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特許7745246エトフェンプロックス及び昆虫成長抑制剤を含有する動物用害虫駆除剤
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  • 特許-エトフェンプロックス及び昆虫成長抑制剤を含有する動物用害虫駆除剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-18
(45)【発行日】2025-09-29
(54)【発明の名称】エトフェンプロックス及び昆虫成長抑制剤を含有する動物用害虫駆除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/14 20060101AFI20250919BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20250919BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20250919BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20250919BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
A01N31/14
A01N43/40 101E
A01P7/04
A01N25/00 101
A01N25/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021190249
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077097
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由明
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09949487(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0029638(US,A1)
【文献】特表2013-505271(JP,A)
【文献】特表2010-539090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116295(US,A1)
【文献】特開2003-095813(JP,A)
【文献】特開2002-114607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00- 25/34
A01N 31/14
A01N 43/40- 43/42
A01P 7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エトフェンプロックス25w/v%以上48w/v%以下;
昆虫成長制御剤0.2w/v%以上5w/v%以下;
酸化防止剤0.01w/v%以上10w/v%以下;及び
エチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライド50w/v%以上70w/v%以下を含有する動物用害虫防除剤。
【請求項2】
前記昆虫成長制御剤が、ピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンである、請求項1に記載の動物用害虫防除剤。
【請求項3】
前記エチレングリコールエーテル類が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである、請求項1又は2に記載の動物用害虫防除剤。
【請求項4】
前記害虫が、ノミ、ダニ、蚊又はシラミである、請求項1~のいずれか1項に記載の動物用害虫除剤。
【請求項5】
エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を含有する組成物において、該エトフェンプロックスの濃度を25w/v%以上48w/v%以下、昆虫成長制御剤の濃度を0.2w/v%以上5w/v%以下とし、さらに酸化防止剤0.01w/v%以上10w/v%以下を含有させ、エチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライド50w/v%以上70w/v%以下を含有させることによって、該組成物を安定化させる方法。
【請求項6】
エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を含有する組成物において、該エトフェンプロックスの濃度を25w/v%以上48w/v%以下、昆虫成長制御剤の濃度を0.2w/v%以上5w/v%以下とし、さらに酸化防止剤0.01w/v%以上10w/v%以下を含有させ、エチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライド50w/v%以上70w/v%以下を含有させることによって、該組成物中のエトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤の皮膚上での拡散を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットや家畜などの動物に付着する害虫を防除するための薬剤に関する。より詳細には、本発明は、ノミ、ダニ、蚊又はシラミなどの害虫を防除する為の動物用害虫防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ペット、又は家畜等の人と関わり合いがある動物に付着する害虫は、これらの動物に重篤な症状をもたらす病気を媒介したり、人に対してアレルギーや有害な作用を及ぼしたりすることがある。これらの害虫に対しては、主にペットや家畜の体表面に、滴下、噴霧、塗布をする為の害虫防除剤が知られている。
【0003】
このような動物用害虫防除剤の有効成分としては、ピレスロイド系化合物やピレスロイド系化合物と他の化合物の組み合わせが広く用いられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-007238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
安定性と皮膚への拡散性が良好で、害虫を確実に防除するさらなる動物用害虫防除剤が求められている。
【0006】
本発明は、害虫防除対象の動物に直接適用することもでき、防除効果のある動物用害虫防除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、本課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定濃度のエトフェンプロックス、昆虫成長制御剤、及びエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを含有させることで、低温下でも安定であり、さらに皮膚拡散性に優れた動物用害虫防除剤を調製し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げる動物用害虫防除剤を提供する。
項1.
エトフェンプロックス20w/v%以上50w/v%未満;昆虫成長制御剤;及びエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを含有する動物用害虫防除剤。
項2.
前記昆虫成長制御剤が、ピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンである、項1に記載の動物用害虫防除剤。
項3.
前記エチレングリコールエーテル類が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである、項1又は2に記載の動物用害虫防除剤。
項4.
