(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-11
(45)【発行日】2025-09-22
(54)【発明の名称】スクローラー
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0362 20130101AFI20250912BHJP
【FI】
G06F3/0362 461
(21)【出願番号】P 2025069177
(22)【出願日】2025-04-19
(62)【分割の表示】P 2024214074の分割
【原出願日】2024-12-08
【審査請求日】2025-04-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】710000136
【氏名又は名称】木城 敬雄
(72)【発明者】
【氏名】木城 敬雄
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-090559(JP,A)
【文献】特開2003-050668(JP,A)
【文献】特開2001-142632(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2024/0012496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面に表示された画像や情報の表示領域を左右又は上下方向に移動させるスクローラーであつて、
前記スクローラーは、1つ目の回転体である把持部材および2つ目の回転体であるホイールの回転体を有し、
前記把持部材の軸心および前記ホイールの軸心が揃うように、前記把持部材の略中央部に前記ホイールが備えられ、
前記把持部材および前記ホイールとの間で相対的に可動することを特徴とするスクローラー。
【請求項2】
前記ホイールは、前記把持部材の軸心を中心に相対的に回動可能、かつ前記軸心方向に所定の距離を相対的に移動可能であり、
前記回動により、前記表示領域を左右又は上下方向に移動させるとともに、
前記ホイールが前記把持部材の中央部より、左側に位置するか又は右側に位置するかにより、
前記回動による前記表示領域の移動が、左右方向と上下方向の間で切り替え可能とする請求項1のスクローラー。
【請求項3】
前記スクローラーは、前記把持部材の案内溝の軸心方向両端部の長さよりも前記ホイールの軸心方向両端部の長さが長いことを特徴とする請求項1のスクローラー。
【請求項4】
前記把持部材の案内溝の軸心方向両端部の長さは、左案内溝壁から右案内溝壁までの長さであり、
又、前記ホイールの軸心方向両端部の長さは、左側壁から右側壁までの長さであることを特徴とする請求項1のスクローラー。
【請求項5】
前記ホイールが,前記把持部材の軸心方向を左右に移動可能な距離を「所定の距離」と定義することを特徴とする請求項1のスクローラー。
【請求項6】
前記スクローラーは、
前記ホイールが前記把持部材の軸心方向を左右に移動可能な距離を「所定の距離」とし、
前記所定の距離を式(数1)であらわすことができ、
(数1)L=k-h ・・・(1)
L:ホイールが把持部材の軸方向を左右に移動可能な距離
k:把持部材の左案内溝壁から右案内溝壁までの距離
h:ホイールの左凹陥壁から右凹陥壁までの距離
さらに前記ホイールの左側壁から左凹陥壁までの所定の距離をLCと定義し、LCとLとの関係を式(数2)であらわすことができ、
(数2)LC>L ・・・(2)
同様に前記ホイールの右側壁から右凹陥壁までの所定の距離をRCと定義し、RCとLとの関係を式(数3)であらわすことができ、
(数3)RC>L ・・・(3)
上記(数1)(数2)(数3)の式により、前記ホイールが前記把持部材の軸方向を左右に移動可能な距離(L)よりも、
前記ホイールの左側壁から左凹陥壁までの所定の距離(LC)および前記ホイールの右側壁から右凹陥壁までの所定の距離(RC)を長くすることで、
前記ホイールが前記把持部材の案内溝の左右いずれの位置にあっても、
前記ホイールが前記把持部材の案内溝を常に
覆うように備えられることを特徴とする請求項1のスクローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPC(パーソナルコンピュータ)等の端末機器において、画面に表示された表示領域を移動するための操作を行うスクローラーに関する。なお、本願における「スクロール」とは、画像や情報を表示する表示画面に表示された画像や情報の表示領域を、左右又は上下方向に移動させて表示させることである。
【背景技術】
【0002】
PC(デスクトップ型PC、ノート型PC、他情報端末を含む)の普及によって、日常の業務において、その大半の作業にPCが使われることが多くなった。そして、こうしたPCを操作する上で、その入力作業に必要になるのがキーボードであり、またキーボードと同じようにマウスの必要性も高くなっている。特に表示画面に表示された画像や情報を閲覧する際に、表示領域を上下左右方向に移動させるには、マウスを操作して移動の指示を入力するのが簡便である。
【0003】
なお、先行技術として特許文献1が開示されている。特許文献1は、空気調和機などを遠隔操作で運転するワイヤレスリモコンで、当該リモコンを円筒状に形成して、リモコン本体を小型化することを目的としたワイヤレスリモコンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キーボードやマウスで入力操作する場合には、これらを机上に置いて操作しなければならず、そのためには手元近くの机上にそれなりのスペースが必要となる。その結果、例えば紙の書類等を手元に置きながら作業する際などに、スペースの確保が難しい。また、ノート型PCを机の無い場所で使用する場合などでは、マウスによる操作が困難な場合もある。
【0006】
そこでこのように机上でマウスを操作するスペースの確保が難しい環境や、そもそも机のない場所でも、情報機器類の表示画面に表示された画像や情報の表示領域を移動可能とするスクローラーを提供する。
また、支持部材に取り付けた際も、自然な操作が行えるスクローラーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
表示画面に表示された画像や情報の表示領域を左右又は上下方向に移動させるスクローラーであつて、
前記スクローラーは、1つ目の回転体である把持部材および2つ目の回転体であるホイールの回転体を有し、
前記把持部材の軸心および前記ホイールの軸心が揃うように、前記把持部材の略中央部に前記ホイールが備えられ、
前記把持部材および前記ホイールとの間で相対的に可動することを特徴とするスクローラーを提供する。
【0008】
さらにスクローラーが支持部材に取り付けられたことを検知して、ホイールの回転方向とスクロールの移動方向の関係や、ホイールの位置による縦方向のスクロールと横方向のスクロールの関係を逆転させるスクローラーを提供する。
【発明の効果】
【0009】
スクローラーを把持して操作できるので机上に作業スペースを設ける必要が無くなる。
【0010】
支持部材に取り付けても、取り付けていないときと同様の方向に操作することで、取り付け前と同様の方向にスクロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】第1実施例の把持部材の内部を示す斜視図である。
【
図6】検出スイッチに切替の伝達を伝える伝達アームを示す拡大図である。
【
図7】第1実施例のホイールを右側から見た斜視図である。
【
図8】第1実施例のホイールを左側から見た斜視図である。
【
図12】第2実施例のホイールを右側から見た斜視図である。
【
図14】軸受検知ボタンの構造を示す概念図である。
【
図15】第2実施例のホイールを左側から見た斜視図である。
【
図16】第2実施例のギヤ機構を示す拡大斜視図である。
【
図17】第2実施例の把持部材の内部を示す斜視図である。
【
図18】アームの先端部と軸受の詳細を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るスクローラーについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、以下の実施形態に対して多様な変更が可能である。
(第1実施例)
【0013】
図1に本発明の第1実施例に係るスクローラー1000を示している。スクローラー1000は本体部を構成する円筒形状の把持部材100と、把持部材100の左右方向の略中央部に取り付けられたホイール200とからなる。ホイール200は把持部材100の軸心と同軸上を回転可能、かつ把持部材100の軸心上を左右方向に移動可能に取り付けられている。
【0014】
次に把持部材100について
図2及び
図3を用いて説明する。なお、説明のためにホイール200は図示していない。
