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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-18
(45)【発行日】2025-09-29
(54)【発明の名称】ガス発生器及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20250919BHJP
   B60R 21/262 20110101ALI20250919BHJP
【FI】
B60R21/264
B60R21/262
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021196784
(22)【出願日】2021-12-03
(65)【公開番号】P2023082825
(43)【公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 信行
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-335361(JP,A)
【文献】特開平6-344854(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016324(WO,A1)
【文献】特表2008-545529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ装置に組み込まれ、エアバッグを膨張させるためのガスを前記エアバッグに供給するガス発生器であって、
点火器と、
前記点火器の作動により前記ガスを発生させるガス発生源と、
前記点火器と前記ガス発生源とを内部に収容するハウジングと、
前記ハウジングに形成され、前記点火器の作動前には閉塞部材によって閉塞された複数のガス排出孔であって、前記点火器の作動により発生した前記ガスの圧力により前記閉塞部材が開裂することで開口して、前記ハウジングの内部と外部とを連通する複数のガス排出孔と、を備え、
前記複数のガス排出孔は、複数の第1ガス排出孔と、前記第1ガス排出孔よりも開口圧力の高い1又は複数の第2ガス排出孔と、を含み、
前記複数の第1ガス排出孔は、前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれた状態である組付状態において、一部の前記第1ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の部材によって阻害されるように、前記ハウジングに配置されており、
前記1又は複数の第2ガス排出孔は、前記組付状態において、少なくとも一部の前記第2ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の前記部材によって阻害されないように、前記ハウジングに配置されており、
前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれる前の状態である単独状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち、前記複数の第1ガス排出孔のみが前記ガスの圧力によって開口し、前記組付状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち前記一部の前記第1ガス排出孔を除く前記第1ガス排出孔と前記少なくとも一部の前記第2ガス排出孔とが前記ガスの圧力によって開口するように、前記第1ガス排出孔の開口圧力と前記第2ガス排出孔の開口圧力とが設定されている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記単独状態において前記点火器が作動したときに開口する前記第1ガス排出孔の開口面積の合計と前記組付状態において前記点火器が作動したときに開口する前記第1ガス排出孔及び前記第2ガス排出孔の開口面積の合計とが同等となるように構成されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記組付状態において前記エアバッグ装置の前記部材によって開口が阻害された状態となる前記一部の前記第1ガス排出孔の数量は、1つ以上であって前記複数の第1ガス排出孔の総数の2/3以下である、
請求項1又は2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記ハウジングは、筒状の周壁部を含み、
前記複数のガス排出孔は、前記周壁部に形成され、
前記組付状態では、前記周壁部の周方向における前記周壁部の一部の領域が前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われ、
前記一部の前記第1ガス排出孔は、前記組付状態において前記エアバッグ装置の前記部材に覆われる領域に配置されており、前記少なくとも一部の前記第2ガス排出孔は、前記組付状態において露出する領域に配置されている、
請求項1から3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記複数のガス排出孔は、複数の前記第2ガス排出孔を含み、
前記複数の第1ガス排出孔は、前記周壁部の周方向に沿って等間隔に配置されており、
前記複数の第2ガス排出孔は、前記周壁部の周方向に沿って等間隔に配置されている、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積をXとし、前記第1ガス排出孔の数量をYとしたとき、
前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積は、1/2Xであり、
前記第2ガス排出孔の数量は、2Yであり、
前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われる前記周壁部の領域は、前記周壁部の全周の1/2である、
請求項5に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積をXとし、前記第1ガス排出孔の数量をYとしたとき、
前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積は、1/2Xであり、
前記第2ガス排出孔の数量は、4Yであり、
前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われる前記周壁部の領域は、前記周壁部の全周の2/3である、
請求項5に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積と前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積とが同等であり、
前記第1ガス排出孔の数量と前記第2ガス排出孔の数量とが同等であり、
前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われる前記周壁部の領域は、前記周壁部の全周の1/2である、
請求項5に記載のガス発生器。
【請求項9】
前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積は、前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積よりも小さい、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項10】
前記閉塞部材は、前記第1ガス排出孔を閉塞する第1閉塞部材と、前記第2ガス排出孔を閉塞する、前記第1閉塞部材とは別個の第2閉塞部材と、を含み、
前記第2閉塞部材の引張強度は、前記第1閉塞部材の引張強度よりも大きい、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項11】
前記複数の第1ガス排出孔は、前記単独状態において前記点火器が作動したときに前記複数の第1ガス排出孔から排出される前記ガスによって前記ガス発生器に働く推力が中立となるように、配置されている、
請求項1から10の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載のガス発生器を備える、エアバッグ装置。
【請求項13】
エアバッグ装置に組み込まれ、エアバッグを膨張させるためのガスを前記エアバッグに供給するガス発生器の作動方法であって、
前記ガス発生器は、点火器と、前記点火器の作動により前記ガスを発生させるガス発生源と、前記点火器と前記ガス発生源とを内部に収容するハウジングと、前記ハウジングに形成され、前記点火器の作動前には閉塞部材によって閉塞された複数のガス排出孔であって、前記点火器の作動により発生した前記ガスの圧力により前記閉塞部材が開裂することで開口して、前記ハウジングの内部と外部とを連通する複数のガス排出孔と、を備え、
複数の第1ガス排出孔と、前記第1ガス排出孔よりも開口圧力の高い1又は複数の第2ガス排出孔と、を含む前記複数のガス排出孔を、前記ハウジングに形成することと、
