(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-17
(45)【発行日】2025-09-26
(54)【発明の名称】セグメントピース、セグメントピースの製造方法及びセグメント壁体
(51)【国際特許分類】
E21D 11/08 20060101AFI20250918BHJP
【FI】
E21D11/08
(21)【出願番号】P 2021112397
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2024-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】中島 正整
(72)【発明者】
【氏名】石田 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】太田 優輝
(72)【発明者】
【氏名】三谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】松田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】鯉谷 孝裕
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234462(JP,A)
【文献】特開2002-089186(JP,A)
【文献】特開2021-001315(JP,A)
【文献】特開2019-157622(JP,A)
【文献】特開平10-202180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0216706(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108756937(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向及び軸方向に複数連結されてシールドトンネルを形成するためのセグメントピースにおいて、
前記セグメントピースが、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部と、を有してなり、
連結前における前記セグメントピースの表面の少なくとも一部が、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料
、滑剤及び溶媒を含む液状プレコート塗料(A)により形成された膜厚100μm~5000μmの有機樹脂塗膜で被覆されてな
り、
前記滑剤が、水系エマルションとして水中に分散されたワックス粒子を含む、セグメントピース。
【請求項2】
前記セグメントピースの少なくとも前記外面部の表面が、前記有機樹脂塗膜で被覆されてなる、請求項1記載のセグメントピース。
【請求項3】
セグメントピースが、少なくとも外面部を覆う鋼板を有する鋼殻及び鋼殻にコンクリートを中詰めしてなるものであり、前期鋼殻の表面の少なくとも一部に液状プレコート塗料(A)を塗装する、請求項1又は2記載のセグメントピース。
【請求項4】
前記滑剤の含有量が、前記液状プレコート塗料(A)の不揮発分中に、不揮発分で0.1~10質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項5】
前記液状プレコート塗料(A)に含まれる前記有機樹脂成分がアクリル樹脂を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項6】
前記液状プレコート塗料(A)が常温一液反応硬化型である、請求項1~
5のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項7】
前記液状プレコート塗料(A)が水性塗料である、請求項1~
6のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項8】
前記液状プレコート塗料(A)が、架橋剤、有機粒子、無機粒
子及び造膜助剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項9】
前記有機樹脂塗膜の下にエポキシ樹脂塗膜が設けられてなる、請求項1~
8のいずれか1項に記載のセグメントピース。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のセグメントピースが複数連結されて形成された、セグメント壁体。
【請求項11】
周方向及び軸方向に複数連結されてシールドトンネルを形成するためのセグメントピースの製造方法であって、
前記セグメントピースが、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部と、を有してなり、
セグメント連結前の前記セグメントピースの表面の少なくとも一部に、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料
、滑剤及び溶媒を含む液状プレコート塗料(A)を、乾燥膜厚が100μm~5000μmとなるように塗装することを含
み、
前記滑剤が、水系エマルションとして水中に分散されたワックス粒子を含む、セグメントピースの製造方法。
【請求項12】
周方向及び軸方向に複数連結されてシールドトンネルを形成するためのセグメントピースの製造方法であって、
前記セグメントピースが、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部と、を有してなり、
セグメント連結前の前記セグメントピースの少なくとも外面部の表面に、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料
、滑剤及び溶媒を含む液状プレコート塗料(A)を、乾燥膜厚が100μm~5000μmとなるように塗装することを含
み、
前記滑剤が、水系エマルションとして水中に分散されたワックス粒子を含む、セグメントピースの製造方法。
【請求項13】
前記セグメントピースが、少なくとも外面部を覆う鋼板を有する鋼殻及び前記鋼殻にコンクリートを中詰めしてなるものであり、
前記鋼殻が完成した後、かつ、前期鋼殻にコンクリートを打設する前に、前記鋼殻の外面部の表面の少なくとも一部に液状プレコート塗料(A)を塗装することを含む、請求項
12に記載のセグメントピースの製造方法。
【請求項14】
前記セグメントピースが、少なくとも外面部を覆う鋼板を有する鋼殻及び前記鋼殻にコンクリートを中詰めしてなるものであり、
