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  • 特許-搬送用ロボットハンド及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】搬送用ロボットハンド及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20250922BHJP
   B25J 17/02 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B25J17/02 A
B25J17/02 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2025058649
(22)【出願日】2025-03-31
【審査請求日】2025-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】YUSHIN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝弘
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-293681(JP,A)
【文献】特開2017-154248(JP,A)
【文献】特開2025-012718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
B25J 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの先端部に、袋状ワークを吸着する吸着部と、前記袋状ワークに対する前記吸着部の吸着姿勢を変更する姿勢変更機構を備えた搬送用ロボットハンドであって、
前記姿勢変更機構は、
一端が前記吸着部の吸着部本体に自在継手を介して接続され他端が前記ロボットアームの前記先端部に設けられた支持構造部に対して自在継手を介してシリンダが接続されたエアシリンダと、
前記エアシリンダの周囲に、前記エアシリンダとの間に径方向に間隔をあけ、前記エアシリンダの周方向に間隔をあけ且つ相互に前記径方向に対向しないように配置された2以上の直動ガイドと、
前記2以上の直動ガイドと前記吸着部本体との間にそれぞれ配置された2以上の可動連結構造とを備え、
前記2以上の可動連結構造は、それぞれ、対応する前記直動ガイドに添って移動可能な移動部材と、前記移動部材に一端が第1の関節により回動可能且つ揺動可能に連結され他端が前記吸着部本体に第2の関節により回動可能且つ揺動可能に連結された連結部材と、前記移動部材と当接して前記移動部材の上方向への移動を規制するストッパを備えており、前記2以上の可動連結構造の2以上の前記第2の関節は前記周方向に間隔をあけ且つ相互に前記径方向に対向しないように前記吸着部本体に取り付けられており、
前記2以上の直動ガイドと前記2以上の可動連結構造は、前記移動部材が前記ストッパに当接している状態では前記2以上の可動連結構造がロック状態になり、前記移動部材が前記ストッパから離れると前記2以上の可動連結構造が非ロック状態になって前記エアシリンダのシリンダロッドの先端部の上下方向への動き及び旋回運動を許容するように組み合わされている搬送用ロボットハンド。
【請求項2】
前記第1の関節は、前記移動部材に支持されて水平方向に延びる軸部と、軸部に取り付けられた調心すべり軸受を有するロッドエンドからなり、
前記第2の関節は、前記吸着部本体に支持されて前記吸着部本体と平行に延びる軸部と、該軸部に取り付けられた調心すべり軸受を有するロッドエンドからなる請求項1に記載の搬送用ロボットハンド。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載の搬送用ロボットハンドの制御方法であって、
前記2以上の可動連結構造を非ロック状態にして、前記吸着部本体の吸着面を前記袋状ワークに近接した位置まで近づけるように前記ロボットアームの先端部を下降させる第1のステップと、
前記第1のステップの実行の最中または前記第1のステップの終了後に前記エアシリンダのロッドを伸ばすか、前記ロボットアームの前記先端部をさらに下降させて前記吸着部本体の前記吸着面を前記袋状ワークに押し付ける第2のステップと、
前記吸着部で前記袋状ワークを吸着する第3のステップと、
前記第3のステップが完了した後に前記エアシリンダのロッドを縮めて前記2以上の可動連結構造がロック状態になるまで前記エアシリンダを駆動する第4のステップと、