図2は、把持部材100をその長手方向を左右方向としたときの上側、すなわち、スクローラー1000に設けられたボタンを操作する際に正面視する側から見た斜視図を示している。
【0015】
図2に示す通り、把持部材100は、長手方向を左右方向としたとき、略中央部に案内溝110が形成され、その左端部側に左ハンドル113が、右端部側に右ハンドル114が形成されている。
【0016】
なお本実施例では左ハンドル113と右ハンドル114の長さと外径を同一としているがこれに限られない。すなわち左ハンドル113と右ハンドル114の長さや外径寸法は同一であっても、同一でなくても良い。左ハンドル113と右ハンドル114とで、長さ又は外径寸法の少なくとも一方が異なるようにすることで、スクローラー1000を把持した際に、スクローラー1000の左右方向の判別が容易になる。
【0017】
図2に示すように案内溝110の外径は、左ハンドル113の左案内溝壁111と、右ハンドル114の右案内溝壁112に挟まれることにより左ハンドル113と右ハンドル114の外径よりも細い外径を有しており、図示しないが、把持部材100の軸心を通る面で切断した断面を見ると、中央部がやや細くなった略矩形の構造体となる。
【0018】
さらに把持部材100には、左ハンドル113の略左先端位置に多数の小突起を備えた左グリップ106を、左ハンドル113から外周方向に所定幅で突出するように具備しても良い。また同様に、右ハンドル114の略右先端位置に、小突起の無い右グリップ105を、右ハンドル114から外周方向に所定幅で突出するように具備しても良い。
【0019】
なお、左グリップ106、右グリップ105は、左右のハンドルとは別の素材、すなわち滑りにくいゴム部材としても良い。また、小突起は左グリップ又は右グリップの一方に設ければよく、上述に代えて右グリップにのみ小突起を備えるようにしても良い。何れか一方にのみ小突起を設けることで、スクローラ1000を手で把持した際の左右方向の判別が容易になる。
【0020】
図3は把持部材100の案内溝110の部分拡大図である。
図3は、把持部材100を背面視した場合の案内溝110付近を部分的に拡大した図である。
【0021】
図3に示す通り、案内溝110には、案内溝110の円周面に軸心に沿った開口部107を開設している。そして、この開口部107を通じて、後述するギヤ機構108(
図4参照)のギヤa10801と後述する検出スイッチ109(
図5参照)に切替動作を伝達する挟持板10901と挟持板10902が案内溝110の外側に突出するように設けられている。
【0022】
開口部107の左右方向の長さは、ギヤ機構108のギヤa10801並びに挟持板10901及び挟持板10902が突出可能となる距離に加えて、挟持板10901及び挟持板10902が、後述するホイール200(
図7・
図8参照)の横移動による切替操作により、把持部材100の軸心に沿って横移動可能な距離を確保する。
【0023】
開口部107を案内溝110に開設する位置は、案内溝110の軸方向では、左案内溝壁111と右案内溝壁112の間の略中央部が好ましい。一方、案内溝110の円周面方向の位置を本実施例では、背面側に開設してあるが、この限りではない。
【0024】
次に
図4を用いてギヤ機構108について詳述する。
図4は、ギヤ機構108の構成を示す斜視図である。ギヤ機構108は、左右端部に配置された一対のギヤフレーム10807により、ギヤフレーム10807の下端部に配置された2本のステー10808と、ギヤフレーム10807の上端部に配置されたギヤa10801を貫通支持するシャフトが支持されている。すなわち、ギヤ機構108を側面から見ると、ギヤフレーム10807は一対のステー10808の取り付け部分を底辺とし、ギヤa10801の軸心を頂点とする略三角形の形状をしている。
【0025】
そして、ギヤa10801を貫通支持するシャフトが、一方のギヤフレーム10807から外側に突出した部分に、ギヤb10802が備えられている。さらに、一対のステー10808の間に備えられたエンコーダー10805の軸心が、ギヤフレーム10807から外側に突出したところにギヤc10803が、ギヤb10802と嵌合するように備えられている。 さらに2本のステー10808の間にはギヤ機構補助基板10806が備えられ、エンコーダーから出力された回転信号を処理し、その信号を後述する制御部B102へ出力する。
【0026】
なお、ギヤ機構補助基板10806、エンコーダー10805への給電は、後述する把持部材100内に備えられた電源部B106より行われる。
【0027】
ここでホイール200が把持部材100の軸心周りに相対的に回動した際に、ギヤ機構108の各ギヤを介することで、その動きがエンコーダー10805に伝わる仕組みについて詳述する。スクローラー1000において、後述するホイール200の内周に環装された内歯車210と、ギヤ機構108のギヤa10801が係合しており、例えばホイール200が把持部材100に対して回動されると、以下(1)から(6)の順に伝達される。
(1)ホイール200が把持部材100に対して相対的に回動される。
(2)ホイール200の相対的な回動が、ホイール200に環装された内歯車210を介して、これに係合しているギヤ機構108のギヤa10801に伝わりギヤa10801が回動する。
(3)ギヤa10801の回動が、ギヤフレーム10807を貫通しているギヤa10801の軸心の延長上に備えられたギヤb10802に伝わり回動する。
(4)ギヤb10802と係合しているギヤc10803が回動する。
(5)ギヤc10803の軸心である伝導シャフト10804が、ギヤc10803に連動して回動する。
(6)伝導シャフト10804と、軸連結しているエンコーダー10805に、回動動作が伝わる。
【0028】
なお、ギヤフレーム10807は、ギヤ機構108の強度の確保と、把持部材100内部の狭い空間を有効に活用するために、側面視した場合に略三角形となる構造となっているので、ギヤ機構108の頭頂部にあるギヤa10801を、案内溝110に開設した開口部107から好適に突出することが可能である。
【0029】
次に
図5を用いてギヤ機構108の把持部材100への取り付け方について説明する。
図5は把持部材100の案内溝110付近の内部を示す斜視図である。把持部材100の内部には案内溝110に対向する位置にギヤレール115が取り付けられている。より具体的には、ギヤレール115は把持部材100の軸心方向に延びる板状部材であり、把持部材100の軸心方向に延びる側面が把持部材100と繋がるよう一体的に形成されても良いし、別部品として形成したうえ把持部材100の内部に接着や嵌着するようにしても良い。またその底面はギヤフレーム10807の下端部外周面の形状に沿うように形成された二つの円弧とそれをつなぐ平面で形成されている。
【0030】
さらにギヤレール115の把持部材100の軸方向左右両端部には開口部107に向かって伸びるレールエンド116が設けられている。なお、両端のレールエンド116間の距離、すなわち、ギヤレール115の長さはギヤ機構108の両端のギヤフレーム10807間の距離と略同一とする。これにより、後述するホイール200(
図7・
図8参照)が把持部材100の軸心方向に移動しても、ギヤ機構108の一対のギヤフレーム10807がレールエンド116のよって制止されるので、ギヤ機構108の把持部材100の軸心方向への移動は規制される。
【0031】
また、ギヤ機構108の把持部材100の外周方向への移動は、ギヤ機構108を外側から後述するホイール200の内歯車210が係合することで規制される。
すなわちギヤ機構108はギヤレール115上を移動することはない。
【0032】
また、
図5に示す通り、案内溝110付近の内部には、後述するホイール200の把持部材100の軸方向への動きを検知して、表示画面の移動方向を左右又は上下方向に切り替えるための検出スイッチ109が具備されている。検出スイッチ109には、ホイール200の把持部材100に対する左右方向の動きに従って検出スイッチ109に対して移動が可能な状態で挿設される伝達アーム10903(
図6参照)が備えられている。
【0033】
図6は、検出スイッチ109に切替動作を伝達する伝達アーム10903の、検出スイッチ109に挿入される端部とは異なる端部の形状を示す部分拡大図である。
図6に示すように伝達アーム10903の端部には、伝達アーム10903の軸心の鉛直方向、より具体的には案内溝110の外側に向かうように挟持板10901と挟持板10902が形成されている。そして、挟持板10901と挟持板10902の間の距離は、後述するホイール200の挟入リング211の厚みよりも若干広く形成される。
【0034】
これにより、ホイール200(
