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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】シリンジおよびシリンジ用外筒
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20250922BHJP
【FI】
A61M5/31 530
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022581280
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001744
(87)【国際公開番号】W WO2022172708
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2024-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021020614
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】間中 勇輝
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0316336(US,A1)
【文献】特開2014-083292(JP,A)
【文献】特開2012-254102(JP,A)
【文献】特表2008-513063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/28
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針管および前記針管が固定される外筒を備え、
前記外筒は、
底部および筒部からなる有底筒状の外筒本体部と、
前記底部に突設され、前記針管が固定される突出部と、
前記突出部に設けられ、前記針管が挿入される針管挿入部と、
前記外筒本体部の内部空間と前記針管挿入部を連通する流通路と、
を有し、
前記流通路は、
前記針管挿入部に繋がる位置に設けられ、前記針管の外径よりも小径または幅狭の小径部と、
前記外筒本体部の内部空間と前記小径部を繋ぐように設けられ、前記小径部よりも大径または幅広の大径部と、を有し、
前記小径部は、前記底部の先端側面よりも先端側に設けられ、
前記底部は、前記大径部側に向けて厚みが漸次減少するように構成され、
前記底部は、前記大径部に繋がる第1テーパ面、および前記第1テーパ面よりも外周側の第2テーパ面を後端側面に有し、
前記第1テーパ面のテーパ角度は、前記第2テーパ面のテーパ角度よりも大きいことを特徴とするシリンジ。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンジにおいて、
前記大径部は、前記小径部との間に段差を形成するように構成されることを特徴とするシリンジ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリンジにおいて、
前記大径部は、後端側に向けて拡径率または拡幅率が減少する部分を有することを特徴とするシリンジ。
【請求項4】
底部および筒部からなる有底筒状の外筒本体部と、
前記底部に突設され、針管が固定される突出部と、
前記突出部に設けられ、前記針管が挿入される針管挿入部と、
前記外筒本体部の内部空間と前記針管挿入部を連通する流通路と、
を備え、
前記流通路は、
前記針管挿入部に繋がる位置に設けられ、前記針管の外径よりも小径または幅狭の小径部と、
前記外筒本体部の内部空間と前記小径部を繋ぐように設けられ、前記小径部よりも大径または幅広の大径部と、を有し、
前記小径部は、前記底部の先端側面よりも先端側に設けられ、
前記底部は、前記大径部側に向けて厚みが漸次減少するように構成され、
前記底部は、前記大径部に繋がる第1テーパ面、および前記第1テーパ面よりも外周側の第2テーパ面を後端側面に有し、
前記第1テーパ面のテーパ角度は、前記第2テーパ面のテーパ角度よりも大きいことを特徴とするシリンジ用外筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等への薬液等の投与に使用されるシリンジおよびシリンジ用外筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワクチン投与等に使用される比較的容量の小さいシリンジには、針管が直接外筒(バレル)に固定されているものが存在する。このような針付きシリンジは、ルアーコネクタを介して針管が接続されるシリンジと比較してデッドスペースが少ないという利点を有している。
