(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-11
(45)【発行日】2025-09-22
(54)【発明の名称】テクスチャー改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20250912BHJP
A23L 27/20 20160101ALI20250912BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20250912BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20250912BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20250912BHJP
A23L 2/66 20060101ALI20250912BHJP
A23C 9/152 20060101ALI20250912BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20250912BHJP
C11B 9/00 20060101ALI20250912BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/20 F
A23L29/00
A23L33/10
A23L2/00 Z
A23L2/00 A
A23L2/00 J
A23C9/152
A23L2/56
C11B9/00 K
C11B9/00 X
(21)【出願番号】P 2025056984
(22)【出願日】2025-03-28
【審査請求日】2025-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和輝
(72)【発明者】
【氏名】水野 春彦
(72)【発明者】
【氏名】金澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将司
(72)【発明者】
【氏名】高林 禎
(72)【発明者】
【氏名】明貝 直晃
【審査官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/030187(WO,A1)
【文献】特開2014-121313(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230903(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073720(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C、A23F、A23J、A23L
C12C、C12G、C12J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリオトロピンを有効成分とする
、タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分及び増粘安定剤から選択される1種以上を含有する飲食品のテクスチャー改善剤
であって、飲食品中、ヘリオトロピンが、タンパク質の質量に対し0.05ppt~5000ppm、不溶性食物繊維の質量に対し0.05ppt~5000ppm、乳固形分の質量に対して0.05ppt~5000ppm、又は、増粘安定剤の質量に対し0.05ppt~5000ppmの何れかの量で用いられる、テクスチャー改善剤。
【請求項2】
δ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上を含有する請求項
1に記載のテクスチャー改善剤。
【請求項3】
γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物及びスピラントールのうち1種以上を含有する請求項
1又は2に記載のテクスチャー改善剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のテクスチャー改善剤を含む、
不溶性食物繊維を含有する飲食品用の香料組成物
であって、飲食品中、ヘリオトロピンが、不溶性食物繊維の質量に対し0.05ppt~5000ppmの量で用いられる、香料組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のテクスチャー改善剤を含む、
タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分及び増粘安定剤から選択される1種以上を含有する飲食品テクスチャー改善用の香料組成物であって
、飲食品中、ヘリオトロピンが、タンパク質の質量に対し0.05ppt~5000ppm、不溶性食物繊維の質量に対し0.05ppt~5000ppm、乳固形分の質量に対して0.05ppt~5000ppm、又は、増粘安定剤の質量に対し0.05ppt~5000ppmの何れかの量で用いられる、香料組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のテクスチャー改善剤を含む、
不溶性食物繊維を含有する飲食品であって、飲食品中、ヘリオトロピンが、不溶性食物繊維の質量に対し0.05ppt~5000ppmの量で用いられる、飲食品。
【請求項7】
飲料、冷菓又は嚥下困難者用食品である、請求項
6に記載の飲食品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のテクスチャー改善剤を添加する、
不溶性食物繊維を含有する飲食品の製造方法
であって、飲食品中のヘリオトロピンが、不溶性食物繊維の質量に対し0.05ppt~5000ppmの量で用いられる、飲食品の製造方法。
【請求項9】
ヘリオトロピンを添加する、
タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分及び増粘安定剤から選択される1種以上を含有する飲食品のテクスチャー改善方法
であって、飲食品中のヘリオトロピンが、タンパク質の質量に対し0.05ppt~5000ppm、不溶性食物繊維の質量に対し0.05ppt~5000ppm、乳固形分の質量に対して0.05ppt~5000ppm、又は、増粘安定剤の質量に対し0.05ppt~5000ppmの何れかの量で用いられる、飲食品のテクスチャー改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲食品のテクスチャー改善剤、テクスチャー改善剤を含む香料組成物、テクスチャー改善剤を含む飲食品、テクスチャー改善剤を添加する飲食品の製造方法、飲食品のテクスチャー改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の美味しさは主としてテクスチャー・味・香りであることは広く認められており、これらはそれぞれ独立ではなく、相互に関連しあっている。テクスチャーとは食べ物の口当たり、舌触り、歯ごたえ、のど越しなどのことで、最近では食感などとも呼ばれており、盛んに研究されている。テクスチャーを改善することにより、食品を飲食しやすいものとし、美味しさを増すことができる。
