IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソーリン シーアールエム エス ア エスの特許一覧

特許7745568複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム
<>
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図1
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図2
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図3
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図4
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図5
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図6
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図7
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図8
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図8a
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図9
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図10
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図10a
  • 特許-複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-18
(45)【発行日】2025-09-29
(54)【発明の名称】複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20250919BHJP
【FI】
A61N1/362
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022571742
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2021063930
(87)【国際公開番号】W WO2021239741
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2024-05-20
(31)【優先権主張番号】2005556
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510166157
【氏名又は名称】ソーリン シーアールエム エス ア エス
【氏名又は名称原語表記】SORIN CRM S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】マルダリ ミルコ
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0289973(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/362
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の埋め込み型医療装置を含むシステム内の通信方法であって、前記複数の埋め込み型医療装置は、少なくとも心房活動を表す信号を検出する1つの手段と、1つの送信手段と、心房活動を表す信号を分析するように構成された1つの制御部とを備える第1の装置と、前記第1の装置からは独立しており、少なくとも1つの受信手段と、1つの制御部とを備える第2の装置とを備え、前記方法は、
A)前記第1の装置の送信手段から前記第2の装置に同期信号を送信することにより、前記第1の装置を前記第2の装置と時間的に同期させるステップであって、前記同期信号は、前記第1の装置の制御部を用いて、心房活動を表す信号であるPQRS複合波のうちの事前定義された心電波を特定した後に送信されるステップと、
B)心周期の長さを決定するステップと、
を含むと共に、前記ステップA)と前記ステップB)の後に、
C)同期区間を決定するステップであって、前記同期区間の長さは前記心周期の長さよりも短くなるように決定され、前記同期区間の開始は前の心周期に基づいて決定されるステップと、
D)前記同期区間の間に前記第2の装置の前記受信手段をアクティブ化するステップであって、前記第2の装置の前記受信手段は、前記第2の装置の前記制御部によって、前記同期区間の外において非アクティブ化されるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
1つの心周期について、前記第1の装置の送信手段による同期信号の送信を示す第1のタイムマーカーが決定され、前記第2の受信手段による同期信号の受信を示す第2のタイムマーカーが決定され、
第1のタイムマーカーに応じて次の心周期における前記第1の装置の同期区間が決定され、第2のタイムマーカーに応じて次の心周期における前記第2の装置の同期区間が決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の装置の同期区間の間、
前記第2の装置の受信手段が、予め定義された複数のアクティブ化時間枠の間にアクティブ化され、予め定義された複数の非アクティブ化時間枠の間に非アクティブ化され、
前記第2の装置の予め定義された複数のアクティブ化時間枠が、前記第2の装置の同期区間にわたって、
第1のタイムマーカー及び第2のタイムマーカーに応じて、前記第1の装置の信号パルス枠と同期するように分散される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の装置の送信手段が心周期ごとに単一の同期信号を送信するように構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
・ 事前に定義された各アクティブ化時間枠が同じ長さであり、
・ 事前に定義された各非アクティブ化時間枠が同じ長さであり、
・ 事前定義されたアクティブ化時間枠と非アクティブ化時間枠のそれぞれが、同期区間内に交互に連続する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
アクティブ化時間枠の長さが非アクティブ化時間枠の長さより短いか等しい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アクティブ化時間枠の長さが非アクティブ化時間枠の長さの0.3~50%、特に5~10%に相当する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の装置の送信手段が同期信号を送信するように構成されるパルスの持続時間が、アクティブ化時間枠の長さの25~80%、特に50%に相当する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
第1のタイムマーカーが、同期信号の送信の開始又は終了、又は同期信号の送信中の、予め定義された時間を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
ステップA)において、前記第1の装置の制御部により検出された事前定義された心電波が、PQRS複合波のP波に対応する、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップA)において、電図、心電図、加速度計により測定されたデータ、インピーダンス心電図により測定されたデータ、音響センサーにより測定されたデータのいずれかを分析して、予め定義された心電波を前記第1の装置の制御部を用いて検出する、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2つの連続する心周期にわたって、前記第1の装置と前記第2の装置が、ステップA及びステップBの間、非同期的に通信し、前記第2の装置の受信手段が、少なくとも2つの連続する心周期の間、連続的にアクティブ化される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第2の装置の制御部が、同期信号を受信した後、前記第2の装置の同期区間の残り時間の間、前記第2の装置の受信手段を非アクティブ化するように構成される、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第2の装置の同期区間中に同期信号が前記第2の装置により受信されない場合に、前記第2の装置の送信手段を用いて警告信号を前記第1の装置の受信手段に送信するように、前記第2の装置の制御部が構成される、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの検出手段と、1つの送信手段と、心房活動を表す信号を分析するように構成された1つの制御部とを備える第1の装置と、
