(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】基板処理装置、および、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250917BHJP
【FI】
H01L21/304 647B
H01L21/304 648K
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2021192504
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】鰍場 真樹
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-324064(JP,A)
【文献】特開平09-045654(JP,A)
【文献】特開2007-095888(JP,A)
【文献】特開2007-067072(JP,A)
【文献】特開2004-014713(JP,A)
【文献】特開2003-338484(JP,A)
【文献】特開2019-169624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面を処理液で処理する基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持される基板の基板特性
である基板の主面に対する処理液の接触角、および
、処理液の処理液特性
である処理液の表面張力に基づいて、処理液に対する界面活性剤の目標量を算出する目標量算出ユニットと、
前記目標量算出ユニットによって算出された前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて吐出する処理液吐出部材とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
基板の主面を処理液で処理する基板処理装置であって、
基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持される基板の基板特性および処理液の処理液特性に基づいて、処理液に対する界面活性剤の目標量を算出する目標量算出ユニットと、
前記目標量算出ユニットによって算出された前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて吐出する処理液吐出部材と
前記基板保持ユニットに保持される基板の主面に向けて特性取得液を吐出する特性取得液吐出部材と、
前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面上の特性取得液の液膜の厚さを前記基板特性として測定する膜厚測定ユニットとを
含む、基板処理装置。
【請求項3】
前記基板特性および前記処理液特性の組み合わせ毎に設定された複数の目標量を示す処理内容テーブルを記憶する処理内容テーブル記憶部をさらに含み、
前記目標量算出ユニットが、前記処理内容テーブルに基づいて前記目標量を算出する、請求項1
または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記膜厚測定ユニットによって測定された前記液膜の厚さが閾値以上であるか否かを判定する判定ユニットをさらに含み、
前記処理液吐出部材は、前記判定ユニットが前記液膜の厚さが前記閾値以上であると判定した場合に、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を吐出し、前記判定ユニットが前記液膜の厚さが前記閾値よりも小さいと判定した場合に、界面活性剤を含有しない処理液を吐出する、請求項
2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記目標量の界面活性剤を含有する処理液で前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面の全体を覆うために必要な流量を、必要吐出流量として記憶する必要吐出流量記憶部と、
前記処理液吐出部材から吐出される処理液の流量を前記必要吐出流量に調整する流量調整ユニットとをさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理液吐出部材に処理液を供給する処理液供給ユニットと、
前記目標量に応じて、前記処理液供給ユニット内の処理液に界面活性剤を添加する添加ユニットとをさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板の主面を処理液で処理する基板処理方法であって、
基板保持ユニットに保持される基板の基板特性
である基板の主面に対する処理液の接触角、および、処理液の処理液特性
である処理液の表面張力に基づいて、処理液に対する界面活性剤の目標量を算出する目標量算出工程と、
前記目標量算出工程において算出された前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を前記基板の主面に向けて処理液吐出部材から吐出する処理液吐出工程とを含む、基板処理方法。
【請求項8】
基板の主面を処理液で処理する基板処理方法であって、
基板保持ユニットに保持される基板の基板特性、および、処理液の処理液特性に基づいて、処理液に対する界面活性剤の目標量を算出する目標量算出工程と、
前記目標量算出工程において算出された前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を前記基板の主面に向けて処理液吐出部材から吐出する処理液吐出工程と、
前記基板の主面に向けて特性取得液吐出部材から特性取得液を吐出する特性取得液吐出工程と、
前記基板の主面上の特性取得液の液膜の厚さを前記基板特性として測定する膜厚測定工程とを
含む、基板処理方法。
【請求項9】
前記目標量算出工程が、前記基板特性および前記処理液特性の組み合わせ毎に設定された複数の目標量を示す処理内容テーブルに基づいて前記目標量を算出する工程を含む、請求項
7または8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記基板特性および前記処理液特性に基づいて、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液で前記基板の主面の全体を覆うために必要な流量を必要吐出流量として算出する必要吐出流量算出工程をさらに含み、
前記処理液吐出工程が、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を前記処理液吐出部材から前記必要吐出流量で吐出する工程を含む、請求項
7~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置、および、基板を処理する基板処理方法に関する。
【0002】
処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0003】
下記特許文献1および2には、基板処理において、界面活性剤を含有するリンス液が用いることでパターン倒れを防止できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-169624号公報
【文献】特開2007-95888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の主面から露出する物質の種類および基板の主面の表層部の構造等の基板の主面の状態によって、基板の主面に対するリンス液の表面張力が異なる。そのため、基板の主面を適切に処理するために必要な界面活性剤の量は、基板の主面の状態に依存する。しかしながら、特許文献1および2では、処理対象となる基板の主面の状態に応じて界面活性剤の量を変更することについては、考慮されていない。
【0006】
そこで、この発明の1つの目的は、適切な量の界面活性剤を含有する処理液を基板に供給することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、基板の主面を処理液で処理する基板処理装置を提供する。前記基板処理装置が、基板を保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持される基板の基板特性および処理液の処理液特性に基づいて、処理液に対する界面活性剤の目標量を算出する目標量算出ユニットと、前記目標量算出ユニットによって算出された前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面に向けて吐出する処理液吐出部材とを含む。