前記鋼殻にコンクリートを打設した後に、前記鋼殻の外面部の表面の少なくとも一部に液状プレコート塗料(A)を塗装することを含む、請求項
12に記載のセグメントピースの製造方法。
【請求項15】
前記鋼殻の外面部がコンクリートを充填するための打設口を備えており、コンクリートの打設が前記鋼殻の外面部を上側にした状態で前記打設口に対して実施される、請求項
14に記載のセグメントピースの製造方法。
【請求項16】
前記液状プレコート塗料(A)を塗装する前に、エポキシ樹脂塗料を塗装する工程を含む、請求項
11~
15のいずれか1項に記載のセグメントピースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールドトンネル覆工に利用されるセグメントピース、セグメントピースの製造方法及びセグメント壁体に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルや海底トンネルの他、浅深度地下への新設が難しい都市部の地下道路、鉄道トンネルや下水道トンネル、地下河川トンネル等については、シールドマシンによる掘削を行い、掘り進んだトンネル内にセグメントピースと呼ばれる断面扇形の部材を縦横に連結して、トンネルを構築していくシールド工法が採用されている。
【0003】
トンネル内空間を道路や鉄道として利用する場合においても、また、トンネル内空間を、雨水路や下水道として利用する場合においても、トンネル壁面を境界として、内外面に作用する地下水又は泥による水圧や土圧に差異があるため、トンネル壁の防水構造は、完成後の漏水対策費や、環境に与える影響を考慮すると重要な問題である。
【0004】
このため、近年ではセグメント本体の防水性を向上させる取り組みが行われている。
例えば、特許文献1には、合成セグメントの鋼殻とコンクリートとの異種材料間の止水性能を高めるために鋼殻のコンクリートに対する内面側に止水材を貼り付け設置する技術が開示されている。
【0005】
特許文献1記載の技術によれば合成セグメント本体の止水機能が長期間持続するとともに、鋼殻とコンクリートとの拘束力が増大することで、地震等により生じうるコンクリートのひび割れを防止することが可能となる。
【0006】
ところで、トンネル工事に使用されるシールドマシンには、掘削したトンネル内に山から染み出た地下水や泥が流入しないようにするためにマシン後方部(テール部)にテールブラシと呼ばれるワイヤー製のブラシが複数備えられている。このブラシ内及びブラシ間にはポンプで継続的にグリースが圧送することでブラシにグリースが充填され、このグリースが充填されたブラシがセグメント表面を強い荷重で低速通過することでセグメントが連結される際のトンネル内への止水が可能となる仕組みとなっている。つまり、シールド工法によるトンネル工事では、テールブラシがセグメント外表面を強い力で押圧しながら通過した後にセグメントが連結されてトンネル壁が構築されるために、セグメントの外面部の表面はテールブラシによる強い力による摩耗に対する耐性が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
地下水には塩化物イオン等の腐食因子が含まれており、これが地中のコンクリートの中性化あるいは鋼殻の腐食を引き起こし、トンネルの経年劣化に繋がると考えられている。このため、シールドトンネルを形成するためのセグメントピースはテールブラシによる負荷を受けた後でも防水性を維持することが必要である。
【0009】
本発明の課題は、シールドマシンのテールブラシによる摩耗に耐えうる耐高圧傷性を備え且つ防水性に優れたセグメントピース、セグメントピースの製造方法及びセグメント壁体を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題について鋭意検討した。その結果、すでに供用されているトンネルに対して補修塗装して延命化を図るのではなく、連結前のセグメントピースの表面に液状プレコート塗料をあらかじめ厚膜塗装して、防水膜となる有機樹脂塗膜で被覆することが、結果的にトンネルの高寿命化に有効であることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含むセグメントピース、セグメントピースの製造方法及びセグメント壁体に関する。
(1)周方向及び軸方向に複数連結されてシールドトンネルを形成するためのセグメントピースにおいて、
前記セグメントピースが、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部と、を有してなり、
連結前における前記セグメントピースの表面の少なくとも一部が、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料及び溶媒を含む液状プレコート塗料(A)により形成された膜厚100μm~5000μmの有機樹脂塗膜で被覆されてなる、セグメントピース。
(2)前記セグメントピースの少なくとも前記外面部の表面が、前記有機樹脂塗膜で被覆されてなる、(1)記載のセグメントピース。
(3)セグメントピースが、少なくとも外面部を覆う鋼板を有する鋼殻及び鋼殻にコンクリートを中詰めしてなるものであり、前期鋼殻の表面の少なくとも一部に液状プレコート塗料(A)を塗装する、(1)又は(2)記載のセグメントピース。
(4)前記液状プレコート塗料(A)に含まれる前記有機樹脂成分がアクリル樹脂を含む、(1)~(3)のいずれかに記載のセグメントピース。
(5)前記液状プレコート塗料(A)が常温一液反応硬化型である、(1)~(4)のいずれかに記載のセグメントピース。
(6)前記液状プレコート塗料(A)が水性塗料である、(1)~(5)のいずれかに記載のセグメントピース。
(7)前記液状プレコート塗料(A)が、架橋剤、有機粒子、無機粒子、滑剤及び造膜助剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含む、(1)~(6)のいずれかに記載のセグメントピース。
(8)前記有機樹脂塗膜の下にエポキシ樹脂塗膜が設けられてなる、(1)~(7)のいずれかに記載のセグメントピース。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載のセグメントピースが複数連結されて形成された、セグメント壁体。
(10)周方向及び軸方向に複数連結されてシールドトンネルを形成するためのセグメントピースの製造方法であって、
前記セグメントピースが、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部と、を有してなり、