香りを改善するという点に関しては、例えば、下記特許文献1には、特定の化合物群から選ばれる化合物を添加することにより、豆類タンパク質由来の豆臭をマスキングする方法が記載されている。しかし、テクスチャーの改善については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、飲食品を口に含んだ際のもたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善できるテクスチャー改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の化合物を飲食品に添加した結果、飲食品のもたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
本発明は、上記知見に基づくものであり、一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を有効成分とする、飲食品のテクスチャー改善剤を提供する。
【0007】
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基若しくはエチル基のいずれかであるか、又は、R
1とR
2とでメチレン基を形成し、
R
3はアルデヒド基であるか、或いは、水酸基、アルデヒド基、ケトン基及びアセチルオキシ基から選択される1以上の官能基を有する炭素数1~4のアルキル基である。)
【0008】
また本発明は、前記テクスチャー改善剤を含有する香料組成物を提供する。
【0009】
また本発明は、前記テクスチャー改善剤を含有する飲食品を提供する。
【0010】
また本発明は、前記テクスチャー改善剤を添加する飲食品の製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、上記一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を添加する、飲食品のテクスチャー改善方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を添加することにより、飲食品のもたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。以下の説明において、ppm、ppb、pptは質量基準である。
本発明は、飲食品のテクスチャー改善剤に係るものである。
本発明の飲食品のテクスチャー改善剤は、一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を有効成分とする。
【0014】
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基若しくはエチル基のいずれかであるか、又は、R
1とR
2とでメチレン基を形成し、
R
3はアルデヒド基であるか、或いは、水酸基、アルデヒド基、ケトン基及びアセチルオキシ基から選択される1以上の官能基を有する炭素数1~4のアルキル基である。)
【0015】
前記の炭素数1~4のアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチルが挙げられる。
また、R1とR2とでメチレン基を形成するとは、R1とR2と、それぞれが結合している酸素原子とが、―O―CH2-O-基を形成することを指す。
【0016】
テクスチャー改善効果に優れる点から、R3が水酸基、アルデヒド基、ケトン基及びアセチルオキシ基から選択される1以上の官能基を有する炭素数1~4のアルキル基である場合、当該アルキル基は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、特に、メチル、エチル、イソプロピルが好ましく、中でも、メチル、イソプロピルが好ましく、とりわけイソプロピルが好ましい。
【0017】
また、テクスチャー改善効果に優れる点から、R3は、アルデヒド基であるか、アルデヒド基及びアセチルオキシ基から選択される1以上の官能基を有する炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、とりわけ、アルデヒド基、アルデヒド基に置換されたイソプロピル基、又は、アセチルオキシ基に置換されたメチル基から選択される1種以上が好ましく、とりわけ、アルデヒド基が好ましい。
【0018】
更にテクスチャー改善効果に優れる点から、R1及びR2としては、R1及びR2のうち一方が水素原子であり、他方がメチル基又はエチル基であるか、或いは、R1とR2とでメチレン基を形成している化合物が好ましく、中でも、R2が水素原子であり、R1がメチル基又はエチル基であるか、或いは、R1とR2とでメチレン基を形成している化合物が好ましく、中でも、R1とR2とでメチレン基を形成している化合物が好ましい。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物としては、テクスチャー改善効果に優れる点から、
具体的には、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ピペロニルアセテート、バニリン、エチルバニリンから選択される1種又は2種以上が好ましい。
ヘリオトロピンとは、1、3-ベンゾジオキソール-5-カルボアルデヒドの慣用名である。
ヘリオナールとは、3-(1、3-ベンゾジオキソール-5-イル)-2-メチルプロパナールの慣用名である。
ピペロニルアセテートとは、酢酸3、4-メチレンジオキシベンジルの慣用名である。
バニリンとは、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドの慣用名である。
エチルバニリンとは、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドの慣用名である。
前記化合物群の中でも、飲食品のテクスチャー改善効果が特に優れることから、上記一般式(1)で表される化合物が、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ピペロニルアセテートから選択される1種以上であることが好ましく、ヘリオトロピンが特に好ましい。
【0020】
本発明の飲食品のテクスチャー改善剤は、上記一般式(1)で表される化合物から選択される1種を有効成分としてもよく、2種以上を有効成分としてもよい。
【0021】
本発明のテクスチャー改善剤は、飲食品を口に含んだ際に口腔内で感じるもたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善し、飲食しやすいものとすることができる。本明細書においては、もたつきとしては、口腔内にまとわりつく感覚、重くもったりとしたテクスチャー、とろみ、粘性、口腔表面に膜が張った感覚のいずれかが挙げられる。ざらつきとしては、口腔内又は喉の引っかかり、粗い舌触り、摩擦感、粉っぽさのいずれかが挙げられる。
本発明のテクスチャー改善剤を使用することによって、もたつきのあるテクスチャー或いはざらつきのあるテクスチャーを軽減することができる。
【0022】
本発明の飲食品のテクスチャー改善剤は、δ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上を含有することも好ましい。δ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上を含有することにより、テクスチャー改善剤において、飲食品のざらつきの改善効果を増し、一層なめらかなテクスチャーとすることができる。
【0023】
