(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-12
(45)【発行日】2025-09-24
(54)【発明の名称】水貯留槽用の構造部材
(51)【国際特許分類】
E03B 3/02 20060101AFI20250916BHJP
E03F 1/00 20060101ALI20250916BHJP
E03B 11/14 20060101ALI20250916BHJP
【FI】
E03B3/02 Z
E03F1/00 Z
E03B11/14
(21)【出願番号】P 2024191060
(22)【出願日】2024-10-30
【審査請求日】2024-10-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 英俊
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-031664(JP,A)
【文献】特開2006-200356(JP,A)
【文献】中国実用新案第212478030(CN,U)
【文献】中国実用新案第216892769(CN,U)
【文献】特開2010-209604(JP,A)
【文献】特開2023-066302(JP,A)
【文献】特開2019-143429(JP,A)
【文献】特開2016-145500(JP,A)
【文献】特開2017-031663(JP,A)
【文献】特開2009-013756(JP,A)
【文献】特開2008-231683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 3/02
E03F 1/00
E03B 11/14
E03B 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材において、
前記支持脚は、該支持脚の外周側面が、
断面がコの字型の樋形状であって前記基台から立設された複数本の要素部材を、前記樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、前記要素部材の側端同士が接続された形状となっており、
前記要素部
材は、前記樋形状の
底面の横幅が根元側から先端側に向かって狭くなると共に、先端部分では、
前記樋形状の前記
底面の横幅と
、前記樋形状の
側面の横幅とが、実質的に同寸法となっており、
前記支持
脚は、6本
、または8本、または10本の前記要素部材によって形成されて
おり、
複数本の前記要素部材の中で一つおきの前記要素部材には、先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、
前記嵌合凸部の断面形状は、前記樋形状を形成する前記底面および前記底面の両側の二つの前記側面と、二つの前記側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている
ことを特徴とする水貯留槽用の構造部材。
【請求項2】
基台と、該基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材において、
前記支持脚は、該支持脚の外周側面が、
断面がコの字型の樋形状であって前記基台から立設された複数本の要素部材を、前記樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、前記要素部材の側端同士が接続された形状となっており、
前記要素部
材は、前記樋形状の
底面の横幅が根元側から先端側に向かって狭くなると共に、先端部分では、
前記樋形状の前記
底面の横幅が
、前記樋形状の
側面の横幅に対して、1倍から2倍の寸法となっており、
前記支持
脚は、6本の前記要素部材によって形成されて
おり、
複数本の前記要素部材の中で一つおきの前記要素部材には、先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、
前記嵌合凸部の断面形状は、前記樋形状を形成する前記底面および前記底面の両側の二つの前記側面と、二つの前記側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている
ことを特徴とする水貯留槽用の構造部材。
【請求項3】
基台と、該基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材において、
前記支持脚は、該支持脚の外周側面が、
断面がコの字型の樋形状であって前記基台から立設された複数本の要素部材を、前記樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、前記要素部材の側端同士が接続された形状となっており、
前記要素部
材は、前記樋形状の
底面の横幅が根元側から先端側に向かって狭くなると共に、先端部分では、
前記樋形状の前記
底面の横幅が
、前記樋形状の
側面の横幅に対して、1倍から1.5倍の寸法となっており、
前記支持
脚は、8本の前記要素部材によって形成されて
おり、
複数本の前記要素部材の中で一つおきの前記要素部材には、先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、
前記嵌合凸部の断面形状は、前記樋形状を形成する前記底面および前記底面の両側の二つの前記側面と、二つの前記側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている
ことを特徴とする水貯留槽用の構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基台と、基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
大勢の人が住む居住地域では、地面の大部分がアスファルトなどで舗装されることが一般的となっている。地面が舗装されると、雨水などが地中に浸透し難くなるため、洪水などの都市型水害が発生し易くなる。この対策の一つとして、地中に水貯留槽を設置することが知られている。水貯留槽で多量の雨水を貯えておくことができれば、貯えた雨水を少しずつ地中に浸透させたり、少しずつ河川に放水したりすることで、都市型水害の発生を防止することが可能となる。
【0003】
水貯留槽を地中に簡単に設置可能な技術としては、複数の構造部材を積層することによって水貯留槽を形成する技術が知られている(たとえば特許文献1など)。構造部材は、矩形形状の基台と、基台の下面から立設されて基台を支える複数本の支持脚とを備えており、次のようにすることで、地中に水貯留槽を簡単に設置することができる。先ず、地面に穴を掘って凹部を形成し、凹部の底面を平らに整地した上で、複数の構造部材を平面状に配置する。尚、この時、構造部材を本来の向き(すなわち、基台が上で支持脚が下となる向き)で配置しても良いが、構造部材の上下を逆さまにした向き(基台が下で支持脚が上となる向き)で配置すれば、複数の構造部材を凹部の底面上に容易に配置することができる。