【0003】
すなわち、針付きシリンジは、外筒内に挿入された押し子(プランジャ)を押し切った状態でシリンジ内に残存する薬液等の量が少ないという利点を有しており、薬液等を無駄なく効率的に使用することが可能となっている。
【0004】
一般に、針付きシリンジにおける外筒への針管の固定は、外筒先端部に設けた孔の一部である針管挿入部に針管の後端側を挿入し、両者の間に接着剤を流し込んで接着することにより行われる。また、針管の軸方向における位置決めは、針管挿入部の後端に段差を設けることにより行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-163642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般に外筒は樹脂から構成されるところ、針管挿入部の後端部分は、外筒の軸方向および放射方向の複数方向に延在する領域であり、且つ筒状の部材の内側の放熱性の悪い領域、すなわち樹脂成形時にヒケやボイドが発生しやすい領域に位置することとなるため、成形不良が生じやすいという問題があった。
【0007】
針管挿入部の後端部分に成形不良が生じると、針管を適切に位置決めして外筒に固定することが困難となる。このため、従来の針付きシリンジは、組み立て性が悪いだけでなく、歩留りの低下により生産性も低いものとなっていた。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、生産性を高めることが可能なシリンジおよびシリンジ用外筒を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシリンジは、針管および前記針管が固定される外筒を備え、前記外筒は、底部および筒部からなる有底筒状の外筒本体部と、前記底部に突設され、前記針管が固定される突出部と、前記突出部に設けられ、前記針管が挿入される針管挿入部と、前記外筒本体部の内部空間と前記針管挿入部を連通する流通路と、を有し、前記流通路は、前記針管挿入部に繋がる位置に設けられ、前記針管の外径よりも小径または幅狭の小径部と、前記外筒本体部の内部空間と前記小径部を繋ぐように設けられ、前記小径部よりも大径または幅広の大径部と、を有し、前記小径部は、前記底部の先端側面よりも先端側に設けられ、前記底部は、前記大径部側に向けて厚みが漸次減少するように構成され、前記底部は、前記大径部に繋がる第1テーパ面、および前記第1テーパ面よりも外周側の第2テーパ面を後端側面に有し、前記第1テーパ面のテーパ角度は、前記第2テーパ面のテーパ角度よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のシリンジ用外筒は、底部および筒部からなる有底筒状の外筒本体部と、前記底部に突設され、針管が固定される突出部と、前記突出部に設けられ、前記針管が挿入される針管挿入部と、前記外筒本体部の内部空間と前記針管挿入部を連通する流通路と、を備え、前記流通路は、前記針管挿入部に繋がる位置に設けられ、前記針管の外径よりも小径または幅狭の小径部と、前記外筒本体部の内部空間と前記小径部を繋ぐように設けられ、前記小径部よりも大径または幅広の大径部と、を有し、前記小径部は、前記底部の先端側面よりも先端側に設けられ、前記底部は、前記大径部側に向けて厚みが漸次減少するように構成され、前記底部は、前記大径部に繋がる第1テーパ面、および前記第1テーパ面よりも外周側の第2テーパ面を後端側面に有し、前記第1テーパ面のテーパ角度は、前記第2テーパ面のテーパ角度よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、大径部によって小径部近傍の肉厚を適宜に低減し、樹脂成形時における小径部および針管挿入部近傍の冷却速度を向上させると共に、突出部の先端側および底部の外周側において先に温度が低下した樹脂による引っ張りの影響を抑制することが可能となるため、小径部および針管挿入部に生じるヒケやボイド等の成形不良を防止することができる。これにより、針管の外筒への固定に不具合が生じるのを防止することが可能となるため、組み立て性および歩留りを向上させ、シリンジの生産性を高めることができる。
【0012】
また、本発明において、前記大径部は、前記小径部との間に段差を形成するように構成されることが好ましい。
【0013】
これによれば、小径部の近傍をより大きく肉抜きすることが可能となるため、小径部および針管挿入部に生じるヒケやボイド等の成形不良をより効果的に防止することができる。