本発明のテクスチャー改善剤において、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対し、δ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上の含有量が、0.001質量部以上となることが好ましく、0.01質量部以上となることがより好ましい。また、本発明のテクスチャー改善剤において、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するδ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上の含有量は、500質量部以下となることが好ましく、200質量部以下となることがより好ましい。δ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上の含有量が、前記であることで、もたつきとざらつきについてのテクスチャー改善効果を一層バランスよく発揮できるからである。
【0024】
本発明の飲食品のテクスチャー改善剤は、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物及びスピラントールのうち1種以上を含有することも好ましい。γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物及びスピラントールのうち1種以上を含有することにより、テクスチャー改善剤において、飲食品のもたつきの改善効果を増し、よりすっきりとしたテクスチャーとすることができる。
【0025】
前記のキナ酸(quinic acid)は、下記の式で表される1、3、4、5-テトラヒドロキシシクロヘキサン-1-カルボン酸である。
【化3】
【0026】
本発明に使用するキナ酸は、クロロゲン酸の加水分解等の方法で化学合成したものであっても、天然物、例えばキナ酸含有植物から得られる成分であってもよい。さらに、試薬として販売されている市販のキナ酸を使用することができる。しかしながら、価格等の実用性の観点、食の安全性やイメージの点から植物由来のキナ酸が好ましい。キナ酸はクランベリー果汁などに多く存在する他、クロロゲン酸などのキナ酸誘導体として植物中に広く分布するので、植物から慣用の抽出操作で得ることができるからである。
【0027】
キナ酸は、果汁、茶、コーヒーなどの可食性植物原料から得られるキナ酸を含有する植物抽出物を使用するのが好ましく、特にキナ酸含有量が多く、入手も容易でコストパフォーマンスに優れる茶葉やコーヒー豆を原料とする抽出物が好ましい。キナ酸含有植物抽出物は、植物抽出物中のキナ酸の含有量が1質量%以上、特に5質量%以上であることが好ましい。
【0028】
前記のハマナス抽出物は、バラ科バラ属(Rosa rugosa Thunb.)植物ハマナス(ハマナシとも呼ばれる)の抽出物をさす。好ましくはハマナス植物体のうち花蕾を抽出処理して得られる抽出物である。
【0029】
ハマナス抽出物を得る際に行われる抽出処理は溶媒による抽出処理が好ましい。使用される溶媒は、水又は極性有機溶媒であることが好ましく、水と極性有機溶媒の混合物であっても良い。極性有機溶媒としては、アルコール、アセトン、酢酸エチル等が例示される。中でも人体への安全性と取扱性の観点から、使用される溶媒は、水又はエタノール、プロパノール、ブタノールのような炭素数2~4の脂肪族アルコールが望ましく、特に水又はエタノール水溶液が望ましい。エタノール水溶液を使用する場合は、通常はエタノール濃度が10~95質量%の水溶液を用い、好ましくは20~80質量%水溶液を用い、最も好ましくは30~70質量%水溶液が用いられる。
【0030】
前記のスピラントールとは、下記の式で表される(2E、6Z、8E)-N-イソブチル-2、6、8-デカトリエンアミドであり、分子式C14H23NO、分子量221.34、融点23℃の脂肪酸アミドである。
【0031】
【0032】
本発明で使用するスピラントールは、化学的な手法で合成された合成品の他、動植物から抽出されたものでもよい。本発明ではいずれの方法により得られたスピラントールであっても使用でき、また、本発明の効果が得られる限り、純度が高いものである必要はない
。飲食品の香味に影響を与えない限り、スピラントールを含有する植物の抽出物や精油等を精製することなく使用してもよい。
【0033】
飲食品に使用する場合、安全性の観点からは食経験のある植物から得られる抽出物又は精油を使用することが好ましく、また、供給、価格等の実用性の観点から、スピラントール含量の多いオランダセンニチ(Spilanthes acmella)又はキバナオランダセンニチ(Spilanthes acmella var. oleracea)の抽出物又は精油を使用するのが特に好ましい。スピラントールの抽出法を例示すると、オランダセンニチ又はキバナオランダセンニチの花頭を乾燥・粉砕した後、有機溶媒で抽出してスピラントールを含有する抽出液を得る方法が挙げられる。
【0034】
抽出に使用する有機溶媒は特に制限はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類を適宜単独で、又は混合して使用することができる。中でも、アルコール類のような極性有機溶媒が好ましく、安全性の観点から特にエタノールが好ましい。得られた抽出液から溶媒を留去し、スピラントール含有抽出物が得られる。
【0035】
本発明のテクスチャー改善剤において、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するγ-オクタラクトン、γ-ノナラクトンのうち1種以上の含有量は、0.0001質量部以上となることが好ましく、0.001質量部以上となることがより好ましい。また前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するγ-オクタラクトン、γ-ノナラクトンのうち1種以上の量は、10質量部以下となることが好ましく、1質量部以下となることがより好ましい。前記の量であることで、もたつきとざらつきについてのテクスチャー改善効果を一層バランスよく発揮できるからである。
【0036】
本発明のテクスチャー改善剤において、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するキナ酸の含有量は、1質量部以上となることが好ましく、10質量部以上となることがより好ましく、100質量部以上となることが更に好ましい。また前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するキナ酸の量は、10000質量部以下となることがさらにより好ましく、1000質量部以下となることが特に好ましい。前記の量であることで、もたつきとざらつきについてのテクスチャー改善効果を一層バランスよく発揮できるからである。
【0037】
本発明のテクスチャー改善剤において、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するハマナス抽出物の含有量は、1質量部以上となることが好ましく、10質量部以上となることがより好ましい。また前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するハマナス抽出物の量は、10000質量部以下となることがさらにより好ましく、1000質量部以下となることが特に好ましい。前記の量であることで、もたつきとざらつきについてのテクスチャー改善効果を一層バランスよく発揮できるからである。
【0038】