【0004】
複数の構造部材を平面上に配置したら、その上に、再び複数の構造部材を平面状に配置する。構造部材の上に配置する構造部材も、上下が逆さまの向きで配置しても良いが、本来の向きで配置搭載しても良い。この場合は、下側の構造部材の基台から上向きに立設された支持脚の先端と、上側の構造部材の基台から下向きに立設された支持脚の先端とを突き合わせた状態で、構造部材を搭載して行く。このようにして複数の構造部材を何層にも積層することによって、複数の構造部材による大きな積層構造体を地中に形成することができる。
【0005】
こうして形成された積層構造体の内部には、複数の支持脚によって支えられた大きな空間が形成されており、この空間を水貯留空間として利用することで、大きな水貯留槽を地中に簡単に設置することができる。また、積層構造体の上面を土壌で覆ったり舗装したりすることによって、水貯留槽が埋められた地面を庭園や駐車場などとして利用することができる。このようにして水貯留槽の上方の地面を利用すると、積層構造体には大きな荷重が加わることになるが、積層構造体の内部には多数の支持脚が存在するので、これらの支持脚で荷重を分散して支えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年では、水貯留槽をより深い地中に設置したり、あるいは、水貯留槽の上方の地面により重たい構造物を設置したりすることが要請されるようになっており、これに伴って、支持脚が耐え得る荷重を増加させる必要が生じている。支持脚を太くすれば、より大きな荷重に耐えるようにすることが可能であるが、支持脚を太くすると積層構造体の内部の水貯留空間が狭くなり、水貯留槽の容量が減少するので望ましくない。
【0008】
この発明は、従来の水貯留槽用の構造部材が有する上述した課題を解決するために成されたものであり、支持脚を太くすることなく、より大きな荷重に耐えることが可能な水貯留槽用の構造部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の水貯留槽用の構造部材は、次の構成を採用した。すなわち、
基台と、該基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材において、
前記支持脚は、該支持脚の外周側面が、
断面がコの字型の樋形状であって前記基台から立設された複数本の要素部材を、前記樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、前記要素部材の側端同士が接続された形状となっており、
前記要素部材は、前記樋形状の底面の横幅が根元側から先端側に向かって狭くなると共に、先端部分では、前記樋形状の前記底面の横幅と、前記樋形状の側面の横幅とが、実質的に同寸法となっており、
前記支持脚は、6本、または8本、または10本の前記要素部材によって形成されており、
複数本の前記要素部材の中で一つおきの前記要素部材には、先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、
前記嵌合凸部の断面形状は、前記樋形状を形成する前記底面および前記底面の両側の二つの前記側面と、二つの前記側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている
ことを特徴とする。
【0010】
このような本発明の第1の水貯留槽用の構造部材では、支持脚の外周側面が、複数本の要素部材を接続した形状となっている。ここで要素部材は、断面がコの字型の樋形状の部材であり、基台から立設されると共に、根元側から先端側に向かって、樋形状の底面の横幅が狭くなっている部材である。支持脚の外周側面は、これらの要素部材が、樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、要素部材の側端同士が接続された形状となっている。そして、支持脚を形成する要素部材は、先端部分での樋形状の底面の横幅と、樋形状の側面の横幅とが実質的に同寸法となっており、支持脚の外周側面は、このような要素部材が6本または8本または10本、用いられて形成された形状となっている。更に、それらの要素部材は、一つおきの要素部材の先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、嵌合凸部の断面形状は、樋形状を形成する底面および底面の両側の二つの側面と、二つの側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている。
【0011】
詳細な理由については後述するが、支持脚の強度を上げて、水貯留槽用の構造部材の耐荷重を上げるためには、支持脚の先端部分の強度を上げるのが最も効果的と考えられる。そして、支持脚の先端部分の強度を上げるためには、支持脚の外周側面を、樋形状の要素部材を樋形状の開放された側の面を内側に向けて、要素部材の側端同士を接続した形状としておくことが効果的であり、特に、要素部材の先端部分の形状が、樋形状の底面の横幅と側面の横幅とが実質的に同寸法の要素部材を用いることが効果的であると考えられる。もっとも、支持脚の太さが変わらないようにしようとすると、1つの支持脚を形成する要素部材の本数が多くなるほど、それぞれの要素部材の断面を小さくする必要がある。そして、要素部材の断面が小さ過ぎても大き過ぎても、支持脚の強度を上げる効果が得られなくなることが分かっている。従って、支持脚の外周側面を、6本または8本または10本の要素部材を用いて形成されるような形状として、更に、一つおきの要素部材の先端側を延長して嵌合凸部を形成して、嵌合凸部の断面形状を、樋形状を形成する底面および底面の両側の二つの側面と、二つの側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状としておけば、支持脚の先端部分の強度を上げることができる。その結果、支持脚を太くすることなく支持脚の強度を増加させて、より大きな荷重に耐えることが可能な水貯留槽用の構造部材を提供することが可能となる。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明の第2の水貯留槽用の構造部材は、次の構成を採用した。すなわち、
基台と、該基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材において、
前記支持脚は、該支持脚の外周側面が、
断面がコの字型の樋形状であって前記基台から立設された複数本の要素部材を、前記樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、前記要素部材の側端同士が接続された形状となっており、
