(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 37/12 20060101AFI20250917BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20250917BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20250917BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250917BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250917BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20250917BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20250917BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20250917BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
B32B37/12
B05D1/38
B05D3/00 D
B05D7/24 301P
B05D7/24 302T
B32B27/00 D
B32B27/40
C09J175/04
C09J175/06
C09J175/08
(21)【出願番号】P 2021185918
(22)【出願日】2021-11-15
【審査請求日】2024-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 諭志
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-082324(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013129(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/049852(WO,A1)
【文献】特開2020-041103(JP,A)
【文献】特開2003-236939(JP,A)
【文献】特開平06-234184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0259968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、C09J、B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材層、第1の接着剤層、中間基材層、第2の接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備えた積層体の製造方法であって、
前記第1の基材上に、ポリオール(A1)とポリイソシアネート(B1)とを含み、60℃における粘度が50~6,000mPa・sである第1の無溶剤型接着剤を塗布した後、中間基材と圧着し、第1の基材層、第1の接着剤層、及び中間基材層をこの順に備えた中間積層体を得る第1の工程、並びに、
前記第1の工
程で得られた中間積層体の中間基材上に、ポリオール(A2)とポリイソシアネート(B2)とを含み、40℃における粘度が50~5,000mPa・sである第2の無溶剤型接着剤を塗布した後、第2の基材と圧着し、積層体を得る第2の工程を有し、
前記第1の無溶剤型接着剤を塗布する際のロールコートの温度をT1℃とした時に、前記T1が50~90℃の範囲であり、
前記第2の無溶剤型接着剤を塗布する際のロールコートの温度をT2℃とした時に、前記T2が30~70℃の範囲であり、
前記第1の無溶剤型接着剤、及び前記第2の無溶剤型接着剤は、40℃における粘度の差が2,000mPa・s以上であ
り、前記第1の無溶剤型接着剤の40℃における粘度は、前記第2の無溶剤型接着剤の40℃における粘度より高いことを特徴とする、積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の無溶剤型接着剤、及び前記第2の無溶剤型接着剤は、60℃における粘度の差が1,000mPa・s以上であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオール(A1)及び前記ポリオール(A2)が、各々独立して、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールである、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート(B1)及び前記ポリイソシアネート(B2)が、各々独立して、芳香族イソシアネート化合物、芳香脂肪族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、又はこれらの変性体である、請求項1~3いずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の接着剤層は、厚みが2.5μm以下である、請求項1~4いずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装に用いられる軟包装材料に適した積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等を包装する軟包装材料に使用される2液硬化型のウレタン接着剤としては、溶剤型、無溶剤型があり、脱有機溶剤のような環境配慮の観点及び乾燥工程を必要とせず作業効率が向上する観点から、無溶剤型接着剤が好適に用いられる。
そして無溶剤型接着剤は、溶剤を含まず塗工性を発現させるために粘度を低く抑える必要があり、通常、分子量が低いポリオールとポリイソシアネートとを用いている場合が多い。
【0003】