さらに、酸化防止剤を含有する、項1又は2に記載の動物用害虫防除剤。
項5.
前記害虫が、ノミ、ダニ、蚊又はシラミである、項1~4のいずれか1項に記載の動物用害虫駆除剤。
項6.
前記エトフェンプロックス1質量部に対して、前記昆虫成長制御剤を0.001質量部以上1質量部以下含有する、項1~5のいずれか1項に記載の動物用害虫駆除剤。
【0009】
さらに、本発明は、下記に掲げる安定化方法を提供する。
項7.
エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を含有する組成物において、該エトフェンプロックスの濃度を20w/v%以上50w/v%未満とし、さらにエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを併存させることによって、該組成物を安定化させる方法。
【0010】
さらに、本発明は、下記に掲げる皮膚拡散促進法を提供する。
項8.
エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を含有する組成物において、該エトフェンプロックスの濃度を20w/v%以上50w/v%未満とし、さらにエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを併存させることによって、該組成物中のエトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤の皮膚上での拡散を促進する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、安定性が良好な優れ、かつ皮膚拡散性に優れた動物用害虫防除剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の組成物の皮膚拡散性確認試験の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100ml」と同義である。
【0014】
[動物用害虫防除剤]
本発明の動物用害虫防除剤は、エトフェンプロックス及び昆虫成長抑制剤を有効成分として含有する、動物用害虫防除剤である。
【0015】
(エトフェンプロックス)
エトフェンプロックスとは、2-(4-エトキシフェニル)-2-メチルプロピル=3-フェノキシベンジル=エーテルを意味する。
エトフェンプロックスとしては任意の活性な立体異性体または混合物であっても使用することができる。
【0016】
本発明の動物用害虫防除剤において、動物用害虫防除剤の全量に対するエトフェンプロックスの含有量は、20w/v%以上50w/v%未満であり、25w/v%以上48w/v%以下が好ましく、30w/v%以上45w/v%以下がさらに好ましく、35w/v%以上42w/v%以下がさらにより好ましく、40w/v%が特に好ましい。
【0017】
(昆虫成長制御剤)
昆虫成長制御剤とは、昆虫の変態や脱皮を調節するホルモンのバランスを制御することによって、昆虫の脱皮や羽化を阻害する物質をいう。昆虫成長制御剤には、クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、ノバルロン、テフルベンズロン等のベンゾイルウレア系化合物に代表されるキチン合成阻害剤:エクジステロイド等の脱皮ホルモン活性化合物;及びヒドロプレン、キノプレン、フェノキシカルブ、ピリプロキシフェン、ジオフェノラン、エポフェノナン、トリプレン、メトプレン(特には、S-メトプレン)、及びハイドロプレンからなる群より選択される幼若ホルモン様物質が含まれる。これらの昆虫成長制御剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物としては任意の活性な立体異性体またはその混合物であっても使用することができる。
これらのうち、幼若ホルモン様物質が好ましく用いられ、ピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンがより好ましく用いられる。
【0018】
本発明の動物用害虫防除剤の全量に対する昆虫成長制御剤の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、0.01w/v%以上10w/v%以下が好ましく、0.1w/v%以上7w/v%以下がより好ましく、0.2w/v%以上5w/v%以下がさらに好ましい。
【0019】
特に、本発明の動物用害虫防除剤の全量に対するピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンの含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、0.01w/v%以上10w/v%以下が好ましく、0.1w/v%以上7w/v%以下がより好ましく、0.2w/v%以上5w/v%以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明の動物用害虫防除剤において、エトフェンプロックスに対する昆虫成長制御剤の割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.002質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.004質量部以上0.2質量部以下がさらに好ましい。