前記要素部材は、前記樋形状の底面の横幅が根元側から先端側に向かって狭くなると共に、先端部分では、前記樋形状の前記底面の横幅が、前記樋形状の側面の横幅に対して、1倍から2倍の寸法となっており、
前記支持脚は、6本の前記要素部材によって形成されており、
複数本の前記要素部材の中で一つおきの前記要素部材には、先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、
前記嵌合凸部の断面形状は、前記樋形状を形成する前記底面および前記底面の両側の二つの前記側面と、二つの前記側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている
ことを特徴とする。
【0013】
詳細には後述するが、支持脚を形成する要素部材は、先端部分での樋形状の側面の横幅に対して、樋形状の底面の横幅が長くなるほど、支持脚の先端部分の強度を上げる効果が小さくなることが分かっている。また、支持脚を形成する要素部材の本数と、支持脚の先端部分の強度を上げる効果との関係は、6本の場合が最も効果が大きいことが分かっている。従って、要素部材の本数が6本の場合は、先端部分で樋形状の底面の横幅が、側面の横幅に対して1倍から2倍の要素部材を用いた場合でも、支持脚の先端部分の強度を上げることができる。その結果、支持脚を太くすることなく、より大きな荷重に耐え得る水貯留槽用の構造部材を提供することが可能となる。
【0014】
また、上述した課題を解決するために、本発明の第3の水貯留槽用の構造部材は、次の構成を採用した。すなわち、
基台と、該基台の裏面から立設されて該基台を支える支持脚とを備え、積み上げられた状態で複数配置されることによって、水貯留槽の水貯留空間を形成する水貯留槽用の構造部材において、
前記支持脚は、該支持脚の外周側面が、
断面がコの字型の樋形状であって前記基台から立設された複数本の要素部材を、前記樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、前記要素部材の側端同士が接続された形状となっており、
前記要素部材は、前記樋形状の底面の横幅が根元側から先端側に向かって狭くなると共に、先端部分では、前記樋形状の前記底面の横幅が、前記樋形状の側面の横幅に対して、1倍から1.5倍の寸法となっており、
前記支持脚は、8本の前記要素部材によって形成されており、
複数本の前記要素部材の中で一つおきの前記要素部材には、先端側が延長されることによって嵌合凸部が形成されており、
前記嵌合凸部の断面形状は、前記樋形状を形成する前記底面および前記底面の両側の二つの前記側面と、二つの前記側面の各々から延設されて内側に向かって末狭まりの両側平面とによって囲まれた形状となっている
ことを特徴とする。
【0015】
後述するように、支持脚を形成する要素部材の本数と、支持脚の先端部分の強度を上げる効果との関係は、6本の場合の次に、8本の場合の効果が大きいことが分かっている。従って、要素部材の本数が8本の場合は、先端部分で樋形状の底面の横幅が、側面の横幅に対して1倍から1.5倍の要素部材を用いた場合でも、支持脚の先端部分の強度を上げることができ、その結果、支持脚を太くすることなく、より大きな荷重に耐え得る水貯留槽用の構造部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施例の水貯留槽用の構造部材10の全体形状を示す斜視図である。
【
図2】本実施例の構造部材10を形成する単位ユニット11の詳細な形状を示した斜視図である。
【
図3】本実施例の構造部材10を積層して積層構造体1を形成する様子を示した説明図である。
【
図4】複数の構造部材10を積み重ねて保管する様子を示した説明図である。
【
図5】本実施例の構造部材10で採用されている支持脚13の外形形状を示す斜視図である。
【
図6】支持脚13の先端付近と中間付近と根元付近の三か所で取った支持脚13の断面形状を示す説明図である。
【
図7】従来の単位ユニット91の支持脚93の形状を示す説明図である。
【
図8】従来の支持脚93が潰れ変形する様子を示す説明図である。
【
図9】従来の支持脚93で潰れ変形を最も効果的に抑制可能と考えられる支持脚93の補強位置を示す説明図である。
【
図10】従来の支持脚93では先端部分での変形が潰れ変形を引き起こすと考えられる理由についての説明図である。
【
図11】本実施例の支持脚13を形成する要素部材14の形状を示す説明図である。
【
図12】1つの支持脚13を形成する要素部材14の使用可能な本数には許容範囲が存在することを示す説明図である。
【
図13】第1変形例の要素部材14についての説明図である。
【
図14】第1変形例の他の態様の要素部材14についての説明図である。
【
図15】第2変形例の支持脚13についての説明図である。
【
図16】第2変形例の支持脚13の強度が増加する理由を示す説明図である。
【
図17】支持脚13の先端に形成された嵌合凸部15と、その嵌合凸部15が嵌合する他の支持脚13の嵌合凹部14dとの対応関係を示す説明図である。
【
図18】第3変形例の支持脚13に形成された嵌合凸部15の形状についての説明図である。
【
図19】第3変形例の支持脚13に形成された嵌合凸部15の形状についての望ましい条件を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施例の水貯留槽用の構造部材10の全体形状を示す斜視図である。本実施例の構造部材10はPP(ポリプロピレン)等の硬質樹脂製の4つの単位ユニット11が配列された構造となっており、それぞれの単位ユニット11は矩形形状の基台12と、基台12の裏面の四隅の位置から下方に向けて立設された4つの支持脚13とを備えている。4つの基台12は縦横に二列の田の字状に配列されており、隣接する基台12の辺同士が図示しない架橋部で連結させた構造となっている。このため、架橋部を切断することで、1つの構造部材10を比較的容易に、二分割あるいは四分割することが可能となっている。
【0018】
図2は、本実施例の構造部材10を形成する単位ユニット11の詳細な形状を示した斜視図である。単位ユニット11の基台12は、矩形形状の板状部材12aの両面から、板状のリブ12bを格子状に立設させて強度を持たせた構造となっており、基台12の四隅の位置からは、下方に向けて支持脚13が立設されている。また、図面が煩雑となるため図示は省略しているが、格子状のリブ12bで囲まれた部分の板状部材12aの中央には、貫通孔が形成されている。
【0019】