図7参照)が把持部材100の軸心方向に移動すると、ホイール200の狭入リング211により挟持板10901、挟持板10902が移動する。その動きを受けて伝達アーム10903が検出スイッチ109に対して移動するので、検出スイッチ109がホイール200の動きを検出可能となる。それにより、後述するようにホイール200の回転による表示画面の移動方向の切り替え、すなわち左右方向と上下方向の切り替えが可能になる。
【0035】
なお、検出スイッチ109の内部構造は、例えば、3極の金属端子上に、金属部を備えた可動接片の移動で検出を可能にするスライドスイッチなどでも良いが、ホイール200の移動を検出可能なものであれば、検出スイッチの構造はどのようなものでも良い。
【0036】
次に
図7、
図8を用いてホイール200について説明する。
図7はホイール200を右側面方向から見た斜視図であり、
図8はホイール200を左側面方向から見た斜視図である。なお、
図7及び
図8は説明のために、把持部材100の記載を省略している。
【0037】
ホイール200は円筒形に形成されたハウジング213とハウジング213の左右両端外周面に設けられ所定の幅でホイール200の外周方向に突出する左リムハンドル201、右リムハンドル202および内部に形成された内歯車210、挟入リング211から構成されている。
【0038】
左リムハンドル201、右リムハンドル202の外周面には、左右方向に延びる複数の突起203が備えられている。なお、
図7,
図8では、ホイール200は一体として形成されている場合を示しているが、例えばホイールの軸線を含む平面で上下に分割して形成し、把持部材100の案内溝110を覆うように被せた後、両者を結合するようにしても良い。なお、左リムハンドル201、右リムハンドル202は、すべりにくいゴム素材等で形成されても良い。
【0039】
次に
図7を用いてホイール200の内部構造を説明する。
図7に示す通り、ホイール200の右側には、右リムハンドル202の右端部からホイール200の軸心に向かって右側壁205が形成されている。さらにホイール200の右側壁205から所定の距離離れた位置に、所定の厚みで形成される右凹陥壁209に達する右凹陥部208が形成されている。なお、右凹陥部208の内径は把持部材100の右ハンドル114の外径よりもやや大きく形成される。
さらに右凹陥壁209には後述する左凹陥壁207に達する貫通孔212が形成されている。
【0040】
貫通孔212の内径は案内溝110の外径に対して若干の隙間を持つように形成され、ホイール200が把持部材100の軸心周りを回動する際及び把持部材100の軸心方向に移動する際のガイドとなる。なお、ホイール200が把持部材100の軸心周りに回動したり把持部材100の軸心方向に移動したりするのを容易にするために、貫通孔212の内径部、すなわち右凹陥壁209の内径部には摺動に適切な素材を取り付けても良い。
【0041】
右凹陥壁209の奥側には、所定の厚みを有するリング状の挟入リング211が備えられている。
挟入リング211は、ホイール200が把持部材100(
図3参照)に取り付けられた際、把持部材100に備えられている挟持板10901と挟持板10902の間に挿入されるよう備えられている。これによりホイール200が把持部材100の軸心に沿って左右方向に移動した際、ホイール200がどちらの端部に位置しているかを検出することができる。なお、挟入リング211の厚みは、把持部材100に備えられた伝達アームに取り付けられた一対の挟持板10901と挟持板10902の間に挟入可能であれば良く、例えば、2ミリメートル程度の厚みでよい。なお、挟入リング211の内径は、把持部材100の案内溝110に接触することが無いよう右凹陥壁209の内径よりも大きく形成される。
【0042】
ホイール200の挟入リング211よりも奥側内周には、把持部材100が具備するギヤ機構108(
図4参照)のギヤa10801と係合し、ギヤ機構108にホイール200の回転動作を伝えるための内歯車210が備えられている。
【0043】
内歯車210の歯幅は、ギヤ機構108に備えられたギヤa10801の歯幅に加え、後述する把持部材100の軸心方向に対するホイール200の移動距離を加えた長さよりも長くすると良い。
【0044】
なお、ホイール200の内歯車210と挟入リング211の並設する間隔は、伝達アーム10903(
図6参照)に備えられている挟持板10901が、ホイール200の把持部材100の軸心方向への移動に伴って内歯車210と干渉しない間隔を確保する。
【0045】
次に
図8を用いてホイール200の左端部の形状について説明する。
図8はホイール200を左側面方向から見た斜視図である。
図8に示す通り、ホイール200の左側には、左リムハンドル201の左端部からホイール200の軸心に向かって所定の厚みの左側壁204が形成されている。さらにホイール200の左側壁204から所定の距離離れた位置に所定の厚みで形成される左凹陥壁207に達する左凹陥部206が形成されている。左凹陥部206の内径は把持部材100の左ハンドル113の外径よりもやや大きく形成される。
【0046】
左凹陥壁207には把持部材100の案内溝110の外径に対して若干の隙間を持つように貫通孔212が形成され、ホイール200が把持部材100の軸心周りを回動する際及び把持部材100の軸心方向に移動する際のガイドとなる。従って、左側面に設けられた左凹陥壁207の内径と、右側面に設けられた右凹陥壁209の内径とは貫通孔212として同じ径になる。
【0047】
これにより、ホイール200の左側面部の左凹陥壁207の内径面と右側面部の右凹陥壁209の内径面が、把持部材100の案内溝110と摺動し、ホイール200の把持部材100の軸心に対する回動と把持部材100の軸心に沿った移動とを可能にしている。なお、右側面部の右凹陥壁209と同様に左凹陥壁207の内径部分に回動や摺動を円滑にする潤滑部材を取り付けても良い。
【0048】
次にホイール200が把持部材100の軸心上を左右方向に移動する際の、把持部材100とホイール200の関係について説明する。
ここで便宜上、ホイール200が把持部材100の軸心上を左方向に移動し、把持部材100の左案内溝壁111とホイール200の左凹陥壁207が当接している状態を「左ホイールの状態」と定義し、同様に、ホイール200が把持部材100の軸心上を右方向に移動して、把持部材100の右案内溝壁112とホイール200の右凹陥壁209が当接している状態を「右ホイールの状態」と定義する。
【0049】
左ホイールの状態では、ホイール200の左凹陥壁207と把持部材100の左案内溝壁111が当接するので、ホイール200の左凹陥壁207が把持部材100の左案内溝壁111を超えてさらに左方向に移動することはない。また、右ホイールの状態では、ホイール200の右凹陥壁209と把持部材100の右案内溝壁112が当接するので、ホイール200の右凹陥壁209が把持部材100の右案内溝壁112を超えてさらに右方向に移動することはない。この左ホイールの状態から右ホイールの状態、または右ホイールの状態から左ホイールの状態までホイール200が移動する距離が、特許請求の範囲の「所定の距離」に該当する。
【0050】
またこの距離の関係は以下の式で表すことができる。
(数1)
L=k-h ・・・(1)
L:ホイール200が把持部材100の軸方向を左右に移動可能な距離
k:把持部材100の左案内溝壁111から右案内溝壁112までの距離
h:ホイール200の左凹陥壁207から右凹陥壁209までの距離
ここでさらに、左凹陥壁207の深さ、すなわち左側壁204から左凹陥壁207までの所定の距離をLCと定義すると、LCとLとの関係を以下のようにするのが望ましい。
(数2)
LC>L ・・・(2)
また、同様に、右凹陥壁209の深さ、すなわち右側壁205から右凹陥壁209までの所定の距離をRCと定義すると、RCとLとの関係を以下のようにするのが望ましい。
(数3)
RC>L ・・・(3)
【0051】
上記の式(2)(3)についてより具体的に説明する。ホイール200が左ホイールの状態にあるときは把持部材100の左案内溝壁111とホイール200の左凹陥壁207が当接し、左側壁204がLCの距離の分、左案内溝壁111の鉛直面を越えてさらに左側に位置する。このとき、ホイール200の右側には右凹陥壁209から右案内溝壁112まで、距離Lの空間ができる。そのうえでこの空間は、右凹陥壁209から右方向に距離RCで伸びる右凹陥部208により覆われる。
【0052】
同様に、ホイール200が右ホイールの状態に移動したときは把持部材100の右案内溝壁112とホイール200の右凹陥壁209が当接して、右側壁205がRCの距離の分、右案内溝壁112の鉛直面を越えてさらに右側に位置する。このとき、ホイール200の左側には左凹陥壁207から左案内溝壁111まで距離Lの空間ができる。そのうえでこの空間は、左凹陥壁207から右方向に距離LCで伸びる左凹陥部206により覆われる。
【0053】