少なくとも1つの受信手段と1つの制御部とを備え、前記第1の装置から独立した第2の装置と、
を少なくとも含む、複数の埋め込み型医療装置からなるシステムであって、
前記第2の装置の受信手段は、前記第2の装置の制御部によってアクティブ化及び非アクティブ化されるように構成され、
前記第1の装置の制御部及び前記第2の装置の制御部が、請求項1から14の少なくとも1つによる方法を遂行するように構成される、
システム。
【請求項16】
前記第1の装置が、皮下植込み型医療装置、イベントループレコーダー、リードレスペースメーカーのいずれかであり、前記第2の装置がリードレスペースメーカーである、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、複数の埋め込み型医療装置間の通信方法及びシステムに関する。
【0002】
心臓の収縮は血流を確保する。これらの収縮は、刺激と呼ばれる電気信号によって生成される。健康な心臓では、刺激は右心房の壁にある洞房結節から発生する。刺激は、洞房結節からまず両心房に広がり、両心房は収縮して、含まれている血液をまだ不動の心室に排出して心室を満たす。
【0003】
次に、房室の伝導遅延と呼ばれる遅延の後、心室は刺激を受けて収縮する。この房室の伝導遅延は、心臓の最適な機能のために重要である。
【0004】
心臓疾患のある患者では、刺激伝導系の機能障害により、刺激の生成及び/又は心臓全体での刺激の動きが妨げられる場合がある。これにより、不整脈と呼ばれる不規則な心臓のリズムが発生する。
【0005】
心拍数が低すぎて体に必要な酸素供給量を満たせない場合は徐脈性不整脈と呼ばれる。
【0006】
徐脈性不整脈を治療するために投薬だけでは不十分な場合、英語で「pacemakers」と呼ばれるペースメーカーなどの埋め込み型装置を使用して心臓を人工的に刺激することが知られている。特に、デュアルチャンバペースメーカーと呼ばれる刺激システムを使用することが知られている。皮下に埋め込まれた装置を2つのリードに接続して人工的刺激を送るものである。リードは静脈内に移植して、右心房と右心室に到達させる。リードを従来型ペースメーカーなどの同じ埋め込み型医療装置に接続すると、埋め込み型医療装置の電子回路によってリード間の同期を直接行うことができる。ただし、静脈内リードの使用にはリスクがある。実際にリードの破損はペースメーカー機能障害の最も一般的な原因の1つである。移植された静脈内リード(又はペースメーカー)の摘出は、罹患率及び死亡率が高い処置であるため、通常、抗生物質では治療できない重篤な全身感染症の場合にのみ実施される。ほとんどの場合、破損したリードは装置から取り外されて心臓内に留置される。次に、新しいリードが古いリードの横に埋め込まれ、埋め込み型自動除細動器に接続される。ただし、この解決策は、多くのリードが存在すると静脈閉塞を引き起こす可能性があるため、静脈にまだ十分なスペースがある場合にのみ可能である。したがって、生涯を通じて多数のリードが必要となる若年患者にとっては、心臓内リードの使用は、理想的ではない。
【0007】
上記の心臓内リードに関連する問題の解決策の1つは、それらを皮下リード及び/又は自律型ペースメーカーに代替することである。
【0008】
自律型ペースメーカーの主な利点の1つは、ケースがないことと、リードなどの異物を削減できることであり、これにより感染のリスクが軽減される。
【0009】
ただし、自律型ペースメーカーはシングルチャンバを用いた療法にしか使用できないため、治療可能な患者数が限定される。
【0010】
本発明は特に、少なくとも1つの自律型リードレスペースメーカーを含むペースメーカーシステムに関する。英語では「リードレス心臓ペースメーカー(leadless cardiac pacemaker)」とも呼ばれる。自律型リードレスペースメーカーは、バッテリーユニット、センサー、電流発生器、テレメトリモジュールなどのエネルギー源で構成される。特に、右心室内に移植するように設計されており、移植可能なシングルチャンバ心室刺激装置に代わって使用することができる。
【0011】
自律型リードレスペースメーカーを使用することができる患者の割合を増やすための1つの解決策としては、複数の埋め込み型医療装置からなるシステムがある。このシステムではPQRST複合波の検出などの生理学的情報を送受信するために、装置間の無線通信が必要である。同期療法を提供できるようにするには、これらの情報は特に必要である。こうすることで、PQRST複合波の検出を表す同期信号を1つの心室に埋め込まれた装置から送信して、もう1つの心室に埋め込まれた別の装置の療法を同期することができる。
【0012】
しかし、無線周波数、人体通信(英語では「Intra-Body Communication(IBC)」と呼ばれる)、誘導結合などの埋め込み型医療装置の無線通信方法は、エネルギーを大量に消費し、バッテリーの寿命を縮める。
【0013】
この問題は、同期信号を受信するように構成された装置ではさらに重要である。これは、信号が受信されるのを待つ間、受信手段がアクティブのままである必要があり、バッテリー容量がさらに減るためである。
【0014】
本発明が、このような埋め込み型装置システムのエネルギー消費を削減し、ひいてはその寿命を延ばすために、無線通信を改善することを目的とするのは以上の理由による。
【0015】
第1の装置が心房活動を表す信号を検出する1つの手段、1つの送信手段、心房活動を表す信号を分析するように構成された1つの制御部を少なくとも備え、及び第1の埋め込み型医療装置とは独立した第2の装置が、少なくとも1つの受信手段及び1つの制御部を備える、複数の埋め込み型医療装置を含むシステム内の通信方法によって達成される本発明の目的。この方法には以下が含まれる。A)心房活動を表す信号の事前に定義されたPQRS複合心電波を第1の装置の制御部によって特定した後で同期信号が送信され、第1の装置の送信手段から第2の装置に同期信号を送信することで第1の装置を第2の装置と時間的に同期させるステップ。B)心周期の長さを決定するステップ。A及びBのステップに続き、C)同期区間を決定するステップ。同期区間の長さは心周期の長さに応じて、心周期の長さよりも短くなるように決定され、同期区間の開始は、同期信号に応じて決定される。D)同期区間の間に第2の装置の受信手段をアクティブにするステップ。第2の装置の受信手段は、第2の装置の制御部によって同期区間外で非アクティブ化される。
【0016】
第2の装置の受信手段が継続的にアクティブ化されず、心周期の長さよりも短い時間の間隔でのみアクティブ化されるため、通信方法が改善される。
【0017】
同期区間は、PQRS複合波のうちの1つの波の検出に関するタイムマーカーを用いるため、システムを同期させるのに、各心周期中に第2の装置の受信手段を部分的にアクティブ化するだけで十分である。PQRS複合波内の心電波の1つを検出することにより、心臓事象を特定することが可能となる。したがって、同期区間はシステムの同期や患者の心拍数に関連する生理学的情報に基づいて決定される。したがって、同期区間は患者の生理学的特徴に応じて利益となるように調整される。
【0018】
このように、本方法により、無線通信を行うために第2の装置の受信手段をアクティブ化すべき時間を短縮することが可能となる。その結果、第2の装置のエネルギー需要を節約でき、ひいてはその寿命を延ばすことができる。
【0019】
通信方法に関する本発明は、以下の実施形態を用いてさらに改善することができる。
【0020】
実施形態によっては、1心周期について、第1の装置の送信手段による同期信号の送信を示す第1のタイムマーカーを決定することができ、第2の装置の受信手段による同期信号の受信を示す第2のタイムマーカーを決定することができる。次の心周期のための第1の装置の同期区間は、第1のタイムマーカーに応じて決定可能で、次の心周期における第2の装置の同期区間は、第2のタイムマーカーに応じて決定可能である。
【0021】
