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  • 特許-金属酸化物バリスタ配合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】金属酸化物バリスタ配合物
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/112 20060101AFI20250917BHJP
   C04B 35/453 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
H01C7/112
C04B35/453
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022537657
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 US2020065317
(87)【国際公開番号】W WO2021126983
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】62/951,183
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511102583
【氏名又は名称】ハッベル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUBBELL INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】40 Waterview Drive, Shelton, Connecticut 06484-1000, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ポテララ, ステファン, フランクリン
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-050490(JP,A)
【文献】特開昭48-089375(JP,A)
【文献】特開昭48-089374(JP,A)
【文献】特開平06-251909(JP,A)
【文献】米国特許第05973589(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/00 - 17/30
C04B 35/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物バリスタであって
約91.0重量%~約97.0重量%のZnO;
少なくとも0.3重量%~約1.0重量%のMn;
少なくとも0.4重量%~約2.0重量%のBi;
少なくとも1.0重量%~約3.0重量%のSb;および
0重量%~0.3重量%のCoを含む、焼結セラミック(ただし、フッ化マンガンをMnFの形に換算して0.05モル%以上含むもの、及び、フッ化ニッケルをNiFの形に換算して0.05モル%以上含むものを除く)を含み、
前記焼結セラミック中のMnOとCoの合計量が、約0.75重量%~約1.25重量%である、金属酸化物バリスタ。
【請求項2】
前記焼結セラミックが、前記焼結セラミックの重量に対して0.2重量%以下のCoを含む、請求項1に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項3】
前記焼結セラミックが、前記焼結セラミックの重量に対して0.1重量%以下のCoを含む、請求項1に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項4】
前記焼結セラミックが、Coを含まない、請求項1に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項5】
前記焼結セラミックが:
約0.4重量%~約0.8重量%のMn;
約0.5重量%~約1.0重量%のBi;および
約1.5重量%~約2.5重量%のSbを含む、請求項1に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項6】
前記SbとBiのモル比が、2:1以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項7】
前記SbとBiのモル比が、4:1以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項8】
前記焼結セラミックが、Ag、Al、B、Cr、K、Ni、Si、Sn、またはそれらの組み合わせを含む添加物をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項9】
第一の電極面を有する第一の電極および第二の電極面を有する第二の電極をさらに含み、前記第一の電極面と前記第二の電極面の各々が、4cmの面積を有し、前記第一の電極面および第二の電極面との間の距離が少なくとも15mmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項10】
