(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】水処理システム及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20250922BHJP
B01D 61/10 20060101ALI20250922BHJP
B01D 61/52 20060101ALI20250922BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20250922BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/10
B01D61/52
C02F1/44 J
C02F1/469
B01D61/58
(21)【出願番号】P 2021173933
(22)【出願日】2021-10-25
【審査請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 慶介
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇規
(72)【発明者】
【氏名】寺師 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特許第6799657(JP,B1)
【文献】特開2020-199436(JP,A)
【文献】特開2013-202581(JP,A)
【文献】特開2013-119060(JP,A)
【文献】特開2014-124481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/10
B01D 61/52
C02F 1/469
B01D 61/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの逆浸透膜装置と、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、を有する水処理システムであって、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の上流に位置し、前記水処理システムに供給される原水の温度に応じて、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度調整を行う第1の熱交換器と、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置と前記少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置との間に位置し、前記電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却する第2の熱交換器と、を有し
、
前記原水の温度は前記逆浸透膜装置の処理水の温度より低く、
前記第1の熱交換器は前記水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は前記水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器であり、前記第1の熱交換器は加熱器として作動する、水処理システム。
【請求項2】
少なくとも一つの逆浸透膜装置と、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、を有する水処理システムであって、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の上流に位置し、前記水処理システムに供給される原水の温度に応じて、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度調整を行う第1の熱交換器と、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置と前記少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置との間に位置し、前記電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却する第2の熱交換器と、を有し、
前記原水の温度は前記電気再生式脱イオン装置の処理水の温度より高く、
前記第1の熱交換器は
前記水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は
前記水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は冷却器として作動する
、水処理システム。
【請求項3】
前記第1の熱交換器と前記逆浸透膜装置との間に位置し、前記逆浸透膜装置への供給水を冷却する第3の熱交換器を有する、請求項
2に記載の水処理システム。
【請求項4】
