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特許7745947分散アンテナシステム、電源システム及び送電制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】分散アンテナシステム、電源システム及び送電制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250922BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20250922BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
H02J7/00 303C
H02H3/087
H02J9/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2025503233
(86)(22)【出願日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2023007026
(87)【国際公開番号】W WO2024180597
(87)【国際公開日】2024-09-06
【審査請求日】2025-01-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、Beyond 5G 研究開発促進事業、Beyond 5G のレジリエンスを実現するネットワーク制御技術の研究開発、委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 博仁
(72)【発明者】
【氏名】岩月 勝美
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070159(JP,A)
【文献】特開2021-153297(JP,A)
【文献】特開2015-041933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 3/087
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CU及びDUと制御部を有する収容局と、前記収容局と通信線及び電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの分散局を有する分散アンテナシステムであって、
前記収容局は、
第1蓄電池と、
系統電力網から受電する系統電力受電部と、
前記第1蓄電池に蓄えられた電力又は前記系統電力受電部によって得た電力を、前記電力線を介して前記分散局へ送電する第1送電部と、
前記分散局から前記電力線を介して受電する第1受電部
を備え、
前記分散局は、
再生可能エネルギー発電を行う発電機と、
前記発電機によって生成された電力を蓄電する第2蓄電池と、
前記収容局から前記電力線を介して受電する第2受電部と、
前記第2蓄電池に蓄電された電力又は前記第2受電部によって得た電力によって動作するアンテナと、
前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記電力線を介して前記収容局へ送電する第2送電部
を備え、
前記制御部は、
第1の分散局の前記アンテナの状態に基づいて、前記第1の分散局の前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記収容局を介して第2の分散局へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電池に蓄えられた電力を前記第2の分散局へ送電するように制御する
分散アンテナシステム。
【請求項2】
前記通信線及び前記電力線は、前記収容局を中心とするスター型のネットワークトポロジーを構成するように配置される
請求項1に記載の分散アンテナシステム。
【請求項3】
前記電力線を流れる前記電力を遮断する遮断器
をさらに有し、
前記制御部は、前記電力線における漏電、短絡又は地絡の発生を検出した場合、前記電力線を流れる前記電力を遮断させるように前記遮断器を制御する
請求項1に記載の分散アンテナシステム。
【請求項4】
前記遮断器は、前記電力線と前記収容局との接点、及び前記電力線と前記分散局との接点にそれぞれ設置される
請求項3に記載の分散アンテナシステム。
【請求項5】
前記電力線を流れる前記電力の電圧を変換する電圧変換器
をさらに有する請求項1に記載の分散アンテナシステム。
【請求項6】
前記電圧変換器は、前記収容局から前記分散局へ流れる前記電力の前記電圧を降圧し、前記分散局から前記収容局へ流れる前記電力の前記電圧を昇圧する
請求項5に記載の分散アンテナシステム。
【請求項7】
前記第2蓄電池の電圧は、前記電力線の導体抵抗による電力損失に基づいて設定される
請求項1に記載の分散アンテナシステム。
【請求項8】
上位装置と、前記上位装置と電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの下位装置と、制御部を有する電源システムであって、
前記上位装置は、
第1蓄電池と、
系統電力網から受電する系統電力受電部と、
前記第1蓄電池に蓄えられた電力又は前記系統電力受電部によって得た電力を、前記電力線を介して前記下位装置へ送電する第1送電部と、
前記下位装置から前記電力線を介して受電する第1受電部
を備え、
前記下位装置は、
再生可能エネルギー発電を行う発電機と、
前記発電機によって生成された電力を蓄電する第2蓄電池と、
前記上位装置から前記電力線を介して受電する第2受電部と、
前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記電力線を介して前記上位装置へ送電する第2送電部と、
を備え、
前記制御部は、
第1の下位装置の状態に基づいて、前記第1の下位装置の前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記上位装置を介して第2の下位装置へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電池に蓄えられた電力を前記第2の下位装置へ送電するように制御する
電源システム。
【請求項9】
CU及びDUと制御部を有する収容局と、前記収容局と通信線及び電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの分散局を有する分散アンテナシステムによる送電制御方法であって、
前記収容局が、電力を蓄電する第1蓄電ステップと、
前記収容局が、系統電力網から受電する系統電力受電ステップと、
前記収容局が、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力又は前記系統電力受電ステップによって得た電力を、前記電力線を介して前記分散局へ送電する第1送電ステップと、
前記収容局が、前記分散局から前記電力線を介して受電する第1受電ステップと、
前記分散局が、再生可能エネルギー発電を行う発電ステップと、
前記分散局が、前記発電ステップによって生成された電力を蓄電する第2蓄電ステップと、
前記分散局が、前記収容局から前記電力線を介して受電する第2受電ステップと、
前記分散局が、前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力又は前記第2受電ステップによって得た電力によってアンテナを動作させるアンテナ動作ステップと、
