(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-18
(45)【発行日】2025-09-29
(54)【発明の名称】水性ベースコート組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20250919BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20250919BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20250919BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20250919BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20250919BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20250919BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20250919BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/02
C09D133/00
C09D7/63
C09D7/20
C09D7/40
C09D5/00 D
(21)【出願番号】P 2022558149
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021056782
(87)【国際公開番号】W WO2021191015
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/080645
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シュー チェン
(72)【発明者】
【氏名】シー,リエ
(72)【発明者】
【氏名】ゴー,シュテファニー ペイ イー
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-519360(JP,A)
【文献】特開2018-002900(JP,A)
【文献】特開2009-006292(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121241(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0242280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(A) ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及びこれらの組合せから選択される水溶性又は分散性の膜形成樹脂、
(B) 硬化剤、及び
(C) 以下の成分、
(C1) ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1つのエーテルと、
(C2) 400g/モル未満の分子量を有する少なくとも1つの親水性ジオールと
を含む有機溶媒
を含
み、
前記成分(C1)及び(C2)の質量パーセンテージが、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて、1質量%~8質量%である、水性ベースコート組成物。
【請求項2】
顔
料をさらに含む、請求項1に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項3】
前記成分(C1)が、200℃~300℃の沸点を有するポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項4】
前記成分(C1)が、500g/モル以下の分子量を有するポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される少なくとも1つである、請求項1から3のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項5】
前記成分(C1)が、ポリオールのモノ-及びジ-アルキルエーテル、ポリオールのモノ-及びジ-アリールエーテ
ルから選択される少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項6】
前記成分(C1)が、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアリールエーテル、アルキレングリコールジアリールエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアリールエーテル、ジアルキレングリコールジアリールエーテル、トリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、トリアルキレングリコールジアルキルエーテル、トリアルキレングリコールモノアリールエーテル、及びトリアルキレングリコールジアリールエーテルから選択される少なくとも1つである、請求項1から5のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項7】
前記アルキレングリコールが、直鎖又は分岐C2~C20-アルキレングリコー
ルから選択される、請求項6に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項8】
前記ジアルキレングリコールが、ジ-C2~C10-アルキレングリコー
ルから選択される、請求項6に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項9】
前記トリアルキレングリコールが、トリ-C2~C6-アルキレングリコー
ルから選択される、請求項6に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項10】
前記ポリオールのアルキルエーテル中のアルキルが、直鎖又は分岐アルキ
ルから選択される、請求項6から9のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項11】
前記ポリオールのアルキルエーテル中のアリールが、非置換又は置換フェニ
ルから選択される、請求項6から9のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項12】
前記成分(C1)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル及びジエチレングリコールモノフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1から11のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項13】
前記親水性ジオールが少なくとも9のHLB値を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項14】
前記成分(C2)が、ジ-C2~C10-アルキレングリコー
ルから選択される少なくとも1つである、請求項1から13のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項15】
前記成分(C2)が、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールから選択される少なくとも1つである、請求項1から12のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項16】
成分(C1)及び成分(C2)の質量比が、5:2~2:
5である、請求項1から15のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項17】