一方、軟包装材料の構成は、内容物や求められる諸物性によって様々であり、基材と基材とを接着剤を用いて貼り合わせた2層構成だけでなく、複数の基材を接着剤で貼り合わせた多層構成も多く用いられる。
しかしながら、無溶剤型接着剤を用いて、第1のラミネート工程と第2のラミネート工程とを連続して多層構成(例えば3層構成)の複合フィルムを製造しようとすると、第2のラミネート工程で接着剤を塗工する時に、第1のラミネート工程時に形成された積層フィルムが剥がれて(以下、デラミネーションともいう)エアー混入する不良が生じる。また、第2のラミネート工程において、第1のラミネート工程時に形成された積層フィルムに僅かなズレが生じ、そのズレが蓄積されて、第2のラミネート工程での巻取り時に、ロール端部がタケノコ状に変形するテレスコープと呼ばれる不良も発生する。
これは、上述のとおり、無溶剤型接着剤に含まれるポリオールとポリイソシアネートとの分子量が低いため、形成される接着剤層の初期凝集力が低いことが原因であると推察される。
そのため、無溶剤型接着剤を用いて3層構成の積層フィルムを製造する場合、第1のラミネート工程と、第2のラミネート工程との間に、一定時間以上のエージングを行い、第1のラミネート工程で形成される接着剤層の凝集力を向上させる必要があった。
【0004】
このような問題を解決する方法として、接着剤の硬化速度を速めてエージング時間を短縮する方法が考えられる。しかし、一般的に無溶剤型接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとの混合液をロール上に滞留させロールコーターにより基材に塗工されるため、エージング時間短縮のために触媒等を配合して硬化速度を速めると、ポットライフが著しく短くなり、ロール上で増粘して外観悪化を引き起こすという課題がある。
上記課題に対し、例えば、特許文献1には、ポリオールとポリイソシアネートとを別々の基材に塗布した後に貼り合わせる技術が開示されている。ポリオールとポリイソシアネートとを別々に塗工することでポットライフの問題を考慮せずに、添加剤等により硬化速度を自由に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、既存の塗工機では対応できず、改造又は新規の設備導入が必要となる。さらに、特許文献1に記載の方法は、エージング時間が短縮されたが、上述する、第2のラミネート工程で接着剤を塗工する時に、第1のラミネート工程時に形成された積層フィルムが剥がれてエアー混入する不良(デラミネーションともいう)、及び、第2のラミネート工程での巻取り時に、ロール端部がタケノコ状に変形するテレスコープの発生、という課題を解決できていない。したがって、第1のラミネート工程と第2のラミネート工程とを連続して行い3層構成の積層体を製造することは困難であるのが現状である。
よって、本発明の目的は、第1のラミネート工程後にエージングを行うことなく、連続して第2のラミネート工程を実施可能であり、デラミネーション及びテレスコープのない積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の実施態様は、第1の基材層、第1の接着剤層、中間基材層、第2の接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備えた積層体の製造方法であって、前記第1の基材上に、ポリオール(A1)とポリイソシアネート(B1)とを含み、60℃における粘度が50~6,000mPa・sである第1の無溶剤型接着剤を塗布した後、中間基材と圧着し、第1の基材層、第1の接着剤層、及び中間基材層をこの順に備えた中間積層体を得る第1の工程、並びに、前記第1の工程1で得られた中間積層体の中間基材上に、ポリオール(A2)とポリイソシアネート(B2)とを含み、40℃における粘度が50~5,000mPa・sである第2の無溶剤型接着剤を塗布した後、第2の基材と圧着し、積層体を得る第2の工程を有し、前記第1の無溶剤型接着剤、及び前記第2の無溶剤型接着剤は、40℃における粘度の差が2,000mPa・s以上であることを特徴とする、積層体の製造方法に関する。
【0009】
本発明の他の実施態様は、前記第1の無溶剤型接着剤、及び前記第2の無溶剤型接着剤は、60℃における粘度の差が1,000mPa・s以上であることを特徴とする、上記積層体の製造方法に関する。
【0010】
本発明の他の実施態様は、前記ポリオール(A1)及び前記ポリオール(A2)が、各々独立して、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールである、上記積層体の製造方法に関する。
【0011】
本発明の他の実施態様は、前記ポリイソシアネート(B1)及び前記ポリイソシアネート(B2)が、各々独立して、芳香族イソシアネート化合物、芳香脂肪族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、又はこれらの変性体である、上記積層体の製造方法に関する。
【0012】
本発明の他の実施態様は、前記第1の接着剤層は、厚みが2.5μm以下である、上記積層体の製造方法に関する。
【0013】
本発明の他の実施態様は、前記第1の無溶剤型接着剤を塗布する際のロールコートの温度をT1℃とした時に、前記T1が50~90℃の範囲である、上記積層体の製造方法に関する。
【0014】