前記金属酸化物バリスタが、少なくとも3.0kV RMSの最大連続動作電圧(MCOV)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項11】
前記最大連続動作電圧(MCOV)が、少なくとも4.5kV RMSである、請求項10に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項12】
前記金属酸化物バリスタが、100℃における最大連続動作電圧(MCOV)で0.1W/kV未満、または150℃における最大連続動作電圧(MCOV)で0.2W/kVの60Hz電力損失を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項13】
150℃での電力損失と20℃での電力損失の比が、両方とも60Hz、MCOVで測定したとき、20未満である、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタ。
【請求項14】
電力サージに対して一つまたは複数の導体を保護するためのサージアレスタであって、前記サージアレスタが、請求項1~13のいずれか一項に記載の金属酸化物バリスタを含み、サージ電流が金属酸化物バリスタを通して導体から接地へ移動する、サージアレスタ。
【請求項15】
IEEE C62.11またはIEC 60099-4などの国内規格や国際規格、あるいはそこから派生した国家規格でカバーされる高電圧用途用に設計され、約65kA以上の4×10μsサージ電流に定格されている、請求項14に記載のサージアレスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月20日に出願された米国仮出願第62/951,183号の利益および優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、その優先権が主張される。
【0002】
本開示は、金属酸化物バリスタ配合物に関し、従来の配合物と比較して、低コストで製造することができ、改善された熱安定性を提供し得る。
【背景技術】
【0003】
高電圧回路と低電圧回路の両方におけるサージ保護は、通常、一つまたは複数の金属酸化物バリスタ(MOV)を利用したサージアレスタによって行われる。MOVは、狭い電圧範囲で低抵抗と高抵抗を可逆的に切り替える電圧依存型抵抗器として機能する。スイッチング電圧付近では、電圧と電流の関係は、しばしばべき乗則I=CVαを用いて特徴付けられ、式中、αは非線形係数、Cは定数である。αのピーク値は素材によっては40~50を超え得る。MOVは通常、最大連続動作電圧(MCOV)、一時的過電圧(TOV)能力、および特定のサージイベント(例えば、10,000Aで8x20μsのサージ)中の残留電圧など、様々な特性について製造業者により定格されている。市販の高電圧用途用MOVは、米国IEEE C62.11規格または国際IEC60099-4規格に示されたガイドラインに従って、特定のレベルの負荷に定格されている。
【0004】
MOVの非線形V-I挙動は、添加元素に起因するものである。MOVの微細構造は、n型の半導電性ZnO粒子と抵抗性の粒界から成る。粒界は組成的に明確で、Biのほか、Mn、Co、Sbなどの修飾元素を含んでいる。粒界に位置する界面準位は、電子トラップとして振る舞い、隣接するn型ZnO内の伝導帯電子を捕獲する。その結果、粒界に二重のショットキーバリアが形成され、電子の流れが阻害される。ショットキーバリアを介した電流リークは熱的に活性化され、1.0-1.25MCOVの範囲のMOVの電力損失は、通常強い温度依存性を有する。MOVがサージ負荷に繰り返し曝露されることによって過熱すると、MCOVでの電力損失がアレスタハウジングで放散可能なレベルを超え、アレスタが熱暴走で故障する可能性がある。
【0005】
そのため、熱安定性や非線形挙動を改善する代替的MOV配合物が依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は:
焼結セラミックであって:
約91.0重量%~約97.0重量%のZnO;
少なくとも0.3重量%のMn;
少なくとも0.4重量%のBi;
少なくとも1.0重量%のSb;および
0.50重量%以下のCoを含む、焼結セラミックを含む、金属酸化物バリスタを提供する。
【0007】
別の態様において、本開示は、電力サージに対して一つまたは複数の導体を保護するためのサージアレスタを提供し、当該サージアレスタは、本明細書に記載の金属酸化物バリスタを含み、サージ電流は金属酸化物バリスタを通して導体から接地へ転換される。
【0008】
本明細書に記載される金属酸化物バリスタは、低減された電力損失、改善された熱安定性を示し、従来のMOVと比較してより低いコストで製造され得る。
【0009】