支持脚13は中空な構造となっており、支持脚13が基台12に接続した位置には、支持脚13の内部の空間が基台12の板状部材12aに開口することによって、大きな開口部12cを形成している。尚、本実施例の構造部材10は4つの単位ユニット11を接続したものであるから、単位ユニット11の基台12は本発明の「基台」にも該当し、単位ユニット11の支持脚13は本発明の「支持脚」にも該当する。また、本実施例の支持脚13は特殊な形状となっているが、この点については後ほど詳しく説明する。更に、支持脚13の内部は単純な中空構造とするのではなく、支持脚13の内壁面から補強リブを突設させてもよい。尚、後述するように支持脚13は、基台12の開口部12cから他の支持脚13を挿入できる構造(ネスティング構造)としておく必要があり、単純に内壁面から補強リブを突設させると他の支持脚13を挿入できなくなるため、ネスティング構造にできなくなる。しかし、支持脚13の先端側であれば、内壁面から補強リブを突設させても、他の支持脚13の挿入に支障を来たすことがないため、ネスティング構造を維持したまま、内壁面から補強リブを突設させることができる。
【0020】
図3は、本実施例の構造部材10を積層する様子を示した説明図である。図示した例では、上下を逆さまにした状態で複数の構造部材10を平面状に配列し、その上に、複数の構造部材10を通常の向きで載置する。この時、上下を逆さまにした下側の構造部材10の支持脚13と先端と、通常の向きの上側の構造部材10の支持脚13の先端とを突き合わせるようにして、複数の構造部材10を載置する。そして、通常の向きの上側の構造部材10の基台12の上には、上下を逆さまにした構造部材10の基台12を載置する。このようなことを繰り返して構造部材10を積み重ねることによって、複数の構造部材10が何層にも積層された大きな積層構造体1を形成することができる。このような積層構造体1を地中に形成すれば、水貯留槽として利用することができる。
【0021】
また、構造部材10の支持脚13は、根元側から先端側に向かって細くなる先細形状となっており、しかも支持脚13が中空となっている。このため構造部材10は、構造部材10の支持脚13を、他の構造部材10の支持脚13の内側に挿入して積み重ねることが可能なネスティング構造となっている。このようにして複数の構造部材10を積み重ねれば、多数の構造部材10を小さな空間に収納しておくことができる。
図3に示した例では12個の構造部材10を使用しているが、
図4に示すように小さく纏めることができる。その結果、水貯留槽を設置するために多数の構造部材10が必要となる場合でも、それらの構造部材10を設置場所まで容易に搬送することができる。本実施例の構造部材10では、ネスティング構造を維持しながら支持脚13に十分な強度を持たせるために、以下のような特殊な形状の支持脚13を採用している。
【0022】
図5は、本実施例の構造部材10で採用されている支持脚13の外形形状を示す斜視図である。
図5(a)には、単位ユニット11の上下の向きを逆さまにした状態が示されている。単位ユニット11を逆さまにすると、基台12の四隅から4本の支持脚13が立設した状態となる。
図5(b)には、その中の1本の支持脚13の外形形状が拡大して示されている。
図5(b)に示すように、本実施例の支持脚13は、複数本の要素部材14を束ねたような形状となっている。図示した例では6本の要素部材14が環状に束ねられており、その内で1つおきに存在する3本の要素部材14には、先端に嵌合凸部15が突設されている。そして、嵌合凸部15が突設されていない3本の要素部材14の先端は、嵌合凸部15に対して窪んだ状態となって、嵌合凹部14dを形成する。尚、嵌合凸部15は要素部材14と一体に形成されてはいるが、あくまでも嵌合凸部15は要素部材14の付加物である。従って、
図5に示した例では、6本の要素部材14を束ねて形成された部分が、本発明における「支持脚」に対応する。
【0023】
図6は、支持脚13の先端付近(
図5(b)のA-A位置)、中間付近(
図5(b)のB-B位置)、根元付近(
図5(b)のC-C位置)の三か所で断面を取ることによって、支持脚13の詳細な形状を示した説明図である。
図6(a)には、先端付近での支持脚13の断面形状が示されている。図示されるように、支持脚13の断面は、6つの要素部材14を寄せ集めた形状となっており、それぞれの要素部材14の断面形状はコの字型形状となっている。ここで、コの字型形状とは、中央の辺(以下、センタ辺)の両側から側辺(以下、サイド辺)を立設させた形状である。6つの要素部材14は、コの字型の開放された側を内側に向けた状態で、隣接する要素部材14のサイド辺の先端同士が接続されている。また、支持脚13の先端付近では、センタ辺の長さLcと、サイド辺の長さLsとが、ほぼ同じ寸法となっている。
【0024】
尚、実際の支持脚13では、コの字型形状を形成するセンタ辺とサイド辺との接続部分が円弧状に形成されている。また、サイド辺と隣のコの字型形状のサイド辺との接続部分も円弧状に形成されている。このため、センタ辺の長さLcやサイド辺の長さLsが分かり難いことがあるが、このような場合は、センタ辺とサイド辺とが(円弧状の部分を介さず)直接接続されている場合を想定し、更に、サイド辺と隣のサイド辺とが(円弧状の部分を介さず)直接接続されている場合を想定して、センタ辺の長さLcやサイド辺の長さLsを決めることができる。
【0025】
図6(b)には、中間付近(
図5(b)のB-B位置)での支持脚13の断面形状が示されている。中間付近でも、支持脚13の断面は、6つのコの字型形状の要素部材14を、コの字型の開放された側を内側に向けた状態で、隣接する要素部材14のサイド辺の先端同士が接続された形状となっている。また、支持脚13の中間付近では、サイド辺の長さLsは先端付近でのサイド辺の長さとほぼ同じであるが、センタ辺の長さLcは、先端付近でのセンタ辺の長さよりも延長されている。
【0026】
図6(c)には、根元付近(
図5(b)のC-C位置)での支持脚13の断面形状が示されている。根元付近でも、上述した先端付近、および中間付近と同様に、支持脚13の断面は、6つのコの字型形状の要素部材14が接続された形状となっている。また、支持脚13の根元付近では、サイド辺の長さLsは中間付近でのサイド辺の長さとほぼ同じであるが、センタ辺の長さLcは、中間付近でのセンタ辺の長さよりも更に延長されている。本実施例の支持脚13がこのような形状となっているのは、単位ユニット11のネスティング構造も維持しながら支持脚13に十分な強度を持たせるためである。本願の発明者の考えによれば、支持脚13をこのような形状とすることで、支持脚13を太くしたり、支持脚13の肉厚を上げたりすることなく(その結果として重量も増加させることなく)、支持脚13の強度を向上させることができ、更に、単位ユニット11のネスティング構造も維持することができる。この形状は、本願の発明者が、従来とは全く逆の視点から支持脚13の形状を見直すことによって始めて創出されたものであるが、この点について説明する準備として、従来の構造部材の支持脚の形状について簡単に説明する。
【0027】
図7は、従来の構造部材を形成する単位ユニット91の大まかな形状を示す斜視図である。従来の構造部材は、このような単位ユニット91を縦横二列に配列して、隣接する単位ユニット91同士を接続することによって形成されている。