前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれた状態である組付状態において、一部の前記第1ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の部材によって阻害されるように、前記複数の第1ガス排出孔を前記ハウジングに配置することと、
前記組付状態において、少なくとも一部の前記第2ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の前記部材によって阻害されないように、前記1又は複数の第2ガス排出孔を前記ハウジングに配置することと、
前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれる前の状態である単独状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち前記複数の第1ガス排出孔のみを前記ガスの圧力によって開口させ、前記組付状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち前記一部の前記第1ガス排出孔を除く前記第1ガス排出孔と前記少なくとも一部の前記第2ガス排出孔とを前記ガスの圧力によって開口させることと、を含む、
ガス発生器の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器、及びガス発生器を備えるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置に組み込まれ、エアバッグを膨張させるためのガスをエアバッグに供給するガス発生器が広く用いられている。ガス発生器としては、ハウジング内に点火器とガス発生源とを収容し、点火器の作動によりガス発生源からガスを生成し、当該ガスをハウジングに形成された複数のガス排出孔から外部へ放出するガス発生器が知られている。
【0003】
ガス排出孔は、点火器の作動前には閉塞部材によって閉塞されており、点火器が作動し、ガス発生源より生成されたガスの圧力により閉塞部材が開裂することでガス排出孔が開口する。これにより、ハウジングの内部からガスが排出される。ここで、ガス発生器には、全てのガス排出孔が開口してガスが排出されるときにガス発生器に働く推力が中立となることが要求される場合がある。これは、エアバッグ装置等に組み込まれる前の状態、即ち、ガス発生器の単独の状態で、火災や点火器の誤作動等による不時着火(予期しない着火)が発生したときに、ガスの排出によりガス発生器に働く推力によってガス発生器が飛翔しないようにするためである。一方で、ガス発生器がエアバッグ装置に組み込まれた状態では、エアバッグを速やかに膨張させるために、ガス発生器から排出されるガスの排出方向を特定の方向に偏向させることが要求される場合がある。
【0004】
これに関連して、特許文献1には、ガス発生器を用いたエアバッグ装置に関する技術が開示されている。特許文献1のガス発生器は、複数のガス排出孔をハウジングの周壁に均等に配置し、ガス発生器が単独で作動したときには全てのガス排出孔を開口させることで、推力が中立となるようにしている。また、特許文献1のエアバッグ装置は、エアバッグ装置に組み込まれたガス発生器の一部のガス排出孔をデフレクタ素子によって覆うことで当該一部のガス排出孔の開口を阻害する。これにより、エアバッグ装置に組み込まれたガス発生器が作動したときには残りのガス排出孔からガスが排出されることで、ガスが片噴き出しの状態となり、ガスの排出方向が所定の方向へと偏向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2008/0131631号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ガス発生器の出力性能は、点火器の作動時に開口するガス排出孔の開口面積の合計に応じたものとなる。上述の従来技術では、ガス発生器が単独で作動する場合には全てのガス排出孔が開口し、エアバッグ装置に組み込まれた状態でガス発生器が作動する場合には一部のガス排出孔のみが開口するため、ガス発生器が単独の状態とエアバッグ装置に組み込まれた状態とでガス排出孔の開口面積の合計が異なることとなる。そのため、上述のガス発生器では、ガス発生器が単独の状態とエアバッグ装置に組み込まれた状態とで出力性能に差が生じる。一般的に、ガス発生器は、全てのガス排出孔が開口した場合、つまり、ガス発生器が単独で作動する場合の出力性能を想定して設計される。そのため、ガス発生器が単独の状態とエアバッグ装置に組み込まれた状態との出力性能の差を小さくすることが求められる。
【0007】
本開示の技術は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアバッグ装置に用いられるガス発生器において、ガス発生器が単独の状態とエアバッグ装置に組み込まれた状態との出力性能の差を小さくすることが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術は、エアバッグ装置に組み込まれ、エアバッグを膨張させるためのガスを前記エアバッグに供給するガス発生器であって、点火器と、前記点火器の作動により前記ガスを発生させるガス発生源と、前記点火器と前記ガス発生源とを内部に収容するハウジングと、前記ハウジングに形成され、前記点火器の作動前には閉塞部材によって閉塞された複数のガス排出孔であって、前記点火器の作動により発生した前記ガスの圧力により前記閉塞部材が開裂することで開口して、前記ハウジングの内部と外部とを連通する複数のガス排出孔と、を備え、前記複数のガス排出孔は、複数の第1ガス排出孔と、前記第1ガス排出孔よりも開口圧力の高い1又は複数の第2ガス排出孔と、を含み、前記複数の第1ガス排出孔は、前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれた状態である組付状態において、一部の前記第1ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の部材によって阻害されるように、前記ハウジングに配置されており、前記1又は複数の第2ガス排出孔は、前記組付状態において、少なくとも一部の前記第2ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の前記部材によって阻害されないように、前記ハウジングに配置されており、前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれる前の状態である単独状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち、前記複数の第1ガス排出孔のみが前記ガスの圧力によって開口し、前記組付状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち前記一部の前記第1ガス排出孔を除く前記第1ガス排出孔と前記少なくとも一部の前記第2ガス排出孔とが前記ガスの圧力によって開口するように、前記第1ガス排出孔の開口圧力と前記第2ガス排出孔の開口圧力とが設定されている、ガス発生器である。
【0009】
また、上記のガス発生器は、前記単独状態において前記点火器が作動したときに開口する前記第1ガス排出孔の開口面積の合計と前記組付状態において前記点火器が作動したときに開口する前記第1ガス排出孔及び前記第2ガス排出孔の開口面積の合計とが同等となるように構成されてもよい。
【0010】
また、上記のガス発生器において、前記組付状態において前記エアバッグ装置の前記部材によって開口が阻害された状態となる前記一部の前記第1ガス排出孔の数量は、1つ以上であって前記複数の第1ガス排出孔の総数の2/3以下であってもよい。
【0011】
また、上記のガス発生器において、前記ハウジングは、筒状の周壁部を含み、前記複数のガス排出孔は、前記周壁部に形成され、前記組付状態では、前記周壁部の周方向における前記周壁部の一部の領域が前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われ、前記一部の前記第1ガス排出孔は、前記組付状態において前記エアバッグ装置の前記部材に覆われる領域に配置されており、前記少なくとも一部の前記第2ガス排出孔は、前記組付状態において露出する領域に配置されてもよい。
【0012】
また、上記のガス発生器において、前記複数のガス排出孔は、複数の前記第2ガス排出孔を含み、前記複数の第1ガス排出孔は、前記周壁部の周方向に沿って等間隔に配置されており、前記複数の第2ガス排出孔は、前記周壁部の周方向に沿って等間隔に配置されてもよい。
【0013】
また、上記のガス発生器において、前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積をXとし、前記第1ガス排出孔の数量をYとしたとき、前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口
面積は、1/2Xであり、前記第2ガス排出孔の数量は、2Yであり、前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われる前記周壁部の領域は、前記周壁部の全周の1/2であってもよい。
【0014】