【0021】
本発明の動物用害虫防除剤において、エトフェンプロックスに対するピリプロキシフェン及び/又はS-メトプレンの割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.002質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.004質量部以上0.2質量部以下がさらに好ましい。
【0022】
(エチレングリコールエーテル類)
本発明の動物用害虫防除剤には、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤の他に、エチレングリコールエーテル類が含まれ得る。エチレングリコールエーテル類を使用することで、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を含む害虫防除剤を動物に滴下後に動物の皮膚表面で皮脂を伝って薬剤が体表全体に広がる。ここで、エチレングリコールエーテル類は、動物用又はヒト用の皮膚外用剤の成分として用いられるグレードのものであれば特に限定されない。エチレングリコールエーテル類としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等が例示できる。このうち、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが特に好ましい。
【0023】
本発明の動物用害虫防除剤の全量に対するエチレングリコールエーテル類の含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、10w/v%以上80w/v%以下が好ましく、20w/v%以上75w/v%以下がより好ましく、30w/v%以上70w/v%以下がさらに好ましく、50w/v%以上65w/v%以下がさらにより好ましい。
【0024】
特に、本発明の動物用害虫防除剤の全量に対するジエチレングリコールモノエチルエーテルの含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、10w/v%以上80w/v%以下が好ましく、20w/v%以上75w/v%以下がより好ましく、30w/v%以上70w/v%以下がさらに好ましく、50w/v%以上65w/v%以下がさらにより好ましい。
【0025】
本発明の動物用害虫防除剤において、エトフェンプロックスに対するエチレングリコールエーテル類の割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.3質量部以上4質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましく、1質量部以上2質量部以下がさらに好ましく、1.2質量部以上1.8質量部以下がさらにより好ましい。
【0026】
本発明の動物用害虫防除剤において、エトフェンプロックスに対するジエチレングリコールモノメチルエーテルの割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.3質量部以上4質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましく、1質量部以上2質量部以下がさらに好ましく、1.2質量部以上1.8質量部以下がさらにより好ましい。
【0027】
(中鎖脂肪酸トリグリセライド)
本発明の動物用害虫防除剤には、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤の他に、中鎖脂肪酸トリグリセライドが含まれ得る。中鎖脂肪酸トリグリセライドを使用することで、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤を含む害虫防除剤は、動物に滴下後に動物の皮膚表面で皮脂を伝って薬剤が体表全体に広がる。ここで、中鎖脂肪酸トリグリセライドは、動物用又はヒト用の皮膚外用剤の成分として用いられるグレードのものであれば特に限定されない。ここで、中鎖脂肪酸トリグリセライドは、炭素数6~10の脂肪酸トリグリセライドであり、より詳細には、炭素数6~10の不飽和脂肪酸とグリセリンが反応して得られ、不飽和脂肪酸とグリセリンのモル比が3対1のエステル化合物である。中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、例えば、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等が好ましい。中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、植物等から抽出された化合物を用いることも可能であるし、化学的手法によって合成された化合物を用いることも可能である。
【0028】
本発明の動物用害虫防除剤の全量に対する中鎖脂肪酸トリグリセライドの含有量は、本発明の効果を発揮する観点から、10w/v%以上80w/v%以下が好ましく、20w/v%以上75w/v%以下がより好ましく、30w/v%以上70w/v%以下がさらに好ましく、50w/v%以上65w/v%以下がさらにより好ましい。
【0029】