これによりホイール200が左ホイールの状態と右ホイールの状態との間を移動しても、案内溝110は常にホイール200によって覆い隠された状態になる。この構造にすることで、案内溝110への異物の付着を回避して、良好な動作環境を保つことが可能である。
【0054】
次に
図9を用いて、スクローラー1000内部で行われる信号処理を説明する。
図9は本実施例の信号処理を説明するブロック図である。なお、信号処理はスクローラー1000の内部、より具体的には把持部材100の内部に備えられた図示しないメイン基板により行われる。
図9に示すように、メイン基板には、回転速度検出部B101、回転方向検出部B103、移動方向検出部B104、および制御部B102、出力部B105、電源部B106が少なくとも備えられる。
【0055】
回転速度検出部B101は、ギヤ機構108に備えられたギヤ機構補助基板10806からの信号を受けて、ホイール200が把持部材100に対して相対的に回転しているか否か、及び回転している場合はその回転速度を検出し、制御部B102に出力する。
【0056】
回転方向検出部B103は、ギヤ機構108に備えられたギヤ機構補助基板10806からの信号を受けて、ホイール200が把持部材100に対してどちらの方向に回転しているかを検出し、制御部B102に出力する。
【0057】
移動方向検出部B104は、検出スイッチ109の信号を受けて、ホイール200が左ホイールの状態にあるか、右ホイールの状態にあるかを検出して、制御部B102に出力する。
【0058】
制御部B102は、回転速度検出部B101、回転方向検出部B103、及び移動方向検出部B104からの信号を受けて処理を行い、その結果を出力部B105に出力する。なお、制御部B102の信号処理の詳細は後述する。
【0059】
出力部B105は、制御部B102からの信号を受けた信号を、無線信号や光信号に変換して発信、あるいは信号線を通じてPCなどの表示装置に送信する。なお、無線方式としては、赤外線方式、ブルートゥース(登録商標)等の電波方式のいずれでも良い。
【0060】
電源部B106は、電池やバッテリーで構成され、メイン基板の回転速度検出部B101、回転方向検出部B103、移動方向検出部B104,制御部B102及び出力部B105に電力を供給するほか、ギヤ機構補助基板10806及び検出スイッチ109に電力を供給する。
【0061】
次に
図10を用いて制御部B102が実行する制御の例を示す。
図10は、第1実施例のフローチャートである。制御部B102は、例えばこのフローチャートに示すような動作ステップを実行する。
まずステップ1F1000「相対的回転」では、把持部材100とホイール 200との間で相対的な回転動作が検知されているか否かを、回転速度検出部B101の信号を受けて判定し、検知されないとき(N判定)は待機となり、検知されたとき(Y判定)は次のステップに移行する。
【0062】
ステップ1F2000「ホイール位置」では、制御部B102は移動方向検出部B104の信号を受けて、検出スイッチ109が、ホイールの位置を把持部材100の左側、すなわち「左ホイールの状態」にあるのか、把持部材100の右側、すなわち「右ホイールの状態」にあるのかを取得する。なお、ここでは、「左ホイール状態」の場合には表示画面を縦(上下)方向へ移動するものとし、「右ホイールの状態」の場合には表示画面を左右方向へ移動するものとする。以下では、ステップ1F2000「ホイール位置」で左ホイールの状態と判断された場合について説明する。
【0063】
ステップ1F2100「相対的回転方向」では、制御部B102は回転方向検出部B103の信号を受けて、ホイール200の回転方向がどちら向きであるかを取得する。なお、この「相対的回転方向」とは、把持部材100とホイール200の間の回転の向きを意味し、把持部材100とホイール200のどちらか一方を基準として、他方をどちら向きに回転させているか、という意味である。すなわち、把持部材100の向きを固定しておいてホイール200を回転させた際のホイール200の回転方向、あるいはホイール200を固定して把持部材100を回転させた際の把持部材100の回転方法、さらにはどちらも固定せず互いに回転させた際の把持部材100とホイール200の間の回転方向を意味する。
【0064】
本実施例における『正回転』とは、具体的には把持部材100の右側(右ハンドル114)側面から見たときに、把持部材100を保持した場合、すなわち把持部材100を固定した場合にはホイール200の回転方向が反時計回りに、ホイール200を保持した場合、すなわちホイール200を固定した場合には把持部材100の回転が時計回りの方向に、両者を固定せず回転させた際には把持部材100を時計回りに、かつホイール200を反時計周りに回転する方向をいう。
【0065】
一方、『逆回転』とは、把持部材100の右側(右ハンドル114)側面から見たときに、把持部材100を保持した場合、すなわち把持部材100を固定した場合にはホイール200の回転が時計回りに、ホイール200を保持した場合、すなわちホイール200を固定した場合には把持部材100の回転が反時計回りに、両者を固定せず回転させた際には把持部材100を反時計回りに、かつホイール200を時計回りの方向に回転する方向をいう。
【0066】
従ってステップ1F2100「相対的回転方向」で正回転と判断されると、ステップ1F2110で相対的回転速度を取得し、その取得された相対的回転速度に応じた速度でステップ1F2111により表示画面を縦方向下向きに移動する信号が出力される。
【0067】
すなわちステップ1F2110「相対的回転速度取得」では、制御部B102は回転速度検出部B101から把持部材100とホイール200の間の相対的回転速度を取得する。そのうえで、取得された相対的回転速度に応じた速度で表示画面を縦方向下向きに移動させるような信号を生成し、出力部B105に送信する(ステップ1F2111)。
【0068】
一方、ステップ1F2100「相対的回転方向」で逆回転と判断されると、ステップ1F2120で相対的回転速度を取得し、その取得された相対的回転速度に応じた速度でステップ1F2121により表示画面を縦方向上向きに移動する信号が出力部105に出力される。
なお、ステップ1F2000においてホイール位置が右ホイールの状態と判断されたときは、
図10におけるステップ1F2000から右側のフローに移行するが、画面の移動方向が左右方向に変わるほかは、左ホイールの場合と同様なので説明を省略する。
【0069】
上述の結果として、スクローラー1000の動作に応じた画面のスクロールは、次の4種類になる。
<1>左ホイールの状態で正回転したとき:画面を縦方向の下向きにスクロールする(1F2111)。
<2>左ホイールの状態で逆回転したとき:画面を縦方向の上向きにスクロールする(1F2121)。
<3>右ホイールの状態で正回転したとき:画面を横方向の右向きにスクロールする(1F2211)。
<4>右ホイールの状態で逆回転したとき:画面を横方向の左向きにスクロールする(1F2221)。
【0070】
次に、スクローラー1000の操作方法について説明する。スクローラー1000は、スクローラー1000を使用する使用者によって保持されて使用される。すなわち使用者は、把持部材100の左ハンドル113を左手で、また把持部材100の右ハンドル114を右手で握って保持するか、または把持部材100の左端部を左手の掌に当て、右端部を右手の掌に当てて挟み込み支える。そのうえで、左右の手の空いた指、例えば親指を使用してホイール200を左ホイール状態と右ホイール状態との間で移動させたり、ホイール200の左リムハンドル201、右リムハンドル202を回転させたりすることで、表示画面のスクロール方向の切り替え表示画面の移動(スクロール)を行う。
【0071】
なお、スクローラー1000の大きさは特段限定されないが、このような操作を円滑に行うため、左ハンドル113や右ハンドル114は握りやすい径、例えば直径4~5cmとするのが望ましい。さらに、左ハンドル113の左端部から右ハンドル114の右端部までの長さは13~14cmとするのが望ましい。また、少なくともホイール200の左リムハンドル201は把持部材100の左端部から、右リムハンドル202は把持部材100の右端部からそれぞれ5cm程度の位置に配置されるように構成されるのが望ましい。
【0072】
なお、ここまでは把持部材100の両端を把持して、ホイールを把持部材に対して回転させる動作について説明してきたが、これに限られるものではない。例えば片手で把持部材100の左ハンドル113または右ハンドル114を把持しつつ、他方の手でホイール200を回転させても良いし、ホイール200を片手で把持して、把持部材100の左ハンドル113または右ハンドル114を他方の手で回転させてもよい。すなわち、回転のさせ方によらず把持部材100とホイール200との間に相対的な回転を生じさせることにより、表示画面の表示領域が移動(スクロール)される。