図7では、支持脚93の形状が分かり易いように、単位ユニット91が、上下を逆さまにした状態で表示されている。図示されるように、従来の単位ユニット91の支持脚93は、矩形形状の基台92の四隅の位置から立設されている。また、支持脚93の形状は、矩形断面で、先端になるほど細くなった角柱形状となっている。
【0028】
図8に示すように、従来の構造部材は上方から限界以上の荷重が加わると、単位ユニット91の支持脚93が破損することが分かっている。また、破損の態様は、支持脚93の軸心の姿勢を保ったままで、支持脚93が潰れるように変形することが分かっている。そして、このような潰れ変形が生じる箇所は、支持脚93の中間付近の少し先端側の範囲(
図8(a)中で斜線を付した範囲)であり、更に、潰れ変形の態様は、
図8(b)に破線で表示したように、支持脚93の向かい合う側面が外側に向かって大きく膨らんで、残りの向かい合う側面が内側に向かって大きく窪むように変形することが分かっている。このため、従来は、支持脚93の強度を上げる必要が生じた場合には、潰れ変形が生じ易い箇所(すなわち、支持脚93の中間付近)の強度を上げることを目的として、支持脚93の全体の肉厚を上げたり、根元から中間付近を超える位置までの範囲に補強リブを形成したりすることが常識であった。
【0029】
しかし、本願の発明者の考えによれば、本当に強度を上げる必要があるのは、潰れ変形し易い中間付近ではなく、潰れ変形が起きない先端付近である(
図9参照)。このように考える理由は以下のようなものである。先ず、
図4を用いて前述したように構造部材10はネスティング構造とする必要があるため、支持脚93は中空で、且つ、先細形状に形成される。従って、支持脚93の断面積は先端付近が最も小さくなっており、荷重による圧力が最も大きくなるのは先端付近であり、最も変形し易くなっているのも先端付近である。しかし、実際に潰れ変形が生じるのは支持脚93の中間付近となっている。この理由は、変形するのは先端付近であっても、その変形による影響が最も現れ易いのが支持脚93の中間付近であり、このため、中間付近で潰れ変形が生じ易くなっていると考えられる。この点について、より詳しく説明する。
【0030】
多くの場合、支持脚93にかかる荷重は、支持脚93の側面に直接かかるのではなく、支持脚93の天井部分にかかった後、天井部分を介して側面に伝わる。従って、
図10に示すように、荷重を受けて支持脚93の天井部分93aが僅かに撓み、その影響で支持脚93の側面93bが外側に向けて膨らむように変形する。側面93bが膨らむ変形も僅かなものであるが、天井部分93aから離れるに従って変形の影響は大きくなる。このため、支持脚93の中間付近では変形の影響が大きくなり、その結果として、支持脚93が荷重に耐え切れずに潰れ変形が生じるものと考えられる。このような考察を踏まえれば、支持脚93の先端部分で側面93bが外側に膨らむ変形を抑え込んでおけば、支持脚93の潰れ変形を抑制することができる筈である。その結果、支持脚93の全体の肉厚を上げたり、根元から中間付近までの範囲に補強リブを形成したりしなくても、支持脚93の強度を効果的に増加させることが可能と考えられる。
【0031】
本願の発明者は、以上のような着想に基づいて更に検討を重ねた結果、
図11に示すような樋形状の要素部材14を組み合わせて、支持脚13を形成することを考え出した。図示したように、要素部材14は断面がコの字型形状となっており、全体が樋形状となっている。加えて、樋形状の底面14aの横幅(コの字型形状のセンタ辺14cに対応)は、要素部材14の下方に行くほど大きくなるが、樋形状の側面14bの横幅(コの字型形状のサイド辺14sに対応)は、要素部材14の上端から下端までほぼ同じとなっている。
【0032】
そして、支持脚13の形状を、
図7に示した従来の支持脚93のような単純な矩形断面の角柱形状とするのではなく、複数本の要素部材14を、樋形状の開放した側が内側となる向きに並べて、隣接する要素部材14の側面14bを端部で接続して得られるような形状とすることを考えた。
図5および
図6を用いて前述した本実施例の支持脚13は、このようにして形成されたものである。
【0033】
このようにして形成された本実施例の支持脚13は、要素部材14の底面14aが外側に膨らむように変形しようとしても(
図10中の破線を参照)、底面14aの両側の側面14bによって変形を抑制することができる。加えて、要素部材14の底面14aの横幅は上方に行くほど狭くなっているので、要素部材14の上端付近では、底面14aが膨らむ変形をほぼ完全に抑制することができる。また、仮に、要素部材14の上端付近で、底面14aの横幅(
図11中のLc)よりも側面14bの横幅(
図11中のLs)の方が長くなると、今度は、要素部材14の側面14bが外側に膨らむように変形する虞が生じるが、本実施例の要素部材14では、上端付近の底面14aの横幅(
図11中のLc)と側面14bの横幅(
図11中のLs)とがほぼ同じ長さになっている。このため、要素部材14の側面14bが外側に膨らむ変形も、ほぼ完全に抑制することができる。
【0034】
また、このような着想に基づいて実際に支持脚13を試作して実験してみると、支持脚13を形成するために使用可能な要素部材14の本数には制約が存在しており、6本から10本、望ましくは6本~8本が良いことが判明した。以下では、この理由について説明する。
【0035】
図12は、1つの支持脚13を形成する要素部材14の本数を4個~12個の範囲で変更して支持脚13を形成し、それらの支持脚13の先端付近(
図5(b)中のA-A位置)の断面形状を示した説明図である。尚、
図12では、支持脚13の太さを従来の支持脚93と同じであるとしている。
図12から直ちに了解できるように、1つの支持脚13を形成する要素部材14の本数が多くなるほど、1本の要素部材14の断面は小さくしなければならなくなる。
【0036】
たとえば、
図12(a)には、4本の要素部材14を用いた場合が示されているが、支持脚13の太さを従来の支持脚93と同じとするためには、センタ辺14cの長さLcおよびサイド辺14sの長さLsの長い要素部材14を使用する必要が生じる。そして、センタ辺14cの長さLcおよびサイド辺14sの長さLsが長くなると、要素部材14の底面14aや側面14bが外側に膨らむ変形が起こり易くなる。これを避けようとして、小さな断面の要素部材14(すなわち、センタ辺14cの長さLcおよびサイド辺14sの長さLsが短い要素部材14)を使用すると、支持脚13の太さが細くなり、その結果、支持脚13の強度が低下してしまう。従って、要素部材14の本数が4本の場合は、本願の発明者の着想を十分に活かすことが困難である。
【0037】
図12(b)には6本の要素部材14を用いて支持脚13を形成した場合が示されており、
