(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】揮散装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20250917BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20250917BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20250917BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
A61L9/12
B65D83/00 F
B65D85/00 A
A01M1/20 D
(21)【出願番号】P 2020155551
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒子
(72)【発明者】
【氏名】三上 礼
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-113869(JP,A)
【文献】特開平10-291553(JP,A)
【文献】特開2002-145307(JP,A)
【文献】特開2020-183245(JP,A)
【文献】特開2019-094110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
B65D 1/00-1/48
B65D 23/00-25/56
B65D 67/00-79/02,81/18-81/30,81/38,85/88
B65D 83/00,83/08-83/76
B65D 85/00-85/28,85/575
A01M 1/00-99/00
A45D 33/00-40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香成分を含む液状の薬剤を収容した容器と、
前記薬剤を重力方向の上方へ吸い上げる吸液部材と、
前記吸液部材により吸い上げた薬剤を担持する担持体と、
筒状の周壁を有し、前記周壁の内面に前記担持体を支持する支持部を有する蓋体と、を有し、
前記周壁が、
上下に離間して前記周壁の周方向に延設された2つのスリットと前記スリットの周方向の端部同士をつないだ上下に延びた2つのヒンジ部によって囲まれた前記周壁の一部である矩形の変形部を有し、前記変形部を内側に変形させることにより前記支持部により支持された前記担持体より重力方向の下方に開口部を形成可能
である、
揮散装置。
【請求項2】
2つの前記スリットのうち上方のスリットは、前記支持部により支持された前記担持体の下方にある、
請求項1の揮散装置。
【請求項3】
前記開口部は、前記支持部により支持された前記担持体の下方に少なくともその一部が重なる、
請求項2の揮散装置。
【請求項4】
前記2つのヒンジ部は、前記周壁の薄肉部分により形成されている、
請求項1の揮散装置。
【請求項5】
前記周壁は、2つの前記変形部を有する、
請求項1の揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芳香剤などの揮発性を有する薬剤を揮散させる揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤を揮散させる揮散装置として、例えば、薬剤を収容した容器の蓋の一部を押し込んで変形させることで、薬剤を揮散させるための開口部を広げる構造を有するものが知られている。このように、蓋の一部を変形させて開口部を開く構成によると、揮散装置の使用開始時における作業性を向上させることができ、利便性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-291553号公報
【文献】特開2002-145307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芳香剤は、外気に触れることで揮散を開始する。すなわち、芳香剤が外気に触れると、芳香成分を含む気体が空気中に揮散し始める。しかし、芳香成分を含む気体の蒸気圧が低かったり空気の対流があまり無い状況では、十分な揮散量で芳香剤を揮散させることができない。
【0005】
また、芳香成分を含む気体は、一般に、空気より重く、重力方向の下方へと流れやすい。よって、芳香剤の揮散量を多くするためには、芳香剤に外気を触れ易くするとともに、芳香剤の揮散を開始する位置より下方に揮散のための開口部を設けることが望ましい。