また、上記のガス発生器において、前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積をXとし、前記第1ガス排出孔の数量をYとしたとき、前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積は、1/2Xであり、前記第2ガス排出孔の数量は、4Yであり、前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われる前記周壁部の領域は、前記周壁部の全周の2/3であってもよい。
【0015】
また、上記のガス発生器において、前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積と前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積とが同等であり、前記第1ガス排出孔の数量と前記第2ガス排出孔の数量とが同等であり、前記エアバッグ装置の前記部材によって覆われる前記周壁部の領域は、前記周壁部の全周の1/2であってもよい。
【0016】
また、上記のガス発生器において、前記第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積は、前記第1ガス排出孔の1つあたりの開口面積よりも小さくてもよい。
【0017】
また、上記のガス発生器において、前記閉塞部材は、前記第1ガス排出孔を閉塞する第1閉塞部材と、前記第2ガス排出孔を閉塞する、前記第1閉塞部材とは別個の第2閉塞部材と、を含み、前記第2閉塞部材の引張強度は、前記第1閉塞部材の引張強度よりも大きくてもよい。
【0018】
また、上記のガス発生器において、前記複数の第1ガス排出孔は、前記単独状態において前記点火器が作動したときに前記複数の第1ガス排出孔から排出される前記ガスによって前記ガス発生器に働く推力が中立となるように、配置されてもよい。
【0019】
また、本開示の技術は、上述までのガス発生器を備える、エアバッグ装置であってもよい。
【0020】
また、本開示の技術は、ガス発生器の作動方法であってもよい。即ち、本開示の技術は、エアバッグ装置に組み込まれ、エアバッグを膨張させるためのガスを前記エアバッグに供給するガス発生器の作動方法であって、前記ガス発生器は、点火器と、前記点火器の作動により前記ガスを発生させるガス発生源と、前記点火器と前記ガス発生源とを内部に収容するハウジングと、前記ハウジングに形成され、前記点火器の作動前には閉塞部材によって閉塞された複数のガス排出孔であって、前記点火器の作動により発生した前記ガスの圧力により前記閉塞部材が開裂することで開口して、前記ハウジングの内部と外部とを連通する複数のガス排出孔と、を備え、複数の第1ガス排出孔と、前記第1ガス排出孔よりも開口圧力の高い1又は複数の第2ガス排出孔と、を含む前記複数のガス排出孔を、前記ハウジングに形成することと、前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれた状態である組付状態において、一部の前記第1ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の部材によって阻害されるように、前記複数の第1ガス排出孔を前記ハウジングに配置することと、前記組付状態において、少なくとも一部の前記第2ガス排出孔の前記ガスの圧力による開口が前記エアバッグ装置の前記部材によって阻害されないように、前記1又は複数の第2ガス排出孔を前記ハウジングに配置することと、前記ガス発生器が前記エアバッグ装置に組み込まれる前の状態である単独状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち前記複数の第1ガス排出孔のみを前記ガスの圧力によって開口させ、前記組付状態において前記点火器が作動したときには、前記複数のガス排出孔のうち前記一部の前記第1ガス排出孔を除く前記第1ガス排出孔と前記少なくとも一部の前記第2ガス排出孔とを前記ガスの圧力によって開口させることと、を含
む、ガス発生器の作動方法であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、エアバッグ装置に用いられるガス発生器において、ガス発生器単独の状態とエアバッグ装置に組み込まれた状態との出力性能の差を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るエアバッグ装置の全体図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】ガス発生器の側面図である。
図4図3のB-B断面図である。
図5図3のC-C断面図である。
図6】組付状態におけるガス発生器とカバー部との位置関係を説明するための側面図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8図6のE-E断面図である。
図9】単独状態で点火器が作動した場合の第1ガス排出孔の状態を説明するための断面図である。
図10】単独状態で点火器が作動した場合の第2ガス排出孔の状態を説明するための断面図である。
図11】組付状態で点火器が作動した場合の第1ガス排出孔の状態を説明するための断面図である。
図12】組付状態で点火器が作動した場合の第2ガス排出孔の状態を説明するための断面図である。
図13】変形例1に係る第1ガス排出孔の配置を説明するための断面図である。
図14】変形例2に係る第2ガス排出孔の配置を説明するための断面図である。
図15】変形例3に係る第2ガス排出孔の配置を説明するための断面図である。
図16】変形例4に係る第1ガス排出孔の配置を説明するための断面図である。
図17】変形例4に係る第2ガス排出孔の配置を説明するための断面図である。
図18】ガス発生器の作動方法の手順を示す図である。
図19】実施例1~9において開口するガス排出孔の開口面積の合計を算出した結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器及びエアバッグ装置について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0024】
[全体構成]
図1は、実施形態に係るエアバッグ装置100の全体図である。図1に、エアバッグ装置100の上下方向を示す。図1では、符号10で示すエアバッグが膨張展開した状態が図示されている。なお、図1の符号G1で示す矢印は、ガスの流れを表している。図2は、図1のA-A断面図である。実施形態に係るエアバッグ装置100は、車両に搭載され、側面衝突時に乗員を保護する側面衝突保護用のエアバッグ装置(所謂サイドエアバッグ装置)である。但し、本開示に係るエアバッグ装置は、サイドエアバッグ装置に限定されない。
【0025】
図1に示すように、エアバッグ装置100は、エアバッグ10とガス発生器20と取付部材30とクリップ40とを備える。エアバッグ装置100は、車両用シートの背もたれ部(シートバック)の内部に配設される。エアバッグ装置100は、側突が検知されたときに、ガス発生器20からエアバッグ10にガスを供給して乗員と車両の側面構造体(例えば車両ドア)との間にエアバッグ10を膨張展開することで、乗員を衝撃から保護する。以下、エアバッグ装置100の各構成について説明する。
【0026】
[エアバッグ]
エアバッグ10は、ガスの供給により膨張する袋体である。図1の符号10aは、エアバッグ10の内部空間を示す。エアバッグ10の上部には、ガス発生器20の一部及び取付部材30の一部を内部空間10aに差し込むための開口部10bが形成されている。
【0027】
[ガス発生器]
ガス発生器20は、エアバッグ10にガスを供給する。図1に示すように、ガス発生器20は、全体として筒状に形成されている。図3は、ガス発生器20の側面図である。図3では、ガス発生器20がエアバッグ装置100に組み込まれる前の状態であって、ガス発生器20が作動する前の状態が図示されている。本明細書では、図3に示すようにガス発生器20がエアバッグ装置100に組み込まれる前の単独の状態を、単独状態と称する。また、図1図2に示すようにガス発生器20がエアバッグ装置100に組み込まれた状態を、組付状態と称する。
【0028】
図3に示すように、ガス発生器20は、点火器1と、点火器1の作動により燃焼ガスを発生させるガス発生剤2と、これらを収容するハウジング3と、ハウジング3に形成された複数のガス排出孔5と、を備える。ガス発生器20は、点火器1を作動させることでガス発生剤2を燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング3に形成されたガス排出孔5から排出(放出)することで、エアバッグ10に燃焼ガスを供給する。なお、本明細書では、点火器が作動することを、便宜上、「ガス発生器が作動する」と表現する場合がある。
【0029】
点火器1の内部には、点火薬(図示なし)が収容されている。点火器1は、着火電流の供給により作動することで該点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物である火炎や高温のガス等を点火器1の外部に放出する。
【0030】