【0073】
また、
図1や
図2に示すように把持部材100の左端部に小突起を多数設けた左グリップ106を設け、右端部に小突起のない右グリップ105を設けたので、使用者がスクローラー1000を把持するときに、目視や感触によりスクローラー1000の左右の向きを間違えることなく、把持することが可能となる。また、
図1や
図2に示すように、把持部材100の左ハンドル113および右ハンドル114に、主1ボタン101から主4ボタン104の4つのボタンを具備しても良い。
【0074】
スクローラー1000の、左ハンドル113および右ハンドル114に具備している各ボタンについて簡単に説明する。主1ボタン101と主2ボタン102は、左ハンドル113の円周面に左ハンドル113の軸心から鉛直方向外側へ突出するように備えられている。また、主3ボタン103と主4ボタン104は、右ハンドル114の円周面に右ハンドル114の軸心から鉛直方向外側へ突出するように備えられている。なお、以降便宜上、主1ボタン101、主2ボタン102、主3ボタン103、主4ボタン104は特に明記しない限り4つをまとめて「4つの主ボタン」と称する。
なお、4つの主ボタンそれぞれは、電気的に制御部B102と接続されている。
【0075】
4つの主ボタンの構造は、例えば、バネなどを用いたバネの弾性によって、ボタン押下時はオン、ボタン非押下時はオフ、のように動作すれば良く、前記したようなオン/オフの動作が可能であれば、特にボタンの構造には拘らない。
【0076】
4つの主ボタンは、各ボタンに割り付けられた命令が、ボタンを単独で押下することで機能したり、複数のボタンを同時に押下することで機能したり、または、ボタンを長押ししながらホイール200を回動することで機能するようにするとよい。
【0077】
例えば、主ボタンのいずれかのボタンを単独で押下した場合、webページの閲覧中であればページの「進む/戻る」や、音声再生中であれば再生音の「消音/消音解除」、動画再生中であれば動画の「停止/再開」などの設定が可能である。また、ボタンを長押ししながらホイール200を回動する場合では、「表示画面の拡大/縮小」や「音量の増/減」などホイール200の回転量に応じて設定値を使用者の好適に微調整可能にすることができる。
(第2実施例)
【0078】
本発明の第2実施例はスクローラーを支持部材に支持させて使用することを可能とするものである。すなわち、第2実施例に係るスクローラー2000は、第1実施例に係るスクローラー1000と同様に両手で把持して使用しても良いし、所定の高さに保持されるよう支持部材に取り付けて使用しても良い。
以下
図11から
図23を用いて第2実施例を説明する。なお、第1実施例と同一の部分については、同一の名称と番号を使用し、説明を省略する。
【0079】
図11は第2実施例に係るスクローラー2000を支持部材ST300に取り付けた状態を示す斜視図である。
図11に示すように第2実施例のスクローラー2000は支持部材ST300により所定の高さに保持されるものである。なお、
図11に示すように第2実施例に係るスクローラー2000は、把持部材400とホイール600により構成される。
【0080】
支持部材ST300がスクローラー2000を支持する位置はどこでも良いのであるが、操作性や左右の重量バランス等を考慮すると、スクローラー2000の左右方向の略中央位置とするのが望ましい。そこで本実施例では、スクローラー2000の略中央、すなわちホイール600の略中央に支持部材ST300が取り付けられる場合を説明する。
【0081】
図11に示すように本発明の第2実施例に係るスクローラー2000は支持部材ST300によりスクローラー2000のホイール600の左右方向略中央位置を支持された状態で使用することができる。この場合、ホイール600が支持部材ST300によって固定されることから、ホイール600は自由に回転することができない。従って、第2実施例においてスクローラー2000が支持部材ST300に支持されたときは、使用者がスクローラー2000で画面移動のために操作する部材はホイール600ではなく把持部材400となる。
【0082】
一方、前述したように第2実施例のスクローラー2000は支持部材ST300に取り付けて使用するだけでなく、支持部材ST300から取り外して使用者が手で把持して使用することも可能である。
【0083】
そのため、以下のような問題が生じる可能性がある。例えば使用者がスクローラー2000を手で把持して把持部材400を固定し、スクローラー2000のホイール600を右側面視反時計周りに回転した場合と、スクローラー2000のホイール600を支持部材ST300に固定して把持部材400を同様に右側面視反時計周りに回転させた場合とでは、把持部材400とホイール600の相対的な回転方向が逆転してしまう。そのため、使用者が同じ方向に回転させた場合であっても表示画面のスクロール方向(移動方向)が逆転してしまい、使用者に混乱が生じる恐れがある。
【0084】
同様に、例えば使用者がスクローラー2000を手で保持してホイール600をスクローラー2000の軸方向左に移動させたときと、ホイール600を固定して把持部材400を同様に左方向に移動させたときも、把持部材400とホイール600の相対的な移動方向は逆転してしまう。これにより、ホイール600又は把持部材400を同じように左方向に移動させたにも関わらず、表示画面の移動方向が異なってしまい使用者に混乱を招き好ましいものではない。
従って、第2実施例においては、スクローラー2000が支持部材ST300に取り付けられたことを検知し、入力に対する出力を反転させるようにすることが望ましいことになる。
【0085】
そこで、この相対的な回転や移動方向の違いによるスクロール方向の逆転現象を解消する目的で、第2実施例ではホイール600が支持部材ST300に取り付けられているか否かを検知するように構成する。以下、その構成を説明する。
【0086】
まず、
図12~
図14を用いて、第2実施例に係るホイール600について説明する。
図12は第2実施例のホイール600を右側から見た斜視図である。なお、把持部材400は省略している。
【0087】
図12に示すように、ホイール600に支持部材ST300を取り付けるための凹設溝605が、ホイール600のハウジング620の外周面の左右方向略中央に設けられている。凹設溝605は所定幅、所定深さの凹陥であり、支持部材ST300との係合を確実なものとするため、ホイール600のハウジング620の外周面の半周を超えて形成されるのが望ましい。凹設溝605の両端部には、さらにホイール600の軸心方向に彫り込まれた嵌合穴a606(
図15参照)及び嵌合穴b607が設けられている。さらに、凹設溝605の底面の所定の場所2か所に軸受検知ボタン608(
図15参照)及び軸受検知ボタン609が備えられている。
【0088】
図13はホイール600の略中央部に設けた凹設溝605部分の断面図を示している。なお、軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609についてはその位置のみを記載している。軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609の詳細は後述する。
【0089】
図13に示すように、凹設溝605はホイール600のハウジング620に、ハウジング620の外周面の半周を超えて設けられた溝であり、その両端には嵌合穴a606及び嵌合穴b607が設けられている。
なお、ホイール600の周方向に対するハウジング620に設ける凹設溝605の向きは任意でかまわないが、ホイール600を支持部材ST300に取り付けた際に、後述する4つの副ボタンが見やすい位置、すなわち使用者の正面あるいはそれよりやや上向きになるのが使用上望ましい。
【0090】
後述するように、ホイール600が支持部材ST300のアームST301先端部(
図18参照)に取り付けられると、ホイール600の嵌合穴a606及び嵌合穴b607に、支持部材ST300の軸受ST302に設けられた、嵌合突起ST30201及び嵌合片ST30202がそれぞれ係合する。これにより、支持部材ST300にホイール600を介して、スクローラー2000が支持されるようになる。また、それと同時に軸受ST302により軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609が押し下げられる。
なお、軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609は、嵌合穴a606と嵌合穴b607の間であれば任意の位置に設置できるが、なるべく離れた位置に配置するのが望ましい。離れた位置に配置することで、使用者の指先が誤って軸受検知ボタンに触れてしまっても2つ同時に押されることを防ぐためである。
【0091】
次に