前記第3のステップが完了した後に、前記第4のステップの実行の最中または前記第4のステップの終了後に、前記ロボットアームの先端を上昇させて所定の位置に移動させる第5のステップを実施することを特徴とする搬送用ロボットハンドの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの先端部に、袋状ワークを吸着する吸着部と、袋状ワークに対する吸着部の吸着姿勢を変更する姿勢変更機構を備えた搬送用ロボットハンド及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許第7560110号公報(特許文献1)には、袋状ワークに対する吸着部の吸着姿勢を変更する姿勢変更機構を備えた搬送用ロボットハンドが開示されている。この搬送用ロボットハンドでは、吸着部を傾動可能に支持する傾動機構と、移動機構に支持される本体に対して吸着部の傾動支点を昇降方向と交差するスライド方向にスライド可能に当該吸着部を支持するスライド機構と、スライド機構による傾動支点の基準位置からのスライドを許容しないロック状態と、スライド機構による傾動支点のスライドを基準位置に復帰可能な大きさの弾性付勢力が加わらない状態で許容するロック解除状態とに切り換える切換機構とを備えている。そしてこの切換機構は、ロック解除状態からロック状態へ切り換えるときに、傾動支点を基準位置に復帰させる。このような構造で、吸着部を袋状ワークに添わせた状態にして吸着を行い、その後袋状ワークを水平な状態にして搬送をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7560110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された搬送用ロボットハンドでは、姿勢変更機構の構造が複雑で、制御も複雑にならざるを得ないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構造で、吸着部本体を袋状ワークの表面に添って傾斜させることができる搬送用ロボットハンドを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、簡単な制御で、吸着部本体を袋状ワークの表面に添って傾斜させることができる搬送用ロボットハンドの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ロボットアームの先端部に、袋状ワークを吸着する吸着部と、袋状ワークに対する吸着部の吸着姿勢を変更する姿勢変更機構を備えた搬送用ロボットハンドを対象とする。本発明の搬送用ロボットハンドの姿勢変更機構は、一端が吸着部の吸着部本体に自在継手を介して接続され他端がロボットアームの先端部に設けられた支持構造部に対して自在継手を介してシリンダが接続されたエアシリンダと、エアシリンダの周囲に、エアシリンダとの間に径方向に間隔をあけ、エアシリンダの周方向に間隔をあけ且つ相互に径方向に対向しないように配置された2以上の直動ガイドと、2以上の直動ガイドと吸着部本体との間にそれぞれ配置された2以上の可動連結構造とを備えている。2以上の可動連結構造は、それぞれ、対応する直動ガイドに添って移動可能な移動部材と、移動部材に一端が第1の関節により回動可能且つ揺動可能に連結され他端が吸着部本体に第2の関節により回動可能且つ揺動可能に連結された連結部材と、移動部材と当接して移動部材の上方向への移動を規制するストッパを備えており、2以上の可動連結構造の2以上の第2の関節は周方向に間隔をあけ且つ相互に径方向に対向しないように吸着部本体に取り付けられている。そして2以上の直動ガイドと2以上の可動連結構造は、移動部材がストッパに当接している状態では2以上の可動連結構造がロック状態になり、移動部材がストッパから離れると2以上の可動連結構造が非ロック状態になってエアシリンダのシリンダロッドの先端部の上下方向への動き及び旋回運動を許容するように組み合わされている。
【0008】
本発明によれば、袋状ワークを吸着する際には、ロボットアームを袋状ワークに近づけるだけで、特別な制御をすることなく、非ロック状態にある可動連結構造が自然に変形して吸着部本体を袋状ワークに添わせることができる。そして吸着部本体を袋状ワークに添わせた後は、吸着部本体で袋状ワークを吸着した後、エアシリンダのシリンダロッドを縮んだ状態にすることにより2以上の可動連結構造をロック状態にして、ロボットアームを引き上げると、袋状ワークを水平方向に向けた状態で搬送することができる。このように本発明の搬送用ロボットによれば、複雑な制御を必要とすることなく、簡単な構造で、吸着部本体を袋状ワークの表面に添って傾斜させることができ、しかも吸着後も簡単に吸着部本体の姿勢を水平状態にして搬送することができる。