ガス発生剤2は、点火器1から放出される燃焼生成物によって着火し、燃焼することで燃焼ガスを生成する、固形のガス発生剤である。ガス発生剤2としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む、公知のものを用いることができる。また、ガス発生剤2の形状には、例えば、顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。ガス発生剤2は、本開示に係る「ガス発生源」の一例である。
【0031】
ハウジング3は、端部が閉塞された有底筒状に形成されている。ハウジング3は、筒状の周壁部31と、周壁部31の端部を閉塞する蓋壁部32と、を有する。周壁部31と蓋壁部32とによって画定されるハウジング3の内部空間(以下、燃焼室)4には、点火器1とガス発生剤2とが収容されている。図3の符号A1は、周壁部31の中心軸を示す。以下、周壁部31の中心軸A1に沿う方向を、周壁部31(ハウジング3)及びガス発生器20の軸方向と称する。また、周壁部31の中心軸A1回りの方向を、周壁部31(ハウジング3)及びガス発生器20の周方向と称する。
【0032】
図3に示すように、ハウジング3の周壁部31には、ハウジング3の内部である燃焼室4とハウジング3の外部とを連通する複数のガス排出孔5が形成されている。なお、ガス
発生器20は、燃焼室4からガス排出孔5に至るガスの排出経路において、燃焼ガスの流れを絞る(チョークする)個所が設けられておらず、ガス排出孔5により単位時間あたりの燃焼ガス排出量を調整する。複数のガス排出孔5は、円形の貫通孔として形成されている。但し、本開示のガス排出孔の形状は円形に限定されない。複数のガス排出孔5は、更に、複数の第1ガス排出孔51と第1ガス排出孔51よりも小径な複数の第2ガス排出孔52とを含む。第1ガス排出孔51と第2ガス排出孔52とは、軸方向において互いに離間した位置に形成されている。図4は、図3のB-B断面図である。また、図5は、図3のC-C断面図である。図4及び図5では、ガス発生器20の軸方向に直交する断面が図示されている。なお、第1ガス排出孔51と第2ガス排出孔52とは、周方向に交互に配置されていてもよく、同一断面(周壁部31の軸方向において同じ位置)に配置されてもよい。
【0033】
図4に示すように、複数の第1ガス排出孔51は、周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されている。本例では、第1ガス排出孔51の数量は6である。そのため、周方向に隣り合う第1ガス排出孔51同士の中心軸A1回りの角度θ1は、60°となる。つまり、6個の第1ガス排出孔51が中心軸A1回りに60°の等間隔で、周壁部31に配置されている。
【0034】
図5に示すように、複数の第2ガス排出孔52は、周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されている。本例では、第2ガス排出孔52の数量は12である。そのため、周方向に隣り合う第2ガス排出孔52同士の中心軸A1回りの角度θ2は、30°となる。つまり、12個の第2ガス排出孔52が中心軸A1回りに30°の等間隔で、周壁部31に配置されている。
【0035】
図4及び図5に示すように、複数のガス排出孔5は、点火器1が作動する前の状態では、周壁部31の内周面に設けられたシールテープ6により閉塞されている。シールテープ6の材質は、例えば、アルミニウム製である。シールテープ6は、本開示に係る「閉塞部材」の一例である。本例では、第1ガス排出孔51と第2ガス排出孔52とを、別個のシールテープ6により閉塞している。以下、第1ガス排出孔51を閉塞するシールテープ6を第1シールテープ61とし、第2ガス排出孔52を閉塞するシールテープ6を第2シールテープ62とする。なお、本例では、第1シールテープ61と第2シールテープ62とで引張強度及び厚みが同一のシールテープを用いている。但し、第1シールテープ61と第2シールテープ62とで引張強度や厚みを異ならせてもよい。また、複数の第1ガス排出孔51と複数の第2ガス排出孔52とを1つのまたは共通のシールテープ6で纏めて閉塞してもよい。
【0036】
ガス排出孔5は、点火器1の作動によりガス発生剤2から発生した燃焼ガスの圧力によりシールテープ6が開裂することで開口し、ハウジング3の内部(燃焼室4)と外部とを連通する。これにより、ガス排出孔5から燃焼ガスが排出される。なお、本明細書では、ガス排出孔を開口させるために必要な圧力を「開口圧力」と称する。つまり、開口圧力は、シールテープ6の開裂に要する圧力(破裂圧)となる。開口圧力は、ガス排出孔5の径(ひいては、ガス排出孔5の1つあたりの開口面積)と、シールテープ6の引張強度と、シールテープ6の厚みとに応じて変化する。ここで、シールテープ6の厚みとは、ガスの排出方向、つまり、周壁部31の径方向におけるシールテープ6の厚みのことを指す。ガス排出孔5の開口圧力をPとし、ガス排出孔5の直径をDとし、シールテープ6の引張強度をFとし、シールテープ6の厚みをtとすると、開口圧力Pは、以下の式(1)により表すことができる。
P[N/mm]=F[N/mm]×4×t[mm]/D[mm]・・・(1)
【0037】
ここで、第1ガス排出孔51の開口圧力をP1とし、第1ガス排出孔51の直径をD1
とし、第1ガス排出孔51を閉塞するシールテープ6の引張強度をF1とし、第1ガス排出孔51を閉塞するシールテープ6の厚みをt1とする。また、第2ガス排出孔52の開口圧力をP2とし、第2ガス排出孔52の直径をD2とし、第2ガス排出孔52を閉塞する第2シールテープ62の引張強度をF2とし、第2ガス排出孔52を閉塞する第2シールテープ62の厚みをt2とする。上述のように、本例では、第2ガス排出孔52が第1ガス排出孔51よりも小径であるから、D1>D2となっている。つまり、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積よりも小さい。また、本例では、第1シールテープ61と第2シールテープ62とで引張強度F及び厚みtが同一であるため、F1=F2、t1=t2となっている。これらと上述の式(1)により、P1<P2となっている。つまり、第2ガス排出孔52の開口圧力は、第1ガス排出孔51の開口圧力よりも高くなっている。
【0038】
[取付部材]
図1に示すように、取付部材30は、カバー部301と固定部302とを含む。取付部材30は、ガス発生器20を車両に取り付けるための部材であり、本開示に係る「エアバッグ装置の部材」の一例である。
【0039】
図1に示すように、カバー部301は、ガス発生器20の軸方向に沿って延びる半円筒状に形成されている。カバー部301は、周壁部31の軸方向においては周壁部31の略全域に亘って延びており、周壁部31の周方向においては周壁部31の一部を覆うように設けられている。また、固定部302は、カバー部301の外周面から突出する舌片である。
【0040】
[組付状態]
図1に示すように、組付状態では、ガス発生器20の一部が取付部材30の一部と共にエアバッグ10の開口部10bから内部空間10aに挿入されている。そして、クリップ40によって開口部10bの縁10cと共にガス発生器20が取付部材30に固定されることで、エアバッグ10とガス発生器20とが取付部材30に固定されている。組付状態では、全てのガス排出孔5がエアバッグ10の内部空間10aに位置しているが、後述のようにガス排出孔5の一部がカバー部301で閉塞された状態である。また、組付状態では、取付部材30の固定部302がエアバッグ10の外部に位置している。エアバッグ装置100は、固定部302を利用して車両部品(図示なし)に固定される。
【0041】
図6は、組付状態におけるガス発生器20とカバー部301との位置関係を説明するための側面図である。図6では、組付状態であって、ガス発生器20が作動する前の状態が図示されている。図7は、図6のD-D断面図である。また、図8は、図6のE-E断面図である。図7及び図8では、ガス発生器20の軸方向に直交する断面が図示されている。図7及び図8に示すように、周壁部31のうち、組付状態においてカバー部301に覆われる領域を第1領域3aとし、組付状態においてカバー部301に覆われずに露出している領域、つまり、第1領域3aを除く領域を、第2領域3bとする。また、周壁部31の周方向における第1領域3aの角度範囲をθ3とする。本例では、θ3=180°となる。つまり、本例に係るカバー部301は、周壁部31の周方向において、周壁部31の半分を覆っている。但し、θ3の大きさはこれに限定されない。カバー部301が一部のガス排出孔を覆うことができれば、θ3は、所定の範囲で設定することができる。
【0042】
上述のように、複数の第1ガス排出孔51は、周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されている。そのため、図7に示すように、組付状態では、周壁部31の周方向において周壁部31の半分がカバー部301によって覆われることで、一部の第1ガス排出孔51がカバー部301によって覆われ、残部の第1ガス排出孔51がカバー部301によって覆われずに露出した状態となる。つまり、複数の第1ガス排出孔51のうち、一部の第
