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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】結束保護テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20250917BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20250917BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20250917BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250917BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
C09J7/24
C08L27/06
C08L83/04
C08K3/013
C08K5/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024524771
(86)(22)【出願日】2023-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2023019199
(87)【国際公開番号】W WO2023234125
(87)【国際公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2022087867
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】楯 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 莉緒
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 水貴
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特許第3888431(JP,B2)
【文献】国際公開第2021/029403(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108753189(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111748162(CN,A)
【文献】特開平8-291243(JP,A)
【文献】米国特許第6541558(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00- 7/50
C08L 27/00-27/08
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する結束保護テープであって、
前記基材は、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、及びポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物から構成され、
前記樹脂組成物における、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記ポリオルガノシロキサンの含有量が1~10質量部である、
結束保護テープ。
【請求項2】
試料ステージに日東電工社製Nо.5000NSの両面テープを用いて前記基材を固定し、ASTM D1894に基づくR接触子を使用し、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で測定される、前記基材表面の動摩擦係数が0.06~0.26である、
請求項1に記載の結束保護テープ。
【請求項3】
試料ステージに前記粘着剤層を介して前記結束保護テープを固定し、ASTM D1894に基づくR接触子を使用し、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で測定される、前記結束保護テープの基材背面の動摩擦係数が0.13~0.60である、
請求項1に記載の結束保護テープ。
【請求項4】
前記ポリオルガノシロキサンが、当該ポリオルガノシロキサンの側鎖に(メタ)アクリレートを共重合させたアクリル変性ポリオルガノシロキサンである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の結束保護テープ。
【請求項5】
前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が、30~50万である、請求項4に記載の結束保護テープ。
【請求項6】
前記樹脂組成物における、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記可塑剤の含有量が38~50質量部である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の結束保護テープ。
【請求項7】
前記樹脂組成物における、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記充填剤の含有量が10~60質量部である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の結束保護テープ。
【請求項8】
前記基材の厚みが、190~330μmである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の結束保護テープ。