前記成分(C1)及び(C2)の質量パーセンテージが、前記水性ベースコート組成物の総質量に基づいて
、3質量%~6質量%である、請求項1から16のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の水性ベースコート組成物の、自動車塗
料における使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒を含む水性ベースコート組成物に関するものであり、そしてその水性ベースコート組成物の自動車塗料における使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性自動車塗料は長年にわたって開発されてきており、環境保護に対する社会的意識の高まりと規制の厳格化により、ますます魅力的になっている。適格な水性自動車塗料を得るためには、塗装適用性、塗料硬化後の膜の外観及び性能等、いくつかの側面を考慮する必要がある。
【0003】
自動車OEM(相手先商標製品製造社)塗装の現在のプロセスにおいて、ドア敷居部上の塗膜の外観は、自動車車体部のそれよりも相対的に悪い。このような不具合が発生する理由は主に、ブースでの塗装前に下部をシールして焼成する保護工程がプロセスに含まれており、ドア敷居部が車体部ほど早く冷却できなかったためである。ドア敷居部の温度が高い(30℃~35℃)ほど、同じ塗料から得られた膜の外観(例えば光沢)がさらに悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上述の課題を克服し、そして同時にドア敷居部だけでなく車体部においても良好な全体の外観を有する膜を提供することができる水性自動車塗料の提供が、依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、以下の成分、
(A) ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及びこれらの組合せから選択される水溶性又は分散性の膜形成樹脂、
(B) 硬化剤、及び
(C) 以下の成分、
(C1) ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1つのエーテルと、
(C2) 400g/モル未満の分子量を有する少なくとも1つの親水性ジオールと
を含む有機溶媒
を含む、水性ベースコート組成物を提供する。
【0006】
別の態様において、本発明は、自動車塗料、好ましくは自動車の相手先商標製品製造社(OEM)塗料において、本発明による水性ベースコート組成物を使用する方法を提供する。
【0007】
驚くべきことに、本発明による水性ベースコート組成物を使用することにより、自動車のドア敷居部上の膜の外観(例えば平滑性及び光沢)が著しく改善されることが見出された。また、本発明による水性ベースコート組成物を使用することにより、自動車車体部上の膜の外観(例えば平滑性)が改善されることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、様々な方法で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されないことが理解される。他に明確に指示のない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術的及び科学的用語は、当業者によって認識される共通の意味を有する。文脈中において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0009】
(A) 水溶性又は分散性膜形成樹脂
本発明による水性ベースコート組成物に用いる水溶性又は分散性の膜形成樹脂として、当該技術分野で既知の水性コーティング組成物に有用な任意のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
好適なポリウレタン樹脂は、典型的には、少なくとも2つの反応性水素官能基を有する有機化合物とポリイソシアネートとの付加重合生成物であり、例えば水性分散体の形態である。
【0011】
少なくとも2つの反応性水素官能基を有する有機化合物は、当該技術分野において周知であり、例えばポリオールである。ポリオールの例には、限定するものではないが、US6384131B1に記載されているもの、すなわち、以下のものが含まれる。
【0012】
- ポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,6-ヘキサンジオール、フランジメタノール、及びシクロヘキサンジメタノールを含む飽和及び不飽和多価アルコール、
- 飽和及び不飽和多価アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,6-ヘキサンジオール、フランジメタノール、及びシクロヘキサンジメタノールと、飽和及び不飽和ポリカルボン酸及びそれらの誘導体、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水フタル酸、ジメチルテレフタレート、ダイマー酸等との反応から形成されるポリエステルポリオール、
- ラクトン、例えばカプロラクトンとポリオールとの反応により形成されるポリエステル、
- ポリエーテルポリオール、例えば、環状酸化物、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はテトラヒドロフランの重合の生成物、
- 1つ以上の環状酸化物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、グリセロール、又はビスフェノールAに添加することにより形成されるポリエーテルポリオール、
- ポリカーボネートポリオール、例えば1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又はテトラエチレングリコールと、ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート又はホスゲンとの反応生成物、
- ポリアセタールポリオール、例えばグリコール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はヘキサンジオールと、ホルムアルデヒドとの反応生成物、
- ポリオール、例えばジメチロールプロピオン酸を含むジヒドロキシアルカン酸、及び
- これらの任意の混合物。
【0013】
好適なポリイソシアネートも当該技術分野で既知であり、脂肪族、脂環式及び/又は芳香族ジイソシアネート、及び1分子当たり3つ以上のイソシアネート基を含有するポリイソシアネートが含まれる。脂肪族ジイソシアネートの例には、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、ジメチルエチレンジイソシアネート、メチルトリメチレンジイソシアネート及びトリメチルヘキサンジイソシアネートが含まれる。脂環式ジイソシアネートの例には、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、及び芳香族ジイソシアネートの水素化生成物、例えばシクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが含まれる。芳香族ジイソシアネートの例には、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネート又はそれらの異性体又は異性体混合物が含まれる。
【0014】
好ましくは、ポリイソシアネートは、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートである。イソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0015】