本発明のテクスチャー改善剤において、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するスピラントールの含有量は、0.01質量部以上となることが好ましく、0.1質量部以上となることがより好ましく、前記一般式(1)で表される化合物1質量部に対するスピラントールの量は、1000質量部以下となることがさらにより好ましく、100質量部以下となることが特に好ましい。前記の量であることで、もたつきとざらつきについてのテクスチャー改善効果を一層バランスよく発揮できるからである。
【0039】
本発明のテクスチャー改善剤は、添加する対象の飲食品の形態に応じて適宜、剤形を変えて使用することができる。例えば、乳化剤を利用して乳化組成物として、又、賦形剤を
利用して粉末として飲食品に添加することができる。
また、本発明のテクスチャー改善剤は、飲食品製造における各工程で常法に従い、適宜添加することができる。
【0040】
次いで、本発明の香料組成物を説明する。本発明のテクスチャー改善剤は各種の飲食品用香料と組み合わせ、テクスチャー改善剤を含有するテクスチャー改善用の香料組成物として、飲食品に適用できる。
組み合わせる香料として、例えば、「特許庁公報 周知慣用技術集(香料) 第II部 食品用香料」(平成12(2000)年1月14日発行、日本国特許庁)等に記載された香料原料(精油、エッセンス、コンクリート、アブソリュート、エキストラクト、オレオレジン、レジノイド、回収フレーバー、炭酸ガス抽出精油、合成香料)、各種植物エキス、酸化防止剤等が例示される。
本発明のテクスチャー改善用の香料組成物は、添加する対象の飲食品の形態に応じて適宜、剤形を変えて使用することができる。例えば、乳化剤を利用して乳化組成物として飲食品に添加してもよい。或いは、粉末状として他の成分と混合させて飲食品に添加してもよい。
【0041】
香料組成物を用いてテクスチャー改善を効果的に行う観点から、一般式(1)で表される化合物の量は、香料組成物中、0.00000001質量%以上が好ましく、0.000001質量%以上がより好ましい。また同様の観点から、一般式(1)で表される化合物の量は、香料組成物中、10質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
【0042】
次いで、本発明の飲食品について説明する。本発明の飲食品は、本発明のテクスチャー改善剤を含有し、それによりもたつき及び/又はざらつきのある食感が改善可能となる。本発明の飲食品としては、もたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを効果的に改善する観点から、タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分及び増粘安定剤から選択される1種以上を含有する飲食品が好ましい。
【0043】
タンパク質を含有する飲食品としては、蛋白質含有粉末を用いた製品が好ましく挙げられ、例えばプロテイン飲料、プロテインゼリー、きな粉ドリンク、総合栄養食品、栄養調整食品、栄養補助食品等が挙げられる。
【0044】
タンパク質を含有する飲食品におけるタンパク質としては、乳由来タンパク質、豆類由来タンパク質、卵由来タンパク質、種子由来タンパク質が挙げられる。乳由来タンパク質としては、濃縮ホエイタンパク(WPC;Whey Protein Concentrate)、分離ホエイタンパク(WPI;Whey Protein Isolate)、濃縮ミルクタンパク(MPC;Milk Protein Concentrate)、分離ミルクタンパク(MPI;Milk Protein Isolate)、トータルミルクプロテイン(TMP;Total Milk Protein)、分離ミセラカゼイン(MCI;Miscella Casein Isolate)、濃縮ミセラカゼイン(MCC;Miscella Casein Concentrate)、カゼイン、ホエイ、脱乳糖ホエイ、蛋白質濃縮ホエイ等が挙げられる。豆類由来タンパク質としては、大豆由来プロテインやエンドウ豆由来プロテイン、ソラ豆由来プロテイン、リョクトウ由来プロテイン、ヒヨコマメ由来プロテイン、等が挙げられる。大豆由来プロテインは分離大豆タンパクや濃縮大豆タンパク、大豆粉末等が挙げられる。エンドウ豆由来プロテインとしては、分離エンドウ豆タンパクや濃縮エンドウ豆タンパク、エンドウ豆粉末等が挙げられる。卵由来タンパク質としては卵白粉が挙げられる。また、種子由来タンパク質としては、米由来プロテインや麻の実由来のプロテイン、ヒマワリ種子由来のプロテイン、カボチャ種子由来のプロテイン、亜麻仁由来のプロテイン等が挙げられる。
【0045】
本発明においては、もたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを効果的に改善す
る観点から、飲食品に含有するタンパク質として、乳由来タンパク質、豆類由来タンパク質等が好ましく、特に分離大豆タンパクや濃縮大豆タンパク、濃縮ホエイタンパク、分離ホエイタンパク、分離エンドウ豆タンパク、濃縮エンドウ豆タンパクが好ましい。
【0046】
もたつき及び/又はざらつきの課題が生じやすい点から、タンパク質を含有する飲食品における、タンパク質含量は、2.7質量%以上であることが好適であり、3質量%以上であることがより好適であり、6質量%以上が特に好適である。タンパク質を含有する飲食品における、タンパク質含量は、15質量%以下であることが好適であり、10質量%以下が特に好適である。
タンパク質含量は、ケルダール法(Kjeldahl法)により測定する。
【0047】
不溶性食物繊維を含有する飲食品としては、例えば、野菜(ケール、大麦、セロリ、パセリ、ニンジン、クワの葉、ホウレン草、ヨモギ、ショウガ、ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、カブ、白菜、大根、大根の葉、カリフラワー、クレソン、センブリ、明日葉等)や果物(キウイフルーツ、パパイヤ、マンゴー、パイナップル、イチジク、オレンジ、レモン、アップル、アプリコット、チェリー、ブドウ、ラズベリー、ストロベリー、ブルーベリー、クランベリー、パッションフルーツ、プラム等)、種実類(アーモンドやヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ゴマ、クルミ、ヘンプシード等)、穀類(米、ライムギ、オオムギ、オーツ麦等)を含有する飲食品をいう。これらは例えば粉砕した粉末や搾汁、それらを加熱、酵素処理、殺菌等して得られたものが挙げられる。これらの食品における不溶性食物繊維としては、セルロース、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられる。
本発明においては、不溶性食物繊維に起因するざらつきを効果的に改善する観点から、不溶性食物繊維を含有する飲食品として、例えば、野菜ジュース、スムージー、青汁、ココア、抹茶、アーモンド飲料、オーツ麦飲料等が好ましい。
【0048】
もたつき及び/又はざらつきの課題が生じやすい点から、不溶性食物繊維を含有する飲食品における、不溶性食物繊維含量は、0.2質量%以上であることが好適であり、1.0質量%以上が特に好適である。不溶性食物繊維を含有する飲食品における、不溶性食物繊維含量は、一般に、6.0質量%以下であることが好適であり、4.0質量%以下がより好適である。
不溶性食物繊維含量はAOAC2011.25法(酵素-HPLC法2)で測定できる。
【0049】
