(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-12
(45)【発行日】2025-09-24
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20250916BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20250916BHJP
【FI】
H01F7/16 D
H01F7/16 R
H01F7/16 E
H01F7/16 N
F16K31/06 305J
F16K31/06 305G
(21)【出願番号】P 2022069970
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2024-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘紀
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-108781(JP,A)
【文献】特開2013-168425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により磁力を発生するコイルと、
外側に前記コイルが配置され、内側にボアを有するステータコアと、
前記ボアにて、その軸方向へ往復動可能に配置され、外周に摺動部が配置されるバルブと、
前記ボアの内周に配置され、前記バルブが往復動するときに前記バルブの前記摺動部が摺動する被摺動部と
、を備え、
前記バルブを往復動させるために、前記コイルの発生する磁力により前記ステータコアが前記バルブを前記軸方向へ吸引するように構成される電磁弁において、
前記バルブの前記外周の一部が前記ステータコアとの間で磁気回路を形成し、前記磁気回路を形成しない前記バルブの前記外周の他部が前記摺動部とな
り、
前記バルブは一端部を含み、前記一端部の外周に前記磁気回路を形成しない前記摺動部が配置され、
前記バルブの前記一端部と対向する位置に前記バルブが着座可能な弁座が配置され、
前記被摺動部は、前記弁座と一体をなす非磁性のスリーブより構成され、
前記バルブの前記弁座に対する往復動が前記スリーブにより案内される
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
請求項
1に記載の電磁弁において、
前記バルブは
他端部を含み、前記
他端部の外周に前記磁気回路を形成しない前記摺動部が配置され、
前記被摺動部は、前記ステータコアと別体をなす非磁性のリングより構成される
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
請求項
1に記載の電磁弁において、
前記バルブは
他端部を含み、前記
他端部の外周に前記摺動部が配置され、
前記摺動部は、前記バルブと別体をなす非磁性のリングより構成される
ことを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、バルブを往復動させるためにコイルの発生する磁力によりステータコアがバルブを軸方向へ吸引するように構成した電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載される「リニアソレノイド」が知られている。このリニアソレノイドは、通電により磁力を発生するコイルと、軸方向へ摺動自在に支持されるプランジャと、内側に摺動穴を有するステータコアと、プランジャに生じる吸引力をステータコアの外部に伝えるシャフトとを備える。ステータコアは、コイルの発生する磁力によりプランジャを軸方向へ吸引する磁気吸引コア、プランジャと径方向の磁気の受け渡しを行う磁気受渡コア、及び磁気吸引コアと磁気受渡コアの直接的な磁束結合を阻害する第1磁気遮断部が一体に設けられるコアである。このリニアソレノイドにおいて、プランジャとシャフトは、プランジャとシャフトの直接的な磁束結合を阻害する磁気結合阻害手段を介して一体に設けられる。プランジャの外周面には、外径方向へ突出する第1凸部が設けられる。また、シャフトの外周面には、外径方向へ突出する第2凸部が設けられる。第1凸部と第2凸部は、ステータコアの摺動穴の内周面に対し直接摺動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のリニアソレノイドは、磁力による横力(サイドフォース)が小さい2ヶ所で凸部がステータコアの摺動穴にて摺動する構成になっているが、そのうち1ヶ所はサイドフォースが発生する箇所に挟まれた位置であり、ヒステリシスを低減する効果は小さかった。ここで、リニアソレノイドのヒステリシスを抑制するには、非磁性材による摺動によりサイドフォースを低減して摺動抵抗を小さくすることが有効である。例えば、シャフトによる摺動ではなく、プランジャとステータコアが直接摺動する構造にすれば、リニアソレノイドの体格を小さくできる一方、非磁性材による摺動にするために非磁性メッキや非磁性部材を追加する必要があった。また、上記リニアソレノイドのような磁束の少ない箇所で摺動する場合も完全な非磁性材による摺動ではないため、ヒステリシスを低減する効果は小さいと考えられる。