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された発明の蓋は、薬剤を収容した容器の上端部に取り付けるため、蓋に形成される開口部も薬剤より上方に位置することになる。つまり、特許文献1及び特許文献2に開示された発明の蓋は、芳香剤より上方に開口部を有するため、薬剤を十分に満足のいく揮散量で揮散させることは難しい。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、薬剤の揮散量を多くすることができる揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の揮散装置の一態様は、芳香成分を含む液状の薬剤を収容した容器と、薬剤を重力方向の上方へ吸い上げる吸液部材と、吸液部材により吸い上げた薬剤を担持する担持体と、筒状の周壁を有し、周壁の内面に担持体を支持する支持部を有する蓋体と、を有する。周壁は、上下に離間して周壁の周方向に延設された2つのスリットとスリットの周方向の端部同士をつないだ上下に延びた2つのヒンジ部によって囲まれた周壁の一部である矩形の変形部を有する。変形部を内側に変形させることにより支持部により支持された担持体より重力方向の下方に開口部を形成可能である。
【0009】
また、本発明の揮散装置の一態様は、薬剤を担持した担持体と、担持体を支持する支持部と、支持部により支持された担持体より重力方向の下方に設けた開口部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、薬剤の揮散量を多くすることができる揮散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る揮散装置を示す正面図である。
【
図3】
図3は、
図1の揮散装置をF3-F3線で切断した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る揮散装置100ついて図面を参照して説明する。
図1は、揮散装置100の正面図であり、
図2は、揮散装置100をその中心線を通る面で切断した縦断面図であり、
図3は、揮散装置100を
図1のF3-F3線で切断した横断面図である。
【0013】
図1に示すように、揮散装置100は、揮発性を有する芳香剤や消臭剤、防虫剤などの薬剤Y(
図2)を収容した容器10と、容器10に対して着脱自在に取り付けた蓋体20と、を有する。本実施形態の揮散装置100で使用する薬剤Yは、例えば、天然香料や合成香料を含む液状の薬剤である。
【0014】
図2に示すように、容器10は、略円筒形状の首部12、略楕円筒形状の胴部16、首部12の下端縁から胴部16の上端縁に向けて拡開した形状の肩部14、および胴部16の下端を塞ぐ底部18を一体に有する。胴部16は、楕円筒形状に限らず、円筒形状や円筒を扁平につぶした形状、多角形の筒形状などであってもよい。容器10は、例えば、ポリエチレンテフタレート(PET)により、いわゆるボトル形状に形成されている。
【0015】
首部12の上端には、薬剤Yを容器10に注入するための略円形の開口部12aが設けられている。首部12の外周面には、ネジ12bが設けられている。首部12のネジ12bには、図示しないキャップのネジが螺合可能となっており、開口部12aをキャップにより密閉することができるようになっている。揮散装置100の出荷時には、薬剤Yを収容した容器10の開口部12aがキャップにより塞がれる。
【0016】
首部12の開口部12aには、中栓11が装着される。中栓11は、首部12の開口部12aの縁を上方から覆う円環状の上壁部11a、上壁部11aの下面から垂設されて首部12の内周面に沿って延びた円筒状の筒部11b、後述する吸液芯13(吸液部材)を挿通して保持する管部11c、及び管部11cの上端縁と上壁部11aの内周縁の間に設けた略有底円筒形の液受部11dを有する。液受部11dには、少なくとも1つの図示しない通気孔が設けられている。
【0017】
中栓11は、管部11cに吸液芯13を差し込んで保持せしめた状態(
図2に示す状態)で、筒部11bを容器10の開口部12aに嵌入することで、容器10に装着される。この際、中栓11の管部11cは、吸液芯13の下端が容器10の底部18の内面に当接し、且つ吸液芯13の上端が中栓11の上壁部11aより上方に突出する位置で吸液芯13を保持する。なお、この状態で、中栓11の上壁部11aの下面は、首部12の開口部12aの縁に接触する。