少なくとも一つの逆浸透膜装置と、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、を有する水処理システムであって、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の上流に位置し、前記水処理システムに供給される原水の温度に応じて、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度調整を行う第1の熱交換器と、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置と前記少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置との間に位置し、前記電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却する第2の熱交換器と、を有し、
前記第2の熱交換器と前記電気再生式脱イオン装置との間に位置し、前記電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却す
る熱交換器を有し、前記第1の熱交換器は
前記水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は
前記水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器であり、前記外部熱交換器は加熱器または冷却器として作動する
、水処理システム。
【請求項5】
前記電気再生式脱イオン装置とユースポイントとの間に位置するサブシステムと、を有し、
前記サブシステムは、前記電気再生式脱イオン装置の処理水をさらに処理するための水処理装置と、前記水処理装置の処理水を前記水処理装置の上流に戻す第2の再循環ラインと、を有する、請求項1から
4のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記逆浸透膜装置への供給水の温度は15℃以上、40℃以下の範囲に制御される、請求項1から
5のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記電気再生式脱イオン装置への供給水の温度は10以上、30℃以下の範囲に制御される、請求項1から
6のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記原水はシリカとホウ素を含み、前記逆浸透膜装置の処理水のシリカ濃度が100ppb以下、ホウ素濃度が50ppb以下である、請求項1から
7のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項9】
少なくとも一つの逆浸透膜装置と、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、を有する水処理システムにおける水処理方法であって、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度を、前記逆浸透膜装置の上流に位置する第1の熱交換器によって、前記水処理システムに供給される原水の温度に応じて調整することと、
前記電気再生式脱イオン装置への供給水を、前記逆浸透膜装置と前記電気再生式脱イオン装置との間に位置する第2の熱交換器によって冷却することと、を有し
、
前記原水の温度は前記逆浸透膜装置の処理水の温度より低く、
前記第1の熱交換器は前記水処理システムの外部との間で熱の授受を行う外部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は前記水処理システムの内部で熱交換する内部熱交換器であり、前記第1の熱交換器は加熱器として作動する、水処理方法。
【請求項10】
少なくとも一つの逆浸透膜装置と、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、を有する水処理システムにおける水処理方法であって、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度を、前記逆浸透膜装置の上流に位置する第1の熱交換器によって、前記水処理システムに供給される原水の温度に応じて調整することと、
前記電気再生式脱イオン装置への供給水を、前記逆浸透膜装置と前記電気再生式脱イオン装置との間に位置する第2の熱交換器によって冷却することと、を有し、
前記原水の温度は前記電気再生式脱イオン装置の処理水の温度より高く、
前記第1の熱交換器は前記水処理システムの内部で熱交換する内部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は前記水処理システムの外部との間で熱の授受を行う外部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は冷却器として作動する、水処理方法。
【請求項11】
前記第1の熱交換器と前記逆浸透膜装置との間に位置する第3の熱交換器によって、前記逆浸透膜装置への供給水を冷却することを有する、請求項10に記載の水処理方法。