乳固形分を含有する飲食品としては、乳飲料(ミルクコーヒー、ミルクココア、紅茶ラテ、抹茶ラテ等)、ヨーグルト、乳酸菌飲料、練乳、クリーム類(生クリーム、ホイップ用クリーム、カスタードクリーム、クロッテドクリーム、発酵クリーム)、アイスクリーム類(アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス)、乳固形分を含むソース類(チーズソース等)等が挙げられる。乳固形分を含有する飲食品としては乳タンパクに対し、乳糖や乳脂が比較的多い製品(例えば、乳タンパク100質量部に対し、乳糖や乳脂の合計が200質量部以上)の製品が好適に挙げられる。
本発明においては、乳固形分を含有する飲食品として、乳飲料、ヨーグルト、アイスクリーム類が好ましい。
【0050】
もたつき及び/又はざらつきの課題が生じやすい点から、乳固形分を含有する飲食品における、乳固形分含量は、1.0質量%以上であることが好適であり、3.0質量%以上が特に好適である。乳固形分を含有する飲食品における、乳固形分含量は、一般に、40質量%以下であることが好適であり、30質量%以下がより好適であり、20質量%以下であることが更に好適であり、15質量%以下が特に好適である。
乳固形分は常圧乾燥法により測定する。
【0051】
増粘安定剤は増粘剤または安定剤に該当する成分をいい、ガム類(グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、アラビアガム、サイリウムシードガム等)、カラギーナン、ペクチン、寒天、グルコマンナン、アルギン酸やその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)若しくはエステル(プロピレングリコールアルギン酸エステル、グリセリンアルギン酸エステル等)、カードラン、プルラン、アガロース、等の天然由来の増粘多糖類・ゲル化剤;ゼラチン;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の合成増粘剤;加工デンプン;上記以外の水溶性食物繊維(例えばイヌリン、難消化性デキストリン等)を挙げることができる。中でも増粘多糖類・ゲル化剤、合成増粘剤、ゼラチンなどが高い増粘性・ゲル化性能を有するため好ましく、特に高い増粘性又はゲル化性能を有するグアーガム、キサンタンガム、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アガロース等が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
より増粘安定剤を含有する飲食品としては、増粘安定剤を含有することに起因した粘性や接着性を有する食品が好ましい。ここでいう粘性とは、例えば20℃の粘度をB型粘度計で測定したときに250mPa・s以上であることが挙げられる。
増粘安定剤を含有する飲食品としては、例えば、嚥下困難者用食品(流動食、ミキサー食、嚥下食、とろみ調整用食品含有飲食品)、冷菓、プリン、ジャム、ゼリー等のデザート類、ソース、ドレッシング、たれ等のソース類、スープ等が挙げられる。
本発明においては、増粘安定剤を含有する飲食品として、流動食、ミキサー食、嚥下食、とろみ調整用食品含有飲食品が好ましく、中でも流動食、とろみ調整用食品含有飲食品が特に好ましい。
【0052】
もたつき及び/又はざらつきの課題が生じやすい点から、増粘安定剤を含有する飲食品における、増粘安定剤の含量は、0.1質量%以上であることが好適であり、0.5質量%以上が特に好適である。増粘安定剤を含有する飲食品における、増粘安定剤含量は、一般に、3.0質量%以下であることが好適であり、1.5質量%以下がより好適である。
飲食品の増粘安定剤の含有量は、増粘多糖類・ゲル化剤、合成増粘剤、水溶性食物繊維はAOAC2011.25法(酵素-HPLC法2)にて測定でき、加工デンプン、ゼラチンは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定でき、両測定方法の総和にて算出できる。
【0053】
本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、タンパク質を含有する飲食品においては、タンパク質の質量に対し(1質量部に対し)0.05ppt以上となることが好ましく、0.5ppt以上となることがより好ましく、5ppt以上となることがさらにより好ましく、500ppt以上となることが特に好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記下限以上であることで、もたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が十分に発揮できるからである。
また、本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、タンパク質を含有する飲食品においては、タンパク質量に対し(1質量部に対し)5000ppm以下となることが好ましく、500ppm以下となることがより好ましく、50ppm以下となることがさらにより好ましく、5ppm以下となることが特に好ましく、500ppb以下となることが特に好ましく、50ppb以下となることが中でも好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が上記上限以下であることでもたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が一層優れるためである。飲食品の元々の風味を維持する観点から、50ppm以下となることが好ましく、5ppm以下となることが特に好ましく、500ppb以下となることが中でも好ましい。
【0054】
本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、不溶性食物繊維を含有する飲食品においては、不溶性食物繊維の質量に対し(1質量部に対し)0.05ppt以上となることが好ましく、0.5ppt以上となることがより好ましく、5
ppt以上となることがさらにより好ましく、500ppt以上となることが特に好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記下限以上であることで、もたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が十分に発揮できるからである。
また、本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、不溶性食物繊維を含有する飲食品においては、不溶性食物繊維の質量に対し(1質量部に対し)5000ppm以下となることが好ましく、500ppm以下となることがより好ましく、50ppm以下となることがさらにより好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が上記上限以下であることでもたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が一層優れるためである。飲食品の元々の風味を維持する観点から、5ppm以下となることが好ましく、500ppb以下となることが特に好ましく、50ppb以下となることが中でも好ましい。
【0055】
本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、乳固形分を含有する飲食品においては、乳固形分の質量に対し(1質量部に対し)0.05ppt以上となることが好ましく、0.5ppt以上となることがより好ましく、5ppt以上となることがさらにより好ましく、500ppt以上となることが特に好ましく、500ppb以上がとりわけ好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記下限以上であることで、もたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が十分に発揮できるからである。
