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特許7743495非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池
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  • 特許-非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-12
(45)【発行日】2025-09-24
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20250916BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20250916BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250916BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250916BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20250916BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/38 Z
H01M4/134
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023502358
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2022006688
(87)【国際公開番号】W WO2022181489
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021028420
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 翔
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175361(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/044930(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/239948(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/239652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/133
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、前記負極集電体上に設けられた負極活物質層と、を有する非水電解質二次電池用負極であって、
前記負極活物質層は、負極活物質として黒鉛粒子Aと、黒鉛粒子Bとを含み、かつ、前記黒鉛粒子A及び前記黒鉛粒子Bの合計質量に対する前記黒鉛粒子Aの含有量が互いに異なる、第1活物質層Xと第2活物質層Yとが前記負極集電体上に交互に配置されており、
前記黒鉛粒子Aの内部空隙率は前記黒鉛粒子Bの内部空隙率より小さく、前記第1活物質層Xにおける前記黒鉛粒子Aの前記含有量は、前記第2活物質層Yにおける前記黒鉛粒子Aの前記含有量より多くなっており、
前記第1活物質層Xの幅Wxと、前記第2活物質層Yの幅Wyとの比率Wx/Wyが0.03以上、3.13以下である、非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
前記黒鉛粒子Aの内部空隙率が5%以下であり、前記黒鉛粒子Bの内部空隙率が8%以上、20%以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
前記第1活物質層Xの幅Wxと前記第2活物質層Yの幅Wyの比率Wx/Wyが0.06以上、1.6以下である、請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
前記負極活物質層は、Si系材料を更に含んでいる、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極と、正極と、前記非水電解質二次電池用負極及び前記正極の間のセパレータと、を備える、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示は、非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材料を負極活物質として用いる非水電解質二次電池は、高エネルギー密度の二次電池として広く利用されている。また、電気自動車(EV)等の電源として用いられる非水電解質二次電池は、優れた充放電サイクル特性を有することが望まれる。
【0003】
特許文献1には、非水電解質二次電池において、帯状負極の活物質層における充填密度の小さな幅方向中央部と、その他の充填密度の大きな部分とを集電体上にストライプ状に配置した構成が記載されている。この構成により、帯状負極の幅方向中央部での電解液の分解及び活物質の劣化が起こりにくいので、優れた充放電サイクル特性が得られるとされている。
【0004】
特許文献2には、非水電解質二次電池において、充放電サイクルの改善のために、負極活物質層の表面に溝を形成することで電解液の浸透性を改善した構成が記載されている。
【0005】