ポリウレタン樹脂は、カチオン性又はアニオン性修飾基、又はカチオン性、アニオン性基に変換できる潜在的にイオン性の基を導入することによって、親水性安定化のため又は水性媒体中での分散性を増大させるために、修飾されていてもよい。このようなポリウレタン樹脂は、当該技術分野ではイオン性親水性安定化ポリウレタン樹脂と呼ばれることが多い。代替的にポリウレタン樹脂は、非イオン性親水性修飾基を導入することによって修飾されていてもよい。ポリウレタン樹脂の好適なカチオン性、アニオン性及び/又は非イオン性修飾は、例えばWO2013/128011A1から知られている。
【0016】
本発明による水性ベースコート組成物に有用なポリウレタン樹脂は、当該技術分野で既知の任意の方法によって調製されたものか、又は市販のものでよい。
【0017】
本発明による水性ベースコート組成物に有用な市販のポリウレタン樹脂の例には、DAOTAN(登録商標)TW1237/32WA、Allnex Resins Germany GMBH社製、及びBasonol(登録商標)PU1035W、BASF(China)Company Ltd社製が含まれる。
【0018】
ここで、アクリル樹脂に特に制限はなく、任意の水溶性又は分散性のポリ(メタ)アクリレート及び修飾されたポリ(メタ)アクリレートであってよい。好適なアクリル樹脂は、典型的にはヒドロキシ含有アクリル樹脂である。ヒドロキシ含有アクリル樹脂は、ヒドロキシ含有重合性不飽和モノマーと、ヒドロキシ含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1つの不飽和モノマーとの共重合生成物であってよく、例えば水性分散体の形態でよい。
【0019】
ヒドロキシ含有重合性不飽和モノマーは当該技術分野で既知であり、例えば、(メタ)アクリル酸と、2~8個の炭素原子を有する2価アルコールとのモノエステル、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸と、2~8個の炭素原子を有する2価アルコールとのモノエステルのε-カプロラクトン修飾化合物、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、及びヒドロキシ末端ポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート(US9701866B2に記載されている)が含まれる。
【0020】
ヒドロキシ含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な少なくとも1つの不飽和モノマーに、特に制限はなく、ヒドロキシ含有アクリル樹脂に要求される特性に応じて適宜選択してよい。ヒドロキシ含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な不飽和モノマーの例には、限定するものではないが、US9701866B2に記載されているもの、例えば以下が含まれる。
【0021】
- アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、
- イソボルニル含有重合性不飽和モノマー、例えばイソボルニル(メタ)アクリレート、
- アダマンチル含有重合性不飽和モノマー、例えばアダマンチル(メタ)アクリレート、
- トリシクロデセニル含有重合性不飽和モノマー、例えばトリシクロデセニル(メタ)アクリレート、
- 芳香環含有重合性不飽和モノマー、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、及びビニルトルエン、
- アルコキシシリル含有重合性不飽和モノマー、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、
- フッ素化アルキル含有重合性不飽和モノマー、例えばペルフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、ペルフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びペルフルオロアルキル(メタ)アクリレート等、及びフルオロオレフィン等、
- 光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー、例えばマレイミド、
- ビニル化合物、例えばN-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、ビニルプロピオネート、及びビニルアセテート、
- リン酸基含有重合性不飽和モノマー、例えば、2-アクリロイルオキシエチル酸ホスフェート、2-メタクリロイルオキシエチル酸ホスフェート、2-アクリロイルオキシプロピル酸ホスフェート、及び2-メタクリロイルオキシプロピル酸ホスフェート、
- カルボキシ含有重合性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、及びβ-カルボキシエチルアクリレート、
- 窒素含有重合性不飽和モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド、及びグリシジル(メタ)アクリレートとアミンとの付加生成物、
- 1分子当たり少なくとも2つの重合性不飽和基を有する重合性不飽和モノマー、例えばアリル(メタ)アクリレート及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、
- エポキシ含有重合性不飽和モノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、及びアリルグリシジルエーテル、
- アルコキシ末端ポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート、
- スルホン酸基含有重合性不飽和モノマー、例えば2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、及び4-スチレンスルホン酸、及びこれらのスルホン酸のナトリウム塩又はアンモニウム塩、
- UV吸収官能基含有重合性不飽和モノマー、例えば2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、及び2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、
- 光安定性重合性不飽和モノマー、例えば4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、及び1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、
- カルボニル含有重合性不飽和モノマー、例えばアクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アセトアセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、及びC4~7ビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、及びビニルブチルケトン)。
【0022】
ヒドロキシ含有アクリル樹脂は、好ましくは、1~200mgKOH/g、より好ましくは2~180mgKOH/gの酸価を有する。
【0023】
本発明による水性ベースコート組成物に有用なヒドロキシ含有アクリル樹脂は、当該技術分野で既知の任意の方法によって調製されたものか、又は市販のものでよい。
【0024】
本発明による水性ベースコート組成物に有用な市販のヒドロキシ含有アクリル樹脂の例には、Setaqua(登録商標)6160、Viacryl(登録商標)VSC6800W/47WA及びVIacryl(登録商標)VSC6276W/44WA、Allnex Resins Germany GMBH社製が含まれる。
【0025】
(B) 硬化剤