【請求項12】
少なくとも一つの逆浸透膜装置と、前記少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、を有する水処理システムにおける水処理方法であって、
前記少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度を、前記逆浸透膜装置の上流に位置する第1の熱交換器によって、前記水処理システムに供給される原水の温度に応じて調整することと、
前記電気再生式脱イオン装置への供給水を、前記逆浸透膜装置と前記電気再生式脱イオン装置との間に位置する第2の熱交換器によって冷却することと、
前記第2の熱交換器と前記電気再生式脱イオン装置との間に位置する熱交換器によって、前記電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却することと、を有し、
前記第1の熱交換器は前記水処理システムの外部との間で熱の授受を行う外部熱交換器であり、前記第2の熱交換器は前記水処理システムの内部で熱交換する内部熱交換器であり、前記外部熱交換器は加熱器または冷却器として作動する、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水処理システム及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理システムでは、逆浸透膜装置、電気再生式脱イオン装置などの水処理装置が直列に配置されている。それぞれの水処理装置には好適な水温条件があり、各水処理装置への供給水の温度は、熱交換器によって適切な温度に調整される。特許文献1には、逆浸透膜装置への供給水を熱交換器で加熱した後、逆浸透膜装置の処理水から排熱を回収し、この排熱で逆浸透膜装置への供給水を予備加熱する水処理システムが開示されている。この水処理システムによれば、逆浸透膜装置の好適な水温条件まで被処理水を加熱するための熱エネルギーが節約され、水処理システムの熱効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原水の温度は、水処理システムの設置環境(高温地域、低温地域)によって変動するほか、原水を製造するための原料水の種類(地下水、市水など)によっても変動する。特許文献1に記載された水処理システムでは、逆浸透膜装置の排熱を逆浸透膜装置への供給水の予備加熱に利用しているが、温度調整が必要な水処理装置は逆浸透膜装置だけではない。例えば、電気再生式脱イオン装置の好適な水温は逆浸透膜装置の好適な水温とは異なる。従って、個々の水処理装置に対して熱効率の最適化を図っても、水処理システム全体の熱効率を改善することは困難である。
【0005】
本発明は、逆浸透膜装置と電気再生式脱イオン装置とを備え、様々な原水温度に対してシステム全体の熱効率の改善が可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水処理システムは、少なくとも一つの逆浸透膜装置と、少なくとも一つの逆浸透膜装置の下流に位置する少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置と、少なくとも一つの逆浸透膜装置の上流に位置し、水処理システムに供給される原水の温度に応じて、少なくとも一つの逆浸透膜装置への供給水の温度調整を行う第1の熱交換器と、少なくとも一つの逆浸透膜装置と少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置との間に位置し、電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却する第2の熱交換器と、を有する。一態様では、原水の温度は逆浸透膜装置の処理水の温度より低く、第1の熱交換器は水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、第2の熱交換器は水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器であり、第1の熱交換器は加熱器として作動する。他の態様では、原水の温度は電気再生式脱イオン装置の処理水の温度より高く、第1の熱交換器は水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器であり、第2の熱交換器は水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、第2の熱交換器は冷却器として作動する。さらに他の態様では、第2の熱交換器と電気再生式脱イオン装置との間に位置し、電気再生式脱イオン装置への供給水を冷却する熱交換器を有し、第1の熱交換器は水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、第2の熱交換器は水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器であり、外部熱交換器は加熱器または冷却器として作動する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、逆浸透膜装置と電気再生式脱イオン装置とを備え、様々な原水温度に対してシステム全体の熱効率の改善が可能な水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図2】逆浸透膜装置における水温とシリカ除去効率との関係を示す図である。
