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  • 特許-警報装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20250917BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20250917BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
G08B17/00 C
B66B5/02 E
G08B21/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022055877
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148048
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 聡司
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/056183(WO,A1)
【文献】特開2015-210826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
G08B 21/00
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかごの内に設けた、ガソリンを検知する検知センサと、
前記エレベータかごの昇降を制御するエレベータ制御装置と、
火災感知器と接続する火災受信機と、を建物内に備え、
前記火災受信機は、前記エレベータかご内で前記検知センサがガソリンを検知したとき、ガソリンの検知情報を受信して、前記火災感知器に閾値の引き下げ信号を送信するか、または前記火災受信機内の火災閾値の引き下げを行うことを特徴とする警報装置。
【請求項2】
前記火災受信機は、ガソリンの検知情報を受信したときに、異常警報を発することを特徴とする請求項1に記載された警報装置。
【請求項3】
前記火災受信機は、ガソリンの検知情報を受信したときに、報知装置に異常警報を送信し、
前記報知装置は、前記異常警報により、「放火」との言葉を使用せずに、放火警報を発することを特徴とする請求項に記載された警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンの検知情報により異常警報を発する警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンを建物内に持ち込んで放火する事件が発生している。ガソリンは、点火後に急速に激しく燃焼するうえ、煙が猛烈なスピードで行き渡るため、建物内にいる人にとって避難が難しい。その結果、逃げ遅れにより多大な被害が生じている。しかも、ガソリンは販売規制が難しく、放火犯によるガソリンの入手を阻止することも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-52330号公報
【文献】特開2021-143980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガソリンに関する警報としては、特許文献1の発明のように灯油を用いる石油ストーブ等に誤ってガソリンを給油した際の警報装置が知られている。また、可燃性ガスの検知装置としては、特許文献2のように、メタンガスやプロパンガス、付臭剤(又は着臭剤)の匂い物質を検出するものが知られている。しかし、ガソリンを用いる放火犯の建物への侵入に対応する警報装置は知られていないと考えられる。
【0005】
本発明は、建物内へのガソリンの持ち込みを検知して異常警報を発し、避難等を促す警報装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る警報装置は、エレベータかごの内に設けた、ガソリンを検知する検知センサと、前記エレベータかごの昇降を制御するエレベータ制御装置と、火災感知器と接続する火災受信機と、を建物内に備え、前記火災受信機は、前記エレベータかご内で前記検知センサがガソリンを検知したとき、ガソリンの検知情報を受信して、前記火災感知器に閾値の引き下げ信号を送信するか、または前記火災受信機内の火災閾値の引き下げを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記警報装置によって、建物内にいる人を避難させ、ガソリン放火による被害を抑制することができる。エレベータかごの中は、基本的に閉鎖された空間であるため、ガソリンのガス濃度が低下しにくく検出し易い。また、かごの中は放火犯が立ち止まる場所であり、移動していないことからもガス濃度が低下しにくく検出し易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1による建物を示す図。