硬化剤として、水溶性又は分散性の膜形成樹脂(A)と反応することができ、それによって本発明の水性ベースコート組成物を硬化させることができる任意の化合物を用いてよい。硬化剤(B)の例には、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロック化ポリイソシアネート、エポキシ含有化合物、カルボキシ含有化合物、及びカルボジイミド含有化合物が含まれ、これらは単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用してよい。これらの中でも、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、及びブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましく、そしてアミノ樹脂が特に好ましい。
【0026】
好適なアミノ樹脂の例には、アミノ成分、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアンアミン及びジシアンジアミドと、アルデヒド成分、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びベンズアルデヒド等を反応させることにより得られる部分的又は完全なメチロール化アミノ樹脂が含まれる。少なくとも一部のメチロール基が、好適なアルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール及び2-エチルヘキサノールでアルキル化されているメチロール化アミノ樹脂も、有用であり得る。
【0027】
アミノ樹脂の一例として、メラミン樹脂は、本発明による水性ベースコート組成物において特に有用である。特に、部分的又は完全なメチロール化メラミン樹脂の少なくとも一部のメチロール基をメチルアルコールでエーテル化して得られるメチル化メラミン樹脂、部分的又は完全なメチロール化メラミン樹脂の少なくとも一部のメチロール基をブチルアルコールでエーテル化して得られるブチル化メラミン樹脂、及び部分的又は完全なメチロール化メラミン樹脂の少なくとも一部のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールでエーテル化して得られるメチル化/ブチル化メラミン樹脂が、好ましい。本発明による水性ベースコート組成物に有用な市販のアミノ樹脂の例には、Cymel(登録商標)202、Cymel(登録商標)203、Cymel(登録商標)211、Cymel(登録商標)251、Cymel(登録商標)324、Cymel(登録商標)325、Cymel(登録商標)327、Cymel(登録商標)350、Cymel(登録商標)385、Cymel(登録商標)1130、Cymel(登録商標)1156、Cymel(登録商標)1116、Cymel(登録商標)1158、Allnex USA Inc社製、Cymel(登録商標)204、Cymel(登録商標)238、Cymel(登録商標)303、Cymel(登録商標)323、Cytec Industries Inc社製、及びU-VAN(商標)120、U-VAN(商標)20HS、U-VAN(商標)20SE60、U-VAN(商標)2021、U-VAN(商標)2028、及びU-VAN(商標)28-60、三井化学株式会社製が含まれる。
【0028】
好適なポリイソシアネートの例には、脂肪族ポリイソシアネート、例えばトリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、α,α’-ジプロピルエーテルジイソシアネート、及びトランスビニリデンジイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、例えば1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、ノルボルナンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、例えばm-及びp-フェニレンジイソシアネート、1,3-及び1,4-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン,2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート、2,4,6-トルエントリイソシアネート,α,α,α’,α’-テトラメチルo-、m-、及びp-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニレンジイソシアネートメタン、4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、及びナフタレン-1,5-ジイソシアネート、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0029】
ポリイソシアネートの付加物、例えばビウレット、イソシアヌレート、アロフォネート、ウレトジオン及びポリイソシアネートのプレポリマーも硬化剤として有用である。さらに、イソシアネート官能性モノマーの(コ)ポリマー、例えばα,α’-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートも好適である。
【0030】
好適なブロック化ポリイソシアネートの例には、そのイソシアネート基(-N-C=O基)をブロック剤でブロックして修飾した上記のイソシアネート及びその付加物が含まれる。ブロック剤は、オキシム、例えばホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノキシム、ベンゾフェノンオキシム及びシクロヘキサンオキシム、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール、ベンジルアルコール、グリコール酸、メチルグリコレート、エチルグリコレート、ブチルグリコレート、乳酸、メチルラクテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート、フェノール、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、及びメチルヒドロキシベンゾエート、エーテル、例えばエチレングリコール、モノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びメトキシメタノール、ラクタム、例えばε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、及びβ-プロピオラクタム、活性メチレン化合物、例えばジメチルマロネート、ジエチルマロネート、エチルアセトアセテート、メチルアセトアセテート、及びアセチルアセトン、メルカプタン、例えばブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、及びエチルチオフェノール、アミド、例えばアセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、及びベンズアミド、イミド、例えばスクシンイミド、フタルイミド、及びマレイミド、アミン、例えばジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、及びブチルフェニルアミン、イミダゾール又はイミダゾール誘導体、尿素、例えば尿素、チオウレア、エチレンウレア、エチレンチオウレア、及びジフェニルウレア、カルバメート、例えばフェニルN-フェニルカルバメート、イミン、例えばエチレンイミン及びプロピレンイミン、亜硫酸塩、例えば重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸カリウム、及びアゾール、例えばピラゾール又はピラゾール誘導体でよい。
【0031】
(C) 有機溶媒
驚くべきことに、より良好な外観を有する塗膜が、(C1)ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1つのエーテルと、(C2)400g/モル未満の分子量を有する少なくとも1つの親水性ジオールとを含む有機溶媒を、水性ベースコート中に用いることによって提供できることが見出された。