図12(c)には8本の要素部材14を用いた場合が、
図12(d)には10本の要素部材14を用いた場合が示されている。
図12(b)に示した6本の要素部材14を用いた場合が最も大きな効果が得られるが、
図12(c)に示した8本の要素部材14を用いた場合でもほぼ同等の効果が得られる。また、
図12(d)に示した10本の要素部材14を用いた場合は、それなりの効果はみられるが、6本あるいは8本の要素部材14を用いた場合に比べると小さくなる。
【0038】
使用する要素部材14の本数を10本に増やすと効果が減少する理由は、要素部材14の上端付近でのサイド辺14sの長さが短くなるためと考えられる。すなわち、
図11を用いて前述したように、要素部材14の側面14bは、底面14aが外側に膨らもうとする変形を抑制する効果を有している。そして、この効果が最も必要とされるのは、支持脚13の先端付近(要素部材14の上端付近)と考えられる。ここで、
図12(b)~
図12(d)を比較すれば明らかなように、要素部材14の上端でのサイド辺14sの長さは、要素部材14の本数を6本から8本、10本と増やすに従って短くなる。その結果、要素部材14の底面14aが外側に膨らもうとする変形を抑制することが困難になるためと考えられる。
【0039】
また、
図12(e)には、12本の要素部材14を用いて支持脚13を形成した場合が示されている。12本の要素部材14を用いた場合は、要素部材14の上端でのサイド辺14sの長さが短くなる。このため、要素部材14の底面14aが外側に膨らもうとする変形を抑制することが困難となり、要素部材14の潰れ変形を抑制する効果が得られなくなる。以上のことから、本願の発明者の着想に基づいて支持脚13の潰れ変形を防止するためには、1つの支持脚13を形成するために使用する要素部材14の本数を、望ましくは6~8本、多くても10本までとする必要があると考えられる。
【0040】
以上に詳しく説明したように、大きな荷重がかかっても支持脚13が潰れないようにするためには、支持脚13の先端付近の強度を増加させることが重要であり、そのためには、
図11に示すような形状の複数本の要素部材14を用いて、支持脚13を形成すれば良い。ここで、
図11に示した要素部材14は、上端付近でのセンタ辺14cの長さLcとサイド辺14sの長さLsとがほぼ同じであり、このような要素部材14を用いることで、支持脚13の先端付近の強度を確実に増加させることができる。また、1つの支持脚13を形成するための要素部材14の本数が多くなると、要素部材14の上端付近でのサイド辺14sが短くなるため、要素部材14の底面14aが外側に膨らむ変形を十分に抑制することができなくなる。このため、要素部材14の本数は6~8本(多くても10本まで)とする必要がある。
【0041】
もっとも、要素部材14の本数が10本の場合でも支持脚13の強度を上げる効果があるということは、要素部材14のサイド辺14sの長さが、
図12(d)に示した要素部材14の本数が10本の場合の長さLs10程度あれば、要素部材14の底面14aが外側に膨らむ変形を抑制できるということである。従って、
図11に示したように、要素部材14の上端付近でのセンタ辺14cの長さLcとサイド辺14sの長さLsとは、必ずしも同じである必要は無く、
図12(d)中のサイド辺14sの長さLs10程度の長さを確保できるのであれば、サイド辺14sよりもセンタ辺14cの方が長くなっても、支持脚13の強度を上げる効果が得られると考えられる。
【0042】
図13は、上述した考え方に基づいて、サイド辺14sよりもセンタ辺14cを長くした第1変形例の要素部材14を例示した説明図である。
図13(a)には第1変形例の要素部材14の外形形状が示されている。図示した第1変形例の要素部材14は、上端付近でのセンタ辺14cの長さLcが、サイド辺14sの長さLsに対して、約2倍の長さに設定されている。
図13(b)には、このような第1変形例の要素部材14を6本、用いて形成した支持脚13の先端付近の断面形状が示されている。図示されているように、支持脚13の先端付近でのサイド辺14sの長さは、
図12(d)中のサイド辺14sの長さLs10とほとんど同じとなる。逆に言えば、6本の要素部材14を用いて支持脚13を形成する場合、要素部材14の上端でのセンタ辺14cの長さLcを、サイド辺14sの長さLsの2倍まで長くしても、支持脚13の強度を上げることが可能と考えられる。
【0043】
図14は、サイド辺14sよりもセンタ辺14cを長くした第1変形例の他の態様の要素部材14を例示した説明図である。
図14(a)には、第1変形例の他の態様の要素部材14の外形形状が示されている。図示した他の態様の要素部材14は、上端付近でのセンタ辺14cの長さLcが、サイド辺14sの長さLsに対して、約1.5倍の長さに設定されている。
図14(b)には、このような他の態様の要素部材14を8本、用いて形成した支持脚13の先端付近の断面形状が示されている。図示されているように、支持脚13の先端付近でのサイド辺14sの長さは、
図12(d)中のサイド辺14sの長さLs10とほとんど同じとなる。逆に言えば、8本の要素部材14を用いて支持脚13を形成する場合、要素部材14の上端でのセンタ辺14cの長さLcを、サイド辺14sの長さLsの1.5倍まで長くしても、支持脚13の強度を上げることが可能と考えられる。
【0044】
また、上述したように本実施例および第1変形例の支持脚13は、外周側面を形成する要素部材14の先端が延長されることによって嵌合凸部15が形成されており、嵌合凸部15の先端には平坦な面(以下、当接面15a)が形成されている(
図5参照)。ここで、嵌合凸部15の当接面15aと、要素部材14を延長した部分(以下、嵌合凸部15の外側面15b)との接続部分の半径よりも、嵌合凹部14dと要素部材14との接続部分の半径を大きな寸法としておけば、支持脚13の強度を増加させることができる。
【0045】
図15は、嵌合凹部14dと要素部材14との接続部分の半径が、嵌合凸部15の当接面15aと外側面15bとの接続部分の半径よりも大きな寸法に設定された第2変形例の支持脚13についての説明図である。図示したように、第2変形例の支持脚13では、嵌合凹部14dと要素部材14との接続部分の半径R1(以下では、嵌合凹部14dの外側半径R1と称する)が、嵌合凸部15の当接面15aと嵌合凸部15の外側面15bとの接続部分の半径R2(以下では、当接面15aの外側半径R2と称する)よりも大きくなっている。こうすれば、以下の理由から、支持脚13の強度を増加させることが可能である。
【0046】
先ず前述したように、支持脚13は先細形状となっており、更に、嵌合凸部15の外側面15bは要素部材14の先端を延長することによって形成されている。このため、嵌合凸部15の外側面15bは、延長前の要素部材14よりも内側(支持脚13の中心軸側)に位置することになる。しかし、このことは、支持脚13の先端同士を突き合せて複数の構造部材10を積層する構造では、支持脚13の強度を維持する観点からすると、あまり望ましいことではない。