前記分散局が、前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記電力線を介して前記収容局へ送電する第2送電ステップと、
前記制御部が、第1の分散局の前記アンテナの状態に基づいて、前記第1の分散局による前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記収容局を介して第2の分散局へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記第2の分散局へ送電するように制御する
送電制御方法。
【請求項10】
上位装置と、前記上位装置と電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの下位装置と、制御部を有する電源システムによる送電制御方法であって、
前記上位装置が、電力を蓄電する第1蓄電ステップと、
前記上位装置が、系統電力網から受電する系統電力受電ステップと、
前記上位装置が、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力又は前記系統電力受電ステップによって得た電力を、前記電力線を介して前記下位装置へ送電する第1送電ステップと、
前記上位装置が、前記下位装置から前記電力線を介して受電する第1受電ステップと、
前記下位装置が、再生可能エネルギー発電を行う発電ステップと、
前記下位装置が、前記発電ステップによって生成された電力を蓄電する第2蓄電ステップと、
前記下位装置が、前記上位装置から前記電力線を介して受電する第2受電部と、
前記下位装置が、前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記電力線を介して前記上位装置へ送電する第2送電ステップと、
前記制御部が、第1の下位装置の状態に基づいて、前記第1の下位装置による前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記上位装置を介して第2の下位装置へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記下位装置へ送電するように制御する
送電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散アンテナシステム、電源システム及び送電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の固定電話からスマートフォン等の無線通信端末への移行が進み、移動通信システムは現代社会において必要不可欠なインフラとなっている。しかしながら、東日本大震災などの発生によって、災害時における移動通信システムの脆弱性が露わになった。災害時でも比較的繋がり易かった従来の固定電話に比べて、無線通信端末は、通信トラフィックの集中による輻輳、無線通信基地局(以下、単に「基地局」ともいう。)の故障及び電源喪失等が原因となり、災害時には徐々に使用できなくなる状況が生じやすい。例えば東日本大震災の発生当時においては、移動通信システムの基地局は、系統電力網から電力を得て動作することが一般的であった。そのため、基地局は、系統電力網の停電に伴って次々と停波していくこととなった。
【0003】
このような課題に対し、例えば第5世代移動通信システム(5G)及び次世代の移動通信システムであるBeyond5G等で用いられる分散アンテナシステムでは、災害時でもRU(Radio Unit:リモートアンテナ)を自立電源によって継続的に稼働させることができる電源システムが求められている。なお、5G及びBeyond5Gで用いられる高周波数帯の電波は遮蔽物による減衰が大きいことから、アンテナを分散させて複数の角度から同時に無線通信端末と通信可能にする必要があるため分散アンテナシステムが用いられる。ここでいう分散アンテナシステムとは、CU(Central Unit:集約基地局)及びDU(Distributed Unit:リモート局)と、RUとが分離され、CU及びDUを備える収容局と当該収容局によって収容される複数のRUの各々とがフロントホールを介して接続された通信システムのことである。また、ここでいう自立電源とは、例えば再生可能エネルギー発電の発電機及び蓄電池等である。
【0004】
例えば特許文献1には、光信号を光ファイバーを介して伝送する光伝送システムに関し、リモート基地局はバッテリーを備え、外部電力が切断された場合にバッテリーにより駆動電力を自給する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-304195公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、例えばRUに自立電源が接続され、災害時等に自立電源に蓄えられた電力を有効活用することによって、少しでも長い時間、RUでの停波の発生を防ぐことが望まれる。もちろん平常時においても、再生可能エネルギー発電を最大限活用して電力を有効活用することが望まれる。しかしながら、一般的に1台のRUに接続された自立電源から得られる電力には限りがある。また、自立電源が災害等によって故障した場合には、そのRUでは電力が得られず停波が生じる可能性がある。一方で、RUに接続された自立電源が正常動作可能な状態であっても、例えばRUが故障した場合には当然停波が生じることになるが、この場合、自立電源によって生みだされる電力は全く活用されない状態となる。
【0007】
このように、従来技術による分散アンテナシステムでは、たとえ複数のRUの各々に自立電源が接続されていたとしても、停波を防ぐことができない場合や、自立電源によって発電された電力を有効活用することができない場合が生じうるという課題があった。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、電力を有効活用し、無線通信基地局の停波の発生を抑止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の一態様は、CU及びDUと制御部を有する収容局と、前記収容局と通信線及び電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの分散局を有する分散アンテナシステムであって、前記収容局は、第1蓄電池と、系統電力網から受電する系統電力受電部と、前記第1蓄電池に蓄えられた電力又は前記系統電力受電部によって得た電力を、前記電力線を介して前記分散局へ送電する第1送電部と、前記分散局から前記電力線を介して受電する第1受電部を備え、前記分散局は、再生可能エネルギー発電を行う発電機と、前記発電機によって生成された電力を蓄電する第2蓄電池と、前記収容局から前記電力線を介して受電する第2受電部と、前記第2蓄電池に蓄電された電力又は前記第2受電部によって得た電力によって動作するRUと、前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記電力線を介して前記収容局へ送電する第2送電部を備え、前記制御部は、第1の分散局の前記アンテナの状態に基づいて、前記第1の分散局の前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記収容局を介して第2の分散局へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電池に蓄えられた電力を前記第2の分散局へ送電するように制御する分散アンテナシステムである。