【請求項9】
前記基材の厚み換算した引張弾性率が、6~9N/mmである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の結束保護テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束保護テープに関する。当該結束保護テープは、電気自動車、ハイブリッド自動車の高圧ケーブルや自動車のワイヤーハーネスなどの結束及び保護の用途に好適に利用可能である。
【背景技術】
【0002】
自動車のワイヤーハーネスの結束及び保護の用途に、適度な柔軟性と伸長性を有し、難燃性、機械的強度、耐熱変形性、電気絶縁性、及び成形加工性などの点に優れ、さらに比較的安価であるという理由から、ポリ塩化ビニル樹脂からなる基材の片面に粘着剤を塗布したポリ塩化ビニル系結束保護テープが使用されている(特許文献1~2)。また、ポリ塩化ビニル樹脂より硬質の硬質線材を所定の切断方向に配列して基材に埋設させることにより、ポリ塩化ビニル系結束保護テープの切断性と耐摩耗性を向上させることが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-259909号公報
【文献】特開2012-184369号公報
【文献】特開平10-264902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、柔軟性と保護性能のバランスに優れ、さらに基材の製膜性に優れた結束保護テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らの検討の結果、基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する結束保護テープにおいて、前記基材に、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、及びポリオルガノシロキサンを含有させ、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記ポリオルガノシロキサンの含有量を1~10質量部とすることによって、柔軟性と保護性能のバランスに優れ、さらに基材の製膜性に優れた結束保護テープが得られることを見出した。
即ち、本発明は、
[1] 基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する結束保護テープであって、
前記基材は、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、及びポリオルガノシロキサンを含有する樹脂組成物から構成され、
前記樹脂組成物における、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記ポリオルガノシロキサンの含有量が1~10質量部である、
結束保護テープ。
[2] 試料ステージに日東電工社製Nо.5000NSの両面テープを用いて前記基材を固定し、ASTM D1894に基づくR接触子を使用し、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で測定される、前記基材表面の動摩擦係数が0.06~0.26である、
[1]に記載の結束保護テープ。
[3] 試料ステージに前記粘着剤層を介して前記結束保護テープを固定し、ASTM D1894に基づくR接触子を使用し、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で測定される、前記結束保護テープの基材背面の動摩擦係数が0.13~0.60である、
[1]に記載の結束保護テープ。
[4] 前記ポリオルガノシロキサンが、当該ポリオルガノシロキサンの側鎖に(メタ)アクリレートを共重合させたアクリル変性ポリオルガノシロキサンである、[1]~[3]のいずれか一つに記載の結束保護テープ。
[5] 前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量が、30~50万である、[4]に記載の結束保護テープ。
[6] 前記樹脂組成物における、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記可塑剤の含有量が38~50質量部である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の結束保護テープ。
[7] 前記樹脂組成物における、前記ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記充填剤の含有量が10~60質量部である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の結束保護テープ。
[8] 前記基材の厚みが、190~330μmである、[1]~[7]のいずれか一つに記載の結束保護テープ。
[9] 前記基材の厚み換算した引張弾性率が、6~9N/mmである、[1]~[8]のいずれか一つに記載の結束保護テープ。
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、柔軟性と保護性能のバランスに優れ、さらに基材の製膜性に優れた結束保護テープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<用語の説明>
本願明細書において、例えば、「A~B」なる記載は、A以上でありB以下であることを意味する。
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0009】