本発明の他の実施態様は、前記第2の無溶剤型接着剤を塗布する際のロールコートの温度をT2℃とした時に、前記T2が30~70℃の範囲である、上記積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、第1のラミネート工程後にエージングを行うことなく、連続して第2のラミネート工程を実施可能であり、デラミネーション及びテレスコープのない積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、第1の基材層、第1の接着剤層、中間基材層、第2の接着剤層、及び第2の基材層をこの順に備えた積層体の製造方法であって、第1の基材上に、ポリオール(A1)とポリイソシアネート(B1)とを含み、60℃における粘度が50~6,000mPa・sである第1の無溶剤型接着剤を塗布した後、中間基材と圧着し、第1の基材層、第1の接着剤層、及び中間基材層をこの順に備えた中間積層体を得る第1の工程、並びに、第1の工程1で得られた中間積層体の中間基材上に、ポリオール(A2)とポリイソシアネート(B2)とを含み、40℃における粘度が50~5,000mPa・sである第2の無溶剤型接着剤を塗布した後、第2の基材と圧着し、積層体を得る第2の工程を有し、第1の無溶剤型接着剤、及び第2の無溶剤型接着剤は、40℃における粘度の差が2,000mPa・s以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明は、第1の無溶剤型接着剤の60℃における粘度が50~6,000mPa・sであり、第2の無溶剤型接着剤の40℃における粘度が50~5,000mPa・sであり、且つ、第1の無溶剤型接着剤と第2の無溶剤型接着剤との粘度差が2,000mPa・s以上であることにより、上記課題を解決することができる。
【0018】
まず、第1の工程で塗布される第1の無溶剤型接着剤は、60℃における粘度が50~6,000mPa・sと高粘度であるため、硬化していない状態においても一定の初期凝集力を有している。そのため、エージングを行うことなく第2の工程を実施した場合に、形成された積層フィルムが剥がれてエアーが混入する事態を抑制することができる。
一方、第2の無溶剤型接着剤も第1と同様に高粘度でありタックが強いと、ロールコートを用いて第2の接着剤を塗布し中間積層体と圧着する際に、瞬間的に塗工ロール上に中間積層体のフィルムが取られ、第1の接着剤層の初期凝集力が負けて、第1の基材と中間基材とが剥がれ、エアー混入を誘発する。そのため、第2の無溶剤型接着剤を、40℃における粘度が50~5,000mPa・s、且つ、第1の無溶剤型接着剤との粘度差が2,000mPa・s以上とすることで、塗工ロール上のタックを低減でき、フィルム取られを抑制することができる。
加えて、第2の無溶剤型接着剤のロール上タックに、第1の接着剤の初期凝集力が負け、瞬間的に塗工ロール上へフィルムが取られることで、エアー混入まではいかずとも、中間積層体にわずかなズレを生じ、そのわずかなズレが生じた状態で巻取りを続けると、徐々にテレスコープ不良が発生する。しかしながら、第1と第2の無溶剤型接着剤の粘度差を2,000mPa・s以上とすることで、中間積層体のわずかなズレを防ぎ、テレスコープを抑制することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0019】
<第1、第2の無溶剤型接着剤>
本発明に用いる第1の無溶剤型接着剤は、ポリオール(A1)とポリイソシアネート(B1)とを含む。また、60℃における粘度が50~6,000mPa・sであることが重要である。60℃における粘度が上記範囲であることで、硬化していない状態においても一定の初期凝集力を有し、エージングを行うことなく第2の工程を実施した場合に、形成された積層フィルムにおける第1の基材と中間基材とが剥がれてエアーが混入することを防ぐことができる。
また、本発明に用いる第2の無溶剤型接着剤は、ポリオール(A2)とポリイソシアネート(B2)とを含む。さらに、40℃における粘度が50~5,000mPa・sであることが重要である。40℃における粘度が上記範囲であることで、塗工ロール上のタックを低減でき、ロールコートを用いて第2の接着剤を塗布し中間積層体と圧着する際に、瞬間的に塗工ロール上に中間積層体のフィルムが取られることがない。その結果、第1の基材と中間基材との剥がれやエアー混入を防ぐことができる。
【0020】
本明細書における無溶剤型接着剤の粘度は、ポリオールとポリイソシアネートとを配合した直後から、10分以内に、60℃又は40℃に加温した状態で測定した粘度を指す。粘度測定は、JIS K 5600-2-3:2014に準拠して、コーン・プレート粘度計を用いて測定することができる。
第1の無溶剤型接着剤の60℃における粘度は、好ましくは500~6,000mPa・s、より好ましくは1,000~5,500mPa・s、さらに好ましくは1,500~5,000mPa・sの範囲である。
第2の無溶剤型接着剤の40℃における粘度は、好ましくは300~3,000mPa・s、より好ましくは500~2,000mPa・sの範囲である。
【0021】
また、上述したとおり、第1の無溶剤型接着剤は、第2の無溶剤接着剤よりも、40℃における粘度が2,000mPa・s以上高いことが重要である。40℃における粘度差は、好ましくは2,000mPa・s以上25,000以下、より好ましくは、4,500~20,000mPa・sである。
また、第1の無溶剤型接着剤の60℃における粘度と、第2の無溶剤接着剤の60℃における粘度の差は、好ましくは、1,000mPa・s以上である。60℃における粘度差は、好ましくは1,000mPa・s以上6,000以下、より好ましくは、1,000~5,000mPa・sである。
40℃及び60℃においてこのような粘度差があることで、フィルム取られを防ぎ、第1の基材と中間基材とが剥がれてエアーが混入することを抑止できる。また、中間積層体のわずかなズレを防ぎ、テレスコープを抑制することができる。
第1の無溶剤型接着剤の40℃における粘度は、好ましくは4,000~25,000mPa・s、より好ましくは6,000~22,000mPa・sの範囲である。
第2の無溶剤型接着剤の60℃における粘度は、好ましくは100~1000mPa・s、より好ましくは100~600mPa・sの範囲である。
【0022】
[ポリオール(A1)、(A2)]
ポリオール(A1)及び(A2)は、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、各々独立して公知のポリオールから選択することができる。このようなポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、又はポリヒドロキシアルカンが挙げられる。