【0018】
吸液芯13は、薬剤Yを吸い上げることができる材料、例えば、フェルト、合成繊維束、天然繊維束、発泡合成樹脂などの多孔質素材1種又は2種以上を混合した材料により棒状に形成されている。吸液芯13は、容器10内に収容した薬剤Yを吸い上げて後述する揮散体26(担持体)へ導くためのものである。
【0019】
蓋体20は、容器10の胴部16と略同じ断面形状の周壁22、及び周壁22の上端を塞いだ天壁24を一体に有する。周壁22は、略楕円筒形状に形成されている。天壁24は、略楕円板状に形成されている。天壁24の外周縁は周壁22の上端縁とつながっている。周壁22及び天壁24の少なくとも一方は、薬剤Yを揮散させるための少なくとも1つの図示しない揮散孔を備えてもよい。
【0020】
周壁22の内面には、蓋体20の天壁24の内面側に対向して揮散体26を支持するための複数(本実施形態では4つ)の支持突起25(支持部)が一体に突設されている。揮散体26は、蓋体20を容器10に装着する前の状態(図示せず)で、4つの支持突起25によって支持され、蓋体20を容器10に装着した状態(
図2)で、吸液芯13の上端によって支持されて、4つの支持突起25から上方へわずかに離間する。また、周壁22は、後述する2枚の変形板部28(変形部)を備えている。容器10と蓋体20の間には、揮散体26を収容する空間、及び変形板部28を変形させるための空間が設けられている。
【0021】
図3に示すように、4つの支持突起25は、楕円形の長軸が周壁22と交差する位置と楕円形の短軸が周壁22と交差する位置との間にそれぞれ配置されている。
図2に示すように、各支持突起25は、その上面25aと天壁24の内面との間の距離が揮散体26の厚さよりわずかに大きくなる高さ位置に配置されている。4つの支持突起25の上面25aは、天壁24と平行な面と面一に配置されている。4つの支持突起25は、上面25aに揮散体26の下面26aを接触させることで、揮散体26の下面26aの外周縁近くを重力方向の下方から支える。4つの支持突起25は、揮散体26が吸液芯13によって支持されて傾いた際にも、揮散体26を下から支える。各支持突起25の上面25aは、蓋体20を容器10に装着した
図2に示す状態で、中栓11の上壁部11aの上面よりわずかに下方に位置する。
【0022】
揮散体26は、重力方向に対して全ての支持突起25に重なる大きさ及び形状を有し、一定の厚み(例えば、1mm~50mm程度の厚み)を有する板状に形成されている。本実施形態では、揮散体26は、略楕円形の板状体の長軸方向の両端を互いに平行に切り取った形状に形成されている。揮散体26は、表面積を広くすることで、吸液芯13により吸い上げた薬剤Yを吸収して含浸させて担持した状態で、その表面から薬剤Yを空気中に効率良く揮散させることができる。揮散体26は、薬剤Yに接触することで薬剤Yを吸引可能な材料、例えば、天然紙、合成紙などの紙類、又はフェルト、合成繊維束、天然繊維束、発泡合成樹脂などの多孔質素材によって形成されている。
【0023】
変形板部28は、蓋体20の周壁22の比較的曲率が小さい部位に設けられている。つまり、変形板部28は、
図3に示すように、楕円形の短軸が交差する周壁22の正面側及び背面側にそれぞれ設けられている。ここでは、揮散装置100の正面側の一方の変形板部28について説明し、もう一方の変形板部28の説明を省略する。
【0024】
図1に示すように、蓋体20の周壁22の正面側には、周壁22を貫通して2本のスリット31、32が設けられている。2本のスリット31、32は、それぞれ周壁22の周方向に延設され、上下に離間して互いに平行に設けられている。2本のスリット31、32は同じ長さを有する。図示上方のスリット31は、上述した4つの支持突起25の上面25aよりわずかに下方に設けられている。
【0025】
また、周壁22には、2つのヒンジ部33、34が設けられている。ヒンジ部33、34は、それぞれ、2本のスリット31、32の両端をつなぐ位置に設けられている。つまり、一方のヒンジ部33は、
図1で上方のスリット31の右端と下方のスリット32の右端をつなぐ位置に設けられている。もう一方のヒンジ部34は、
図1で上方のスリット31の左端と下方のスリット32の左端をつなぐ位置に設けられている。2つのヒンジ部33、34は、互いに平行に重力方向に延設されている。そして、2本のスリット31、32と2つのヒンジ部33、34で囲まれた周壁22の略矩形の部位が変形板部28として機能する。