【0009】
第1の関節は、移動部材に支持されて水平方向に延びる軸部と、軸部に取り付けられた調心すべり軸受を有するロッドエンドから構成してもよく、また第2の関節は、吸着部本体に支持されて吸着部本体と平行に延びる軸部と、該軸部に取り付けられた調心すべり軸受を有するロッドエンドから構成してもよい。このような構成を採用すると、既製品のロッドエンドを用いて、安価に可動連結構造を構成することができる。
【0010】
本発明の搬送用ロボットハンドの制御方法では、まず第1のステップで、2以上の可動連結構造を非ロック状態にして、吸着部本体の吸着面を袋状ワークに近接した位置まで近づけるようにロボットアームの先端部を下降させる。次に第2のステップで、第1のステップの実行の最中または第1のステップの終了後にエアシリンダのシリンダロッドを伸ばすか、ロボットアームの先端部をさらに下降させて吸着部本体の吸着面を袋状ワークに押し付ける。次に第3のステップで、吸着部で袋状ワークを吸着する。その後第4のステップでは、第3のステップが完了した後にエアシリンダのシリンダロッドを縮めて2以上の可動連結構造がロック状態になるまでエアシリンダを駆動する。そして第5のステップでは、第3のステップが完了した後に、第4のステップの実行の最中または第4のステップの終了後に、ロボットアームの先端を上昇させて所定の位置に移動させる。このように本発明の搬送用ロボットハンドの制御方法によれば、ロボットアームの移動とエアシリンダと駆動制御と吸着部の制御だけで、吸着部を斜めになった袋状ワークに添わせて、簡単に袋状ワークを吸着搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態の搬送用ロボットハンドの斜視図である。
図2】姿勢変更機構の駆動源となるエアシリンダの取付構造を説明するために用いる分解斜視図である。
図3】直動ガイドと可動連結構造の分解斜視図である。
図4】(A)乃至(C)は、吸着動作を説明するために用いる図である。
図5】(A)及び(B)は、直動ガイド及び可動連結構造の配置構造の可否を説明するために用いる図である。
図6】搬送用ロボットハンドの制御方法の一例のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の搬送用ロボットハンドの一実施の形態を説明する。図1は本実施の形態の搬送用ロボットハンド1の斜視図を示している。図2は、後述する姿勢変更機構5の駆動源となるエアシリンダ7の取付構造を説明するための分解斜視図である。本実施の形態の搬送用ロボットハンド1は、図示しないロボットアームの先端部に取り付けられる支持構造部2の下に実装される。搬送用ロボットハンド1は、セメント袋のような袋状ワークを吸着する吸着部3と、袋状ワークに対する吸着部3の吸着姿勢を変更する姿勢変更機構5を備えている。吸着部3は、図示しない真空発生装置に接続手段を介して接続された吸着ノズルを有する吸着部本体3Aと、吸着部本体3Aの下部に設けられて袋状ワークの表面に添って変形する弾性スカート部3Bを有している。
【0013】
姿勢変更機構5は、駆動源としてエアシリンダ7を備えている。エアシリンダ7は、シリンダロッド7Aの一端が吸着部3の吸着部本体3Aに自在継手(ユニバーサルジョイント)9を介して接続され、シリンダ本体7Bの他端がロボットアームの先端部に設けられた支持構造部2に対して自在継手11を介して接続されている。図2に示すように、エアシリンダ7のシリンダ本体7Bの他端には、自在継手11を連結するための連結ピン13aを有する固定プレート13bを備えた取付具13が固定されている。また支持構造部2の裏面にも、自在継手11を連結するための連結ピン15aを備えた固定プレート15bを備えた取付具15が固定されている。自在継手11は、これらの取付具13及び15を連結している。エアシリンダ7のシリンダロッド7Aの先端にも自在継手9を連結するための図示しない連結ピンを備えたナットと同様の外形を有する取付具17が固定されており、吸着部本体3Aにも自在継手9を連結するための図示しない連結ピンを備えた取付具19が固定されている。またエアシリンダ7の一端には、シリンダロッド7Aが回動するのを防止する回り止めガイド21が固定されている。この回り止めガイド21は、取付具17の六角形状の外面と嵌合する凹部21Aを備えた可動プレート21Bと、シリンダ本体に固定された固定プレート21Cと、一端が可動プレート21Bに固定されて、固定プレート21Cをスライド可能に貫通する2本のロッド21Dを備えている。なおこのような回り止めガイド21を用いなくても、回り止め付きエアシリンダを用いてもよい。