特許文献3には、非水電解質二次電池において、負極活物質層を横切る複数の線に沿って負極集電体上に部分的に、平均粒径が大きい活物質粒子を含む第1活物質部を形成し、第1活物質部を覆うように平均粒径が小さい活物質粒子を含む第2活物質部を形成した構成が記載されている。この構成により、活物質粒子の平均粒径が大きい第1活物質部を通じて活物質層の中央部に電解液が浸透しやすいので、低温環境下での容量維持率が低下しにくいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-90980号公報
【文献】特開平9-298057号公報
【文献】特開2013-246900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池では、優れた充放電サイクル特性と高容量化とを両立する面から改善の余地がある。特許文献1に記載された構成では、負極の活物質層の一部に充填密度が低い領域が形成されるので、電池容量が低下してしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載された構成では、負極の溝の形成部分の活物質の充填密度が大きくなるので、溝の形成部分における電解液の浸透性を高めることは困難である。これにより、優れた充放電サイクル特性を得られるようにする面から、改善の余地がある。
【0009】
特許文献3に記載された構成では、負極の極板表面が第2活物質部の粒径の小さい活物質で覆われており、負極活物質層内から正極への電解液の移動が制限されるため、充放電サイクル特性の改善が限定される。また、高容量化を目的にシリコンなど膨張収縮の大きい活物質を第1活物質部の粒径の大きい活物質と併用すると充放電サイクルに伴い活物質粒子間の接触点が少なくなる。これにより、シリコンの膨張収縮に伴う接点の確保、つまり、導電性の確保の面で困難であり、優れた充放電サイクル特性と高容量化との両立が困難である。
【0010】
そこで、本開示の目的は、優れた充放電サイクル特性と高容量化とを両立することができる非水電解質二次電池用負極及び非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられた負極活物質層と、を有する非水電解質二次電池用負極であって、負極活物質層は、負極活物質として黒鉛粒子Aと黒鉛粒子Bとを含み、かつ、黒鉛粒子A及び黒鉛粒子Bの合計質量に対する黒鉛粒子Aの含有量が互いに異なる、第1活物質層Xと第2活物質層Yとが負極集電体上に交互に配置されており、黒鉛粒子Aの内部空隙率は黒鉛粒子Bの内部空隙率より小さく、第1活物質層Xにおける黒鉛粒子Aの含有量は、第2活物質層Yにおける黒鉛粒子Aの含有量より多くなっており、第1活物質層Xの幅Wxと、第2活物質層Yの幅Wyとの比率Wx/Wyが0.03以上、3.13以下である。
【0012】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質二次電池用負極及び正極の間のセパレータと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、非水電解質二次電池の優れた充放電サイクル特性と高容量化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の斜視図である。
図2】実施形態の一例である負極を含む電極体を示す概略斜視図である。
図3】実施形態の一例である負極の断面図である。
図4】負極活物質層内の黒鉛粒子の断面図である。
図5】実施例及び比較例の非水電解質二次電池を用いた測定結果から、活物質層X、Yの幅比率Wx/Wyと、300サイクル目の容量維持率(サイクル維持率)との関係を示す図である。
図6】実施形態の別例である負極を含む電極体を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本開示の基礎となった知見)
負極は、負極集電体上に負極活物質が配置され、ローラなどにより圧縮することで充填密度及びエネルギー密度を高める。この圧縮において黒鉛粒子が潰れ、活物質間の空隙が減少することで、充填密度及びエネルギー密度が高まる。一方、負極は充電時に活物質が膨張し、活物質間に存在する非水電解質が活物質層の外に追い出される。放電時には、負極の活物質が収縮し、非水電解質が活物質層内に浸透して戻ってくるが、高容量化のために活物質間の空隙が少ないと非水電解質が活物質層に浸透しにくくなる。
【0016】
負極活物質として、内部空隙率が相対的に小さい黒鉛を使用した場合、圧縮時に活物質間の空隙を確保することが可能となる。これにより、充放電サイクルにおける非水電解質の浸透が早くなり、非水電解質の部分的な不足が改善される。このため、優れた充放電サイクル特性が期待できる。一方、内部空隙率が相対的に小さい黒鉛を使用した場合、圧縮時に活物質が潰れにくいので、充填密度を高めることが難しい。また、圧縮による周囲の活物質との接触面積が少ないため、充放電による活物質の膨張収縮時において、周囲の活物質との接触が維持されにくく、接触面積低下によって電気抵抗が増大する。
【0017】
負極活物質として、内部空隙率が相対的に大きい黒鉛を使用した場合には、圧縮時に活物質が潰され変形するので、充填密度を高められる。一方、内部空隙率が相対的に大きい黒鉛を使用した場合には、活物質間の空隙が少なくなるので、充放電サイクルにおいて非水電解質が浸透しにくくなり、非水電解質が部分的に不足する。
【0018】
また、負極を構成する負極集電体とその上に配置される黒鉛粒子とは、結着剤等により結着されているが、内部空隙率の低い黒鉛粒子は電極を形成する際に潰れ難く、負極集電体と黒鉛粒子との結着性が低下し易い。そのため、充電状態によっては、負極集電体から黒鉛粒子が剥がれ易くなるため、内部空隙率の低い黒鉛粒子を用いただけでは、充放電サイクル特性の低下を効果的に抑制することができない場合がある。