図14を用いて、軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609について説明する。なお、軸受検知ボタン608と軸受検知ボタン609は同一の形状および構造のため、ここでは軸受検知ボタン608について説明し、軸受検知ボタン609の説明は省略する。
【0092】
図14は軸受検知ボタン608の構造を示す概念図である。軸受検知ボタン608は、可動軸615、バネ616、接触端子617とからなり、ホイール400の凹設溝605に設けられた孔部であるボタン室619内に備えられている。
図14に示すように、可動軸615はバネ616により上方に向けて付勢されており、上端部に設けられた操作部618が凹設溝605の底面から上方に突出している。なお、可動軸615の操作部618は凹設溝605の内部に収まる高さとするのが望ましい。誤って操作部618に接触し、軸受検知ボタン608を押し下げるのを防止するためである。
【0093】
また可動軸615の下端部には、導電性を有する接触端子617が設けられている。さらに、可動軸615の下方の離間した位置には一対の信号線614が備えられており、可動軸615の操作部618が支持部材ST300の軸受ST302によりバネ616の抗力に反して押し下げられると、接触端子617が一対の信号線614に当接し、接触端子617を介して信号線614に信号が流れるよう構成されている。
【0094】
なお、図示しないが、軸受検知ボタン608の一対の信号線614と軸受検知ボタン609の一対の信号線は直列に接続されている。すなわち、軸受検知ボタン608と軸受検知ボタン609のそれぞれ一方の信号線が接続される。またそれぞれの信号線の他方は、その一方が後述する左電極611と、他方が後述する右電極613と接続されている。
【0095】
図12に戻って、ホイール600の内部構造を説明する。ホイール600の内周右側、挟入リング211と内歯車210との間には、ホイール600の内側に向かって突出するリング状の右電極台座612が環装されている。右電極台座612の内周面には、さらに内周面全周にわたって右電極613が備えられている。
【0096】
図15は、ホイール600を左側から見た斜視図である。ホイール600の左側壁204と内歯車210の間には、ホイール600の内周に向かって円環状に突出する左電極台座610が設けられている。左電極台座610の内周面には、全周にわたって左電極611が備えられている。なお、左電極台座610と右電極台座612の間の距離は、後述する把持部材400のギヤ機構500の左ギヤフレーム電極10809と右ギヤフレーム電極10811の間の距離と同一に構成される。
【0097】
次に第2実施例に係る把持部材400について
図16および
図17を用いて説明する。第1実施例に係る把持部材100と第2実施例に係る把持部材400は、ギヤ機構の構成の一部及びギヤ機構の取り付け方法のみが異なる。
そこでまず
図16を用いて第2実施例に係るギヤ機構500の構成について説明する。ギヤ機構500は、スクローラー2000が支持部材ST300に取り付けられたことを電気的に検出するための信号線を接続する電極を備えている。さらにギヤ機構500は、ホイール600が把持部材400の軸心に沿って移動するのに応じてギヤ機構500が把持部材400内を把持部材400の軸心に沿って移動可能にするための構成を有している。
以下ではまず、信号線の接続について説明する。
【0098】
ギヤ機構500は、第1実施例で示したギヤ機構108の一対のギヤフレーム10813の上端部に、左ギヤフレーム電極10809及び右ギヤフレーム電極10811が設けられている。より詳しくは、左側のギヤフレーム10813の上端部に左ギヤフレーム電極10809を設け、右側のギヤフレーム10813の上端部に右ギヤフレーム電極10811を設けている。
【0099】
以下、一対のギヤフレーム10813に取り付けられたギヤフレーム電極について詳述する。なお、左ギヤフレーム電極10809と右ギヤフレーム電極10811の取り付け構造は同一のため、左ギヤフレーム電極10809について説明し、右ギヤフレーム電極の説明は省略する。
【0100】
左ギヤフレーム電極10809が取り付けられるギヤフレーム10813の上端は左右に所定の幅の壁部を残しながら、側面視したギヤフレーム10813の外形に添うように略円弧状の溝が形成されている。さらにこの溝には左ガイド板10810が取り付けられている。左ガイド板10810もギヤフレーム10813と同様、上端部の左右に所定幅の壁部を残しながら側面視したギヤフレーム10813の外形に沿うように溝が形成されている。
【0101】
さらに左ガイド板10810の溝に左ギヤフレーム電極10809が取り付けられている。なお、図示していないが左ギヤフレーム電極10809には、後述する把持検出部B201に延びる信号線が取り付けられている。
これにより、把持検出部B201はホイール600の軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609が押し下げられたかどうかを、左電極611と左ギヤフレーム電極10809および右電極613と右ギヤフレーム電極10811を介して検出することができる。
【0102】
また、上述したようにホイール600の左電極台座610がギヤ機構500の左ガイド板10810に挿入され、ホイール600の右電極台座612がギヤ機構500の右ガイド板10812に挿入されることからホイール600と把持部材400内のギヤ機構500との把持部材400の軸方向の位置関係が固定される。すなわちホイール600と把持部材400の一方が他方に対して軸方向に移動しても、ホイール600とギヤ機構500の位置関係は変わることが無い。そのためギヤ機構500は把持部材400内を軸方向に移動可能に取り付けられる。
【0103】
そこで、次に
図17を用いてギヤ機構500の把持部材400への取り付け方について説明する。
図17は把持部材400の案内溝110付近の内部を示す斜視図である。本実施例では、ギヤ機構500がホイール600の軸方向へ移動するのに伴って、ギヤ機構500は把持部材400内のギヤレール117上を移動するよう構成されている。
【0104】
すなわちギヤ機構500の一対のギヤフレーム10813の下端部の円弧が、ギヤレール117に設けられた一対の円弧上の凹みにガイドされてギヤレール117上を摺動する。そのため把持部材400の内部に設けられたギヤレール117の左右方向(軸方向)の長さは、把持部材400がホイール600に対してその軸方向に移動するのに応じてギヤ機構500の移動に必要な長さを考慮して設定される。なお、ギヤレール117の両端部には第1実施例のレールエンド116に相当するものは設けられていないが、本実施例の場合にもレールエンドを設けても良い。
【0105】
さらに、把持部材400のギヤレール117には、ギヤフレーム10813がギヤレール117に沿って横移動を容易にするためにギヤレール117の表面上にギヤ機構500のギヤフレーム10813の底面部が滑動を良好となるような加工を施してもよい。または、ギヤレール117の表面上に摺動に適切な素材を取り付けても良い。
【0106】
上述したように、ホイール600の左電極台座610の左電極611とギヤ機構500の左ギヤフレーム電極10809が当接し、ホイール600の右電極台座612の右電極613とギヤ機構500の右ギヤフレーム電極10811が当接する。
【0107】
そして、把持部材400の案内溝110をホイール600が回動すると、ギヤ機構500の左ギヤフレーム電極10809及び右ギヤフレーム電極10811が、ホイール 600の左電極611及び右電極613に沿って周回する。
【0108】
このように構成することで、軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609の信号がギヤ機構500を介して把持部材400内部に送られる。
なお、左ガイド板10810の壁部の間にホイール600の左電極台座610が挿入されることから、ホイール600が回転すると左電極台座610が左ガイド板10810の壁部と摺動する。同様に、右ガイド板10812の壁部の間にホイール600の右電極台座612が挿入されることから、ホイール600が回転すると右電極台座612が右ガイド板10812の壁部と摺動する。そのため、左ガイド板10810および右ガイド板10812は潤滑性のある部材など、摺動に耐える部材で作られるのが望ましい。
【0109】
次に、
図11に戻って、支持部材ST300について説明をする。支持部材ST300はスクローラー2000を所定の高さに保持するものである。なお、
図11はスクローラー2000を挟んで奥側から操作する使用者に向けて支持部材ST300が配置されている状態を示している。
【0110】