1ガス排出孔51が第1領域3aに配置されカバー部301により覆われており、残部の第1ガス排出孔51が第2領域3bに配置され露出している。具体的には、複数の第1ガス排出孔51は、第1領域3aと第2領域3bとに夫々半分ずつ(3個ずつ)配置されている。
【0043】
同様に、複数の第2ガス排出孔52も、周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されている。そのため、図8に示すように、組付状態では、周壁部31の周方向において周壁部31の半分がカバー部301によって覆われている。これにより、複数の第2ガス排出孔52のうち、一部の第2ガス排出孔52が露出した状態で第2領域3bに配置されており、残部の第2ガス排出孔52がカバー部301で閉塞された状態で第1領域3aに配置されている。そして、複数の第2ガス排出孔52は、第1領域3aと第2領域3bとに夫々半分ずつ(6個ずつ)配置されている。
【0044】
第1領域3aがカバー部301によって外側から覆われているため、第1領域3aに配置された第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52は、燃焼ガスの圧力により開口することがカバー部301によって阻害(阻止)される。一方で、カバー部301によって覆われていない第2領域3bに配置された第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52は、燃焼ガスの圧力により開口することがカバー部301によって阻害(阻止)されない。
【0045】
図1及び図2に示すように、組付状態では、ガス発生器20及び取付部材30は、内部空間10aの上端部(上隅)に配置される。そして、図2に示すように、第1領域3aは上方に面し、第2領域3bは下方に面している。
【0046】
[ガス発生器の動作]
以下、実施形態に係るガス発生器20の基本的な動作について説明する。図9は、単独状態で点火器1が作動した場合の第1ガス排出孔51の状態を説明するための断面図である。図10は、単独状態で点火器1が作動した場合の第2ガス排出孔52の状態を説明するための断面図である。図11は、組付状態で点火器1が作動した場合の第1ガス排出孔51の状態を説明するための断面図である。図12は、組付状態で点火器1が作動した場合の第2ガス排出孔52の状態を説明するための断面図である。図9~12では、ガス発生器20の軸方向に直交する断面が図示されている。
【0047】
先ず、図9及び図10を用いて、単独状態で点火器1が作動した場合について説明する。点火器1が作動すると、点火器1に収容された点火薬が燃焼し、その燃焼生成物である火炎や高温のガス等が燃焼室4内に放出される。これにより、燃焼室4に収容されたガス発生剤2が燃焼すると、高温・高圧の燃焼ガスが生成される。燃焼ガスが生成されることで、燃焼室4の内圧が高められ、ガス排出孔5の夫々にガスの圧力が作用する。ここで、第1ガス排出孔51は、単独状態において点火器1が作動したときに燃焼ガスの圧力によって開口するように、その開口圧力が設定されている。つまり、第1ガス排出孔51の開口圧力は、単独状態で点火器1が作動した場合の燃焼室4の内圧以下に設定されている。そのため、図9に示すように、単独状態で点火器1が作動することで、複数の第1ガス排出孔51の全てが開口する。これにより、単独状態では、全ての第1ガス排出孔51から燃焼ガスが排出される。また、第2ガス排出孔52は、単独状態において点火器1が作動したときには燃焼ガスの圧力によって開口しないように、その開口圧力が設定されている。つまり、第2ガス排出孔52の開口圧力は、単独状態で点火器1が作動した場合の燃焼ガスの圧力よりも大きく設定されている。そのため、図10に示すように、単独状態で点火器1が作動したときには、複数の第2ガス排出孔52の何れも開口せず、全ての第2ガス排出孔52が閉塞された状態が維持される。これにより、単独状態では、何れの第2ガス排出孔52からも燃焼ガスは排出されない。
【0048】
複数の第1ガス排出孔51は、周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されているので、全ての第1ガス排出孔51が開口しそこから燃焼ガスが排出されると、その排出方向は互いに反対方向となる。そのため、夫々の第1ガス排出孔51からの燃焼ガスの排出による反力が相殺される。その結果、単独状態で点火器1が作動した場合には、第1ガス排出孔51から排出されるガスによってガス発生器20に働く推力が中立となる。これにより、単独状態で火災や点火器1の誤作動等による不時着火が発生したときに、ガスの排出による推力でガス発生器20が飛翔することを防止できる。
【0049】
次に、図11及び図12を用いて、組付状態で点火器1が作動した場合について説明する。組付状態では、例えば、車両のセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると、点火器1に着火電流が供給され、点火器1が作動する。点火器1の作動によりガス発生剤2が燃焼し燃焼ガスが生成されることで、燃焼室4の内圧が高められる。しかしながら、第1領域3aに配置された第1ガス排出孔51は、燃焼ガスの圧力により開口することがカバー部301によって阻害されているため、組付状態では開口しない。従って、組付状態で点火器1が作動した場合には、先ず、図11に示すように、複数の第1ガス排出孔51のうち第2領域3bに配置された第1ガス排出孔51のみが開口し、燃焼ガスが排出される。
【0050】
ここで、組付状態では第1領域3aに配置された第1ガス排出孔51は開口しないため、組付状態で点火器1が作動した場合に開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計は、単独状態で点火器1が作動した場合に開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計よりも小さくなる。そのため、組付状態で点火器1が作動した直後、つまり、第2領域3bの第1ガス排出孔51のみが開口し未だ第2ガス排出孔52が開口していない時点では、図9の状態よりもガス発生器20から燃焼ガスが排出され難い状態になる。これにより、組付状態で点火器1が作動した直後における燃焼室4の内圧は、単独状態(すなわち図9の状態)で点火器1が作動したときの燃焼室4の内圧よりも高くなる。ここで、本実施形態では、燃焼室4の内圧が単独状態で点火器1が作動したときの内圧よりも高く、且つ組付状態で点火器1が作動したときに第2領域3bの第1ガス排出孔51のみが開口した場合に想定される内圧よりも低い状態で、第2ガス排出孔52が開裂するように、第2ガス排出孔52の開口圧力が設定されている。一方で、第1領域3aに配置された第2ガス排出孔52は、燃焼ガスの圧力により開口することがカバー部301によって阻害されているため、組付状態では開口しない。従って、組付状態で点火器1が作動した場合には、第2領域3bに配置された第1ガス排出孔51が開口した後に、図12に示すように、複数の第2ガス排出孔52のうち第2領域3bに配置された第2ガス排出孔52のみが開口し、燃焼ガスが排出される。
【0051】
以上のように、組付状態で点火器1が作動した場合には、複数のガス排出孔5のうち、第2領域3bに配置されたガス排出孔5(第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52)のみが開口し、燃焼ガスが排出される。これにより、組付状態では、ガス発生器20から排出される燃焼ガスは、第2領域3bが面する方向へと偏向される。図2に示すように、組付状態では、ガス発生器20はエアバッグ10の内部空間10aの上端部(上隅)に配置されており、第2領域3bは下方に面している。そのため、ガス発生器20が作動することで、第2領域3bから燃焼ガスが下方に排出され、エアバッグ10を速やかに膨張させることができる。
【0052】
[作用・効果]
以上のように、実施形態に係るガス発生器20は、点火器1と、点火器1の作動により燃焼ガスを発生させるガス発生剤2と、点火器1とガス発生剤2とを内部に収容するハウジング3と、ハウジング3に形成された複数のガス排出孔5と、を備えている。また、複数のガス排出孔5は、点火器1の作動前にはシールテープ6によって閉塞されており、点火器1の作動によりガス発生剤から発生した燃焼ガスの圧力によりシールテープ6が開裂
することで開口して、ハウジング3の内部と外部とを連通するように構成されている。また、複数のガス排出孔5は、複数の第1ガス排出孔51と、第1ガス排出孔51よりも開口圧力の高い複数の第2ガス排出孔52と、を含んでいる。また、複数の第1ガス排出孔51は、ガス発生器20の組付状態において、一部の第1ガス排出孔51の燃焼ガスの圧力による開口が取付部材30によって阻害されるように、ハウジング3に配置されている。また、複数の第2ガス排出孔52は、組付状態において、一部の第2ガス排出孔52の燃焼ガスの圧力による開口が取付部材30によって阻害されないように(つまり、燃焼ガスの圧力によって開口可能となるように)、ハウジング3に配置されている。更に、ガス発生器20の単独状態において点火器1が作動したときには複数の第1ガス排出孔51のみが全て燃焼ガスの圧力によって開口するように、第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口圧力が設定されている。更に、組付状態において点火器1が作動したときには複数のガス排出孔5のうち上記一部の第1ガス排出孔51を除く第1ガス排出孔51と上記一部の第2ガス排出孔52とが燃焼ガスの圧力によって開口するように、第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口圧力が設定されている。