【0008】
この装置によれば、基板保持ユニットに保持される基板の基板特性と、基板の主面の処理に用いられる処理液の処理液特性とに基づいて、界面活性剤の目標量が算出される。そのため、基板特性および処理液特性の組み合わせに応じた適切な量の界面活性剤を含有する処理液で基板を処理することができる。
【0009】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置は、前記基板特性および前記処理液特性の組み合わせ毎に設定された複数の目標量を示す処理内容テーブルを記憶する処理内容テーブル記憶部をさらに含む。前記目標量算出ユニットが、前記処理内容テーブルに基づいて前記目標量を算出する。
【0010】
この装置によれば、予め用意された処理内容テーブルに基づいて目標量が算出される。そのため、基板処理中に基板特性を取得する場合と比較して、目標量を速やかに算出できる。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記基板特性が、前記基板保持ユニットに保持される基板の主面に対する純水の表面張力を含み、前記処理液特性が、処理液の表面張力を含む。
【0012】
そのため、基板の主面から露出する物質、または、基板の主面に凹凸状態が異なる場合であっても、基板の主面に対する純水の表面張力が同等である場合には、目標量として同じ値を採用することができる。そのため、基板の主面から露出する物質、および、基板の主面の凹凸状態毎に目標量を準備する必要がないため、処理内容テーブルを簡素化できる。
【0013】
同様に、処理液に含有される物質の化学種、または、処理液の濃度が異なる場合であっても、処理液の表面張力が同等である場合、目標量として同じ値を採用することができる。そのため、処理液に含有される物質の化学種、または、処理液の濃度毎に目標量を準備する必要がないため、処理内容テーブルを簡素化できる。
【0014】
この発明の一実施形態において、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットに保持される基板の主面に向けて特性取得液を吐出する特性取得液吐出部材と、前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面上の特性取得液の液膜の厚さを前記基板特性として測定する膜厚測定ユニットとをさらに含む。
【0015】
この装置によれば、基板の主面に処理液を供給する前に、基板の主面上の特性取得液の液膜の厚さを基板特性として測定することで、液膜の厚さに基づいて目標量を算出することができる。そのため、処理対象となる基板の基板特性を、予め準備することなく基板処理中に取得できる。また、基板処理中の基板の現物に適した目標量を算出することができる。そのため、より適切な量の界面活性剤を含有する処理液を基板の主面に供給できる。
【0016】
この発明の一実施形態において、前記基板処理装置が、前記膜厚測定ユニットによって測定された前記液膜の厚さが閾値以上であるか否かを判定する判定ユニットをさらに含む。そして、前記処理液吐出部材は、前記判定ユニットが前記液膜の厚さが前記閾値以上であると判定した場合に、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を吐出し、前記判定ユニットが前記液膜の厚さが前記閾値よりも小さいと判定した場合に、界面活性剤を含有しない処理液を吐出する。
【0017】
この装置によれば、液膜の厚さと閾値との大小関係に基づいて界面活性剤の要否についても判断することができる。そのため、界面活性剤の過剰な使用を抑制できる。さらに、界面活性剤が必要な場合には、基板の主面の全体を速やかに覆うために必要な量の界面活性剤を含有する処理液で基板を処理することができる。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液で前記基板保持ユニットに保持されている基板の主面の全体を覆うために必要な流量を、必要吐出流量として記憶する必要吐出流量記憶部と、前記処理液吐出部材から吐出される処理液の流量を前記必要吐出流量に調整する流量調整ユニットとをさらに含む。
【0019】
この装置によれば、処理液吐出部材から吐出される処理液の流量が、基板の主面を覆うために必要な必要吐出流量となるように調整される。したがって、基板の主面に供給される処理液の使用量を適切に削減できる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記処理液吐出部材に処理液を供給する処理液供給ユニットと、前記目標量に応じて、前記処理液供給ユニット内の処理液に界面活性剤を添加する添加ユニットとをさらに含む。
【0021】
この装置によれば、目標量に応じて、処理液供給ユニット内の処理液に界面活性剤を添加することができる。そのため、界面活性剤の含有量が互いに異なる処理液を事前に準備する必要がない。
【0022】
この発明の他の実施形態は、基板の主面を処理液で処理する基板処理方法を提供する。前記基板処理方法が、基板保持ユニットに保持される基板の基板特性、および、処理液の処理液特性に基づいて、処理液に対する界面活性剤の目標量を算出する目標量算出工程と、前記目標量算出工程において算出された前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を前記基板の主面に向けて処理液吐出部材から吐出する処理液吐出工程とを含む。この基板処理方法によれば、上述した基板処理装置と同様の効果を奏する。
【0023】
この発明の他の実施形態では、前記目標量算出工程が、前前記基板特性および前記処理液特性の組み合わせ毎に設定された複数の目標量を示す処理内容テーブルに基づいて前記目標量を算出する工程を含んでいてもよい。
【0024】
この発明の他の実施形態では。前記基板特性が、前記基板保持ユニットに保持される基板の主面に対する処理液の表面張力を含み、前記処理液特性が、処理液の表面張力を含んでいてもよい。
【0025】
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板の主面に向けて特性取得液吐出部材から特性取得液を吐出する特性取得液吐出工程と、前記基板の主面上の特性取得液の液膜の厚さを前記基板特性として測定する膜厚測定工程とをさらに含んでいてもよい。
【0026】
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板特性および前記処理液特性に基づいて、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液で前記基板の主面の全体を覆うために必要な流量を必要吐出流量として算出する必要吐出流量算出工程をさらに含む。そして、前記処理液吐出工程が、前記目標量の界面活性剤を含有する処理液を前記処理液吐出部材から前記必要吐出流量で吐出する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【
図1B】
図1Bは、前記基板処理装置の図解的な立面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットおよび液体供給ユニットの構成について説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】
図4は、前記基板処理装置に備えられる制御装置の記憶部に記憶される処理内容テーブルの内容例を示している。
【
図5】
図5は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図6は、前記基板処理装置に備えられる制御装置の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【
図7】
図7は、前記制御装置による内容変更処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成について説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る前記基板処理装置に備えられる制御装置の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る前記制御装置による内容変更処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る制御装置の記憶部に記憶される処理内容テーブルの内容例を示している。