【
図3】電気再生式脱イオン装置における水温とシリカ除去効率との関係を示す図である。
【
図4】電気再生式脱イオン装置における水温とホウ素除去効率との関係を示す図である。
【
図5】第2の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【
図6】第3の実施形態に係る水処理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。各実施形態の水処理システム101,201,301は、1次システムS1と2次システムS2とを有している。2次システムS2は、1次システムS1の下流且つユースポイント2の上流に位置している。1次システムS1は原水から純水を製造し、2次システムS2は純水から超純水を製造する。2次システムS2はサブシステムとも呼ばれる。2次システムS2は、1次システムS1の電気再生式脱イオン装置18の処理水をさらに処理するための様々な水処理装置21~25を有している。2次システムS2で製造された超純水(水処理装置の処理水)はユースポイント2に送られる。2次システムS2で製造された超純水のうち、ユースポイント2で使用されなかった超純水は、2次システムS2の母管L2に接続された第2の再循環ラインL3によって、水処理装置21~25の上流側に戻される。2次システムS2内では純水または超純水が常時循環している。2次システムS2は、純水または超純水が循環する範囲であり、母管L2及び第2の再循環ラインL3と、母管L2及び第2の再循環ラインL3上に設置されたすべての設備を含む。ユースポイント2は母管L2から分岐するラインL4によって水処理システム101,201,301と接続されている。
【0010】
各実施形態で詳しく説明するが、水処理システム101,201,301は、逆浸透膜装置14の上流に位置し、水処理システムに供給される原水の温度に応じて、逆浸透膜装置14への供給水の温度調整を行う第1の熱交換器31と、逆浸透膜装置14と電気再生式脱イオン装置18との間に位置し、電気再生式脱イオン装置18への供給水を冷却する第2の熱交換器32と、を有している。実施形態により、第1の熱交換器31と第2の熱交換器32の一方は、水処理システムの内部で熱交換を行う内部熱交換器として、他方は、水処理システムの外部との間で熱交換を行う外部熱交換器として作動する。水処理システムに供給される原水はシリカとホウ素を含み、逆浸透膜装置14の処理水のシリカ濃度は100ppb以下、ホウ素濃度は50ppb以下となる。電気再生式脱イオン装置18の処理水のシリカ濃度は100ppt以下、ホウ素濃度は50ppt以下となる。
【0011】
(第1の実施形態)
図1(a)に、本発明の第1の実施形態に係る水処理システム101の概略構成を示す。本実施形態では、水処理システム101に供給される原水の水温は所定の温度範囲(例えば15℃)より低い。上述のように、水処理システム101は1次システムS1と2次システムS2とに区分されるため、まず1次システムS1について説明し、次に2次システムS2について説明する。なお、1次システムS1と2次システムS2を構成する装置は以下に説明するものに限らず、他のタンク、ポンプ等が必要に応じて設置されることがある。
【0012】
1次システムS1には、被処理水の流通する母管L1に沿って、被処理水の流通する方向に、上流から下流に、原水タンク11と、原水ポンプ12と、第2の熱交換器32と、第1の熱交換器31と、少なくとも一つの逆浸透膜装置14と、少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置18(EDI)と、が直列に配置されており、被処理水は、逆浸透膜装置14と電気再生式脱イオン装置18との間で再び第2の熱交換器32を通る。少なくとも一つの逆浸透膜装置14は、単段の逆浸透膜装置と、直列に接続された複数段の逆浸透膜装置の両者を含み、以下の説明では単に逆浸透膜装置14という。少なくとも一つの電気再生式脱イオン装置18は、単段の電気再生式脱イオン装置と、直列に接続された複数段の電気再生式脱イオン装置の両者を含み、以下の説明では単に電気再生式脱イオン装置18という。逆浸透膜装置14と電気再生式脱イオン装置18の少なくともいずれかを複数段直列配置することで、水質の一層の向上が可能となる。図示は省略するが、逆浸透膜装置14と電気再生式脱イオン装置18との間に、炭酸や溶存酸素を除去するための膜脱気装置、イオン交換樹脂装置、紫外線照射装置、ホウ素選択性樹脂装置の少なくともいずれかを設けてもよい。