【0014】
本実施の形態では、エアシリンダ7の周囲に、エアシリンダ7との間に径方向に間隔をあけ、エアシリンダ7の周方向に間隔をあけ且つ相互に径方向に対向しないように配置された3個の直動ガイド23A乃至23Cと、3個の直動ガイド23A乃至23Cと吸着部本体3Aとの間にそれぞれ配置された3個の可動連結構造25A乃至25Cとを備えている。3個の可動連結構造25A乃至25Cは、それぞれ、対応する直動ガイド23A乃至23Cに添って移動可能な移動部材26a乃至26cと、移動部材26a乃至26cに一端が第1の関節27a乃至27cにより回動可能且つ揺動可能に連結され他端が吸着部本体3Aに第2の関節28a乃至28cより回動可能且つ揺動可能に連結されたロッド状の連結部材29a乃至29cと、移動部材26a乃至26cと当接して移動部材26a乃至26cの上方向への移動を規制するストッパ30a乃至30cを備えている。
【0015】
図3には、3個の直動ガイド23A乃至23Cと、3個の可動連結構造25A乃至25Cをそれぞれ代表して、直動ガイド23Aと可動連結構造25Aの分解斜視図を示してある。以下図3を用いて直動ガイド23Aと可動連結構造25Aの詳細を説明し、直動ガイド23B及び23Cと可動連結構造25B及び25Cの説明を省略する。直動ガイド23Aは、ガイドプレートGPと、ガイドレールLを備えている。移動部材26aは、ガイドレールLに添ってスライドするスライダSとスライダSに固定されスライドプレートSPとから構成される。スライドプレートSPには、固定具F1及びF2が固定される。第1の関節27aは、移動部材26aに固定された固定具F1及びF2に一対のベアリングbを用いて両端が回転自在に支持されて水平方向に延びる軸部SF1と、軸部SF1に取り付けられた調心すべり軸受を有するロッドエンドRE1から構成されている。また第2の関節28aも、吸着部本体3Aに固定具F3及びF4によって取り付けられたベアリングbに両端が回転自在に支持されて吸着部本体3Aと平行に延びる軸部SF2と、軸部SF2に取り付けられた調心すべり軸受を有するロッドエンドRE2とから構成されている。この構造によって、第1の関節27a乃至27c及び第2の関節28a乃至28cはそれぞれ、回動可能且つ揺動可能な連結を実現する。
【0016】
本実施の形態では、3個の可動連結構造25A乃至25Cの3個の第2の関節28a乃至28cは、周方向に等間隔をあけ且つ相互に径方向に対向しないように吸着部本体3Aに取り付けられている。そして3個の直動ガイド23A乃至23Cと3個の可動連結構造25A乃至25Cは、移動部材26a乃至26cがストッパ30a乃至30cに当接している状態では3個の可動連結構造25A乃至25Cがロック状態になり、移動部材26a乃至26cがストッパ30a乃至30cから離れると3個の可動連結構造25A乃至25Cが非ロック状態になってエアシリンダ7のシリンダロッド7Aの先端部の上下方向への動き及び旋回運動を許容するように組み合わされている。
【0017】
図4(A)は、袋状ワークWが変形してその表面が傾斜しているような状態で、本実施の形態の搬送用ロボットハンド1により袋状ワークを吸着して搬送する際の状態の一例を示している。図4(A)乃至(C)に順番に示すように、本実施の形態によれば、袋状ワークWを吸着する際には、ロボットアームを袋状ワークに近づけるだけで、特別な制御をすることなく、非ロック状態にある可動連結構造25A乃至25Cが自然に変形して吸着部本体3Aを袋状ワークWに添わせることができる。そして図4(C)に示すように、吸着部本体3Aの下の弾性スカート部3Bを袋状ワークWに添わせた後は、吸着部本体3Aで袋状ワークWを吸着した後、エアシリンダ7のシリンダロッド7Aを縮んだ状態にすることにより、3個の可動連結構造25A乃至25Cの移動部材26a乃至26cをストッパ30a乃至30cに当接させて、3個の可動連結構造25A乃至25Cをロック状態にして、ロボットアームを引き上げると、袋状ワークWを水平方向に向けた状態で搬送することができる。このように本発明の搬送用ロボットによれば、複雑な制御を必要とすることなく、簡単な構造で、吸着部本体3Aを袋状ワークWの表面に添って傾斜させることができ、しかも吸着後も簡単に吸着部本体3Aの姿勢を水平状態にして搬送することができる。
【0018】