【0010】
[2]また、本発明の一態様は、前記通信線及び前記電力線が、前記収容局を中心とするスター型のネットワークトポロジーを構成するように配置される[1]に記載の分散アンテナシステムである。
【0011】
[3]また、本発明の一態様は、前記電力線を流れる前記電力を遮断する遮断器をさらに有し、前記制御部が、前記電力線における漏電、短絡又は地絡の発生を検出した場合、前記電力線を流れる前記電力を遮断させるように前記遮断器を制御する[1]又は[2]に記載の分散アンテナシステムである。
【0012】
[4]また、本発明の一態様は、前記遮断器が、前記電力線と前記収容局との接点、及び前記電力線と前記分散局との接点にそれぞれ設置される[3]に記載の分散アンテナシステムである。
【0013】
[5]また、本発明の一態様は、前記電力線を流れる前記電力の電圧を変換する電圧変換器をさらに有する[1]から[4]のうちいずれか1つに記載の分散アンテナシステムである。
【0014】
[6]また、本発明の一態様は、前記電圧変換器が、前記収容局から前記分散局へ流れる前記電力の前記電圧を降圧し、前記分散局から前記収容局へ流れる前記電力の前記電圧を昇圧する[5]に記載の分散アンテナシステムである。
【0015】
[7]また、本発明の一態様は、前記第2蓄電池の電圧が、前記電力線の導体抵抗による電力損失に基づいて設定される[1]から[6]のうちいずれか1つに記載の分散アンテナシステムである。
【0016】
[8]また、本発明の一態様は、上位装置と、前記上位装置と電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの下位装置と、制御部を有する電源システムであって、前記上位装置は、第1蓄電池と、系統電力網から受電する系統電力受電部と、前記第1蓄電池に蓄えられた電力又は前記系統電力受電部によって得た電力を、前記電力線を介して前記下位装置へ送電する第1送電部と、前記下位装置から前記電力線を介して受電する第1受電部を備え、前記下位装置は、再生可能エネルギー発電を行う発電機と、前記発電機によって生成された電力を蓄電する第2蓄電池と、前記上位装置から前記電力線を介して受電する第2受電部と、前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記電力線を介して前記上位装置へ送電する第2送電部とを備え、前記制御部は、第1の下位装置の状態に基づいて、前記第1の下位装置の前記第2蓄電池に蓄えられた電力を前記上位装置を介して第2の下位装置へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電池に蓄えられた電力を前記第2の下位装置へ送電するように制御する電源システムである。
【0017】
[9]また、本発明の一態様は、CU及びDUと制御部を有する収容局と、前記収容局と通信線及び電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの分散局を有する分散アンテナシステムによる送電制御方法であって、前記収容局が、電力を蓄電する第1蓄電ステップと、前記収容局が、系統電力網から受電する系統電力受電ステップと、前記収容局が、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力又は前記系統電力受電ステップによって得た電力を、前記電力線を介して前記分散局へ送電する第1送電ステップと、前記収容局が、前記分散局から前記電力線を介して受電する第1受電ステップと、前記分散局が、再生可能エネルギー発電を行う発電ステップと、前記分散局が、前記発電ステップによって生成された電力を蓄電する第2蓄電ステップと、前記分散局が、前記収容局から前記電力線を介して受電する第2受電ステップと、前記分散局が、前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力又は前記第2受電ステップによって得た電力によってアンテナを動作させるアンテナ動作ステップと、前記分散局が、前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記電力線を介して前記収容局へ送電する第2送電ステップと、前記制御部が、第1の分散局の前記アンテナの状態に基づいて、前記第1の分散局による前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記収容局を介して第2の分散局へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記第2の分散局へ送電するように制御する送電制御方法である。
【0018】
[10]また、本発明の一態様は、上位装置と、前記上位装置と電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの下位装置と、制御部を有する電源システムによる送電制御方法であって、前記上位装置が、電力を蓄電する第1蓄電ステップと、前記上位装置が、系統電力網から受電する系統電力受電ステップと、前記上位装置が、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力又は前記系統電力受電ステップによって得た電力を、前記電力線を介して前記下位装置へ送電する第1送電ステップと、前記上位装置が、前記下位装置から前記電力線を介して受電する第1受電ステップと、前記下位装置が、再生可能エネルギー発電を行う発電ステップと、前記下位装置が、前記発電ステップによって生成された電力を蓄電する第2蓄電ステップと、前記下位装置が、前記上位装置から前記電力線を介して受電する第2受電部と、前記下位装置が、前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記電力線を介して前記上位装置へ送電する第2送電ステップと、前記制御部が、第1の下位装置の状態に基づいて、前記第1の下位装置による前記第2蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記上位装置を介して第2の下位装置へ送電するように制御するか、又は、前記第1蓄電ステップによって蓄えられた電力を前記下位装置へ送電するように制御する送電制御方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、電力を有効活用し、無線通信基地局の停波の発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の分散アンテナシステムの全体構成の一例を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態における分散アンテナシステム1の全体構成を示す模式図である。
図3】本発明の第1の実施形態における複合フロントホール30のネットワーク構成を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態における複合フロントホール30の電力線の構成を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態における分散アンテナシステム1による処理の流れを示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態における複合フロントホール30の電力線の構成を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態における分散アンテナシステム2の短絡事故発生時の制御を説明するための図である。