【0005】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、コイルの発生する磁力によりステータコアがバルブを軸方向へ吸引するように構成した電磁弁につき、その動作上のヒステリシスを効果的に低減することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、通電により磁力を発生するコイルと、外側にコイルが配置され、内側にボアを有するステータコアと、ボアにて、その軸方向へ往復動可能に配置され、外周に摺動部が配置されるバルブと、ボアの内周に配置され、バルブが往復動するときにバルブの摺動部が摺動する被摺動部と、を備え、バルブを往復動させるために、コイルの発生する磁力によりステータコアがバルブを軸方向へ吸引するように構成される電磁弁において、バルブの外周の一部がステータコアとの間で磁気回路を形成し、磁気回路を形成しないバルブの外周の他部が摺動部となり、バルブは一端部を含み、一端部の外周に磁気回路を形成しない摺動部が配置され、バルブの一端部と対向する位置にバルブが着座可能な弁座が配置され、被摺動部は、弁座と一体をなす非磁性のスリーブより構成され、バルブの弁座に対する往復動がスリーブにより案内されることを趣旨とする。
【0007】
上記技術の構成によれば、バルブがステータコアのボアにて軸方向へ往復動可能に配置され、バルブの外周に摺動部が配置され、ボアの内周に、バルブが往復動するときにバルブの摺動部が摺動する被摺動部が配置される。ここで、バルブの外周の一部がステータコアとの間で磁気回路を形成し、磁気回路を形成しないバルブの外周の他部が摺動部となっている。従って、バルブがステータコアのボアにて往復動するときには、バルブの摺動部が、それに対応するボアの被摺動部にて摺動するが、摺動部が磁気回路を形成しないバルブの外周に配置されるので、バルブに作用する磁力によるサイドフォースが小さくなる。更に、バルブの摺動部が摺動する被摺動部が、弁座と一体をなす非磁性のスリーブより構成されるので、非磁性の被摺動部を設けるために弁座が利用される。また、バルブの弁座に対する往復動がスリーブにより案内される。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、バルブは他端部を含み、他端部の外周に磁気回路を形成しない摺動部が配置され、被摺動部は、ステータコアと別体をなす非磁性のリングより構成されることを趣旨とする。
【0013】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、ステータコアにリングにより非磁性の被摺動部が設けられるので、その被摺動部と摺動部との間で磁気回路が形成されない。従って、バルブに作用する磁力によるサイドフォースが更に小さくなる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、バルブは他端部を含み、他端部の外周に摺動部が配置され、摺動部は、バルブと別体をなす非磁性のリングより構成されることを趣旨とする。
【0015】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、摺動部が、バルブと別体をなす非磁性のリングより構成されるので、その摺動部と被摺動部との間で磁気回路が形成されない。従って、バルブに作用する磁力によるサイドフォースが更に小さくなる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の技術によれば、コイルの発生する磁力によりステータコアがバルブを軸方向へ吸引するように構成した電磁弁につき、バルブの往復動に伴う摺動抵抗を低減することができ、電磁弁の動作上のヒステリシスを効果的に低減することができる。更に、電磁弁の部品点数増やすことなく非磁性の被摺動部を設けることができ、弁座に対するバルブの同軸精度を向上させることができる。
【0023】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に対し、電磁弁の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【0024】
請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に対し、電磁弁の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】第1実施形態に係り、
図1の電磁弁につき弁座の近傍を拡大して示す断面図。
【
図3】第1実施形態に係り、
図1の電磁弁につきリングの近傍を拡大して示す断面図。
【
図4】第1実施形態に係り、電磁弁につき、コイルへ通電される電流値と流体の流量との関係を示すグラフ。
【
図5】第2実施形態に係り、電磁弁につき弁座の近傍を示す
図2に準ずる断面図。
【
図6】第3実施形態に係り、電磁弁につき弁座の近傍を示す
図2に準ずる断面図。
【
図7】第4実施形態に係り、電磁弁につきリングの近傍を示す
図3に準ずる断面図。
【
図8】第5実施形態に係り、電磁弁につき弁座の近傍を示す
図6に準ずる断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、電磁弁を具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
[電磁弁の構成について]