【
図12】
図12は、前記内容変更処理の対象となる液処理工程と、特性取得工程が行われる液処理工程との対応関係について説明するためのテーブルである。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る前記基板処理装置によって実行される基板処理の別の例を説明するためのフローチャートである。
【
図14】
図14は、
図13に示す基板処理を実行する場合において、前記内容変更処理の対象となる液処理工程と、特性取得工程が行われる液処理工程との対応関係について説明するためのテーブルである。
【
図15A】
図15Aは、界面活性剤を添加することによる処理液の表面張力の低減効果について実証するために行われた接触角測定実験の結果を示すグラフである。
【
図15B】
図15Bは、界面活性剤を添加することによる処理液の表面張力の低減効果について実証するために行われた表面張力測定実験の結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、カバレッジ領域観測実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0029】
<第1実施形態に係る基板処理装置の機械的構成>
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1のレイアウトを示す図解的な平面図である。
図1Bは、基板処理装置1の図解的な立面図である。
【0030】
基板処理装置1は、基板Wを液体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2に液体を供給する複数の液体供給ユニット3と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御装置4とを備える。
【0031】
搬送ロボットIRは、キャリアCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。搬送ロボットIRおよびCRは、複数のロードポートLPから複数の処理ユニット2に向かって延びる搬送経路TR上に配置されている。
【0032】
複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。詳しくは後述するが、処理ユニット2内で基板Wに向けて供給される処理液には、薬液およびリンス液等が含まれる。
【0033】
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーTWを形成している。各処理タワーTWは、上下方向に積層された複数(たとえば、3つ)の処理ユニット2を含む。4つの処理タワーTWは、搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている。
【0034】
基板処理装置1は、バルブや配管等を収容する複数の流体ボックス5と、薬液、リンス液またはこれらの原料液等を貯留するタンクを収容する貯留ボックス6とを含む。処理ユニット2および流体ボックス5は、平面視略四角形状のフレーム7の内側に配置されている。
【0035】
貯留ボックス6は、
図1Aの例では、フレーム7の外側に配置されている。貯留ボックス6は、
図1Aの例とは異なり、フレーム7の内側に配置されていてもよい。貯留ボックス6は、たとえば、複数の流体ボックス5と同数設けられている。
【0036】
各貯留ボックス6に貯留されている液体は、その貯留ボックス6に対応する流体ボックス5を介して、この流体ボックス5に対応する処理タワーTWを構成する複数(たとえば、3つ)の処理ユニット2に供給される。
【0037】
各液体供給ユニット3は、各処理タワーTWを構成する処理ユニット2に処理液を供給する。詳しくは後述するが、各液体供給ユニット3は、対応する流体ボックス5および貯留ボックス6内に配置されている。流体ボックス5および貯留ボックス6には、液体供給ユニット3の全体が収容されている必要はなく、対応する液体供給ユニット3の少なくとも一部が収容されている。
図1Aでは、液体供給ユニット3を概念的に示しており、液体供給ユニット3は、厳密には、平面視で
図1Aに示す形状を有している必要はない。
【0038】
この実施形態とは異なり、
図1Aに二点鎖線で示すように、1つの貯留ボックス6から全ての流体ボックス5に液体を供給するように構成されていてもよい。
【0039】
各処理ユニット2は、処理カップ9と、処理カップ9を収容するチャンバ10とを備える。チャンバ10には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ10には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0040】
図2は、処理ユニット2および液体供給ユニット3の構成について説明するための模式図である。
【0041】
処理ユニット2は、基板Wを水平に保持しながら回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させるスピンチャック8をさらに含む。処理カップ9は、スピンチャック8を取り囲み基板Wから飛散する液体を受ける。チャンバ10は、スピンチャック8および処理カップ9を収容する。回転軸線A1は、基板Wの中央部を通る鉛直な直線である。スピンチャック8は、基板Wを水平に保持するスピンベース8aと、スピンベース8aの周方向に沿って配置された複数のチャックピン8bと、回転軸線A1まわりのスピンベース8aの回転を駆動する回転駆動機構(図示せず)とを含む。回転駆動機構は、たとえば、電動モータを含む。スピンチャック8は、基板Wを保持する基板保持ユニットの一例である。
【0042】
処理ユニット2は、基板Wの上面(上側の主面)に対向する対向面11aを有する対向部材11と、処理液を吐出する吐出口12aを有する処理液ノズル12とを含む。吐出口12aは、対向面11aから露出する。処理液ノズル12は、処理液吐出部材の一例である。
【0043】
処理液ノズル12から吐出される処理液は、たとえば、薬液、または、リンス液である。薬液は、たとえば、フッ酸(フッ化水素水)、APM液(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)、HPM液(hydrochloric acid-hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水混合液)等である。
【0044】
リンス液は、たとえば、DIW、炭酸水、電解イオン水、還元水、希釈濃度(たとえば、10ppm以上100ppm以下程度)のアンモニア水、および、希釈濃度(たとえば、10ppm以上100ppm以下程度)の塩酸水のうちの少なくとも一種を含有する液体である。
【0045】
液体供給ユニット3は、処理液ノズル12に処理液を供給する処理液供給ユニット13と、処理液供給ユニット13内の処理液に界面活性剤を添加する添加ユニット14とを含む。そのため、処理液ノズル12は、界面活性剤を含有する処理液である含有処理液を吐出することも可能である。含有処理液中の界面活性剤の質量パーセント濃度は、たとえば、0.01%以上1.0%以下である。
【0046】
処理液に界面活性剤を添加することによって、処理液の表面張力を低減することができる。表面張力を低減することで、処理液が基板Wの上面上で広がりやすくなる。そのため、表面張力を低減することで、処理液ノズル12から吐出される処理液で基板Wの上面の全体を覆うために必要な流量、すなわち必要吐出流量を低減できる。
【0047】
以下では、界面活性剤を含有しない処理液を、非含有処理液ということがある。界面活性剤は、たとえば、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または両性界面活性剤のうちの少なくともいずれかを含有する。
【0048】
処理液供給ユニット13は、処理液ノズル12に接続される処理液配管20と、処理液配管20に接続され処理液配管20に複数種の処理液を共通に供給する共通配管21と、共通配管21に接続され、液体(処理液、または、原料液)を共通配管21にそれぞれ供給する複数の液体配管22と、複数の液体配管22に複数種の液体をそれぞれ供給する複数のタンク23とを含む。