本願発明の他の態様は、詳細な説明および添付の図面を考慮することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、表1に提供された三つのMOV配合物の温度の関数として、W/kV MCOVを示す。基準材料(「REF」)は、IEEE C62.11-2012の「通常負荷」サージアレスタに使用される市販のMOVである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書の実施形態を詳細に説明する前に、本願発明は、以下の説明で規定される、または以下の図面に例示される構造の詳細および構成要素の配置にその用途が限定されないことが理解されるであろう。本願発明は、他の実施形態が可能であり、また、様々な方法で実施することが可能である。
【0012】
本明細書で使用される用語「含む(comprise)」、「含む(include)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「できる(can)」、「含有する(contain)」、およびそれらの変形は、追加の行為または構造の可能性を排除しない、オープンエンドな移行句、用語または単語であると意図されている。単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、複数形の参照を含む。本開示はまた、明示的に規定されているか否かにかかわらず、本明細書に提示された実施形態または要素から「なる(comprising)」、「からなる(consisting of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」他の実施形態を企図するものである。
【0013】
量に関連して使用される修飾語「約(about)」は、記載された値を含み、文脈によって規定される意味を有する(例えば、特定の量の測定に関連する誤差の程度を少なくとも含む)。また、「約」という修飾語は、二つの端点の絶対値で定義される範囲を開示するものと考えるべきである。例えば、「約2~約4」という表現は、「2~4」の範囲も開示する。なお、「約」とは、示された数値のプラスマイナス10%を指し得る。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示し、「約1」は0.9~1.1の範囲を示し得る。「約」の他の意味は、四捨五入など文脈から明らかな場合があり、例えば「約1」は、0.5~1.4を意味することもある。
【0014】
本明細書では、数値の範囲を示す場合、その間にある同じ精度の各数値が明示的に想定される。例えば、6~9の範囲では、6と9に加えて7と8という数字が想定され、6.0~7.0の範囲では、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0が明示的に想定される。
【0015】
「金属酸化物バリスタ」(MOV)とは、電圧と電流との間に高い非線形関係を示し、電圧を上げると材料の電気抵抗率が大幅に減少する酸化物セラミック材料、またはそれから製造された電気ユニットを指す。
【0016】
「最大連続動作電圧」(MCOV)とは,20℃において0.4mA/cm(60Hz)のピーク電流密度で測定した基準電圧の80%を意味する。すべての電圧および電流は,特に記載のない限り60Hzのピーク値として定義される。また、電圧値はRMS単位で交互に表示され得る。
【0017】
特に指定しない限り、本明細書に開示されているような化学元素(例えば、Mn、Co、Bi、Sb)は、任意の適切な分子形態で配合物中に含まれ得る。これらには、例えば、市販の酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、混合酸化物前駆体、および当該技術分野で知られているその元素の他の分子形態が含まれる。
【0018】
本開示は、IEEE C62.11、IEC 60099-4または同様の規格に準拠するものなどの高電圧サージアレスタに使用され得る、MOVを製造するための化学配合物に関する。
【0019】
一態様において、本開示は:
焼結セラミックであって:
約91.0重量%~約97.0重量%のZnO;
少なくとも0.3重量%のMn;
少なくとも0.4重量%のBi;
少なくとも1.0重量%のSb;および
0.50重量%以下のCoを含む、焼結セラミックを含む、金属酸化物バリスタを提供する。
【0020】
本明細書に記載するように、焼結セラミックは、金属酸化物バリスタ(MOV)のセラミック本体を提供する焼結配合物を指す。本焼結配合物は、当該技術分野で公知の規格に準拠して、温度、電圧、電流などのMOVの作動条件に適合させることが理解される。金属酸化物バリスタは、第一の電極面を有する第一の電極と、第二の電極面を有する第二の電極とをさらに備え得る。例えば、バリスタの電極として機能する二枚の金属板の間に焼結セラミックを挟み得る。
【0021】