図8】本発明の第2の実施形態における分散アンテナシステム2による送電制御を説明するための図である。
図9】本発明の第3の実施形態における複合フロントホール30の電力線の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の分散アンテナシステム、電源システム及び送電制御方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。但し、以下の第1の実施形態における分散アンテナシステム1の構成についての説明をより分かり易くするため、まず先に比較対象としての従来の分散アンテナシステムの構成の一例について説明する。
【0023】
図1は、従来の分散アンテナシステムの全体構成の一例を示す模式図である。図1に示されるように、従来の分散アンテナシステム1aは、収容局10aと、複数のリモートアンテナを含むRU(Radio Unit)20と、フロントホール30aと、系統電力網40とを含んで構成される。
【0024】
収容局10aは、CU/DU11と、場合によってはさらに発電機12と、蓄電池13とを備えている。CU/DU11は、CU(Central Unit:集約基地局)と、複数のRU20の各々に対応する複数のDU(Distributed Unit:リモート局)とによって構成される基地局をソフトウェアで仮想化した仮想基地局である。発電機12は、ソーラーパネルを備え、太陽光を電気エネルギーに変換して電力を生成する太陽光発電機である。蓄電池13は、系統電力網40から得る電力及び発電機12によって発電された電力を蓄えることができる二次電池(バッテリー)である。
【0025】
収容局10aは、フロントホール30aを介して複数のRU20の各々との間で互いに信号伝送を行う。また、収容局10は、上位装置(不図示)との間で互いに信号伝送を行う。収容局10は、系統電力網40から得た電力又は蓄電池13に蓄えられた電力を用いて動作する。
【0026】
RU20は、フロントホール30aを介して収容局10aとの間で互いに信号伝送を行う。RU20は、系統電力網40から得た電力を用いて動作する。
【0027】
フロントホール30aは、収容局10aと複数のRU20の各々とをそれぞれ接続する通信回線である。従来の分散アンテナシステム1aでは、フロントホール30aは複数の光ファイバー31aによって構成される。
【0028】
系統電力網40は、例えば電力会社が保有する商用の配電線網である。再生可能エネルギー発電機である発電機12による発電は、系統電力網40から供給される電力との連系によって成り立っている。
【0029】
図1に示されるように、従来の分散アンテナシステム1aでは、収容局10aは、系統電力網40から得た電力又は蓄電池13に蓄えられた電力を用いて動作することができる。そのため、例えば災害などによって系統電力網40からの送電が途絶え、系統電力網40から電力を得ることが出来なくなった場合でも、収容局10aは、蓄電池13に蓄えられた電力及び発電機12によって生成される電力によって、少なくとも一定期間は稼働することができる。
【0030】
一方、図1に示されるように、従来の分散アンテナシステム1aでは、RU20は、系統電力網40から得た電力のみによって動作することができる。そのため、例えば災害などによって系統電力網40からの送電が途絶え、系統電力網40から電力を得ることが出来なくなった場合、そのRU20では即座に停波することになる。このように、図1に示されるような従来の分散アンテナシステム1aの場合、たとえ収容局10に発電機12及び蓄電池13が備えられていたとしても、系統電力網40からRU20への電力供給が途絶えた場合には停波が生じてしまうことになる。
【0031】
[分散アンテナシステムの全体構成]
以下、本実施形態における分散アンテナシステム1の全体構成について説明する。
【0032】
図2は、本発明の第1の実施形態における分散アンテナシステム1の全体構成を示す模式図である。図2に示されるように、分散アンテナシステム1は、収容局10と、複数のRU20と、複数の自立電源21と、複合フロントホール30と、系統電力網40とを含んで構成される。RU20と自立電源21とによって分散局が構成される。
【0033】
収容局10は、CU/DU11と、発電機12と、蓄電池13(第1蓄電池)と、制御部14とを備えている。
【0034】
CU/DU11は、例えば、CUと、複数のRUの各々に対応する複数のDUとによって構成される基地局をソフトウェアで仮想化した仮想基地局装置である。なお、CU/DU11は、収容局10の外部に設置された装置であってもよい。
【0035】
発電機12は、例えばソーラーパネルを備え、太陽光を電気エネルギーに変換して電力を生成する太陽光発電機である。なお、発電機12は、再生可能エネルギー発電機の一例である。すなわち、発電機12として、太陽光発電機の代わりに、例えば、風力発電機又は水力発電機等が用いられてもよい。ソーラーパネルは、例えば、収容局10の局舎の屋上等に設置される。なお、ソーラーパネルは、収容局10から離れた場所に設置されていてもよい。
【0036】
蓄電池13(第1蓄電池)は、系統電力受電部によって系統電力網40から得る電力及び発電機12によって発電された電力を蓄える二次電池(バッテリー)である。
【0037】
収容局10は、複合フロントホール30を介して複数のRU20の各々との間で互いに信号伝送を行う。また、収容局10は、上位装置(不図示)との間で互いに信号伝送を行う。収容局10は、系統電力網40から得た電力又は蓄電池13に蓄えられた電力を用いて動作する。
【0038】
例えば、収容局10は、平常時には主として系統電力網40から得られる電力を用いて動作し、系統電力網40から電力が得られなくなった場合や、系統電力網40から得られる電力だけでは不足する場合等に、発電機12によって発電されて蓄電池13に蓄えられた電力を補助的に用いて動作するような構成であってもよい。
【0039】
制御部14は、本実施形態における分散アンテナシステム1の送電制御に関する処理を制御する。制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。なお、送電制御に関する処理については後に説明する。
【0040】
RU20は、複合フロントホール30を介して収容局10との間で互いに信号伝送を行う。また、図2に示されるように、本実施形態における分散アンテナシステム1の複合フロントホール30は、前述の図1に示される従来の分散アンテナシステム1aのフロントホール30aとは構成が異なっている。具体的には、複合フロントホール30は、収容局10と複数のRU20の各々とをそれぞれ接続し信号伝送に用いられる通信回線である光ファイバーと、電力線である電源ケーブルとが併設された、複数の複合ケーブル31によって構成される。
【0041】
また、図2に示されるように、本実施形態における分散アンテナシステム1では、複数のRU20の各々と複合フロントホール30との間に、自立電源21がそれぞれ設置されている。自立電源21は、少なくとも発電機22と、蓄電池23(第2蓄電池)とを含んで構成される。
【0042】
発電機22は、例えばソーラーパネルを備え、太陽光を電気エネルギーに変換して電力を生成する太陽光発電機である。なお、発電機22は、再生可能エネルギー発電機の一例である。すなわち、発電機22として、太陽光発電機の代わりに、例えば、風力発電機又は水力発電機等が用いられてもよい。ソーラーパネルは、例えば、RU20の近傍の地面等に設置される。なお、ソーラーパネルは、RU20から離れた場所に設置されていてもよい。