【0053】
このようなガス発生器20によると、単独状態では複数の第1ガス排出孔51の全てが開口し、組付状態では複数の第1ガス排出孔51のうち上記一部の第1ガス排出孔51を除く第1ガス排出孔51のみを開口させることで、単独状態と組付状態とでガス発生器20から排出される燃焼ガスの方向を異ならせることができる。例えば、本例のように、単独状態では燃焼ガスを放射状に排出させてガス発生器20に働く推力が中立となるようにし、組付状態では燃焼ガスの排出方向を偏向させてエアバッグ10を速やかに膨張させることが可能となる。一方で、組付状態では、開口する第1ガス排出孔51の数量が単独状態において開口する第1ガス排出孔51の数量よりも少ないため、開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計も単独状態と比較して減少することとなる。これに対して、実施形態に係るガス発生器20では、単独状態では何れの第2ガス排出孔52も開口させずに組付状態で一部の第2ガス排出孔52を開口させることで、単独状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計と組付状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計との差を小さくしている。一般に、ガス発生器の出力性能は、点火器の作動時に開口するガス排出孔の開口面積の合計に応じたものとなる。実施形態に係るガス発生器20によると、単独状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計と組付状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計との差を小さくすることで、単独状態と組付状態との出力性能差を小さくすることができる。ガス発生器の出力性能は、単独状態で作動する場合を想定して設計されるため、単独状態と組付状態との出力性能差を小さくすることで、組付状態においても設計値に近い出力性能を得ることができる。
【0054】
なお、ガス排出孔5の総数、第1ガス排出孔51の数量、第2ガス排出孔52の数量、組付状態においてカバー部301に覆われる第1ガス排出孔51や第2ガス排出孔52の数量、第1ガス排出孔51や第2ガス排出孔52の配置、第1ガス排出孔51や第2ガス排出孔の1つあたりの開口面積は、上述の態様には限定されない。
【0055】
また、実施形態に係るガス発生器20は、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積よりも小さくすることで、第2ガス排出孔52の開口圧力(開裂圧)を第1ガス排出孔51の開口圧力よりも高くすることができる。なお、第2ガス排出孔52の1つあたりの径(開口面積)を第1ガス排出孔51の1つあたりの径(開口面積)と同等とし、第2シールテープ62の引張強度F2を第1シールテープ61の引張強度F1よりも大きくしてもよい。また、第2ガス排出孔52の1つあたりの径を第1ガス排出孔51の1つあたりの径と同等とし、第2シールテープ62の厚みt2を第1シールテープ61の厚みt1よりも大きくしてもよい。また、ガス排出孔5の径(開口面積)とシールテープ61の仕様(引張強度や厚み等)を両方調整して、それ
ぞれの開口圧力を調整することもできる。これによっても、第2ガス排出孔52の開口圧
力を第1ガス排出孔51の開口圧力よりも高くすることができる。なお、シールテープ6の厚みtの調整においては、複数のシールテープを重ねて1つのシールテープ6とし、重ねるシールテープの枚数を変更することで厚みtを調整してもよい。
【0056】
また、実施形態に係るガス発生器20は、組付状態においてハウジング3の周壁部31の周方向における一部の領域が取付部材30のカバー部301によって覆われるように構成されている。そして、組付状態においてカバー部301に覆われる第1領域3aに一部の第1ガス排出孔51が配置されており、組付状態において露出する第2領域3bに一部の第2ガス排出孔52が配置されている。これにより、組付状態において、一部の第1ガス排出孔51の燃焼ガスの圧力による開口が阻害される状態とし、一部の第2ガス排出孔52の燃焼ガスの圧力による開口が阻害されない状態とすることができる。
【0057】
また、実施形態に係るガス発生器20では、複数の第1ガス排出孔51が周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されている。これにより、単独状態において点火器1が作動したときに複数の第1ガス排出孔51から排出される燃焼ガスによってガス発生器20に働く推力を中立とすることができる。これにより、単独状態で火災や点火器1の誤作動等による不時着火が発生したときに、燃焼ガスの排出による推力でガス発生器20が飛翔することを防止できる。
【0058】
なお、単独状態において点火器1が作動したときにガス発生器20に働く推力が中立となるような第1ガス排出孔51の配置は、図4等に示したものに限定されず、周方向に沿って全ての第1ガス排出孔51が等間隔に配置されていなくともよい。図13は、変形例1に係る第1ガス排出孔51の配置を説明するための断面図である。図13では、単独状態における作動前のガス発生器20が図示されており、ガス発生器20の軸方向に直交する断面が図示されている。図13に示す変形例1では、周壁部31の軸方向視において中心軸A1を対称点としたとき、各第1ガス排出孔51に対して点対称の位置に別の第1ガス排出孔51が存在するように、複数の第1ガス排出孔51が配置されている。このような第1ガス排出孔51の配置によっても、単独状態において点火器1が作動したときにガス発生器20に働く推力を中立とすることができる。
【0059】
図14は、変形例2に係る第2ガス排出孔52の配置を説明するための断面図である。また、図15は、変形例3に係る第2ガス排出孔52の配置を説明するための断面図である。図14及び図15では、組付状態における作動前のガス発生器20が図示されており、ガス発生器20の軸方向に直交する断面が図示されている。図14に示す変形例2では、第1領域3aに第2ガス排出孔52が配置されておらず、第2領域3bに複数の第2ガス排出孔52が配置されている。図15に示す変形例3では、第1領域3aに第2ガス排出孔52が配置されておらず、第2領域3bに第2ガス排出孔52が1つのみ配置されている。図14及び図15に示すように、第2ガス排出孔52は周壁部31の第2領域3bに少なくとも1つ配置されていればよく、全ての第2ガス排出孔52が第2領域3bに配置されてもよい。つまり、組付状態において燃焼ガスの圧力による開口が阻害されない第2ガス排出孔52が少なくとも1つ存在すればよく、開口が取付部材30によって阻害される第2ガス排出孔52は存在しなくてもよい。本開示に係る技術は、複数のガス排出孔が1又は複数の第2ガス排出孔を含み、1又は複数の第2ガス排出孔のうち少なくとも一部の第2ガス排出孔の燃焼ガスの圧力による開口がエアバッグ装置の部材によって阻害されないように、1又は複数の第2ガス排出孔がハウジングに配置されていればよい。
【0060】
図16は、変形例4に係る第1ガス排出孔51の配置を説明するための断面図である。図17は、変形例4に係る第2ガス排出孔52の配置を説明するための断面図である。図16及び図17では、組付状態における作動前のガス発生器20が図示されており、ガス発生器20の軸方向に直交する断面が図示されている。図16及び図17に示す変形例4
では、周壁部31の周方向における第1領域3aの角度範囲θ3が、θ3=240°となっている。つまり、変形例4に係るカバー部301は、周壁部31の周方向において、周壁部31の2/3を覆っている。これにより、第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52は、各々総数の2/3がカバー部301に覆われた状態となる。図16に示すように、変形例4では、6個の第1ガス排出孔51のうち4個の第1ガス排出孔51が第1領域3aに配置され、2個の第1ガス排出孔51が第2領域3bに配置されている。また、図17に示すように、12個の第2ガス排出孔52のうち8個の第2ガス排出孔52が第1領域3aに配置され、4個の第2ガス排出孔52が第2領域3bに配置されている。
【0061】
なお、本開示に係るハウジングの形状およびガス排出孔が形成される位置は、上述した態様に限定されない。ハウジングは、筒状でなくともよく、ガス排出孔は、周壁部に形成されていなくてもよい。
【0062】
[ガス発生器の作動方法]
図18は、ガス発生器20の作動方法の手順を示す図である。図18に示すように、実施形態に係るガス発生器の作動方法は、ガス排出孔を形成する工程(ステップS10)とガス排出孔を開口させる工程(ステップS20)とを含む。
【0063】
