい。開閉弁V21,V22の代わりに、給水ラインL1と第3の置換水排出ラインL16との接続部に三方弁が設けられていてもよく、開閉弁V34,V35の代わりに、給水ラインL1と第3の純水還流ラインL23との接続部に三方弁が設けられていてもよい。
【0066】
また、給水ラインL1には、開閉弁V36を備えた第3のバイパスラインL24が接続されている。第3のバイパスラインL24は、給水ラインL1のうち、第3の置換水排出ラインL12との接続部の上流側(具体的には、開閉弁V21の上流側)と第3の純水還流ラインL23との接続部の下流側(具体的には、開閉弁V34の下流側)とを接続し、活性炭ろ過器15を介さずに膜分離装置3に原水を供給するために設けられている。なお、開閉弁V36は、給水ラインL1と第3のバイパスラインL24との連通状態を切り替える流路切替手段として機能する。
【0067】
本実施形態における採水工程は、原水が2つの軟水器13a,13bのうち一方に供給され、熱交換器12を通過した後に活性炭ろ過器15に供給されることを除いて、第1の実施形態と同様である。一方で、本実施形態における熱水殺菌方法の各工程は、上述のような構成の変更に伴い、特に殺菌準備工程のうち第3の準備工程の手順が第1の実施形態と異なっている。以下、本実施形態の熱水殺菌方法について、純水製造装置1の採水工程時に2つの軟水器13a,13bのうち第1の軟水器13aに純水が供給される場合を例に挙げて、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0068】
殺菌準備工程における第2の準備工程では、2つの軟水器13a,13bと活性炭ろ過器15を含む給水ラインL1が純水で置換されないが、第3の準備工程では、そのうち、まず、活性炭ろ過器15に純水が通水され、活性炭ろ過器15内が純水で置換される。
【0069】
具体的には、第2の準備工程が終了すると、給水ラインL1の開閉弁V21,V34と純水返送ラインL9の開閉弁V18とが閉鎖され、第3のバイパスラインL24の開閉弁V36と第3の置換水排出ラインL16の開閉弁V22と第3の純水還流ラインL23の開閉弁V35とが開放される。これにより、給水ラインL1と活性炭ろ過器15との連通が遮断され、給水ラインL1が第3のバイパスラインL24に連通され、活性炭ろ過器15が第3の置換水排出ラインL16と第3の純水還流ラインL23とにそれぞれ連通される(第2の連通状態)。こうして、第1の軟水器13aと熱交換器12を通過した原水は、活性炭ろ過器15をバイパスして(すなわち、活性炭ろ過器15で処理されずに)膜分離装置3に供給される。そして、膜分離装置3に供給された原水は、そこで処理され、引き続きEDI装置4で処理された後、純水として純水返送ラインL9に供給される。純水返送ラインL9を流れる純水は、第3の純水還流ラインL23を通じて給水ラインL1に還流され、活性炭ろ過器15を採水工程時とは逆向きに流れた後、給水ラインL1から第3の置換水排出ラインL16を通じて外部に排出される。こうして、活性炭ろ過器15に純水が通水され、活性炭ろ過器15内が純水で置換される。
【0070】
活性炭ろ過器15への純水の通水は、例えば、導電率計や比抵抗計などの水質検出手段により、第3の置換水排出ラインL16からの排水の水質が所定の水質を満たしていると判定された場合に終了することができる。あるいは、EDI装置4の脱塩室出口付近に設けられた流量センサ(図示せず)により、純水の積算流量が所定値以上になったことが確認されたタイミングで終了してもよく、予め設定された所定の通水時間が経過したタイミングで終了してもよい。
【0071】
活性炭ろ過器15内が純水で置換されると、次に、第1の実施形態の軟水器13の場合と同様に、第2の軟水器13bに純水が通水され、第2の軟水器13b内が純水で置換される。
【0072】