【0014】
また、本発明において、前記大径部は、後端側に向けて拡径率または拡幅率が減少する部分を有することが好ましい。
【0015】
これによっても、小径部の近傍をより大きく肉抜きすることが可能となるため、小径部および針管挿入部に生じるヒケやボイド等の成形不良をより効果的に防止することができる。
【0016】
また、本発明において、前記底部は、前記大径部側に向けて厚みが漸次減少するように構成される。
【0017】
これによれば、突出部と底部の接続領域における肉厚を低減し、小径部および針管挿入部に生じるヒケやボイド等の成形不良をより効果的に防止することができる。
【0018】
また、本発明において、前記底部は、前記大径部に繋がる第1テーパ面、および前記第1テーパ面よりも外周側の第2テーパ面を後端側面に有し、前記第1テーパ面のテーパ角度は、前記第2テーパ面のテーパ角度よりも大きい。
【0019】
これによれば、押し子先端のガスケットの先端面を後端側面に適切に密着させると共に、ガスケットの先端面の一部が大径部内に入り込むようにガスケットを変形させることが可能となるため、外筒内のデッドスペースをさらに削減し、人体等に投与される薬液等を効率的に使用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシリンジおよびシリンジ用外筒によれば、生産性を高めることが可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】Aは、本発明の一実施形態に係るシリンジの正面図である。Bは、図1AのI-I線断面図である。
図2】Aは、ガスケットの正面図である。Bは、図2AのII-II線断面図である。
図3】底部および突出部の周辺を拡大して示した断面図である。
図4】押し子を押し切った状態での底部および突出部周辺を拡大して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1Aは、本発明の一実施形態に係るシリンジ1の正面図であり、図1Bは、図1AのI-I線断面図である。シリンジ1は、針管10と、針管10が固定された外筒(バレル)20と、外筒20内に挿入された押し子(プランジャ)30と、押し子の先端部に取り付けられたガスケット40と、を備えている。
【0024】
針管10は、人体等に穿刺される部分である。針管10は、例えばステンレス鋼等の適宜の金属から構成されており、先端部には針先を鋭利にするための刃面11が形成されている。針管10のサイズは、特に限定されるものではなく、例えばISO9626に規定される16~33ゲージ(外径:1.7~0.2mm)のものを使用することができる。
【0025】
また、針管10の針先の形状は、特に限定されるものではなく、ランセット加工やバックカット加工が施されたものであってもよい。また、針管10は、内外径が軸方向において変化するものであってもよい。
【0026】
外筒20は、人体に投与される薬液等を内部に収容する部分である。外筒20は、例えばポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂およびポリカーボネート等、透明または半透明の適宜の樹脂から構成されている。また、外筒20は、薬液等を収容する内部空間を確定する有底円筒状の外筒本体部21と、外筒本体部21の先端部に突設された円筒状の突出部22と、を有している。
【0027】
外筒本体部21は、内外径が略一定の円筒状の筒部21aと、筒部21aの先端側を閉塞する円盤状の底部21bと、から構成されている。筒部21aの外周面21a1後端部には、外周側に向けて突出する平面視で楕円形状のフランジ部21cが設けられている。
【0028】
フランジ部21cは、シリンジ1の使用者が指(例えば、人差し指と中指)をかける部分であり、フランジ部21cの先端側面21c1には、平面視でC字状に構成された滑り止めのための突起212が設けられている。また、フランジ部21cの正面側および背面側の端面には、シリンジ1を横向きの状態で机上等に安定的に載置するための平面部21c3がそれぞれ設けられている。
【0029】
筒部21aの外周面21a1にはまた、収容した薬液等の量を表示する目盛り(図示省略)が設けられている。また、筒部21aの内周面21a2の後端部には、周方向に連続する突起21dが設けられている。この突起21dは、押し子30およびガスケット40の外筒20からの容易な脱落を防止するためのものである。
【0030】
底部21bの先端側面21b1の中央部には、突出部22が先端側に向けて突設されている。また、突出部22の周囲には、突出部22を補強するための円筒状のカラー23と、4つの台形板状のリブ24が設けられている。