図2】本発明の実施例1によるエレベータかごの内部を表す図。
図3】本発明の実施例1のフロー図。
図4】本発明の変形例1によるエレベータかごの内部を表す図。
図5】本発明の実施例2による建物を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1に実施例1の警報装置に関する建物1とその内部構成を示す。建物1は複数階建てであり、その内部は各フロア11と共にエレベータシャフト12を有する。また、1階に出入口13を備え、屋上にエレベータの機械室14を備える。建物1には火災報知設備2が設けられている。各フロア11に複数設けられた火災感知器21は感知配線22により火災受信機23に接続している。このように火災報知設備2は、各フロアに設けた火災感知器21と、建物の管理室または守衛所等に設けた火災受信機23と、両者を接続する感知配線22等により構成される。
【0010】
エレベータ装置3は、エレベータシャフト12の中にエレベータかご31を有する。エレベータシャフト12の上方の機械室14の中には巻上機32が設けられ、巻上機32はエレベータシャフト12の中で主ロープ33によりエレベータかご31を吊り下げている。また、機械室14の中には、エレベータシャフト12内のエレベータかご31の昇降を制御するエレベータ制御装置34が設けられ、巻上機32を制御する。エレベータ制御装置34はトラベリングケーブル35により、エレベータシャフト12内のエレベータかご31と接続している。エレベータかご31には、かごドア311が設けられ、各フロア11には、乗場ドア36が設けられている。
【0011】
かごドア311の内側には、ガソリンの検知センサ41が設けられている。検知センサ41は、ガソリンのガスによりガソリンの存在を検知する。ガソリンのガス検知は、匂いセンサや可燃性ガス検知器による検知方法、その他のガスセンサ等により行うことができる。そして、検知センサ41は、トラベリングケーブル35によりエレベータ制御装置34に接続し、エレベータ制御装置34はガソリン検知配線42により火災受信機23に接続している。さらに、火災受信機23は、異常警報線43により音声発生装置44に接続し、音声発生装置44は音声配線45により報知スピーカー46に接続している。音声発生装置44、音声配線45、建物の各階(各フロア)に設けた報知スピーカー46は、報知装置として機能する。
【0012】
エレベータかご31に乗って、かごドア311の方向を向いたときの様子を図2に示す。かごドア311の右側にかご操作盤312が設けられている。また、かごドア311の中心付近における、大人の手の高さ付近に、ガソリンの検知センサ41が設けられている。放火犯が建物1にガソリンを持ち込む場合、かごドア311の内側で手の高さ付近にガソリンが近づく可能性が高いものと考えられる。
【0013】
次に、放火犯がガソリンを建物1に持ち込んだ際の作用を、図1~3を用いて説明する。出入口13から建物1に入った放火犯は、目的のフロア11へ向かうためにエレベータ装置3を使用する場合が多いと考えられる。ガソリンを所持した放火犯がエレベータかご31に乗って、かごドア311が閉まると、ガソリンのガスを検知センサ41で検知する(ステップS1)。そうすると、ガソリンの検知情報がトラベリングケーブル35を介してエレベータ制御装置34に伝えられる(ステップS2)。そして、エレベータ制御装置34からガソリン検知配線42を介して、検知情報が火災受信機23に送られる(ステップS3)。検知情報を受信した火災受信機23では異常警報を発生し(ステップS4)、管理室内にいる管理者にエレベータかご31内で所定値以上のガソリンが検知されたことを知らせる。そして火災受信機23は、異常警報線43を介して異常警報、即ち異常情報としての異常信号を音声発生装置44に送信する(ステップS5)。音声発生装置44では、異常情報を受けて、「異常事態発生です。階段を使って建物外へ避難してください。」との音声情報を作成し(ステップS6)、音声配線45を介して各フロアの報知スピーカー46に送出する(ステップS7)。そして、報知スピーカー46では、上記の音声情報を音声で報知する(ステップS8)。これにより、建物1の内部の人に避難を誘導する。放火の可能性がある旨を音声で報知すると放火犯を刺激する可能性がある等を考慮して、実施例1では、「放火」との言葉を使用せずに、放火警報の発報として音声による避難誘導を行うことにより、放火犯を刺激しないように配慮している。
【0014】
また、検知情報を受信した火災受信機23は、火災感知器21が火災と判断する閾値を下げる。そのため、火災判断閾値の引き下げ信号を発生する(ステップS9)。引き下げ信号は感知配線22を介して各火災感知器21へ送信される(ステップS10)。引き下げ信号を受信した火災感知器21は、火災と判断する閾値を下げる(ステップS11)。これにより、もしも放火されてしまった場合には、ガソリンを使用した放火による火災を火災感知器21がいち早く検知して、火災警報を早期に発することができる。