【0026】
図3に部分的に拡大して示すように、変形板部28のヒンジ部33は、蓋体20の周壁22の外周面に設けた外溝33aと周壁22の内周面に設けた内溝33bを有する。外溝33a及び内溝33bは、それぞれ重力方向に直線状に延設されている。外溝33aは、ヒンジ部33に略対向する位置で周壁22の内面に突設した支持突起25より変形板部28側にわずかにずれた位置に設けられている。内溝33bは、周壁22の周方向に関して外溝33aと部分的に重なるように、支持突起25と外溝33aの間に設けられている。蓋体20の周壁22に設けた4つのヒンジ部33、34は、同じ構造を有する。
【0027】
各ヒンジ部33、34は、周壁22に溝を設けて周壁22を部分的に薄肉にすることにより形成される。外溝33aは、断面が略半円形の溝であり、内溝33bは、断面が扁平な矩形の溝である。外溝33aの深さは、内溝33bの深さより深い。各ヒンジ部33、34において、外溝33aの底と内溝33bの底の間の直線状の薄肉部分が周壁22の他の部分より折れ易くなっている。
【0028】
変形板部28は、周壁22と同じ形状に湾曲している。このため、湾曲の外側から蓋体20の内部に向けて変形板部28を押し込むと、変形板部28は、周壁22及び変形板部28の弾性変形を伴って、
図3に実線で示す位置から破線で示す位置まで内側に凹む。このとき、変形板部28の左右両側にあるヒンジ部33、34を支点にして変形板部28が図示破線の状態に逆方向に湾曲する。内側に押し込んだ後の変形板部28の曲率は、変形前の曲率と略同じ曲率である。
【0029】
変形板部28を上記のように内側に凹ませることにより、周壁22と変形板部28の間に
図3に示すような開口部29が形成される。開口部29は、変形前の変形板部28の円弧と変形後の変形板部28の円弧を重ねた形状を有する。
図2に示すように、変形板部28は、揮散体26より重力方向の下方に位置する。このため、開口部29は、揮散体26に対して重力方向の下方に位置する。なお、本実施形態では、開口部29は、重力方向に関して揮散体26と少なくとも部分的に重なる位置に配置されている。
【0030】
ここで、揮散装置100の使用開始時における手順について簡単に説明する。
揮散装置100の出荷時には、液状の薬剤Yを収容した容器10の開口部12aが図示しないキャップにより塞がれている。使用開始時には、キャップを外して、中栓11の管部11cに差し込んだ吸液芯13の上端を容器10の開口部12aより上方に露出させる。吸液芯13の下端は、容器10の底部18の内面に接触している。この状態で、吸液芯13の上端は、中栓11の上壁部11aの上面よりわずかに上方に突出している。
【0031】
この後、揮散体26を4つの支持突起25の上面25aと天壁24の内面との間に収容配置した蓋体20を容器10に装着する。この状態を
図2に示す。上述したように、吸液芯13の上端が中栓11の上壁部11aの上面より上方に突出しているため、蓋体20を容器10に装着すると、揮散体26の下面26aが吸液芯13の上端によって4つの支持突起25から離間する方向に押し上げられ、揮散体26が4つの支持突起25の上面25aから上方にわずかに離間した状態となる。
【0032】
容器10内に収容した薬剤Yは、吸液芯13によって吸い上げられて、揮散体26に含浸される。揮散体26に染み込んだ薬剤Yは、揮散体26の表面から揮散する。このとき、蓋体20の周壁22や天壁24に設けた図示しない揮散孔を介して蓋体20内に空気が流通し、揮散孔を介して薬剤Yが揮散を開始する。
【0033】
次に、上述した変形板部28の機能について説明する。
上述したように、揮散装置100の使用を開始した状態で、蓋体20の変形板部28を
図3で実線で示す位置(押し込む前の位置)から破線で示す位置まで内側に凹ませると、左右両側のヒンジ部33、34を支点にして変形板部28が逆方向に湾曲するように変形する。このような変形は、不可逆的な変形であり、通常は、図中破線で示す位置(凹ませた位置)から実線で示す位置(元の位置)へ変形板部28を戻すことはしない。しかし、蓋体20を容器10から分離して変形板部28を内側から押し戻したり、図示しない工具などを用いて変形板部28を元の形状(
図3に実線で示す形状)に戻したりすることもできる。
【0034】