【0031】
カラー23は、突出部22の基端部の外周を囲むように設けられている。リブ24は、突出部22とカラー23の間において周方向に均等な間隔で配置され、突出部22、底部21bおよびカラー23と接続されている。また、リブ24の外周側の端面24aには、針保護用のキャップ(図示省略)と係合する係合凹部24bが設けられている。
【0032】
本実施形態では、外筒20における底部21bおよび突出部22の形状を工夫することで、シリンジ1の生産性を高めるようにしている。底部21bおよび突出部22の形状の詳細については、後述する。
【0033】
押し子30は、外筒20の後端側の開口から外筒20内に挿入され、薬液等を投与する際に押圧操作されるものである。押し子30は、横断面が十字状の棒状の部材であり、例えばポリスチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等の適宜の樹脂から構成されている。押し子30の先端部には、ガスケット40と係合する基端側が小径の段付き円柱状の係合部31と、押圧操作時にガスケット40と接触して押圧するフランジ状の押圧部32と、が設けられている。また、押し子30の後端部には、押圧操作時に使用者の指(例えば、親指)による押圧力を受ける円盤状の受力部33が設けられている。
【0034】
ガスケット40は、外筒20の後端側を密閉するものであり、例えば熱可塑性エラストマー、シリコーンゴムおよびブタジエンゴム等の適宜の弾性を有する材料から構成されている。図2Aは、ガスケット40の正面図であり、図2Bは、図2AのII-II線断面図である。
【0035】
ガスケット40は、後端側が開口した有底円筒状に構成されている。ガスケット40の外周面41は、軸方向の中間部41aがくびれた形状となっており、中間部41aよりも大径に構成された先端側摺動部41bおよび後端側摺動部41cが筒部21aの内周面21a2と摺動するようになっている。
【0036】
中間部41aの外径は、筒部21aの内径よりも小さく設定されている。また、先端側摺動部41bおよび後端側摺動部41cの外径は、筒部21aの内径よりも大きく設定されている。このように、先端側摺動部41bおよび後端側摺動部41cを設けることで、密閉性と摺動性を両立させることが可能となる。
【0037】
なお、中間部41aの外径は、筒部21aの内径と略同一に設定されるものであってもよい。ガスケット40は筒部21aから受ける圧縮力によって全体的に外径が縮小するため、この場合にも中間部41aと筒部21aの内周面21a2が接触しないようにすることができる。また、先端側摺動部41bおよび後端側摺動部41cの外径は、互いに略同一に設定してもよいし、成形後の変形等を見越して異なる外径に設定してもよい。
【0038】
ガスケット40の先端面42は、円錐台状に構成されており、中央部にはドーム状の凹部42aが設けられている。本実施形態では、先端面42のテーパ角度を約160°に設定している。このように先端面42のテーパ角度を大きく設定することで、先端面42の突出量を低減し、筒部21aの外周面21a1に設けられた目盛りの視認性を高めることが可能となる。
【0039】
具体的には、薬液の投与量は、先端側摺動部41bにおける内周面21a2との接触面の先端位置に対応する目盛りを読むことで測定されるが、先端面42の突出量が大きいと当該目盛りの近傍が暗くなって読み取りが困難となる場合がある。本実施形態では、先端面の突出量を低減することで、このような不具合を防止している。
【0040】
ガスケット40の内周面43は、押し子30の係合部31と係合するよう後端側の内径が先端側よりも小径に構成されている。また、内周面43の後端部には、係合部31の挿入を容易にすべく、後端側に向けて漸次拡径するテーパ状の導入部43aが設けられている。また、ガスケット40の後端面44は、軸心と略直交する平面状に構成され、押し子30の押圧部32と安定的に接触して押圧されるようになっている。
【0041】
図3は、図1AのI-I線断面図であり、底部21bおよび突出部22の周辺を拡大して示した図である。突出部22は、基端部に後端側に向けて外径が漸次拡径するテーパ状の拡径部22aを有しており、この拡径部22aが底部21bの先端側面21b1と接続されている。
【0042】
突出部22の内部には、針管10の後端側が挿入されて固定される孔である針管挿入部25が設けられている。針管挿入部25は、突出部22の先端面22bから軸方向に沿って穿たれており、後端側の針管支持部25aおよび先端側の接着剤収容部25bから構成されている。