また、本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、飲食品が乳固形分を含有する飲食品においては、乳固形分の質量に対し(1質量部に対し)5000ppm以下となることが好ましく、500ppm以下となることがより好ましく、50ppm以下となることがさらにより好ましく、5ppm以下となることが特に好ましく、500ppb以下となることが好ましく、50ppb以下となることがより好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が上記上限以下であることでもたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が一層優れるためである。飲食品の元々の風味を維持する観点から、50ppm以下となることが好ましく、5ppm以下となることが特に好ましく、500ppb以下となることが中でも好ましい。
【0056】
本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、増粘安定剤を含有する飲食品においては、増粘安定剤の質量に対し(1質量部に対し)0.05ppt以上となることが好ましく、0.5ppt以上となることがより好ましく、5ppt以上となることがさらにより好ましく、500ppt以上となることが特に好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記下限以上であることで、もたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が十分に発揮できるからである。
また、本発明の飲食品において、上記一般式(1)で表される化合物の含有量は、増粘安定剤を含有する飲食品においては、増粘安定剤の質量に対し(1質量部に対し)5000ppm以下となることが好ましく、500ppm以下となることがより好ましく、50ppm以下となることがさらにより好ましく、5ppm以下となることが特に好ましい。上記一般式(1)で表される化合物の含有量が上記上限以下であることでもたつき及び/又はざらつきについてのテクスチャー改善効果が一層優れるためである。飲食品の元々の風味を維持する観点から、500ppb以下となることが特に好ましく、50ppb以下となることが中でも好ましい。
【0057】
なお、本発明では飲食品が、タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分及び増粘安定剤から選択される2種以上を含む場合に、それらのうち少なくとも一つに起因したテクスチャーを改善できれば、他の成分に起因したテクスチャーの改善に寄与できなくても許容される。典型的には、タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分及び増粘安定剤のうち最も当該飲食品のテクスチャーに寄与する成分に係るテクスチャーを改善することが望ましい。
【0058】
本発明の飲食品は、水分含量が一定以上であることが、もたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善しやすい点から、水分含量が55質量%以上が好ましく、60質量%以上が好ましく、65質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に一層好ましい。飲食品における水分含量は、100質量%以下であってよく、98質量%以下であってよい。飲食品が粉末飲料等の水分と混合するタイプの製品である場合、ここでいう水分含量は、水分と混合した後の喫食時の水分含量を指す。
【0059】
本発明の飲食品は、上記に示した各種成分に加えて、通常の栄養強化剤(ビタミン類など)、酸化防止剤、保存料、乳化剤、エキス類、pH調整剤、品質安定剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0060】
本発明の飲食品の好ましいものとしては、上記で挙げた各種の食品が挙げられる、まとめると、飲料;冷菓;総合栄養食品、嚥下困難者用食品(流動食、ミキサー食、嚥下食、とろみ調整用食品含有飲食品)、栄養調整食品、栄養補助食品、等の液体状にした食品;ソース類;スープ類ドレッシング;ジャムやコンポート、ゼリー、等のデザート・菓子類が挙げられる。中でも、飲料、冷菓又は総合栄養食品、栄養調整食品、栄養補助食品、嚥下困難者用食品(流動食、ミキサー食、嚥下食、とろみ調整用食品含有飲食品)、等の液体状にした食品であることが、もたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善しやすい点から好ましく、飲料、冷菓、総合栄養食品、栄養調整食品又は栄養補助食品であることが特に好ましい。
【0061】
本発明の飲食品が飲料である場合、飲料の種類としては、上記であげたものが挙げられる。飲料は、粉末飲料であってもよい。粉末飲料は、粉末状であって水分を含む液体で溶かして飲用するタイプの飲料である。
【0062】
本発明の飲食品が飲料である場合、当該飲料は粉末飲料であっても、容器詰め飲料であってもよいが容器詰め飲料であることが、摂取の容易さ、もたつき及び/又はざらつきの改善の感じ方の点で好ましい。容器詰め飲料である場合の容器としては、特に限定されず、例えば、PETボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶などを挙げることができる。
【0063】
本発明の飲食品は、25℃のpHが3.0~8.0であることが好ましく、4.0~7.5であることがより好ましく、6.0~7.0であることが更に好ましい。このpHは、飲食品が液体でない場合は、10質量倍の水で希釈し、pH変動がない程度に十分に粉砕した後に測定する。
【0064】
本発明のテクスチャー改善剤は、飲食品のテクスチャー改善できる効果がある。
【0065】
本発明の飲食品のテクスチャー改善方法は、前記一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を飲食品に添加する工程を有する。本発明の方法は、従来の飲食品の製造方法と、前記一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を飲食品に添加する工程以外は同様である。
【0066】
以上、本発明をその好ましい態様に基づき適宜説明したが、本発明は上記記載に限定されない。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。以下で用いた各飲料の25℃のpHは3.0~8.0の範囲内であった。なお、以下で特に断らない場合、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質
量部」を意味する。
【0068】
<テクスチャーの課題が生じるタンパク質濃度の検証>
タンパク質原料として、ソイプロテイン、ホエイプロテインを使用した。ソイプロテインとしては、プロリーナHD101R(不二製油社製、タンパク質含量85%)を使用した。ホエイプロテインとしては、WPC392(フォンテラ・ジャパン社製、タンパク質含量80%)を使用した。
<検証例1>