本発明の動物用害虫防除剤において、エトフェンプロックスに対する中鎖脂肪酸トリグリセライドの割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、0.3質量部以上4質量部以下が好ましく、0.5質量部以上3質量部以下がより好ましく、1質量部以上2質量部以下がさらに好ましく、1.2質量部以上1.8質量部以下がさらにより好ましい。
【0030】
(酸化防止剤)
本発明の動物用害虫防除剤は、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤と、エチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドの他に、酸化防止剤を含んでいてもよい。本発明に使用される酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(TBMTBP)等が挙げられる。このうち、BHT及びBHAが特に好ましい。
【0031】
本発明の動物用害虫防除剤の全量に対する酸化防止剤の含有量は、0.001w/v%以上10.0w/v%以下が好ましく、0.003w/v%以上5.0w/v%以下がより好ましく、0.005w/v%以上1.5w/v%以下がさらに好ましく、0.01w/v%以上1.0w/v%以下がさらにより好ましい。
【0032】
本発明の動物用害虫防除剤において、エトフェンプロックスに対する酸化防止剤の割合は、エトフェンプロックス1質量部に対して、酸化防止剤0.00003質量部以上3質量部以下が好ましく、0.000005質量部以上1.5質量部以下がより好ましく、0.000008質量部以上1.0質量部以下がさらに好ましく、0.00001質量部以上0.8質量部以下がさらにより好ましい。
【0033】
本発明の動物用害虫防除剤において、エチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドに対する酸化防止剤の割合は、エチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライド1質量部に対して、酸化防止剤0.000001質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.000005質量部以上2.0質量部以下がより好ましく、0.000008質量部以上1.0質量部以下がさらに好ましく、0.00001質量部以上0.5質量部以下がさらにより好ましい。
【0034】
(水)
本発明の動物用害虫防除剤は、水を配合することができるし、水を全く配合しない組成物の形態とすることもできる。かかる水としては、イオン交換水等の精製水や、通常の水道水や工業用水等が挙げられる。
動物用害虫防除剤の全量に対する水の含有量は、5w/v%以下が好ましく、3w/v%以下がより好ましく、全く含まれないか実質的に含まれないことが特に好ましい。
【0035】
(害虫)
本明細書でいう害虫としては、限定はされないが、特には、ノミ(イヌ、ネコ等に寄生するノミ等を含む)、ダニ(マダニ、ツツガムシ、ササラダニ、ヒゼンダニ、ケモノツメダニ等を含む)、又はシラミ、蚊等の寄生又は吸血害虫が挙げられる。特に好ましい防除対象害虫は、ノミ、ダニ、蚊又はシラミである。
【0036】
本発明の動物には、各種ペット、家畜、家禽などの各種動物が含まれる。特に、犬、猫、兎、ハムスターなどのペット、牛、馬、豚、鶏などの家畜や家禽が挙げられる。
【0037】
(pH)
本発明の動物用害虫防除剤は、成分の安定性又は安全性の観点等から、pH3~10の液性を備えていることが好ましい。より好ましくはpH4~8の動物用害虫防除剤である。動物用害虫防除剤のpHは、20℃において、市販のpHメーター(例えば株式会社堀場製作所製、F-52(登録商標)型等)を使用して測定できる。なお、動物用害虫防除剤が水を含有しない場合、前記動物用害虫防除剤を精製水で20倍希釈して測定した値をpHとする。
【0038】
(粘度)
本発明の動物用害虫防除剤は、成分の安定性等の観点等から、25℃、SPINDLE No.M1、100rpmにおける粘度が、好ましくは0.5~1000mpa・s程度、より好ましくは3~100mpa・s程度、である。動物用害虫防除剤の粘度は、25℃において、市販の粘度計(例えば東機産業株式会社製、TVB-10M型)を使用して測定できる。
【0039】
(その他の成分)
本発明の効果を阻害しない限り、本発明の動物用害虫防除剤には、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤以外の任意成分が適宜配合されていても良い。一例を挙げると、任意成分は、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤以外の他の害虫防除成分、pH調整剤、界面活性剤、シリコーン化合物、キレート剤、再汚染防止剤、高分子、防腐剤、抗菌剤、殺菌剤、天然物エキス、分散剤、酸化防止剤、増粘剤、減粘剤、安定化剤、消臭剤、香料、色素等が挙げられる。
【0040】
pH調整剤としては、限定はされないが、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、炭酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0041】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキルエステルや、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0042】