具体的には、第3の純水還流ラインL23の開閉弁V35と第3の置換水排出ラインL16の開閉弁V22が閉鎖され、活性炭ろ過器15への純水の通水が停止されるとともに、第2の純水還流ラインL21bの開閉弁V32bと第2の置換水排出ラインL12bの開閉弁V13bが開放される。これにより、純水返送ラインL9を流れる純水は、第2の純水還流ラインL21bを通じて第2の分岐ラインL1bに還流され、第2の軟水器13bを採水工程時とは逆向きに流れた後、第2の分岐ラインL1bから第2の置換水排出ラインL12bを通じて外部に排出される。こうして、第2の軟水器13bに純水が通水され、第2の軟水器13b内が純水で置換される。
【0073】
第2の軟水器13bへの純水の通水は、例えば、導電率計や比抵抗計などの水質検出手段により、第2の置換水排出ラインL12bからの排水の水質が所定の水質を満たしていると判定された場合に終了することができる。あるいは、EDI装置4の脱塩室出口付近に設けられた流量センサ(図示せず)により、純水の積算流量が所定値以上になったことが確認されたタイミングで終了してもよく、予め設定された所定の通水時間が経過したタイミングで終了してもよい。
【0074】
第2の軟水器13b内が純水で置換されると、最後に、第1の実施形態の軟水器13の場合と同様に、第1の軟水器13aに純水が通水され、第1の軟水器13a内が純水で置換される。
【0075】
具体的には、まず、第2の純水還流ラインL21bの開閉弁V32bと第2の置換水排出ラインL12bの開閉弁V13bが閉鎖され、第2の軟水器13bへの純水の通水が停止される。そして、第1の分岐ラインL1aの開閉弁V12a,V31aが閉鎖され、第1のバイパスラインL22aの開閉弁V33aが開放される。これにより、第1の分岐ラインL1aに供給される原水は、第1の軟水器13aと活性炭ろ過器15の両方をバイパスして(すなわち、その両方で処理されずに)膜分離装置3に供給され、膜分離装置3とEDI装置4で順次処理されて、純水として純水返送ラインL9に供給される。このとき、純水返送ラインL9を流れる純水は、第1の純水還流ラインL21aの開閉弁V32aと第1の置換水排出ラインL12aの開閉弁V13aが開放されることで、第1の純水還流ラインL21a通じて第1の分岐ラインL1aに還流される。そして、第1の分岐ラインL1aに還流された純水は、第1の軟水器13aを採水工程時とは逆向きに流れた後、第1の分岐ラインL1aから第1の置換水排出ラインL12aを通じて外部に排出される。こうして、第1の軟水器13aに純水が通水され、第1の軟水器13a内が純水で置換される。
【0076】
第1の軟水器13aへの純水の通水は、例えば、導電率計や比抵抗計などの水質検出手段により、第1の置換水排出ラインL12aからの排水の水質が所定の水質を満たしていると判定された場合に終了することができる。あるいは、EDI装置4の脱塩室出口付近に設けられた流量センサ(図示せず)により、純水の積算流量が所定値以上になったことが確認されたタイミングで終了してもよく、予め設定された所定の通水時間が経過したタイミングで終了してもよい。
【0077】
こうして殺菌準備工程が終了すると、第1の実施形態と同様の手順で、第1の分岐ラインL1aにだけでなく第2の分岐ラインL1bにも、原水タンク2からの原水の供給が開始される。こうして熱水殺菌工程が開始され、第1の分岐ラインL1aにだけでなく第2の分岐ラインL1bにも熱水が通水されて殺菌される。なお、熱水殺菌工程の終了後、RO立ち上げ工程とEDI立ち上げ工程を経て、純水製造装置1の運転が再開されることは、第1の実施形態と同様である。
【0078】