【0019】
そこで、本発明者は、負極活物質層において、内部空隙率の小さな黒鉛粒子を多く含む層と、内部空隙率の大きな黒鉛粒子を多く含む層とを、適切な範囲の比率で交互に配置することで、内部空隙率の小さな黒鉛粒子を多く含む層を経由して内部空隙率が大きな黒鉛粒子を多く含む層へ非水電解質が浸透できる。それによって、負極活物質層の活物質の充填密度を低くすることなく充放電サイクル特性を改善でき、高容量化と優れた充放電サイクル特性の両立が可能となることを見出し、以下に示す態様の非水電解質二次電池用負極を想到するに至った。
【0020】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられた負極活物質層と、を有する非水電解質二次電池用負極であって、負極活物質層は、負極活物質として黒鉛粒子Aと黒鉛粒子Bとを含み、かつ、黒鉛粒子A及び黒鉛粒子Bの合計質量に対する黒鉛粒子Aの含有量が互いに異なる、第1活物質層Xと第2活物質層Yとが負極集電体上に交互に配置されており、黒鉛粒子Aの内部空隙率は黒鉛粒子Bの内部空隙率より小さく、第1活物質層Xにおける黒鉛粒子Aの含有量は、第2活物質層Yにおける黒鉛粒子Aの含有量より多くなっており、第1活物質層Xの幅Wxと、第2活物質層Yの幅Wyとの比率Wx/Wyが0.03以上、3.13以下であることを特徴とする。
【0021】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示の非水電解質二次電池は、以下で説明する実施形態に限定されない。また、実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものである。以下では、非水電解質二次電池がラミネート電池である場合を説明するが、本開示の構成は、ラミネート電池に限定されず、例えば扁平形状の角型電池、或いは円筒電池等、種々の電池形態に適用できる。また、以下では、電極体が積層型である場合を説明するが、本開示の構成は、巻回型の電極体を有する電池形態にも適用できる。
【0022】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池10の斜視図である。図2は、電極体14を示す概略斜視図である。図1に示す非水電解質二次電池10は、2枚のラミネートフィルム11a、11bから構成された電池ケース11を備える。後述の発電要素(電極体14及び電解質)は、ラミネートフィルム11a、11bの間に形成された収容部12の内部空間に収納されている。電池ケース11には、ラミネートフィルム11a、11bの外周部同士を接合して封止部13が形成され、これにより発電要素が収容された内部空間が密閉されている。
【0023】
電池ケース11は、パウチ型であり、2枚のラミネートフィルム11a、11bから構成される。各ラミネートフィルム11a、11bは、例えばアルミニウム箔の表面に樹脂層がラミネートされている。樹脂層を構成する樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。これらの樹脂層は1層のみであってもよいし、2層以上を積層したものであってもよい。
【0024】
非水電解質二次電池10では、後述の電極体14の正極20(図2)に接続された正極リード15、及び負極30(図2)に接続された負極リード16が、電池ケース11から引き出されている。非水電解質二次電池10は、発電要素として、電極体14及び電解質(図示せず)を備える。発電要素は、上記のように、封止部13で密閉された収容部12に収容されている。電解質としては、例えば非水溶媒と、非水溶媒に溶解したリチウム塩等の電解質塩を含む非水電解質が用いられる。
【0025】
図2に示すように、電極体14は、正極20及び負極30がセパレータ(図示せず)を介して交互に積層された積層型構造を有する。
【0026】
各正極20の未塗工部からなる集電部が、正極集電体を形成する矩形状の正極本体部(図示せず)の長手方向一端(図2の上端)の幅方向一端部(図2の左端部)から同一方向に突出する。各正極本体部の長手方向一端から突出した部分は積層され、電極体14と一体の正極集電タブ21が形成される。正極集電タブ21の一面には正極リード15(図1)が重ね合わされ、溶接等により連結されることで電気的に接続される。
【0027】
各負極30の未塗工部からなる集電部が、負極集電体32を形成する矩形状の負極本体部35の長手方向一端(図2の上端)の幅方向他端部(図2の右端部)から同一方向に突出する。各負極本体部35の長手方向一端から突出した部分は積層され、電極体14と一体の負極集電タブ31が形成される。負極集電タブ31の一面には負極リード16(図1)が重ね合わされ、溶接等により連結されることで電気的に接続される。
【0028】
以下、非水電解質二次電池10の各構成要素について詳説する。
【0029】
[負極]
図3は、実施形態の一例である負極30の断面図である。負極30は、負極集電体32と、負極集電体32上に設けられた負極活物質層34と、を有する二次電池用負極である。
【0030】
負極集電体32は、例えば、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。
【0031】
負極活物質層34は、負極活物質として黒鉛粒子を含む。また、負極活物質層34は、結着剤等を含むことが好ましい。負極30は、例えば、負極活物質、結着剤等を含む負極合剤スラリーを調製し、この負極合剤スラリーを負極集電体32上に塗布、乾燥して負極活物質層34を形成し、この負極活物質層34を圧延することにより作製できる。なお、負極活物質層34の作製方法の詳細は後述する。