また、上記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~3,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオール;を用いてもよい。
上記ポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリオール(A1)及び(A2)は、基材へのレベリング性と接着性能の観点から、好ましくはポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールである。
【0023】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、カルボキシ基成分と水酸基成分とを反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシ基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。
上記水酸基成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物が挙げられる。
上記カルボキシ基成分及び水酸基成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ポリエステルポリオールは、数平均分子量が、好ましくは100~5,000、より好ましくは500~4,000の範囲である。上記範囲であると、常温または加温することにより流動性が生じるため好ましい。
ポリエステルポリオールは、酸価が、好ましくは0~5.0mgKOH/g、より好ましくは0~3.0mgKOH/gの範囲である。上記範囲であると、2液混合後の急激な増粘を抑制できるため好ましい。
ポリエステルポリオールは、水酸基が、好ましくは10~300mgKOH/g、より好ましくは30~200mgKOH/gの範囲である。上記範囲であると、無溶剤型接着剤に好適に使用できる数平均分子量範囲に調整できるため好ましい。
【0025】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、水酸基とエーテル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であればよい。このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体;プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドランダムポリエーテル;が挙げられる。
また、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、シュークローズ等の低分子量ポリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を付加重合した付加重合体をポリエーテルポリオールとして用いてもよい。
該付加重合体としては、例えば、プロピレングリコールプロピレンオキサイド付加体、グリセリンプロピレンオキサイド付加体、ソルビトール系プロピレンオキサイド付加体、シュークローズ系プロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0026】
これらのポリオールは、ポリオール中の水酸基の一部を酸変性した酸変性物であってもよく、酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入したであってもよい。また、ポリオールは、ジイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したものであってもよい。
上記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0027】
ポリオール(A1)及び(A2)の粘度は、後述するポリイソシアネート(B1)及び(B2)と混合して得られる第1及び第2の無溶剤型接着剤の粘度が所定範囲となるように調整すればよく、特に制限されない。
上記範囲とするために、ポリオール(A1)は、60℃における粘度が、100~5,000mPa・sの範囲であってよく、500~4,000mPa・sの範囲であってもよい。また、ポリオール(A2)は、40℃における粘度が、50~3,000mPa・sの範囲であってよく、500~2,000mPa・sの範囲であってもよい。
【0028】
[ポリイソシアネート(B1)、(B2)]
ポリイソシアネート(B1)及び(B2)は、ポリオール(A1)及び(A2)と反応して接着剤を硬化させるものである。このようなポリイソシアネートとしては、各々独立して、例えば、芳香族イソシアネート化合物、芳香脂肪族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、又はこれらの変性体が挙げられる。これらポリイソシアネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4'-トルエンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物のような芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;又はこれらの変性体が挙げられる。
【0030】
芳香脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;又はこれらの変性体が挙げられる。
脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート;又はこれらの変性体が挙げられる。
脂環族イソシアネート化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;又はこれらの変性体が挙げられる。