ソイプロテインを含む粉末原料を表1の配合で容器に入れ、撹拌翼を使用して均一になるよう室温で混合した後、水200gを添加し、評価サンプル(ソイプロテイン飲料)を作製した。
<検証例2>
ホエイプロテインを含む粉末原料を表2の配合で容器に入れ、撹拌翼を使用して均一になるよう室温で混合した後、水200gを添加し、評価サンプル(ホエイプロテイン飲料)を作製した。
各タンパク質濃度のサンプルについて、下記の評価基準で、熟練したパネリスト3名により、ざらつき及びもたつきの強さを評価した。ざらつきについては口腔内又は喉の引っかかり(粗い舌触り、摩擦感、粉っぽさ)を評価し、もたつきについては糊化したデンプン様のねっとり感(飲み口のとろみ、粘性)を評価した。評価においては、評価者ですり合わせを行い、喫食の弊害となる強さを3点として評価を行った。
【0069】
[評価基準]
1:全く感じない。
2:やや感じる。
3:感じる。
4:強く感じる。
【0070】
評価者3名の評価点の平均点を、ソイプロテインについては表1に示し、ホエイプロテインについては表2に示した。
ソイプロテイン、ホエイプロテインともにタンパク質濃度6%以上含有すると、ざらつき及びもたつきの課題が特に明確になることがわかった。
【0071】
【0072】
【0073】
<テクスチャー改善効果の検証>
<試験例1>
一般式(1)の化合物として、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ピペロニルアセテート、バニリン及びエチルバニリンを使用した。
【0074】
上記検証例1で作製した喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度7%のソイプロテイン飲料を使用し、各化合物が表3A及び表3Bに示す濃度になるよう添加し、マドラースプーンにより混合して評価サンプルを作製した。
評価は、コントロールとして、喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度7%、6%、5%のソイプロテイン飲料(化合物添加なし)を用意し、各評価サンプルのざらつき又はもたつきの強さに近いコントロールを選択するという評価方法で行った。熟練したパネリスト5名が各実施例について評価した。より低い濃度を選択するものが多いほど、ざらつき、もたつきの改善効果に優れる。各タンパク質濃度のコントロールに近いと選択した評価者の人数を表3A及び表3Bに示した。なお、下記表で「苦味と渋味が軽減」とは、飲料含有成分由来の苦味と渋味が軽減したことを意味し、「臭いをマスキング」とは飲料含有成分由来の不快臭をマスキングしたことを意味する。
【0075】
【0076】
【0077】
<試験例2>
上記検証例2で作製した喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度7%のホエイプロテイン飲料を使用し、上記試験例1と同様の方法で、各化合物が表4A及び表4Bの濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。
評価は上記試験例1と同様の方法で行った。結果を表4A及び表4Bに示した。
【0078】
【0079】
【0080】
表3A、表3B及び表4A、表4Bに示す通り、各実施例において、ざらつき又はもたつきが軽減され、テクスチャーが改善していることが判る。
【0081】
<試験例3>
表5の配合を使用して、喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度10%、9%および8%のソイプロテイン飲料を、検証例1と同様の方法で作製した。喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度10%の飲料について、各化合物が表6A及び表6Bの濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。
評価は、喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度10%、9%、8%のソイプロテイン飲料(化合物添加なし)をコントロールとして用意し、試験例1と同様に、熟練したパネリスト5名が各評価サンプルのざらつき及びもたつきの強さに近いコントロールを選択する方法により行った。結果を表6A及び表6Bに示した。
【0082】
【0083】
【0084】
表7の配合を使用して、喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度10%、9%および8%のホエイプロテイン飲料を、検証例1と同様の方法で作製した。喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度10%の飲料について、各化合物が表8A及び表8Bの濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。
評価は、喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度10%、9%、8%のホエイプロテイン飲料(化合物添加なし)をコントロールとして用意し、試験例1と同様に、熟練したパネリスト5名が各評価サンプルのざらつき及びもたつきの強さに近いコントロールを選択する方法により行った。結果を表8A及び表8Bに示した。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表6A、表6B及び表8A、表8Bに示す通り、タンパク質濃度が10%と高い場合も、各実施例において、ざらつき、もたつきが軽減され、テクスチャーが改善していることが判る。
【0089】
<試験例4>
一般式(1)の化合物としてヘリオトロピンを選択し、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物、またはス
ピラントールと共に使用した。
ハマナス抽出物は、下記製造例1で製造したものを使用した。
【0090】
<製造例1>
乾燥したハマナス花蕾20部を粉砕機を用いて粉砕し、50%エタノール水溶液300部を加え30分間加熱還流して抽出した。不溶物を濾過除去した後、濾液を泡沫濃縮機を用いて減圧濃縮し、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥して粉末状のハマナス抽出物6部を得た。
表1の喫食時(水200g添加後)のタンパク質濃度7%のソイプロテイン飲料に、各化合物がそれぞれ表9の濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。
【0091】
評価は、ヘリオトロピン10ppb添加品をコントロールとして用意し、δ-デカラクトン、δ-ドデカラクトン、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物、またはスピラントールの併用により改善効果が高まるか、下記の評価基準で熟練したパネリスト3名が官能評価を行った。評価者3名の評価点の平均点の結果を表9に示した。
〔評価基準〕
0:ヘリオトロピン単独と同等の改善効果
1:ヘリオトロピン単独よりもやや高い改善効果
2:ヘリオトロピン単独よりも高い改善効果
3:ヘリオトロピン単独よりも非常に高い改善効果
【0092】
【0093】
一般式(1)の化合物にδ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上、またはγ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物及びスピラントールのうち1種以上を併用することで、一般式(1)の化合物単独よりもざらつき及びもたつき改善効果が高まることが分かった。