【0032】
図4は、負極活物質層内の黒鉛粒子40の断面図である。図4に示すように、黒鉛粒子40は、黒鉛粒子40の断面視において、粒子内部から粒子表面につながっていない閉じられた空隙44(以下、内部空隙44)と、粒子内部から粒子表面につながっている空隙46(以下、外部空隙46)とを有する。
【0033】
本実施形態における黒鉛粒子40は、黒鉛粒子Aと、黒鉛粒子Bとを含み、黒鉛粒子Aの内部空隙率は黒鉛粒子Bの内部空隙率より小さい。例えば、黒鉛粒子40は、内部空隙率が5%以下である黒鉛粒子Aと、内部空隙率が8%~20%である黒鉛粒子Bとを含む。黒鉛粒子Aの内部空隙率は、充放電サイクル特性の低下を抑制する等の点で、5%以下であればよいが、好ましくは1%~5%であり、より好ましくは3%~5%である。黒鉛粒子Bの内部空隙率は、充放電サイクル特性の低下を抑制する等の点で、8%~20%であればよいが、好ましくは10%~18%であり、より好ましくは12%~16%である。ここで、黒鉛粒子の内部空隙率とは、黒鉛粒子の断面積に対する黒鉛粒子の内部空隙44の面積の割合から求めた2次元値である。そして、黒鉛粒子の内部空隙率は、以下の手順で求められる。
【0034】
<内部空隙率の測定方法>
(1)負極活物質層の断面を露出させる。断面を露出させる方法としては、例えば、負極の一部を切り取り、イオンミリング装置(例えば、日立ハイテク社製、IM4000PLUS)で加工し、負極活物質層の断面を露出させる方法が挙げられる。
(2)走査型電子顕微鏡を用いて、上記露出させた負極活物質層の断面の反射電子像を撮影する。反射電子像を撮影する際の倍率は、3千倍から5千倍である。
(3)上記により得られた断面像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフト(例えば、アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)を用いて二値化処理を行い、断面像内の粒子断面を黒色とし、粒子断面に存在する空隙を白色として変換した二値化処理画像を得る。
(4)二値化処理画像から、粒径5μm~50μmの黒鉛粒子A,Bを選択し、当該黒鉛粒子断面の面積、及び当該黒鉛粒子断面に存在する内部空隙の面積を算出する。ここで、黒鉛粒子断面の面積とは、黒鉛粒子の外周で囲まれた領域の面積、すなわち、黒鉛粒子の断面部分全ての面積を指している。また、黒鉛粒子断面に存在する空隙のうち幅が3μm以下の空隙については、画像解析上、内部空隙か外部空隙かの判別が困難となる場合があるため、幅が3μm以下の空隙は内部空隙としてもよい。そして、算出した黒鉛粒子断面の面積及び黒鉛粒子断面の内部空隙の面積から、黒鉛粒子の内部空隙率(黒鉛粒子断面の内部空隙の面積×100/黒鉛粒子断面の面積)を算出する。黒鉛粒子A,Bの内部空隙率は、黒鉛粒子A,Bそれぞれ10個の平均値とする。
【0035】
黒鉛粒子A,Bは、例えば、以下のようにして製造される。
<内部空隙率が5%以下である黒鉛粒子A>
例えば、主原料となるコークス(前駆体)を所定サイズに粉砕し、それらを結着剤で凝集させた状態で、2600℃以上の温度で焼成し、黒鉛化させた後、篩い分けることで、所望のサイズの黒鉛粒子Aを得る。ここで、粉砕後の前駆体の粒径や凝集させた状態の前駆体の粒径等によって、内部空隙率を5%以下に調整することができる。例えば、粉砕後の前駆体の平均粒径(体積基準のメジアン径D50)は、12μm~20μmの範囲であることが好ましい。また、内部空隙率を5%以下の範囲で小さくする場合は、粉砕後の前駆体の粒径を大きくすることが好ましい。
<内部空隙率が8%~20%である黒鉛粒子B>
例えば、主原料となるコークス(前駆体)を所定サイズに粉砕し、それらを結着剤で凝集した後、さらにブロック状に加圧成形した状態で、2600℃以上の温度で焼成し、黒鉛化させる。黒鉛化後のブロック状の成形体を粉砕し、篩い分けることで、所望のサイズの黒鉛粒子Bを得る。ここで、ブロック状の成形体に添加される揮発成分の量によって、内部空隙率を8%~20%に調整することができる。コークス(前駆体)に添加される結着剤の一部が焼成時に揮発する場合、結着剤を揮発成分として用いることができる。そのような結着剤としてピッチが例示される。
【0036】
本実施形態に用いられる黒鉛粒子A,Bは、天然黒鉛、人造黒鉛等、特に制限されるものではないが、内部空隙率の調整のし易さ等の点では、人造黒鉛が好ましい。本実施形態に用いられる黒鉛粒子A,BのX線広角回折法による(002)面の面間隔(d002)は、例えば、0.3354nm以上であることが好ましく、0.3357nm以上であることがより好ましく、また、0.340nm未満であることが好ましく、0.338nm以下であることがより好ましい。また、本実施形態に用いられる黒鉛粒子A,BのX線回折法で求めた結晶子サイズ(Lc(002))は、例えば、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、また、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。面間隔(d002)及び結晶子サイズ(Lc(002))が上記範囲を満たす場合、上記範囲を満たさない場合と比べて、非水電解質二次電池の電池容量が大きくなる傾向がある。なお、黒鉛粒子Aの表面の少なくとも一部は非晶質炭素で被覆されていることが好ましい。これにより、非水電解質二次電池の低温特性が向上する。
【0037】
