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特許7745232食品の食感向上システムおよび食品の食感向上方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-18
(45)【発行日】2025-09-29
(54)【発明の名称】食品の食感向上システムおよび食品の食感向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/30 20160101AFI20250919BHJP
【FI】
A23L5/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2025063005
(22)【出願日】2025-04-07
【審査請求日】2025-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2024179544
(32)【優先日】2024-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003838
【氏名又は名称】株式会社マキシム
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】東 展男
(72)【発明者】
【氏名】井口 英雄
(72)【発明者】
【氏名】平木 重光
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-263884(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのコイルと、
上記コイルに4.5kHz~8kHzの周波数領域で連続的に周波数の増減を反復する電流値が100mA~2Aの交流電流を流すための交流電流供給装置と、
を有し、
食品の食感の向上を当該食品の圧縮による破断強度測定を行うクリープ試験により測定される荷重および歪率の増加または当該食品の引っ張りによる破断強度測定を行うクリープ試験により測定される荷重の増加と定義したとき、上記コイルに上記交流電流を流しながら上記コイルと食品(紅しょうが、ごぼう、えびせん、貝ひも、するめそうめん、干しぶどう、千切だいこんに限る)とを互いに接近させることにより上記食品の食感を向上させる食品の食感向上システム。
【請求項2】
上記コイルと上記食品とを互いに20cm以内の距離に接近させる請求項1記載の食品の食感向上システム。
【請求項3】
上記コイルと上記食品とを互いに接近させた状態で1秒以上保持する請求項1記載の食品の食感向上システム。
【請求項4】
上記コイルと上記食品が収納された容器とを互いに接近させる請求項1記載の食品の食感向上システム。
【請求項5】
上記コイルが外周面の少なくとも一箇所に巻回された管の内部に上記食品を通し、または挿入する請求項1記載の食品の食感向上システム。
【請求項6】
食品の食感の向上を当該食品の圧縮による破断強度測定を行うクリープ試験により測定される荷重および歪率の増加または当該食品の引っ張りによる破断強度測定を行うクリープ試験により測定される荷重の増加と定義したとき、少なくとも一つのコイルに4.5kHz~8kHzの周波数領域で連続的に周波数の増減を反復する電流値が100mA~2Aの交流電流を流しながら上記コイルと食品(紅しょうが、ごぼう、えびせん、貝ひも、するめそうめん、干しぶどう、千切だいこんに限る)とを互いに接近させることにより上記食品の食感を向上させる食品の食感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は食品の食感向上システムおよび食品の食感向上方法に関し、例えば、購入時に比べて硬さや歯ごたえなどがなくなって食感が低下した食品の食感を回復させるのに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
市場には多種多様な食品が提供されている。消費者は、市販されている食品を購入してから直ぐに食べ切ることもあれば、一部を残し、後で食べることもある。この場合、食品によっては、後で食べたときに、食品の安全性の点では心配ないものの、購入時に比べて硬さや歯ごたえなどがなくなって食感が悪くなっていると感じることは良く経験することである。例えば、密封された袋に乾燥剤とともに入れられた貝ひもを購入してから袋を開けて一部を食べ、その後、袋を密封するのを忘れて放置してしまってから食べると、購入時に比べて硬さや歯ごたえがなくなって食感が悪いと感じることがある。このような場合、食感が低下した残りの貝ひもを廃棄してしまうこともあり得る。しかし、仮に食感を回復させることができれば、廃棄しないで済むようになる。
【0003】
これまで、食品の食感を向上させる様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1~5)。特許文献1には、エタノールおよび塩化ナトリウムを野菜に吸収させることにより野菜の食感を改良する技術が提案されている。特許文献2には、塩分をパスタ類内部に良く浸透させることができるようにして、電子レンジによるレンジ加熱効率を向上させ、レンジ加熱中のパスタ類のα化を促進して、食感の向上を図る技術が提案されている。特許文献3には、動物性蛋白質含有食材を加熱調理する際に、当該食材表面に少なくとも熱を加えた状態において、食用酸を含有する加熱調理用肉質改良剤を当該食材表面に適用し、さらに加熱を続けて調理を行うことにより、調理品の味覚および食感の向上を図る技術が提案されている。特許文献4には、お好み焼き用生地に平均幅0.5~7mmのカットキャベツおよび20℃における粘度が2.5~80Pa・sである液状生地を含ませることにより、お好み焼きの食感の向上を図る技術が提案されている。特許文献5には、酵素キチナーゼを有効成分として含有するパン用品質改良剤を用いてパン生地を作ることにより、日持ち向上、食感改善などの品質の向上したパンを製造する技術が提案されている。
【0004】