図1に、この実施形態の電磁弁1を断面図により示す。この電磁弁1は、通電により磁力を発生するコイル2と、外側にコイル2が配置され、内側にボア12aを有する略筒状のステータコア3と、そのボア12aにて、その軸方向へ往復動可能に配置され、外周に摺動部21,22が配置される略筒状のバルブ4と、ボア12aの内周に配置され、バルブ4が往復動するときにその摺動部21,22が摺動する被摺動部31,32とを備える。コイル2は、樹脂製のケーシング5により覆われ、そのケーシング5の外側が磁性材より形成されるヨーク6により覆われる。ケーシング5の一部には、給電用のコネクタ7が形成される。
【0030】
ステータコア3は、磁性材より形成され、
図1において上側のコア本体11と、コア本体11から下方へ同軸に伸びる筒状のボディ12とから構成される。コア本体11は、その軸方向に伸びる中孔11aを有し、ボディ12は、その軸方向に伸びるボア12aを有する。バルブ4は磁性材より形成され、中孔4aと中孔4aから弁座14へ向けて貫通する先孔4bを有する。コア本体11とボディ12との間には、非磁性材より形成されるリング13が配置される。ボディ12の下端部には、バルブ4の下端部と対向する位置にてバルブ4が着座可能な弁座14が配置される。弁座14は、弁孔14aを有し、非磁性材より形成される。バルブ4の上端部とコア本体11の下端部との間には、バルブ4を弁座14に着座する方向(閉弁方向)へ付勢するスプリング15が設けられる。この電磁弁1は、コイル2への通電時に、各部材4,6,11,12の間で、
図1に破線で示すように磁気回路16が形成される。
【0031】
この電磁弁1は、バルブ4を往復動させるために、コイル2の発生する磁力によりステータコア3がバルブ4を軸方向へ吸引するように構成される。すなわち、電磁弁1を開弁させるときは、コイル2の発生する磁力によりステータコア3がバルブ4をスプリング15の付勢力に抗して軸方向へ吸引する。これにより、バルブ4が弁座14から離間(開弁)し、弁孔14aが開放される。この開弁状態では、弁孔14aと、バルブ4の中孔4a及びコア本体11の中孔11aが互いに連通し、その流路を流体が流れる。電磁弁1を閉弁させるときは、コイル2の磁力発生を停止し、ステータコア3によるバルブ4の吸引を停止する。これにより、スプリング15の付勢力によりバルブ4が弁座14に着座(閉弁)し、弁孔14aが閉塞する。この電磁弁1は、ステータコア3に対しバルブ4を往復動させる点でリニアソレノイドバルブを構成する。
【0032】
[摺動部と被摺動部について]
この実施形態の電磁弁1は、コイル2に対する電流値が同じ場合でも、電流が増加するときと減少するときとで、バルブ4の変位が異なるヒステリシス特性を有する。このヒステリシス特性は、バルブ4とボディ12との間の摺動抵抗が、バルブ4の動く方向とは逆向きに作用することに起因する。従って、バルブ4のボディ12に対する摺動抵抗を低減することがヒステリシス低減に有効となる。そこで、この実施形態では、バルブ4の摺動抵抗を低減するために、摺動部21,22と被摺動部31,32を次のように規定した。
【0033】
図2に、
図1の電磁弁1につき弁座14の近傍を拡大した断面図により示す。
図3に、
図1の電磁弁1につきリング13の近傍を拡大した断面図により示す。この実施形態では、
図1~
図3に示すように、バルブ4の外周の一部がボディ12との間で磁気回路16を形成し、その磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の他部が摺動部21,22となっている。また、ボディ12のボア12aの内周において、バルブ4の摺動部21,22が摺動する部分が被摺動部31,32となっている。
【0034】
すなわち、この実施形態では、
図1、
図2に示すように、ボディ12の下端部に対応するボア12aの内周が第1被摺動部31となっている。また、その第1被摺動部31と摺動するバルブ4の下端部の外周が、第1摺動部21となっている。
図2に示すように、バルブ4の下端部の外周の一部は、ボディ12との間で磁気回路16を形成し、その磁気回路16を形成しないバルブ4の下端部の外周の他部が、第1被摺動部31にて摺動自在に支持される第1摺動部21となっている。
図2において、第1摺動部21と第1被摺動部31の範囲を、2点鎖線楕円S1で囲んで示す。この実施形態では、第1被摺動部31は、弁座14と一体をなす非磁性のスリーブ14bより構成される。このスリーブ14bは、ボディ12の一部を非磁性にするためにボディ12とは別体に形成されるが、バルブ4が摺動する意味においてボディ12の一部を構成する。この実施形態で、弁座14のスリーブ14bは、ボディ12の下端部の内側に組み合わせられる。そして、この実施形態では、スリーブ14bの内周が、ボディ12の他の部分の内周よりもバルブ4の側へ若干張り出しており、バルブ4の第1摺動部21がスリーブ14bの第1被摺動部31にて摺動自在に支持される。
【0035】
一方、この実施形態では、
図1、
図3に示すように、ボディ12の上端部に対応するリング13の内周が第2被摺動部32となっている。また、その第2被摺動部32と摺動するバルブ4の上端部の外周が、第2摺動部22となっている。
図3に示すように、バルブ4の上端部の一部がコア本体11との間で磁気回路16を形成するが、磁気回路16を形成しないバルブ4の上端部の外周の他部が、第2被摺動部32にて摺動自在に支持される第2摺動部22となっている。
図3において、第2摺動部22と第2被摺動部32の範囲を、2点鎖線楕円S2で囲んで示す。この実施形態では、
図3に示すように、リング13の内周が、ボディ12の内周よりもバルブ4の側へ若干張り出しており、バルブ4の第2摺動部22がリング13の第2被摺動部32にて摺動自在に支持される。
【0036】