【0043】
蓄電池23(第2蓄電池)は、発電機22によって発電された電力及び第2受電部によって収容局10から得る電力を蓄える二次電池(バッテリー)である。
【0044】
RU20は、収容局10から送られる電力、又は、蓄電池23に蓄えられた電力を用いて動作する。例えば、RU20は、平常時には主として収容局10から得られる電力を用いて動作し、収容局10から電力が得られなくなった場合や、収容局10から得られる電力だけでは不足する場合等に、発電機22によって発電されて蓄電池13に蓄えられた電力を補助的に用いて動作するような構成であってもよい。
【0045】
系統電力網40は、例えば電力会社が運用する商用の配電線網である。なお、再生可能エネルギー発電機である発電機12による発電は、系統電力網40から供給される電力との連携によって成り立っている。
【0046】
前述の通り、本実施形態における分散アンテナシステム1の複合フロントホール30は、電力線を含む複合ケーブル31によって構成されている。そのため、収容局10とRU20側の自立電源21との間において互いに電力供給を行うこと(以下、「電力融通」ともいう。)ができる。収容局10の制御部14は、収容局10とRU20側の自立電源21との間で行われる電力融通に関する処理を制御する。
【0047】
例えば、本実施形態における分散アンテナシステム1では、災害などによって系統電力網40からの送電が途絶え、系統電力網40から電力を得ることが出来なくなった場合であっても、収容局10は、蓄電池13に蓄えられた電力及び発電機12によって生成される電力によって、少なくとも一定期間は継続して稼働することができる。また、この場合、RU20も、蓄電池23に蓄えられた電力及び発電機22によって生成される電力によって、少なくとも一定期間は継続して稼働することができる。
【0048】
また、この場合、いずれかのRU20又は収容局10に供給される電力が不足する状況に陥ったとしても、制御部14は、複数のRU20及び収容局10の間で互いに電力を融通するように制御することにより、少なくとも一定期間は継続して、電力不足の状態になることを回避させることができる。
【0049】
また、さらに災害などによっていずれかのRU20が故障した場合、かつ当該RU20に接続されている自立電源21は使用可能な状態である場合には、例えば、制御部14は、当該RU20に接続された蓄電池23に蓄えられた電力、及び当該RU20に接続された発電機22によって生成される電力を、第2送電部によって収容局10へ送るように制御する。そして、制御部14は、収容局10へ送られ、第1受電部によって得られた電力を、さらに第1送電部によって別のRU20へ供給する、あるいは、収容局10の蓄電池13に蓄電する等、必要に応じて有効活用するように制御する。
【0050】
また、災害などによっていずれかのRU20に接続された自立電源21が故障した場合(あるいは、蓄電量が所定値未満となった場合)、かつ、当該RU20が稼働可能な状態である場合には、例えば、制御部14は、収容局10の蓄電池13(第1蓄電池)に蓄えられた電力、又は別のRU20に接続された蓄電池23(第2蓄電池)に蓄えられた電力を、故障した(あるいは、蓄電量が所定値未満となった)自立電源21に接続されたRU20へ供給するように制御する。
【0051】
このように、本実施形態における分散アンテナシステム1は、災害等によってRU20や自立電源21が故障した場合に、複数のRU20及び収容局10の間で互いに電力を融通するように制御を行うため、いずれかのRU20において停波が生じることを防ぐことができる。また、これにより、本実施形態における分散アンテナシステム1は、RU20の故障によって使用されなくなった電力を、別のRU20又は収容局10で使用できるように送電を制御するため、電力の有効活用を図ることができる。
【0052】
[複合フロントホールのネットワーク構成]
図3は、本発明の第1の実施形態における複合フロントホール30のネットワーク構成を示す図である。図3に示されるように、複合フロントホール30は、収容局10を中心とするスター型のネットワークトポロジーになっている。このような複合フロントホール30のネットワーク構成を有することで、本実施形態における分散アンテナシステム1は、同一の収容局10によって収容されている複数のRU20の間で互いに電力の融通を行うことができる。
【0053】
なお、複合フロントホール30のネットワークトポロジーは必ずしもスター型に限られるものではなく、例えばツリー型、バス型又はリング型等であっても構わない。但し、収容局10と複数のRU20とによって構成される本実施形態の分散アンテナシステム1の場合には、スター型のネットワークトポロジーが最も適していると考えられる。
【0054】
同一の収容局10によって収容されている複数のRU20の間で互いに電力融通を行うことができることによって、本実施形態における分散アンテナシステム1は、例えば災害等によって機能しなくなったRU20が発生したとしても、当該RU20に接続された自立電源21が正常動作する状態であるならば、当該自立電源21によって生成される電力及び蓄えられた電力を別のRU20へ送ることができる。これにより、RU20が故障しても、自立電源21によって生成された電力は有効活用される。
【0055】
[複合フロントホールの電力線の構成]
図4は、本発明の第1の実施形態における複合フロントホール30の電力線の構成を示す図である。図4に示されるように、収容局10とRU20との間を繋ぐ電源ケーブルは2本1組の電力線からなる。なお、電源ケーブルの構成はこのような構成に限られるものではなく、例えば3芯ケーブル等であってもよい。
【0056】
また、複数の自立電源21の各々は、充電制御器24と、異常検知制御部25とを備えている。
【0057】
充電制御器24は、発電機22によって発電された電力を適切に蓄電池23に充電させるための制御を行う。例えば、充電制御器24は、蓄電池23が満充電である場合に、過充電による蓄電池23の消耗を防ぐため、充電を停止させる制御を行う。
【0058】
異常検知制御部25は、例えば収容局10の制御部14と複合フロントホール30の通信回線(光ファイバー)を介して互いに信号伝送を行い、電力融通のための制御を行う。例えば、異常検知制御部25は、定期的に、RU20の稼働状態(例えば正常又は異常等の状態)、蓄電池23の蓄電状態、及び発電機22の稼働状態(例えば正常又は異常等の状態)等を検出し、検出結果を複合フロントホール30の通信回線を介して収容局10の制御部14へ送信する。
【0059】
また、例えば、異常検知制御部25は、収容局10の制御部14からの要求に応じて、蓄電池23に蓄えられた電力、あるいは発電機22によって生成される電力を収容局10へ送出する。この場合、例えば、収容局10の制御部14は、RU20が故障などによって稼働していないこと(異常状態であること)を示す信号を異常検知制御部25から受信した場合、当該RU20に接続された自立電源21の蓄電池23に蓄えられている電力を収容局10へ送出することを要求するための信号を複合フロントホール30の通信回線を介して異常検知制御部25へ送信する。
【0060】