このように、第2の装置の同期区間は、それ自体がPQRST複合波の1つであるP波などの患者の生理学的特徴に関係する第2のタイムマーカーによって決定される。
【0022】
第2の装置の予め定義された複数のアクティブ化時間枠は、第1のタイムマーカー及び第2のタイムマーカーに応じて第1の装置の信号パルス幅と同期するように、第2の装置の同期区間に分散されており、実施形態によっては、第2の装置の同期区間の間、第2の装置の受信手段は、予め定義された複数のアクティブ化時間枠の間にアクティブ化することが可能であり、予め定義された複数の非アクティブ化時間枠の間に非アクティブ化することが可能である。
【0023】
このように、受信手段は同期区間全体にわたってではなく、枠単位でのみアクティブ化されるため、第2の装置の受信手段のエネルギー消費量をさらに低減することができる。アクティブ化枠は、第1の装置による同期信号の送信を示す第1のタイムマーカーに合わせて利益になるように調整されるため、これによって同期信号の受信が妨げられることは決してない。
【0024】
実施形態によっては、第1の装置の送信手段は、心周期ごとに同期信号を1回のみ送信するように構成されうる。
【0025】
このように、この通信方法は、第1の装置が一連のパルスを送信する必要がない。実際にこの方法では、第1及び第2のタイムマーカーの同期により、第1の装置により送信された唯一の同期信号が第2の装置の受信手段をアクティブにする時間枠に「含まれる」ことが可能になる。
【0026】
実施形態によっては、予め定義されたアクティブ化された各時間枠の長さが等しく、予め定義された非アクティブ化された各時間枠の長さが等しく、予め定義されたアクティブ化及び非アクティブ化された各時間枠が同期区間中に交互に続くこともある。
【0027】
したがって、アクティブ化及び非アクティブ化時間枠の連続は周期的であり、同期信号が同期区間中に受信される確率をさらに高めることになる。
【0028】
実施形態によっては、アクティブ化された時間枠の長さは、非アクティブ化された時間枠の長さよりも短いか、又は同じとなりうる。
【0029】
これにより、第2の装置の受信手段のエネルギー消費量をいっそう削減することが可能になる。
【0030】
実施形態によっては、アクティブ化された時間枠の長さは、非アクティブ化された時間枠の長さの0.3~50%、特に5~10%に相当しうる。
【0031】
これにより、第2の装置の受信手段のエネルギー消費量をいっそう削減することが可能になる。
【0032】
実施形態によっては、第1の装置の送信手段が同期信号を送信するように構成されうるパルス幅は、アクティブ化された時間枠の長さの25~80%、特に50%に相当する。
【0033】
これにより、同期信号を「聞き取って」検出するために第2の装置の受信手段がアクティブ化される枠に対応するアクティブ化時間枠は、同期信号を発信する期間よりも長くなる。これにより、第2の装置がアクティブ化される時間枠に同期信号が受信される可能性が高くなる。
【0034】
実施形態によっては、第1のタイムマーカーは、同期信号の送信の開始又は終了時、あるいは同期信号送信中の予め設定した時間とすることができる。
【0035】
したがって、第1のタイムマーカーの「タイミング」がより正確に定義されるため、第2の装置の同期区間の、第1の装置の同期区間との調整が改善できる。
【0036】
実施形態によっては、ステップA)において、第1の装置の制御部により検出される予め定義された心電波は、PQRS複合体のP波に対応することができる。
【0037】
P波は心房収縮中の脱分極を示し、したがって房室の伝導遅延と同期に関連する生理学的情報を構成するため、P波の検出には特に適している。
【0038】
実施形態によっては、ステップA)において、電図、心電図、加速度計により測定されたデータ、インピーダンス心電図により測定されたデータ、音響センサーにより測定されたデータのいずれかを分析することにより、予め定義された心電波を第1の装置の制御部を用いて検出することができる。
【0039】
したがって、この方法はさまざまな検出手段を用いて有利に実施することができる。
【0040】
実施形態によっては、第1の装置と第2の装置は少なくとも2つの連続する心周期にわたって、ステップAの間及びステップBの間、互いに非同期的に通信することができ、第2の装置の受信手段は、少なくとも2つの連続する心周期の間、連続的にアクティブ化される。
【0041】
したがって、第1の装置と第2の装置は、同期区間を決定し調整するためにそれぞれ独立してタイムマーカーを決定するように構成される。
【0042】
実施形態によっては、第2の装置の制御部は、同期信号を受信した後の第2の装置の同期区間の残りの時間の間、第2の装置の受信手段を非アクティブ化するように構成することができる。
【0043】
これにより、第2の装置の受信手段のエネルギー消費量をいっそう削減することが可能になる。
【0044】
実施形態によっては、第2の装置の制御部は、第2の装置の同期区間の間に第2の装置が同期信号を受信しない場合に、第2の装置の送信手段が第1の装置の受信手段に向けて警告信号を送信するように構成することができる。
【0045】
これにより、右心室に移植されるよう構成された第2の装置が、予め定義された心電波の検出に関する情報を受信していないことが、第1の装置に通知される。第1の装置は(第2の装置が受信していない)同期信号を送信しており、送信中に信号が失われたことを第1の装置は感知することができる。この場合、右心房への局所刺激が必要となる可能性がある。
【0046】
本発明の目的は、複数の埋め込み型医療装置からなるシステムでも達成される。システムは、少なくとも1つの検出手段と、1つの送信手段と、心房活動を表す信号を分析するように構成された1つの制御部と、を含む第1の装置を含む。システムは、少なくとも受信手段1つと制御部1つとを含む、第1の埋め込み型医療装置とは独立した第2の装置を含む。第2の装置の受信手段は、第2の装置の制御部によりアクティブ化及び非アクティブ化されるように構成される。第1の装置の制御部及び第2の装置の制御部は、上記の実施形態に従って方法を実施するように構成される。
【0047】
このように、第2の装置の受信手段が連続的にアクティブ化されるのではなく、心周期の持続時間よりも短い同期区間の間だけアクティブ化されるため、複数の埋め込み型医療装置からなるシステムが改善される。
【0048】
同期区間は、PQRS複合波のうちの1つの波の検出に関するタイムマーカーを用いるため、システムを同期させるのに、各心周期中に第2の装置の受信手段を部分的にアクティブ化するだけで十分である。PQRS複合波内の心電波の1つを検出することにより、心臓事象を特定することが可能となる。したがって、同期区間はシステムの同期や患者の心拍数に関連する生理学的情報に基づいて決定される。したがって、同期区間は患者の生理学的特徴に応じて利益となるように調整される。
【0049】
実施形態によっては、第1の埋め込み型医療装置は皮下移植可能な医療装置、イベントループレコーダー、リードレスペースメーカーのいずれも可能で、第2の医療装置はリードレスペースメーカーでも可能である。
【0050】
したがって、このシステムはデュアルチャンバ同期療法に適合している。このシステムは特に、右心房に埋め込み可能なリードレスペースメーカーと、右心室に埋め込み可能なリードレスペースメーカーを用いるデュアルチャンバ同期療法に適している。
【0051】
本発明とその利点は、以下に示す好ましい実施形態において、添付図面を用いて詳細に説明する。
【0052】
ここで、有利な実施形態を用いて、図を参照しながら例示的な方法で本発明をより詳細に説明する。記載された実施形態は単純に可能な構成であり、本発明を実施する際には、上記のような個々の特性がそれぞれ独立して提供されること、あるいは完全に省略される可能性があることを念頭におく必要がある。
【0053】
本発明は、複数の埋め込み型医療装置からなるシステムのための通信方法、ならびにそのようなシステムに関する。
【0054】
複数の埋め込み型医療装置からなるこのようなシステムの実施形態は、まず図1図3図4を参照しながら説明する。
【0055】
次に、本発明に基づいて複数の埋め込み型医療装置からなるシステムにより実施できる通信方法を、図5~10を参照しながら説明する。
【0056】
図1は、2つの埋め込み型装置20、21を含む本発明の、第1の実施形態での複数の装置からなるシステム10を表す。
【0057】
図1に示す複数の装置からなるシステム10は、皮下埋め込み型装置20と、右心室(VD)に埋め込まれた自律型リードレスペースメーカー21とを備える。
【0058】