なお、液体を流す管にソレノイド型のコイルを巻回し、このコイルにほぼ700~3000Hzの範囲の周波数領域で連続的に周波数の変化を反復する交流電流を流すことにより、管の内壁へのスケール生成防止や管の内壁に付着したスケールの除去を図るスケール生成および/またはスケール付着防止用液体処理装置が知られている(特許文献6)。また、水道管にソレノイド型のコイルを巻回し、このコイルに3.6~7.5kHzの範囲の周波数領域で連続的に周波数の変化を反復する交流電流を流すことにより水道管内壁へのスケール生成防止や水道管の内壁に付着したスケールの除去を図る水道水用水処理装置が知られており、既に実用化されている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2024-5798号公報
【文献】特開2021-193891号公報
【文献】特開2020-39319号公報
【文献】特開2020-18261号公報
【文献】特開2014-195440号公報
【文献】米国特許第5074998号明細書
【文献】実用新案登録第3224220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~5で提案された従来の食感向上技術では、経時変化などにより食品の硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなった場合に、その食感を回復させることは困難である。
【0007】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、経時変化などにより食品の硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなった場合に食感を簡単な手法で回復させることができ、ひいては食品の廃棄を防止することができる食品の食感向上システムおよび食品の食感向上方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題の解決を図る技術の開発を目的として長年に亘り鋭意検討を行った結果、特許文献7記載の水道水用水処理装置で使用されているコイルと同様なコイルに類似の交流電流を流しながら食品に接近させ、あるいはコイルを食品に接近させることにより、食品の硬さや歯ごたえなどを増加させることができ、食感を向上させることができるという新たな効果が得られることを見出し、さらにこの知見に基づいて検討を重ねてこの発明を案出するに至った。本発明者らの知る限り、このような効果が得られることはこれまで報告されていない。上記のような効果が得られる理由については現在解明中であるが、コイルに流れる電流により発生する特殊な変動電磁界の作用によるものと考えられる。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
少なくとも一つのコイルと、
上記コイルに100Hz~10kHzの周波数領域の少なくとも一部の周波数領域で連続的に周波数の増減を反復する交流電流を流すための交流電流供給装置と、
を有し、
上記コイルに上記交流電流を流しながら上記コイルと食品とを互いに接近させることにより上記食品の食感を向上させる食品の食感向上システムである。
【0010】
上記の少なくとも一部の周波数領域は、典型的には、4.5kHz~8kHzの周波数領域に含まれ、例えば、4.5kHz~8kHzの周波数領域である。交流電流の周波数の増減は、典型的には直線的に行うが、これに限定されるものではなく、非直線的に行ってもよい。交流電流は、典型的には、上記の少なくとも一部の周波数領域内で1秒間に複数回、周波数の増減を反復する。交流電流は、例えば、100Hzから10kHzまで周波数をスイープする。交流電流の波形は、特に限定されず、必要に応じて選択されるが、典型的には、方形波が用いられる。交流電流の電流値は必要に応じて選択されるが、一般的には1mA~3A、典型的には10mA~2A、より典型的には100mA~2Aである。コイルは、一般的には、管や棒などの支持体(一般的には非磁性体からなる)の外周面の少なくとも一箇所に巻回されるが、必ずしも支持体を用いないでもよい。コイルは、管の外周面の少なくとも一箇所に巻回されれば足りるが、複数箇所に巻回されてもよい。コイルの巻き数は管の口径(直径)などに応じて適宜選択されるが、コイルに交流電流を流すことにより発生する電磁界の強さがある程度大きい方がより優れた効果が得られる傾向があるため、コイルの巻き数は一般的には10以上20以下に選ばれる。
【0011】
コイルと食品とを互いに接近させる方法としては、コイルを固定し、これに食品を接近させる方法と、食品を固定し、これにコイルを接近させる方法とがあり、必要に応じて選択される。
【0012】
コイルと食品との間の距離は特に限定されないが、コイルに交流電流を流すことにより発生する変動電磁界の強さが大きい方が短時間で処理が済むため、一般的には20cm以内の距離、典型的には10cm以内の距離に接近させる。また、処理を行う食品を変動電磁界に十分に晒すため、一般的には、コイルと食品とを互いに接近させた状態で1秒以上、典型的には5秒以上保持する。
【0013】
食品が容器に収納されている場合は、コイルと食品が収納された容器とを互いに接近させる。あるいは、コイルが外周面の少なくとも一箇所に巻回された管の内部に食品を通し、または挿入するようにしてもよい。
【0014】
食品は、経時変化などにより硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなってしまうものである限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、代表的なものは、繊維質の食品(野菜、果物、海産物、干物など)である。野菜は、例えば、だいこん、ごぼう、キャベツ、レタス、なすなどである。果物は、例えば、りんご、なし、みかん、桃、バナナ、キウイなどである。海産物および干物は、例えば、ホタテなどの焼き貝ひも、するめ、さきいか、いかのくんせい、いかそうめんなどである。食品としては、しょうが(紅しょうがなど)、スナック菓子(ポテトチップス、えびせんべい、芋けんぴなど)、塩こんぶ、干しぶどう、ピーナッツなどの豆類、餅菓子(大福、草餅、柏餅など)、せんべい(えびせんべいなど)、半なまのめん類(半なまうどん、半なまそば、半なまラーメンなど)などである。