また、例えば、異常検知制御部25は、蓄電池23が稼働していない状態である場合や、蓄電量が所定の値未満である場合には、電力供給を要求するための信号を複合フロントホール30の通信回線を介して収容局10の制御部14へ送信するようにしてもよい。この場合、例えば、収容局10の制御部14は、異常検知制御部25から送信された当該信号を受信すると、別のRU20に接続された自立電源21の蓄電池23に蓄えられた電力、あるいは自装置の蓄電池13に蓄えられた電力を、要求元の異常検知制御部25に対応する分散局へ送るように制御を行う。このようにして電力融通がなされる。
【0061】
[分散アンテナシステムの動作]
以下、分散アンテナシステム1の電力融通に係る動作の一例について説明する。図5は、本発明の第1の実施形態における分散アンテナシステム1による処理の流れを示す図である。なお、図5に記載の処理の流れはあくまで一例であり、必ずしも以下に説明するステップで処理が行われることに限定されるものではない。
【0062】
なお、説明を容易にするため、図5に示す処理の流れでは、収容局10と2台のRU20のみが存在する場合を例としている。これら2台のRU20は、図5においては、RU#1及びRU#2と記載している。また、図5においては、RU#1側に備えられた異常検知制御部25及び蓄電池23はそれぞれ異常検知制御部#1及び蓄電池#1と記載し、RU#2側に備えられた異常検知制御部25及び蓄電池23はそれぞれ異常検知制御部#2及び蓄電池#2と記載している。
【0063】
例えば災害等の発生により系統電力網40からの送電が途絶えた場合、収容局10の制御部14は、系統電力網40からの送電が停止されたことを検出する(ステップS001)。また、例えば災害等の発生によりRU#1に故障が生じた場合、RU#1側の異常検知制御部#1は、RU#1の異常を検出する(ステップS002)。また、ここでは、RU#1側の異常検知制御部#1は、蓄電池#1については正常に動作していることを検出したものとする。
【0064】
次に、RU#1側の異常検知制御部#1は、RU#1の状態が異常であり、蓄電池#1の状態は正常であることを示す信号を、複合フロントホール30の光ファイバーを介して収容局10の制御部14へ送信する(ステップS003)。
【0065】
なお、本実施形態では、上記の通り、RU20側の異常検知制御部25が、RU20の異常を示す信号を収容局10へ送信する構成であるものとしたが、収容局10がRU20の異常を認識する方法はこれに限られるものではない。例えば、収容局10は、RU20から定期的に送信される信号が届かなくなったことに基づいてRU20の異常を認識する構成であってもよい。
【0066】
次に、収容局10の制御部14は、RU#1側の異常検知制御部#1から送信された信号を受信すると、蓄電池#1に蓄えられた電力を自装置へ送電することを要求するための信号を、複合フロントホール30の光ファイバーを介してRU#1側の異常検知制御部#1へ送信する(ステップS004)。
【0067】
次に、RU#1側の異常検知制御部#1は、収容局10の制御部14から送信された信号を受信すると、蓄電池#1に蓄えられた電力を複合フロントホール30の電力線を介して収容局10へ送電することを開始する制御を行う(ステップS005)。次に、収容局10の制御部14は、RU#1側の蓄電池#1から送出された電力を受電すると、当該電力を蓄電池13に蓄電する制御を行う(ステップS006)。
【0068】
次に、収容局10の制御部14は、蓄電池13に蓄えられた電力を、必要に応じてRU#1とは別のRU20であるRU#2側の自立電源21へ送信することを開始する制御を行う(ステップS007)。次に、RU#2側の異常検知制御部#2は、収容局10から送出された電力を受電すると、当該電力を蓄電池#2に蓄電する制御を行う(ステップS008)。以上で、図5に示される分散アンテナシステム1による処理が終了する。
【0069】
なお、収容局10の制御部14は、RU20の各々に接続された自立電源21の蓄電池23の蓄電状態(例えば、充電率等)等を定期的に取得して、常時管理するようにしてもよい。さらに、電力融通が行われるタイミングは、災害等による機器の故障時のみに限られるものではなく、例えば、収容局10の制御部14は、平時であっても、充電率の高い蓄電池23から充電率の低い蓄電池23へ送電を行うように制御したり、通信量の少ないRU20に接続された自立電源21の蓄電池23から通信量の多いRU20に接続された自立電源21の蓄電池23へ送電を行うように制御したりしてもよい。
【0070】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態における分散アンテナシステム1は、光ファイバーと電力線とを含む複合ケーブル31によって構成される複合フロントホール30を有する。すなわち、本実施形態における分散アンテナシステム1の複合フロントホール30は、信号伝送だけでなく、収容局10とRU20側の自立電源21との間において互いに電力融通を行うことができる構成を備えている。このような構成を備えることにより、本発明の第1の実施形態における分散アンテナシステム1では、いずれかのRU20又は収容局10に供給される電力が不足する状況に陥ったとしても、制御部14が複数のRU20及び収容局10の間で互いに電力を融通するように制御することによって、少なくとも一定期間は電力不足となる状態を回避させることができる。
【0071】
また、さらに災害などによっていずれかのRU20が故障した場合、かつ、故障した当該RU20に接続されている自立電源21は使用可能な状態である場合には、例えば、制御部14は、故障したRU20に接続された自立電源21の蓄電池23に蓄えられた電力、及び故障したRU20に接続された自立電源21の発電機22によって生成される電力を、収容局10へ送るように制御する。そして、制御部14は、収容局10へ送られた電力を、別のRU20へ供給する、あるいは、収容局10の蓄電池13に蓄電する等、必要に応じて有効活用するように制御する。
【0072】
このように、本実施形態における分散アンテナシステム1は、災害等によっていずれかのRU20やRU20に接続された自立電源21が故障した場合に、複数のRU20及び収容局10の間で互いに電力を融通するように制御を行うため、いずれかのRU20において停波が生じることを防ぐことができる。また、このような構成を備えることで、本実施形態における分散アンテナシステム1は、故障したRU20に接続された自立電源21によって生成される電力及び蓄えられた電力を、別のRU20又は収容局10で使用できるように電力融通の制御を行うため、電力の有効活用を図ることができる。
【0073】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。一般的に、電源システムの制御を容易にするためには、当該電源システムにある程度の電気的慣性力を保持させることが望ましい。
【0074】
その反面、災害や事故等の発生によって短絡あるいは地絡が起きた場合には、電気的慣性力が大きいほど大電流が流れ、火災等の二次的な事故の発生に繋がる可能性がある。そのため、漏電検知等に応じて配線を遮断するサーキットブレーカー(CB)がフロントホールに設置されることが望ましい。このような背景の下で、以下に説明する第2の実施形態における分散アンテナシステム(以下、「分散アンテナシステム2」という。)は、複合フロントホール30にCBが設置された構成である。
【0075】