【0049】
処理液配管20の上流端は、共通配管21に接続されている。処理液配管20の下流端は、処理液ノズル12に接続されている。各液体配管22の上流端は、対応するタンク23に接続されている。複数の液体配管22の下流端は、共通配管21に接続されている。
【0050】
複数のタンク23は、たとえば、過酸化水素水タンク23A、塩酸タンク23B、アンモニア水タンク23C、フッ酸タンク23D、および、リンス液タンク23Eを含む。過酸化水素水タンク23Aに貯留される過酸化水素水および塩酸タンク23Bに貯留される塩酸は、処理液としてのHPM液の原料液である。過酸化水素水タンク23Aに貯留される過酸化水素水およびアンモニア水タンク23Cに貯留されるアンモニア水は、処理液としてのAPM液の原料液である。フッ酸タンク23Dに貯留されるフッ酸は、処理液である。リンス液タンク23Eに貯留されるリンス液は、処理液の一例である。
【0051】
処理液供給ユニット13は、処理液配管20を開閉する処理液バルブ24と、処理液配管20内の処理液の流量を調整する処理液流量調整バルブ25と、複数の液体配管22をそれぞれ開閉する複数の液体バルブ26と、複数の液体配管22内の液体の流量をそれぞれ調整する液体流量調整バルブ27とを含む。処理液バルブ24および処理液流量調整バルブ25は、処理液配管20に設けられている。処理液バルブ24および処理液流量調整バルブ25が処理液配管20に設けられるとは、処理液配管20を構成する2つの管状部分の間に設けられていること、すなわち、処理液配管20に介装されていることを意味していてもよい。以下で説明する他のバルブにおいても同様である。液体バルブ26および液体流量調整バルブ27は、液体配管22に設けられている。
【0052】
複数の液体バルブ26は、過酸化水素水タンク23Aに対応する過酸化水素水バルブ26Aと、塩酸タンク23Bに対応する塩酸バルブ26Bと、アンモニア水タンク23Cに対応するアンモニア水バルブ26Cと、フッ酸タンク23Dに対応するフッ酸バルブ26Dと、リンス液タンク23Eに対応するリンス液バルブ26Eとを含む。
【0053】
複数の液体流量調整バルブ27は、過酸化水素水タンク23Aに対応する過酸化水素水流量調整バルブ27Aと、塩酸タンク23Bに対応する塩酸流量調整バルブ27Bと、アンモニア水タンク23Cに対応するアンモニア水流量調整バルブ27Cと、フッ酸タンク23Dに対応するフッ酸流量調整バルブ27Dと、リンス液タンク23Eに対応するリンス液流量調整バルブ27Eとを含む。
【0054】
処理液供給ユニット13は、各液体配管22に設けられ対応する液体配管22内の液体を共通配管21にそれぞれ送る複数のポンプ28と、各液体配管22に設けられ対応する液体配管22内の液体を加熱する複数のヒータ29とを含む。各液体配管22において、ポンプ28、ヒータ29、液体流量調整バルブ27および液体バルブ26は、上流側からこの順番で並んで配置されている。
【0055】
処理液供給ユニット13は、各液体配管22に接続され、対応するタンク23内の液体を循環させる複数の循環配管30と、複数の循環配管30にそれぞれ設けられる複数の循環バルブ31とを含む。循環配管30の上流端は、液体配管22において、ヒータ29よりも下流側でかつ液体流量調整バルブ27よりも上流側に接続されている。循環配管30の下流端は、対応するタンク23に接続されている。
【0056】
共通配管21には、
図2に図示する処理ユニット2と同じ処理タワーTWを構成する別の処理ユニット2に処理液を供給する処理液配管32が接続されている。
図2に二点鎖線で示すように、処理液配管32は、処理液配管20から分岐されていてもよい。
図2の構成とは異なり、処理ユニット2毎に共通配管21が設けられていてもよい。
【0057】
共通配管21、処理液バルブ24、処理液流量調整バルブ25、複数の液体バルブ26、および、複数の液体流量調整バルブ27は、たとえば、流体ボックス5に配置されている。複数のタンク23、複数のポンプ28、複数のヒータ29、および、複数の循環配管30は、たとえば、貯留ボックス6に配置されている。
【0058】
添加ユニット14は、共通配管21に接続され、界面活性剤含有液を共通配管21に供給する界面活性剤含有液配管40と、界面活性剤含有液を貯留し、界面活性剤含有液配管40に界面活性剤含有液を供給する界面活性剤含有液タンク41とを含む。界面活性剤含有液は、たとえば、界面活性剤をリンス液に溶解させた液体である。
【0059】
添加ユニット14は、界面活性剤含有液配管40に設けられ界面活性剤含有液配管40を開閉する界面活性剤含有液バルブ42と、界面活性剤含有液配管40に設けられ界面活性剤含有液配管40内の界面活性剤含有液の流量を調整する界面活性剤含有液流量調整バルブ43と、共通配管21に界面活性剤を送る界面活性剤含有液ポンプ44と、界面活性剤含有液配管40内の界面活性剤含有液を加熱する界面活性剤含有液ヒータ45とを含む。
【0060】
界面活性剤含有液配管40において、界面活性剤含有液ポンプ44、界面活性剤含有液ヒータ45、界面活性剤含有液流量調整バルブ43および界面活性剤含有液バルブ42は、上流側からこの順番で並んで配置されている。
【0061】
添加ユニット14は、界面活性剤含有液配管40に接続され、界面活性剤含有液タンク41内の界面活性剤含有液を循環させる界面活性剤含有液循環配管46と、界面活性剤含有液循環配管46に設けられる界面活性剤含有液循環バルブ47とを含む。
【0062】
界面活性剤含有液循環配管46の上流端は、界面活性剤含有液配管40において、界面活性剤含有液ヒータ45よりも下流側でかつ界面活性剤含有液流量調整バルブ43よりも上流側に接続されている。界面活性剤含有液循環配管46の下流端は、界面活性剤含有液タンク41に接続されている。
【0063】
添加ユニット14は、界面活性剤含有液タンク41にリンス液を補充するリンス液補充配管48と、リンス液補充配管48に設けられリンス液補充配管48を開閉するリンス液補充バルブ49と、界面活性剤含有液タンク41に界面活性剤を補充する界面活性剤補充ユニット50とを含む。界面活性剤補充ユニット50は、たとえば、粉末状の界面活性剤を界面活性剤含有液タンク41に供給する。
【0064】
界面活性剤補充ユニット50は、粉末状の界面活性剤を貯留する貯留部51と、貯留部51内の界面活性剤を界面活性剤含有液タンク41に供給する界面活性剤配管52と、界面活性剤配管52に設けられ界面活性剤配管52を開閉する界面活性剤バルブ53とを含む。貯留部51は、界面活性剤含有液タンク41の真上に配置され、界面活性剤配管52は、貯留部51の下端から界面活性剤含有液タンク41に向かって下方に延びていることが好ましい。
【0065】
界面活性剤含有液バルブ42および界面活性剤含有液流量調整バルブ43は、たとえば、流体ボックス5に配置されている。界面活性剤含有液タンク41、界面活性剤含有液ポンプ44、界面活性剤含有液ヒータ45、界面活性剤含有液循環配管46、および、界面活性剤補充ユニット50は、たとえば、貯留ボックス6に配置されている。
【0066】
<第1実施形態に係る基板処理装置の電気的構成>
図3は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御装置4は、コンピュータ本体4aと、コンピュータ本体4aに接続された周辺装置4dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体4aは、各種の命令を実行するプロセッサ(CPU)4bと、情報を記憶するメモリ4cとを含む。
【0067】
周辺装置4dは、プログラム等の情報を記憶する補助記憶装置4eと、ホストコンピュータHC等の他の装置と通信する通信装置4fとを含む。補助記憶装置4eは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリである。補助記憶装置4eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。補助記憶装置4eは、レシピR、処理内容テーブルTおよびその他のプログラムを記憶する。言い換えると、補助記憶装置4eは、レシピRを記憶するレシピ記憶部、および、処理内容テーブルTを記憶する処理内容テーブル記憶部として機能する。
【0068】
図4は、処理内容テーブルTの内容例を示している。
図4に示すように、処理内容テーブルTには、基板特性、処理液特性、目標量、および、必要吐出流量が示されている。したがって、補助記憶装置4eは、目標量を記憶する目標量記憶部の一例でもあり、必要吐出流量を記憶する必要吐出流量記憶部の一例でもある。