セグメント連結前の前記セグメントピースの表面の少なくとも一部に、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料及び溶媒を含む液状プレコート塗料(A)を、乾燥膜厚が100μm~5000μmとなるように塗装することを含む、セグメントピースの製造方法。
(11)周方向及び軸方向に複数連結されてシールドトンネルを形成するためのセグメントピースの製造方法であって、
前記セグメントピースが、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部と、を有してなり、
セグメント連結前の前記セグメントピースの少なくとも外面部の表面に、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料及び溶媒を含む液状プレコート塗料(A)を、乾燥膜厚が100μm~5000μmとなるように塗装することを含む、セグメントピースの製造方法。
(12)前記セグメントピースが、少なくとも外面部を覆う鋼板を有する鋼殻及び前記鋼殻にコンクリートを中詰めしてなるものであり、
前記鋼殻が完成した後、かつ、前期鋼殻にコンクリートを打設する前に、前記鋼殻の外面部の表面の少なくとも一部に液状プレコート塗料(A)を塗装することを含む、(11)に記載のセグメントピースの製造方法。
(13)前記セグメントピースが、少なくとも外面部を覆う鋼板を有する鋼殻及び前記鋼殻にコンクリートを中詰めしてなるものであり、
前記鋼殻にコンクリートを打設した後に、前記鋼殻の外面部の表面の少なくとも一部に液状プレコート塗料(A)を塗装することを含む、(11)に記載のセグメントピースの製造方法。
(14)前記鋼殻の外面部がコンクリートを充填するための打設口を備えており、コンクリートの打設が前記鋼殻の外面部を上側にした状態で前記打設口に対して実施される、(13)に記載のセグメントピースの製造方法。
(15)前記液状プレコート塗料(A)を塗装する前に、エポキシ樹脂塗料を塗装する工程を含む、(10)~(14)のいずれかに記載のセグメントピースの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセグメントピースは、耐高圧傷性及び防水性を共に兼ね備えている。このため、シールド工法におけるトンネル工事の際に、シールドマシンに備えられたテールブラシが強い力でセグメントピースを通過した後でも防水性を長期間にわたって発揮して、トンネルの寿命を長期化することが可能である。
特に第1発明によれば、厚膜の樹脂塗膜でセグメントピースを被覆することにより、施工時に想定される様々な衝撃荷重などに対して、厚塗膜の持つ柔軟性を十分に発揮し、これら荷重による損傷を最小限に抑えることが可能となり、高品質な防水膜を維持することが可能となる。
特に第2発明によれば、厚膜の樹脂塗膜でセグメントピースの外面を被覆することにより、施工時において特に損傷リスクの高いテールブラシ通過に伴う塗膜を剥がそうとする荷重に対して、厚膜の樹脂塗膜の持つ柔軟性により、塗膜がテールブラシの動きに適度に追従することで、テールブラシによる損傷を最小限に抑えることが可能となり、高品質な防水膜をより効率的に維持することが可能となる。
特に第3発明によれば、厚膜の樹脂塗膜でセグメントピースの外面部を覆う鋼板をさらに覆うことで、長期供用期間における鋼板の腐食などによる貫通孔の発生を防ぎ、セグメントピースへの浸水、トンネル内空への漏水を抑止することが可能となり、より高品質なトンネル覆工を長期間にわたって維持することが可能となる。
特に第4発明によれば、液状プレコート塗料(A)がアクリル樹脂を含むことにより、塗膜の柔軟性をさらに向上させることができ、施工時に想定される様々な衝撃荷重などに対して、厚塗膜の持つ柔軟性をより効果的に発揮し、これら荷重による損傷を最小限に抑えることが可能となる。これにより、さらに高品質な防水膜を長期間にわたって維持することが可能となる。
特に第5発明によれば、液状プレコート塗料(A)が常温一液反応硬化型であることにより、塗装作業性が向上し、特に外面部などの広範囲な面積に均一な品質の塗膜を形成することが可能となり、より高品質な防水膜を提供することが可能となる。
特に第6発明によれば、液状プレコート塗料(A)が水性塗料であることにより、塗装作業性が向上し、特に外面部などの広範囲な面積に均一な品質の塗膜を形成することが可能となり、より高品質な防水膜を提供することが可能となる。
特に第7発明によれば、液状プレコート塗料(A)が、架橋剤、有機粒子、無機粒子、滑剤及び造膜助剤から選ばれる少なくとも1種を含むことにより、塗膜の柔軟性をさらに向上させることができ、施工時に想定される様々な衝撃荷重などに対して、厚塗膜の持つ柔軟性をより効果的に発揮し、これら荷重による損傷を最小限に抑えることが可能となる。これにより、さらに高品質な防水膜を長期間にわたって維持することが可能となる。
特に第8発明によれば、厚膜の樹脂塗膜の下にエポキシ樹脂塗膜を設けることにより、厚膜塗膜とセグメントピース表面との付着性能を向上させ、施工時に想定される様々な衝撃荷重などに対して、厚塗膜の持つ柔軟性を十分に発揮し、これら荷重による損傷を最小限に抑えることが可能となる。これにより、さらに高品質な防水膜を長期間にわたって維持することが可能となる。
特に第12発明によれば、鋼殻が完成した後、かつ、コンクリートを打設する前に外面部を覆う鋼板に液状プレコート塗料(A)を塗装することで、鋼殻完成後の半製品保管期間を活用し、セグメント製造工程に大きな影響を与えることなく十分な塗膜乾燥時間を確保することが可能となり、低コストで高品質な防水膜を形成することが可能となる。
特に第13発明によれば、鋼殻にコンクリートを打設した後に外面部を覆う鋼板に液状プレコート塗料(A)を塗装することで、コンクリートの硬化熱を活用して塗膜を内側から緩やかに温める理想的な状況で乾燥させることができ、さらに塗膜乾燥時間を短縮することが可能となり、より低コストで高品質な防水膜を形成することが可能となる。
特に第14発明によれば、鋼殻の外面部を上側にした状態でコンクリートを打設することで、そのままの姿勢で液状プレコート塗料(A)を下向きに塗装することが可能となり、より効率的に高品質な防水膜を形成することが可能となる。
特に第15発明によれば、厚膜の樹脂塗膜でセグメントピースを被覆する前にエポキシ樹脂塗料を塗装することにより、厚膜塗膜とセグメントピース表面との付着性能を向上させ、施工時に想定される様々な衝撃荷重などに対して、厚塗膜の持つ柔軟性を十分に発揮し、これら荷重による損傷を最小限に抑えることが可能となる。これにより、さらに高品質な防水膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のセグメントピースにおける有機樹脂塗膜の配置の一態様を説明する図である。