図1に示す皮下埋め込み型装置20は、ケース22と、3つの電極26、28、30と除細動電極32を備える皮下リード24とを備える。図1では見られないが、ケース22には、無線周波数(RF)送信装置又は人体内通信接続を使用する送信手段と、制御部とを備える。ケース22は、受信手段を備えうる。
【0059】
ある変型においては、少なくとも1対の電極を含むイベントレコーダー又は埋め込み型ループレコーダーを、皮下埋め込み型装置20の代わりに使用することができる。
【0060】
皮下埋め込み型装置20は、例えば心電図(ECG)、インピーダンス心電図、音響検出器、及び/又は加速度計など最新技術で知られる方法の1つを用いて心房活動を検出するように構成される。
【0061】
本発明の第1の実施形態では、皮下植込み型装置20は、ECGを表すデータを分析するように構成される。ECGを表すデータの分析により、電気生理学的特性であるPQRST複合波の5つのP、Q、R、S、T波の少なくとも1つを検出することが可能になる。PQRST複合波の例は図2に示されている。皮下埋め込み型装置20は特に、PQRST複合波からの心電波の検出に対応するタイムマーカーを識別するように構成される。P波は心房収縮中の脱分極を示し、したがって房室の伝導遅延と同期に関連する生理学的情報を構成するため、P波の検出は特に適している。
【0062】
P波の検出は、例えば局所的な最大値を特定することで決定できる。自律型リードレスペースメーカー21は、装置21の遠位端25に配置された先端電極23と、装置21の近位端29に向けて配置された環状電極27とを備える。電極23、27は、受信ダイポール又は送信ダイポールを形成しうる。なお、本発明は、先端電極及びリング型電極の使用に限定されるものではなく、自律型リードレスペースメーカーに含まれるあらゆる種類の電極を用いて実施できることに留意されたい。
【0063】
先端電極23は、検出電極であっても刺激電極であってもよい。ある変形では、電極23は検出電極と刺激電極の両方である。
【0064】
図1では見られないが、自律型リードレスペースメーカー21の本体31は、バッテリーユニット、制御部、及び受信装置(RF)などの受信手段をカプセル化したり、人体内通信接続を使用したりすることができる。本体31は送信手段を備えることも可能である。
【0065】
自律型リードレスペースメーカー21の受信手段は、特に人体内通信接続を介して、皮下埋め込み型装置20の送信手段と無線で通信するように構成される。
【0066】
皮下埋め込み型装置20、例えば心電図(ECG)、電図(EGM)、インピーダンス心電図、音響検出器、及び/又は加速度計など最新技術で知られる方法の1つを用いて心臓活動を検出するように構成されることが可能である。
【0067】
ある変形では、装置20、21間の無線通信は、人体内通信(英語では「intra-body communication」と呼ばれる)又は誘導結合などの他の無線通信方法によっても実行されうる。
【0068】
システム10では、自律型リードレスペースメーカー21が、皮下植込み型装置20から発せられた信号を受信するように構成される。特に、心房の脱分極に関する時間的情報を含む同期信号で可能である。このような同期信号により、心室の収縮を同期させることができる。同期信号は、皮下植込み型装置20により検出された患者の生理学的心臓活動に基づいて、右心室に刺激を送達するために用いることが可能である。
【0069】
図3は、2つの植込み型装置21、41を備える本発明の第2の実施形態での複数の装置からなるシステム40を表す。
【0070】
図1の説明で既に使用されている同じ参照番号を持つ要素については、再度詳細に説明されず、上記の説明を参照する。
【0071】
埋め込み型装置21は、図1を参照して既に説明され、参照番号が付された自律型リードレスペースメーカー21に相当する。
【0072】
第2の実施形態では、第1の実施形態の皮下埋め込み型医療装置20の代わりに、第2の自律型リードレスペースメーカー41が使用される。
【0073】
図3に示すように、自律型リードレスペースメーカー41は、右心房(OD)内に埋め込むように構成される。
【0074】
自律型リードレスペースメーカー41は、例えば、心電図(ECG)、電図(EGM)、インピーダンス心電図、音響検出器、及び/又は加速度計など、最新技術で知られる方法の1つを用いて心房活動を検出するように構成される。
【0075】
自律型リードレスペースメーカー41は、心電図を表すデータを分析するように構成される。心電図の代表的なデータの分析により、最先端技術で知られるPQRST複合波の5つのP、Q、R、S、T波の少なくとも1つを検出することが可能になる。PQRST複合波の例は図2に示されている。自律型リードレスペースメーカー41は、特に、PQRST複合波からの心電波の検出に対応するタイムマーカーを識別するように構成される。
【0076】
自律型リードレスペースメーカー21と同様に、自律型リードレスペースメーカー41は、ペースメーカー41の遠位端45に配置された先端電極43と、ペースメーカー41の近位端49に向けて配置された環状電極47とを備える。電極43、47は、受信ダイポール又は送信ダイポールを形成しうる。なお、本発明は、先端電極及びリング型電極の使用に限定されるものではなく、自律型リードレスペースメーカーに含まれるあらゆる種類の電極を用いて実施できることに留意されたい。
【0077】
先端電極43は、検出電極であっても刺激電極であってもよい。ある変形では、電極43は検出電極と刺激電極の両方である。
【0078】
図3では見られないが、自律型リードレスペースメーカー41の本体51は、バッテリーユニット、プロセッサー、制御部、及び送信装置(RF)などの送信手段をカプセル化することが可能である。本体51は受信手段を備えることも可能である。
【0079】
自律型リードレスペースメーカー41の送信手段は、特に人体内通信接続を介して、自律型リードレスペースメーカー21の受信手段と無線で通信するように構成されている。
【0080】
ある変形では、装置21、41間の無線通信は、人体内通信(英語では「intra-body communication」と呼ばれる)又は誘導結合など他の無線通信方法によっても実行されうる。
【0081】
図示されていないある変形では、本発明によるシステムは、皮下埋め込み型装置20と、2つの自律型リードレスペースメーカー21、41とを備える。
【0082】
図4は、本発明の第3の実施形態での、3つの埋め込み型装置21、41、61を含む、複数の装置からなるシステム60を表す。
【0083】
図1図3の説明で既に使用されている同じ参照番号を持つ要素については、再度詳細に説明されず、上記の説明を参照する。
【0084】
第2の実施形態と比較して、第3の実施形態の複数の装置からなるシステム60は、第3の埋め込み型医療装置61を含む。複数の装置からなるシステム60は、トリプルチャンバと呼ばれる再同期システムの一種であり、英語では「Cardiac Resynchronization Therapy-Pacemaker」を意味する「CRT-P」とも呼ばれる。
【0085】
埋め込み型装置21、41はそれぞれ、図1及び図3を参照して既に説明され、参照番号が付された自律型リードレスペースメーカー21、41に相当する。
【0086】
第3の装置61は、心筋の壁に心外膜として埋め込まれる自律型リードレスペースメーカー61である。
【0087】
図1、3、4を参照して説明される本発明の各実施形態において、埋め込み型装置20、21、41、61は、特にRF通信に適合した受信手段と送信手段の両方を備えることができる。したがって、各埋め込み型装置20、21、41、61は、システム10、40、60のそれぞれにおける無線通信を可能にするために、信号を送信し、かつ信号を受信するように構成される。
【0088】
さらに、埋め込み型装置20、21、41のそれぞれは、心周期の長さを決定することができる。
【0089】
本発明による無線通信方法は、システム10、40、60などのシステムに含まれる少なくとも2つの埋め込み型装置(20、21、41、61)の同期に関する。本発明による無線通信方法を以下に説明する。システム10、40、60はそれぞれ、前記通信方法を実行するように構成される。特に、第1の装置と第2の装置とを備えるシステムにおける通信方法を以下に説明する。
【0090】
図5は、本発明の第1の実施形態による通信方法の動作を模式的に表す。
【0091】
図5は3つの時間軸102、104、106を表す。軸102、104、106の単位はミリ秒(ms)で表される。
【0092】