【0069】
基板特性は、基板処理装置1で処理される基板Wの特性である。基板特性は、たとえば、処理対象の基板Wの主面に対する純水の表面張力である。処理対象の基板Wの主面に対する純水の表面張力は、たとえば、処理対象の基板Wの主面に対する処理液の接触角および、基板Wの主面上の純水の液膜の厚さの少なくともにいずれかに基づいて算出可能である。
【0070】
処理液特性は、基板Wに供給される処理液の特性である。処理液特性は、たとえば、処理液の表面張力である。処理液の表面張力は、たとえば、懸滴法によって測定される。懸滴法は、垂直に設置した注射針などの細管の先から処理液を垂らし、落下しない程度の最大の懸滴(液滴)の形状に基づいて、処理液の表面張力を測定する手法である。
【0071】
接触角は、親水性および疎水性の指標である。接触角とは、或る固体の上に液体を滴下したときにできる液滴のふくらみ(液の高さ)の程度を数値化したものである。具体的には、接触角とは、固体の表面に付着した液体を横から見たときに、液面と固体の表面(この実施形態では基板Wの主面)とのなす角度のことである。接触角が大きいほどその固体の表面の親水性(濡れ性)が低く、接触角が小さいほどその固体の表面の親水性(濡れ性)が高い。
【0072】
目標量は、処理液の表面張力を充分に低下させるために必要な界面活性剤の量である。目標量は、基板特性および処理液特性の組み合わせ毎に設定されている。そのため、処理内容テーブルTには、複数の目標量が記憶されている。目標量は、たとえば、濃度で表現でき、通常、質量パーセント濃度で表現される。そのため。目標量は、目標濃度でもある。
【0073】
必要吐出流量は、基板Wの上面の全体を覆うために必要な処理液ノズル12からの吐出流量である。必要吐出流量は、基板特性および処理液特性の組み合わせ毎に設定されている。そのため、処理内容テーブルTには、複数の必要吐出流量が記憶されている。
【0074】
図3を参照して、補助記憶装置4eには、複数のレシピRが記憶されている。レシピRは、基板処理内容を定義したデータであり、基板処理条件および基板処理手順を含む。複数のレシピRは、基板Wの基板処理内容、基板処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。
【0075】
制御装置4は、入力装置4A、表示装置4B、および警報装置4Cに接続されている。入力装置4Aは、ユーザやメンテナンス担当者等の操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置4Bの画面に表示される。入力装置4Aは、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置4Aおよび表示装置4Bを兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。警報装置4Cは、光、音、文字、および図形のうちの1つ以上を用いて警報を発する。入力装置4Aがタッチパネルディスプレイの場合、入力装置4Aが、警報装置4Cを兼ねていてもよい。
【0076】
制御装置4の制御対象としては、搬送ロボットIR,CR、スピンチャック8、複数のヒータ29、界面活性剤含有液ヒータ45、処理液バルブ24、処理液流量調整バルブ25、複数の液体バルブ26、複数の液体流量調整バルブ27、循環バルブ31、界面活性剤含有液バルブ42、界面活性剤含有液流量調整バルブ43、界面活性剤含有液循環バルブ47、リンス液補充バルブ49、界面活性剤バルブ53等が挙げられる。
【0077】
図3には、代表的な部材が図示されているが、図示されていない部材について制御装置4によって制御されないことを意味するものではなく、制御装置4は、基板処理装置1に備えられる各部材を適切に制御することができる。
図3には、後述する第2実施形態で説明する部材(膜厚測定ユニット60)についても併記しており、この部材も制御装置4によって制御される。
【0078】
制御装置4は、ホストコンピュータHC等の外部装置によって指定されたレシピRに従って当該基板Wを処理ユニット2で処理する処理スケジュールを作成する。その後、制御装置4は、搬送ロボットIR,CR、および処理ユニット2等の基板処理装置1の制御対象(リソース)に処理スケジュールを実行させる。
【0079】
以下の各工程は、制御装置4が処理スケジュールに従って基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置4は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0080】
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の一例>
図5は、基板処理装置1によって実行される基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0081】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、
図5に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、第1薬液処理工程(ステップS2)、第1リンス工程(ステップS3)、第2薬液処理工程(ステップS4)、第2リンス工程(ステップS5)、スピンドライ工程(ステップS6)および基板搬出工程(ステップS7)が実行される。以下では、基板処理の内容について
図2および
図5を主に参照して説明する。
【0082】
まず、未処理の基板Wが、搬送ロボットCR(
図1Aを参照)によってキャリアCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック8に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック8によって水平に保持され(基板保持工程)、回転軸線A1のまわりに回転される(基板回転工程)。基板Wは、スピンドライ工程(ステップS6)が終了するまで、スピンチャック8によって保持され続ける。
【0083】
第1薬液処理工程(ステップS2)では、回転状態の基板Wの上面に、薬液として、たとえばフッ酸が供給される。具体的には、処理液バルブ24およびフッ酸バルブ26Dが開かれる。これにより、基板Wの上面がフッ酸によって処理される。
【0084】
第1リンス工程(ステップS3)では、回転状態の基板Wの上面にリンス液が供給される。具体的には、処理液バルブ24が開かれている状態に維持しながら、フッ酸バルブ26Dが閉じられ、その代わりに、リンス液バルブ26Eが開かれる。これにより、基板Wの上面がリンス液によって洗い流されて基板Wの上面からフッ酸が除去される。
【0085】
第2薬液処理工程(ステップS4)では、回転状態の基板Wの上面に、薬液として、たとえばAPM液が供給される。具体的には、処理液バルブ24が開かれている状態に維持しながら、リンス液バルブ26Eが閉じられ、その代わりに、アンモニア水バルブ26Cおよび過酸化水素水バルブ26Aが開かれる。これにより、基板Wの上面がAPM液によって処理される。
【0086】
第2リンス工程(ステップS5)では、回転状態の基板Wの上面にリンス液が供給される。具体的には、処理液バルブ24が開かれている状態に維持しながら、アンモニア水バルブ26Cおよび過酸化水素水バルブ26Aが閉じられ、その代わりに、リンス液バルブ26Eが開かれる。これにより、基板Wの上面がリンス液によって洗い流されて基板Wの上面からAPM液が除去される。
【0087】
次に、基板Wを高速回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程(ステップS6)が実行される。具体的には、リンス液バルブ26Eおよび処理液バルブ24を閉じて基板Wの上面へのリンス液の供給を停止させる。そして、スピンチャック8が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転(たとえば、1500rpm)させる。それによって、大きな遠心力が基板Wに付着しているリンス液に作用し、リンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
【0088】