【0032】
エーテル(C1)として、少なくとも200℃の沸点を有し、そして好ましくは500g/モル以下の分子量を有する任意のポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルを用いてよい。200℃~300℃の沸点を有するポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルがより好ましい。ここで、各場合の沸点とは、他に指定のない限り、1気圧の圧力下における沸点を指す。
【0033】
ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルは、ポリオールのモノ-及びジアルキルエーテル、ポリオールのモノ-及びジアリールエーテル、特にジオールのモノ-及びジアルキルエーテル、ジオールのモノ-及びジアリールエーテルであってよい。ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルの例には、限定するものではないが、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアリールエーテル、アルキレングリコールジアリールエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアリールエーテル、ジアルキレングリコールジアリールエーテル、トリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、トリアルキレングリコールジアルキルエーテル、トリアルキレングリコールモノアリールエーテル、及びトリアルキレングリコールジアリールエーテルが含まれる。
【0034】
ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルが誘導される好適なアルキレングリコールは、例えば、直鎖又は分岐C2~C20-アルキレングリコール、好ましくは直鎖又は分岐C2~C10-アルキレングリコール、特に直鎖又は分岐C2~C6-アルキレングリコールから選択される。アルキレングリコールの例には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール及び1,18-オクタデカンジオールが含まれる。
【0035】
ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルが誘導される好適なジアルキレングリコールは、例えばジ-C2~C10-アルキレングリコール、好ましくはジ-C2~C6-アルキレングリコール、より好ましくはジ-C2~C4-アルキレングリコールである。
【0036】
ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルが誘導される好適なトリアルキレングリコールは、例えばトリ-C2~C6-アルキレングリコール、好ましくはトリ-C2~C4-アルキレングリコールである。
【0037】
ポリオールのアルキルエーテル中のアルキル部分は、直鎖又は分岐アルキル、好ましくはC1~C20-アルキル、より好ましくはC3~C10-アルキル、最も好ましくはC4~C8-アルキルである。
【0038】
ポリオールのアルキルエーテル中のアリール部分は、例えば、非置換又は置換フェニル、好ましくはフェニル及びC1~C10-アルキル置換フェニルである。
【0039】
ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルの好ましい例には、限定するものではないが、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBDG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(EHG)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(EHDG)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(PhG)及びジエチレングリコールモノフェニルエーテル(PhDG)が含まれる。
【0040】
親水性ジオール(C2)として、少なくとも9のHLB値を有するジオールが好適であり、そして特に、少なくとも9のHLB値、及び400g/モル未満の分子量を有するアルキレングリコール及びジアルキレングリコールが挙げられる。ここで、各場合のHLB値とは、他に指定のない限り、グリフィン法に従った値を指す。
【0041】
特に、有用なアルキレングリコールは、直鎖又は分岐C2~C20-アルキレングリコール、好ましくは直鎖又は分岐C2~C10-アルキレングリコール、特に直鎖又は分岐C2~C6-アルキレングリコールから選択される。親水性アルキレングリコールの例には、限定するものではないが、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールが含まれる。
【0042】
有用なジアルキレングリコールは、ジ-C2~C10-アルキレングリコール、好ましくはジ-C2~C6-アルキレングリコール、より好ましくはジ-C2~C4-アルキレングリコールから選択される。特に好適なジアルキレングリコールは、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール又はそれらの組合せである。
【0043】
エーテル(C1)及び親水性ジオール(C2)は、質量比5:2~2:5、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは3:2~2:3で使用してよい。
【0044】
エーテル(C1)及び親水性ジオール(C2)は、本発明による水性ベースコート組成物中に、水性ベースコート組成物の質量に基づいて、1質量%~8質量%、好ましくは2質量%~8質量%、より好ましくは3質量%~6質量%の総量で含まれていてよい。
【0045】
エーテル(C1)及び親水性ジオール(C2)は、水性ベースコート組成物において従来使用される追加の有機溶媒の存在下で使用されることが理解されよう。特に、有機溶媒(C)は、炭化水素溶媒、例えばミネラルスピリット、トルエン、キシレン、及びソルベントナフサ、溶媒(C1)及び(C2)以外のアルコール系溶媒、例えば1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール及び1-デカノールベンジルアルコール、エステル溶媒、例えばn-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、イソアミルアセテート及びメチルアミルアセテート、及びケトン溶媒、例えばメチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn-アミルケトン及びジイソブチルケトンからなる群から選択される少なくとも1つの有機溶媒を含んでいてもよい。
【0046】
有機溶媒(C)は、本発明による水性ベースコート組成物中に、水性ベースコート組成物の質量に基づいて、1質量%~15質量%、好ましくは2質量%~12質量%、より好ましくは3質量%~10質量%の総量で含まれてよい。
【0047】
本発明による水性ベースコート組成物は、色顔料、例えば白色顔料及び黒色顔料、効果顔料又はこれらの組み合わせをさらに含む。好適な色顔料及び効果顔料は当該技術分野において既知であり、例えば、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York、1998年、第176頁及び451頁に記載されている。
【0048】
水性ベースコート組成物は、水溶性又は分散性の膜形成樹脂(A)以外に少なくとも1つの追加の膜形成樹脂を任意に含む。少なくとも1つの追加の膜形成樹脂は、塗膜の実用上の必要性に応じて、当業者が適宜選択してよい。
【0049】