心電図は時間軸102上に表される。時間軸102に示される心電図は、図示された心周期のそれぞれについて複数のPQRST複合波を含む。完全な心周期の長さは、連続する2つの同一の波の間の期間として決定することができる。図5では、心周期の長さは、心周期のP波を表す2つの局所的最大値の間で表されるPP間隔で表される。図5では、n=1からn=4までの4つの連続した心周期が注記されている。
【0093】
PP間隔は完全な心周期の長さを表し、通常は約1秒以上続く。
【0094】
第1の装置は、PQRS複合波、特にP波を識別するために、心電図102を分析し、心電図の特性を決定するように構成されている。例えば、特性はP波に起因する局所的最大値となりうる。第1の装置は、心電図102を記録するように構成することも可能である。第1の装置は、心周期の長さを決定するように構成される。この第1の装置は、右心房(OD)内に移植されるように構成された皮下埋め込み型装置20、レコーダー、又は自律型リードレスペースメーカー41となりうる。図5の第1の装置は、例えば人体内通信接続などを用いた少なくとも1つの送信手段を備える。
【0095】
第1の装置により特定された各PPサイクル(「検出P」から「検出P」を参照)のP波の検出は、時間軸104に表される。
【0096】
時間軸106は、図1、3、4を参照して説明したように、複数の装置からなるシステムの第2の装置に関する。この第2の装置は、右心室(VD)に埋め込むように構成された自律型リードレスペースメーカー21でもよい。第2の装置は、心周期の長さを決定するように構成することが可能である。したがって、第2の装置は心室刺激を与えうる。
【0097】
図5の第2の装置は、第1の埋め込み型医療装置から独立しており、少なくとも1つの受信手段を備える。
【0098】
本発明の方法は、複数の装置からなるシステムを構成する前記第1の装置と前記第2の装置との間で、装置間で同期することを可能にするための無線通信方法である。この方法について以下に説明する。
【0099】
まず、図5に示す第1の心周期n=1を考える。この間、第1の装置と第2の装置はまだ同期されていない。
【0100】
上で説明したように、第1の装置は心電図を分析してP波を検出するように構成される。第1の心周期n=1の間、第1の装置によりP波が検出され、時間軸104に「検出P」という注記が付される。
【0101】
波の検出及び識別に続いて、第1の装置の送信手段は、同期信号を第2の装置に送信するように構成される。時間軸104のタイムマーカーPref1 n=1は、図5に示す第1の心周期の同期信号の送信を示すタイムマーカーに対応している。
【0102】
この同期信号は、第2の装置の受信手段により受信され、時間軸106上のタイムマーカーPref2 n=1により示される。
【0103】
次に、次の心周期n=2の間、P波が第1の装置により新たに検出及び識別され、時間軸104に「検出P」という注記が付される。
【0104】
波の検出及び識別に続いて、第1の装置の送信手段は、同期信号を第2の装置に送信するように構成される。時間軸104のタイムマーカーPref1 n=2は、図5に示す第2の心周期n=2の同期信号の送信を示すタイムマーカーに対応している。
【0105】
この同期信号は、第2の装置の受信手段により受信され、時間軸106上のタイムマーカーPref2 n=2により示される。
【0106】
本発明では、第1の心周期の長さn=1は、Pref1 n=1とPref1 n=2の間と決定される(図5の「間隔Pref1 n=1ref1 n=2」を参照)。これにより、第1の装置と第2の装置に共通のリファレンスを参照することが可能となる。
【0107】
ある変形では、「検出P」と「検出P」の間の期間で第1の心周期n=1の長さを決定することができる(図5の「間隔P1P2」を参照)。
【0108】
次に、次の心周期n=3の間に、P波が第1の装置により新たに検出及び識別され、時間軸104に「検出P3」という注記が付される。
【0109】
波の検出及び識別の後、第1の装置の送信手段は、同期信号を第2の装置に送信するように構成される。時間軸104のタイムマーカーPref1 n=3は、図5に示す第3の心周期の同期信号の送信を示すタイムマーカーに対応している。
【0110】
この同期信号は、第2の装置の受信手段により受信され、時間軸106上のタイムマーカーPref2 n=3により示される。
【0111】
本発明では、第2の心周期n=2の長さは、第1の周期と同様に、Pref1 n=2とPref1 n=3との間で決定される。
【0112】
ある変形では、「検出P」と「検出P」の間の期間により、第2の心周期n+2の長さを決定することができる。
【0113】
タイムマーカーPref2 n=2と第2の心周期の長さに基づいて、第3の心周期n=3について第2の装置の同期区間108を決定することができる。この同期区間108は、リスニングウィンドウ、すなわち、第1の装置により送信された同期信号を受信するために同期区間108で第2の装置の受信手段がアクティブ化されることに相当する。これにより、同期区間108の間、第2の装置の受信手段が信号又はメッセージを受信することができる。
【0114】
同期区間108の長さは、第2の心周期の長さよりも短くなるように決定される。同期区間108の持続時間は、0.8秒未満、特に0.4秒未満であってもよい。
【0115】
リフェランスDref2 n=3で示される同期区間108の開始は、前の心周期n+2のタイムマーカーPref2 n=2に基づいて決定される。
【0116】
同期区間108は、前の心周期n+2のタイムマーカーPref2 n=2によって決まるため、これにより、同期区間108を第3周期で調整して同期信号を前記同期区間108の間に受信されるようにすることが可能になる。
【0117】
同期信号の受信は、タイムマーカーPref2 n=3で示される。
【0118】
第3の心周期における開始Dref2 n=3及び同期区間108の長さを決定するには、特に、1つの拍動から別の拍動までの最大加速度が考慮される。これは、通常、心周期の長さの10~40%、特に25~35%を上回らない。
【0119】
さらに、同期区間108の決定には、心筋が心房活動に反応するのにかかる時間も考慮される。これは、心臓の生理学的反応を改善するために医師がプログラムできるパラメーターである。このパラメーターは、心周期の持続時間の0~50%、特に0~30%に相当しうる。
【0120】
本発明によれば、第2の装置の受信手段は、同期区間108の間起動され、同期区間108以外では第2の装置の制御部により非アクティブ化される。
【0121】
したがって、第2の装置の受信手段は、全心周期を通じては連続的にはアクティブ化されず、第2の装置の電気消費量を低減することが可能になる。実際、第2の装置の受信手段は、アクティブ化されている間エネルギーを消費する。同期区間108の間受信手段をアクティブ化し、完全な心周期の間中を通じてそれ以外は停止することにより、受信手段の通電期間は同期区間108の長さが限度となるため、再同期のための無線通信に必要な消費電力を削減できる。
【0122】
ただし、これは第2の装置がすべての機能を同時に停止するのではなく、受信手段の機能と並行して、検出、計時、刺激など他の機能が実施される。
【0123】
第1の装置の同期区間110は、タイムマーカーPref1 n=2と第2の心周期の長さに基づいて決定することもできる。第3の心周期n+3の同期区間110の開始は、リファレンスDref1 n=3で示される。したがって、同期区間110 Dref1 n=3の開始は、特にタイムマーカーPref1 n=2に基づいて決定される。
【0124】
第1の装置の同期区間110は、送信ウィンドウ、すなわちP波の識別に応じて、同期信号が送信される可能性が高い区間に対応している。第3の心周期n+3では、同期信号の送信はタイムマーカーPref1 n=3で示される。
【0125】
第4の心周期n+4とそれに続く心周期(図5には示されていない)の同期区間108、110は、第3の心周期での説明と同じ方法で決定される。
【0126】
本方法の利点は、通信区間108、110が心臓事象(P波の検出)に応じて経時的に調整され、したがって患者の生理学的特性に適応することである。
【0127】
示されていない別の形態では、同期区間110を第3周期n+3の間、タイムマーカーPref1 n=2と第2の心周期の長さに基づいて、P波の検出が同期区間110に含まれないように位置づけることが可能である。この場合、同期区間110は、第1の実施形態に比べて時間軸104の右側へとシフトされる。したがってこの代替形態では、同期区間108も第1の実施形態に比べて時間軸104の右側へとシフトされる。この代替形態は、一連のデータを含む同期メッセージを送信する場合に特に適する。
【0128】