【0047】
図16は、下側の構造部材10の支持脚13の先端と、上側の構造部材10の支持脚13の先端とを突き合せて2つの構造部材10を積み重ねたときに、2つの支持脚13の先端同士の嵌合部分を拡大して示した説明図である。
図16(a)には、嵌合凹部14dの外側半径R1と、嵌合凸部15の当接面15aの外側半径R2とが等しい場合が示されている。
【0048】
図16(a)に示すように、2つの構造部材10を積み重ねた場合、下側の構造部材10の支持脚13は上側の構造部材10からの荷重を支えることになるが、下側の支持脚13が受ける荷重は上側の支持脚13から入力される。特に、上側の支持脚13に嵌合凸部15が形成されている箇所では、上側の支持脚13の要素部材14から外側面15bを介して、下側の支持脚13の嵌合凹部14dに荷重が入力され、その荷重が嵌合凹部14dを経由して下側の支持脚13の要素部材14に入力される。また、上側の支持脚13に嵌合凹部14dが形成されている箇所では、上側の支持脚13の要素部材14からの荷重が、嵌合凹部14dを経由して下側の支持脚13の要素部材14に入力される。このように、嵌合凹部14dの外側半径R1と、嵌合凸部15の当接面15aの外側半径R2とが等しい場合は、上側の支持脚13の要素部材14からの荷重は、必ず上側または下側の嵌合凹部14dを経由して下側の支持脚13の要素部材14に入力される。その結果、嵌合凹部14dが陥没したり、あるいは嵌合凹部14dが撓んで、支持脚13の潰れ変形が生じ易くなったりする虞が生じる。
【0049】
一方、
図16(b)には、嵌合凹部14dの外側半径R1が、嵌合凸部15の当接面15aの外側半径R2よりも大きい場合が示されている。
図16(b)に示すように、嵌合凹部14dの外側半径R1を大きくしておけば、上側の支持脚13の要素部材14からの荷重を、上側または下側の嵌合凹部14dを介することなく、下側の支持脚13の要素部材14に入力することができる。すなわち、上側の支持脚13に嵌合凸部15が形成されている箇所では、上側の支持脚13の要素部材14から外側面15bを介して入力される荷重は、下側の支持脚13の外側半径R1の部分によって滑らかに要素部材14に導くことができる。また、上側の支持脚13に嵌合凹部14dが形成されている箇所では、上側の支持脚13の要素部材14から入力される荷重を、外側半径R1の部分によって下側の支持脚13の要素部材14に滑らかに導くことができる。このように、嵌合凹部14dを介することなく、下側の支持脚13の要素部材14に荷重を入力することができるので、嵌合凹部14dが陥没することがなく、あるいは嵌合凹部14dが撓んで支持脚13の潰れ変形が生じ易くなることもない。その結果、支持脚13の強度を増加させることが可能となる。
【0050】
また、上述した本実施例や第1変形例や第2変形例の構造部材10を用いて積層構造体1を形成する際には、
図3を用いて前述したように、上下が逆向きの複数の構造部材10を水平に配置した上に、本来の向きの複数の構造部材10を載置する。このとき、下側の支持脚13の先端に形成された嵌合凸部15が、上側の支持脚13の先端の嵌合凹部14dに嵌合し、上側の支持脚13の先端に形成された嵌合凸部15が、下側の支持脚13の先端の嵌合凹部14dに嵌合した状態となる。従って、支持脚13の嵌合凸部15は、必ず他の支持脚13の何れかの嵌合凹部14dに嵌合することになる。
【0051】
ここで、支持脚13の嵌合凸部15が、他の支持脚13の何れの嵌合凹部14dに嵌合するかは、下側の構造部材10に対する上側の構造部材10の向きに依って決定される。すなわち、上述したように上側の構造部材10は下側の構造部材10の上下を逆転させたものと一致するが、下側の構造部材10の上下を逆転させる態様には3つの態様が存在する。そして、上側の構造部材10が、下側の構造部材10を何れの態様で逆転させたものと一致するかによって、支持脚13の嵌合凸部15が他の支持脚13の何れの嵌合凹部14dに嵌合するかが決まることになる。
【0052】
図17は、下側の構造部材10の上下を逆転させる態様と、支持脚13の嵌合凸部15が嵌合する嵌合凹部14dとの関係を示す説明図である。
図17(a)には、構造部材10の上下を逆転させる態様が示されている。構造部材10の上下を逆転させる態様には、図中に白抜きの矢印で表したように、構造部材10の左右の何れかの辺を中心に反転させる態様(以下、左右方向に反転させる態様)と、図中に斜線付きの矢印で表したように、構造部材10の前後の何れかの辺を中心に反転させる態様(以下、奥方向(あるいは手前方向)に反転させる態様)と、図中に黒塗りの矢印で表したように、構造部材10を対角線方向に反転させる態様とが存在する。そして、構造部材10を反転させる態様によって、支持脚13の先端に形成された3つの嵌合凸部15が嵌合する嵌合凹部14dが決まってくる。
【0053】
図17(b)には、支持脚13の先端に形成された3つの嵌合凸部15と3つの嵌合凹部14dとが示されている。これらの嵌合凸部15を区別する必要がある場合には、それぞれ嵌合凸部15「K」、嵌合凸部15「M」、嵌合凸部15「N」と称することにする。同様に、これらの嵌合凹部14dを区別する必要がある場合には、それぞれ嵌合凹部14d「p」、嵌合凹部14d「q」、嵌合凹部14d「r」と称することにする。
【0054】
図17(a)の白抜きの矢印のように、構造部材10を左右方向に反転させる場合は、
図17(b)の嵌合凸部15「K」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「p」に嵌合し、嵌合凸部15「M」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「r」に嵌合し、嵌合凸部15「N」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「q」に嵌合する。また、
図17(a)の黒塗りの矢印のように、構造部材10を対角線方向に反転させる場合は、
図17(b)の嵌合凸部15「M」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「p」に嵌合し、嵌合凸部15「K」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「q」に嵌合し、嵌合凸部15「N」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「r」に嵌合することになる。
【0055】
一方、