なお、第2の実施形態における分散アンテナシステム2の全体構成は、前述の図2に示される第1の実施形態における分散アンテナシステム1の全体構成と同様であるため、説明を省略する。また、第2の実施形態における複合フロントホール30のネットワーク構成は、前述の図3に示される第1の実施形態における複合フロントホール30のネットワーク構成と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
[複合フロントホールの電力線の構成]
図6は、本発明の第2の実施形態における複合フロントホール30の電力線の構成を示す図である。図6に示されるように、収容局10とRU20との間を繋ぐ電源ケーブルは2本1組の電力線からなる。なお、前述の通り、電源ケーブルの構成はこのような構成に限られるものではなく、例えば3芯ケーブル等であってもよい。また、複数の自立電源21の各々は、異常検知制御部25を備えている。異常検知制御部25は、例えば収容局10の制御部14と複合フロントホール30の通信回線を介して互いに信号伝送を行い、電力融通のための制御を行う。
【0077】
なお、複合フロントホール30に電気的慣性力を発現させるためには、例えば、複合フロントホール30の基線電圧と端子電圧が等しくなるようにセルを構成した蓄電池13及び蓄電池23を、当該複合フロントホール30に直結すればよい。また、複合フロントホール30の基線電圧は、+48ボルト程度あるいは-48ボルト程度であることが望ましい。なぜならば、一般的な複合ケーブルやCV(Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath)ケーブルの電線芯線の太さを鑑みて複合フロントホール30の長さを数百メートル程度と仮定すれば、導体抵抗による電力損失を考慮すると、およそ±48ボルト程度の基線電圧であることが妥当であると考えられるからである。
【0078】
なお、-48ボルト(すなわち、正極接地)とする理由は、例えば日本における従来の固定電話と同様に、地絡が生じた場合の金属腐食を防止するためである。また、例えば日本においては、固定電話等の従来の通信機器でも-48ボルトの基線電圧に設定されていることから、これら従来のシステムとの整合性を図ることが望ましい点もその理由の一つである。なお、直流48ボルト程度の基線電圧であるならば、万が一感電したとても死には至らないという点もその理由の1つである。例えば400ボルト等、より電圧が高くなるほど送電損失はより小さくなるが、一般的に収容局からリモートアンテナまでの距離は高々数百メートル程度であることが想定されることから、送電損失より安全性を重視し、より低い基線電圧である±48ボルト程度(もちろん、±50ボルト程度、±60ボルト程度であってもよい。)の基線電圧であることが望ましい。
【0079】
また、図6に示されるように、本実施形態における分散アンテナシステム2では、例えば、複合フロントホール30の電力線と収容局10との接続箇所、及び複合フロントホール30の電力線とRU20側の自立電源21との接続箇所に、それぞれCB50が設置される。
【0080】
図7は、本発明の第2の実施形態における分散アンテナシステム2の短絡発生時の制御を説明するための図である。例えば、図7に示される2つのRU20のうち下段に記載されたRU20と収容局10との間を結ぶ電力線において短絡が発生したものとする。この場合、本実施形態における分散アンテナシステム2は、漏電が発生した電力線の両端に設置されているCB50のスイッチをそれぞれオフの状態に切り替えるように制御する。これにより、大電流が流れることが防止される。
【0081】
なお、短絡や地絡等による漏電の発生の検知及びCB50のオン/オフの制御は、例えば、収容局10の制御部14及びRU20側の異常検知制御部25によって行われる。なお、CB50が、漏電の発生の検知することができる構成を備えていてもよい。
【0082】
なお、本実施形態における分散アンテナシステム2においてRU20が故障した場合における電力融通の制御を図8に示す。例えば、図8に示される2つのRU20のうち上段に記載されたRU20が故障したとする。そして、上段のRU20側の異常検知制御部25は、上段のRU20の異常を検出するとともに、蓄電池23については正常に動作していることを検出したものとする。上段のRU20側の異常検知制御部25は、上段のRU20の状態が異常であり、蓄電池23の状態は正常であることを示す信号を収容局10の制御部14へ送信する。
【0083】
収容局10の制御部14は、上段のRU20側の異常検知制御部25から送信された信号を受信すると、蓄電池23に蓄えられた電力を自装置へ送電することを要求するための信号を上段のRU20側の異常検知制御部25へ送信する。上段のRU20側の異常検知制御部25は、収容局10の制御部14から送信された信号を受信すると、蓄電池23に蓄えられた電力を収容局10へ送電する制御を行う。収容局10の制御部14は、上段のRU20側の蓄電池23から送出された電力を受電すると、当該電力を蓄電池13に蓄電する制御を行う。
【0084】
収容局10の制御部14は、蓄電池13に蓄えられた電力を、必要に応じて、図8に示される2つのRU20のうち下段に記載されたRU20側の自立電源21へ送信することを開始する制御を行う。下段のRU20側の異常検知制御部25は、収容局10から送出された電力を受電すると、当該電力を蓄電池23に蓄電する制御を行う。
【0085】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態における分散アンテナシステム2は、例えば、複合フロントホール30の電力線と収容局10との接続箇所、及び複合フロントホール30の電力線とRU20側の自立電源21との接続箇所に、それぞれ漏電検知等に応じて配線を遮断するCB50を備える。このような構成を備えることで、分散アンテナシステム2は、災害や事故等の発生によって短絡あるいは地絡が起きた場合であっても、大電流が流れることを防ぐことができ、火災等の二次的な事故の発生を防止することができる。
【0086】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。一般的に、フロントホールの長さがおよそ1キロメートル以上に及ぶ場合には、送電損失をより少なくするため、送電電圧をより高く設定することが考えられる。このような背景の下で、以下に説明する第3の実施形態における分散アンテナシステム(以下、「分散アンテナシステム3」という。)は、双方向のDC/DCコンバータを介して蓄電池とフロントホールとを接続することにより、蓄電池の端子電圧とフロントホールの基線電圧とを異ならせることができる構成を備える。これにより、本実施形態における分散アンテナシステム3は、例えば、蓄電池の端子電圧よりフロントホールの基線電圧をより高くする設定することが可能になる。
【0087】
なお、第3の実施形態における分散アンテナシステム3の全体構成は、前述の図2に示される第1の実施形態における分散アンテナシステム1の全体構成と同様であるため、説明を省略する。また、第3の実施形態における複合フロントホール30のネットワーク構成は、前述の図3に示される第1の実施形態における複合フロントホール30のネットワーク構成と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
[複合フロントホールの電力線の構成]
図9は、本発明の第3の実施形態における複合フロントホール30の電力線の構成を示す図である。図9に示されるように、収容局10とRU20との間を繋ぐ電源ケーブルは2本1組の電力線からなる。また、複数の自立電源21の各々は、異常検知制御部25を備えている。異常検知制御部25は、例えば収容局10の制御部14と複合フロントホール30の通信回線を介して互いに信号伝送を行い、電力融通のための制御を行う。