第1の装置は同期「信号」又は「メッセージ」を送信できることに留意されたい。本説明では、同期「信号」とは、単一ビットでコード化された情報を含む信号を指し、同期「メッセージ」とは、複数のビットでコード化された情報を含む信号を指す。
【0129】
したがって、同期「信号」と「メッセージ」の違いは、P波を検出するための時間情報のエンコード方法に関する。
【0130】
同期メッセージでは、P波の検出の「タイミング」がエンコードされるため、より詳細な情報を第2の装置に送信できる。
【0131】
同期信号では、P波を検出するための時間情報は、その信号を送信する「タイミング」に暗黙的に含まれる。これにより、単一ビットでコード化された情報を含む信号を送信することができる。
【0132】
各周期nのタイムマーカーPref1とPref2は、同期区間108、110を相互に同期させるための時間基準として機能する。タイムマーカーPref1とPref2は特に、同期区間108、110が重なり合う、さらには揃っていることを確認するために使用される。
【0133】
したがって、タイムマーカーPref2は、第2の装置の受信手段のアクティブ化を調整するために使用される。
【0134】
図6は、本発明の第2の実施形態による通信方法の動作を模式的に表す。
【0135】
図5と同様に、図6は3つの時間軸202、204、206を表す。軸202、204、206の単位はミリ秒(ms)で表される。
【0136】
心電図は時間軸202上に表される。心電図にはPQRST複合波が含まれる。完全な心周期の長さは、連続する2つの同一の波の間の期間として決定することができる。
【0137】
複数の装置からなるシステムの第1の装置の同期区間210は、図1、3、4を参照して説明したように、時間軸204上に表される。
【0138】
複数の装置からなるシステムの第2の装置の同期区間208は、図1、3、4を参照して説明したように、時間軸206上に表される。この第2の装置は、右心室(VD)に埋め込むように構成された自律型リードレスペースメーカー21でもよい。したがって、第2の装置は心室刺激を与えうる。
【0139】
図6の第2の装置は、第1の埋め込み型医療装置から独立しており、少なくとも1つの受信手段を備える。
【0140】
心周期nについては、第2の装置の同期区間208は、第1の実施形態の第3周期における第2の装置の同期区間108についての記述と同じ方法で決定される(図5参照)。すなわち、図6に示された第2の装置の同期区間208の開始Dref2 nは、前の心周期n-1(図6には示されていない)の第2のタイムマーカーPref2 n-1によって決まる。
【0141】
同様に、心周期nについて、第1の装置の同期区間210は、第1の実施形態の第3周期における第1の装置の同期区間110についての記述と同じ方法で決定される(図5参照)。すなわち、図6に示された第1の装置の同期区間210の開始Dref1 nは、前の心周期n-1(図6には示されていない)の第1のタイムマーカーPref1 n-1によって決まる。
【0142】
同期区間208の間、第1の装置の送信手段は、図6の時間軸204に示すように、休止期間Toffだけ間隔をあけて、持続時間Tbitのパルスを送信することができる。休止期間Toffの間、送信手段はパルスを送信しない。持続時間Tbitは500マイクロ秒(μs)に等しく、「Toff」は9.5ミリ秒(ms)に等しくなりうる。
【0143】
図6の「検出P」で示されるP波が検出されるとすぐに、第1の装置の送信手段は、Tbitにより定義される利用可能な最初の枠を用いて同期信号を送信する。したがって、図6は複数のTbit枠を表しているが、送信手段は1つの枠のみを用いて同期信号を送信する。
【0144】
すなわち、第1の装置がP波を検出すると、第1の装置の送信部は、P波の検出に続く第1のブロックTbit図6にブロックTbit Pと表されるブロックに、同期信号を送信するように構成される。同期信号の送信はタイムマーカーPref1 nと表される。タイムマーカー Pref1 nは、信号の送信の開始又は信号の送信の終了を示すことができる。
【0145】
第2の装置のエネルギー消費をさらに低減するために、第2の通信方式では、第2の装置の受信手段は、制御部によって、間隔を空けてアクティブ化される。同期区間208の間はアクティブ化され、その後、非アクティブ化される。
【0146】
したがって、第2の装置の同期区間208は、複数のアクティブ化時間枠「mon」と複数の非アクティブ化時間枠「moff」を含む。すなわち、同期区間208は、図6の時間軸206上に示すように、一連のブロック「m」から構成され、ブロック「m」はそれぞれ時間枠monと時間枠moffからなる。
【0147】
アクティブ化時間枠「mon」の間、受信手段はアクティブ化され、信号、特に第1の装置により送信された同期信号を受信するように構成される。
【0148】
非アクティブ化時間枠「moff」の間、受信手段は非アクティブ化される。つまりオフになり、エネルギーを消費しない。
【0149】
図6の例では、アクティブ化時間枠「mon」はいずれも同じ長さである。
【0150】
図6の例では、非アクティブ化時間枠「moff」はいずれも同じ長さである。
【0151】
各時間枠「mon」の長さは、各時間枠の「moff」の長さと同じか、又は短くてもよい。
【0152】
心周期nの同期区間208、210はそれぞれ、図5を参照して説明したように、前の心周期n-1のタイムマーカーPref2 n-1とPref1 n-1に基づいて同期される。
【0153】
さらに、第2の装置の予め定義された複数のアクティブ化時間枠「mon」は、前の心周期n-1の第2のタイムマーカーPref2 n-1及び第1のタイムマーカーPref1 n-1を用いて、第1の装置の複数の枠Tbitと同期される。
【0154】
図6に示すように、同期信号は、「mon P」で示されるアクティブ化枠の間に、第2の装置の受信部により受信される。信号の受信は、タイムマーカーPref2 nで示される。
【0155】
アクティブ化時間枠monの長さは、非アクティブ化時間枠moffの長さの0.3~50%に相当しうる。アクティブ化時間枠monの長さは、受信部の品質と、同期信号を検出するのに必要な時間により異なる。特に、アクティブ化時間枠の長さは、非アクティブ化時間枠moffの長さの5~10%に相当しうる。
【0156】
同期区間208が約350ミリ秒で、monの比率がmの10%(m=mon+moff)と考えると、同期を目的として第2の装置の受信手段のアクティブ化サイクルを改善すると、エネルギー消費量を0.1~3.5%削減できる。例えば、ブロックmが1ミリ秒のmon枠と9ミリ秒のmoff枠を含むと、ブロックmは10ミリ秒の長さに等しい可能性がある。
【0157】
有利な変形では、より多くエネルギーを節約するために、タイムマーカーPref2 nが決定され次第、当該心周期の残り時間の間、第2の装置の受信手段は非アクティブ化される。図6の例では、この結果、ブロックmon Pから心周期nの終わりまで、受信手段が非アクティブ化されている。
【0158】
図7は、フロー図300によって、第1の装置により実施された方法を初期化するステップを表す。これらの初期化のステップは、第2の装置との関係において非同期的に実行される。フロー図300の方法のステップは、図5及び図6を参照して説明された実施形態に適用される。
【0159】
図7のフロー図に示されるように、初期化302は、ステップ304における心周期のタイムマーカーの検出を含む。このタイムマーカーは、PQRST複合波のうち予め定義された心電波の検出に対応する。上で説明したように、第1の装置は実際に心電図の代表的なデータを分析するように構成される。
【0160】
タイムマーカーは、PQRST複合波のうち最初に検出可能な波であるP波の検出に対応することが好ましい。P波は、刺激(又はインパルス)が心房心筋に広がり、心房が脱分極するときに現れる。
【0161】
したがって、以下では、フロー図300のステップ304に示されているように、図7の実施形態で事前定義された波として選択されたP波の検出に言及する。ただし、P波の選択は限定的ではなく、PQRST複合波の別の波、特にR波を考慮する可能性があることを念頭に置く必要がある。
【0162】
ステップ304でP波が検出されると、ステップ306で同期信号が第2の装置に送信される。
【0163】
このように、同期信号はP波の検出の「タイミング」を表す。各心周期の同期信号は、心房、特に右心房の脱分極が検出されたことを示すのを可能にする。
【0164】