【0015】
また、この発明は、
少なくとも一つのコイルに100Hz~10kHzの周波数領域の少なくとも一部の周波数領域で連続的に周波数の増減を反復する交流電流を流しながら上記コイルと食品とを互いに接近させることにより上記食品の食感を向上させる食品の食感向上方法である。
【0016】
この食品の食感向上方法の発明においては、上記の食品の食感向上システムに関連して説明した事項が成立する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、コイルに100Hz~10kHzの周波数領域の少なくとも一部の周波数領域で連続的に周波数の増減を反復する交流電流を流しながらコイルと食品とを互いに接近させることにより、食品の硬さや歯ごたえなどを増加させることができ、それによって経時変化などにより食品の硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなった場合に食感を簡単な手法で回復させることができ、ひいては食品の廃棄を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムを示す斜視図である。
図1B】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムの筐体の上部の内部の構成を示す平面図である。
図1C】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムの筐体の内部の構成を示す側面図である。
図1D】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムの筐体の下部の内部の構成を示す側面図である。
図1E】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムの筐体の一つの側面を示す側面図である。
図2】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムをAC100Vのコンセントに接続するための電源ケーブルを示す斜視図である。
図3A】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムにおいて交流電流供給装置によりコイルに流す交流電流の波形の一例を示す略線図である。
図3B】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムにおいて交流電流供給装置によりコイルに流す交流電流の周波数スペクトルの一例を示す略線図である。
図3C】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムにおいて交流電流供給装置によりコイルに流す交流電流の周波数スペクトルの実測例を示す略線図である。
図4】この発明の第1の実施の形態による食品の食感向上システムの使用方法を説明するための斜視図である。
図5】この発明の第2の実施の形態による食品の食感向上システムを示す略線図である。
図6】この発明の第2の実施の形態による食品の食感向上システムの処理スティックを示す断面図である。
図7】この発明の第2の実施の形態による食品の食感向上システムの使用方法を説明するための斜視図である。
図8】クリープ試験に用いた簡易構成の食品の食感向上システムを示す略線図である。
図9図8に示す簡易構成の食品の食感向上システムのコイルが巻回された塩化ビニル管を示す図面代用写真である。
図10】実施例1においてクリープ試験を行った半生うどんを示す図面代用写真である。
図11図8に示す食品の食感向上システムを用いて図10に示す半生うどんの処理を行ったときの処理有り無しの半生うどんのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図12】実施例2においてクリープ試験を行った紅しょうがを示す図面代用写真である。
図13図8に示す食品の食感向上システムを用いて図12に示す紅しょうがの処理を行ったときの処理有り無しの紅しょうがのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図14】実施例3においてクリープ試験を行ったごぼうを示す図面代用写真である。
図15図8に示す食品の食感向上システムを用いて図14に示すごぼうの処理を行ったときの処理有り無しのごぼうのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図16】実施例4においてクリープ試験を行ったえびせんを示す図面代用写真である。
図17図8に示す食品の食感向上システムを用いて図16に示すえびせんの処理を行ったときの処理有り無しのえびせんのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図18】実施例5においてクリープ試験を行ったホタテの焼き貝ひもを示す図面代用写真である。
図19図8に示す食品の食感向上システムを用いて図18に示すホタテの焼き貝ひもの処理を行ったときの処理有り無しのホタテの焼き貝ひものクリープ試験の結果を示す略線図である。
図20】実施例6においてクリープ試験を行ったするめそうめんを示す図面代用写真である。
図21図8に示す食品の食感向上システムを用いて図20に示すするめそうめんの処理を行ったときの処理有り無しのするめそうめんのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図22】実施例7~11のクリープ試験に用いた簡易構成の食品の食感向上システムの交流電流供給装置を示す図面代用写真である。
図23】実施例7においてクリープ試験を行ったピーナッツを示す図面代用写真である。