少なくとも1つの追加の膜形成樹脂の例として、ポリエステル樹脂が挙げられ、これはカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物とヒドロキシル基含有化合物とのエステル化又はエステル交換生成物である。
【0050】
好適なカルボン酸として、1分子当たり少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸が、ポリエステル樹脂の調製に一般的に用いられる。ポリカルボン酸の例には、脂肪族ポリカルボン酸、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びイタコン酸、芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリト酸及びピロメリット酸、脂環式ポリカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸及びヘキサヒドロテレフタル酸が含まれ、これらは単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用してよい。
【0051】
ポリカルボン酸の無水物を、追加的又は代替的に、エステル化又はエステル交換において使用してよい。上述したポリカルボン酸の無水物、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、無水トリメリト酸及び無水ピロメリト酸を使用してよい。
【0052】
好適なヒドロキシル基含有化合物として、1分子当たり2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールが、ポリエステル樹脂の調製に一般的に用いられる。ヒドロキシル基含有化合物の例には、アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール、エステルジオール、例えばビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート、ポリエーテルジオール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコール、3価以上の多価アルコール、例えばグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセロール、トリグリセロール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、及びマンニトールが含まれ、これらは単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用してよい。
【0053】
ヒドロキシ含有ポリエステル樹脂は、例えば脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で、樹脂の調製中又は調製後に、修飾されていてよい。
【0054】
本発明による水性ベースコート組成物に有用なヒドロキシ含有ポリエステル樹脂は、当該技術分野で既知の任意の方法によって調製されたものか、又は市販のものでよい。
【0055】
少なくとも1つの追加の膜形成樹脂のさらなる例として、ポリウレタン樹脂及びアクリル樹脂も挙げられる。水溶性又は分散性の膜形成樹脂(A)としての種以外の少なくとも1つの膜形成ポリウレタン及び/又はアクリル樹脂を、少なくとも1つの追加の膜形成樹脂として、用いることができる。
【0056】
本発明による水性ベースコート組成物には、当業者に既知の固化/硬化触媒、増粘剤、表面改質剤、湿潤剤、消泡剤、可塑剤、充填剤、膜形成補助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等のうちの1つ以上も、任意に含まれていてよい。
【0057】
本発明による水性ベースコート組成物の配合は、特に制限されず、1液型又は多液型の形態であってよい。特に、水性ベースコート組成物は、エーテル(C1)及び親水性ジオール(C2)の使用により、従来の自動車用水性ベースコートの配合に準じて配合してよい。
【0058】
本発明による水性ベースコート組成物には、塗装目的のための好適な粘度が提供できるように、水媒体の総量が既に含まれていてもよいことが理解されよう。本発明による水性ベースコート組成物は、塗装前に、さらなる水の添加及び/又は少量の有機溶媒によって、好適な粘度まで希釈してもよい。
【0059】
本発明の水性ベースコート組成物の調製方法に、特に制限はない。当該技術分野で既知の任意の方法、例えば前記樹脂と顔料等との混合物の混練、及びボールミル、サンドミル、分散機等による分散等を用いてよい。
【0060】
本発明による水性ベースコート組成物は、任意の従来のコーティング方法、例えばエアスプレーコーティング、エアアトマイズ静電コーティング、回転ベルアトマイズ静電コーティング等により、好ましくは、例えば自動車塗装プロセスにおける電着コーティング材料及び/又はシーリング材料を含む下塗り層の事前塗布に続いて適用してよい。
【0061】
一般に、本発明による水性ベースコート組成物は、5~100μm、好ましくは10~60μmの厚さを有する塗膜が硬化後に得られるように適用し、次いで、例えば100~200℃、好ましくは120~180℃の範囲の温度で、好適な時間、例えば10分~1時間硬化させ、そしてこのようにして硬化した塗膜が得られるように適用する。
【0062】
本発明の範囲を限定することを意図しない実施例により、本発明をさらに説明する。
【0063】
実施形態1. 以下の成分、
(A) ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂及びこれらの組合せから選択される水溶性又は分散性の膜形成樹脂、
(B) 硬化剤、及び
(C) 以下の成分、
(C1) ポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される、少なくとも200℃の沸点を有する少なくとも1つのエーテルと、
(C2) 400g/モル未満の分子量を有する少なくとも1つの親水性ジオールと
を含む有機溶媒
を含む、水性ベースコート組成物。
【0064】
実施形態2. 顔料、及び好ましくは白色又は黒色顔料をさらに含む、実施形態1に記載の水性ベースコート組成物。
【0065】
実施形態3. 前記成分(C1)が、200℃~300℃の沸点を有するポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される少なくとも1つである、実施形態1から2のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0066】
実施形態4. 前記成分(C1)が、500g/モル以下の分子量を有するポリオールのアルキルエーテル又はアリールエーテルから選択される少なくとも1つである、実施形態1から3のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0067】
実施形態5. 前記成分(C1)が、ポリオールのモノ-及びジ-アルキルエーテル、ポリオールのモノ-及びジ-アリールエーテル、及び好ましくはジオールのモノ-及びジ-アルキルエーテル、及びジオールのモノ-及びジ-アリールエーテルから選択される少なくとも1つである、実施形態1から4のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0068】
実施形態6. 前記成分(C1)が、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルキレングリコールジアルキルエーテル、アルキレングリコールモノアリールエーテル、アルキレングリコールジアリールエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールジアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアリールエーテル、ジアルキレングリコールジアリールエーテル、トリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、トリアルキレングリコールジアルキルエーテル、トリアルキレングリコールモノアリールエーテル、及びトリアルキレングリコールジアリールエーテルから選択される少なくとも1つである、実施形態1から5のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0069】