ステップ306に続くステップ308では、ステップ306で同期信号が送信された瞬間(「タイミング」)を特徴づける時間ベクトルが保存される。時間ベクトルは、英語の「First In First Out」を表すFIFOタイプのメモリに保存することができる。すなわち、同期信号の送信を示すタイムマーカーがステップ308で決定される。
【0165】
次に、ステップ310では、カウンター内で時間ベクトルは、n個の心周期に対する複数の「n」個のタイムマーカー、つまり同数の時間ベクトルがステップ312でインクリメントされたときに、それらを互いに比較して、リファレンスPref1と呼ばれるタイムマーカーをn個のタイムマーカーに基づいて定義することができるようにインクリメントされる。
【0166】
したがって、ステップ314では、同期信号の送信を示す基準タイムマーカーPref1の決定は、特に、nが3以上でありn個の心周期が規則的な心周期とみなされることを条件に、(例えば、n個の心周期にわたっての平均を計算することにより)n個の心周期におけるP波の検出の「タイミング」を考慮して行われる。周期と周期との間の最大加速度が25%を上回らない場合、心周期は規則的であるとみなされる。例えば、平均心周期(PP間隔により定義可能である)が1秒の場合、750ミリ秒以上のPP間隔は安定しているとみなされる。
【0167】
ステップ304でP波が検出されなかった場合は、ステップ316で心周期の長さがまだ終了していないことが確認される。心周期の長さは、信号の送信を示す2つの連続したタイムマーカー、又は2つの連続するP波の間の期間などによって決定できる。初期化ステップでは、予め決められた「初期化」と呼ばれるPP 間隔が使用される場合があることに留意されたい。
【0168】
本発明によれば、心周期の長さは、検出手段を介して第1の装置及び/又は第2の装置を用いて決定することも可能であり、これにより、例えば心電図の線図を得ることが可能になる。
【0169】
ステップ316で心周期の長さが終了したとみなされない場合、第1の装置はステップ304で心電図の分析を続行する。
【0170】
逆に、ステップ316で心周期の長さが終了したとみなされる場合、時間ベクトルはステップ318で再初期化され、したがって最初の初期化ステップ302に戻る。
【0171】
このように、本方法の初期化ステップの後、フロー図300のステップ314で、P波の検出に続く同期信号の送信の「タイミング」を示す基準タイムマーカーPref1が決定される。
【0172】
この基準タイムマーカーPref1は、例えば図5図6で示されている。
【0173】
図8は、図7のフロー図300の残りの部分、つまり基準タイムマーカーPref1が決定されるステップ314に続く本方法の操作ステップを表す。したがって、図8により説明される本方法のステップは、図5及び図6を参照して説明される実施形態に適用される。
【0174】
本方法の操作ステップでは、第1の装置の同期区間が使用される。このような同期区間110、210は、参照された図5図6に関連して既に説明されている。
【0175】
ステップ320で次の心周期n+1のP波が検出されると、対応する同期信号がステップ322で第2の装置に送信される。同期信号は、PQRST複合波の検出に関する生理学的情報を伝達し、同期療法の実施を可能にする。
【0176】
ステップ322の同期信号の発信に続くステップ324では、ステップ322で同期信号が送信された瞬間を特徴づける時間ベクトルが保存される。時間ベクトルは、英語の「First In First Out」を表すFIFOタイプのメモリに保存することができる。
【0177】
次に、ステップ326で、心周期n+1の同期区間110、210が終了したかどうかを検証する。そうでない場合は、同期信号を送信できるように、第1の装置は引き続きアクティブ化され、心周期n+1の間でP波が検出されるまで待機する。
【0178】
ステップ320でP波が検出されると、ステップ322で同期信号が送信される。そして、ステップ326で同期区間110、210の期間が経過したことが確認されると、第1の装置は、ステップ328において第1の装置の受信手段をアクティブ化するように構成される。
【0179】
ステップ328は、図8aを参照して以下に詳しく説明される。
【0180】
図8aに示すように、第1の装置の送信手段は、同期区間110、210の間にアクティブ化されるように構成される。第1の装置は、同期区間110、210よりも短い区間329の間にアクティブ化されるように構成された受信手段をさらに備えることができる。第1の装置の受信手段は、図8aの時間軸104、204に示すように、同期区間110、210の終了部110a、210aから始まる予め決定された遅延Δとともにアクティブ化されてもよい。
【0181】
区間329の間、第1の装置の受信手段がアクティブ化されて、第2の装置から発せられる可能性のある警告信号を検出する。第2の装置による警告信号の送信は、図9及び図10を参照して以下にさらに説明する。
【0182】
ステップ330で、第1の装置の受信手段が警告信号を受信した場合、右心房レベルへの刺激の供給を要求するために、本方法を再初期化して制御信号を送信するか(ステップ334)、あるいは、刺激の供給を要求せずに本方法を再初期化するか(ステップ336)を、ステップ332で決定する。
【0183】
ステップ338において、区間329の間に警告信号が検出されない場合、第1の装置は、同期区間110、210を用いて第2の装置との無線通信を行うことにより、準同期した状態で動作を継続する。
【0184】
したがって、図7図8に示されるフロー図300は、複数の装置からなるシステムの第1の装置により実施されるアルゴリズムを表す。
【0185】
本発明による複数の装置からなるシステムは、右心室に移植されるように構成され、アルゴリズムが実装される少なくとも1つの第2の装置を備える。第2の装置は、第1の装置から独立している。ただし、第2の装置は、第1の装置のアルゴリズムを補完するアルゴリズムを実装している。第2の装置により実装されたアルゴリズムは、図9図10に示すフロー図400を用いて以下に説明される。
【0186】
図9図10は、第2の装置により実装された方法のフロー図400を表す。
【0187】
図9のフロー図400は、第2の装置により実装された方法を初期化するステップを表す。これらの初期化ステップは、第1の装置との関係において非同期的に実行される。フロー図400の方法のステップは、図5及び図6を参照して説明された実施形態に適用できる。
【0188】
第2の装置により実行されるこれらの初期化ステップの間は、同期信号を受信する「タイミング」がまだ推定されないため、第2の装置の受信手段は継続的にアクティブ化される。
【0189】
開始にあたり、図9のフロー図に示されるように、初期化402には、ステップ404で第2の装置の受信手段をアクティブ化することが含まれる。
【0190】
ステップ406では、同期信号が第2の装置の受信手段により受信されたかどうかが分析される。
【0191】
ステップ408で同期信号が実際に受信された場合、ステップ406で同期信号が受信された瞬間(「タイミング」)を特徴づける時間ベクトルが保存される。時間ベクトルは、英語の「First In First Out」を表すFIFOタイプのメモリに保存することができる。
【0192】
次に、ステップ410では、カウンター内で時間ベクトルは、n個の心周期に対する複数の「n」個の時間ベクトルが、つまり受信した同期信号と同じ数だけ、ステップ412でインクリメントされたときに、それらを互いに比較して、リファレンスPref2と呼ばれる第2装置用のタイムマーカーを定義することができるようにインクリメントされる。
【0193】
したがって、ステップ414では、基準タイムマーカーPref2の決定は、n個の心周期、特に、nが3以上の心周期については、「n」心周期が規則的な心周期とみなされることを条件に、同期信号を受信する「タイミング」を考慮して行われる。周期と周期との間の最大加速度が25%を上回らない場合、心周期は規則的であるとみなされる。例えば、平均心周期(PP間隔で定義可能である)が1秒の場合、750ミリ秒以上のPP間隔は安定しているとみなされる。基準タイムマーカーPref2は、特にn回の心周期における同期信号の受信の「タイミング」の平均をとることにより決定できる。
【0194】
ステップ406で同期信号が受信されなかった場合は、ステップ418でこの心周期の長さがまだ終了していないことが確認される。心周期の長さは、例えば、連続する2つのP波の間の長さにより決定できる。
【0195】
したがって、第2の装置は、連続して受信される2つの同期信号に含まれる時間情報により心周期の長さを推定するように構成されてもよい。
【0196】