支持部材ST300は、ベース台座ST310と、ベース台座ST310から上方に伸びる支柱ST303及び、支柱ST303から奥方向に延びるアームST301からなる。平面視で長方形であるベース台座ST310の長手方向両端部には、台座キャップST311、ST312が取り付けられるとともに、ベース台座ST310の長手方向中心線に沿って、両台座キャップ近傍まで台座貫通孔ST309が設けられている。さらに台座貫通孔ST309の上面には、台座貫通孔ST309の軸心と一致するように所定の厚さの板状部材からなる台座レールST308が備えられている。
【0111】
支柱ST303の下端部には、台座レールST308が貫通するネジ貫通孔ST307を有するベースネジST306が設けられているとともに、このベースネジST306に螺嵌する支柱ナットST305が備えられている。これにより、支柱ナットST305を締め付け方向に回転させることでネジ貫通孔ST307内で台座レールST308を固定可能とするとともに、支柱ナットST305を緩める方向に回転させることによりネジ貫通孔ST307内を台座レールST308が移動可能となる。すなわち、支柱ナットの締め付け回転及び緩め回転により、台座レールST308に沿って任意の位置に支柱ST303を移動及び固定可能としてある。
【0112】
一方、支柱ST303の上端にはアームST301が取り付けられる。支柱ST303の上端部には溝ST313が形成されるとともに、溝ST313を横断するようにアームネジST304が備えられ、さらにアームネジST304の先端部に、図示しないアームナットST314が備えられている。そして、このアームネジST304の回転により溝ST313の幅の広狭が変化するよう構成されている。一方、アームST301の一端部は溝ST313の幅よりもやや薄く形成されるとともに、アームネジST304が通過する図示しない穴が設けられている。そこでアームST301の一端部が支柱ST303の溝ST313に嵌入されるとともに、アームST301の図示しない穴をアームネジST304が貫通してさらに、図示しないアームナットST314と螺嵌可能にするよう備えられることで、アームネジST304の回転により、支柱ST303とアームST301の角度を任意の角度に変更及び固定することが可能となる。
【0113】
アームST301の他端には、ホイール600を取り付けるための軸受ST302が設けられている。
図18は支持部材ST300のアームST301とアームST301に内設されている軸受ST302を表す断面図である。支持部材ST300のアームST301の先端部には、軸受ST302を収納する円弧状の収容部ST30101が形成されている。また、収容部ST30101には、軸受ST302を左右方向から保持するための、図示しない側面ガイドST30102が設けられている。収容部ST30101の一端にはホイール600の凹設溝605が通過するためのアーム開口ST30103が設けられている。
【0114】
また軸受ST302の外周には、外側に向かって所定の間隔をあけて、複数の係止突起ST30203が形成されている。この複数の係止突起ST30203が、アームST301の収容部ST30101に当接することで、収容部ST30101内で軸受ST302が回転する際の抵抗を与えている。これにより、支持部材ST300に取り付けたスクローラー2000の、軸心を中心とした向きを好みの向きに設定可能とするとともに、使用中に設定がずれるのを防止することができる。なお、収容部ST30101に係止突起ST30203に対応した凹みを設けることにより、スクローラー2000の向きの設定にクリック間を持たせるようにしても良い。
【0115】
軸受ST302は、スクローラー2000のホイール600に設けられた凹設溝605に嵌合する厚さを有し、凹設溝605の外径と略同一の内径を有する嵌合口ST30205を有する。また、嵌合口ST30205の一端はホイール600の凹設溝605が通過するための軸受開口ST30206が設けられている。
【0116】
なお、
図18では、アームST301のアーム開口ST30103と軸受ST302の軸受開口ST30206が略同一としているが、アームST301のアーム開口ST30103が軸受ST302の軸受開口ST30206よりも大きく形成されていれば、これに限られない。
【0117】
さらに嵌合口ST30205には、嵌合口ST30205の内側方向に突出する嵌合突起ST30201及び嵌合片ST30202が設けられている。なお、嵌合片ST30202は嵌合口ST30205の内側方向に延びるホールドアームST30204の先端に設けられている。
【0118】
これによりホイール600の凹設溝605が嵌合口ST30205に挿入される際には、ホールドアームST30204が弾性変形し、ホイール600が嵌合口ST30205内に挿入されるのを許容するととともに、ホイール600の凹設溝605が嵌合口ST30205に入り込むと、嵌合突起ST30201がホイール600の嵌合穴a606に嵌合するとともに、嵌合片ST30202がホイール600の嵌合穴b607に嵌合することで、ホイール600を確実に保持することができる。なお、こうしたことから、軸受ST302は弾性を有する部材、例えばプラスチックを材料とするものが望ましい。
【0119】
なお、ここで説明した支持部材ST300はその一例を示すものであり、少なくともアーム開口ST30103、軸受開口ST30206、嵌合口ST30205、嵌合突起ST30201、嵌合片ST30202及びホールドアームST30204を備えており、スクローラーを所定の高さに保持するものであれば、どのような構成のものでも良い。すなわち、支持部材ST300のように支柱ST303が奥方向と前方向で移動可能でなくともよく、支柱ST304にアームST301が角度自由に取り付けられなくても良い。あるいは、さらに左右方向に向きを調整可能にするなど種々の調整機能を持たせても良い。
【0120】
上述したようにホイール600が支持部材ST300の軸受ST302に取り付けられると、軸受ST302の嵌合口ST30205が、軸受検知ボタン608及び軸受検知ボタン609を押し下げる。
【0121】
より具体的には、ホイール600が支持部材ST300に取り付けられ、支持部材ST300の軸受ST302の嵌合口ST30205がホイール600の二つの軸受検知ボタンが押し下げる。そして軸受検知ボタン608および軸受検知ボタン609がともに押し下げられていることが検出された場合には、スクローラー2000が支持部材ST300に支持されている、すなわちスクローラー2000は支持部材ST300に取り付けられていると判断する。
【0122】
スクローラー2000が支持部材ST300に取り付けられていると判断されたときは、支持部材ST300に取り付けられていない場合の把持部材400とホイール600の相対的回転方向に応じた表示画面の上下方向の移動の向き、又は表示画面の左右方向の移動の向きを反転させる。なお、前記ホイールの回動方向と前記表示領域の前記移動方向との関係を逆転させるとは、このことを指す。
【0123】
また、同様に、スクローラー2000が支持部材ST300に取り付けられていると判断されたときは、支持部材ST300に取り付けられていない場合の把持部材400とホイール600の軸方向の相対的位置に応じた画面の上下方向の移動と左右方向の移動との切替を反転させる。なお、前記ホイールの前記把持部材に対する位置と、前記ホイールの前記回動による前記表示領域の左右または上下の移動方向との関係を逆転させるとは、このことを指す。
【0124】
なお第2実施例では、軸受検知ボタン608と軸受検知ボタン609の2個のボタンを備えており、それらはホイール600内部で直列に接続されている。また、
図12及び
図15に示すように2つの軸受検知ボタンの配置位置も離れた位置に配置している。そのため、誤って一方の軸受検知ボタンが押し下げられても信号が発出されず、誤検知を避けることができる。例えば、スクローラー2000が支持部材ST300から取り外されて使用された際、使用者が誤って一方の軸受検知ボタンを押した場合であっても誤作動を防止できる。なお、本実施例では2個の軸受検知ボタンを備えているが、その数は2個以上でも良いし、1個でも良い。
【0125】
なお、ホイール600の軸受検知ボタン608と軸受検知ボタン609が押し下げられた信号は、左電極611および右電極613を介して把持部材400のギヤ機構500の左ギヤフレーム電極10809および右ギヤフレーム電極10811に送られ、さらに後述する把持検出部B206へ伝えられる。
【0126】
図19は、第2実施例の構成を示すブロック図である。第2実施例では、把持検出部B201が追加されている。把持検出部B201は、軸受検知ボタン608及び軸受検出ボタン609が押し下げられたことを検知すると、それを信号として制御部B102に発信する。そして、制御部B102は、把持検出部B201の信号を受け取ると、それに応じて出力信号を出力部B105に発信する。
【0127】