【
図2】本発明のセグメントピースにおける有機樹脂塗膜の配置の別の態様を説明する図である。
【
図3】セグメントピースで構築されるセグメント壁体を示す模式図である。
【
図4】本発明のセグメントピースの製造方法において、舟形打設を適用した場合の説明図である。
【
図5】本発明のセグメントピースの製造方法において、ふせうち打設を適用した場合の説明図である。
【
図6】耐高圧傷性試験後の試験塗板の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明におけるセグメントピースとは、シールドマシンで掘削された壁面に複数連結されてシールドトンネルを形成するための部材であり、従来公知のものを制限なく使用できる。例えば、主鋼材として鉄筋を備えた鉄筋コンクリート製のRCセグメントや、スキンプレートを備えた合成セグメント及び/又は鋼製セグメント等が挙げられる。
【0015】
次に、図を参照しながら、本発明のセグメントピースの実施態様について説明する。
図1は本発明のセグメントピースの1例を示す概略図である。
【0016】
図1は、本発明のセグメントピースにおける有機樹脂塗膜の配置の一態様を示すものである。この態様では、有機樹脂塗膜で被覆されたセグメントピース1は、シールドトンネル地山側の外面を形成する外面部2と、前記外面部に対向し、トンネル内空側の内面を形成する内面部4と、前記外面部と内面部の周囲を繋げる側面部3と、を有してなり、外面部2の表面が防水膜となる有機樹脂塗膜によって被覆されている。
【0017】
図1においては、防水膜となる有機樹脂塗膜は外面部2の表面にのみ形成されているが、本発明において、有機樹脂塗膜の配置は制限されるものではなく、例えば
図2に示すように、外面部2と内面部5の両方に有機樹脂塗膜が被覆されていてもよい。また、すべての面に対して有機樹脂塗膜が被覆されていてもよいし、例えば側面部の一部の表面にのみ有機樹脂塗膜が被覆されていてもよい(図示せず)。
【0018】
本発明では防水膜となる有機樹脂塗膜の膜厚は、耐高圧傷性及び防水性の点から100μm~5000μmであり、500~3000μmの範囲内にあることが好ましい。本明細書において、膜厚は塗付量から理論的に計算して求めるものとする。
【0019】
本発明ではセグメントピース表面のうち、少なくとも外面部の表面が液状プレコート(A)による有機樹脂塗膜で被覆された態様が、本発明の効果を特に有利に発揮することができ、好ましい。
【0020】
本発明では、前記有機樹脂塗膜があらかじめ備えられたセグメントピースが軸方向及び円周方向で複数連結されることで、例えば円筒状トンネルなどの耐久性に優れたセグメント壁体が構築される(
図3参照)。
【0021】
以下に、防水膜となる有機樹脂塗膜を形成するためのプレコート塗料(A)について詳細に説明する。
【0022】
本発明に使用される液状プレコート塗料(A)は、有機樹脂成分、着色顔料、体質顔料及び溶媒を含む塗料である。
【0023】
<有機樹脂成分>
本発明において、有機樹脂成分としては、特に制限はなく、有機溶剤希釈タイプ、水希釈タイプのいずれも使用可能である。樹脂種としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、シリコン樹脂及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0024】
前記有機樹脂成分は液状プレコート塗料(A)不揮発分中に、不揮発分で20~75質量%、特に30~60質量%の範囲内で含まれることが好ましい。
【0025】
本明細書において不揮発分とは揮発成分を除いた残存物を意味するものであり、残存物としては常温で固形状であっても液状であっても差し支えない。例えば試料を105℃、3時間処理して揮発成分を除去した時の残存成分をいう。
【0026】
本発明では、耐高圧傷性及び付着性の点から、前記樹脂成分がアクリル樹脂を主成分とする樹脂成分であることが好ましい。
【0027】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリロイル化合物を必須とし、その他の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー成分を共重合してなる樹脂が挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学社製、ISTA 高分岐状長鎖アルキルアクリレート)等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ヘキサフルオロ-i-プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート;(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2-アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2-メタクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート等のリン酸基含有(メタ)アクリレート;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリル酸;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリロイルモノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアナト基含有(メタ)アクリロイルモノマー;γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート等の多ビニル化合物;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有(メタ)アクリロイルモノマー;1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等;2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレート、テトラメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等の4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;