【0031】
上記イソシアネート化合物の変性体としては、例えば、アロファネート型変性体、イソシアヌレート型変性体、ビウレット型変性体、アダクト型変性体のほか、上記イソシアネート化合物とポリオールとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させたイソシアネート基とウレタン結合とを有する反応生成物が挙げられる。上記イソシアネートの変性体を形成するポリオールとしては、特に制限されず、公知のポリオールから選択することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3'-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールのような分子量200未満の低分子ポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールのようなポリオール;が挙げられる。このような公知のポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート化合物と公知のポリオールとの反応時におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは2以上である。
【0032】
ポリイソシアネート(B1)及び(B2)の粘度は、第1及び第2の無溶剤型接着剤の粘度が所定範囲となるように調整すればよく、特に制限されない。
上記範囲とするために、ポリイソシアネート(B1)は、60℃における粘度が、100~5,000mPa・sの範囲であってよく、500~4,000mPa・sの範囲であってもよい。また、ポリイソシアネート(B2)は、40℃における粘度が、100~5,000mPa・sの範囲であってよく、500~4,000mPa・sの範囲であってもよい。
【0033】
本発明のおける無溶剤型接着剤は、上述するポリオール及びポリイソシアネートを混合することで得られる。ポリオール及びポリイソシアネートの配合割合(ポリオール/ポリイソシアネート)は、一般的に、質量比で10/100~100/10の範囲内で用いられる。
【0034】
[その他成分]
第1の無溶剤型接着剤及び第2の無溶剤型接着剤は、包装体に要求される各種物性を満たすために、ポリオール及びポリイソシアネート以外の成分を含有してもよい。このようなその他成分は、ポリオール又はポリイソシアネートのいずれに配合してもよいし、ポリオールとポリイソシアネートとを配合する際に添加してもよい。これらのその他成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(シランカップリング剤)
第1及び第2の無溶剤型接着剤は、基材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、ポリオール(A1)又は(A2)を基準として、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%である。上記範囲とすることで、金属に対する接着強度を向上することができる。
【0036】
(リン酸又はリン酸誘導体)
第1及び第2の無溶剤型接着剤は、基材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。前記リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸又はその誘導体の含有量は、第1及び第2の無溶剤型接着剤の質量を基準として、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.005~5質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0037】
(レベリング剤又は消泡剤)
第1及び第2の無溶剤型接着剤は、積層体の外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。
【0038】
(その他添加剤)
第1及び第2の無溶剤型接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤が挙げられる。
【0039】
<積層体の製造>
本発明の積層体の製造方法は、以下の工程を含む。
第1の工程:第1の基材上に、上述する第1の無溶剤型接着剤を塗布した後、中間基材と圧着し、第1の基材層、第1の接着剤層、及び中間基材層をこの順に備えた中間積層体を得る工程。
第2の工程:第1の工程1で得られた中間積層体の中間基材上に、上述する第2の無溶剤型接着剤を塗布した後、第2の基材と圧着し、積層体を得る工程。
【0040】
第1又は第2の無溶剤型接着剤層を塗布し、別の基材と圧着する方法は特に制限されず、従来公知のラミネート方法から適宜選択できるが、無溶剤型接着剤は粘度が高いため、一般的にその塗布方法として好ましくは、ロールコート法が用いられる。
第1の接着剤層及び第2の接着剤層の厚みは特に制限されないが、各々独立して、好ましくは0.5~3.5μm、より好ましくは1.0~2.5μmの範囲である。
特に第1の接着剤層の厚みを1.0~2.5μmの範囲とすることで、よりデラミネーション及びテレスコープを抑制することができる。
【0041】
第1の工程と、第2の工程とは、インラインで連続して行ってもよく、巻取り工程を経た後に第2の工程を行ってもよい。いずれにしても、本発明の製造方法により、第1の工程と第2の工程との間にエージング工程を実施することなく、多層の積層体を得ることができる。
【0042】
また、第1の無溶剤型接着剤を塗布する際のロールコートの温度をT1℃、第2の無溶剤型接着剤を塗布する際のロールコートの温度をT2℃とした場合、温度T1は、好ましくは50~90℃、より好ましくは50~80℃、さらに好ましくは60~80℃である。温度T1を上記範囲とすることで、接着剤のレベリング性に優れ、且つ、第1の接着剤の凝集力が維持されるためテレスコープ抑止の点でより優れる。
