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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-17
(45)【発行日】2025-09-26
(54)【発明の名称】自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20250918BHJP
   B62J 50/30 20200101ALI20250918BHJP
【FI】
B62M7/02 X
B62J50/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024543745
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2022033115
(87)【国際公開番号】W WO2024047866
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】及川 義輝
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-60256(JP,A)
【文献】特開2021-990(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030110(WO,A1)
【文献】特開2015-113074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
B62J 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケース(22)にシリンダ(23)とシリンダヘッド(24)を重ねて一体に締結した内燃機関(21)が、車体フレーム(2)にリンク部材(18)を介して揺動可能に支持され、
前記シリンダヘッド(24)から延出する排気管(43)の途中に介装された触媒装置(44)が、前記クランクケース(22)の前方に配設される自動二輪車(1)において、
車体フレーム(2)に固定されるアンダーカバー(12)が、車体を下方から覆い、その後部(12r)を前記触媒装置(44)に向けて延出して設けられ、
前記クランクケース(22)の下部に少なくとも後部(15r)を装着されて前方に延びる板部材(15)が、前記触媒装置(44)を下方から覆うように配設され、
前記アンダーカバー(12)の後端縁(12re)と前記板部材(15)の前端縁(15f)との間に、前記触媒装置(44)へ走行風を導く導風口(17)が形成され、
前記内燃機関(21)が前記車体フレーム(2)に対して揺動した際に、前記導風口(17)の開口面積が増大することを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記アンダーカバー(12)の下面には、車幅方向左右にそれぞれ下方に突出した左右一対のガイド突条部(13L,13R)が、互いの間に前記導風口(17)に走行風を導く導風路(14)を構成して設けられることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
左右一対の前記ガイド突条部(13L,13R)は、互いの車幅方向間隔が前方に行くに従い拡大することを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒装置を備えた自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より気候変動の緩和または影響軽減を目的とした取り組みが継続され、この実現に向けて、有害物質の排出量低減に関する研究開発が行われている。
自動二輪車に搭載された内燃機関においては、排気系に触媒装置を介装して、排ガス中に含まれるNOxやCO、HC等の有害物質を除去することが行われている。
【0003】
触媒装置は常温程度では還元能力が低いので、排気熱により触媒装置を加熱して、触媒を活性化して浄化能力を高めるが、触媒が過熱すると浄化能力が劣るとともに損耗してしまう。
そのため、走行風を利用して触媒装置を冷却することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-60256号公報
【0005】
特許文献1に開示された自動二輪車は、クランクケースにシリンダとシリンダヘッドを順次重ねて、シリンダ軸線を略水平に前傾した内燃機関が、車体フレームにリンク部材を介して揺動可能に支持されている。