実施形態7. 前記アルキレングリコールが、直鎖又は分岐C2~C20-アルキレングリコール、及び好ましくは直鎖又は分岐C2~C10-アルキレングリコール、及びより好ましくは直鎖又は分岐C2~C6-アルキレングリコールから選択される、実施形態6に記載の水性ベースコート組成物。
【0070】
実施形態8. 前記ジアルキレングリコールが、ジ-C2~C10-アルキレングリコール、好ましくはジ-C2~C6-アルキレングリコール、及びより好ましくはジ-C2~C4-アルキレングリコールから選択される、実施形態6に記載の水性ベースコート組成物。
【0071】
実施形態9. 前記トリアルキレングリコールが、トリ-C2~C6-アルキレングリコール、及び好ましくはトリ-C2~C4-アルキレングリコールから選択される、実施形態6に記載の水性ベースコート組成物。
【0072】
実施形態10. 前記ポリオールのアルキルエーテル中のアルキルが、直鎖又は分岐アルキル、好ましくはC1~C20-アルキル、より好ましくはC3~C10-アルキル及びさらにより好ましくはC4~C8-アルキルから選択される、実施形態6から9のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0073】
実施形態11. 前記ポリオールのアルキルエーテル中のアリールが、非置換又は置換フェニル及び好ましくはフェニル及びC1~C10-アルキル置換フェニルから選択される、実施形態6から9のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0074】
実施形態12. 前記成分(C1)が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(iBDG)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(EHG)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(EHDG)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(PhG)及びジエチレングリコールモノフェニルエーテル(PhDG)からなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態1から11のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0075】
実施形態13. 前記親水性ジオールが少なくとも9のHLB値を有する、実施形態1から12のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0076】
実施形態14. 前記成分(C2)が、ジ-C2~C10-アルキレングリコール、好ましくはジ-C2~C6-アルキレングリコール、及びより好ましくはジ-C2~C4-アルキレングリコールから選択される少なくとも1つである、実施形態1から13のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0077】
実施形態15. 前記成分(C2)が、ジエチレングリコール及びジプロピレングリコールから選択される少なくとも1つである、実施形態1から12のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0078】
実施形態16. 成分(C1)及び成分(C2)の質量比が、5:2~2:5、好ましくは2:1~1:2、及びより好ましくは3:2~2:3である、実施形態1から15のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0079】
実施形態17. 前記成分(C1)及び(C2)の質量パーセンテージが、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて、1質量%~8質量%、好ましくは2質量%~8質量%、及びより好ましくは3質量%~6質量%である、実施形態1から16のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0080】
実施形態18. (A)固形分換算で10質量%~30質量%の膜形成樹脂、(B)固形分換算で3質量%~10質量%の硬化剤、(C)5質量%~15質量%の有機溶媒、(D)固形分換算で0~5質量%の、成分(A)以外の任意の膜形成樹脂、(E)0.5質量%~5質量%の黒色顔料、(F)0~5質量%の添加剤、及び(G)35質量%~75質量%の水を、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて含む、実施形態1から17のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0081】
実施形態19. (A)固形分換算で5質量%~20質量%の膜形成樹脂、(B)固形分換算で1質量%~5質量%の硬化剤、(C)5質量%~15質量%の有機溶媒、(D)固形分換算で0~10質量%の、成分(A)以外の任意の膜形成樹脂、(E)20質量%~35質量%の白色顔料、(F)0~5質量%の添加剤、及び(G)35質量%~60質量%の水を、水性ベースコート組成物の総質量に基づいて含む、実施形態1から17のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物。
【0082】
実施形態20. 実施形態1から19のいずれか1つに記載の水性ベースコート組成物の、自動車塗料、及び好ましくは自動車の相手先商標製品製造社(OEM)塗料における使用方法。
【実施例】
【0083】
I. 調製実施例
実施例I.1 水性ベースコート組成物(極白(Polar White))の調製
30部のポリウレタン樹脂(DAOTAN(登録商標)TW1237/32WA、Allnex社製、固形分約32質量%)、50部の二酸化チタン(Ti-Pure(登録商標)R-706、DuPont社製)、5部のエチレングリコールモノブチルエーテル、0.5部のトリエタノールアミン、及び14.5部の脱イオン水を混合し、次いで10μm以下の粒子径D50まで粉砕して、白色顔料分散ペーストを得た。
【0084】
18部のポリウレタン樹脂(DAOTAN(登録商標)TW1237/32WA、Allnex社製、固形分約32質量%)、5部のアクリル樹脂(SETAQUA(登録商標)6160、Allnex社製、固形分約45質量%)、45.5部の白色顔料分散ペースト、0.3部の消泡剤、0.2部の湿潤剤、及び22.5部の脱イオン水と、3部のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)と2部のエチレングリコール(EG)とからなる27.5部の水性媒体を、分散容器に導入し、次いで粒子径D50が10μm以下になるまで分散させた。次に、3部のメラミン樹脂(Cymel(登録商標)203、Allnex社製、固形分約72質量%)及び0.5部のトリエタノールアミンを加えて均一に攪拌し、極白塗料PW-1を得た。
【0085】
同じプロセスに従い、水性ベースコート組成物PW-2~PW-8を表1に示す配合に基づいて調製した。
【0086】
【0087】
1 BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
2 BTG:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
3 EG:エチレングリコール
4 PG:プロピレングリコール