【0043】
針管支持部25aは、内周面25a1が針管10の外径よりもやや大きい内径で軸方向に略一定の内径に構成されると共に、段差状の後端面25a2を有している。すなわち、針管支持部25aは、内周面25a1によって針管10を外筒20の軸心に沿う姿勢に保持すると共に、後端面25a2を針管10の後端面12と当接させることによって針管10を軸方向において位置決めするように構成されている。
【0044】
接着剤収容部25bは、針管支持部25aから先端側に向けて漸次内径が拡大するテーパ状に構成されており、針管10との間に接着剤50が充填される充填空間を形成している。本実施形態では、接着剤収容部25bに周方向に連続する2つの溝25b1を設け、硬化後の接着剤50が溝25b1と係合するようにしている。このようにすることで、外筒20を構成する樹脂の接着性が悪い場合にも、針管10の外筒20からの脱落を防止することが可能となる。なお、接着剤収容部25bに適宜の表面処理を施す等して、接着性を高めるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0045】
突出部22および底部21bの内部には、針管挿入部25と外筒本体部21の内部空間を連通する流通路26が設けられている。この流通路26は、薬液等が流通する通路であり、針管挿入部25に繋がる先端側の小径部26aと、外筒本体部21の内部空間と小径部26aを繋ぐ大径部26bと、から構成されている。
【0046】
小径部26aは、針管10外径よりも小さく針管10の内径よりも大きい内径で軸方向に略一定の内径に設定されている。本実施形態では、小径部26aを設けることで、針管支持部25aに後端面25a2を形成し、針管10を軸方向に位置決めすることを可能としている。
【0047】
大径部26bは、全体的に小径部26aよりも大きい内径に構成されており、段差状の先端面26b1を有している。大径部26bはさらに、先端面26b1から後端側に向けて漸次拡径すると共に、後端側に向けて拡径率が漸次減少する第1丸み部26b2と、第1丸み部26b2から後端側に向けて僅かに漸次拡径するテーパ部26b3と、テーパ部26b3から後端側に向けて漸次拡径すると共に、後端側に向けて拡径率が漸次増大する第2丸み部26b4と、を有して構成されている。
【0048】
大径部26bは、薬液等が流通する通路としてだけではなく、外筒20の樹脂成形時に針管支持部25aおよび小径部26aならびにその近傍に生じるヒケやボイド等の成形不良を防止するための肉盗みとして機能するように構成されている。
【0049】
針管支持部25aおよび小径部26aは、樹脂成形の金型のコアピンによって成形される部分であり、突出部22の先端側および底部21bの外周側よりも放熱性が悪い領域となっている。従って、針管支持部25aおよび小径部26a周辺では、金型内に樹脂を充填した後の冷却工程において、先に温度が低下した突出部22の先端側および底部21bの外周側の樹脂から引っ張られることでヒケやボイド等が発生しやすく、針管支持部25aおよび小径部26aが適切な寸法形状に成形されない可能性がある。
【0050】
本実施形態では、大径部26bの先端面26b1(換言すれば、小径部26aの後端)が底部21bの先端側面21b1よりも先端側に位置するように小径部26aおよび大径部26bを設けることで、針管支持部25aおよび小径部26a近傍の肉厚を十分に低減し、その周辺の冷却速度を向上させると共に、底部21bの外周側の先に温度が低下した樹脂による引っ張りの影響が針管支持部25aおよび小径部26aに及ぶのを抑制することを可能としている。すなわち、針管支持部25aおよび小径部26aにおけるヒケやボイド等の成形不良の発生を効果的に防止することを可能としている。
【0051】
これにより、針管支持部25aおよび小径部26aが適切な寸法形状に成形されるため、針管を適切に位置決めして外筒に固定することが可能となる。すなわち、本実施形態のシリンジ1は、良好な組み立て性および高い歩留りを兼ね備え、生産性に優れたものとなっている。
【0052】
特に本実施形態では、小径部26aと大径部26bの間に段差を設けると共に、大径部26bに後端側に向けて拡径率が漸次減少する部分を設けることで、小径部26aの近傍を大きく肉抜きし、より効果的に成形不良を防止することを可能としている。さらに、拡径部22aおよび第2丸み部26b4を、互いに対応させて設けることで、突出部22と底部21bの接続領域における肉厚変化を低減することによっても、より効果的に成形不良を防止することを可能としている。
【0053】