図24図22に示す交流電流供給装置を用いた簡易構成の食品の食感向上システムを用いて図23に示すピーナッツの処理を行ったときの処理有り無しのピーナッツのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図25図24に示すクリープ試験の結果を示す曲線のピーク付近までの部分を時間軸方向に拡大して示す略線図である。
図26】実施例8においてクリープ試験を行った芋けんぴを示す図面代用写真である。
図27図22に示す交流電流供給装置を用いた簡易構成の食品の食感向上システムを用いて図26に示す芋けんぴの処理を行ったときの処理有り無しの芋けんぴのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図28図27に示すクリープ試験の結果を示す曲線のピーク付近までの部分を時間軸方向に拡大して示す略線図である。
図29】実施例9においてクリープ試験を行った塩こんぶを示す図面代用写真である。
図30図22に示す交流電流供給装置を用いた簡易構成の食品の食感向上システムを用いて図29に示す塩こんぶの処理を行ったときの処理有り無しの塩こんぶのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図31図30に示すクリープ試験の結果を示す曲線のピーク付近までの部分を時間軸方向に拡大して示す略線図である。
図32】実施例10においてクリープ試験を行った干しぶどうを示す図面代用写真である。
図33図22に示す交流電流供給装置を用いた簡易構成の食品の食感向上システムを用いて図32に示す干しぶどうの処理を行ったときの処理有り無しの干しぶどうのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図34図33に示すクリープ試験の結果を示す曲線のピーク付近までの部分を時間軸方向に拡大して示す略線図である。
図35】実施例11においてクリープ試験を行った千切だいこんを示す図面代用写真である。
図36図22に示す交流電流供給装置を用いた簡易構成の食品の食感向上システムを用いて図35に示す千切だいこんの処理を行ったときの処理有り無しの千切だいこんのクリープ試験の結果を示す略線図である。
図37図36に示すクリープ試験の結果を示す曲線のピーク付近までの部分を時間軸方向に拡大して示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0020】
〈第1の実施の形態〉
[食品の食感向上システム]
図1A図1Bおよび図1Cは第1の実施の形態による食品の食感向上システムを示し、図1Aは斜視図、図1Bは筐体の上面を省略して筐体の上部の内部の構成を示す平面図、図1Cは筐体の一つの側面を省略して内部の構成を示す側面図である。図1A図1Bおよび図1Cに示すように、この食品の食感向上システムにおいては、直方体状の筐体10の内部の空間が磁気シールド板11により上下の空間に分けられている。磁気シールド板11の上方の空間には、筐体10の一つの側面に平行に設けられた管20が、この管20の両端を支持する支持部材21、22を介して磁気シールド板11上に設置されている。管20の両端部を除く外周面にソレノイド型のコイル30が巻回されている。磁気シールド板11の下方の空間には、コイル30に交流電流を流すための交流電流供給装置40が筐体10の底面に設置されている。図1Dに筐体10の磁気シールド板11の下方の空間を示す。磁気シールド板11の材料は従来公知の材料を用いることができ、例えば、電磁軟鉄、珪素鋼、パーマロイ、アモルファス磁性体などである。
【0021】
管20の外周面に巻回されたコイル30は、磁気シールド板11に設けられた穴11a、11bを通してケーブル41により交流電流供給装置40の出力端子と接続されている。コイル30はケーブル41をらせん状に巻くことにより形成されている。交流電流供給装置40の電源ケーブル42は筐体10の側面に取り付けられたロッカースイッチ50を介して同じく筐体10の側面に取り付けられた電源コネクター60に接続されている。図1Eにロッカースイッチ50および電源コネクター60が取り付けられた筐体10の側面を示す。ロッカースイッチ50および電源コネクター60は筐体10の他の側面に取付けてもよい。電源コネクター60には、図2に示すように、AC100Vを供給するための電源ケーブル43の一端のプラグ44を接続することができるようになっている。食品の食感向上システムの使用時には電源ケーブル43の他端のプラグ45をAC100Vのコンセントに差し込む。
【0022】
コイル30に流す交流電流は、100Hzから10kHzまで周波数をスイープし、波形は方形波である。この場合、4.5kHz~8kHzの周波数領域の少なくとも一部の周波数領域(f1 ~f2 の周波数領域とする)で1秒間に複数回、典型的には2~5回(例えば3.5回)直線的に周波数を増減し、これを反復する。f1 ~f2 の周波数領域は、典型的には4.5kHz~8kHzである。図3Aにこの交流電流の波形の一例を模式的に示す。図3Aに示すように、f1 ~f2 の周波数領域では、100Hzからf1 までの周波数領域およびf2 から10kHzまでの周波数領域に比べて最大電流値を高くしている。f1 ~f2 の周波数領域の最大電流値は、100Hzからf1 までの周波数領域およびf2 から10kHzまでの周波数領域の最大電流値に比べて例えば2~3倍大きくするが、これに限定されるものではない。こうしてコイル30に交流電流を流したときの周波数スペクトルの一例を図3Bに模式的に示す。図3Bに示すように、コイル30に流れる交流電流は、f1 ~f2 の周波数領域で最大電流値がほぼ同一である。図3Cに実測の周波数スペクトルの一例を示す。f1 ~f2 の周波数領域は4.5kHz~8kHzである。この周波数スペクトルの縦軸は、コイル30が巻回された管20の側面に音圧測定用のピックアップを取り付け、コイル30に交流電流が流れることにより発生する電磁騒音を測定した時の音圧を示し、交流電流の最大電流値に対応するものである。
【0023】