この実施形態では、厳密には、ボディ12のボア12aの内周は、第1被摺動部31と第2被摺動部32のみでバルブ4の外周の第1摺動部21と第2摺動部22に接しており、それ以外の分部では、バルブ4の外周とは接していない。すなわち、各被摺動部31,32以外の部分では、バルブ4の外周とボア12aの内周との間に微細な隙間が形成されている。
【0037】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、バルブ4は一つの部材で形成され、ステータコア3(ボディ12)のボア12aに収容され、そのボア12aにて軸方向へ往復動可能に配置される。また、バルブ4の外周に摺動部21,22が配置され、ボア12aの内周に、バルブ4が往復動するときにバルブ4の摺動部21,22が摺動する被摺動部31,32が配置される。ここで、バルブ4の外周の一部がステータコア3との間で磁気回路16を形成し、磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の他部が摺動部21,22となっている。従って、バルブ4がステータコア3のボア12aにて往復動するときには、バルブ4の各摺動部21,22が、それに対応するボア12aの各被摺動部31,32にて摺動するが、各摺動部21,22が磁気回路16を形成しないバルブ4の外周に配置されるので、バルブ4に作用する磁力によるサイドフォースが小さくなる。このため、コイル2の発生する磁力によりステータコア3がバルブ4を軸方向へ吸引するように構成した電磁弁1につき、バルブ4の往復動に伴う摺動抵抗を低減することができ、電磁弁1の動作上のヒステリシスを効果的に低減することができる。
【0038】
この実施形態の構成によれば、第1被摺動部31が非磁性材よりなるスリーブ14bにより形成されるので、第1摺動部21と第1被摺動部31との間で磁気回路が形成されない。また、第2被摺動部32が非磁性材よりなるリング13により形成されるので、第2摺動部22と第2被摺動部32との間で磁気回路が形成されない。すなわち、バルブ4の各摺動部21,22は非磁性部で摺動する。そのため、バルブ4に作用する磁力によるサイドフォースが更に小さくなる。この意味で、電磁弁1の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【0039】
この実施形態の構成によれば、バルブ4の第1摺動部21が摺動する第1被摺動部31が、弁座14と一体をなす非磁性のスリーブ14bより構成されるので、非磁性の第1被摺動部31を設けるために弁座14が利用される。また、バルブ4の弁座14に対する往復動がスリーブ14bにより案内される。このため、電磁弁1の部品点数増やすことなく非磁性の第1被摺動部31を設けることができ、弁座14に対するバルブ4の同軸精度を向上させることができる。
【0040】
この実施形態の構成によれば、ステータコア3(ボディ12)にリング13により非磁性の第2被摺動部32が設けられるので、その被摺動部32と第2摺動部22との間で磁気回路が形成されない。従って、その分だけバルブ4に作用する磁力によるサイドフォースが更に小さくなる。すなわち、この実施形態では、第1摺動部21と第2摺動部22の両方につき、バルブ4に作用する磁力によるサイドフォースが更に小さくなる。その意味で、電磁弁1の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【0041】
図4に、この実施形態の電磁弁1につき、コイル2へ通電される電流値と流体の流量との関係をグラフにより示す。
図4において、実線は本実施形態のヒステリシス特性を示し、破線は本実施形態の特徴を有しない対比例のヒステリシス特性を示す。
図4において、ある電流値α1での流量変化を比較したところ、本実施形態の流量変化ΔQ1は、対比例の流量変化ΔQ2に対し、「40~70%」の低減効果を示した。
【0042】
<第2実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0043】
[摺動部及び被摺動部について]
この実施形態では、第1被摺動部31の構成の点で第1実施形態と異なる。
図5に、電磁弁1につき弁座14の近傍を
図2に準ずる断面図により示す。
図5に示すように、この実施形態では、弁座14のスリーブ14bを第1実施形態のそれより短くし、スリーブ14bがバルブ4と接しないようになっている。その代わり、磁気回路16を形成しないバルブ4の第1摺動部21が摺動するボア12aの内周が第1被摺動部31となっている。
図5に示すように、磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の第1摺動部21が摺動するボア12aの内周の部分は、その内径がボディ12の他の部分の内径よりも若干小さくなっている。従って、その分だけ、その内周の部分がボディ12の他の分部の内周よりもバルブ4の側へ張り出しており、この張り出し部分が第1被摺動部31となっている。つまり、この実施形態では、第1摺動部21と第1被摺動部31は、それぞれ磁性を有するバルブ4とボディ12との間に配置される。
【0044】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、第1実施形態とは異なり、第1被摺動部31が、ボディ12の非磁性の部分には配置されないものの、磁気回路16を形成しない磁束の少ない箇所に配置される。すなわち、バルブ4の第1摺動部21が非磁性部で摺動しないものの、磁束の少ない箇所で摺動し、その分だけ、バルブ4に作用する磁力によるサイドフォースが小さくなる。この意味で、電磁弁1につき、バルブ4の往復動に伴う摺動抵抗を低減することができ、電磁弁1の動作上のヒステリシスを効果的に低減することができる。