なお、スクローラー2000の表示画面の移動方向の組み合わせは、使用者が手で把持して使用する場合と支持部材ST300に取り付けて使用する3つの場合を合わせると以下の4タイプが可能である。タイプ2~4の3タイプについては、あらかじめ何れかが設定されていても良いし、使用者により選択可能としても良い。
【0128】
3タイプの内のどのタイプにするのかを使用者が選択する場合には、把持部材100の4つの主ボタン、または、後述するホイール600の4つの副ボタンを用いて選択しても良い。
タイプ1:軸受検知ボタンがOFFの場合。すなわち支持部材に取り付けられていない場合。
タイプ2:軸受検知ボタンがONで、相対的回転方向と表示画面の移動方向の関係を反転させた場合。
タイプ3:軸受検知ボタンがONで、ホイールの位置と表示画面の移動方向の関係を入れ替えた場合。
タイプ4:軸受検知ボタンがONで、相対的回転方向と表示画面の移動方向の関係を反転させ、かつホイールの位置と表示画面の移動方向の関係を入れ替えた場合。
各タイプによる表示画面の移動方向の関係を表1に示す。
【0129】
【0130】
上述の関係は制御部B102によって処理される。
そこで第2実施例における制御部B102の処理について
図20から
図23を用いて説明する。
図20から
図23は、第2実施例のフローチャートである。第1実施例のフローチャートとの異なる点は、軸受検知ボタン2F20000の判定が、相対的回転2F10000とホイール位置2F21000の間に置かれていることである。また、上述したように軸受検知ボタン2F20000の判定が「ON」、すなわちスクローラー2000が支持部材ST300に取り付けられていると判断されたときのパターンに3タイプあることである。
【0131】
図20は軸受検知ボタン2F20000の判定が「OFF」の場合のフローチャートであり、軸受検知ボタン2F20000以下のフローは第1実施例のスクローラー1000の処理フローと同様なので説明を省略する。
なお、
図21から
図23に示す軸受検知ボタン2F20000の判定が「ON」の場合のフローチャートは、
図20に示すフローチャートにおける軸受検知ボタン2F20000において、「ON」と判定された後のフローのみを示している。
【0132】
図21は軸受検知ボタン2F20000の判定が「ON」の場合の一つで、「相対的回転方向」と「画面の移動方向」の関係を入れ替えたタイプ2のフローを示すフローチャートである。
【0133】
例えばここで、ホイール位置2F22000で左ホイールと判断され、相対的回転方向2F22100で正回転と判断された場合、タイプ1では画面を下向きに移動させたが、タイプ2の場合には画面を上向きに移動させる。また、相対的回転方向2F22100で逆回転と判断されたときは、画面を縦方向下向きに移動させる。この関係はホイール位置2F22000で右ホイールと判断された場合も同様なので、右ホイールと判断された場合の説明を省略する。
【0134】
図22は軸受検知ボタン2F20000の判定が「ON」の場合で、「左ホイールと右ホイールの位置」と、「縦方向スクロールと横方向スクロール」の関係を入れ替えたタイプ3のフローチャートである。
【0135】
例えばここで、ホイール位置2F23000で左ホイールと判断された場合、タイプ1では画面を上下方向に移動させたが、タイプ3の場合には画面を横向きに移動させる。また、ホイール位置2F23000で右ホイールと判断されたときは、画面を縦方向下向きに移動させる。このホイールの位置と移動方向の関係が入れ替わる他は、タイプ1と同様なので、説明を省略する。
【0136】
図23は軸受検知ボタン2F20000の判定が「ON」の場合であって、相対的回転方向」と「画面の移動方向」の関係を入れ替えるとともに、「左ホイールと右ホイールの位置」と、「縦方向スクロールと横方向スクロール」の関係を入れ替えたタイプ4のフローチャートである。すなわちタイプ4のフローチャートはタイプ2のフローチャートとタイプ3のフローチャートを組み合わせたものであることから、詳細な説明を省略する。
【0137】
第2実施例では、主ボタンに加えてホイール600に主ボタンと同様の機能を有する副ボタンを備えても良い。すなわち、スクローラー2000を把持して使用するときは、把持部材400の各ハンドルに備えられている4つの主ボタンを使うことが可能であるが、スクローラー2000を支持部材ST300に装着すると、スクロール操作では把持部材400を回動すると主ボタンも回転することになるので、4つの主ボタンを使うことが困難になる。そこで、スクローラー2000を支持部材ST300に装着した場合は、4つの副ボタンが4つの主ボタンの機能を代用できるようになると良い。
【0138】
ここで
図15を用いてホイール600の左リムハンドル201及び右リムハンドル202に具備している各ボタンについて簡単に説明する。副1ボタン601と、副2ボタン602は、左リムハンドル201の円周面に、左リムハンドル201の軸心から鉛直方向へ突出するように備えられている。そして、副3ボタン603と、副4ボタン604は、右リムハンドル202の円周面に、右リムハンドル202の軸心から鉛直方向へ突出するように備えられている。なお、以降便宜上、副1ボタン601、副2ボタン602、副3ボタン603、副4ボタン604は特に明記しない限り4つをまとめて「4つの副ボタン」と称する。
【0139】
詳しくは、ホイール600が支持部材ST300の軸受ST302に取り付けられ、軸受検知ボタン608及び軸受検知ボタン609を同時に押されたときに、主1ボタン101が無効になり副1ボタン601が有効なる。同様に主2ボタン102、主3ボタン103、主4ボタン104がそれぞれ無効になり、それぞれに対応する副2ボタン602、副3ボタン603、副4ボタン604が有効となる。
【0140】
4つの副ボタンの構造は、例えばバネなどの弾性によって4つの副ボタンの外側に向かって付勢され、ボタン押下時はオン、ボタン非押下時はオフのように動作するのが望ましい。なお、前記したようなオン/オフの動作が可能であれば、特にボタンの構造は限定されない。そして、4つの副ボタンは、スクローラー2000を支持部材ST300に装着したことが検出された時に機能が有効になるように構成する。
【0141】
4つの副ボタンの信号は、ホイール600の左電極611と右電極613を介してギヤ機構500の一対のギヤフレーム10813に備えられた左ギヤフレーム電極10809および右ギヤフレーム電極10811に伝えられ、制御部B102に送信される。より具体的には、左電極611および右電極613には4つの副ボタンに対応した複数の電極が備えられ、同様にギヤ機構500の左ギヤフレーム電極10809および右ギヤフレーム電極10811にも対応する複数の電極が備えらており、これらの電極と制御部B102が接続されている。
【0142】
図11を用いて、第2実施例がどのように用いられるかを説明する。スクローラー2000の使用者は支持部材ST300の奥側からスクローラー2000に向かい、さらにその前面には図示しない表示装置が配置されている。また、使用者の手元には図示しないキーボードが配置されている。この状態で、スクローラー2000はキーボードよりも高い位置にあることから、従来のようにマウスを操作する際にキーボードが邪魔になったりすることがない。また、キーボード操作からマウス操作に移行する際、目を移動させてマウスの位置を確認する必要があるが、本実施例によれば作業を行う間スクローラー2000の位置が移動することがないので、パソコンを用いた作業が中断することがなく、作業効率を向上させることができる。特に、表計算ソフトのような表示画面を横方向や縦方向に移動しつつ作業するソフトウエアを用いた作業に好適である。
【符号の説明】
【0143】
100 把持部材(第1実施例)
108 ギヤ機構(第1実施例)
109 検出スイッチ
110 案内溝
113 左ハンドル
114 右ハンドル
200 ホイール
210 内歯車
211 挟入リング
212 貫通孔
ST300 支持部材
400 把持部材材(第2実施例)
500 ギヤ機構(第2実施例)
600 ホイール(第2実施例)
1000 スクローラー
2000 スクローラー
【要約】
【課題】
キーボードやマウスを操作するスペースの確保が難しい環境でも、情報機器類の表示画面に表示された画像や情報の表示領域を、縦方向及び横方向の移動を切り替えつつ同じ操作性でスクロール表示を可能とするスクローラーを提供する。
【解決手段】
本発明のスクローラー1000は、把持部材100と把持部材100の軸心を中心に相対的に回動可能かつ把持部材100の軸心に沿って所定距離を移動可能に取り付けられたホイール200とからなり、ホイールの回転によって画像や情報の表示領域を移動させるとともに、把持部材100に対するホイール200位置により、ホイール200の回転方向による表示領域の縦と横の移動方向を切り替え可能とした。
【選択図】
図1