<結束保護テープの構成>
本発明の一実施形態にかかる結束保護テープは、基材と、前記基材の片面に形成された粘着剤層とを有する。以下、各構成について、詳細に説明する。
【0010】
<基材>
本発明の一実施形態にかかる基材は、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、及びポリオルガノシロキサンを含有し、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対する前記ポリオルガノシロキサンの含有量が1~10質量部である樹脂組成物から構成される。
【0011】
<ポリ塩化ビニル樹脂>
本発明の一実施形態におけるポリ塩化ビニル樹脂としては、平均重合度1000~1500のものが好ましく、平均重合度の異なるポリ塩化ビニル樹脂を2種類以上使用してもよい。平均重合度が1000未満では、ポリマー鎖の絡み合いが不足して十分な強度(耐摩耗性)が得られない場合がある。平均重合度が1500より高いと、ゲル化しづらいため製膜性が悪化する場合がある。
【0012】
<可塑剤>
本発明の一実施形態における可塑剤は、基材に柔軟性を付与できるものであれば特に限定されない。例えば、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル、エポキシ系可塑剤、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、リン酸系可塑剤が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂に対する可塑化効果やブリードアウトの少なさの観点から、フタル酸エステルが好ましい。これらの可塑剤は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
<フタル酸エステル>
本発明の一実施形態におけるフタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、DINP(フタル酸ジイソノニル)、DHP(フタル酸ジヘプチル)、DOP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)、n-DOP(フタル酸ジ-n-オクチル)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)が挙げられる。ポリ塩化ビニル樹脂に対する可塑化効果やブリードアウトの少なさ、人体への影響の小ささの観点から、DINP(フタル酸ジイソノニル)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等の、フタル酸と炭素数9~10のアルコールとのジエステルが好ましい。これらの可塑剤は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の一実施形態における、可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して38~50質量部であることが好ましく、より好ましくは40~48質量部である。具体的には例えば、38、40、42、43、44、45、46、48、又は50質量部であることが好ましく、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。可塑剤を38質量部以上とすることにより、基材の柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。可塑剤を50質量部以下とすることで、基材の耐摩耗性を向上させ、良好な保護性能が得られる。
なお、可塑剤を併用する場合には、可塑剤の含有量は、併用する可塑剤の合計量を意味する。
【0015】
<充填剤>
本発明の一実施形態における充填剤は、基材を増量し、硬度を向上できるものであれば特に限定されない。例えば、補強効果と柔軟性の両立の観点から、無機質充填剤が好ましい。
【0016】
<無機質充填剤>
本発明の一実施形態における無機質充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、トリフェニルホスファイト、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化モリブデン、リン酸グアニジン、ハイドロタルサイト、スメクタイト、硼酸亜鉛、無水硼酸亜鉛、メタ硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、酸化アンチモン、五酸化アンチモン、赤燐、タルク、アルミナ、シリカ、ベーマイト、ベントナイト、珪酸ソーダ、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラックが挙げられる。補強効果と柔軟性の両立の観点から、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラックが好ましい。これらの充填剤は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明の一実施形態における、充填剤の含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して10~60質量部であることが好ましく、より好ましくは20~40質量部である。具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、又は60質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。充填剤を10質量部以上とすることで、基材の耐摩耗性を向上させ、良好な保護性能が得られる。充填剤を60質量部以下とすることで、基材の柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。