シリンダヘッドから延出した排気管の途中に介装された触媒装置は、シリンダの下方でクランクケースの前方に、車幅方向を長手方向にして配置されている。
【0006】
車体を下方から覆うアンダーカバーが、触媒装置の前方に、車体フレームに取り付けられて設けられている。
アンダーカバーは、下面後端が触媒装置に向けて指向している。
したがって、アンダーカバーの下面は走行風を触媒装置に導くことができ、走行風を利用して触媒装置が冷却されることで、触媒装置内に装填された触媒を冷却することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された触媒装置は、シリンダの下方でクランクケースの前方に取り付けられており。触媒装置の前方にアンダーカバーがあるので、触媒装置の下方は常に開放されている。
したがって、暖機運転時には、排気熱により触媒装置を加熱しても、触媒装置は下方への放熱があるために、特に冷間時には触媒の活性化が遅れ、排気の浄化がすぐには実行されない。
【0008】
また、触媒装置の下方は常に開放されているので、アンダーカバーの下面が走行風を触媒装置に導くとしても、アンダーカバーの下面に沿った走行風が触媒装置に導かれて触媒装置を冷却するが、高負荷運転時には触媒温度の過度の上昇を抑えるべく触媒装置がより冷却されることが望まれる。
【0009】
したがって、有害物質の排出量低減においては、触媒の早期活性化とともに、触媒温度の過度の上昇を抑えることが課題である。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、暖機運転時には速やかに触媒を活性化でき、高負荷運転時には触媒温度を過度に高くすることを抑えることができ、有害物質の排出量を低減することができる自動二輪車を供する点にある。
そして、延いては、気候変動の緩和または影響軽減に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、
クランクケースにシリンダとシリンダヘッドを重ねて一体に締結した内燃機関が、車体フレームにリンク部材を介して揺動可能に支持され、
前記シリンダヘッドから延出する排気管の途中に介装された触媒装置が、前記クランクケースの前方に配設される自動二輪車において、
車体フレームに固定されるアンダーカバーが、車体を下方から覆い、その後部を前記触媒装置(44)に向けて延出して設けられ、
前記クランクケースの下部に少なくとも後部(15r)を装着されて前方に延びる板部材が、前記触媒装置を下方から覆うように配設され、
前記アンダーカバーの後端縁と前記板部材の前端縁との間に、前記触媒装置へ走行風を導く導風口が形成され、
前記内燃機関が前記車体フレームに対して揺動した際に、前記導風口の開口面積が増大することを特徴とする自動二輪車。
【0012】
この構成によれば、内燃機関が車体フレームに対して揺動した際に、内燃機関とともに揺動する板部材の前端縁がアンダーカバーの後端縁から下方に離れることで、アンダーカバーの後端縁と板部材の前端縁との間に、触媒装置へ走行風を導く導風口が形成される。
また、内燃機関が車体フレームに対して揺動していない場合は、導風口が形成されないので、アンダーカバーの後方を板部材が蓋をするようにして、触媒装置の下方を覆う状態となる。
【0013】
したがって、暖機運転時には、触媒装置は下方を板部材で覆われて、下方への放熱は少なく、かつ走行するまでは。走行風はないので、排気熱による触媒装置の加熱が効率よく行え、触媒の活性化を促進することができ、排ガスに含まれる有害物質の排出を抑えることができる。
走行時には、走行風が導風口に浸入して触媒装置に導かれて触媒装置を冷却することができ、触媒装置の浄化能力を維持することができる。
【0014】
そして、走行における加速などの内燃機関の高負荷運転時には、車体フレームに大きな負荷が加わり、内燃機関が車体フレームに対して大きく揺動し、ともに板部材が揺動して導風口を大きく開口するので、大量の走行風を触媒装置に導いて触媒装置をより一層冷却できる。
そのため、高負荷運転時に触媒温度の過度の上昇を抑えることができ、排気浄化能力の低下を抑制することができ、排ガスに含まれる有害物質を低減させることができる。
【0015】
本発明の好適な実施形態では、
前記アンダーカバーの下面には、車幅方向左右にそれぞれ下方に突出した左右一対のガイド突条部が、互いの間に前記導風口に走行風を導く導風路を構成して設けられる。
【0016】