温度T2は、好ましくは30~70℃、より好ましくは35~65℃、さらに好ましくは40~60℃である。温度T2を上記範囲とすることで、接着剤のレベリング性に優れ、且つ、第2の接着剤の凝集力が維持されるためテレスコープ抑止の点でより優れる。
T1及びT2は、接着剤の粘度や塗布量等に応じて適宜調整することができるが、通常、T1>T2で用いることが多い。
【0043】
[第1の基材]
第1の基材は、包装材に一般的に使用される従来公知のプラスチックフィルムが挙げられる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン(NY)6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体が挙げられる。
プラスチックフィルムの厚みは、好ましくは5~50μmである。
第1の基材は、このようなプラスチックフィルムが複数積層されたものであってもよいし、シリカ又はアルミナのような金属酸化物の蒸着層を有する蒸着フィルムであってもよい。さらには、基材上に印刷層を有していてもよい。
【0044】
上記印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者等の表示、その他等の表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、一般的に顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷層を形成する方法は特に制限されず、例えば、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法が挙げられる。印刷層の厚みは、好ましくは0.1~10μmである。
【0045】
[中間基材]
中間基材としては、上記第1の基材で挙げたプラスチックフィルムのほか、金属蒸着フィルム、金属箔等を用いることができる。金属蒸着フィルムとしては、例えば、アルミニウム蒸着フィルムが挙げられ、金属箔としては、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。
【0046】
[第2の基材]
第2の基材としては、上記第1の基材、中間基材で挙げた基材のほか、シーラント基材を用いることができる。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
シーラント基材の厚みは、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~150μmである。
これら第1の基材、中間基材、第2の基材は、単層であっても複数の層が積層された積層体であってもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0048】
〔酸価(AV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0049】
〔水酸基価(OHV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間撹拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0050】
〔数平均分子量(Mn)の測定方法〕
数平均分子量(Mn)は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0051】
〔NCO含有率(質量%)の測定方法〕
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0052】
〔ICI粘度(mPa・s)の測定方法〕
東亜工業株式会社製コーン・プレート粘度計「CV-1S」を用い、各温度における粘度を測定した。数値が安定した時点の表示値をICI粘度とした。
【0053】
<ポリエステルポリオールの合成>
(合成例1)ポリエステルポリオール-1
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、イソフタル酸を212部、アジピン酸を346部、エチレングリコールを74部、ネオペンチルグリコールを368部仕込み、窒素気流下で攪拌しながら235℃まで昇温した。酸価が10.0mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価127mgKOH/g、数平均分子量約890のポリエステルポリオール-1を得た。
【0054】
(合成例2~6)ポリエステルポリオール-2~6
表1に示す組成に変更した以外は、合成例1と同様にして、ポリエステルポリオール-2~6を得た。
【0055】
【0056】
表1中の略称を以下に示す。
IPA:イソフタル酸
ADA:アジピン酸
BA:安息香酸
EG:エチレングリコール
DEG:ジエチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
PG:1,2-プロパンジオール
【0057】
<ポリオール(A1)の製造>
(A1-1、A1-2)
ポリオール(A1-1)、ポリオール(A1-2)は、合成例1、合成例2で得られたポリエステルポリオール-1、ポリエステルポリオール-2をそれぞれ使用した。
【0058】
(A1-3)
合成例3で得られたポリエステルポリオール-3を90部、トリレンジイソシアネート4部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で5時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認した。次いで、ジエチレングリコールを6部仕込み、溶液が均一になるまで撹拌し、ポリエステルウレタンポリオールとDEGとの混合物であるポリオール(A1-3)を得た。
【0059】
(A1-4)