なお、充填剤を併用する場合には、充填剤の含有量は、併用する充填剤の合計量を意味する。
【0018】
<ポリオルガノシロキサン>
<ポリオルガノシロキサン構造>
本発明の一実施形態におけるポリオルガノシロキサンとは、ポリオルガノシロキサン構造を有するものであれば特に限定されない。ポリオルガノシロキサン構造とは、主鎖に-Si-О-の繰り返し単位を有し、側鎖に有機基を有するポリマーである。繰り返し単位としては、例えば、以下の構造式で示されるものが挙げられる。
【0019】
【化1】
【0020】
式中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基、ポリオキシアルキレン基、フッ素含有基、クロロフェニル基から選択される有機基である。摺動性の観点から、アルキル基が好ましい。
アルキル基としては、例えば、摺動性の観点から、メチル基及びエチル基が挙げられる。
これらのポリオルガノシロキサン構造は、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
<アクリル変性ポリオルガノシロキサン>
本発明の一実施形態におけるポリオルガノシロキサンは、ポリ塩化ビニル樹脂に対する分散性及び摺動性持続性の観点から、当該ポリオルガノシロキサンの側鎖に(メタ)アクリレートを共重合させたアクリル変性ポリオルガノシロキサンであってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態における、ポリオルガノシロキサンの側鎖に導入される(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられる。取扱いや入手のし易さの観点から、メチルメタクリレートが好ましい。
これらの共重合可能な(メタ)アクリレートは、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の一実施形態におけるポリオルガノシロキサンは、ポリ塩化ビニル樹脂に対する分散性及び摺動性持続性の観点から、ポリオルガノシロキサンの側鎖にメチルメタクリレートを共重合させたメチルメタクリレート変性ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【0023】
<アクリル変性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)>
本発明の一実施形態における、アクリル変性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、30~50万であることが好ましく、より好ましくは35~45万である。具体的には例えば、30、35、38、40、42、45、又は50万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アクリル変性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)を30万以上とすることで、基材の製造時における基材の製膜性、保管時の安定性を向上することができる。重量平均分子量(Mw)を50万以下とすることで、ポリ塩化ビニル樹脂に対して均一に分散させることができる。
【0024】
本発明の一実施形態における、アクリル変性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定することができる。重量平均分子量(Mw)は、例えば、ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量(Mw)を調節することにより制御可能である。
なお、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを併用する場合には、重量平均分子量(Mw)は、併用するアクリル変性ポリオルガノシロキサンを合わせた場合の重量平均分子量(Mw)を意味する。
【0025】
<直鎖状のポリオルガノシロキサン>
本発明の一実施形態におけるポリオルガノシロキサンは、主鎖のシロキサン結合が直鎖状に結合した、直鎖状のポリオルガノシロキサンであってもよい。直鎖状のポリオルガノシロキサンとしては、例えば、直鎖状のポリジメチルシロキサン、直鎖状のポリメチルフェニルシロキサン、直鎖状のポリメチルハイドロジェンシロキサン等が挙げられる。摺動性の観点から、直鎖状のポリジメチルシロキサンが好ましい。
これらの他の直鎖状のポリオルガノシロキサンは、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
<架橋されたポリオルガノシロキサン>
本発明の一実施形態におけるポリオルガノシロキサンは、基材の製造時における基材の製膜性、保管時の安定性の観点から、直鎖状のポリオルガノシロキサンが架橋された構造、シロキサン結合が三次元網目状に架橋された構造であってもよい。摺動性の観点から、直鎖状のポリオルガノシロキサンが架橋されたポリオルガノシロキサンが好ましい。