等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、その他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α-メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4~7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等)、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;m-i-プロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー;フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル等のフルオロビニルエーテル等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
前記アクリル樹脂の重量平均分子量としては、適宜調整できるが、1万~300万、特に5万~100万の範囲内にあることができる。
【0031】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G-4000H×L」、「TSKgel G-3000H×L」、「TSKgel G-2500H×L」、「TSKgel G-2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0032】
前記液状プレコート塗料(A)は、施工作業性及び有機樹脂塗膜の防水性の点から、常温一液反応硬化型であることが適当であり、このためアクリル樹脂はカルボニル基含有重合性不飽和モノマーを共重合成分として含むことが好ましい。
【0033】
カルボニル基含有重合性不飽和モノマーとしては、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン、アセトアセトキシアリルエステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
カルボニル基含有重合性不飽和モノマーの共重合割合としては、アクリル樹脂の製造に使用される全重合性不飽和モノマーを基準として1~20質量%の範囲内が好ましく、3~15質量%の範囲内がより好ましい。
【0035】
また、前記アクリル樹脂としては、耐高圧傷性の点から、直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートを共重合成分として含むことが好ましい。
【0036】
前記直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートとしては、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
前記直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートの共重合割合としては、アクリル樹脂の製造に使用される全重合性不飽和モノマーを基準として50質量%以上であることが好ましく、65~85質量%であることがより好ましい。
【0038】
また、上記有機樹脂成分は、その成分の一部として、直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートの共重合割合が50質量%未満であるアクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0039】
前記アクリル樹脂に使用される重合性不飽和モノマー、直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートとしては上記で例示した化合物が挙げられる。
【0040】
本発明では、耐高圧傷性の点から、直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートの共重合割合がアクリル樹脂の製造に使用される全重合性不飽和モノマーを基準として50質量%以上のアクリル樹脂(a1)と、直鎖状又は分岐状の炭素数が4以上のアルキル基を含有するアクリレートの共重合割合がアクリル樹脂の製造に使用される全重合性不飽和モノマーを基準として50質量%未満のアクリル樹脂(a2)とを併用することが好ましい。併用割合としては、質量比で5/95~95/5の範囲内が適当である。
【0041】
本発明において前記アクリル樹脂が水性である場合、エマルション型及び水溶解型のいずれでもよいがエマルション型であることが好ましい。エマルション型のアクリル樹脂は、例えば水及び分散安定剤の存在で、前記重合性不飽和モノマー成分を1段階で又は多段階で乳化重合することにより製造することができる。
【0042】
<着色顔料>
前記液状プレコート塗料(A)に含まれる着色顔料としては、無機系又有機系の顔料が単独で又は併用して用いられる。無機系の顔料としては、例えば、二酸化チタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。有機系の顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0043】
<体質顔料>
前記体質顔料としては、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、硫酸バリウム、タルク、ホワイトカーボン、珪藻土、炭酸マグネシウムアルミニウムフレーク、雲母フレーク、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0044】
本発明において、上記着色顔料及び体質顔料は、耐高圧傷性及び防水性の点から、全顔料体積濃度が10~60%となるように含まれることが好ましく、15~55%となるように含まれることがより好ましい。本明細書において顔料体積濃度は、塗料中の全樹脂分と全顔料との合計固形分に占めるその顔料分の体積割合である。本明細書において、顔料の体積を算出する際のもとになる顔料の比重は「顔料の事典」(総編集者 伊藤征司郎)によるものであり、また、樹脂固形分の比重は1と近似するものとする。
【0045】
<溶媒>
前記液状プレコート塗料(A)は溶媒を含有する。溶媒を含むことによって、塗装対象となる構成部材の表面が複雑な形状であったり、入り組んだ構造を有していても有機樹脂塗膜による防水性を付与することが可能である。