コイル30の上方の部分の筐体10の上面には処理部12が設けられている。処理部12の平面形状は例えば正方形であるが、これに限定されるものではなく、必要に応じて選択される。コイル30に上記の交流電流を流すことにより発生する変動電磁界は、主として処理部12およびその上方に存在する。食感を向上させる食品は処理部12の上に置いたり、処理部12の上方に保持したりする。食品はそのまま処理部12の上に置いても良いが、ラップや紙皿などを介して置いてもよいし、容器に食品を入れたものを処理部12の上に置いてもよい。
【0024】
処理部12は非磁性体、例えばプラスチックやアルミニウムなどにより構成される。処理部12以外の部分の筐体10は非磁性体により構成されてもよいし、磁性体により構成されてもよい。
【0025】
[食品の食感向上システムの使用方法]
この食品の食感向上システムの使用方法について説明する。筐体10の電源コネクター60に図2に示す電源ケーブル43の一端のプラグ44を接続し、電源ケーブル43の他端のプラグ45をAC100Vのコンセントに差し込み、ロッカースイッチ50をオンとする。そして、交流電流供給装置40によりコイル30に上記の交流電流を流しながら、図4に示すように、食感を向上させたい食品70を処理部12の上にそのまま載せたり、あるいはコップや皿などの容器に入れて載せたり、あるいは処理部12に近づけたりする。例えば、コイル30と食品70とを例えば10cm以内の距離まで互いに接近させ、一定時間、例えば1秒以上、典型的には10秒以上その状態を保持する。こうすることで、食品70の硬さや歯ごたえなどを増加させることができ、食感を向上させることができる。
【0026】
以上のように、この第1の実施の形態による食品の食感向上システムによれば、管20に巻回されたコイル30に交流電流供給装置40により所定の交流電流を流しながら、処理部12においてコイル30と食品70とを互いに接近させて変動電磁界で処理することにより、食品70の硬さや歯ごたえなどを増加させることができるため、経時変化などにより硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなった食品70でも食感を簡単に回復させることができる。このため、食感が悪くなった食品70を廃棄しないで済むようになる。さらに、この食品の食感向上システムは、管20に巻回されたコイル30、交流電流供給装置40などにより簡単に構成することができる。
【0027】
〈第2の実施の形態〉
[食品の食感向上システム]
図5は第2の実施の形態による食品の食感向上システムを示す。図5に示すように、この食品の食感向上システムは、交流電流供給装置40と使用者が手で握ることができる段付き円筒状のスティック80とを有する。交流電流供給装置40は第1の実施の形態で用いた交流電流供給装置40と同様である。交流電流供給装置40とスティック80とは電源ケーブル90により互いに接続されている。スティック80は前方の処理部81と後方の把持部82とを有する。把持部82の直径は処理部81の直径よりも小さくなっている。把持部82は使用者が手で握ることができる太さとなっている。
【0028】
スティック80の縦断面を図6に示す。図6に示すように、スティック80の処理部81の内部には、第1の実施の形態による食品の食感向上システムと同様に、管20の外周面に巻回されたソレノイド型のコイル30が設置されている。管20の両端部は処理部81の内壁に設けられた支持部材(図示せず)により支持されている。コイル30はケーブル41をらせん状に巻くことにより形成されている。ケーブル41の両端は把持部82の上部の側面に取り付けられたロッカースイッチ50を介して電源ケーブル90を構成する2本の線にそれぞれ接続されている。
【0029】
[食品の食感向上システムの使用方法]
この食品の食感向上システムの使用方法について説明する。交流電流供給装置40の電源コネクター60に図2に示す電源ケーブル43の一端のプラグ44を接続し、電源ケーブル43の他端のプラグ45をAC100Vのコンセントに差し込み、スティック80の把持部82の側面のロッカースイッチ50をオンとする。そして、交流電流供給装置40によりコイル30に交流電流を流しながら、図7に示すように、食感を向上させたい食品70に対してスティック80の処理部81の側面を近づける。例えば、処理部81と食品70とを例えば10cm以内の距離まで互いに接近させ、一定時間、例えば1秒以上、典型的には10秒以上その状態を保持し、コイル30に交流電流を流すことにより発生する変動電磁界により食品70を処理する。こうすることで、飲食物70の硬さや歯ごたえなどを増加させることができ、食感を向上させることができる。
【0030】
以上のように、この第2の実施の形態による食品の食感向上システムによれば、スティック80の処理部81に内蔵されたコイル30に交流電流供給装置40により所定の交流電流を流しながら、スティック80の把持部82を使用者が手で握って処理部81の側面を食品70に接近させることにより、食品70の硬さや歯ごたえなどを増加させることができ、経時変化などにより硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなった食品70でも食感を回復させることができる。このため、食感が悪くなった食品70を廃棄しないで済むようになる。また、この食品の食感向上システムは、管20に巻回されたコイル30を内蔵するスティック80と交流電流供給装置40とにより構成することができるため、簡単に構成することができる。
【0031】
実施例について説明する。
【0032】
以下の実施例1のクリープ試験は、宮崎県食品開発センターにおいて株式会社山電製のクリープメータ(型式RE2-33005C)を用いて行った。実施例2~6のクリープ試験は、地方独立行政法人山口県産業技術センターにおいて株式会社山電製のクリープメータ(型式RE2-33005B)を用いて行った。また、実施例1~4のクリープ試験(圧縮による破断強度測定)は次のようにして行った。まず、クリープメータのロードセルに圧縮用のくさび形プランジャーを取り付ける。次に、試料台に試料をセットする。次に、試料台を上に移動させてプランジャーの先端に試料を接触させ、試料が破断するまで試料を押し付ける。実施例5、6のクリープ試験(引っ張りによる破断強度測定)は次のようにして行った。まず、クリープメータのロードセルに取り付けられた治具と試料台に取り付けられた治具とに試料の両端を固定する。次に、試料台を下に移動させて試料を引っ張り、試料が破断するまで引っ張り続ける。