これらの架橋されたポリオルガノシロキサンは、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明の一実施形態における、ポリオルガノシロキサンの含有量は、ポリ塩化ビニル樹脂100質量部に対して1~10質量部であり、より好ましくは3~7質量部である。具体的には例えば、1、2、4、6、8、又は10質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ポリオルガノシロキサンの含有量を1質量部以上とすることで、基材の耐摩耗性を向上させ、良好な保護性能が得られる。ポリオルガノシロキサンの含有量を10質量部以下とすることで、基材の柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。また、製膜時にプレートアウト(樹脂組成物の一部が分離して成形機に付着する現象)を防止できる。
なお、ポリオルガノシロキサンを併用する場合には、ポリオルガノシロキサンの含有量は、併用するポリオルガノシロキサンの合計量を意味する。
【0028】
<その他添加剤>
また、本実施形態における樹脂組成物には必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、その他添加剤として着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等を配合することができる。
【0029】
<基材の厚さ>
本実施形態における結束保護テープの基材厚みは、使用目的や用途等に応じて様々であるが、190~330μmであることが好ましく、より好ましくは190~250μmである。具体的には、例えば、190、195、200、205、210、220、250、280、300、又は330μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。基材厚みを190μm以上とすることで、基材の耐摩耗性を向上させ、良好な保護性能が得られる。基材厚みを330μm以下とすることで、基材の柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。
【0030】
<基材の構造>
本実施形態における結束保護テープの基材の構造は、製造プロセスや製造設備が簡便である観点から、単層構造であることが好ましい。
【0031】
<基材の製造方法>
本実施形態にかかる基材を製造するための樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、充填剤、及びポリオルガノシロキサン、ならびに、必要に応じて熱安定剤、光吸収剤、顔料、その他添加剤などを溶融混練して得ることができる。溶融混練方法は特に限定されるものではないが、二軸押出機、連続式及びバッチ式のニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の加熱装置を備えた各種混合機、混練機が使用でき、前記樹脂組成物が均一分散するように混合し、得られる混合物を慣用の成形方法であるカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法等により基材に成形する。成形機は生産性、色変え、形状の均一性などの面からカレンダー成形機が好ましい。カレンダー成形におけるロール配列方式は、例えば、L型、逆L型、Z型などの公知の方式を採用でき、また、ロール温度は通常150~200℃、好ましくは155~190℃に設定される。
【0032】
<基材表面の動摩擦係数>
本発明の一実施形態において、基材を日東電工社製Nо.5000NSの両面テープで測定ステージに固定した場合の、ASTM D1894に基づくR接触子を使用し、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で測定される、基材表面の動摩擦係数が0.06~0.26であることが好ましく、さらに好ましくは0.10~0.25である。具体的には、例えば、0.06、0.08、0.10、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20、0.22、0.24、又は0.26であることが好ましく、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。基材表面の動摩擦係数を0.06以上とすることにより、結束保護テープの柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。基材表面の動摩擦係数を0.26以下とすることにより、結束保護テープの耐摩耗性を向上させ、良好な保護性能が得られる。
【0033】
基材表面の動摩擦係数は、基材の製造に用いる樹脂組成物に含有されるポリオルガノシロキサンの種類や含有量を調整することにより制御することが可能である。
【0034】
<基材表面の動摩擦係数の測定>
本実施形態にかかる基材における基材表面の動摩擦係数は、例えば、協和界面科学社製自動摩擦摩耗解析装置TS-501を用いて以下の手順により測定することができる。
基材サンプルを幅50mm×長さ100mmに切断し、試料ステージに両面テープ(日東電工社製Nо.5000NS)を使用して固定する。
貼り合せた基材サンプル背面に、ASTM D1894に基づくR接触子を乗せ、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で動摩擦係数を測定する(室温23℃、湿度50%RH)。
【0035】
<基材の厚み換算した引張弾性率>