この構成によれば、アンダーカバーの後部には、車幅方向左右にそれぞれ下方に突出した左右一対のガイド突条部が設けられ、左右一対のガイド突条部は互いの間に前記導風口に走行風を導く導風路を構成するので、アンダーカバーの下面に沿った走行風を左右一対のガイド突条部の間の導風路により円滑に導風口に案内することができ、触媒装置を効率よく冷却することができる。
【0017】
本発明の好適な実施形態では、
左右一対の前記ガイド突条部は、互いの車幅方向の間隔が前方に行くに従い拡大する。
【0018】
この構成によれば、左右一対のガイド突条部は、互いの車幅方向間隔が前方に行くに従い拡大するので、走行風をできるだけ多く導風路に取り込んで導風口に案内して触媒装置に導くことができ、大きな冷却効果が期待できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、暖機運転時には、触媒装置は下方を板部材で覆われて、下方への放熱は少なく、かつ走行するまでは。走行風はないので、排気熱による触媒装置の加熱が効率よく行え、触媒の活性化を促進することができ、排ガスに含まれる有害物質の排出を抑えることができる。
また、高負荷運転時には、車体フレームに大きな負荷が加わり、内燃機関が車体フレームに対して大きく揺動し、ともに板部材が揺動して導風口を大きく開口するので、大量の走行風を触媒装置に導いて触媒装置をより一層冷却できるため、高負荷運転時に触媒温度の過度の上昇を抑えることができ、排気浄化能力の低下を抑制することができ、排ガスに含まれる有害物質を低減させることができる。
そして、延いては、気候変動の緩和または影響軽減に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図2】同自動二輪車の中央要部の左後側底面斜視図である。
図3】同自動二輪車の中央要部の下面図である。
図4】内燃機関が車体フレームに対して揺動していない状態の同自動二輪車の中央要部の左側面断面図である。
図5】内燃機関が車体フレームに対して揺動した状態の同自動二輪車の中央要部の左側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態について図1ないし図5に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態に係る鞍乗型車両である自動二輪車1の全体側面図である。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲において、前後左右上下の向きは、本実施の形態に係る自動二輪車1の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を,LHは左方を,RHは右方を、UPは上方を示すものとする。
【0022】
本実施形態において自動二輪車1は、具体的にはスクータ型自動二輪車である。
本自動二輪車1においては、車体前部1Aと車体後部1Bとが、低い足載部(フロア部)1Cを介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレーム2は、概ねダウンフレーム4とメインフレーム5とからなる。
すなわち車体前部1Aのヘッドパイプ3からダウンフレーム4が下方へ延出し、ダウンフレーム4の下端から後方へ略水平に延びる左右一対のメインフレーム5のロアフレーム部5aが接続する。ロアフレーム部5aの後端から斜め後上方に延びるメインフレーム5は左右一対の傾斜部5bを形成し、傾斜部5bの上部がさらに屈曲して後方に略水平に延びた左右一対の水平部5cを形成している。
【0023】
メインフレーム5の傾斜部5bと水平部5cには図示しない収納ボックスが支持され、その上方は乗員シート6が覆って配置されている。
一方、車体前部1Aにおいては、ヘッドパイプ3に軸支されて上方にハンドル7が設けられ、下方にフロントフォーク8が延びてその下端に前輪9が軸支されている。
メインフレーム5の傾斜部5bにフレーム側ブラケット5bbが後方に向けて突設され、フレーム側ブラケット5bbにリンク部材18を介してパワーユニット側ブラケット20bが取り付き、スイング式パワーユニット(以下、単に「パワーユニット」という。)20が上下揺動可能に連結支持される。
すなわち、本実施形態の自動二輪車1は、パワーユニット20の上部リンク支持構造を採用している。
【0024】
車体前部1Aでは、ヘッドパイプ3およびダウンフレーム4が、フロントカバー10aとレッグシールド10bにより前後から覆われる。