また、一般式(1)の化合物にδ-デカラクトン及びδ-ドデカラクトンのうち1種以上と、γ-オクタラクトン、γ-ノナラクトン、キナ酸、ハマナス抽出物及びスピラントールのうち1種以上の両方を併用することで、ざらつき及びもたつき改善効果が更に高まることが分かった。
【0094】
<試験例5>
一般式(1)の化合物として、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ピペロニルアセテート、バニリン及びエチルバニリンを使用した。
粉末青汁(不溶性食物繊維含量46.4%)及び水を表10に示す配合で別々の容器に計量し、粉末青汁に水を添加して、攪拌翼を使用して室温で十分に撹拌し均一化した。
【0095】
【0096】
表10の喫食時不溶性食物繊維濃度1%の青汁飲料に、各化合物がそれぞれ表11の濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。
評価は、下記の評価基準で熟練したパネリスト3名が官能評価を行った。評価者3名の評価点の平均点の結果を表11に示した。
〔評価基準〕
0:改善効果が感じられない(比較例と同等)
1:わずかに改善効果が感じられる
2:やや改善効果が感じられる
3:改善効果が感じられる
4:非常に改善効果が感じられる
【0097】
【0098】
一般式(1)の化合物を、不溶性食物繊維1部当たり0.1ppt~1000ppm添加することで、不溶性食物繊維に起因するざらつきを軽減できることが分かった。
【0099】
<試験例6>
一般式(1)の化合物として、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ピペロニルアセテート、バニリン及びエチルバニリンを使用した。
牛乳(乳固形分11.8%)及び水を表12に示す配合で別々の容器に計量し、牛乳と水を混合し、攪拌翼を使用して室温で十分に撹拌し均一化して、喫食時の乳固形分濃度3
%の乳固形分含有飲料を調製した。
【0100】
【0101】
表12の喫食時の乳固形分濃度3%の乳飲料に、各化合物がそれぞれ表13の濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。
評価は上記試験例5と同様の方法で、熟練したパネリスト3名が官能評価を行った。評価者3名の評価点の平均点の結果を表13に示した。
【0102】
【0103】
一般式(1)の化合物を乳固形分1部当たり0.1ppt~1000ppm添加することで、乳固形分に起因するもたつき(特に口腔表面に膜が張った感覚)を軽減できることが分かった。
【0104】
<試験例7>
一般式(1)の化合物として、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ピペロニルアセテート、バニリン及びエチルバニリンを使用した。
表14に示す配合に基づき、キサンタンガム0.5g及び砂糖6.0gを均一になるようにビニール袋で混合した後、水93.5gを十分撹拌しながら、1の混合物をダマができないよう少量ずつ添加し混合した。混合した状態で撹拌しながら加温し、85℃で10分間保持した。次いで攪拌しながら冷却し、室温に戻した。蒸発した分の水を添加し、全量を100gとして、喫食時の増粘安定剤濃度が喫食時0.5%の増粘安定剤含有飲料を調製した。
【0105】
【0106】
増粘安定剤含有飲料に各化合物がそれぞれ表15の濃度になるよう添加し、評価サンプルを作製した。評価は上記試験例5と同様の方法で行った。熟練したパネリスト3名が官能評価を行った。評価者3名の評価点の平均点の結果を表15に示した。
【0107】
【0108】
一般式(1)の化合物を増粘安定剤1部当たり0.1ppt~1000ppm添加することで、増粘安定剤に起因するもたつき(特に口腔内にまとわりつく感覚)を軽減できることが分かった。
【0109】
<試験例8>
表16~18に記載の配合で、アップル香料、レモン香料、ミルク香料を調製した。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
タンパク質、不溶性食物繊維、乳固形分又は増粘安定剤を含有する表20の飲食品に、上記各香料例をそれぞれ0.1%添加した時のテクスチャー改善効果について、有効成分無添加品であるコントロールを対照として熟練したパネリスト3名が官能評価を行った。下記表20の評価は3名にて効果として共通の認識が得られたものについて記載した。
実施例37の総合栄養食品(飲料)は下記表19に示した配合で調製した。乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステルを使用した。植物性油脂としてはパーム油を用いた。総合栄養食品(飲料)の調製方法としては次のようにした。まず乳たんぱく質を適当な量の水に添加し50℃で加温溶解した。そこへ乳たんぱく質・植物性油脂・乳化剤以外の原料を混合したものを投入して80℃で加温溶解した。これを乳化分散機(クレアミックス)で撹拌しながら、植物性油脂と乳化剤の混合物を投入し10000rpmで5分間撹拌した。熱湯にて重量調整を行い、撹拌しながら常温まで冷却した。
【0114】
【0115】
表20における実施例38~47の飲食品としては市販品を使用した。実施例38~47の食品のテクスチャーに支配的な成分を表20に記載する。
【0116】
評価結果を表20に示した。なお、下記において、タンパク質含量が表示されていない実施例39~43、46、47の食品のタンパク質含量は0~2.5質量%であり、不溶性食物繊維含量が表示されていない実施例37、38、42、44、45、47の不溶性食物繊維含量は0~0.15質量%であり、乳固形分含量が表示されていない実施例37~40、46、47の食品の乳固形分含量は0質量%であり、増粘安定剤の含量が表示されていない実施例38、41、42、44、45の増粘安定剤含量は0~0.05質量%であった。なお表20に表示される増粘安定剤を含む飲食品のうち、実施例39、40、41、43、46の飲料は粘度が20℃で250mPa・s未満であり、これらの飲料に含まれる水溶性食物繊維量を増粘安定剤量として測定した。実施例37の飲料及び実施例47の介護食は粘度が20℃で250mPa・s以上であった。HPLC分析により、実施例47に含まれる増粘安定剤がキサンタンガムであることを確認した。
【0117】
【0118】
本発明の有効成分を含有する香料を添加することにより、飲食品のもたつき及び/又は
ざらつきを軽減できることが分かった。A―2~A―5、B―2~B―5、C―2~C―5についても、それぞれA―1、B―1、C―1と同様の効果を確認した。
【要約】
【課題】飲食品を口に含んだ際のもたつき及び/又はざらつきのあるテクスチャーを改善できるテクスチャー改善剤を提供することである。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物から選択される1種又は2種以上を有効成分とする、飲食品のテクスチャー改善剤である。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基若しくはエチル基のいずれかであるか、又は、R
1とR
2とでメチレン基を形成し、
R
3はアルデヒド基であるか、或いは、水酸基、アルデヒド基、ケトン基及びアセチルオキシ基から選択される1以上の官能基を有する炭素数1~4のアルキル基である。)
【選択図】なし