合成例4で得られたポリエステルポリオール-4を55部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオールを35部、DEG10部を混合し、溶液が均一になるまで撹拌して、ポリエステルポリオール、トリオール及びDEGの混合物であるポリオール(A1-4)を得た。
【0060】
得られたポリオールについて、粘度測定値と共に表2に示す。
【0061】
【0062】
表2中の略称を以下に示す。
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
TDI:トリレンジイソシアネート
【0063】
<ポリイソシアネート(B1)の製造>
(B1-1)
ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体を25部、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体を50部、イソホロンジイソシアネートのヌレート体を25部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で50℃~60℃で加熱、溶解、攪拌して、イソシアネート基含有率が20.4%のポリイソシアネート混合物(B1-1)を得た。
【0064】
(B1-2)
表3に示す組成に変更した以外は、(B1-1)と同様にして、イソシアネート基含有率が25.1%のポリイソシアネート混合物(B1-2)を得た。
【0065】
(B1-3)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを11部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコールを53部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート35部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が7.9%のポリイソシアネート反応物(B1-3)を得た。
【0066】
(B1-4)
PPG-2000を37部、合成例5で得られたポリエステルポリオール-5を7部、トリレンジイソシアネート27部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリウレタンポリイソシアネートを得た。次いで、薄膜蒸留装置を用いて未反応のトリレンジイソシアネートを除去し、最後に2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物を29部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで撹拌して、イソシアネート基含有率が10.9%のポリイソシアネート反応物(B1-4)を得た。
【0067】
得られたポリイソシアネートについて、粘度測定値と共に表3に示す。
【0068】
【0069】
表3中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
HDIビゥレット:ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体
HDIヌレート:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体
IPDIヌレート:イソホロンジイソシアネートのヌレート体
IPDI:イソホロンジイソシアネートモノマー
液状MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物
【0070】
<第1の無溶剤型接着剤の製造>
ポリオール(A1)、ポリイソシアネート(B1)を表4に記載の配合量で混合し、第1の無溶剤型接着剤1-1~1-5を得た。得られた接着剤について、配合直後の粘度を測定し、表4に示した。
【0071】
【0072】
<ポリオール(A2)の製造>
(A2-1)
合成例3で得られたポリエステルポリオール-3を30部、合成例6で得られたポリエステルポリオール-6を50部、PPG-400を15部、DEGを5部の割合で配合し、溶液が均一になるまで撹拌して、ポリエステルポリオールとポリプロピレングリコールとDEGとの混合物であるポリオール(A2-1)を得た。
【0073】
(A2-2、A2-4)
表5に示す組成に変更した以外は、(A2-1)と同様にして、ポリオール(A2-2)、(A2-4)を得た。
【0074】
(A2-3)
PPG-400を35部、PPG-2000を19部、PPG-400-3官能を33部、4,4’-MDIを13部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で4時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、ポリエーテルウレタンポリオールであるポリオール(A2-3)を得た。
【0075】
得られたポリオールについて、粘度測定値と共に表5に示す。
【0076】
【0077】
表5中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
DEG:ジエチレングリコール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0078】
<ポリイソシアネート(B2)の製造>
(B2-1)
PPG-400を5部、PPG-2000を28部、PPG-400-3官能を4部、4,4’-MDIを25部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリウレタンポリイソシアネートを得た。次いで、HDIビゥレットを13部、液状MDIを13部、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物を12部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで撹拌して、イソシアネート基含有率が16.5%のポリイソシアネート(B2-1)を得た。