5消泡剤:Surfynol(登録商標)104E、Evonik社製
6湿潤剤:BYK(登録商標)347、BYK社製
【0088】
実施例I.2 水性ベースコート組成物(濃黒)の調製
65部のポリウレタン樹脂(DAOTAN(登録商標)TW1237/32WA、Allnex社製、固形分約32質量%)、10部のカーボンブラック(MONARCH(登録商標)1300、Cabot社製)、10部のジエチレングリコールモノブチルエーテル、1部のトリエタノールアミン、及び14部の脱イオン水を混合し、次いで8μm以下の粒子径D50まで粉砕して、黒色顔料分散ペーストを得た。
【0089】
35部のポリウレタン樹脂(DAOTAN(登録商標)TW1237/32WA、Allnex社製、固形分約32質量%)、3部のアクリル樹脂(SETAQUA6160、Allnex社製、固形分約45質量%)、7部の黒色顔料分散ペースト、0.3部の消泡剤、及び44.2部の脱イオン水と、2.5部のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)と2.5部のエチレングリコール(EG)とからなる49.2部の水性媒体を分散容器に導入し、次いで粒子径D50が10μm以下になるまで分散させた。次に、5部のメラミン樹脂(Cymel(登録商標)203、Allnex社製、固形分約72質量%)及び0.5部のトリエタノールアミンを加えて均一に攪拌し、濃黒塗料DB1を得た。
【0090】
同じプロセスに従い、水性ベースコート組成物DB-2~DB-7を表2に示す配合に基づいて調製した。
【0091】
【0092】
1 BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
2 BTG:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
3 EG:エチレングリコール
4 PG:プロピレングリコール
5消泡剤:Surfynol(登録商標)104E、Evonik社製
【0093】
II. 実施例
亜鉛ホスフェート処理された鋼プレートを、カチオン電着塗料(CathoGuard(登録商標)800、BASF Coatings GmbH社製)で電着塗装により被覆して、11μmの厚さを有する乾燥塗膜を得、次いで175℃で25分間焼成した。得られた電着塗装被覆プレートを、塗装用基材として以下の実施例で使用した(以下、EDプレートという)。
【0094】
実施例II.1 極白塗膜の製造及び評価
EDプレートの塗装を、実施例I.1で調製した極白塗料を用いて、回転噴霧器(EcoBell II、Duerr Systems AG社、ドイツ)(流出速度380ml/分、回転速度:40,000rpm、電圧:60kv)によって、温度23℃及び湿度65%で行い、乾燥膜厚29μmを得た。塗装後、プレートを3分間放置し、次いで80℃で10分間フラッシュオフした。23℃に冷却した後、クリアコート塗料(ProGloss(登録商標)、BASF Coatings GmbH社製)を適用して、乾燥膜厚50μmを得た。塗装後、プレートを10分間放置し、次いで140℃で30分間水平に焼成して、極白塗膜を有する最終プレートを得た。
【0095】
極白塗膜の別のセットを、プレートを垂直に置いて焼成を行ったこと以外、同じプロセスに従ってEDプレート上に製造した。
【0096】
DIN EN ISO2813に準拠して、オレンジピールメータ(BYK4840ウェーブスキャンデュアル、BYK-Gardner GmbH社製)により、製造した極白塗膜の平滑性をLw及びSwで、光沢をDOIで評価した。測定結果を表3に示す。
【0097】
【0098】
表3に示す結果から、本発明による水性ベースコート組成物を用いて製造された塗膜(1~4番、及び9~12番)は、有機溶媒(C1)及び(C2)のいずれも含まないか、又はそのうちの1つだけを含む水性ベースコート組成物によって得られた塗膜と比較して、より低いLw値によって表される良好な平滑性を有するが、同等の光沢を示すことが分かる。
【0099】
実施例II.2 濃黒塗膜の製造及び評価
EDプレートの塗装を、実施例I.2で調製した濃黒塗料を用いて、回転噴霧器(EcoBell II、Duerr Systems AG社、ドイツ)(流出速度380ml/分、回転速度:40,000rpm、電圧:60kv)によって、温度23℃及び湿度65%で行い、乾燥膜厚15μmを得た。塗装後、プレートを3分間放置し、次いで80℃で10分間フラッシュオフした。23℃に冷却した後、クリアコート塗料(ProGloss(登録商標)、BASF Coatings GmbH社製)を適用して、乾燥膜厚50μmを得た。塗装後、プレートを10分間放置し、次いで140℃で30分間水平に焼成して、濃黒塗膜を有する最終プレートを得た。
【0100】
製造された濃黒塗膜についても、実施例II.1に記載したものと同様の方法で平滑性及び光沢を評価した。測定結果を表4に示す。
【0101】
【0102】
表4に示す結果から、本発明による水性ベースコート組成物を用いて製造された塗膜(17番~20番)は、有機溶媒(C1)及び(C2)のいずれも含まないか、又はそのうちの1つだけを含む水性ベースコート組成物によって得られた塗膜と比較して、より低いLw値によって表される良好な平滑性を有するが、同等の光沢を示すことが分かる。
【0103】
実施例II.3 ドア敷居部に極白塗膜を商業的に製造するシミュレーション
EDプレートを55℃に加熱し、次いで、プレートが50℃のときに、実施例I.1で調製した極白塗料を用いた塗装を、回転噴霧器(EcoBell II、Duerr Systems AG社、ドイツ)(流出速度380ml/分、回転速度:40,000rpm、電圧:60kv)によって、温度23℃及び湿度65%で行い、乾燥膜厚15μmを得た。塗装後、プレートを3分間放置し、次いで80℃で10分間フラッシュオフした。23℃に冷却した後、クリアコート塗料(ProGloss(登録商標)、BASF Coatings GmbH社製)を適用して、乾燥膜厚37μmを得た。塗装後、プレートを10分間放置し、次いで140℃で30分間水平に焼成して、極白塗膜を有する最終プレートを得た。
【0104】
製造された極白塗膜について、実施例II.1に記載したものと同様の方法で平滑性及び光沢を評価した。測定結果を表5に示す。
【0105】
【0106】
実施例II.4 ドア敷居部に濃黒塗膜を商業的に製造するシミュレーション
EDプレートを55℃に加熱し、次いで、プレートが50℃のときに、実施例I.2で調製した濃黒塗料を用いた塗装を、回転噴霧器(EcoBell II、Duerr Systems AG社、ドイツ)(流出速度380ml/分、回転速度:40,000rpm、電圧:60kv)によって、温度23℃及び湿度65%で行い、乾燥膜厚10μmを得た。塗装後、プレートを3分間放置し、次いで80℃で10分間フラッシュオフした。23℃に冷却した後、クリアコート塗料(ProGloss(登録商標)、BASF Coatings GmbH社製)を適用して、乾燥膜厚37μmを得た。塗装後、プレートを10分間放置し、次いで140℃で30分間水平に焼成して、濃黒塗膜を有する最終プレートを得た。
【0107】
製造された濃黒塗膜について、実施例II.1に記載したものと同様の方法で平滑性及び光沢を評価した。測定結果を表6に示す。
【0108】
【0109】
表5及び6に示す結果から、本発明による水性ベースコート組成物を用いて製造された塗膜(極白24~27番、濃黒32~35番)は、有機溶媒(C1)及び(C2)のいずれも含まないか、又はそのうちの1つだけを含む水性ベースコート組成物によって得られた対応する塗膜と比較して、著しく改善された平滑性を有し、より良好な光沢を示すことが分かる。塗装前の基材が高温であることによる膜光沢及び平滑性の損失は、本発明による水性ベースコート組成物によってかなりの程度まで防止された。自動車OEM塗装のために本発明による水性ベースコート組成物を使用することによって、ドア敷居部上の塗膜の外観が大幅に改善されることが期待できる。