変形では、第2の装置は、例えば、心電図の線図を得るための検出手段と、そこから心周期の長さを推定するための検出手段とを備えてもよい。ステップ418で心周期の長さが終了したとみなされない場合、第2の装置はステップ406で同期信号の受信するまで待機し続ける。
【0197】
逆に、ステップ418で心周期の長さが終了したとみなされる場合、時間ベクトルはステップ420で再初期化され、したがってステップ406に戻る。
【0198】
こうして、本方法を初期化するステップに従い、同期信号の受信の「タイミング」を示し、心房内でのP波の検出に関する基準タイムマーカーPref2が、フロー図400のステップ414で決定される。
【0199】
このような基準タイムマーカーPref2は、例えば図5図6の時間軸106、206上に表示される。
【0200】
図10は、図9のフロー図400の残りの部分、つまり基準タイムマーカーPref2が決定されるステップ414に続く本方法の操作ステップを表す。第2の実施形態によれば、本方法の動作ステップ中、特に以下に説明するステップ422以降、第2の装置の受信手段は、継続的にアクティブ化されなくなり、間隔をあけてアクティブ化され、同期区間208の間、アクティブ化される。間隔をあけて受信手段を(同期区間208のブロックmonの間に)アクティブ化する方法については、図6の説明を参照されたい。
【0201】
図10に示されるように、ステップ414に続くステップ422では、第2の装置は、ステップ414で決定された基準タイムマーカーPref2の値に関連して同期区間208を更新及び調整する。心周期nの同期区間208は、前回の心周期n-1で求められた基準タイムマーカーPref2の値に応じて、又は以前の複数の心周期から決定された基準タイムマーカーPref2の値の平均に基づいて調整される。
【0202】
ステップ424では、図6に示されるように、同期区間208にわたって、複数のアクティブ化時間枠monの間に受信手段がアクティブ化される。
【0203】
ステップ424では、第1の装置により送信された同期信号が、第2の装置の受信手段により受信されたかどうかを分析する。
【0204】
同期信号が実際に受信された場合、ステップ426で、同期信号が受信された瞬間(「タイミング」)を特徴づける時間ベクトルが保存される。時間ベクトルは、英語の「First In First Out」を表すFIFOタイプのメモリに保存することができる。
【0205】
時間ベクトルは、ステップ414では、同期信号の受信の「タイミング」を更新するために、つまり次の心周期に使用される基準タイムマーカーPref2を更新するために使用される。したがって、基準タイムマーカーPref2は、先行する心拍の基準タイムマーカーPref2に基づいて、例えば、当該心周期nに先行する2つの心周期n-2及びn-1に基づいて計算されることにより、心拍ごとに更新される。
【0206】
ステップ424で同期信号が受信されなかった場合、ステップ428で、同期区間208の期間がまだ終了していないことが確認される。
【0207】
ステップ428で同期区間208の期間がまだ終了していない場合、第2の装置はステップ424で同期信号を受信するまで待機し続ける。
【0208】
逆に、ステップ428で、同期信号を受信することなく同期区間208の期間が終了した場合、第2の装置はステップ430で警告信号を送信するように構成される。そのために、第2の装置は送信手段も備える。
【0209】
第2の装置は同期信号が受信されない原因について無知であることに留意されたい。通信障害の場合もあれば、第1の装置によりP波が検出されなかった可能性もある。いずれの場合も、第2の装置はステップ430で警告信号を送信する。
【0210】
ステップ430については、図10aを参照して以下に詳しく説明する。
【0211】
ステップ430では、第2の装置は送信手段をアクティブ化させるように構成される。図10aに示されるように、第2の装置の送信手段は、同期区間208よりも短い区間431の間にアクティブ化するように構成される。
【0212】
警告信号は、図10aの時間軸206上に示されるように、同期区間208の終了時208bの後に、予め決定された遅延Δddとともに送信されてもよい。
【0213】
これにより、区間431の間に、第2の装置の送信手段がアクティブ化され、警告信号が第1の装置に送信される。第2の装置の送信手段をアクティブ化する区間431は、第1の装置の受信手段をアクティブ化する区間329よりも短い。
【0214】
第2の装置の送信手段をアクティブ化させるための区間431は、2つの目的で使用することができる。第1の装置はその送信手段が実際に同期信号を送信したことを把握していることから、通信の失敗(同期信号が受信されていないこと)を第1の装置に通知するためであると同時に、あるいは右心房への人工的かつ局所的な刺激を要求するためである。
【0215】
本発明の通信方法は、複数の装置からなるシステムにより提供される治療法を同期させ、著しい量のエネルギー節約を可能にする。
【0216】
しかし、このような複数の装置からなるシステムを着用する患者は、上室性頻脈性不整脈と呼ばれる心房活動が急速かつ不規則になる発作に悩まされる場合がある。この場合、心室に用いられる療法は心房活動と無関係でなければならない。
【0217】
さらに、心房性不整脈の患者は、心室(又は両心室)を心房から非同期化するために、デュアルチャンバ(又はトリプルチャンバ)療法を一時的に解除する必要がある。
【0218】
図11は、上記の心調律障害の場合に有利に適応された第1及び第2の実施形態の変形を示す。
【0219】
図11は、図5のフロー図100に基づいており、各時間軸104、106に、第1の装置と第2の装置のそれぞれの同期区間208、210に先行する、起動区間と呼ばれる区間260、262が追加されている。
【0220】
起動区間260の間、第1の装置の送信手段は、起動許可信号を第2の装置の受信手段に送信するように構成される。
【0221】
したがって、起動区間262の間、第2の装置の受信手段は、第1の装置により発された起動許可信号を受信するように構成される。
【0222】
起動区間260、262により、第1の装置と第2の装置間の通信を許可するか、又は許可しないことが可能になる。
【0223】
また、情報が第2の装置により正しく受信されたことを確認するために、第1の装置が第2の装置の送信手段により送信される受信通知信号を待つことも可能である。
【0224】
これにより、例えば心不整脈の発症時に、第2の装置の受信手段をアクティブ化させるためにエネルギーが無駄に消費されるのを防ぐことができる。
【0225】
起動区間260、262は、シングルチャンバ動作モード(すなわち、両装置が同期されない方式)からデュアルチャンバ動作モード(両装置を同期させる必要があるもの)に切り替えることができるように、より単純に「切り替え」機能を提供することもできる。
【0226】
本発明の無線通信方法及び前記方法を実施するように構成された複数の装置からなるシステムは、同期区間に対応する通信ウィンドウを患者の電気生理学的リズムに合わせて調整及び適合させることを可能にする。実際、本システムの各装置は、P波(又はPRQST複合波の他のいずれかの波)の検出に関するタイムマーカーを決定することができ、このようにして各心周期について決定されたタイムマーカーに応じて通信ウィンドウを再配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0227】
図1】本発明の第1の実施形態での複数の装置からなるシステム10である。
図2】PQRST複合波の概略的な標準図である。
図3】本発明の第2の実施形態による複数の装置からなるシステム40である。
図4】本発明の第3の実施形態による複数の装置からなるシステム60である。
図5】本発明の第1の実施形態による通信方法を模式的に説明した図である。
図6】本発明の第2の実施形態による通信方法を模式的に説明した図である。
図7】第1の装置により実施される方法を初期化するステップを説明するフロー図である。
図8】第1の装置により実施される方法の操作ステップを説明するフロー図である。
図8a図8に示すフロー図のステップである。
図9】第2の装置により実施される方法を初期化するステップを説明するフロー図である。
図10】第2の装置により実施される方法の操作ステップを説明するフロー図である。
図10a図10に示すフロー図の1ステップである。
図11】本発明の第1及び第2の実施形態の別の変型である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図8a
図9
図10
図10a
図11