配合物は、少なくとも91.0重量%、少なくとも92.0重量%、少なくとも93.0重量%、少なくとも94.0重量%、少なくとも95.0重量%、または少なくとも96.0重量%のZnOを含み得る。配合物は、97.0重量%未満、96.0重量%未満、95.0重量%未満、94.0重量%未満、93.0重量%未満、または92.0重量%未満のZnOを含み得る。配合物は、約92.0重量%~約97.0重量%、約93.0重量%~約97.0重量%、約94.0重量%~約97.0重量%、または約95.0重量%~約97.0重量%のZnOを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、例えば約95.5重量%、約96.0重量%、または約96.5重量%のZnOなど、約95.0重量%~97.0重量%のZnOを含む。
【0022】
配合物は、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下、または0.1重量%以下のコバルト(Co)を含み得る。一部の実施形態では、配合物は、0.18重量%以下、0.15重量%以下、0.12重量%以下、0.10重量%以下、0.09重量%以下、0.08重量%以下、0.07重量%以下、0.06重量%以下、0.05重量%以下、0.04重量%以下、0.03重量%以下、0.02重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下、または0.001重量%以下のCoなど、0.20重量%以下のCoを含む。一部の実施形態では、配合物は、Coを含まない。
【0023】
Coは、少なくとも部分的に、C などの酸化コバルトの形態で製剤中に含まれ得る。例えば、配合物は、0.50重量%以下のCoに相当する0.68重量%以下のC を含み得る。一部の実施形態では、配合物は、0.50重量%以下、0.40重量%以下、0.30重量%以下、0.20重量%以下、0.10重量%以下、0.05重量%以下、0.01重量%以下、0.005重量%以下、または0.001重量%以下のC など、0.60重量%以下のC を含む。一部の実施形態では、配合物はC を含まない。
【0024】
配合物は、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、または少なくとも1.0重量%のマンガン(Mn)など、少なくとも0.3重量%のMnを含み得る。配合物は、1.0重量%未満、0.9重量%未満、0.8重量%未満、0.7重量%未満、0.6重量%未満、0.5重量%未満、または0.4重量%のMnを含み得る。配合物は、少なくとも0.3重量%~約1.0重量%、約0.4重量%~約1.0重量%、約0.4重量%~約0.9重量%、または約0.4重量%~約0.8重量%のMnを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、または約0.8重量%のMnなど、約0.4重量%~約0.8重量%のMnを含む。
【0025】
Mnは、少なくとも部分的にMnOなどのマンガン酸化物の形態で配合物中に含まれ得る。例えば、配合物は、少なくとも0.30重量%のMnに相当する、少なくとも0.39重量%のMnOを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、少なくとも0.40重量%~約1.30重量%、約0.50重量%~約1.30重量%、約0.50重量%~約1.20重量%、約0.50重量%~約1.10重量%、または約0.50重量%~約1.00重量%のMnOを含む。一部の実施形態では、配合物は、約1.00重量%、約0.90重量%、約0.80重量%、約0.70重量%、約0.60重量%、または約0.50重量%のMnOなど、約0.5重量%~約1.00重量%のMnOを含む。
【0026】
一部の実施形態では、配合物中のMn(x)およびCo(y)の合計量は、z=1.29x+1.36yを満たし、式中、xは少なくとも0.31%、yは0.00%~0.50%、zは約0.75%~約1.25%である。zの値は、約0.80%、約0.90%、約1.00%、約1.10%、または約1.20%であり得る。
【0027】
配合物は、少なくとも1.25重量%、少なくとも1.50重量%、少なくとも1.75重量%、少なくとも2.00重量%、少なくとも2.25重量%、少なくとも2.50重量%または少なくとも2.75重量%のSbなど、少なくとも1.0重量%のアンチモン(Sb)を含み得る。配合物は、3.00重量%未満、2.75重量%未満、2.50重量%未満、2.25重量%未満、2.00重量%未満、1.75重量%未満、1.50重量%未満、または1.25重量%未満のSbを含み得る。配合物は、少なくとも1.00重量%~約3.00重量%、少なくとも1.00重量%~約2.50重量%、約1.25重量%~約2.50重量%、または約1.50重量%~約2.50重量%のSbを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、約1.70重量%、約1.80重量%、約1.90重量%、約2.00重量%、約2.10重量%、または約2.20重量%など、約1.50重量%~約2.50重量%のSbを含む。
【0028】