足載部(フロア部)1Cは、車体フレーム2のメインフレーム5の左右一対のロアフレーム部5aに設けられ、ロアフレーム部5aの上方がフロアカバー10cにより覆われるとともに、その左右がそれぞれ前後方向にフロアサイドカバー10dで覆われる。
【0025】
車体後部1Bでは、乗員シート6の後部下方に燃料タンク28がメインフレーム22の水平部22cに取付けられており、メインフレーム22の傾斜部22bと水平部22cはボデイカバー10eにより左右および後方が覆われる。
また、前輪14の上方にはフロントフェンダ11が設けられる。
【0026】
そして、本実施形態の自動二輪車1は、メインフレーム5のロアフレーム部5aに下方から取り付けられたアンダーカバー12によって足載部(フロア部)1Cの下方が覆われている。
各カバー10a~10eは適宜な材料で形成される。
アンダーカバー12は、好ましくは樹脂材料で形成されるが、それに限定されない。
【0027】
パワーユニット20には、内燃機関21が設けられるとともに、内燃機関21から後方にかけてベルト式無段変速機31aを内設した動力伝達部31が備えられ、動力伝達部31の後部に設けられた減速ギヤ機構32の出力軸である後車軸32aに後輪33が設けられている。
動力伝達部31の後部と、メインフレーム5の後部の水平部5cとの間に図示しないリヤクッションが介装されている。
【0028】
内燃機関21は、クランクケース22にクランク軸22aを車幅方向、すなわち左右方向に指向させて回転自在に支持し、クランクケース22から前方に、シリンダ23、シリンダヘッド24が順次重ねられてシリンダ軸線Cを略水平に近く大きく前傾して締結されており、シリンダヘッド24の上にはヘッドカバー25が被せられる。
図4に示されるように、クランクケース22の上部に設けられたパワーユニット側ブラケット20bに前記リンク部材18が接続されているので、内燃機関21は、パワーユニット20と一体に、車体フレーム2に対してリンク部材18を介して揺動する。
クランクケース22は左右割り構造で、左半体は後方に一体に延在して動力伝達部31を構成している。
【0029】
内燃機関21の断面を示す図4を参照して、シリンダ23のシリンダボア内を往復動するピストン40の頂面とシリンダヘッド43との間に燃焼室41が構成され、大きく前傾したシリンダヘッド24の燃焼室41から上方に吸気ポート41iが延び、下方に排気ポート41eが延びている。
H シリンダヘッド24には、吸気ポート41iが燃焼室41に開口する吸気弁口を開閉する吸気バルブ51および排気ポート41eが燃焼室41に開口する排気弁口を開閉する排気バルブ52を備え、内燃機関21の燃焼行程に対して、吸気バルブ51と排気バルブ52を所定のタイミングで駆動する動弁機構50が設けられている。
【0030】
内燃機関21の大きく前傾したシリンダヘッド24の上部の吸気ポート41iの入口から吸気管42が後方へ屈曲し延出している。
また、シリンダヘッド24の下部の排気ポート41eの出口に接続した排気管43の途中には、略円筒形状の触媒装置44が介装されており、その内部に排気ガス浄化用の、例えば三元触媒等の触媒44aが装填されている。
【0031】
図4(および図5)を参照して、触媒装置44は、大きく前傾したシリンダヘッド24の下方で、かつクランクケース22の前方に配置され、シリンダヘッド24に前側支持ステー48により支持されるとともに、クランクケース22に後側支持ステー49により支持される。
触媒装置44は、円筒状をなし、長手方向を車幅左右方向に向けて車幅方向中央寄り位置に配置されている。
【0032】
排気管43は、触媒装置44より上流の上流側排気管43aと触媒装置44より下流の下流側排気管43bとからなる。
図3を参照して、上流側排気管43aは、排気ポート41eの出口から下方に延出した後に左方に屈曲し、シリンダヘッド24の下方を左方から大きく湾曲して右方に向いたところで、触媒装置44の右端部に接続されている。
図1を参照して、下流側排気管43bは、触媒装置44の右端部から右方に延出した後に後方に屈曲し車両右側部を後方若干斜め下方に延びて、クランクケース22に取り付けられて後輪33の右側に配置されたマフラ45に接続されている。
【0033】
図2および図4を参照して、足載部(フロア部)1Cの下方を覆うアンダーカバー12は、概ね水平板状をなして左右のフロアサイドカバー10d,10dの内側に折り曲げられた下端縁に架設されており、前部から水平より僅かに下方に傾斜して後方に延びて、最下端12xで上方に屈曲して、最下端12xより後方の後部12rが触媒装置44に向けて延出している。