【0013】
原水タンク11は、1次システムS1の上流に設けられた前処理システム(図示せず)で製造された原水や、後段設備で発生した後に回収される水(純水、超純水、電気再生式脱イオン装置18の濃縮水、電極水等)を貯蔵する。原水ポンプ12は、原水タンク11に貯蔵された原水を送出し、第2の熱交換器32に供給した後、第1の熱交換器31に供給する。
【0014】
第1の熱交換器31は、逆浸透膜装置14への供給水を所定の温度まで加熱する加熱器として作動する。第1の熱交換器31は、逆浸透膜装置14の上流に位置し、水処理システム101の外部との間で熱交換を行う外部熱交換器である。第1の熱交換器31は、逆浸透膜装置14への供給水を加熱する。逆浸透膜装置14への供給水の水温が低すぎると、供給水の粘性が上がり、供給水が逆浸透膜装置14を透過しにくくなる。これによって、逆浸透膜装置14の圧力損失が増加し、原水ポンプ12の動力費やポンプ容量が増える可能性がある。また、圧力損失の低減のために逆浸透膜装置14のエレメントあたりの流量を減らすと、エレメントの個数が増える。一方、逆浸透膜装置14への供給水の水温が高すぎると、膜材料の溶出、供給水中の溶解成分の析出、生物由来のスライム生成といった問題が生じやすくなる。第1の熱交換器31は、逆浸透膜装置14への供給水の水温を15℃以上40℃以下、好ましくは20~30℃程度に調整する。逆浸透膜装置14は被処理水に含まれる微粒子、イオン成分、シリカ等を除去する。
【0015】
第2の熱交換器32は、逆浸透膜装置14と電気再生式脱イオン装置18との間に設けられている。第2の熱交換器32は、逆浸透膜装置14の処理水ないし電気再生式脱イオン装置18への供給水を所定の温度まで冷却する。第2の熱交換器32は水処理システム101の内部で熱交換を行う内部熱交換器である。矢印は熱の移動方向を示す。後述するように、電気再生式脱イオン装置18への供給水の温度が低いとホウ素の除去率が向上する。所定の温度は10~30℃程度、好ましくは15~24℃程度である。電気再生式脱イオン装置18は被処理水に含まれるイオン成分を除去する。電気再生式脱イオン装置18は被処理水に含まれるシリカやホウ素も除去する。電気再生式脱イオン装置18の処理水は2次システムS2のサブタンク19に貯蔵される。
【0016】
上述のように、逆浸透膜装置14への低温の供給水は、第1の熱交換器31で加温される前に第2の熱交換器32で加温される。このため、第1の熱交換器31で必要とする熱エネルギーが節約される。一方、逆浸透膜装置14の高温の処理水は、逆浸透膜装置14への低温の供給水に熱エネルギーを奪われることで、電気再生式脱イオン装置18への供給水として適した温度まで冷却される。熱エネルギーが不要な部位から熱エネルギーが必要な部位に、熱交換によって熱エネルギーを移動しているため、1次システムS1全体のエネルギー使用効率が改善される。
【0017】
サブシステムS2は、電気再生式脱イオン装置18とユースポイント2との間に位置している。2次システムS2には、被処理水の流通する母管L2に沿って、被処理水の流通する方向に、上流から下流に、サブタンク(純水タンク)19と、純水ポンプ20と、熱交換器21と、紫外線照射装置22と、イオン交換装置23と、膜脱気装置24と、限外ろ過膜装置25と、が直列に配置されている。純水ポンプ20はサブタンク19に貯蔵された純水を送出し、熱交換器21に供給する。ユースポイント2に供給される超純水は一般に、要求水温(例えば24~26℃程度)が定められている。熱交換器21は、ユースポイント2に供給される超純水の温度を調整するために設けられている。第2の熱交換器32で電気再生式脱イオン装置18への供給水を冷却した場合、電気再生式脱イオン装置18の処理水を加熱することが一般的であるため、熱交換器21は加熱器とすることができる。しかし、電気再生式脱イオン装置18からの入熱や、純水ポンプ20からの排熱、第2の再循環ラインL3を流れる循環水量の増加などで被処理水の水温が上昇する場合、熱交換器21は被処理水を冷却することもあり得る。従って、被処理水を冷却する可能性のある場合、熱交換器21は冷却加熱の両方が可能なものであることが好ましい。紫外線照射装置22は被処理水に紫外線を照射し、被処理水に含まれる有機物を分解する。イオン交換装置23は紫外線照射装置22で発生した分解生成物を除去する。膜脱気装置24は被処理水に含まれる溶存酸素を除去する。限外ろ過膜装置25は被処理水に含まれる微粒子を除去する。このようにして製造された超純水はユースポイント2に送られ、ユースポイント2で使用されなかった水は第2の再循環ラインL3を通って、サブタンク19に戻される。
【0018】
図2は、逆浸透膜装置14における水温とシリカ除去率との関係の測定例を示している。水温が高くなるとシリカの除去率は低下するが、除去率の大きな低下は見られず、温度の影響は限定的である。一方、図示は省略するが、逆浸透膜装置14のホウ素除去率はそれほど高くなく、ホウ素除去率の観点からは、逆浸透膜装置14への供給水の水温は特に限定されない。