Sbは、少なくとも部分的に、Sbなどの酸化アンチモンの形態で配合物中に含まれ得る。例えば、配合物は、少なくとも1.00重量%のSbに対応する少なくとも1.20重量%のSbを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、少なくとも1.20重量%~約3.60重量%、約1.50重量%~約3.60重量%、約1.80重量%~約3.60重量%、約1.80重量%~約3.40重量%、約1.80重量%~約3.20重量%、または約1.80重量%~約3.00重量%のSbを含む。一部の実施形態では、配合物は、約2.00重量%、約2.25重量%、約2.50重量%、または約2.75重量%のSbなど、約1.80重量%~約3.00重量%のSbを含む。
【0029】
配合物は、少なくとも0.50重量%、少なくとも0.60重量%、少なくとも0.70重量%、少なくとも0.80重量%、少なくとも0.90重量%、少なくとも1.00重量%、少なくとも1.10重量%、少なくとも1.20重量%、少なくとも1.30重量%、少なくとも1.40重量%、少なくとも1.50重量%、少なくとも1.60重量%、少なくとも1.70重量%、少なくとも1.80重量%または1.90重量%など、少なくとも0.4重量%のビスマス(Bi)を含み得る。配合物は、2.00重量%未満、1.90重量%未満、1.80重量%未満、1.70重量%未満、1.60重量%未満、1.50重量%未満、1.40重量%未満、1.30重量%未満、1.20重量%未満、1.10重量%未満、1.00重量%未満、0.90重量%未満、0.80重量%未満、0.70重量%未満、0.60重量%未満、または0.50重量%のBiを含み得る。配合物は、少なくとも0.40重量%~約2.0重量%、約0.50重量%~約2.00重量%、約0.50重量%~約1.80重量%、約0.50重量%~約1.50重量%、約0.50重量%~約1.20重量%、または約0.50重量%~約1.00%重量%のBiを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、約0.60重量%、約0.70重量%、約0.80重量%、約0.90重量%、または約1.00重量%のBiなど、約0.50重量%~約1.00重量%のBiを含む。
【0030】
Biは、少なくとも一部がBiなどの酸化ビスマスの形態で製剤中に含まれ得る。例えば、配合物は、少なくとも0.40重量%のSbに対応する少なくとも0.44重量%のBiを含み得る。一部の実施形態では、配合物は、少なくとも0.44重量%~約2.20重量%、約0.50重量%~約2.20重量%、約0.60重量%~約2.00重量%、約0.60重量%~約1.50重量%、または約0.60重量%~約1.20重量%のBiを含む。一部の実施形態では、配合物は、約0.70重量%、約0.80重量%、約0.90重量%、約1.00重量%、約1.10重量%、または約1.20重量%のBiなど、約0.60重量%~約1.20重量%のBiを含む。
【0031】
配合物は、SbとBiとを、Sb:Bi=2:1以上のモル比で含み得る。SbとBiのモル比は、例えば、少なくとも2.5:1、少なくとも3.0:1、少なくとも4.0:1、少なくとも5.0:1、少なくとも6.0:1、または少なくとも7.0:1であり得る。一部の実施形態では、Sb:Biのモル比は、約3.0:1、約4.0:1、約4.5:1、または約4.8:1など、約2.5:1~約5.0:1である。
【0032】
第一の実施形態では、配合物は、配合物の重量比で、91.0重量%~約97.0重量%のZnO、少なくとも0.30重量%~約1.00重量%のMn、約1.00重量%~約3.00重量%のSb、約0.40重量%~約2.00重量%のBi、および0.50重量%以下のCoを含む。例えば、そのような配合物は、少なくとも0.39重量%~約1.29%のMnO(少なくとも0.30%~約1.00%のMnに相当)、約1.20%~約3.59%のSb(約1.00%~約3.00%のSbに相当)、約0.44%~約2.23%のBi(約0.40%~約2.00%のBiに相当)、約0.68%以下のC0(約0.50重量%以下のCoに相当)を含み得る。
【0033】
第二の実施形態では、配合物は、配合物の重量比で、91.0重量%~約97.0重量%のZnO、約1.50重量%~約2.50重量%のSb、約0.50重量%~約1.00重量%のBi、約0.40重量%~0.80重量%のMn、および0.50重量%以下のCoを含む。例えば、配合物は、約1.80重量%~約2.99重量%のSb(約1.50重量%~約2.50重量%のSbに相当)、約0.56重量%~約1.11重量%のBi(約0.50重量%~約1.00重量%のBiに相当)、約0.52重量%~約1.03重量%のMnO(約0.40重量%~約0.80重量%のMnに相当)、約0.68重量%以下のCo(0.50%以下のCoに相当)を含み得る。
【0034】
第一および第二の実施形態では、MnおよびCoの総量は、配合物の約0.70重量%~約1.00重量%の範囲であり得る。例えば、配合物はMnをMnOの形態で、CoをCoの形態で含み得、MnOとCoの合計量は配合物の重量比で約0.75重量%~約1.25重量%である。
【0035】
なお、第一および第二の実施形態では、Coの量を0.20%以下に低減し得る。例えば、配合物は、0.27%以下(0.20%以下のCoに相当)のCoを含み得る。第一および第二の実施形態では、SbとBiのモル比は、4:1以上など、2:1以上であり得る。