本実施形態にかかる基材について、基材の厚み換算した引張弾性率は、6~9N/mmであることが好ましく、より好ましくは7~9N/mmである。具体的には、例えば、6、7、8、又は9N/mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。基材の厚み換算した引張弾性率を6N/mm以上とすることにより、基材の保護性能とのバランスが達成できる。基材の厚み換算した引張弾性率を9N/mm以下とすることにより、基材の柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。
基材の厚み換算した引張弾性率は、基材の製造に用いる樹脂組成物に含有される摺動性付与剤の種類や含有量を調整することにより制御することが可能である。
【0036】
<基材の厚み換算した引張弾性率の測定>
本実施形態にかかる基材の、厚み換算した引張弾性率は、以下の手順により、引張弾性率の値から得ることができる。
幅19mm、長さ200mmの結束テープ試験片を、チャック間距離が100mmとなるように引張試験機のチャック部に挟んで固定する。室温23℃、相対湿度50%RHの環境下、300mm/minの速さで試験片を引っ張り、引張応力と歪みとを測定する。歪み0.01~0.05%間の引張応力と歪との比を、線形回帰により算出した値を引張弾性率とする。
このようにして得られた引張弾性率とテープ総厚(単位:mm)の積を、厚み換算した引張弾性率とする。
【0037】
<粘着剤層>
本実施形態にかかる結束保護テープの粘着材層の粘着剤は、ゴム系粘着剤が好ましく、溶剤型、エマルジョン型の何れであってもよい。ゴム系粘着剤としては、天然ゴムまたは合成ゴムから選択される1種以上のゴムと、粘着付与樹脂を含有するものが好ましく、天然ゴム、合成ゴム、及び粘着付与樹脂の混合物であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂の混合割合は、天然ゴム及び合成ゴムを含有する混合物のゴム成分100質量部に対し、粘着付与樹脂50~150質量部含有することが好ましい。
【0038】
前記天然ゴム及び合成ゴムとしては、天然ゴム-メチルメタアクリレート共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して選択して使用してもよい。
【0039】
前記粘着付与樹脂としては、軟化点、各成分との相溶性等を考慮して選択することができる。例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、テルペン-フェノール樹脂、キシレン系樹脂、その他脂肪族炭化水素樹脂又は芳香族炭化水素樹脂等のエマルジョンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0040】
前記ゴム系粘着剤は、溶剤型、エマルジョン型を自由に選択できるが、好ましくは、VOCの発生量が少ないエマルジョン型がよい。
【0041】
<下塗剤層>
【0042】
また、本実施形態にかかる結束保護テープは、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、基材と粘着剤層の密着性を向上させる目的で、基材と粘着剤層の間に下塗剤層を設けてもよい。
この場合、後述のように、下塗剤層の厚みは通常0.1~1μm、より好ましくは0.3~0.5μmであり、下塗剤層の厚みが基材の厚みより小さいことが好ましい。
【0043】
前記下塗剤層を形成する下塗剤としては、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体100質量部に対し、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体25~300質量部からなるものが好ましい。
【0044】
前記下塗剤に用いられる天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体は、天然ゴム70~50質量%にメチルメタアクリレート30~50質量%グラフト重合させたものが好ましい。グラフト重合体中のメチルメタアクリレートの比率が30質量%未満だと、メチルメタアクリレートとフィルム基材との密着性が悪くなって、結束保護テープの層間剥離が起こる場合がある。また、メチルメタアクリレートの比率が50質量%より多いと、下塗剤自体が硬化してフィルム基材の変形に追従できなくなり、結束保護テープの層間剥離が起こる場合がある。
【0045】
前記下塗剤に用いられるアクリロニトリル-ブタジエン共重合体としては、中ニトリルタイプ(アクリロニトリル25~30質量%、ブタジエン75~70質量%)、中高ニトリルタイプ(アクリロニトリル31~35質量%、ブタジエン69~65質量%)高ニトリルタイプ(アクリロニトリル36~43質量%、ブタジエン64~57質量%)等がある。これらは、単独で使用するか、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0046】
<結束保護テープの製造方法>
本実施形態にかかる結束保護テープは、例えば、基材の片面に下塗剤を塗工し、乾燥炉により溶媒を十分に除去させた後、粘着剤を塗工し、下塗剤と同様に乾燥炉により溶媒を十分に除去させたうえで、粘着剤を塗工し結束保護テープが得られる。なお、下塗剤の塗工方式としては、グラビア方式、スプレー方式、キスロール方式、バー方式、ナイフ方式等が挙げられ、粘着剤の塗工方式としては、コンマ方式、リップダイ方式、グラビア方式、ロール方式、スロットダイ方式等が挙げられる。下塗剤層の厚みは通常0.1~1μm、より好ましくは0.3~0.5μmである。また、粘着剤層の厚みは使用目的や用途等に応じて様々であるが、通常5~50μm、より好ましくは10~30μmである。
【0047】
<結束保護テープ基材背面の動摩擦係数>