アンダーカバー12の後部12rは、触媒装置44に向けて斜め上方に延びており、その後端縁12reは触媒装置44の前方の幾らか手前に位置する。
【0034】
図2および図3を参照して、アンダーカバー12の下面には、車幅方向左右にそれぞれ下方に突出した前後に長尺の左右一対のガイド突条部13L,13Rが、互いの間に走行風を導く導風路14を構成して立設されている。
左右ガイド突条部13L,13Rの各後端13Le,13Reは、アンダーカバー12の後端縁12reに位置し、その左右ガイド突条部13L,13Rの各後端13Le,13Reの左右幅内に、左右方向に指向した前記触媒装置44が位置し、触媒装置44はガイド突条部13L,13Rの互いの間の導風路14に臨むことができる。
【0035】
図3に示されるように、左右ガイド突条部13L,13Rは、互いの左右車幅方向間隔が前方に行くに従い拡大するように形成されている。
また、図2に示されるように、左右ガイド突条部13L,13Rは、車両前後方向において前方から後方に至るにつれて立設高さが高くなり、後端13Le,13Reの手前で最高高さとなって、その後方は高さを急減して後端13Le,13Reに至る。
【0036】
したがって、自動二輪車1の走行時に、車体下部のアンダーカバー12の下面に沿った走行風は、互いの車幅方向間隔が前方に行くに従い拡大する左右一対のガイド突条部13L,13Rにより、走行風をできるだけ大量に導風路14に取り込んで、触媒装置44に導くことができる。
なお、左右ガイド突条部13L,13Rの間に前後方向に長尺のガイド突条部を複数設けてもよく、走行風に流れを円滑にすることができる。
【0037】
本自動二輪車1では、クランクケース22の下部に後部15rを固着されて前方に延びるプレート部材15が、触媒装置44を下方から覆うように配設されている。
図3および図4を参照して、プレート部材15は、矩形の板部材であり、上面の後部15rに左右一対の前後に長尺の取付けリブ15b,15bが立設されている。
他方、クランクケース22の下面には、下方に矩形に膨出した膨出部22bが形成されている。
プレート部材15は、樹脂材料で形成されるが、それに限定されない。
【0038】
クランクケース22の下面の膨出部22bの左右側壁の外側面に、プレート部材15の上面の左右取付けリブ15b,15bを嵌合し、ボルト16により締結することで、クランクケース22の下面の膨出部22bにプレート部材15の後部15rを固着する。
クランクケース22の下面に後部15rを固着されたプレート部材15は、図4に示されるように、前方に延びて、シリンダ23の下方でクランクケース22の前方に位置した触媒装置44の下方を覆う。
【0039】
なお、クランクケース22の下部へのプレート部材15の固着は、本実施形態の態様に限定されるものではなく、プレート部材がクランクケースの下部に少なくとも後部を装着されて前方に延びるように装着されるものであれば、別の態様で適宜なされてよい。
【0040】
クランクケース22に固着されたプレート部材15は、車体フレーム2に対してリンク部材18を介して揺動する内燃機関21と一体に揺動する。
車体フレーム2に負荷が加わらないときは、図4に示されるように、プレート部材15の前端縁15fは、アンダーカバー12の後端縁12reに近接する。
車体フレーム2に負荷が加わり、内燃機関21が車体フレーム2に対して揺動すると、内燃機関21と一体にプレート部材15が下方に揺動して、図5に示されるように、プレート部材15の前端縁15fがアンダーカバー12の後端縁12reから下方に離れることで、アンダーカバー12の後端縁12reとプレート部材15の前端縁15fとの間に、触媒装置44へ走行風を導く導風口17が形成される。
【0041】
車体フレーム2に対して内燃機関21とプレート部材15および触媒装置44が一体に揺動するので、図5に示されるように、触媒装置44はアンダーカバー12の後端縁12reとプレート部材15の前端縁15fとの間に形成された導風口17に臨む場所に位置する。
図5を参照して、走行時には、走行風はアンダーカバー12の下面に沿って後方に流れて、左右のガイド突条部13L,13Rに案内されて導風口17に浸入して触媒装置44に効果的に導かれて触媒装置44を冷却することができる。
【0042】
以上、詳細に説明した本発明に係る自動二輪車1の一実施の形態では、以下に記す効果を奏する。