【0046】
前記液状プレコート塗料(A)に含まれる溶媒は、塗装後、膜に残存しない揮発性物質であればよく、有機化合物でも水でもよいが、施工環境が良好であることから主成分が水であり、液状プレコート塗料(A)が水性塗料であることが好ましい。水性とは有機溶剤系と対比される用語であって、一般に、溶媒が水のみ又は水を主成分とする(水性溶媒)ことを意味し、有機溶剤系とは、溶媒として実質的に水を含有しないか又は溶媒の全て又はほとんどが有機溶剤であることを意味する。
【0047】
<液状プレコート塗料(A)>
前記液状プレコート塗料(A)は、防水性及び耐高圧傷性の点から、架橋剤、有機粒子、無機粒子、滑剤、造膜助剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0048】
これらのうち架橋剤としては公知の架橋剤、具体的には、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸等を挙げることができる。特にポリヒドラジド化合物の使用が好ましい。
【0049】
ポリヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの炭素数2~18の飽和脂肪族カルボン酸のジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸のジヒドラジド;フタル酸、テレフタル酸又はイソフタル酸のジヒドラジド;ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド又はテトラヒドラジド;ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド;エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水化物(ヒドラジンヒドラード)と反応させてなるポリヒドラジド、及びこれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0050】
架橋剤の含有量としては液状プレコート塗料(A)不揮発分100質量部を基準として0.01~5.0質量部、特には0.02~0.8質量部の範囲内であることが、耐高圧傷性の観点から好ましい。
【0051】
前記有機粒子としてはポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミノ酸樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂及びこれらの共重合体の粒子が挙げられる。前記有機粒子は市販品であってもよく、市販品としては、例えば、アイカ工業社製のガンツパールシリーズ、スタフィロイドシリーズ、三井ケミカル社製ケミパールシリーズ、根上工業株式会社アートパールシリーズ、日本触媒社製エポスターシリーズ、東洋紡社製タフチックシリーズ、積水化成社製テクポリマーシリーズ等が挙げられる。
【0052】
無機粒子としてはシリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子としては、粉末状シリカ、コロイダルシリカ等を用いることができる。シリカ粒子として市販品を用いてもよい。市販のシリカ粒子としては日本アエロジル社製のアエロジルシリーズ、エボニックインダストリー社製のカープレックスシリーズ、旭硝子社製シールデックス、富士シリシア社製、サイリシアシリーズ、日産化学社製スノーテックスシリーズ、ADEKA社製アデライトシリーズ等が挙げられる。
【0053】
上記有機又は無機粒子は単独で又は併用して使用することができる。含有量としては液状プレコート塗料(A)不揮発分中に、不揮発分で0.5~10質量%、特に1.0~8.0質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0054】
前記液状プレコート塗料(A)は耐高圧傷性の点から滑剤を含むことが好ましい。滑剤としては、ワックス、シリコーン化合物、パーフルオロアルキル化合物等が挙げられる。
【0055】
ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、脂肪酸と1価アルコール又は多価アルコールとの縮合物であるエステルワックス、カルナバワックスが挙げられる。ワックスは、例えば、ワックスを水中に分散させた水系エマルション中に含まれるワックス粒子として添加することが好ましい。前記ワックスは市販品を使用してもよく、市販品としては、例えば、BYK社製のAQUACERシリーズ、CERACOLシリーズ及びCERAFLOURシリーズ、三井化学社製のケミパールシリーズ等が挙げられる。
【0056】
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン系界面活性剤及びポリエーテル変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0057】
パーフルオロアルキル化合物としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。
【0058】
上記滑剤は単独で又は併用して使用することができる。含有量としては液状プレコート塗料(A)不揮発分中に、不揮発分で0.1~10質量%、特に0.5~5.0質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0059】
造膜助剤としては、例えば、エチレングリコールモノi-プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノi-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノi-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノi-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノi-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノ2-エチルヘキサノエート、及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ2-エチルヘキサノエートなどのエステル系化合物等がある。
【0060】
上記造膜助剤は単独で又は併用して使用することができる。含有量としては耐アルカリ性の点から液状プレコート塗料(A)不揮発分中に、不揮発分で5.0質量%以下、特に0.1~2.5質量%の範囲内が好ましい。