図3は、電気再生式脱イオン装置18における水温とシリカの除去率との関係の測定例を示している。水温が高くなるとシリカの除去率は高まり、水温が低くなるとシリカの除去率は低下する。
【0019】
図4は電気再生式脱イオン装置18における水温とホウ素除去率との関係の測定例を示している。水温範囲によって異なる電気再生式脱イオン装置18を用いているため、便宜上、結果を
図4(a)と4(b)に分けて示している。電気再生式脱イオン装置18への供給水は、ホウ素(5~20ppb)、シリカ(5~10ppb)、炭酸(1ppm)を含んでいる。ここで、炭酸濃度は、H
2CO
3、HCO
3
-、CO
3
2-などの炭酸成分の総量の濃度をCO
2換算濃度として表したものである。供給水の温度が低いとホウ素の除去率が向上する。例えば、供給水のホウ素濃度が10ppb、電気再生式脱イオン装置18の処理水のホウ素濃度が60ppt(除去率99.4%)、目標値が50pptであったとする。この場合、水温を1℃程度低下させることで除去率が0.05%程度向上することが見込まれるので、水温を2℃程度低下させると目標値の50ppt(除去率99.5%)に到達する。
【0020】
このように、ホウ素を高効率で除去できるのは電気再生式脱イオン装置18に限られるので、電気再生式脱イオン装置18の供給水の温度はホウ素の除去に適した温度としている。この結果、シリカは電気再生式脱イオン装置18で除去されにくくなるため、逆浸透膜装置14でできるだけ多くのシリカを除去することが望ましい。しかし、上述のように逆浸透膜装置14の供給水の温度はシリカ除去率に大きな影響を与えない。一方、逆浸透膜装置14の処理水の温度が高くなりすぎると、電気再生式脱イオン装置18の供給水の温度を第2の熱交換器32で十分に低下することができなくなることもあり得る。以上より、逆浸透膜装置14への供給水の水温は15℃以上40℃以下とし、電気再生式脱イオン装置18への供給水の温度は10~30℃としている。
【0021】
(第1の実施形態の変形例)
図1(b)~(d)に第1の実施形態の変形例を示す。
図1(b)に示す変形例では、第2の熱交換器32と電気再生式脱イオン装置18との間にRO処理水タンク15とRO処理水移送ポンプ16が設けられている。RO処理水タンク15は逆浸透膜装置14の処理水を貯蔵し、RO処理水移送ポンプ16はRO処理水タンク15に貯蔵された水を電気再生式脱イオン装置18に供給する。電気再生式脱イオン装置18の前段にRO処理水タンク15とRO処理水移送ポンプ16があることで、電気再生式脱イオン装置18と逆浸透膜装置14とを別々に運転することができる。また、RO処理水タンク15がバッファタンクとして機能するため、1次システムS1がユースポイント2での超純水使用量の変動に対する影響を受けづらくなる。
図1(c)に示す変形例では、電気再生式脱イオン装置18の処理水の少なくとも一部を逆浸透膜装置14の上流(本変形例では原水タンク11)に戻す第1の再循環ラインL5が設けられている。サブシステムS2は、第1の再循環ラインL5の分岐部とユースポイント2との間に位置している。後段のサブタンク19が満水になった際に、第1の再循環ラインL5で水を循環させることで、1次システムS1の運転を継続することができる。1次システムS1の運転を停止すると、水が滞留している部分で水質が低下する可能性がある。1次システムS1を連続運転することで、水の滞留を抑制し、高い水質を安定的に維持することができる。後段のサブタンク19に送水可能となったときは、第1の再循環ラインL5の弁(図示せず)を閉じて、電気再生式脱イオン装置18の処理水の全量をサブタンク19に送水する。あるいは、第1の再循環ラインL5の弁の開度を絞って、電気再生式脱イオン装置18の処理水の一部をサブタンク19に送水し、残りを逆浸透膜装置14の上流に戻してもよい。
図1(d)に示す変形例は
図1(b)に示す変形例と
図1(c)を組み合わせたものである。この場合、第1の再循環ラインL5はRO処理水タンク15に接続してもよい。
【0022】
(第2の実施形態)
図5(a)に、本発明の第2の実施形態に係る水処理システム201の概略構成を示す。以下、第1の実施形態との差異を中心に説明する。説明を省略した構成や効果は第1の実施形態と同様である。本実施形態では、水処理システム201に供給される原水の水温は所定の温度範囲(例えば40℃)より高い。第1の実施形態と異なり、第2の熱交換器32は冷却のために、水処理システム201の内部の冷却源(低温の原水)を利用できない。このため、第2の熱交換器32は、冷却器として作動する外部熱交換器としている。
【0023】
第1の熱交換器31は第1の実施形態と異なり、冷却器として作動する。原水は第1の熱交換器31によって、逆浸透膜装置14への供給水として適した温度まで冷却される。電気再生式脱イオン装置18の処理水の温度は、水処理システム201に供給される原水の温度より低くなっている。そこで、第1の熱交換器31は水処理システム201の内部で熱交換を行う内部熱交換器としている。このような構成によって、電気再生式脱イオン装置18の低温の処理水を逆浸透膜装置14への供給水の冷却に用いることができる。また、2次システムS1の熱交換器21が加熱器として用いられる場合、熱交換器21への供給水が第1の熱交換器31で予備加熱されるので、熱交換器21の負荷が低減する。このため、水処理システム201全体のエネルギー使用効率が改善される。