図4に示されるように、自動二輪車1に乗車しておらず、車体フレーム2に荷重等の負荷が加わらないときは、プレート部材15の前端縁15fがアンダーカバー12の後端縁12reに近接しているので、アンダーカバー12の後方をプレート部材15が蓋をするようにして、触媒装置44の下方を覆っている。
【0043】
乗員が乗車して、車体フレーム2に荷重が加わると、内燃機関21が車体フレーム2に対して揺動し、内燃機関21とともに揺動するプレート部材15の前端縁15fがアンダーカバー12の後端縁12reから下方に離れることで、アンダーカバー12の後端縁12reとプレート部材15の前端縁15fとの間に、触媒装置44へ走行風を導く導風口17が形成される。
図5は、走行時に車体フレームに高負荷が加わるとき、車体フレーム2に対して内燃機関21が大きく揺動して導風口17が大きく開口した状態を示しているが、乗員が単に乗車しただけであると、図5に示す導風口17の開口はより小さい。
【0044】
したがって、暖機運転時には、乗車により触媒装置44へ走行風を導く導風口17が形成されるが、導風口17は小さく触媒装置44は下方をプレート部材15で覆われて、下方への放熱は少なく、かつ走行するまでは。走行風はないので、排気熱による触媒装置44の加熱が効率よく行え、特に冷間時にも、触媒の活性化を促進することができ、排ガスに含まれる有害物質の排出を抑えることができる。
また、排気熱による触媒装置44の加熱が効率よく行えるので、触媒装置44より上流の上流側排気管43aを短縮しなくてもよく、触媒装置44を最適位置に配置することが容易にできる。
【0045】
そして、走行時には、走行によって車体フレーム2に大きな負荷が加わり、図5に示されるように、内燃機関21が車体フレーム2に対して大きく揺動し、ともにプレート部材15が下方に揺動して導風口17を大きく開口するので、大量の走行風を採りこみ、触媒装置44に導いて触媒装置44をより一層冷却できる。
【0046】
走行における加速などの内燃機関の高負荷運転時には、プレート部材15がさらに下方に揺動して導風口17をより大きく開口するので、より大量の走行風を採りこみ、触媒装置44に導いて触媒装置44をさらに一層冷却することができる。
そのため、高負荷運転時に触媒温度の過度の上昇を抑えることができ、排気浄化能力の低下を抑制することができ、排ガスに含まれる有害物質を低減させることができる。
また、触媒装置44が内燃機関21に近い位置にあっても、触媒温度の過度の上昇を抑えて触媒装置44の破損を防ぐことができる。
【0047】
本実施形態では、図2に示されるように、アンダーカバー12の下面には、車幅方向左右にそれぞれ下方に突出した前後に長尺の左右一対のガイド突条部13L,13Rが設けられ、左右一対のガイド突条部13L,13Rは互いの間に導風口17に走行風を導く導風路14を構成するので、アンダーカバー12の下面に沿った走行風を左右一対のガイド突条部13L,13Rの間の導風路14により円滑に導風口17に案内することができ、触媒装置44を効率よく冷却することができる。
【0048】
また、図2に示されるように、左右一対のガイド突条部13L,13Rは、互いの車幅方向間隔が前方に行くに従い拡大するので、走行風をできるだけ大量に導風路14に取り込んで導風口17に案内して触媒装置44に導くことができ、大きな冷却効果が期待できる。
【0049】
以上、本発明に係る一実施の形態に係る自動二輪車について説明したが、本発明の態様は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むものである。
【符号の説明】
【0050】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、3…ヘッドパイプ、4…ダウンフレーム、5…メインフレーム、6…乗員シート、7…ハンドル、8…フロントフォーク、9…前輪、
12…アンダーカバー、12re…後端縁、13L,13R…ガイド突条部、14…導風路、15…プレート部材、15f…前端縁、15r…後部、16…ボルト、17…導風口、18…リンク部材、
20…パワーユニット、21…内燃機関、22…クランクケース、23…シリンダ、24…シリンダヘッド、25…ヘッドカバー、28…燃料タンク、31…動力伝達部、31a…ベルト式無段変速機、32…減速ギヤ機構、33…後輪、40…ピストン、41…燃焼室、42…吸気管、43…排気管、44…触媒装置、45…マフラ、50…動弁機構、51…吸気バルブ、52…排気バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5