上述した変形板部28の変形は、利用者が薬剤Yの揮散量を多くしたいときに実施する。この際、蓋体20に形成される開口部29は、上述したように、揮散体26の下方に形成され、揮散体26に部分的に重なる位置に形成される。よって、変形板部28を押し込んで開口部29を開けると、揮散体26から揮散した薬剤Yが開口部29を通って揮散装置100の外へ揮散する。
【0035】
芳香成分を含む薬剤Yは、空気中に揮散した状態でその比重により重力方向の下方へと流れ易い。よって、本実施形態のように、薬剤Yを揮散する揮散体26より重力方向の下方に開口部29を設けた場合、揮散した薬剤Yが流れ易い薬剤Yの流通経路上に開口部29を配置することになり、薬剤Yの揮散効率を高めることができ、薬剤Yの揮散量を多くすることができる。
【0036】
また、本実施形態によると、揮散体26の重力方向の下方に少なくとも部分的に重なる位置に開口部29を設けたため、揮散体26の下面側から揮散する薬剤Yを効果的に揮散させることができ、薬剤Yの揮散量を多くすることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態によると、蓋体20の変形板部28を押し込んで凹ませるだけで、蓋体20の周壁22に比較的大きな開口部29を設けることができ、利用者が所望するタイミングで容易に薬剤Yの揮散量を多くすることができる。また、蓋体20の周壁22には、2つの変形板部28が設けられているため、薬剤Yの揮散量を段階的に調節することもできる。つまり、通常の揮散量にする場合には、2つの変形板部28を両方とも凹ませない初期の状態で使用し、揮散量を多くしたいときには、一方の変形板部28を凹ませて開口部29を開け、さらに揮散量を多くしたい場合に、もう一方の変形板部28を凹ませればよい。
【0038】
また、本実施形態によると、蓋体20の周壁22を片手で持って変形板部28を押し込むことができ、揮散量を多くするための操作を片手で行うことができる。また、変形板部28を押し込んだときに、変形板部28が逆方向に湾曲してその位置で止まるため、手を放しても開口部29が塞がることがなく、操作を容易且つ確実にすることができる。また、変形板部28を押し込んだ際に、変形板部28が逆方向に湾曲すると、クリック感を得ることができ、開口部29を開けたことを容易に判断することができる。
【0039】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0040】
例えば、上述した実施形態では、蓋体20の周壁22に2つのスリット31、32と2つのヒンジ部33、34により囲んだ変形板部28を設けた場合について説明したが、蓋体20に開口部29を形成するための構成は本実施形態に限定されるものではない。例えば、周壁22の下端縁を1辺とする変形板部を設けて開口部を形成可能としてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、蓋体20の周壁22に設けたヒンジ部33、34を薄肉部分により形成した場合について説明したが、これに限らず、周壁22の他の部分より折れ易くできればいかなる構造を採用してもよい。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
液状の薬剤を収容した容器と、
前記薬剤を重力方向の上方へ吸い上げる吸液部材と、
前記吸液部材により吸い上げた薬剤を担持する担持体と、
前記担持体を支持する支持部を有する蓋体と、を有し、
前記蓋体は、その一部を内側に変形させることにより前記支持部により支持された前記担持体より重力方向の下方に開口部を形成可能な変形部を有する、
揮散装置。
[2]
前記開口部は、前記支持部により支持された前記担持体の下方に少なくともその一部が重なる、
[1]の揮散装置。
[3]
前記蓋体は、筒状の周壁を有し、
前記周壁は、その内面に前記支持部を有するとともに、前記支持部より下方に前記変形部を有する、
[1]及び[2]のいずれかの揮散装置。
[4]
前記変形部は、上下に離間して前記周壁の周方向に延設された2つのスリットと前記スリットの周方向の端部同士をつないだ上下に延びた2つのヒンジ部との間に設けられており、
前記2つのヒンジ部は、前記周壁の薄肉部分により形成されている、
[3]の揮散装置。
【符号の説明】
【0042】
10…容器、 13…吸液芯、 20…蓋体、 22…周壁、 24…天壁、 25…支持突起、 25a…上面、 26…揮散体、 26a…下面、 28…変形板部、 29…開口部、 31、32…スリット、 33、34…ヒンジ部、 33a…外溝、 33b…内溝、 100…揮散装置、 Y…薬剤。