本実施形態では、図3に示す負極活物質層34が、負極活物質として黒鉛粒子Aと黒鉛粒子Bとを含み、黒鉛粒子Aの内部空隙率は黒鉛粒子Bの内部空隙率より小さい。さらに、負極活物質層34は、黒鉛粒子A及び黒鉛粒子Bの合計質量に対する黒鉛粒子Aの含有量が互いに異なる、第1活物質層Xと第2活物質層Yとが、負極集電体32上に、負極集電体32を形成する負極本体部35の幅方向(図3の左右方向)に沿って交互に配置されている。図2図3では、第1活物質層Xを黒色部で示し、第2活物質層Yを灰色部で示している。各第1活物質層Xと各第2活物質層Yとは、負極本体部35の長手方向に延びて、負極本体部35の長手方向両端に達している。特に、第1活物質層Xにおける黒鉛粒子Aの含有量は、第2活物質層Yにおける黒鉛粒子Aの含有量より多くなっている。また、第1活物質層Xの幅Wxと、第2活物質層Yの幅Wyとの比率Wx/Wyが0.03以上、3.13以下である。これにより、非水電解質二次電池10の充放電サイクルにおいて、内部空隙率の小さな黒鉛粒子を多く含む第1活物質層Xを経由して、内部空隙率が大きな黒鉛粒子を多く含む第2活物質層Yへ非水電解質を浸透できる。このため、負極30における部分的な非水電解質の不足が解消するため、負極活物質層34における負極活物質の充填密度を低くすることなく、非水電解質二次電池10の充放電サイクル特性を改善できる。したがって、非水電解質二次電池10の高容量化と優れた充放電サイクル特性の両立が可能となる。
【0038】
本実施形態では、第1活物質層Xは、第2活物質層Yより、黒鉛粒子Aの含有量が多くなっていればよく、第1活物質層Xは、黒鉛粒子Aのみを含む構成でもよいし、第1活物質層X及び第2活物質層Yのそれぞれ、または第1活物質層Xのみが、黒鉛粒子A及び黒鉛粒子Bの両方を含んでいてもよい。一方、負極集電体32と黒鉛粒子との接着性を確保する面からは、第1活物質層Xは、黒鉛粒子A及び黒鉛粒子Bの両方が含むことが好ましい。また、その場合の第1活物質層Xにおける黒鉛粒子A及び黒鉛粒子Bの質量比の範囲は、充放電サイクル特性と高容量化の観点から、10:0~2:8であることが好ましく、6:4~3:7であることがより好ましい。
【0039】
黒鉛粒子Aの含有量を第2活物質層Yより第1活物質層Xで多くする具体的方法について説明する。例えば、まず、黒鉛粒子A(必要に応じて黒鉛粒子A、B)を含む負極活物質と、結着剤と、水等の溶媒とを混合して、第1活物質層X用の負極合剤スラリーを調製する。これとは別に、黒鉛粒子B(必要に応じて黒鉛粒子A、B)を含み、第1活物質層X用の負極合剤スラリーよりも黒鉛粒子Aの含有量が少ない負極活物質と、結着剤と、水等の溶媒とを混合して、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーを調製する。そして、負極集電体の両面に、第1活物質層X用の負極合剤スラリーと、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーとを面方向に沿って交互に塗布し、乾燥することにより、負極活物質層34を形成することができる。
【0040】
負極活物質は、本実施形態に用いられる黒鉛粒子A,B以外に、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できる他の材料を含んでいてもよく、例えば、Si系材料を含んでいてもよい。Si系材料としては、例えば、Si、Siを含む合金、SiO(Xは0.8~1.6)等のケイ素酸化物等が挙げられる。Si系材料は、黒鉛粒子より電池容量を向上させることが可能な負極材料であるが、その反面、充放電に伴う体積膨張が大きいため、充放電サイクル特性の点では不利である。しかし、黒鉛粒子A、B及びSi系材料を含む負極活物質を有する負極活物質層において、黒鉛粒子の粒径を過度に大きくする必要がないので、Si系材料との接触点を高くでき、それによりSi系材料の膨張収縮に伴い接点の確保、つまり導電性を確保しやすくなる。これにより、充放電サイクル特性の低下を効果的に抑制することができる。Si系材料の含有量は、電池容量の向上、充放電サイクル特性の低下抑制等の点で、例えば、負極活物質の質量に対して1質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~7質量%であることがより好ましい。
【0041】
リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できる他の材料としては、その他に、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSn等の金属元素を含む合金や酸化物等が挙げられる。負極活物質は、上記他の材料を含んでいてもよく、上記他の材料の含有量は、例えば、負極活物質の質量に対して10質量%以下であることが望ましい。
【0042】
結着剤としては、例えば、フッ素系樹脂、PAN、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩(PAA-Na、PAA-K等、また部分中和型の塩であってもよい)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
[正極]
正極20は、例えば金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極活物質層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極活物質層は、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を含む。
【0044】
正極20は、例えば、正極活物質、結着剤、導電剤等を含む正極合剤スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥して正極活物質層を形成した後、この正極活物質層を圧延することにより作製できる。