【0024】
(第2の実施形態の変形例)
図5(b)~(e)に第2の実施形態の変形例を示す。
図5(b)に示す変形例では、逆浸透膜装置14と第2の熱交換器32との間にRO処理水タンク15とRO処理水移送ポンプ16が設けられている。RO処理水タンク15は逆浸透膜装置14の処理水を貯蔵し、RO処理水移送ポンプ16はRO処理水タンク15に貯蔵された水を電気再生式脱イオン装置18に供給する。
図5(c)に示す変形例では、電気再生式脱イオン装置18の処理水の少なくとも一部を逆浸透膜装置14の上流(本変形例では原水タンク11)に戻す第1の再循環ラインL5が設けられている。サブシステムS2は、第1の再循環ラインL5の分岐部とユースポイント2との間に位置している。
図5(d)に示す変形例は
図5(b)に示す変形例と
図1(c)を組み合わせたものである。この場合、第1の再循環ラインL5はRO処理水タンク15に接続してもよい。
図5(b)~(d)に示す変形例の効果は
図1(b)~(d)に示す変形例と同様である。
図5(e)に示す変形例では、第1の熱交換器31と逆浸透膜装置14との間に、逆浸透膜装置14への供給水を冷却する第3の熱交換器33が設けられている。第3の熱交換器33は水処理システム201の外部との間で熱交換を行う外部熱交換器であり、原水温度が高く第1の熱交換器31だけで逆浸透膜装置14への供給水の温度を十分に下げることができない場合に設けることができる。
【0025】
(第3の実施形態)
図6(a)に、本発明の第3の実施形態に係る水処理システム301の概略構成を示す。本実施形態では、水処理システム301に供給される原水の水温は概ね所定の温度範囲(例えば15~40℃)内にある。しかし、逆浸透膜装置14への供給水の水温が上記所定の温度範囲内で変動する場合や、上記所定の温度の内外を変動する場合がある。このような現象は、原水温度の変動によっても起こり得るが、1次システムS1や2次システムS2の運転によって引き起こされる場合もある。原水は粗く温度調整された後に原水タンク11に貯蔵されるが、原水タンク11には、後段設備で発生した後に回収される水(純水、超純水、電気再生式脱イオン装置18の濃縮水、電極水等)が受け入れられて、温度が変動することもある。本実施形態では水処理システム301に供給される原水の水温は比較的好ましい範囲にあるが、逆浸透膜装置14への供給水の温度をより好ましい範囲に調整することが望ましいこともある。
【0026】
このため、第1の熱交換器31は加熱器または冷却器として作動する外部熱交換器(温調器)としている。第2の熱交換器32は、電気再生式脱イオン装置18の処理水を、電気再生式脱イオン装置18への供給水の冷却に利用するため、内部熱交換器として作動する。一方、第2の熱交換器32だけで、電気再生式脱イオン装置18への供給水を適切な温度まで冷却できない場合もあるので、電気再生式脱イオン装置18への供給水を冷却する第4の熱交換器34を設けている。第4の熱交換器34は外部熱交換器である。第4の熱交換器34は第2の熱交換器32と電気再生式脱イオン装置18との間に位置している。電気再生式脱イオン装置18への低温の供給水は、第4の熱交換器34で冷却される前に第2の熱交換器32で冷却される。このため、第4の熱交換器34で必要とする冷却エネルギーが節約される。
【0027】
(第3の実施形態の変形例)
図6(b)~(d)に第3の実施形態の変形例を示す。
図6(b)に示す変形例では、逆浸透膜装置14と第2の熱交換器32との間にRO処理水タンク15とRO処理水移送ポンプ16が設けられている。RO処理水タンク15は逆浸透膜装置14の処理水を貯蔵し、RO処理水移送ポンプ16はRO処理水タンク15に貯蔵された水を電気再生式脱イオン装置18に供給する。
図6(c)に示す変形例では、電気再生式脱イオン装置18の処理水の少なくとも一部を逆浸透膜装置14の上流(本変形例では原水タンク11)に戻す第1の再循環ラインL5が設けられている。サブシステムS2は、第1の再循環ラインL5の分岐部とユースポイント2との間に位置している。
図6(d)に示す変形例は
図6(b)に示す変形例と
図6(c)を組み合わせたものである。この場合、第1の再循環ラインL5はRO処理水タンク15に接続してもよい。
図6(b)~(d)に示す変形例の効果は
図1(b)~(d)に示す変形例と同様である。
【符号の説明】
【0028】
14 逆浸透膜装置
15 RO処理水タンク
18 電気再生式脱イオン装置
31 第1の熱交換器
32 第2の熱交換器
34 第4の熱交換器
33 第3の熱交換器
101,201,301 水処理システム
L3 第2の再循環ライン
L5 第1の再循環ライン