本発明の別の一実施形態において、結束保護テープを粘着剤層を介して測定ステージに固定した場合の、ASTM D1894に基づくR接触子を使用し、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で測定される、結束保護テープ基材背面の動摩擦係数が0.13~0.60であることが好ましく、さらに好ましくは0.23~0.58である。具体的には、例えば、0.13、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、又は0.60であることが好ましく、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。結束保護テープ基材背面の動摩擦係数を0.13以上とすることにより、結束保護テープの柔軟性が向上し、例えば電線等に巻きつけた際の追従性の向上により結束保護テープに浮きが生じることを低減できる。結束保護テープ基材背面の動摩擦係数を0.60以下とすることにより、結束保護テープの耐摩耗性を向上させ、良好な保護性能が得られる。
なお、結束保護テープ基材背面とは、結束保護テープの基材における、粘着剤層が形成されている表面の反対側の表面を意味する。
【0048】
結束保護テープ基材背面の動摩擦係数は、例えば、基材の厚みを同等とした場合には、基材表面の動摩擦係数が上昇すると結束保護テープの基材背面の動摩擦係数も上昇する傾向があることから、基材表面の動摩擦係数を上述の範囲に調整することによって制御することができる。基材に粘着剤層を設けて結束保護テープとした場合に、結束保護テープの基材背面の動摩擦係数は、基材表面の動摩擦係数より大きな値となる傾向があるが、上述の関係により、基材表面の動摩擦係数を所定の範囲に調整することによって結束保護テープの基材背面の動摩擦係数を所望の範囲に制御することができる。また、基材の厚みが大きくなると、粘着剤層を設けることによる結束保護テープの基材背面の動摩擦係数の変化への影響が小さくなる傾向があることから、基材の厚みが大きい場合においても、やはり、基材表面の動摩擦係数を上述の範囲に調整することによって結束保護テープ基材背面の動摩擦係数を制御することができる。
【0049】
<結束保護テープ基材背面の動摩擦係数の測定>
本実施形態にかかる結束保護テープにおける結束保護テープ基材背面動摩擦係数は、例えば、協和界面科学社製自動摩擦摩耗解析装置TS-501を用いて以下の手順により測定することができる。
結束保護テープサンプルを幅50mm×長さ100mmに切断し、試料ステージに結束保護テープサンプルの粘着剤層を介して固定する。
貼り合せた結束保護テープサンプル背面に、ASTM D1894に基づくR接触子を乗せ、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で動摩擦係数を測定する(室温23℃、湿度50%RH)。
【0050】
<結束保護テープの用途>
本実施形態にかかる結束保護テープは、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車の高圧ケーブルやワイヤーハーネス結束用の結束保護テープとして好適に使用される。
【実施例
【0051】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0052】
<基材の作製>
<使用材料>
(1)ポリ塩化ビニル樹脂
塩化ビニルのホモポリマー、平均重合度1000:製品名「TH-1000」、大洋塩ビ(株)製
(2)ポリオルガノシロキサン
側鎖にメチルメタクリレートを共重合したアクリル変性ポリオルガノシロキサン(重量平均分子量40万):製品名「シャリーヌR-170S」、日信化学工業(株)製
側鎖にメチルメタクリレートを共重合したアクリル変性ポリオルガノシロキサン(重量平均分子量20万):製品名「シャリーヌR-175S」、日信化学工業(株)製
直鎖状ポリジメチルシロキサン:製品名「GENIOPLAST GUM」、旭化成ワッカーシリコーン(株)製
ポリジメチルシロキサンの架橋物(直鎖状のポリオルガノシロキサンが架橋されたポリオルガノシロキサン):製品名「KMP-597」、信越化学工業(株)製
(3)可塑剤
フタル酸エステル系可塑剤、フタル酸ジイソノニル:製品名「DINP」、(株)ジェイプラス製
(4)充填剤
炭酸カルシウム:製品名「カルシーズ(登録商標)P」、神島化学工業(株)製
【0053】
ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオルガノシロキサン、可塑剤、及び充填剤を表1および表2に示す配合にてバンバリーミキサーで均一に分散するように溶融混練したのち、カレンダー成形機により、ロール温度165℃にて所定の厚さの基材を作製した。
【0054】
<結束保護テープの作製>
<使用材料>
(1)基材
上述の工程で作成した基材
(2)下塗り層
天然ゴムにメチルメタクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックスとアクリロニトリルブタジエン共重合体エマルジョンの混合物エマルジョン:製品名KT4612A、株式会社イーテック社製
(3)粘着剤層
天然ゴムラテックス(株式会社レヂテックス社製、製品名:HA LATEX)60質量部(固形分)と、天然ゴムにメチルメタクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックス(株式会社レヂテックス社製、製品名:MG-40S)40質量部(固形分)と、石油樹脂系エマルジョン粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製、製品名:AP-1100-NT)135質量部(固形分)を混ぜたもの