【0061】
前記液状プレコート塗料(A)は、上記した成分以外に可塑剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、難燃剤、中和剤等の塗料用添加剤を必要に応じて含むことができる。
【0062】
<セグメントピースの製造方法>
本発明のセグメントピースは、セグメント連結前のセグメントピースの表面の少なくとも一部に、上記液状プレコート塗料(A)を塗装することによって製造される。
【0063】
前記プレコート塗料(A)により形成される有機樹脂塗膜は、高耐圧傷性に優れているので、セグメントピースの少なくとも外面部(地山側)の表面に設けることが特に好ましく、そしてセグメント連結前に予め設けることで本発明の効果を最大限に発揮することができる。
【0064】
塗装手段としては、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケなどが挙げられ、目標となる乾燥膜厚になるように複数回塗り重ねることができる。
【0065】
形成された有機樹脂塗膜の乾燥方法としては、常温乾燥で行うことができるが、必要に応じて加熱乾燥を行ってもよい。
【0066】
本発明では、前記有機樹脂塗膜の下に、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂塗膜を設けてもよい。前記有機樹脂塗膜の下層にあるエポキシ樹脂塗膜を形成するためエポキシ樹脂塗料としては、エポキシ樹脂を主たる構成成分とし、硬化剤を混合して硬化させるものを用いることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などがあげられる。硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリアミン、前記ポリアミンにエポキシ樹脂を付加したアミンアダクト、各種ポリアミン等が挙げられる。エポキシ樹脂塗膜の乾燥膜厚としては、10~200μmの範囲内が好ましく、30~150μmの範囲内がより好ましい。
【0067】
また、本発明は、上記セグメントピースが鋼殻及びコンクリートが一体化した、いわゆる合成セグメントピースである場合において、鋼殻にコンクリートを打設した後に、鋼殻の外面部に前記液状プレコート塗料(A)を塗装することを含む、セグメントピースの製造方法を提供するものである。
【0068】
本発明においてコンクリートの打設方法は特に制限はなく、公知の方法を使用可能である。
【0069】
図4は本発明にコンクリートの舟形打設を適用した場合の説明図である。
図4(a)に示すように、コンクリート7の打設工程がセグメントピース8の鋼殻の外面部を下側にした状態で実施される場合、
図4(b)に示すように、舟のように下に凸の状態のままコンクリートが養生される。したがって、鋼殻の外面部に液状プレコート塗料(A)を塗装する場合は、通常、
図4(c)に示すように脱型後の鋼殻及びコンクリートの一体化物を鋼殻外面部が上側になり上に凸となるように反転した後に、例えば塗装ローラー9を用いて塗装して、有機樹脂塗膜10で被覆する。
【0070】
図5は本発明にふせうち打設を適用した場合の説明図である。
図5(a)に示すように、セグメントピース8の鋼殻の外面部がコンクリート7を充填するための打設口11を備えており、鋼殻外面部を上側に、お椀をふせたような状態でコンクリート7の打設が前記打設口11に対して実施される。鋼殻の外面部に対して液状プレコート塗料(A)を塗装する場合、通常、
図5(b)に示すように前記打設口11を蓋材12により閉塞してから行われる。この製造方法の場合、重量のある鋼殻及びコンクリートの一体化物の反転を要することなく、また、コンクリートを養生しながら液状プレコート塗料(A)の塗装を行って有機樹脂塗膜10で被覆することが可能である(
図5(c)参照)。
【0071】
本発明のセグメントピースの製造方法においては、上記液状プレコート塗料(A)を塗装する前に、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂塗料を塗装する工程を含むことができる。これにより、有機樹脂塗膜の下に、エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂塗膜を設けることができる。エポキシ樹脂塗料についてはすでに説明したとおりである。また、エポキシ樹脂塗料の塗装手段としては、例えば、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、リシンガン、万能ガン、ハケなどが挙げられ、目標となる乾燥膜厚になるように複数回塗り重ねることができる。形成されたエポキシ樹脂塗膜の乾燥方法としては、常温乾燥できるが、必要に応じて加熱乾燥を行ってもよい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。ここで、『部』及び『%』はそれぞれ『質量部』及び『質量%』を意味する。
【0073】
製造例(液状プレコート塗料の製造)
液状プレコート塗料(X-1)~(X-18)を、下記表1~表2記載の配合組成で製造した。
【0074】
実施例1~23及び比較例1~2
合成セグメントの鋼殻外面部に使用されるスキンプレートを想定し、試験用に使用する支持体として黒皮鋼板を用意した。大きさは幅70mm×長さ150mm×板厚み2.3mmである。
【0075】
上記製造例で得られた液状プレコート塗料(X-1)~(X-18)を用いて、下記評価試験を行った。評価結果を表1~2に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
表中の(注1)~(注11)は次のとおりである。
(注1)50%アクリル樹脂エマルション(A-1):
スチレン/n-ブチルアクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸/ダイアセトンアクリルアミド=10/1/80/3/6の乳化重合体、重量平均分子量300000
(注2)50%アクリル樹脂エマルション(A-2):
スチレン/n-ブチルアクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸/ダイアセトンアクリルアミド/1,6ヘキサメチレンジアクリレート=15/24/15/41/2/0.3/2.3/0.4の乳化重合体
(注3)着色顔料:酸化チタン、比重4.1
(注4)体質顔料:炭酸カルシウム、比重2.7