【0033】
図8は、実施例1~6において使用した簡易構成の食品の食感向上システムを示す。図8に示すように、この簡易構成の食品の食感向上システムにおいては、外径32mm、内径25mm、長さ230mmの塩化ビニル製の管20の中央部の外周面にコイル30を約5.5cmの長さにわたって密に巻回し、ケーブル41により交流電流供給装置40を接続した。塩化ビニル製の管20の外周面に巻回されたコイル30を撮影した写真を図9に示す。ただし、図9においてはコイル30の大半はテーピングされていてコイル30の凹凸しか見えない。交流電流供給装置40としては、市販されている株式会社マキシム製ドールマンショック型番DK-IIの交流電流供給装置を用いた。コイル30の巻き数は15回、単位長さ当たりの巻き数は概ね3回/cm、コイル30に流す交流電流の波形は図3Aに示すものであり、f1 ~f2 の周波数領域は4.5kHz~8kHzである。この交流電流の周波数スペクトルは図3Cに示す通りである。f1 ~f2 の周波数領域における最大電流値は約400mAである。コイル30が巻回された管20をテーブルの上に置き、クリープ試験を行う食品を紙皿に載せ、この紙皿をコイル30が巻回された管20上に載せた状態でコイル30に交流電流供給装置40により交流電流を流して変動電磁界を発生させた。こうして紙皿の上の食品を変動電磁界により処理した。処理時間は30秒とした。コイル30の近傍の電磁界を測定したところ、電界の強さは578V/m、磁界の強さは3.36μTであった。
【0034】
(実施例1)
実施例1では半生うどんのクリープ試験を行った。クリープ試験を行った半生うどんを図10に示す。半生うどんとしては、市販されている株式会社めん食製「ゆでうどん」を用いた。この半生うどんをカットしてほぼ同じ寸法の半生うどんを用意した。半生うどんの寸法は長さ約62.4mm前後、横幅約4.1mm前後、厚さ約2.2mm前後であった。
【0035】
図11に変動電磁界による処理(以下においては「DS処理」という。)の有り無しの半生うどんのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度55%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ10本の半生うどんを使って10回行い、図11はその10回のデータの平均のデータを示す。ここで、図11のAは荷重-時間曲線を示し、縦軸は荷重(N)、横軸は時間(秒)を示す。図11のBは歪率-時間曲線を示し、縦軸は歪率、横軸は時間(秒)を示す。図11AおよびBから分かるように、DS処理有りの半生うどんの方がDS処理無しの半生うどんに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。荷重は試料の硬さを表し、歪率は試料のもろさを表すから、DS処理有りの半生うどんの方がDS処理無しの半生うどんに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0036】
(実施例2)
実施例2では紅しょうがのクリープ試験を行った。クリープ試験を行った紅しょうがを図12に示す。紅しょうがとしては、市販されているセブン&アイ・ホールディングス製「紅しょうが」を用いた。クリープ試験を行った紅しょうがの寸法は長さ約45.5mm前後、横幅約1.6mm前後、厚さ約1.6mm前後であった。
【0037】
図13にDS処理有り無しの紅しょうがのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度45%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5本の紅しょうがを使って5回行い、図13はその5回のデータの平均のデータを示す。図13AおよびBから分かるように、DS処理有りの紅しょうがの方がDS処理無しの紅しょうがに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。従って、DS処理有りの紅しょうがの方がDS処理無しの紅しょうがに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0038】
(実施例3)
実施例3ではごぼうのクリープ試験を行った。クリープ試験を行ったごぼうを図14に示す。ごぼうとしては、図14の奥に映っている市販されているフジッコ株式会社製「きんぴらごぼう」から抜き取ったもの(図14の手前に映っている)を用いた。クリープ試験を行ったごぼうの寸法は長さ約38.8mm前後、横幅約1.2mm前後、厚さ約0.7mm前後であった。
【0039】
図15にDS処理有り無しのごぼうのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度20℃、湿度35%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5本のごぼうを使って5回行い、図15はその5回のデータの平均のデータを示す。図15AおよびBから分かるように、DS処理有りのごぼうの方がDS処理無しのごぼうに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。従って、DS処理有りのごぼうの方がDS処理無しのごぼうに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0040】
(実施例4)
実施例4ではえびせんのクリープ試験を行った。クリープ試験を行ったえびせんを図16に示す。えびせんとしては、市販されているカルビー株式会社製「かっぱえびせん カルシウム入り さくさく感UP」を用いた。クリープ試験を行ったえびせんの寸法は長さ約45.4mm前後、横幅約8.0mm前後、厚さ約7.6mm前後であった。
【0041】