(用途等)
本発明の動物用害虫防除剤は、限定はされないが、特には、動物の背中等に滴下する形で適用され得る。
【0043】
本発明の動物用害虫防除剤は、用途等に応じて、1週間に1度、又は2週間に1度、1ヶ月に1度、3カ月に1度、又は6カ月に1度程度の頻度で使用することも可能である。
【0044】
本発明の動物用害虫防除剤の使用量は、防除効果の点では、例えば、1回あたり、エトフェンプロックスの量が10mg以上となる量が好ましく、50mg以上となる量がより好ましく、150mg以上となる量がさらにより好ましい。本発明の防除剤の使用量は、安全性の観点から、1回あたり、エトフェンプロックスの量が、3000mg以下となる量が好ましく、2400mg以下となる量がより好ましい。
【0045】
本発明の動物用害虫防除剤の使用量は、防除効果の点では、例えば、1回あたり、昆虫成長抑制剤の量が0.01mg以上となる量が好ましく、0.2mg以上となる量がより好ましく、1.0mg以上となる量がさらにより好ましい。本発明の防除剤の使用量は、安全性の観点から、1回あたり、動物用害虫防除剤の量が、500mg以下となる量が好ましく、240mg以下となる量がより好ましい。
【0046】
[安定化方法]
本発明はまた、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤とエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを組成物に配合することによって、組成物を安定化させる方法に関する。ここで、安定化とは、特に常温下、及び-5℃前後~常温の温度範囲において、24時間以上保存してもエトフェンプロックス及び/又は昆虫成長制御剤の析出が見られないことをいう。本発明の安定化方法において、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤とエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドとそれらの含有量については、前記動物用害虫防除剤で記載した内容に準じる。また、pH、その他の任意成分とそれらの含有量やその他の条件については、前記動物用害虫防除剤で記載した内容に準じる。
【0047】
[皮膚拡散促進方法]
本発明はまた、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤とエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを組成物に配合することによって、組成物中のエトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤の皮膚上での拡散を促進する方法に関する。皮膚はヒト以外の動物の皮膚であり得る。本発明の皮膚拡散促進方法において、エトフェンプロックス及び昆虫成長制御剤とエチレングリコールエーテル類及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドとそれらの含有量については、前記動物用害虫防除剤で記載した内容に準じる。また、pH、その他の任意成分とそれらの含有量やその他の条件については、前記動物用害虫防除剤で記載した内容に準じる。
【実施例
【0048】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、表における各成分量の単位は、表中特に断りがない限り、w/v%である。
【0049】
[1]安定性試験
表1に示す実施例及び比較例の組成物を常法により調製し、それらの組成物について、安定性の評価を行った。
【0050】
安定性評価は、具体的には、各組成物を20mL容スクリュー管に移したのち、密栓して-5℃の条件下にて静置して行った。24時間経過後に検体を-5℃保存庫から室温へと取り出し、その時の溶液の状態を目視により観察し、結晶析出のあるものを×、ないものを〇と評価した。
【0051】
この結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
安定性試験の結果、実施例の組成物では、比較例の組成物と比較して、-5℃において、顕著な安定性が示された。
【0054】
[2]皮膚拡散確認試験
実施例及び比較例の組成物について、皮膚拡散性確認の評価を行った。
【0055】
皮膚拡散性確認の為の評価は、具体的には、以下のように行った。
まず、横5cm縦12cmに裁断した豚皮(スウェード)を温度25℃±2℃、湿度75%RH±5%RH条件下にて1時間放置した。同室内にてマイクロピペットを用い、各実施例又は比較例の組成物0.5mLを豚皮中心に滴下した。図1に示すように、滴下後、24時間静置した。中心から2cmごとに裁断し、2cmまでの距離(1)、2~4cmの距離(2)、4~6cmの距離(3)の3区画に分け、それぞれの部分に含まれるエトフェンプロックスとピリプロキシフェンの量を分析した。次に、それぞれの組成物中に最初に含まれていた量を100%とした時の各区画における存在比(質量%)を算出した。
【0056】
この結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
皮膚拡散性確認試験の結果、実施例の組成物では、比較例の組成物と比較して、顕著な拡散性が示された。
図1