【0036】
第三の実施形態では、配合物は、配合物の重量比で、91.0重量%~約97.0重量%のZnO、約0.50重量%~約1.00重量%のMnO、約1.75重量%~約2.25重量%のSb、約0.50重量%~1.00重量%のBi、および0.2重量%以下のCoを含む。第三の実施形態では、MnとCoの総量は、配合物の約0.50重量%~約1.00重量%であり得、SbとBiのモル比は、4:1以上であり得る。
【0037】
本明細書に記載の配合物は、Ag、Al、B、Cr、K、Ni、Si、Sn、またはそれらの組み合わせなど、当技術分野で公知の一つまたは複数の添加物をさらに含み得る。MOV配合物中の添加物は、セラミックの加工、焼結、および/または微細構造成長を容易にし得る。添加物は、酸化物、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩など、様々な分子形態で含まれ得る。添加物として好適な酸化物は、例えば、AgO、AgO、Al、B、Cr、KO、NiO、SiO、SnOを含む。一部の実施形態では、配合物は、好ましくは、液相形成を促進するためにBおよび/またはKを含み得、さらに他のドーパントまたは焼結助剤を含み得る。一部の実施形態では、配合物は、ZnO結晶粒内に導電性を与えるために、Alおよび/または他のドーパント種(例えば、5~20ppm)を含み得る。
【0038】
配合物中に存在するその他の添加物は、約0.001重量%~0.500重量%以上を構成し得る。例えば、配合物は、AgO、AgO、Al、B、Cr、KO、NiO、SiO、およびSnOから選択される一つまたは複数の添加物を含み得、その各々は、存在する場合、約0.005重量%、約0.010重量%、約0.020重量%、約0.030重量%、約0.040重量%または約0.045重量%である。一部の実施形態では、配合物は、AgO、Al、B、およびKOから選択される一つまたは複数の添加物を含み、その各々は、存在する場合、約0.020重量%、約0.025重量%、または約0.030重量%である。一部の実施形態では、配合物は、AgO、Al、B、およびKOを含み、その各々は、約0.020重量%、約0.025重量%、または約0.030重量%で存在する。
【0039】
一部の実施形態では、第一の電極面および第二の電極面の各々は、少なくとも4cmの面積を有する。表面積は、約5.0cm、約8cm、約10cm、または約15cmであり得る。一部の実施形態では、第一の電極面と第二の電極面との間の距離は、少なくとも15mmである。例えば、距離はバリスタの電極として機能する二枚の金属板間の距離であり得る。第一の電極面と第二の電極面との間の距離は、約16mm、約18mm、約20mm、約22mm、または約25mmであり得る。具体的な用途に応じて表面積や距離は調整し得る。一部の実施形態では、第一の電極面および第二の電極面の各々は、少なくとも4cmの面積を有し、第一の電極面と第二の電極面との間の距離は、少なくとも15mmである。
【0040】
一部の実施形態では、本明細書に記載の金属酸化物バリスタは、例えば、少なくとも4.0kV、少なくとも4.5kV、少なくとも5.0kV、少なくとも5.5kV、少なくとも6.0kV、または少なくとも6.5kV RMSなど、少なくとも3.0kV RMSの最大連続動作電圧(MCOV)を有する。例えば、MCOVは、約4.8kV、約5.0kV、約5.2kV、約5.4kV、約5.6kV、約5.8kV、または約6.0kVであり得る。
【0041】
一部の実施形態では、本明細書に記載の金属酸化物バリスタは、100℃における最大連続動作電圧(MCOV)で0.1W/kV未満、または150℃における最大連続動作電圧(MCOV)で0.2W/kVの60Hzの電力損失を有する。60Hzの電力損失は、100℃におけるMCOVで0.07W/kV未満、0.05W/kV未満、または0.02W/kV未満であり得る。60Hzの電力損失は、150℃におけるMCOVで0.18W/kV未満、0.15W/kV未満、0.12W/kV未満、または0.10W/kV未満であり得る。
【0042】
一部の実施形態では、ともにMCOVにおいて60Hzで測定された、150℃における電力損失と20℃における電力損失の比は、20未満である。例えば、150℃の電力損失と20℃の電力損失の比は、15未満、10未満、5未満、または2未満であり得る。
【0043】
本明細書に記載されるMOV配合物は、当技術分野で公知の方法によって製造され得る。典型的な製造工程は、混合または粉砕工程による原料の事前反応、焼成、酸化亜鉛との再混合、噴霧乾燥による粉末化を含み得る。その後、粉末を所望の形状にプレスし、一段階または複数段階で最高1150℃の熱処理を行い得る。この間、有機結合剤が除去され、材料が焼結して緻密なセラミックが形成される。典型的な後処理として、電極面の研磨やメタライズ、電気絶縁性グレーズの塗布、熱処理が含まれる。
【0044】