図17にDS処理有り無しのえびせんのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度40%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ1本のえびせんを使って1回行った。図17AおよびBから分かるように、DS処理有りのえびせんの方がDS処理無しのえびせんに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。従って、DS処理有りのえびせんの方がDS処理無しのえびせんに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0042】
(実施例5)
実施例5では貝ひものクリープ試験を行った。クリープ試験を行った貝ひもを図18に示す。貝ひもとしては、市販されている山栄食品工業株式会社製「焼き貝ひも」(ホタテ貝のひも)を用いた。貝ひもは形状や大きさにばらつきがあるため、真っ直ぐに伸ばしたときにほぼ同じ形状および大きさのものを選んだ。クリープ試験を行った貝ひもの寸法は長さ約69.4mm前後、横幅約7.6mm前後、厚さ約0.2mm前後であった。
【0043】
図19にDS処理有り無しの貝ひものクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度45%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ3本のえびせんを使って3回行った。図19から分かるように、DS処理有りの貝ひもの方がDS処理無しの貝ひもに比べて荷重(引っ張り力)が大きくなっている。従って、DS処理有りの貝ひもの方がDS処理無しの貝ひもに比べて引っ張り強度が増加していることが分かる。
【0044】
(実施例6)
実施例6ではするめそうめんのクリープ試験を行った。クリープ試験を行ったするめそうめんを図20に示す。するめそうめんとしては、市販されているクリートケイ・エス・カンパニィーネイチャーズ製「するめそうめん」を用いた。クリープ試験を行ったするめそうめんの寸法は長さ約78.9mm前後、横幅約1.7mm前後、厚さ約0.4mm前後であった。
【0045】
図21にDS処理有り無しのするめそうめんのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度45%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ3本のするめそうめんを使って3回行った。図21から分かるように、DS処理有りのするめそうめんの方がDS処理無しのするめそうめんに比べて荷重(引っ張り力)が大きくなっている。従って、DS処理有りのするめそうめんの方がDS処理無しのするめそうめんに比べて引っ張り強度が増加していることが分かる。
【0046】
次に、実施例7~11について説明する。図22は実施例7~11において用いた簡易構成の食品の食感向上システムの交流電流供給装置40を示す。この交流電流供給装置40に塩化ビニル製の管20の外周面に巻回されたコイル30をケーブル41により接続した。管20およびその外周面に巻回されたコイル30は図9に示すものと同等のものである。交流電流供給装置40としては、市販されている株式会社マキシム製ドールマンショック型番MS-STを用いた。コイル30に流す交流電流の波形は図3Aに示すものであり、f1 ~f2 の周波数領域は4.5kHz~8kHzである。この交流電流の周波数スペクトルは図3Cに示す通りである。f1 ~f2 の周波数領域における最大電流値は1.58Aである。クリープ試験を行う食品を紙皿に載せ、この紙皿をコイル30が巻回された管20上に載せた状態でコイル30に交流電流供給装置40により交流電流を流して変動電磁界を発生させた。こうして紙皿の上の食品を変動電磁界により処理した。処理時間は30秒とした。コイル30の近傍の電磁界を測定したところ、電界の強さは1455V/m、磁界の強さは8.46μTであった。
【0047】
実施例7~11のクリープ試験は、地方独立行政法人山口県産業技術センターにおいて株式会社山電製のクリープメータ(型式RE2-33005B)を用いて行った。また、実施例7~9、11のクリープ試験(圧縮による破断強度測定)は実施例1~4と同様に行った。実施例10のクリープ試験においては、クリープメータのロードセルに刃プランジャーを取り付け、試料台に試料をセットした後、試料台を上に移動させて刃プランジャーの先端に試料を接触させ、試料が切断されるまで試料を押し付けた。
【0048】
(実施例7)
実施例7ではピーナッツのクリープ試験を行った。クリープ試験を行ったピーナッツを図23に示す。ピーナッツとしては、イオン株式会社により市販されている「ラーメンスナック」に含まれているものを用いた。クリープ試験には、ピーナッツを二つに割ったものを用いた。
【0049】
図24にDS処理の有り無しのピーナッツのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度40%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5個のピーナッツを使って5回行い、図24はその5回のデータの平均のデータを示す。図25図24のAの荷重-時間曲線およびBの歪率-時間曲線のそれぞれのピーク付近までの部分を拡大して示す。図24および図25から分かるように、DS処理有りのピーナッツの方がDS処理無しのピーナッツに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。DS処理有りのピーナッツの方がDS処理無しのピーナッツに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0050】
(実施例8)
実施例8では芋けんぴのクリープ試験を行った。クリープ試験を行った芋けんぴを図26に示す。芋けんぴとしては、イオン株式会社により市販されている「薄切り 芋けんぴ」を用いた。
【0051】