【0045】
正極活物質としては、Co、Mn、Ni等の遷移金属元素を含有するリチウム遷移金属酸化物が例示できる。リチウム遷移金属酸化物は、例えばLixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixCoy1-yz、LixNi1-yyz、LixMn24、LixMn2-yy4、LiMPO4、Li2MPO4F(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)である。これらは、1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。非水電解質二次電池の高容量化を図ることができる点で、正極活物質は、LixNiO2、LixCoyNi1-y2、LixNi1-yyz(M;Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも1種、0<x≦1.2、0<y≦0.9、2.0≦z≦2.3)等のリチウムニッケル複合酸化物を含むことが好ましい。
【0046】
導電剤は、例えば、カーボンブラック(CB)、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、黒鉛等のカーボン系粒子などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
結着剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
[セパレータ]
セパレータには、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータの表面にアラミド系樹脂、セラミック等の材料が塗布されたものを用いてもよい。
【0049】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0050】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0051】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0052】
上記ハロゲン置換体としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等を用いることが好ましい。
【0053】
電解質塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩の例としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSCN、LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li(P(C24)F4)、LiPF6-x(Cn2n+1x(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li247、Li(B(C24)F2)等のホウ酸塩類、LiN(SO2CF32、LiN(C12l+1SO2)(Cm2m+1SO2){l,mは1以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。リチウム塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。これらのうち、イオン伝導性、電気化学的安定性等の観点から、LiPF6を用いることが好ましい。リチウム塩の濃度は、溶媒1L当り0.8~1.8molとすることが好ましい。
【実施例
【0054】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、アルミニウム含有ニッケルコバルト酸リチウム(LiNi0.88Co0.09Al0.03)を用いた。上記正極活物質が100質量部、導電剤としてのカーボンブラックが0.8質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末が0.7質量部となるよう混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合剤スラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム箔(厚さ15μm)からなる正極集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、塗膜を乾燥した。このとき、合剤塗布量は両面合計で560g/mとした。その後、圧延ローラにより塗膜を圧延した後、所定の電極サイズに切り取り、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極を作製した。圧延では、極板厚みが161μmとなるようにした。
【0056】
[黒鉛粒子Aの作製]
コークスを平均粒径(メジアン径D50)が12μmとなるまで粉砕した。粉砕したコークスに結着剤としてのピッチを添加し、コークスを平均粒径(メジアン径D50)が17μmとなるまで凝集させた。この凝集物を2800℃の温度で焼成して黒鉛化した後、250メッシュの篩いを用いて、篩い分けを行い、平均粒径(メジアン径D50)が23μmの黒鉛粒子Aを得た。
【0057】
[黒鉛粒子Bの作製]
コークスを平均粒径(メジアン径D50)が15μmとなるまで粉砕し、粉砕したコークスに結着剤としてのピッチを添加して凝集させた後、さらに等方的な圧力で1.6g/cm~1.9g/cmの密度を有するブロック状の成形体を作製した。このブロック状の成形体を2800℃の温度で焼成して黒鉛化した。次いで、黒鉛化したブロック状の成形体を粉砕し、250メッシュの篩いを用いて、篩い分けを行い、平均粒径(メジアン径D50)が23μmの黒鉛粒子Bを得た。