底部21bの先端側面21b1は、外筒20の軸心と略直交する平面状に構成されている。一方、外筒本体部21の内部空間に面する底部21bの後端側面21b2は、外周側から軸心側(大径部26b側)に向けて軸方向の漸次厚みが減少するテーパ状に構成されている。本実施形態では、底部21bをこのように構成することで、突出部22と底部21bの接続領域における肉厚を低減し、より一層効果的に成形不良を防止することを可能としている。
【0054】
さらに、本実施形態では、底部21bの後端側面21b2を、大径部26bに繋がる第1テーパ面21b2aと、第1テーパ面21b2aよりも外周側の第2テーパ面21b2bと、の2種類のテーパ状の面から構成すると共に、第1テーパ面21b2aのテーパ角度を第2テーパ面21b2bのテーパ角度よりも大きく設定することで、ガスケット40の先端面42との密着性を高めデッドスペースを低減するようにしている。
【0055】
図4は、図1AのI-I線断面図であり、押し子30を押し切った状態での底部21bおよび突出部22の周辺を拡大して示した図である。押し子30を押し切った状態では、ガスケット40の先端面42は、底部21bの後端側面21b2と適切に密着した状態となる。
【0056】
本実施形態では、ガスケット40の先端面42の約160°のテーパ角度に対し、第1テーパ面21b2aのテーパ角度を約174°に設定し、第2テーパ面21b2bのテーパ角度を約145°に設定することで、ガスケット40の先端面42は、底部21bの後端側面21b2と適切に密着させ、両者に間に残液が生じないようにしている。
【0057】
本実施形態ではまた、テーパ角度の大きい(軸心と直交する平面に近い)第1テーパ面21b2aを設けることで、ガスケット40の先端面42の凹部42aの周縁部を大径部26b内に入り込ませ、外筒20内のデッドスペースをさらに削減するようにしている。また、大径部26bに第2丸み部26b4を設けると共に、ガスケット40の先端面42に凹部42aを設けることで、ガスケット40の先端面42が大径部26b内に入りやすいようにしている。
【0058】
また、本実施形態では、底部21bの後端側面21b2および大径部26bに、後端側に向けて突出する部分や逆向きのテーパ状に構成される部分を設けていないため、薬液等を吸引する際に生じた気泡をスムーズに小径部26aに向けて誘導し、針管10の先端から排出することが可能となっている。
【0059】
なお、針管挿入部25および流通路26の横断面の形状は、円形状に限定されず、例えば楕円形状や多角形状等、種々の形状を採用することができる。この場合、小径部26aは、軸心と直交するいずれかの方向において針管10の外径よりも幅狭に構成されるものであればよい。また、大径部26bは、軸心と直交するいずれかの方向において小径部26aの内径よりも幅広に構成されるものであればよく、軸心と直交するいずれかの方向において拡幅率が減少する部分を有することが好ましい。
【0060】
また、大径部26bの先端面26b1は、テーパ状に構成されるものであってもよいし、先端面26b1を省略して第1丸み部26b2を小径部26aに繋げるようにしてもよい。また、底部21bの後端側面21b2は、1つのテーパ面から構成されるものであってもよいし、曲面から構成されるものであってもよい。また、底部21bの先端側面21b1をテーパ状に構成するようにしてもよい。
【0061】
また、針管挿入部25から接着剤収容部25bを省略し、溶着またはインサート成形によって針管10を外筒20に固定するようにしてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のシリンジおよびシリンジ用外筒は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、シリンジ1の各部の形状および配置は、上述の実施形態において示した形状および配置に限定されるものではなく、既知の種々の形状および配置を採用することができる。
【0063】
また、上述の実施形態において示した作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したものに過ぎず、本発明による作用および効果は、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 シリンジ
10 針管
20 外筒
21 外筒本体部
21a 筒部
21b 底部
21b1 底部の先端側面
21b2 底部の後端側面
21b2a 第1テーパ面
21b2b 第2テーパ面
22 突出部
25 針管挿入部
26 流通路
26a 小径部
26b 大径部
図1
図2
図3
図4