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特許7745230バイオマス固化体およびバイオマス固化体の製造方法
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  • 特許-バイオマス固化体およびバイオマス固化体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-18
(45)【発行日】2025-09-29
(54)【発明の名称】バイオマス固化体およびバイオマス固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/00 20060101AFI20250919BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20250919BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20250919BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20250919BHJP
   C04B 38/08 20060101ALI20250919BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C04B28/00
C04B16/02 Z
C04B22/10
C04B24/06 Z
C04B38/08 C
C12N1/00 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023146606
(22)【出願日】2023-09-11
(65)【公開番号】P2025039985
(43)【公開日】2025-03-24
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】517406087
【氏名又は名称】株式会社Sunflowers
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】木村 直美
(72)【発明者】
【氏名】車田 研一
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-156023(JP,A)
【文献】特開昭63-091072(JP,A)
【文献】特開2010-162494(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101880147(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0368807(US,A1)
【文献】特開2019-213307(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113943125(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109678617(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36、38/00-38/10
C12N 1/00
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藁と、藁に含まれる微生物と、乳酸カルシウムと、炭酸カルシウムとからなり、多孔質体であり、藁の割合は、40質量%以上60質量%以下であることを特徴とするバイオマス固化体。
【請求項2】
前記微生物は、プリスティア アリアバッタイ(Priestia aryabhattai)、および、プリスティア メガテリウム(Priestia megaterium)を含むことを特徴とする請求項1記載のバイオマス固化体。
【請求項3】
藁と、藁に含まれる微生物と、乳酸カルシウムと、水とからなる混合物を混合し、乾燥して固化する固化工程を含み、前記混合物における藁の割合は、13質量%以上20質量%以下であることを特徴とするバイオマス固化体の製造方法。
【請求項4】
藁に含まれる微生物の機能により炭酸カルシウムを析出させて固化したことを特徴とする請求項記載のバイオマス固化体の製造方法。
【請求項5】
前記微生物は、プリスティア アリアバッタイ(Priestia aryabhattai)、および、プリスティア メガテリウム(Priestia megaterium)を含むことを特徴とする請求項記載のバイオマス固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築土木資材等に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末状のカルシウム化合物を固体化する方法としては、従来から、例えば、炭酸カルシウム粉末に水を加えて所定条件で加温・加圧することにより炭酸カルシウムを固体化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、加温・加圧が必要であるという問題があった。近年では、省エネルギーが求められており、新しい方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-290949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、藁に含まれる微生物を用いてカルシウム化合物を固体化したバイオマス固化体およびバイオマス固化体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のバイオマス固化体は、藁と、乳酸カルシウムと、炭酸カルシウムとを含むものである。
【0006】
本発明のバイオマス固化体の製造方法は、藁と、乳酸カルシウムと、水とを含む混合物を混合し、乾燥して固化する固化工程を含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバイオマス固化体によれば、藁と、乳酸カルシウムと、炭酸カルシウムとを含んでいるので、藁に含まれる微生物の機能により、容易にカルシウム化合物を固体化することができ、軽量で強度が高い多孔質体を容易に得ることができる。また、藁に含まれる微生物を生きたまま保持することができるので、吸湿または水を添加することにより、微生物が休眠から回復し、乳酸カルシウムを代謝することにより二酸化炭素(CO)が生成され、周辺のカルシウムイオンと結合して炭酸カルシウムが生成し、強度を更に向上させることができると共に、ひび割れや亀裂等の箇所を自発的に修復することができる。
【0008】