スピンドライ工程(ステップS6)の後、スピンチャック8が基板Wの回転を停止させる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック8から処理済みの基板Wを受け取って、処理ユニット2外へと搬出する(基板搬出工程:ステップS7)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。
【0089】
<第1実施形態に係る制御装置の機能的構成>
図6は、制御装置4の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
図7は、制御装置4による内容変更処理の一例を説明するためのフローチャートである。制御装置4は、メモリ4c(
図4を参照)に展開されたプログラムを実行することにより、様々な機能処理ユニットして作動する。
【0090】
具体的には、制御装置4は、特性取得ユニット70、目標量算出ユニット71、必要吐出流量算出ユニット72、および、処理内容変更ユニット73として機能するように構成され、かつ、プログラムされている。
【0091】
特性取得ユニット70は、処理対象の基板Wの基板特性と、基板処理の各工程において基板Wに供給される処理液の処理液特性とを取得する(特性取得工程:ステップS8)。
【0092】
特性取得ユニット70は、たとえば、ホストコンピュータHCによって指定されたレシピRから、基板特性および処理液特性を取得する。特性取得ユニット70は、レシピR以外の情報から基板特性および処理液特性を取得してもよい。たとえば、特性取得ユニット70は、作業者が入力装置4Aを用いて入力した情報から基板特性および処理液特性を取得してもよい。制御装置4は、基板特性取得ユニットおよび処理液特性取得ユニットとして機能する。
【0093】
目標量算出ユニット71は、特性取得ユニット70によって取得された基板特性および処理液特性と処理内容テーブルTとに基づいて目標量を算出する(目標量算出工程:ステップS9)。
【0094】
必要吐出流量算出ユニット72は、特性取得ユニット70によって取得された基板特性および処理液特性と処理内容テーブルTとに基づいて必要吐出流量を算出する(必要吐出流量算出工程:ステップS10)。
【0095】
処理内容変更ユニット73は、算出した目標量および必要吐出流量に基づいて、液処理工程が開始される前に、レシピRの処理内容を変更する(処理内容変更工程:ステップS11)。処理内容変更工程は、典型的には、基板処理が開始される前に、より具体的には、レシピRに基づいて処理スケジュールが作成される前に実行される。
【0096】
内容変更処理は、最後の液処理工程(第2リンス工程:ステップS5)を除く各液処理工程(
図5に太線で示す工程、すなわち、第1薬液処理工程:ステップS2、第1リンス工程:ステップS3、および、第2薬液処理工程:ステップS4)に対して実行される。第2リンス工程においてリンス液に界面活性剤を添加した場合、基板処理後に基板Wの上面に界面活性剤が残留するため、最後の液処理工程に対して内容変更処理は行われない。ただし、最後の液処理工程後も基板Wの上面に界面活性剤が残留することが許容される場合には、第2リンス工程に対しても内容変更処理が行われてもよい。
【0097】
各液処理工程において、液体流量調整バルブ27および界面活性剤含有液流量調整バルブ43の開度が調整されて、目標量の界面活性剤を含有する処理液(含有処理液)が形成される。また、各液処理工程において、処理液流量調整バルブ25の開度が調整されて、必要吐出流量の含有処理液が処理液ノズル12から吐出される。処理液流量調整バルブ25は、処理液ノズル12から吐出される処理液の流量を必要吐出流量に調整する流量調整ユニットの一例である。
【0098】
第1実施形態によれば、基板特性および処理液特性に基づいて、界面活性剤の目標量が算出される。そして、目標量の界面活性剤を含有する処理液が基板Wの上面に向けて処理液ノズル12から吐出される(処理液吐出工程)。そのため、基板特性および処理液特性の組み合わせに応じた適切な量、すなわち、基板Wの上面の全体を速やかに覆うために必要な量の界面活性剤を含有する処理液で基板Wの上面を処理することができる。
【0099】
また第1実施形態場によれば、処理液ノズル12から吐出される処理液の流量が必要吐出流量となるように調整される。したがって、基板Wの上面に供給される処理液の使用量を適切に削減できる。
【0100】
また第1実施形態によれば、予め用意された処理内容テーブルTに基づいて目標量が算出される。そのため、基板処理中に基板特性を取得する場合と比較して、目標量を速やかに算出できる。
【0101】
また、第1実施形態によれば、基板特性が、基板Wの上面に対する純水の表面張力を含み、処理液特性が、処理液の表面張力を含む。そのため、基板Wの上面から露出する物質、または、基板Wの上面に凹凸状態が異なる場合であっても、基板Wの上面に対する純水の表面張力が同等である場合、目標量として同じ値を採用することができる。そのため、基板Wの上面から露出する物質、および、基板Wの上面の凹凸状態毎に目標量を準備する必要がないため、処理内容テーブルTを簡素化できる。
【0102】
同様に、処理液に含有される物質の化学種、または、処理液の濃度が異なる場合であっても、処理液の表面張力が同等である場合には、目標量として同じ値を採用することができる。そのため、処理液に含有される物質の化学種、または、処理液の濃度毎に目標量を準備する必要がないため、処理内容テーブルTを簡素化できる。
【0103】
また第1実施形態によれば、目標量に応じて、添加ユニット14によって処理液供給ユニット13内の処理液に界面活性剤が添加される。そのため、界面活性剤の含有量が互いに異なる処理液を事前に準備する必要がない。
【0104】
<第2実施形態に係る基板処理装置の機械的構成>
第2実施形態に係る基板処理装置1Aが第1実施形態に係る基板処理装置1と主に異なる点は、処理ユニット2が、基板Wの上面上の処理液の液膜の厚さを測定する膜厚測定ユニット60を含む点である。
図8は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置1Aに備えられる処理ユニット2の構成について説明するための模式図である。
図8において、前述の
図1A~
図7に示された構成と同等の構成については、
図1A等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する
図9~
図14についても同様である。
【0105】
膜厚測定ユニット60は、たとえば、分光干渉法により液膜厚FTを測定する膜厚測定器である。膜厚測定ユニット60は、分光干渉法以外の手法によって液膜厚FTを測定する膜厚測定器であってもよく、たとえば、超音波式、または、赤外線式、の膜厚測定器であってもよい。
【0106】
膜厚測定ユニット60は、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面に向けて光を出射する発光素子を有する発光ユニット61と、発光ユニット61から出射され基板Wの上面で反射した光を受ける受光素子を有する受光ユニット62とを含む。
【0107】
発光ユニット61からの光は、基板Wの上面で反射して受光ユニット62に入射する。
図7中の黒い点Piは、発光ユニット61の光が基板Wの上面に入射する入射位置を示している。基板W上の液膜の厚み(液膜厚FT)は、受光ユニット62に入射した光に基づいて算出される。このように、膜厚測定ユニット60によって液膜厚FTが測定される(膜厚測定工程)。
【0108】
液膜厚FTの測定は、スピンチャック8が基板Wを回転させている間に行われる。そのため、液膜厚FTを、基板Wの上面の全周において測定することができる。回転軸線A1からの水平方向の距離が一定の位置に入射位置を位置させてもよいし、発光ユニット61および受光ユニット62の少なくとも一方の位置を移動させて、入射位置を基板Wの径方向(回転軸線A1に直交する水平方向)に移動させてもよい。後者の場合は、複数の測定値の平均を液膜厚FTとして扱ってもよい。
【0109】
第2実施形態に係る基板処理装置1Aを用いて、
図5に示す基板処理を実行することができる。基板処理を実行する際、各液処理工程よりも前に実行される液処理工程において基板特性を取得する。そのため、ある液処理工程を基準として、当該液処理工程よりも前に実行される或る液処理工程において基板Wの上面に供給される処理液を特性取得液という。したがって、処理液ノズル12は、特性取得液吐出部材の一例でもある。
【0110】
<第2実施形態に係る制御装置の機能的構成>