なお、上述した第3の準備工程の手順では、活性炭ろ過器15への純水の通水時に、膜分離装置3に供給される原水が活性炭ろ過器15をバイパスするため、原水に残留塩素が含まれていると、それが除去されずに膜分離装置3に流入してしまう。そのため、原水タンク2の容量に余裕がある場合には、活性炭ろ過器15内を置換するための純水として、原水を膜分離装置3とEDI装置4で順次処理することで得られた純水ではなく、原水タンク2に貯留された純水を用いてもよい。すなわち、先に、上述した手順で2つの軟水器12a,12bへの純水の通水を行った後、原水タンク2に貯留された純水を、給水ラインL1を通じて活性炭ろ過器15に供給し、それにより、活性炭ろ過器15内を純水で置換してもよい。なお、活性炭ろ過器15に通水された純水は、膜分離装置3とEDI装置4で順次処理された後、純水返送ラインL9を通じて原水タンク2に還流される。このとき、RO濃縮水は、RO濃縮水ラインL3からRO濃縮水排出ラインL13を通じて外部に排出されるが、EDI濃縮水は、EDI濃縮水ラインL8からEDI濃縮水排出ラインL14を通じて外部に排出されてもよく、EDI濃縮水ラインL8を通じて原水タンク2に返送されてもよい。また、原水タンク2から活性炭ろ過器15に供給される純水は、第1の軟水器13aを経由してもよく、第1の軟水器13aをバイパスしてもよい。
【0079】
軟水器13a,13bと同様に、活性炭ろ過器15も2系統設けられていてもよく、それにより、純水製造装置1の運転を停止することなく活性炭ろ過器15の逆洗を行うことができる。ただし、活性炭ろ過器15の逆洗は、一般に、軟水器13a,13bの再生に比べて少ない頻度で済むため、ユースポイントで純水の需要がない時間帯に実施することも可能である。そのため、コスト面を考慮すると、必ずしも活性炭ろ過器15は2系統設けられていなくてもよい。
【0080】
なお、上述した各実施形態では、第2の準備工程が本発明の「処理水をタンクに還流させる工程」に相当し、第3の準備工程が本発明の「処理水を前処理手段に流通させる工程」に相当する。これらの工程は、熱水殺菌工程(タンクに貯留された処理水を水処理手段と前処理手段とを含む循環経路に沿って循環させつつ、所定の温度まで加熱し、一定時間保持した後に冷却することで、水処理手段と前処理手段とを殺菌する工程)を実行する前に行われる。
【符号の説明】
【0081】
1 純水製造装置
2 原水タンク
3 膜分離装置(水処理手段)
4 EDI装置(水処理手段)
5 制御部(制御手段)
13,13a,13b 軟水器(前処理手段)
15 活性炭ろ過器(前処理手段)
L1 給水ライン
L5 原水導入ライン
L9 純水返送ライン(第1の還流ライン)
L13,L13a,L13b,L16 置換水排出ライン(排出ライン)
L21,L21a,L21b,L23 純水還流ライン(第2の還流ライン)
L22,L22a,L22b,L24 バイパスライン
V12,V12a,V12b,V13,V13a,V13b,V21,V22,V31~V33,V31a~V33a,V31b~V33b,V34~V36 開閉弁(流路切替手段)
【要約】
【課題】処理水の水質悪化を抑制する。
【解決手段】水処理システム1は、被処理水を貯留するタンク2と、膜分離装置3とイオン交換装置4とを含む水処理手段3,4と、水処理手段3,4に供給される被処理水の前処理を行う前処理手段13と、タンク2から前処理手段13を経由して水処理手段3,4に至る給水ラインL1と、水処理手段3,4で得られた処理水を流通させてタンク2に還流させる第1の還流ラインL9と、第1の還流ラインL9から分岐して前処理手段13の下流側で給水ラインL1に接続し、第1の還流ラインL9を流れる処理水を前処理手段13に還流させる第2の還流ラインL21と、前処理手段13に対して第2の還流ラインL21が接続された側と反対側で給水ラインL21に接続し、前処理手段13に還流される処理水を外部に排出させる排出ラインL12と、を有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3