【0079】
(B2-2、B2-4)
表6に示す組成に変更した以外は、(B2-1)と同様にして、イソシアネート基含有率が21.5%のポリイソシアネート(B2-2)、イソシアネート基含有率が10.7%のポリイソシアネート(B2-4)を得た。
【0080】
(B2-3、B2-5)
表6に示す通り、(B2-3)には(B1-1)を用いた。また(B2-5)には(B1-4)を用いた。
【0081】
得られたポリイソシアネートについて、粘度測定値と共に表6に示す。
【0082】
【0083】
表6中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
HDIビゥレット:ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体
液状MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物
クルードMDI:ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物
【0084】
<第2の無溶剤型接着剤の製造>
ポリオール(A2)、ポリイソシアネート(B2)を表7に記載の配合量で混合し、第2の無溶剤型接着剤2-1~2-5を得た。得られた接着剤について、配合直後の粘度を測定し、表7に示した。
【0085】
【0086】
<積層体の作製>
[実施例1]
塗工ロール温度を60℃に設定した無溶剤接着剤ラミネーターを用いて、厚み12μm、600mm幅のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「エステルフィルムE5102」)上に、接着剤1-1を塗布量1.5g/m2、塗工速度150m/分で塗布した。その後、厚み7μm、600mm幅のアルミニウム箔と、接着剤塗布面とを貼り合わせた(第1の工程)。
次いで、塗工ロール温度を40℃に設定した無溶剤接着剤ラミネーターを用いて、上記得られた積層体のアルミニウム箔上に接着剤2-1を塗布量2.0g/m2、塗工速度150m/分で塗布した。その後、厚み70μm、600mm幅の無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ社製「トレファンZK207」)と、接着剤塗布面とを貼り合わせた(第2の工程)。
上述の工程により、積層体を約4000m製造した。
なお、接着剤1-1と接着剤2-1の40℃における粘度差は5,230mPa・s、60℃における粘度差は1,250mPa・sであった。
【0087】
[実施例2~8、10~17、比較例1]
接着剤、基材、塗工条件を表8に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
なお、実施例11~15の中間基材、及び実施例17の第1の基材として厚み15μmのナイロンフィルム(ユニチカ社製「エンブレムONBC」)を使用した。実施例15~17の第2の基材には、厚み100μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製「TUX-FCD」)を使用した。実施例17の中間基材には、厚み12μmのアルミ蒸着PET(麗光社製「ダイアラスターH27」、VMPET)を使用した。
【0088】
<積層体の評価>
得られた
工程2の加工中に起こる現象について以下の評価を行った。結果を表8~表9に示す
【0089】
〔第1の基材と中間基材との間のデラミネーション〕
第2の工程において、塗工速度150m/分まで増速する第1の過程、150m/分に到達してから塗布量が安定化するまでの第2の過程、塗布量が安定してから継続して積層体が形成される第3の過程、最後に加工停止ボタンを押して減速する第4の過程の4つに分けた際、それぞれの過程において、第1の工程で形成された中間積層体のフィルムがとられ、第1の基材と中間基材とがデラミネーションしたかどうかを確認した。デラミネーションするとエアーが混入する。第1の基材と中間基材とがデラミネーションするほど中間積層体のフィルムがとられた場合は、塗工部において異音が発生するため、異音の有無でデラミネーションの有無を判断した。評価は以下の基準で行った。
A:全ての過程においてデラミネーションが発生しない(良好)
B:第2及び第3の過程においてデラミネーションが発生しないが、第1及び第4の過程においてデラミネーションが発生する(使用可能)
C:第3の過程においてデラミネーションが発生しないが、第1、第2及び第4の過程においてデラミネーションが発生する。又は、全ての工程においてデラミネーションが発生する(使用不可)
【0090】
〔テレスコープ〕
第2の工程において、約4000mの積層体の巻取りロールのどの段階からテレスコープが発生するかを目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:テレスコープ無し(良好)
B:2000m未満でテレスコープ無し、2000m以上でテレスコープ発生(使用可能)
C:2000m未満でテレスコープ発生(使用不可)
【0091】
【0092】
評価結果によれば、第1の接着剤と第2の接着剤との40℃における粘度差を2,000mPa・s以上とすることで、第1の基材と中間積層体との間のデラミネーションや、中間積層体のズレによるテレスコープが発生せず、良好な3層構成の積層体を作製することができた。
特に実施例1~4のように、第1の無溶剤型接着剤として、硬化速度が遅い脂肪族系ポリイソシアネートを含む接着剤を用いた場合においても、第2の無溶剤型接着剤との粘度差を大きくすることによって、第1工程と第2工程との間のエージングを実施しなくても良好な3層構成の積層体を作製することができ、本製造方法が有用であることが示された。
一方、比較例1は、第1の接着剤と第2の接着剤との40℃における粘度差が小さく2,000mPa・s未満であるため、第1の基材と中間積層体との間のデラミネーション、及び中間積層体のズレによるテレスコープを共に解決することはできなかった。