まず、ステップS10では、複数の第1ガス排出孔51と、第1ガス排出孔51よりも開口圧力の高い1又は複数の第2ガス排出孔52とを、ハウジング3に形成する。ステップS10では、組付状態において一部の第1ガス排出孔51の燃焼ガスの圧力による開口が取付部材30によって阻害されるように、複数の第1ガス排出孔51をハウジング3に配置する。また、ステップS10では、組付状態において少なくとも一部の第2ガス排出孔52の燃焼ガスの圧力による開口が阻害されないように、1又は複数の第2ガス排出孔52をハウジング3に配置する。
【0064】
次に、ステップS20では、ガス発生器20が単独状態において点火器1が作動したときには、複数の第1ガス排出孔51のみを燃焼ガスの圧力によって全て開口させる。また、ステップS20では、ガス発生器20が組付状態において点火器1が作動したときには、複数のガス排出孔5のうち上記一部の第1ガス排出孔51を除く第1ガス排出孔51と上記少なくとも一部の第2ガス排出孔52とを燃焼ガスの圧力によって開口させる。
【0065】
以上のようにガス発生器20を作動させることで、単独状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計と組付状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計との差を小さくし、単独状態と組付状態との出力性能差を小さくすることができる。
【0066】
[実施例]
以下、実施形態に係るエアバッグ装置100の実施例について説明する。図19は、実施例1~9において開口するガス排出孔5の開口面積の合計を算出した結果を示す表である。なお、実施例1~9では、複数の第1ガス排出孔51が周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されており、複数の第2ガス排出孔52が周壁部31の周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0067】
図19中、「ガス排出孔1つあたりの開口面積[mm]」の欄に記載された数値は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積または第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積である。図19中、「数量[個]」の欄に記載された数値は、第1ガス排出孔51の数量及び第2ガス排出孔52の数量である。図19中、「ガス排出孔の開口面積の合計[mm]」の欄に記載された数値は、全ての第1ガス排出孔51の開口面積の合計、全ての第2ガス排出孔52の開口面積の合計、及び全ての第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計(つまり、全てのガス排出孔5の開口面積の合計)である。
図19中、「単独状態において開口するガス排出孔の開口面積の合計[mm]」の欄に記載された数値は、単独状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計、単独状態で点火器1が作動したときに開口する第2ガス排出孔52の開口面積の合計、及び単独状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計である。図19中、「組付状態において開口するガス排出孔の開口面積の合計[mm]」の欄に記載された数値は、組付状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計、組付状態で点火器1が作動したときに開口する第2ガス排出孔52の開口面積の合計、及び組付状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計である。
【0068】
実施例1~3では、第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を変えずに数量を異ならせている。実施例1は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を10[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を5[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を8[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を10[個]とした。実施例2は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を10[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を5[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を6[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を12[個]とした。実施例3は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を10[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を5[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を3[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を12[個]とした。実施例1~3では、第1ガス排出孔51と第2ガス排出孔52の各々の破裂圧力を、排出孔の開口面積の違いによって調整している。
【0069】
実施例4~6では、第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の数量を変えずに1つあたりの開口面積を異ならせている。実施例4は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を18[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を3[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を3[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を12[個]とした。実施例5は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を15[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を6[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を3[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を12[個]とした。実施例6は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を10[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を8[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を3[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を12[個]とした。実施例4~6では、第1ガス排出孔51と第2ガス排出孔52各々の破裂圧力を、排出孔の開口面積の違いによって調整している。
【0070】
実施例7~9では、第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の数量及び1つあたりの開口面積を異ならせている。実施例7は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を12[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を12[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を6[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を6[個]とした。実施例8は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を10[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を10[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を5[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を5[個]とした。実施例9は、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積を8[mm]とし、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を8[mm]とし、第1ガス排出孔51の数量を8[個]とし、第2ガス排出孔52の数量を8[個]とした。実施例7~9では、第1ガス排出孔51と第2ガス排出孔52の各々の破裂圧力を、排出孔を閉塞するシールテープの引張強度の違いによって調整している。