【0089】
また、図9に示されるように、本実施形態における分散アンテナシステム3では、複合フロントホール30の電力線とRU20側の自立電源21との接続箇所にDC/DCコンバータ51が設置される。DC/DCコンバータ51は、直流電圧を別の直流電圧に変換する。例えば、本実施形態における分散アンテナシステム3では、収容局10の蓄電池13の電圧は400ボルトであり、RU20側の蓄電池23の電圧は48ボルトである。DC/DCコンバータ51は、これら2つの電圧の変換を相互に行う。
【0090】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態における分散アンテナシステム3は、収容局10の蓄電池13の電圧とRU20側の蓄電池23の電圧と間の変換を相互に行うDC/DCコンバータ51を備えることで、蓄電池の端子電圧とフロントホールの基線電圧とが互いに異なるように設定することができる。これにより、分散アンテナシステム3は、前述の実施形態と比べて、例えば送電電圧をより高く設定することができ、たとえフロントホールの長さが1キロメートル以上に及ぶ場合であっても、送電損失をより少なくすることができる。
【0091】
上述した実施形態によれば、分散アンテナシステムは、CU及びDUと制御部を有する収容局と、当該収容局と通信線及び電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの分散局とを有する。例えば、分散アンテナシステムは、実施形態における分散アンテナシステム1~3であり、収容局は、実施形態における収容局10であり、通信線は、実施形態における複合フロントホール30の光ファイバーであり、電力線は、実施形態における複合フロントホール30の電力ケーブルであり、分散局は、実施形態におけるRU20であり、制御部は、実施形態における制御部14及び異常検知制御部25である。
【0092】
上記の収容局は、第1蓄電池と、系統電力受電部と、第1送電部と、第1受電部を備える。例えば、第1蓄電池は、実施形態における蓄電池13である。系統電力受電部は、系統電力網から受電する。第1送電部は、第1蓄電池に蓄えられた電力又は系統電力受電部によって得た電力を電力線を介して分散局へ送電する。第1受電部は、分散局から電力線を介して受電する。上記の分散局は、発電機と、第2蓄電池と、第2受電部と、アンテナと、第2送電部を備える。例えば、発電機は、実施形態における発電機22であり、第2蓄電池は、実施形態における蓄電池23であり、アンテナは、実施形態におけるRU20のリモートアンテナである。発電機は、再生可能エネルギー発電を行う。第2蓄電池は、発電機によって生成された電力を蓄電する。第2受電部は、収容局から電力線を介して受電する。アンテナは、第2蓄電池に蓄電された電力又は第2受電部によって得た電力によって動作する。第2送電部は、第2蓄電池に蓄えられた電力を電力線を介して収容局へ送電する。上記の制御部は、第1の分散局のアンテナの状態に基づいて、当該第1の分散局の第2蓄電池に蓄えられた電力を、収容局を介して第2の分散局へ送電するように制御するか、又は、第1蓄電池に蓄えられた電力を第2の分散局へ送電するように制御する。
【0093】
なお、上記の分散アンテナシステムにおいて、通信線及び電力線は、収容局を中心とするスター型のネットワークトポロジーを構成するように配置されていてもよい。
【0094】
なお、上記の分散アンテナシステムは、電力線を流れる電力を遮断する遮断器をさらに有していてもよい。例えば、遮断器は、実施形態におけるCB50である。この場合、制御部は、電力線における漏電、短絡又は地絡の発生を検出した場合に、電力線を流れる電力を遮断させるように遮断器を制御する。
【0095】
なお、上記の分散アンテナシステムにおいて、遮断器は、電力線と収容局との接点、及び電力線と分散局との接点にそれぞれ設置されるようにしてもよい。
【0096】
なお、上記の分散アンテナシステムは、電力線を流れる電力の電圧を変換する電圧変換器をさらに有していてもよい。例えば、電圧変換器は、実施形態におけるDC/DCコンバータ51である。
【0097】
なお、上記の分散アンテナシステムにおいて、電圧変換器は、収容局から分散局へ流れる電力の電圧を降圧し、分散局から収容局へ流れる電力の電圧を昇圧するようにしてもよい。
【0098】
なお、上記の分散アンテナシステムにおいて、第2蓄電池の電圧は、電力線の導体抵抗による電力損失に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0099】
なお、上記の分散アンテナシステムにおいて、第2蓄電池の電圧は、48ボルト程度又は-48ボルト程度であってもよい。
【0100】
また、上述した実施形態によれば、電源システムは、上位装置と、当該上位装置と電力線によってそれぞれ接続された少なくとも1つの下位装置と、制御部を有する。例えば、電源システムは、実施形態における分散アンテナシステム1~3であり、上位装置は、実施形態における収容局10であり、電力線は、実施形態における複合フロントホール30の電力ケーブルであり、下位装置は、実施形態におけるRU20であり、制御部は、実施形態における制御部14及び異常検知制御部25である。
【0101】
上記の上位装置は、第1蓄電池と、系統電力受電部と、第1送電部と、第1受電部を備える。例えば、第1蓄電池は、実施形態における蓄電池13である。系統電力受電部は、系統電力網から受電する。第1送電部は、第1蓄電池に蓄えられた電力又は系統電力受電部によって得た電力を電力線を介して下位装置へ送電する。第1受電部は、下位装置から電力線を介して受電する。上記の下位装置は、発電機と、第2蓄電池と、第2受電部と、アンテナと、第2送電部とを備える。例えば、発電機は、実施形態における発電機22であり、第2蓄電池は、実施形態における蓄電池23であり、アンテナは、実施形態におけるRU20のリモートアンテナである。発電機は、再生可能エネルギー発電を行う。第2蓄電池は、発電機によって生成された電力を蓄電する。第2受電部は、上位装置から電力線を介して受電する。アンテナは、第2蓄電池に蓄電された電力又は第2受電部によって得た電力によって動作する。第2送電部は、第2蓄電池に蓄えられた電力を電力線を介して上位装置へ送電する。上記の制御部は、第1の下位装置の状態に基づいて、当該第1の下位装置の第2蓄電池に蓄えられた電力を、上位装置を介して第2の下位装置へ送電するように制御するか、又は、第1蓄電池に蓄えられた電力を第2の下位装置へ送電するように制御する。
【0102】
上述した各実施形態における制御部及び充電制御器の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0103】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1,1a,2,3…分散アンテナシステム,10,10a…収容局,11…CU/DU,12…発電機,13…蓄電池,14…制御部,10…収容局,20…RU,21…自立電源,22…発電機,23…蓄電池,24…充電制御器,25…異常検知制御部,30…複合フロントホール,30a…フロントホール,31…複合ケーブル,31a…光ファイバー,40…系統電力網,50…CB,51…DC/DCコンバータ
図1
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図9