図9は、第2実施形態に係る制御装置4の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
図10は、第2実施形態に係る内容変更処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0111】
図9に示すように、第2実施形態に係る制御装置4は、特性取得ユニット70、目標量算出ユニット71、必要吐出流量算出ユニット72、および、処理内容変更ユニット73に加えて、判定ユニット74として機能するように構成され、かつ、プログラムされている。
【0112】
特性取得ユニット70は、膜厚測定ユニット60の測定結果である特性取得液の液膜の厚さ(液膜厚FT)を、処理対象の基板Wの基板特性として取得する(特性取得工程:ステップS12)。液膜厚FTが大きいほど基板Wの上面に対する特性取得液の表面張力が高く、液膜厚が小さいほど基板Wの上面に対する特性取得液の表面張力が低いことを意味する。
【0113】
特性取得ユニット70は、たとえば、指定されたレシピRから処理液特性を取得する。特性取得ユニット70は、たとえば、ホストコンピュータHCから指定されたレシピR等の情報から処理液特性を取得してもよい。特性取得ユニット70は、たとえば、作業者が入力装置4Aを用いて入力した情報から処理液特性を取得してもよい。制御装置4は、基板特性取得ユニットおよび処理液特性取得ユニットとして機能する。
【0114】
判定ユニット74は、膜厚測定ユニット60によって取得された液膜厚FTが液膜厚閾値TH以上であるか否かを判定する(判定工程:ステップS13)。第2実施形態に係る制御装置4の補助記憶装置4eには、液膜厚閾値THが記憶されている(
図3の二点鎖線を参照)。補助記憶装置4eは、液膜厚閾値THを記憶する閾値記憶部の一例である。
【0115】
液膜厚FTが液膜厚閾値TH以上であると判定ユニット74が判定した場合には(ステップS13:YES)、目標量算出ユニット71は、特性取得ユニット70によって取得された基板特性と、処理内容テーブルTとに基づいて目標量を算出する(目標量算出工程:ステップS9)。
【0116】
図11は、第2実施形態に係る処理内容テーブルTの内容例を示している。
図11に示すように、処理内容テーブルTには、基板特性としての特性取得液の液膜厚FTと、処理液特性としての処理液の表面張力と、基板特性および処理液特性の組み合わせ毎に設定された目標量と、基板特性および処理液特性の組み合わせ毎に設定された必要吐出流量とが示されている。
【0117】
ステップS9の後、必要吐出流量算出ユニット72は、特性取得ユニット70によって取得された基板特性と処理内容テーブルTとに基づいて必要吐出流量を算出する(必要吐出流量算出工程:ステップS10)。
【0118】
判定工程(ステップS13)において、液膜厚FTが液膜厚閾値THよりも小さいと判定ユニット74が判定した場合には(ステップS13:NO)、目標量が算出されることなく、必要吐出流量算出ユニット72によって、必要吐出流量が算出される(必要吐出流量算出工程:ステップS10)。
図10では、液膜厚FTが液膜厚閾値THよりも小さいと判定ユニット74が判定した場合には(ステップS13:NO)、目標量算出ユニット71による目標量の算出を行わないとしたが、目標量算出ユニット71は、必要に応じて、目標量を零とみなすように構成されていてもよい。
【0119】
必要吐出流量算出工程(ステップS10)の後、処理内容変更ユニット73は、算出した目標量および必要吐出流量に基づいて、液処理工程(第1リンス液工程(ステップS3)および第2薬液処理工程(ステップS4))が開始される前に、レシピRの処理内容を変更する(処理内容変更工程:ステップS11)。
【0120】
内容変更処理は、典型的には、基板処理の実行中において対象となる液処理工程の開始前に実行される。
図12は、内容変更処理の対象となる液処理工程と、特性取得工程が行われる液処理工程との対応関係について説明するためのテーブルである。
図12に示すように、第1薬液処理工程(ステップS2)よりも前に液処理工程が実行されない、すなわち、特性取得工程が実行されないため、第1薬液処理工程に対しては、内容変更処理が行われない。
【0121】
第1リンス工程(ステップS3)に対して内容変更処理を実行する場合には、第1薬液処理工程(ステップS2)の実行中に特性取得工程を行うことができる。この場合、第1薬液処理工程に用いられる薬液が特性取得液として機能する。
【0122】
第2薬液処理工程(ステップS4)において内容変更処理を実行する場合には、第1薬液処理工程(ステップS2)または第1リンス工程(ステップS3)の実行中に特性取得工程を行うことができる。この場合、第1薬液処理工程に用いられる薬液、または、第1リンス工程に用いられるリンス液が、特性取得液として機能する。
【0123】
内容変更処理の対象となる液処理工程において、液体流量調整バルブ27および界面活性剤含有液流量調整バルブ43の開度が調整されて、目標量の界面活性剤を含有する処理液が形成される。また、各液処理工程において、処理液流量調整バルブ25の開度が調整されて、必要吐出流量の処理液が処理液ノズル12から吐出される。
【0124】
このように、各液処理工程において、或る液処理工程よりも前に実行される液処理工程を特性取得工程として利用できる。そのため、各液処理工程において、或る液処理工程の1つ前の液処理工程を特性取得工程としてもよい。具体的には、第1薬液処理工程を、第1リンス工程に対応する特性取得工程として利用し、第1リンス工程を、第2薬液処理工程に対応する特性取得工程として利用することができる。
【0125】
図13は、基板処理装置1Aによって実行される基板処理の別の例を説明するためのフローチャートである。第1薬液処理工程(ステップS2)に対しても内容変更処理を実行するために、
図13に示すように、第1薬液処理工程よりも前に、基板Wの上面にリンス液を供給するプレリンス工程(ステップS14)が実行されてもよい。
【0126】
図14は、
図13に示す基板処理を実行する場合において、内容変更処理の対象となる液処理工程と、特性取得工程が行われる液処理工程との対応関係について説明するためのテーブルである。
【0127】
図14に示すように、第1薬液処理工程(ステップS2)に対して内容変更処理を実行する場合には、プレリンス工程(ステップS14)の実行中に特性取得工程を行うことができる。この場合、プレリンス工程に用いられるリンス液が特性取得液として機能する。
【0128】
第1リンス工程(ステップS3)に対して内容変更処理を実行する場合には、プレリンス工程(ステップS14)または第1薬液処理工程(ステップS2)の実行中に特性取得工程を行うことができる。この場合、プレリンス工程に用いられるリンス液、または、第1薬液処理工程に用いられる薬液が特性取得液として機能する。
【0129】
第2薬液処理工程(ステップS4)に対して内容変更処理を実行する場合にはプレリンス工程(ステップS14)、第1薬液処理工程(ステップS2)または第1リンス工程(ステップS3)の実行中に特性取得工程を行うことができる。この場合、プレリンス工程に用いられるリンス液、第1薬液処理工程に用いられる薬液、または、第1リンス工程に用いられるリンス液が、特性取得液として機能する。
【0130】
図13に示す基板処理においても、各液処理工程において、或る液処理工程の1つ前の液処理工程を特性取得工程としてもよい。具体的には、プレリンス工程を、第1薬液処理工程に対応する特性取得工程として利用し、第1薬液処理工程を、第1リンス工程に対応する特性取得工程として利用し、第1リンス工程を、第2薬液処理工程に対応する特性取得工程として利用することができる。
【0131】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。第2実施形態によれば、さらに以下の効果を奏する。
【0132】
第2実施形態によれば、特性取得液としての処理液が基板Wの上面に向けて処理液ノズル12から吐出される(特性取得液吐出工程)。そして、基板Wの上面に処理液を供給する前に、膜厚測定ユニット60が、基板Wの上面上の特性取得液の液膜厚FTを基板特性として測定する(膜厚測定工程)。これにより、液膜厚FTに基づいて目標量を算出することができる。詳しくは、液膜厚FTに基づいて算出された表面張力、および、処理液の表面張力に基づいて、目標量が算出される。そのため、処理対象となる基板Wの基板特性を、予め準備することなく基板処理中に取得できる。また、基板処理中の基板Wの現物に適した目標量を算出することができる。そのため、より適切な量、すなわち、基板Wの上面の全体を速やかに覆うために必要な量の界面活性剤を含有する処理液を基板Wの上面に供給できる。