【0015】
さらに、検知情報を受信した火災受信機23は、停止信号を発生し(ステップS12)、停止信号を、ガソリン検知配線42を介してエレベータ制御装置34に送信する(ステップS13)。エレベータ制御装置34は、停止信号を受信するとエレベータかご31を設定階に移動して停止し(ステップS14)、故障と表示してかごドア311と乗場ドア36を閉じたままとする。これにより、放火犯をエレベータかご31の中に閉じ込めて、階段等を使って目的のフロア11へ向かうことを阻止すると共に、放火犯の拘束を容易にすることができる。設定階は、放火犯を拘束しやすい1階や、放火犯がエレベータかご31の中で放火した時に被害が少ないと考えられる最上階などとすることができる。
【0016】
<変形例1>
次に、検知センサ41の取り付け位置を変えた変形例1を図4により説明する。図4は、図2と同様にエレベータかご37に乗って、かごドア371の方向を向いたときの様子である。変形例1において、検知センサ41はエレベータかご37内の下部に設けられている。検知センサ41はかご操作盤372の下方に位置する。ガソリンのガスは比重が大きく空気よりも重いため、エレベータかご37内の下部に検知センサ41を設けることによっても検知しやすくなる。
【実施例2】
【0017】
実施例2では、エレベータ制御装置34と火災受信機23の間の接続に火災報知設備2の感知配線22を用いる。図5に示すように、実施例2ではエレベータ制御装置34は最寄りの階の感知配線22に接続している。機械室14は屋上等に設けられるが、火災受信機23は下方の階に設けられることも多い。このような場合に、感知配線22でエレベータ制御装置34と火災受信機23を接続することにより、別途に長いガソリン検知配線42を設ける必要がない。感知配線22は、基本的に各階に設けられるため、屋上等に設けたエレベータ制御装置34の比較的近傍にまで感知配線22が設けられる。特に、既存の建物のリフォームによりガソリンの警報装置を取り付ける場合には、新たな長い配線を敷設する必要がないことから、施工しやすいという効果が大きい。図5では、火災受信機23からの感知配線22とエレベータ制御装置34とを直接接続している状態を示しているが、例えば中継器を介して感知配線22をエレベータ制御装置34に接続してもよい。この場合には、火災受信機23が周期的に問合せ信号を感知配線22上の端末機器に発しており、エレベータかご31でガソリンが検知された検知情報が発生した際には、中継器を介して、火災受信機23からの問合せ信号に対して検知情報が送信される。
【0018】
上記の実施例1、2では、検知情報や異常情報、停止信号を有線で送受信したが、無線により送受信してもよい。特に無線を使用する場合は、エレベータかご内のガソリンを検知するセンサからの検知情報を、エレベータ制御装置を介さずに、火災感知器または火災受信機が受信するようにしてもよい。また、放火警報の発報としては、実施例1のような音声による避難誘導でなく、音声で放火犯が侵入した旨、または大量のガソリンが建物内に持ち込まれ放火発生の可能性がある旨を報知してもよい。さらに、報知スピーカー46を介した音声による報知装置でなく、警報音や表示による報知装置でもよい。また、報知のために、登録した携帯端末に無線で異常情報を送信して、携帯端末で音声、振動、表示等により放火警報を発してもよい。実施例1において、火災感知器21は引き下げ信号の受信により火災判断の閾値を引き下げたが、蓄積時間引き下げ信号により、蓄積時間を短くしてもよい。また火災受信機側で火災閾値による火災判断を行うR型と呼ばれる火災報知システムにおいては、ガソリンの検知情報を受信した際に、火災受信機内で火災閾値の引き下げを行うようにしてもよい。
【0019】
実施例では、機械室を用いたエレベータについて示したが、機械室がないエレベータであっても実施することができる。また、検知センサがガソリンを検知したエレベータかごでかご操作盤のボタンが押されている停止階と、その他の階により放火警報の報知内容等を変えてもよく、エレベータかごの停止階以上の階と停止階より下の階で報知内容を変えてもよい。火災判断の引き下げや蓄積時間の短時間化についても、停止階とその他の階、停止階以上の階と停止階より下の階で変えてもよい。
【0020】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 建物、11 フロア、12 エレベータシャフト、13 出入口、14 機械室、
2 火災報知設備、21 火災感知器、22 感知配線、23 火災受信機、
3 エレベータ装置、31 エレベータかご、311 かごドア、312 かご操作盤、32 巻上機、33 主ロープ、34 エレベータ制御装置、35 トラベリングケーブル、36 乗場ドア、37 エレベータかご、371 かごドア、372 かご操作盤、
41 検知センサ、42 ガソリン検知配線、43 異常警報線、44 音声発生装置、45 音声配線、46 報知スピーカー。
図1
図2
図3
図4
図5