本発明のバイオマス固化体の製造方法によれば、藁と、乳酸カルシウムと、水とを含む混合物を混合し、乾燥することにより、藁に含まれる微生物の機能により、容易に本発明のバイオマス固化体を得ることができる。また、任意の形状に容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例により得られたバイオマス固化体の構造を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本発明の一実施の形態に係るバイオマス固化体は、藁と、乳酸カルシウムと、炭酸カルシウムとを含んでおり、更に、微生物であるプリスティア アリアバッタイ(Priestia aryabhattai)、および、プリスティア メガテリウム(Priestia megaterium)を含んでいることが好ましい。これらの微生物は藁に含まれているものであり、このバイオマス固化体は、藁に含まれるこれらの微生物の機能により炭酸カルシウムが析出して固化されたものと考えられる。なお、プリスティア アリアバッタイ(Priestia aryabhattai)は、ライプニッツ研究所DSMZ-ドイツの微生物および細胞培養コレクション(The Leibniz-Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)が公開するhttps://www.dsmz.de/collection/catalogue/details/culture/DSM-3228にコードB8W22として記載され、プリスティア メガテリウム(Priestia megaterium)は、ライプニッツ研究所DSMZ-ドイツの微生物および細胞培養コレクション(The Leibniz-Institute DSMZ-German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)が公開するhttps://www.dsmz.de/collection/catalogue/details/culture/DSM-32にコードDSM32として記載されており、出願前に自由もしくは有価で分譲され得るものであった。
【0012】
藁は微生物を生きたまま保持する機能を有している。また、藁の表面が微生物の増殖に有利に働くものと考えられる。微生物は水がない状態では休眠して生きたまま藁に保持され、水が加えられると、休眠から回復し増殖を再開する。乳酸カルシウムは微生物の栄養となるものである。これにより、このバイオマス固化体では、吸湿または水の添加により、微生物が休眠から回復し、乳酸カルシウムを代謝することにより二酸化炭素(CO)が生成され、周辺のカルシウムイオンと結合して炭酸カルシウムを生成し、強度が向上していくと共に、ひび割れや亀裂等の箇所が自発的に修復されるという特性を有している。
【0013】
このバイオマス固化体は、例えば、スポンジ状の多孔質体であり、軽量で強度が高いという特性を有している。また、このバイオマス固化体は、吸湿又は水の添加と乾燥とを繰り返すことにより、より硬度が高くなるという特性も有している。藁の形状は特に限定されるものではなく、粉砕されていても、粉砕されていなくてもよい。バイオマス固化体における藁の割合は、例えば、40質量%以上60質量%以下であることが好ましく、45質量%以上55質量%以下であればより好ましい。この範囲内においてより高い強度を得ることができるからである。
【0014】
このバイオマス固化体の製造方法は、藁と、乳酸カルシウムと、水とを含む混合物を混合し、乾燥して固化する固化工程を含んでいる。混合物には、微生物であるプリスティア アリアバッタイ(Priestia aryabhattai)、および、プリスティア メガテリウム(Priestia megaterium)を含んでいることが好ましい。これらの微生物は、藁に含まれている。藁は粉砕しても、しなくてもよい。混合物における藁の割合は、例えば、13質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、15質量%以上19質量%以下とすればより好ましい。藁の割合がこれよりも少ないと強度の低下がみられ、藁の割合がこれにより多いと混合作業が大変になるからである。水は混合時におけるバインダーとしての役割を有すると共に、微生物の代謝が発生する環境として機能する。
【0015】
混合時および乾燥時は、加熱または冷却する必要はなく、常温、すなわち、熱したり冷やしたりしない自然な温度で行うことができる。また、混合した後、乾燥前に、所定の形状に成形するようにしてもよく、固化した後に、所定の形状に成形するようにしてもよい。例えば、板状に成形し、乾燥・固化した後、複数の板状の固化物を重ねて、少なくとも各固化物の間に水を加えることにより、所定の厚みを有するように成形してもよい。
【0016】
更に、固化工程の後、固化工程により得られた固化物を粉砕し、この粉砕物に水を加えて混合し、乾燥して再固化する再固化工程を含んでいてもよい。再固化することにより、より強度を高くすることができると共に、空隙率及び細孔径等を調整することもできる。また、再固化することにより、形状を任意に調整することもできる。
【0017】
このバイオマス固化体は、例えば、壁材、床材、屋根材等の建築土木資材として用いることができる。
【0018】
このように本実施の形態のバイオマス固化体によれば、藁と、乳酸カルシウムと、炭酸カルシウムとを含んでいるので、藁に含まれる微生物の機能により、容易にカルシウム化合物を固体化することができ、軽量で強度が高い多孔質体を容易に得ることができる。また、藁に含まれる微生物を生きたまま保持することができるので、吸湿または水を添加することにより、微生物が休眠から回復し、乳酸カルシウムを代謝することにより二酸化炭素が生成され、周辺のカルシウムイオンと結合して炭酸カルシウムが生成し、強度を更に向上させることができると共に、ひび割れや亀裂等の箇所を自発的に修復することができる。
【0019】
また、本実施の形態のバイオマス固化体の製造方法によれば、藁と、乳酸カルシウムと、水とを含む混合物を混合し、乾燥することにより、藁に含まれる微生物の機能により、容易に本発明のバイオマス固化体を得ることができる。また、任意の形状に容易に成形することができる。
【実施例
【0020】
粉砕した藁37.5gと、乳酸カルシウム35.0gと、水0.216リットル~0.115リットルとの混合物を混合し、板状に成形した後、常温において3日間放置して乾燥させたところ、固化し、板状の多孔質体の固化物であるバイオマス固化体が得られた。得られたバイオマス固化体における藁の割合は、45質量%から55質量%であった。図1に、得られたバイオマス固化体を示す。
【0021】
得られたバイオマス固化体に含まれる微生物を調べたところ、プリスティア アリアバッタイ(Priestia aryabhattai)、および、プリスティア メガテリウム(Priestia megaterium)を含んでいることが確認された。なお、微生物は、16SrDNA(16SrRNA遺伝子)の塩基配列解析の結果から検体を同定した。解析は株式会社テクノスルガ・ラボにおいて行った。
【0022】
また、得られた複数の固化物の表面に水をかけた後、各固化物を重ね、常温において3日間放置して乾燥させたところ、各固化物が結合することが確認された。更に、得られた固化物を粉砕し、水を加えて混合し、常温において3日間放置して乾燥させたところ、再固化することが確認された。
【0023】
なお、混合物における藁の割合を13質量%よりも少なくしてバイオマス固化体を製造したところ、藁の割合を13質量%以上とした場合に比べて、バイオマス固化体の強度が低下する傾向がみられた。
【0024】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、各構成要素について具体的に説明したが、各構成要素の具体的な構造や形状は異なっていてもよい。更に、上述した構成要素を全て備えていなくてもよく、他の構成要素を備えていてもよい。
図1