【0133】
第2実施形態によれば、液膜厚FTが液膜厚閾値TH以上であると判定ユニット74が判定した場合に、含有処理液が処理液ノズル12から吐出され、液膜厚FTが液膜厚閾値よりも小さいと判定ユニット74が判定した場合に、非含有処理液が処理液ノズル12から吐出される。すなわち、液膜厚FTと液膜厚閾値THとの大小関係に基づいて界面活性剤の要否についても判断することができる。そのため、界面活性剤の過剰な使用を抑制できる。さらに、界面活性剤が必要な場合には、必要吐出流量の含有処理液で基板Wの上面を処理することができる。
【0134】
<接触角測定実験および表面張力測定実験>
以下では、界面活性剤を添加することによる処理液の表面張力の低減効果について実証するために、接触角測定実験および表面張力測定実験を行った。
図15Aは、接触角測定実験の結果を示すグラフである。
図15Bは、表面張力測定実験の結果を示すグラフである。
【0135】
接触角測定実験の手順は以下の通りである。(1)SiCN基板の主面にDIW(非含有処理液)および界面活性剤添加DIW(含有処理液)の液滴をそれぞれ滴下した。(2)顕微鏡を用いて水滴付近の画像を取得した。(3)(2)で取得した画像に基づいて、SiCN基板の主面に対するDIWおよび界面活性剤添加DIWの接触角を測定した。表面張力測定実験は、上述した懸滴法を用いて行われた。
【0136】
SiCN基板とは、主面からSiCNが露出する基板のことである。界面活性剤添加DIWとしては、ノニオン型界面活性剤の質量パーセント濃度が1%となるようにノニオン型界面活性剤をDIWに添加したものと、両性界面活性剤の質量パーセント濃度が1%となるように両性界面活性剤をDIWに添加したものとを用いた。
【0137】
図15Aを参照して、SiCN基板に対するDIWの接触角が約60°であったのに対して、SiCN基板に対する界面活性剤添加DIWの接触角は、約35°であった。また、
図15Bを参照して、DIWの表面張力は、約70mN/mであったのに対して、界面活性剤添加DIWの表面張力はいずれも約20mN/mであった。
【0138】
このように、接触角測定実験および表面張力測定実験の結果、界面活性剤の添加によって処理液としてのDIWの表面張力が充分に低減できることが推察できる。
【0139】
<カバレッジ領域観測実験>
以下では、処理液に界面活性剤を添加することによる必要吐出流量の低減効果について実証するために、カバレッジ領域観測実験を行った。
図16は、カバレッジ領域観測実験の結果を示すグラフである。
【0140】
カバレッジ領域観測実験の手順は以下のとおりである。(1)500rpmで回転するSiCN基板の主面の中心部に対向するノズルからDIWの吐出を開始した。(2)DIWの吐出流量を200mL/minから徐々に上昇させた。(3)ハイスピードカメラでSiCN基板の主面を観察し、SiCN基板の主面においてDIWの液膜で覆われている領域(カバレッジ領域)の大きさを測定した。(4)界面活性剤添加DIWについても同様の実験を行った。
【0141】
界面活性剤添加DIWとしては、上述の接触角測定実験および表面張力測定実験と同様に、ノニオン型界面活性剤の質量パーセント濃度が1%となるようにノニオン型界面活性剤をDIWに添加したものと、両性界面活性剤の質量パーセント濃度が1%となるように両性界面活性剤をDIWに添加したものとを用いた。
【0142】
図16を参照して、横軸は、DIWまたは界面活性剤添加DIWの吐出流量を示しており、縦軸は、カバレッジ領域の大きさを示している。カバレッジ領域の大きさは、SiCN基板の主面の中心からカバレッジ領域の周縁までの距離を示している。SiCN基板の半径は、150mmであるため、カバレッジ領域の大きさが150mmに達すると、SiCN基板の主面の全体が液体に覆われていることを意味する。
【0143】
図16に示すように、DIWの必要吐出流量は、1400mL/minであるのに対して、ノニオン型界面活性剤が添加されたDIWの必要吐出流量は、650mL/minであり、両性界面活性剤が添加されたDIWの必要吐出流量は、450mL/minであるという結果が得られた。
【0144】
このように、カバレッジ領域観測実験の結果、界面活性剤の添加によって処理液としてのDIWの必要吐出流量が充分に低減できることが推察できる。
【0145】
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
【0146】
(1)たとえば、上述の実施形態では、基板Wの上面に対して基板処理が実行される。しかしながら、基板Wの下面に対して基板処理が実行されてもよい。
【0147】
(2)上述の各実施形態では、スピンチャック8は、基板Wの周縁を複数のチャックピン8bで把持する把持式のスピンチャックであるが、スピンチャック8は把持式のスピンチャックに限られない。たとえば、スピンチャック8は、スピンベース8aに基板Wを吸着させる真空吸着式のスピンチャックであってもよい。
【0148】
(3)スピンチャック8は、必ずしも基板Wを水平に保持する必要はない。すなわち、スピンチャック8は、
図2とは異なり、基板Wを鉛直に保持してもよいし、基板Wの上面が水平面に対して傾斜するように基板Wを保持してもよい。
【0149】
(4)上述の各実施形態では、内容変更処理の結果に基づいてレシピR中の処理内容が変更される。しかしながら、必ずしもレシピR中の処理内容を変更する必要はない。内容変更処理の結果に基づいて、制御装置4が界面活性剤含有液流量調整バルブ43に信号を送信して、目標量の界面活性剤を処理液に添加してもよい。また、内容変更処理の結果に基づいて、制御装置4が処理液流量調整バルブ25に信号を送信して、処理液の吐出流量を必要吐出流量に調整してもよい。制御装置4は、各部材を直接制御する必要はなく、制御装置4から出力される信号は、基板処理装置1の各部材を制御するスレーブコントローラに受信されてもよい。
【0150】
(5)第1実施形態において、基板Wの上面上の純水の液膜の厚さを基板特性としてもよく、処理内容テーブルTとして、
図11に示す処理内容テーブルを用いてもよい。
【0151】
(6)界面活性剤の濃度が互いに異なる複数の界面活性剤含有液タンクが設けられていてもよい。たとえば、界面活性剤の質量パーセント濃度が0.01%、0.1%および1%である界面活性剤含有液がそれぞれ複数の界面活性剤含有液タンクに貯留されている。その場合、算出された目標量の界面活性剤に適した界面活性剤含有液タンクから界面活性剤含有液と処理液とが混合される。
【0152】
(7)上述の各実施形態とは異なり、処理内容テーブルには、基板特性として基板の種類が示されており、かつ、処理液特性として処理液の種類および濃度が示されていてもよい。
【0153】
(8)上述の各実施形態では、単一の処理液ノズル12から複数の処理液がそれぞれ吐出されるように構成されている。しかしながら、処理液の吐出の態様は、上述の各実施形態に限定されない。たとえば、各処理液が異なるノズルから吐出されてもよいし、処理液ノズル12が水平方向に移動できるように構成されていてもよい。
【0154】
さらに、上述の各実施形態では、処理液を吐出する部材としてノズルを例示しているが、各処理液を吐出する部材は、ノズルに限られない。すなわち、各処理液を吐出する部材は、処理液を吐出すると処理液吐出部材として機能する部材であればよい。
【0155】
(9)上述の各実施形態では、液体供給ユニット3に含まれる全ての部材を図示しているわけではなく、配管、ポンプ、バルブ、アクチュエータ等についての図示の少なくとも一部が省略されている。しかしながら、これらの部材が存在しないことを意味するものではなく、実際にはこれらの部材は適切な位置に設けられている。
【0156】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0157】
1 :基板処理装置
1A :基板処理装置
4e :補助記憶装置
8 :スピンチャック(基板保持ユニット)
12 :処理液ノズル(処理液吐出部材、特性取得液吐出部材)
13 :処理液供給ユニット
14 :添加ユニット
25 :処理液流量調整バルブ(流量調整ユニット)
60 :膜厚測定ユニット
71 :目標量算出ユニット
74 :判定ユニット
FT :液膜厚
T :処理内容テーブル
TH :液膜厚閾値
W :基板