【0071】
図19では、実施例1~9の夫々について、取付部材30によって覆われる第1領域3aの角度範囲θ3を変化させた場合の、組付状態において開口するガス排出孔の開口面積の合計が示されている。図19に示すように、実施例1~9の夫々について、θ3=270°、θ3=240°、θ3=180°、θ3=120°、θ3=90°の場合の組付状態において開口するガス排出孔の開口面積の合計を算出した。
【0072】
組付状態において開口するガス排出孔の開口面積の合計の算出には、以下の式(2)~(4)を用いた。
[組付状態において開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計[mm]]=[全ての第1ガス排出孔51の開口面積の合計[mm]]×θ3[°]/360°・・・(2)
[組付状態において開口する第2ガス排出孔52の開口面積の合計[mm]]=[全ての第2ガス排出孔52の開口面積の合計[mm]]×θ3[°]/360°・・・(3)
[組付状態において開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計[mm]]=[組付状態において開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計[mm]]+[組付状態において開口する第2ガス排出孔52の開口面積の合計[mm]]・・・(4)
【0073】
なお、単独状態では、全ての第1ガス排出孔51が燃焼ガスの圧力により開口するため、図19に示すように、単独状態において開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計は、全ての第1ガス排出孔51の開口面積の合計と同等となる。また、単独状態では、何れの第2ガス排出孔52も開口しないため、図19に示すように、単独状態において開口する第2ガス排出孔52の開口面積の合計は、0[mm]となる。
【0074】
ここで、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積をXとし、第1ガス排出孔51の数量をYとしたとき、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を1/2Xとし、第2ガス排出孔52の数量を2Yとし、カバー部301によって覆われる第1領域3aを周壁部31の全周の1/2としてもよい。これにより、単独状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計と組付状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計とを同等とすることができる。図19において上記の条件を満たすのは、実施例2のθ3=180°のケースである。
【0075】
また、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積をXとし、第1ガス排出孔51の数量をYとしたとき、第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積を1/2Xとし、第2ガス排出孔52の数量を4Yとし、カバー部301によって覆われる第1領域3aを周壁部31の全周の2/3としてもよい。これによっても、単独状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計と組付状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計とを同等とすることができる。図19において上記の条件を満たすのは、実施例3のθ3=240°のケースである。
【0076】
また、第1ガス排出孔51の1つあたりの開口面積と第2ガス排出孔52の1つあたりの開口面積とを同等とし、第1ガス排出孔51の数量と第2ガス排出孔52の数量とを同等とし、カバー部301によって覆われる第1領域3aを周壁部31の全周の1/2としてもよい。これによっても、単独状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計と組付状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計とを同等とすることができる。図19において上記の条件を満たすのは、実施例7~9のθ3=180°のケースであ
る。
【0077】
上述のように、実施例2のθ3=180°、実施例3のθ3=240°、及び実施例7~9のθ3=180°では、単独状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計と組付状態において点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の開口面積の合計とが同等となる。つまり、単独状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計と組付状態で開口するガス排出孔5の開口面積の合計とが同等となる。このようにすることで、単独状態と組付状態との出力性能差をより一層小さくすることができる。
【0078】
ここで、単独状態において第1ガス排出孔51のみが開口し、第2ガス排出孔52が開口しないようにするためには、第2ガス排出孔52の開口圧力と第1ガス排出孔51の開口圧力との間にある程度以上の差を設ける必要がある。一方で、組込状態においてカバー部301に覆われていない第2領域3bに配置された第1ガス排出孔51及び第2ガス排出孔52の両方を開口させるためには、第2ガス排出孔52の開口圧力と第1ガス排出孔51の開口圧力との差をある程度以内に収める必要がある。例えば、組込状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計が単独状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計の半分である場合を考える。面積比のみを考慮して燃焼室4の内圧を計算すると、組付状態で点火器1が作動したときに複数のガス排出孔5のうち第2領域3bの第1ガス排出孔51のみが開口した場合に想定される燃焼室4の内圧は、単独状態で点火器1が作動したときの燃焼室4の内圧の2倍になると考えられる。しかしながら、実際には、ガス発生剤2の燃焼により一定時間ガスが発生することから、内圧の比は2倍以上になると考えられる。このことを考慮すると、第1ガス排出孔51の開口圧力に対する第2ガス排出孔52の開口圧力の比は、1.25~3.0程度に設定することができる。このように、開口圧力の比の上限は、ガス発生器の仕様によっても変わってくると考えられ、単位時間当たりのガスの発生量も考慮して設定することができる。
【0079】
以上を踏まえると、複数の第1ガス排出孔51のうち組付状態においてカバー部301によって開口が阻害された状態となる一部の第1ガス排出孔51の数量は、1つ以上であって複数の第1ガス排出孔51の総数の2/3以下としてもよい。こうすると、単独状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計に対する組込状態で点火器1が作動したときに開口する第1ガス排出孔51の開口面積の合計の比は、1/3以上1未満となる。更に、ガス発生剤2の燃焼によるガスの発生も考慮すると、第1ガス排出孔51の開口圧力に対する第2ガス排出孔52の開口圧力の比は、1.25~6.0程度に設定することができる。
【0080】
<その他>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、上述の実施形態では、固形のガス発生剤の燃焼により燃焼ガスを発生させるパイロ方式のガス発生器に本開示の技術を適用した場合を例に説明したが、本開示の技術は、パイロ方式に限定されない。ガス発生器の方式は、予め蓄圧された加圧ガスをガス発生源として使用し、点火器の作動によりガスの出口を開放することでガスを排出するストアードガス方式であってもよい。また、パイロ方式とストアードガス方式とを組み合わせたハイブリッド方式であってもよい。なお、本開示の技術は、ガス排出孔によりガス排出量を調整する構成であることから、ガス排出孔でチョークを行うパイロ式のガス発生器に対して好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0081】
100 エアバッグ装置
10 エアバッグ
20 ガス発生器
30 取付部材
1 点火器
2 ガス発生剤(ガス発生源)
3 ハウジング
31 周壁部
3a 第1領域
3b 第2領域
4 燃焼室
5 ガス排出孔
51 第1ガス排出孔
52 第2ガス排出孔
6 シールテープ(閉塞部材)
61 第1シールテープ(第1閉塞部材)
62 第2シールテープ(第2閉塞部材)
図1
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