【0058】
[負極の作製]
黒鉛粒子Aが47.5質量部、黒鉛粒子Bが47.5質量部、SiОが5質量部となるように混合し、これを第1活物質層X用の負極活物質G1とした。負極活物質G1と1質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)と水とを混合した。この混合物と1質量部のスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)と水とを混合して、第1活物質層X用の負極合剤スラリーを調製した。また、黒鉛粒子Bが95質量部、SiOが5質量部となるように混合し、これを第2活物質層Y用の負極活物質G2とした。負極活物質G2と1質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)と水とを混合した。この混合物と1質量部のスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)と水とを混合して、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーを調製した。
【0059】
第1活物質層X用の負極合剤スラリーと第2活物質層Y用の負極合剤スラリーとを銅箔からなる負極集電体の両面にそれぞれ塗布幅0.1mm及び塗布幅3.2mmの繰り返しとなるように、ダイコータ―を用いて同時に塗布し、塗膜を乾燥した。このとき、合剤塗布量は両面合計で282g/mとした。その後、圧延ローラにより塗膜を圧延した後、所定の電極サイズに切り取り、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極を作製した。圧延では、極板厚みが161μmとなるようにした。
【0060】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で2:6:2となるように混合した非水溶媒に、ビニレンカーボネート(VC)を2質量部添加し、電解質としてのLiPFを1.3mol/Lの濃度で溶解した。これによって非水電解質を調製した。
【0061】
[非水電解質二次電池の作製]
5枚の正極と6枚の負極とを2枚の負極が外側に位置し、正極及び負極の間にポリエチレン製微多孔膜からなる厚み20μmのセパレータを介在させるように積層して、積層型の電極体を作製した。そして、正極集電タブに正極リードを取り付け、負極集電タブに負極リードを取り付けた後、電極体と、非水電解質3.5gとをアルミラミネートフィルムで構成された電池ケース内に収容し、電池ケースの開口部を封止して、実施例1の非水電解質二次電池を作製した。
【0062】
<実施例2>
第1活物質層X用の負極合剤スラリーの塗布幅を0.2mmとし、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーの塗布幅を3.1mmとし、それを繰り返すようにして、負極集電体の両面に塗布した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例2の非水電解質二次電池を作製した。
【0063】
<実施例3>
第1活物質層X用の負極合剤スラリーの塗布幅を1.0mmとし、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーの塗布幅を2.3mmとし、それを繰り返すようにして、負極集電体の両面に塗布した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例3の非水電解質二次電池を作製した。
【0064】
<実施例4>
第1活物質層X用の負極合剤スラリーの塗布幅を2.0mmとし、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーの塗布幅を1.3mmとし、それを繰り返すようにして、負極集電体の両面に塗布した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例4の非水電解質二次電池を作製した。
【0065】
<実施例5>
第1活物質層X用の負極合剤スラリーの塗布幅を2.5mmとし、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーの塗布幅を0.8mmとし、それを繰り返すようにして、負極集電体の両面に塗布した。それ以外は、実施例1と同様にして、実施例5の非水電解質二次電池を作製した。
【0066】
<比較例1>
第1活物質層X用の負極合剤スラリーの塗布幅を3.0mmとし、第2活物質層Y用の負極合剤スラリーの塗布幅を0.3mmとし、それを繰り返すようにして、負極集電体の両面に塗布した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例1の非水電解質二次電池を作製した。
【0067】
<比較例2>
第2活物質層Y用の負極合剤スラリーのみを、負極集電体の両面に塗布した。このとき、負極合剤スラリーの塗布幅は、29.7mmである。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例2の非水電解質二次電池を作製した。
【0068】
<比較例3>