(注5)33%コロイダルシリカ:「スノーテックスO-33」、商品名、日産化学社製
(注6)80%樹脂粒子:「ガンツパールGM-1702H」、商品名、アイカ工業社製
(注7)50%ワックスエマルション:「AQUACER497」、商品名、BYK社製
(注8)ポリエーテルポリシロキサン:「TEGOGlide410」、商品名、Evonic社製
(注9)造膜助剤:2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート
(注10)ウレタン系塗膜防水材:
主剤:トリレンジイソシアネート及びポリプロピレングリコール系末端イソシアネートウレタンプレポリマー/キシレン=24/1 硬化剤:ポリプロピレングリコール/可塑剤/炭酸カルシウム/酸化チタン/カーボンブラック/キシレン=10/7/46/0.3/0.1/6の2液型防水材 主剤/硬化剤質量比は1:3
(注11)エポキシ/アミン系防食塗料:
主剤:エポキシ当量190のビスフェノールA型エポキシ樹脂/エポキシ当量190のビスフェノールF型エポキシ樹脂/酸化チタン/タルク/キシレン=60/40/5/5/2 硬化剤:アミン価360の芳香族ポリアミドアミン/酸化チタン/キシレン=20/25/2 主剤/硬化剤質量比は2:1
【0079】
<評価試験>
(*)耐高圧傷性:
支持体としての黒皮鋼板に、「エスコNB」商品名、関西ペイント社製、2液型ケチミン硬化変性エポキシ樹脂さび止め塗料)主剤及び硬化剤を9/1で混合した塗料を乾燥膜厚が60μmとなるように塗装し、23℃で8時間乾燥させた後、表1~表2記載の各液状プレコート塗料を表記載の膜厚となるように塗装し、23℃7日間乾燥させ試験塗板を作成した。23℃の室温において、耐高圧傷性テスター(関西ペイント社製)を用いて、各試験塗板の表面の塗面に当て板(SUS304H バネ用鋼板)の縁を45度の角度に保ち、荷重:100Kgで押し付けながら、試験塗板を速度:10mm/秒で100mm動かして塗面状態を観察し、下記基準で評価した。
図6に耐高圧傷性試験後の試験塗板の一例を示す。この例ではへこみ、えぐれ傷、うろこ傷等の傷が認められる。
◎:へこみ、えぐれ傷、うろこ傷等の損傷が全く認められない。
〇:へこみ、えぐれ傷、うろこ傷等の損傷が若干認められるが金属の素地が全く認められない。
△:へこみ、えぐれ傷、うろこ傷等の損傷が認められ、金属の素地も認められる。
×:塗面が全面的に剥がれる。
評価◎の場合は、耐高圧傷性が特に優れており、評価〇の場合は、金属素地まで傷が達していないので、実用可能であると言える。一方、評価△×の場合は、金属素地まで傷が達しているので、実用に適さないと判定した。
【0080】
(*)乾燥性:
上記耐高圧傷性試験と同様の方法で試験塗板を作成し、塗膜の表面をティッシュペーパーで押し付けてはがしたあとの残り具合を下記基準で評価した。
◎:塗膜表面にべたつきがまったくなく、ティッシュペーパーがつかない、
○:塗膜表面にべたつきが若干あるが、ティッシュペーパーがはがれて残りあとなし、
△:塗膜表面にべたつきがあり、ティッシュペーパーがわずかに残る、
×:塗膜がティッシュペーパーに付着。
評価◎の場合は、乾燥性が特に優れており、評価〇の場合は、ティッシュペーパーが残らないので、実用可能であると言える。一方、評価△×の場合は、べたつきやティッシュペーパーへの付着があるので、防水施工された構成部材の移送などが困難となり、実用に適さないと判定した。
【0081】
(*)付着性:
上記耐高圧傷性試験と同様の方法にて試験塗板を作成し、JIS K5600-5-7(2014)に準拠した方法(プルオフ試験法)で付着性を調べた。各試験板の測定位置をサンドペーパーで軽く研磨して清浄にし、接着剤を用いて直径20mmのドーリー(試験円筒)に貼り付ける。ドーリー周辺の塗膜をカッターで切断し、テスターでドーリーを引き剥がし、その時の強度(MPa)を観察した。
◎:0.9MPa以上、
○:0.6MPa以上0.9MPa未満、
△:0.3MPa以上0.6MPa未満、
×:0.3MPa未満。
評価◎〇の場合は、道路橋床版防水便覧の付着力の規格を満たしており、防水塗膜として十分な付着性があると判定した。評価△及び×の場合は、前記規格を満たしていないので、ここでは不合格とした。
【0082】
(*)防水性:
ポリプロピレン板に、表1~表2記載の各液状プレコート塗料(A)を表記載の膜厚となるように塗装し、23℃7日間乾燥させてフリーフィルムを得た。
本発明では地下水圧を再現し、塗膜の防水性を確認できる試験としてBS EN14150に準じて試験を行った。具体的には防水テスター(関西ペイント社製)に備えられたセルにフリーフィルムを挟み、テスター内をすべて水で満たした後、フリーフィルムの両面に対して片面を高圧力(0.15Mpa)、反対側の片面を低圧力(0.05MPa)で圧力をかけ、圧力差を生じさせることによってフィルムを通過する水の量を測定し、下記基準で評価した。
◎:0.05[L/m2/day]未満、
〇:0.05[L/m2/day]~0.1[L/m2/day]、
△:0.1[L/m2/day]を超えて0.5[L/m2/day]、
×:0.5[L/m2/day]を超える。
評価◎及び〇の場合は、BTSのCLASS3の規格を満たしており、大きな圧力がかかっても透水が良好に抑制されていると言える。評価△及び×の場合は、地下水圧の環境下では防水性が不十分であり、実用には適さないと判定した。
【0083】
(*)耐アルカリ性:
ポリプロピレン板に、表1~表2記載の各液状プレコート塗料(A)を表1~表2記載の膜厚となるように塗装し、23℃7日間乾燥させてフリーフィルムを得た。このフリーフィルムを50℃の飽和石灰水に56日間浸漬し、前記防水性試験に供した。評価基準は防水性試験と同様である。
評価◎及び〇の場合は、BTSのCLASS3の規格を満たしており、大きな圧力がかかり、コンクリートのようなアルカリ雰囲気下でも透水が良好に抑制されていると言える。評価△及び×の場合は、地下水圧及びアルカリ性の環境下では防水性が不十分であり、実用には適さないと判定した。
【0084】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【符合の説明】
【0085】
1 :有機樹脂塗膜で被覆されたセグメントピース
2 :有機樹脂塗膜(セグメントピース外面部)
3 :セグメントピース側面部
4 :セグメントピース内面部
5 :有機樹脂塗膜(セグメントピース内面部)
6 :セグメント壁体
7 :コンクリート
8 :セグメントピース
9 :塗装ローラー
10 :有機樹脂塗膜
11 :打設口
12 :蓋材