図17(a)の斜線付きの矢印のように、構造部材10を奥方向(あるいは手前方向)に反転させる場合は、別の支持脚13を、中心軸を中心として時計回りに(あるいは反時計回りに)60度(あるいは、120度、180度)させておく必要がある。そして、例えば時計回りに60度回転させておいた場合は、
図17(b)の嵌合凸部15「M」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「q」に嵌合し、嵌合凸部15「K」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「r」に嵌合し、嵌合凸部15「N」は、別の支持脚13の嵌合凹部14d「p」に嵌合することになる。
【0056】
このように、支持脚13の先端に形成された嵌合凸部15は、別の支持脚13の3つの嵌合凹部14dの何れかに嵌合する。そして、嵌合凹部14dは、2つの嵌合凸部15の間に形成されている。そこで、嵌合凸部15は、支持脚13の中心軸に向かって末狭まりとなり、且つ、末狭まりとなった両側面が平面によって形成された形状としても良い。
【0057】
図18は、嵌合凸部15がこのような形状に形成された第3変形例の支持脚13についての説明図である。図示されるように、嵌合凸部15「K」、嵌合凸部15「M」、嵌合凸部15「N」は何れも、支持脚13の中心軸CLに向かって末狭まりの形状となっており、且つ、末狭まりとなった両側面が平面によって形成されている。こうすれば、嵌合凸部15が、別の支持脚13の何れの嵌合凹部14dに嵌合した場合でも、嵌合凸部15の末狭まりとなった両側の平面が、嵌合凹部14dを形成する両側の嵌合凸部15の平面と向き合うことになる。
【0058】
例えば、
図18の嵌合凸部15「K」では、末狭まりとなった部分の両側には平面Kp1および平面Kp2が形成されているが、この嵌合凸部15「K」が別の支持脚13の嵌合凸部15「M」と嵌合凸部15「N」との間の嵌合凹部14dに嵌合する場合、嵌合凸部15「K」の平面Kp1は嵌合凸部15「N」の平面Np1と向き合い、嵌合凸部15「K」の平面Kp2は嵌合凸部15「M」の平面Mp2と向き合うことになる。また、嵌合凸部15「K」が別の支持脚13の嵌合凸部15「K」と嵌合凸部15「N」との間の嵌合凹部14dに嵌合する場合は、嵌合凸部15「K」の平面Kp1は別の支持脚13嵌合凸部15「K」の平面Kp1と向き合い、嵌合凸部15「K」の平面Kp2は別の支持脚13の嵌合凸部15「N」の平面Np2と向き合うことになる。このように、嵌合凸部15と別の支持脚13の嵌合凸部15とは、常に平面の部分が向き合うことになる。このため、構造部材10の上に構造部材10を積み重ねる際に多少の位置ズレが生じて、嵌合凸部15同士が干渉した場合でも互いの平面で干渉することになるので、嵌合凸部15が破損する事態を防止することができる。
【0059】
加えて、上述した第3変形例の支持脚13では、複数の嵌合凸部15間で、末狭まり形状を形成する平面同士の位置関係が、次のような条件を満足するようにしてもよい。尚、説明の都合上、以下では、嵌合凸部15の末狭まり形状を形成する両側の平面のうち、嵌合凸部15から支持脚13の中心軸CLに向かって左側の平面を「左側平面」と称し、中心軸CLに向かって右側の平面を「右側平面」と称することにする。例えば、
図18の嵌合凸部15「M」については、平面Mp1が左側平面となり、平面Mp2が右側平面となる。
【0060】
図19は、第3変形例の支持脚13に形成された嵌合凸部15間で、末狭まり形状を形成する平面同士の位置関係を示した説明図である。先ず初めに、
図19(a)を参照して、嵌合凸部15の左側平面が、他の嵌合凸部15の平面との間で満たすべき位置関係を説明する。嵌合凸部15の左側平面は、嵌合凸部15から中心軸CLに向かって右側に存在する嵌合凸部15の右側平面と同一平面上にあり、且つ、その平面は、中心軸CLから嵌合凸部15に向かって、所定量だけオフセットしていることが望ましい。
図19(a)に示した例では、嵌合凸部15「M」の左側平面Mp1は、嵌合凸部15「N」の右側平面Np2と同一平面上にあり、且つ、左側平面Mp1(および右側平面Np2)は、中心軸CLから嵌合凸部15「M」側に所定量だけオフセットしていることが望ましい。同様なことは、嵌合凸部15「K」の左側平面Kp1や、嵌合凸部15「N」の左側平面Np1についても同様に当て嵌まる。
【0061】
次に、
図19(b)を参照して、嵌合凸部15の右側平面が、他の嵌合凸部15の平面との間で満たすべき位置関係を説明する。嵌合凸部15の右側平面は、嵌合凸部15から中心軸CLに向かって左側に存在する嵌合凸部15の左側平面と同一平面上にあり、且つ、その平面は、中心軸CLから嵌合凸部15に向かって、所定量だけオフセットしていることが望ましい。
図19(b)に示した例では、嵌合凸部15「M」の右側平面Mp2は、嵌合凸部15「K」の左側平面Kp1と同一平面上にあり、且つ、右側平面Mp2(および左側平面Kp1)は、中心軸CLから嵌合凸部15「M」側に所定量だけオフセットしていることが望ましい。同様なことは、嵌合凸部15「K」の右側平面Kp2や、嵌合凸部15「N」の右側平面Np2についても同様に当て嵌まる。
【0062】
支持脚13の先端の嵌合凸部15が、以上のような位置関係を満足するようにしておけば、複数の構造部材10を積み重ねた時に、下側の嵌合凸部15の側面と上側の嵌合凸部15の側面とが、必ず平面で向き合い、且つ、所定量の2倍の間隔を空けた状態で向き合うことになる。このため、構造部材10の上に構造部材10を積み重ねる際に多少の位置ズレが生じた場合でも、嵌合凸部15同士が干渉して破損する事態を確実に防止することが可能となる。
【0063】
以上、本実施例および各種の変形例の水貯留槽用の構造部材10について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…積層構造体、 10…構造部材、 11…単位ユニット、 12…基台、
12a…板状部材、 12b…リブ、 12c…開口部、 13…支持脚、
14…要素部材、 14a…底面、 14b…側面、 14c…センタ辺、
14d…嵌合凹部、 14s…サイド辺、 15…嵌合凸部、
15a…当接面15a、 15b…外側面。
【要約】
【課題】支持脚を太くすることなく、より大きな荷重に耐えることが可能な水貯留槽用の構造部材を提供する。
【解決手段】水貯留槽用の構造部材の荷重を受ける支持脚の外周側面を、複数本の要素部材が接続された形状とする。要素部材は、断面がコの字型の樋形状で、根元側から先端側に向かって樋形状の底面の横幅が狭くなっている。支持脚の外周側面は、これらの要素部材が、樋形状の開放された側の面を内側に向けた状態で、要素部材の側端同士が接続された形状となっている。更に、要素部材は、先端部分での樋形状の側面の横幅に対して、樋形状の底面の横幅が1倍~2倍の範囲にあり、支持脚の外周側面はこのような要素部材を6~10本の範囲の本数、用いて形成された形状となっている。
【選択図】
図5