【0055】
基材の片面に下塗剤をグラビア方式により塗工し、乾燥炉により溶媒を十分に除去させた後、粘着剤をコンマ方式により塗工し、下塗剤と同様に乾燥炉により溶媒を十分に除去させて、結束保護テープを作製した。下塗り剤層の乾燥後の厚みは0.3μm、粘着剤層の乾燥後の厚みは20μmであった。
【0056】
<基材及び結束保護テープの物性>
以下に示す測定条件により、基材及び結束保護テープの物性の測定及び評価を実施した。結果を表1および表2に示す。なお、表中、PVCはポリ塩化ビニル樹脂、DINPはフタル酸ジイソノニル、MMAはメチルメタクリレート、PDMSはポリジメチルシロキサンを意味する。
【0057】
<基材表面の動摩擦係数>
協和界面科学社製自動摩擦摩耗解析装置TS-501を用いて以下の手順により測定した。
基材サンプルを幅50mm×長さ100mmに切断し、試料ステージに両面テープ(日東電工社製Nо.5000NS)を使用して固定した。
貼り合せた基材サンプル背面に、ASTM D1894に基づくR接触子を乗せ、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で動摩擦係数を測定した(室温23℃、湿度50%RH)。
【0058】
<結束保護テープの基材背面の動摩擦係数>
協和界面科学社製自動摩擦摩耗解析装置TS-501を用いて以下の手順により測定した。
結束保護テープサンプルを幅50mm×長さ100mmに切断し、粘着剤層を介して試料ステージに貼り付けて固定した。
貼り合せた結束保護テープサンプル背面に、ASTM D1894に基づくR接触子を乗せ、荷重200g、試験速度2.5mm/secの条件で動摩擦係数を測定した(室温23℃、湿度50%RH)。
【0059】
<引張弾性率/厚み換算した引張弾性率>
幅19mm、長さ200mmの結束テープ試験片を、チャック間距離が100mmとなるように引張試験機のチャック部に挟んで固定した。室温23℃、相対湿度50%RHの環境下、300mm/minの速さで試験片を引っ張り、引張応力と歪みとを測定した。歪み0.01~0.05%間の引張応力と歪との比を、線形回帰により算出した値を引張弾性率とした。
また、引張弾性率とテープ総厚(単位:mm)の積を厚み換算した引張弾性率とした。
【0060】
<硬度>
厚み6mm以上に重ねた基材サンプルに高分子計器社製アスカーゴム硬度計A型(ASTM D2240に基づくタイプA圧子)を用いてデュロメータA硬さを測定した(室温23℃、湿度50%RH)。
【0061】
<保護性能>
以下の手順に従って、耐摩耗性により評価した。
ISO6722-1(2001)に準拠して実施した。基材サンプルを直径10mmの円筒に2周巻き付けてテープ等で固定した。その上から、硬質材が溶融アルミナ、粒度150μmの紙やすりにて速度1500mm/minでサンプル表面を摩耗させた。サンプルに穴が開くまでの摩耗距離(mm)を測定した(室温23℃、湿度50%RH)。サンプルに穴が開くまでの摩耗距離(mm)について、以下の判断基準により評価した。摩耗距離の評価が優れている基材であれば、摩耗耐性が高いため、当該基材を用いて製造される結束保護テープにおいて優れた保護性能が達成できることが予想できる。
◎:摩耗距離が1000mm以上
○:摩耗距離が800mm以上1000mm未満
×:摩耗距離が800mm未満
【0062】
<柔軟性>
以下の手順に従って、電線結束時の浮きの有無により評価した。
直径15mmと10mmの電線束に結束保護テープサンプルをらせん状に2周巻き(ハーフラップ)して結束した。この結束電線を直径50mmのマンドレルに1周巻き付けたときの、結束保護テープサンプルと電線束との間の浮き(剥がれによる隙間)の有無を確認した。結束保護テープサンプルと電線束との間の浮きについて、以下の判断基準により評価した。
◎:電線径15mmと10mmのいずれにおいても浮きが無かった
○:電線径15mmでは浮きは無く、電線径10mmでは浮きがあった
×:電線径15mmと10mmのいずれにおいても浮きがあった
【0063】
<基材の製膜性>
以下の手順及び評価基準により評価した。
カレンダー成形機により基材を製膜した際に、表面でのポリオルガノシロキサンのプレートアウトの有無、及びゴムロール面への基材フィルムの粘着の有無を観察した。
◎:プレートアウト及び基材フィルムの粘着のいずれも生じなかった
○:プレートアウト及び基材フィルムの粘着が若干生じたが、製造上問題無い程度であった
×:プレートアウト及び基材フィルムの粘着が生じた
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
表1および表2の結果より、実施例にかかる基材を用いた結束保護テープ、および、実施例にかかる結束保護テープは、柔軟性と保護性能のバランスに優れていることが理解される。さらに、実施例にかかる基材は、製膜性に優れていることが見いだせる。他方、比較例にかかる基材を用いた結束保護テープ、および、比較例にかかる結束保護テープは、柔軟性と保護性能のバランス、および基材の製膜性の一つ以上の観点において劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかる結束保護テープは、柔軟性と保護性能のバランスに優れ、さらに基材の製膜性に優れている。本発明にかかる結束保護テープは、電気自動車、ハイブリッド自動車の高圧ケーブルや自動車のワイヤーハーネスなどの結束及び保護の用途に好適に用いることができ、産業上の利用可能性を有する。