【0045】
<第3実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0046】
[摺動部及び被摺動部について]
この実施形態では、第1摺動部21の構成の点で前記第2実施形態と異なる。
図6に、電磁弁1につき弁座14の近傍を
図2に準ずる断面図により示す。
図6に示すように、この実施形態では、磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の第1摺動部21が、第1被摺動部31へ突出する凸部4cより構成される。この凸部4cは、バルブ4と一体に形成される。そして、その凸部4cが接触するボア12aの内周が第1被摺動部31となっている。この実施形態では、
図6に示すように、磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の第1摺動部21(凸部4c)が摺動するボア12aの内周の部分は、その内径がボディ12の他の部分の内径と同じになっている。
【0047】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、第2実施形態に対し、第1摺動部21が凸部4cより構成されるので、第1摺動部21の第1被摺動部31に対する接触面積が少なくなる。このため、電磁弁1につき、バルブ4の摺動抵抗を更に削減することができ、電磁弁1の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【0048】
<第4実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
[摺動部及び被摺動部について]
この実施形態では、第2摺動部21の構成の点で前記第1実施形態と異なる。
図7に、電磁弁1につきリング18の近傍を
図3に準ずる断面図により示す。
図7に示すように、この実施形態では、磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の第2摺動部22が、バルブ4とは別体をなす非磁性のリング18より構成される。
【0050】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、第1実施形態に対し、第2摺動部22が、バルブと別体をなす非磁性のリング18より構成されるので、第2摺動部22と第2被摺動部32との間で磁気回路が形成されない。従って、バルブ4に作用する磁力によるサイドフォースが更に小さくなる。このため、電磁弁1につき、バルブ4の摺動抵抗を更に削減することができ、電磁弁1の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【0051】
<第5実施形態>
次に、電磁弁を具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0052】
[摺動部及び被摺動部について]
この実施形態では、第1摺動部21の構成の点で前記第3実施形態と異なる。
図8に、電磁弁1につき弁座14の近傍を
図6に準ずる断面図により示す。
図8に示すように、この実施形態では、磁気回路16を形成しないバルブ4の外周の第1摺動部21に対応する第1被摺動部31が、第1摺動部21へ突出する凸部12bより構成される。この凸部12bは、ボディ12と一体に形成される。そして、その凸部12bが接触するバルブ4の外周が第1摺動部21となっている。
【0053】
[電磁弁の作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態の電磁弁1の構成によれば、第3実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。すなわち、第1被摺動部31が凸部12bより構成されるので、第1被摺動部31の第1摺動部21に対する接触面積が少なくなる。このため、電磁弁1につき、バルブ4の摺動抵抗を更に削減することができ、電磁弁1の動作上のヒステリシスを更に効果的に低減することができる。
【0054】
<別の実施形態>
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0055】
(1)前記各実施形態では、ステータコア3を、複数部品、すなわちコア本体11、ボディ12及びリング13より構成したが、ステータコアを一つの部品で構成することもできる。
【0056】
(2)前記第3実施形態では、バルブ4の第1摺動部21をバルブ4と一体の磁性材の凸部4cより構成したが、この凸部を非磁性に構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この開示技術は、流体流量を制御するために使用されるリニアソレノイドタイプの電磁弁に利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 電磁弁
2 コイル
3 ステータコア
4 バルブ
4c 凸部
12a ボア
12b 凸部
13 リング
14 弁座
14b スリーブ
16 磁気回路
18 リング
21 第1摺動部
22 第2摺動部
31 第1被摺動部
32 第2被摺動部