図27にDS処理の有り無しの芋けんぴのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度40%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5個の芋けんぴを使って5回行い、図27はその5回のデータの平均のデータを示す。図28図27のAの荷重-時間曲線およびBの歪率-時間曲線のそれぞれのピーク付近までの部分を拡大して示す。図27および図28から分かるように、DS処理有りの芋けんぴの方がDS処理無しの芋けんぴに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。DS処理有りの芋けんぴの方がDS処理無しの芋けんぴに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0052】
(実施例9)
実施例9では塩こんぶのクリープ試験を行った。クリープ試験を行った塩こんぶを図29に示す。塩こんぶとしては、イオン株式会社により市販されている「北海道産昆布使用 塩昆布」を用いた。
【0053】
図30にDS処理の有り無しの塩こんぶのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度40%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5本の塩こんぶを使って5回行い、図30はその5回のデータの平均のデータを示す。図31図30のAの荷重-時間曲線およびBの歪率-時間曲線のそれぞれのピーク付近までの部分を拡大して示す。図30および図31から分かるように、DS処理有りの塩こんぶの方がDS処理無しの塩こんぶに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。DS処理有りの塩こんぶの方がDS処理無しの塩こんぶに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0054】
(実施例10)
実施例10では干しぶどうのクリープ試験を行った。クリープ試験を行った干しぶどうを図32に示す。干しぶどうとしては、イオン株式会社により市販されている「RASINS レーズン」を用いた。
【0055】
図33にDS処理の有り無しの干しぶどうのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度40%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5個の干しぶどうを使って5回行い、図33はその5回のデータの平均のデータを示す。図34図33のAの荷重-時間曲線およびBの歪率-時間曲線のそれぞれのピーク付近までの部分を拡大して示す。図33および図34から分かるように、DS処理有りの干しぶどうの方がDS処理無しの干しぶどうに比べて荷重および歪率とも大きくなっている。DS処理有りの干しぶどうの方がDS処理無しの干しぶどうに比べて硬さが増加し、もろさが減少していることが分かる。
【0056】
(実施例11)
実施例11では千切だいこんのクリープ試験を行った。クリープ試験を行った千切だいこんを図35に示す。千切だいこんとしては、イオン株式会社により市販されている「大根ミックスサラダ」に含まれているものを用いた。
【0057】
図36にDS処理の有り無しの千切だいこんのクリープ試験の結果を示す。クリープ試験は温度25℃、湿度40%の室内で行った。クリープ試験は、DS処理有り無しの双方について、それぞれ5本の千切だいこんを使って5回行い、図36はその5回のデータの平均のデータを示す。図37図36のAの荷重-時間曲線およびBの歪率-時間曲線のそれぞれのピーク付近までの部分を拡大して示す。図36および図37から分かるように、DS処理有りの千切だいこんの方がDS処理無しの千切だいこんに比べて荷重は大きく、歪率は同等である。DS処理有りの千切だいこんの方がDS処理無しの千切だいこんに比べて硬さが増加し、もろさは同等であることが分かる。
【0058】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0059】
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構成、形状、材料、方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料、方法などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…筐体、11…磁気シールド板、12…処理部、20…管、30…コイル、40…交流電流供給装置、41…ケーブル、42…電源ケーブル、43…電源ケーブル、50…ロッカースイッチ、60…電源コネクター、70…食品、80…スティック、81…処理部、82…把持部
【要約】
【課題】経時変化などにより食品の硬さや歯ごたえなどが低下して食感が悪くなった場合に食感を簡単な手法で回復させることができ、ひいては食品の廃棄を防止することができる食品の食感向上システムおよび食品の食感向上方法を提供する。
【解決手段】食品の食感向上システムは、少なくとも一つのコイル(30)と、コイルに100Hz~10kHzの周波数領域の少なくとも一部の周波数領域で連続的に周波数の増減を反復する交流電流を流すための交流電流供給装置(40)とを有し、コイルに交流電流を流しながらコイルと食品とを互いに接近させることにより食品の硬さや歯ごたえなどを増加させ、食感を向上させる。コイルを固定し、これに食品を接近させてもよいし、食品を固定し、これにコイルを接近させてもよい。交流電流は例えば4.5kHz~8kHzで連続的に周波数の増減を反復する。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
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図30
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図37