本明細書に記載されるような配合物で製造されたMOVは、既存の市販のMOVデバイスと比較して、性能上の利点を有する。特に、本発明の配合物およびMOVは、高温(例えば、100~180℃)で1.0~1.25MCOVの範囲で電力損失の低減を示す。熱暴走のリスクが低下することにより、機能的に同等の設計仕様を満たすために、サージアレスタが使用するMOVの量が減少し得る。MOV配合物においてCoをMnで置き換えた場合、V=1.2-1.25MCOVおよびT≧100℃での電力損失が、MnとCoの両方を含む同様の配合物に比較して改善される。この改善の度合いは、Mn/(Mn+Co)が0.5から1.0に増加するにつれて大きくなる。Mn/(Mn+Co)が増大すると、より高い電流密度での非線形係数(α)が小さくなり、特定の適用条件に合わせて配合物を調整し得る。また、AC励磁時の時間に対する電気特性の安定性、インパルス負荷に対する安定性など、関心対象の他の特性を最適化するために配合物を調整し得る。
【0045】
熱回復が改善された結果、本明細書に記載のMOVは、通常、サージアレスタに使用される従来のMOVの性能を満たすか、それを上回る。熱性能によって制限されるアレスタ設計において、本開示は、MOVの体積を10%以上削減することを可能にし得る。この体積の減少は、例えば、MOVブロックの断面積を小さくするか、電圧勾配Vres/mmを大きくすることで達成し得、Vresは所定のインパルス波に対するMOVの残留電圧を表す。
【0046】
MOVのVresを測定するためのインパルス条件は、IEEE「通常負荷」またはIEC「配電中」アレスタに使用されるMOVでは5kAピークとして公称8×20μsの波形、IEEE「高負荷」またはIEC「配電高」アレスタ、およびステーションクラスアレスタに使用されるMOVでは10kAピークで8×20μsとして本明細書では定義される。本発明の分配型アレスタ用MOVは、Vres/mmが420~625、最も好ましくは450~525で製造されることが好ましい。ステーションクラスMOVの場合、Vres/mmは325~525が好ましい。電圧勾配の調整は、例えば、焼結温度やMOV配合物を調整することによって行い得る。
【0047】
熱安定性の向上と非線形性の低減に加えて、本明細書に記載のMOVは、高価な原材料の使用を削減することにより、既存の市販のMOVよりも大幅に低いコストで製造することができる。特に、リチウム電池の製造など他の商業的用途における価格変動と高い需要圧力のため、MOV配合物からCoを削減または排除することは戦略的に重要である。使用するCoのレベルは、サージアレスタの設計の特定の必要性に応じて調整し得る。コバルトを全く含まない配合物は、公知の高電圧MOVデバイスの典型的な性能を満たすか、それを上回り得る。
【0048】
別の態様において、本開示は、電力サージに対して一つまたは複数の導体を保護するためのサージアレスタを提供し、当該サージアレスタは、本明細書に記載の金属酸化物バリスタを含み、サージ電流は導体から金属酸化物バリスタを通って接地へ移動する。サージアレスタは、公知の方法に従って、一つまたは複数の金属酸化物バリスタを用いて構成し得る。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書に記載のサージアレスタは、IEEE C62.11、IEC 60099-4、またはそこから派生した他の国家規格などの適用可能な国内または国際規格によってカバーされる高電圧用途用に設計されており、約65kA以上の4×10μsサージ電流に対して定格されている。
【実施例
【0050】
実施例1
表1に従って、MnとCoの配合量を変えた例示的配合物(A、B、およびC)を調製した。これらの配合物の特性を表2に示す。「REF」材料は、IEEE C62.12の「通常負荷」サージアレスタに使用される市販のMOVである。非線形係数(α)の値は、物理的寸法がほぼ同じであるすべてのMOVについて,3mA~5kAで計算される。α値はそれぞれ3mA~5kAの平均値を表す。三つの配合物はすべて、いずれも市販の材料と同等以上のαの値を示す。注目すべきは、CoからMnに置き換わるとαの値が減少していることである。
【表1】

【表2】
【0051】
MCOVでの電力損失(MCOV 1kVあたりのRMSワットで表示)を、図1に示すように、三つの配合物例と市販のMOV(「REF」)について測定した。配合物A、B、およびCは、市販のMOVと比較して、MCOVでの電力損失をおよそ1桁改善することを示した。また、これらの配合物は、電力損失の温度依存性を低減することを示した。配合物A(0% Co)と配合物B(0.09% Co)は、配合物C(0.54% Co)と比較して、約75~180℃の温度範囲で電力損失がさらに低減されたが、これはこれらの配合物においてCoがMnで置換されていることに起因する。
【0052】
追加的なMOV配合物を調製し、試験を行った。表3は、配合物中に含まれる対応する酸化物から算出した元素の重量%を示す。配合物B、D、およびGは、試験条件下で全体的に最も優れた性能を示した。
【表3】
【0053】
本願発明の様々な特徴および利点は、以下の特許請求の範囲に記載されている。

図1