負極合剤スラリーを作成するときに、黒鉛粒子Aが95質量部、SiOが5質量部となるように混合し、第3活物質層Z用の負極活物質G3とした。負極活物質G3と1質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)と水とを混合した。この混合物と1質量部のスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)と水とを混合して、第3活物質層Z用の負極合剤スラリーを調製した。この第3活物質層Z用の負極合剤スラリーのみを、負極集電体の両面に塗布した。このとき、負極合剤スラリーの塗布幅は、29.7mmである。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例3の非水電解質二次電池を作製した。
【0069】
<比較例4>
第1活物質層X用の負極合剤スラリーのみを、負極集電体の両面に塗布した。このとき、負極合剤スラリーの塗布幅は、29.7mmである。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例4の非水電解質二次電池を作製した。
【0070】
[充放電サイクルにおける容量維持率の測定]
環境温度25℃の下、各実施例及び各比較例の非水電解質二次電池を、1C(4600mA)で、電圧が4.2Vになるまで定電流充電した後、4.2Vで、電流が1/50Cになるまで定電圧充電した。その後、0.5Cで、電圧が2.5Vになるまで定電流放電した。この充放電を1サイクルとして、300サイクル行った。そして、以下の式により、各実施例及び各比較例の非水電解質二次電池の充放電サイクルにおける容量維持率を求めた。
容量維持率=(300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0071】
表1に、各実施例及び各比較例の非水電解質二次電池の充放電サイクルにおける容量維持率の結果をまとめた。なお、充放電サイクルにおける容量維持率の値が高いほど、充放電サイクル特性が優れていることを示している。図5は、実施例及び比較例の非水電解質二次電池を用いた測定結果から、第1活物質層X及び第2活物質層Yの幅比率Wx/Wyと、300サイクル目の容量維持率(サイクル維持率)との関係を示している。図5において、黒丸は、実施例1~5を示し、白抜きの菱形は、比較例1~2を示している。
【0072】
【表1】
【0073】
表1及び図5から分かるように、実施例1~5のように幅比率Wx/Wyを、0.03以上、3.13以下とした場合には、いずれも比較例1~4と比較して、充放電サイクルにおける容量維持率が向上した。一方、幅比率Wx/Wyが10.00である比較例1では、負極活物質層に黒鉛粒子Aのみを用いた比較例3とほぼ同じサイクル維持率であり、顕著な改善効果は見られなかった。また、幅比率Wx/Wyが0.06以上、1.6以下の実施例2~4では、サイクル維持率が80%以上であり、充放電サイクル特性の顕著な改善効果を確認できた。一方、図5から、幅比率Wx/Wyが4.0を超える場合には、サイクル維持率の低下が大きくなると考えられる。この理由は、幅比率Wx/Wyが4.0を超える場合には、負極活物質層における非水電解質の浸透性改善効果によるサイクル維持率の向上効果より、第1活物質層Xの増大による容量劣化の影響が大きくなるためと考えられる。
【0074】
さらに、第1活物質層Xは、黒鉛粒子A、黒鉛粒子Bの両方を含んでいる。これにより、電極形成の際に適度に潰れる黒鉛粒子Bがあることで、第1活物質層Xを潰れにくい黒鉛粒子Aのみにより形成する場合と比べて、負極集電体と黒鉛粒子との接着性を確保できる。その結果、充放電サイクルにおいて負極集電体から黒鉛粒子が剥がれにくくなるので、優れた充放電サイクル特性を確保しやすくなる。
【0075】
図6は、実施形態の別例である負極30aを含む電極体14aを示す概略斜視図である。本例の構成では、図1図4に示した実施形態と異なり、第1活物質層Xと第2活物質層Yとが、負極集電体32上に、負極集電体32を形成する負極本体部35の長手方向(図6の上下方向)に沿って交互に配置されている。各第1活物質層Xと各第2活物質層Yとは、負極本体部35の幅方向(図6の左右方向)に延びて、負極本体部35の幅方向両端に達している。第1活物質層Xにおける黒鉛粒子Aの含有量は、第2活物質層Yにおける黒鉛粒子Aの含有量より多い。また、第1活物質層Xの幅Wxと、第2活物質層Yの幅Wyとの比率Wx/Wyが0.03以上、3.13以下である。本例の構成の場合も、図1図4の構成と同様に、非水電解質二次電池の優れた充放電サイクル特性と高容量化とを両立することができる。本例において、その他の構成及び作用は、図1図4の構成と同様である。
【0076】
なお、上記の図1図4の構成、及び図6の構成では、電極体が積層型である場合を説明したが、電極体は、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる巻回型としてもよい。この場合も、負極集電体上に、第1活物質層Xと第2活物質層Yとを、比率Wx/Wyが0.03以上、3.13以下となるように交互に配置する。これにより、非水電解質二次電池の優れた充放電サイクル特性と高容量化とを両立することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 非水電解質二次電池、11 電池ケース、11a,11b ラミネートフィルム、12 収容部、13 封止部、14 電極体、15 正極リード、16 負極リード、20 正極、21 正極集電タブ、30 負極、31 負極集電タブ、32 負極集電体、34 負極活物質層、35 負極本体部、40 黒鉛粒子、44 内部空隙、46 外部空隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6