なお上記実施の形態と異なって、3個の直動ガイド23A乃至23C及び3個の可動連結構造25A乃至25Cを周方向に等間隔をあけずに、図5(A)に示すように2つの第2の関節28a及び28bが径方向に対向するように3個の直動ガイド23A乃至23C及び3個の可動連結構造25A乃至25Cを周方向に配置すると、3個の可動連結構造25A乃至25Cの動きで、吸着部本体3Aをスムーズに上下方向に移動したり、吸着部本体3Aをスムーズに水平方向に旋回できない状況が発生する。そのためエアシリンダ7の周囲には、エアシリンダ7との間に径方向に間隔をあけ、エアアシリンダ7の周方向に間隔をあけ且つ相互に径方向に対向しないように3個の直動ガイド23A乃至23C及び3個の可動連結構造25A乃至25を配置しなければならない。この原則を守る限り、理論的には、直動ガイド及び可動連結構造は、それぞれ2個以上設けることができる。例えば、2個の直動ガイド23A及び23B並びに2個の可動連結構造25A及び25Bを用いる場合には、図5(A)に示すように、2つの直動ガイド23A及び23Bがエアシリンダ7を間に挟んで、対向するよう構成してはならず、図5(B)に示すように、2つの直動ガイド23A及び23Bがエアシリンダ7を間に挟んで、対向しないように構成する必要がある。
【0019】
図6は、上記搬送用ロボットハンド1の制御方法の一例のフローチャートを示している。この制御方法は、図示しない搬送用ロボットの制御装置内に実装したコンピュータを用いて実行することができる。第1のステップST1では、2以上の可動連結構造を非ロック状態にして、吸着部本体3Aの吸着面を袋状ワークWに近接した位置まで近づけるようにロボットアームの先端部を下降させる。次に第2のステップST2で、第1のステップST1の実行の最中または第1のステップST1の終了後にエアシリンダ7のシリンダロッド7Aを伸ばすか、ロボットアームの先端部をさらに下降させて吸着部本体3Aの吸着面を袋状ワークWに押し付ける。ステップST2の実行は、自重によってシリンダロッド7Aを勝手に下降させて、吸着部本体3Aの吸着面をワークWに押し付けてもよく、またエアシリンダ7により能動的にシリンダロッド7Aを下降させて、吸着部本体3Aの吸着面を袋状ワークWに押し付けてもよく、ロボットアームを下降させて、吸着部本体3Aの吸着面を袋状ワークWに押し付けてもよい。
【0020】
次に第3のステップST3では、吸着部3で袋状ワークを吸着する。その後第4のステップST4では、第3のステップST3が完了した後にエアシリンダ7のシリンダロッド7Aを縮めて2以上の可動連結構造がロック状態になるまでエアシリンダ7を駆動する。なお第4ステップでエアシリンダ7を駆動するタイミングとしては、吸着直後以外でも、ロボットアームを上昇しながらでも、また上昇させた後でも実施可能である。そして第5のステップST5では、第3のステップが完了した後に、第4のステップST4の実行の最中または第4のステップST4の終了後に、ロボットアームの先端を上昇させて所定の位置に移動させる。
【0021】
このような制御方法によれば、ロボットアームの移動とエアシリンダ7の駆動制御と吸着部3の制御だけで、吸着部3を斜めになった袋状ワークWに添わせて、簡単に袋状ワークを吸着搬送することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、複雑な制御を必要とすることなく、簡単な構造で、吸着部本体を袋状ワークの表面に添って傾斜させることができ、しかも吸着後も簡単に吸着部本体の姿勢を水平状態にして搬送することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…搬送用ロボットハンド
2…支持構造部
3…吸着部
3A…吸着部本体
3B…弾性スカート部
5…姿勢変更機構
7…エアシリンダ
7A…シリンダロッド
7B…シリンダ本体
9…自在継手
11…自在継手
21…回り止めガイド
23A乃至23C…直動ガイド
25A乃至25C…可動連結構造
26a乃至26c…移動部材
27a乃至27c…第1の関節
28a乃至28c…第2の関節
29a乃至29c…連結部材
30a乃至30c…ストッパ
【要約】
【課題】簡単な構造で、吸着部本体を袋状ワークの表面に添って傾斜させることができる搬送用ロボットハンドを提供する。
【解決手段】袋状ワークWを吸着する際に、ロボットアームを袋状ワークに近づけると、非ロック状態にある可動連結構造25A乃至25Cが自然に変形して吸着部本体3Aを袋状ワークに添わせる。吸着部本体3Aを袋状ワークに添わせた後は、吸着部本体3Aで袋状ワークを吸着した後、エアシリンダ7のシリンダロッド7Aを縮んだ状態にすることにより可動連結構造25A乃至25Cをロック状態にして、ロボットアームを引き上げる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6