(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】耐放射線性に優れる軽量板
(51)【国際特許分類】
E04C 2/26 20060101AFI20250922BHJP
E04C 2/24 20060101ALI20250922BHJP
E04B 1/92 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
E04C2/26 Q
E04C2/26 R
E04C2/24 R
E04B1/92
(21)【出願番号】P 2021179192
(22)【出願日】2021-11-02
【審査請求日】2024-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2021079591
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517181081
【氏名又は名称】ライノジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115440
【氏名又は名称】中山 光子
(72)【発明者】
【氏名】川口 昭次
(72)【発明者】
【氏名】古屋敷 将
(72)【発明者】
【氏名】緒方 修一
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-530408(JP,A)
【文献】特開昭56-135667(JP,A)
【文献】特開2019-189476(JP,A)
【文献】特開2018-089884(JP,A)
【文献】特開2019-105025(JP,A)
【文献】特開2001-140144(JP,A)
【文献】特開2017-186773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0005695(US,A1)
【文献】特開2015-110896(JP,A)
【文献】特開平09-012729(JP,A)
【文献】特開2006-198907(JP,A)
【文献】特開2016-010971(JP,A)
【文献】特表2006-513881(JP,A)
【文献】特開2011-174321(JP,A)
【文献】登録実用新案第3208176(JP,U)
【文献】特開2000-289143(JP,A)
【文献】登録実用新案第3232092(JP,U)
【文献】登録実用新案第3232329(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00-2/54
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
E04B 7/00-7/24
E04B 5/00-5/54
E04B 9/00-9/36
E04D 1/00-3/40
E04D 13/00-13/07
E04C 5/00-5/20
E04G 23/00-23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALCパネルまたは石膏ボードを芯材とする平板状の壁材、床材もしくは天井材であって、前記芯材の少なくとも片面を補強する高強度繊維製メッシュ布帛と、前記芯材の両面を含む全体および前記高強度繊維製メッシュ布帛を被覆するポリウレア樹脂からなる樹脂層と、を備え
、累積照射線量500kGyの放射線を照射した後のJIS A 1106:2018に準じて測定した最大曲げ荷重が、少なくとも1.00kNであることを特徴とする壁材、床材もしくは天井材。
【請求項2】
下記式(1)により求められる、累積照射線量500kGyの放射線を照射した後の曲げ荷重保持率が、75%以上である、請求項
1に記載の壁材、床材もしくは天井材。
放射線照射後の曲げ荷重保持率(%)=(放射線照射後の最大曲げ荷重/放射線照射前の最大曲げ荷重)×100 ・・・(1)
【請求項3】
ALCパネルからなる芯材の厚さが、5mm以上100mm以下である、請求項1~
2いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【請求項4】
石膏ボードからなる芯材の厚さが、5mm以上30mm以下である、請求項1~
2いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【請求項5】
高強度繊維製メッシュ布帛が、織物、編物、編状物、格子状シートおよびハニカム状物からなる群より選ばれた少なくとも一種である、請求項1~
4いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【請求項6】
高強度繊維が、ガラス繊維、ボロン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、高強度ポリエチレン繊維および全芳香族ポリエステル繊維からなる群より選ばれた少なくとも一種である、請求項1~
5いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【請求項7】
高強度繊維が、アラミド繊維である、請求項1~
6いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【請求項8】
高強度繊維製メッシュ布帛が、空間率が70%以上であり、かつ、1インチ当たりの経糸および緯糸の本数が0.5本~10本である、請求項1~
7いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子力発電所、使用済核燃料再処理設備、陽子加速器等の原子力関連施設、放射線治療を行う医療現場、その他工業用・医療用放射線検査器の設置場所等の放射線環境下において、壁材、床材もしくは天井材等の建築資材として用いられる軽量板に関する。
【背景技術】
【0002】
東京電力福島第一原子力発電所は2011年3月に発生した大津波の直後に核燃料が融け落ちるという、いわゆるメルトダウンが発生し、対策が進められている。廃炉に当たっては融け落ちた核燃料を原子炉格納容器から取出す必要があり、鋭意取出し方法の検討が進められている。原子炉建屋から核燃料や燃料デブリを取出す作業は、高い放射線の環境下で行われ、更に燃料デブリは原子炉格納容器の底部にあり冷却水で覆われているため、取出しに供する材料や機器類は耐放射線性および耐水性に優れる素材(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)を選定して構成する必要がある。
【0003】
高い線量下でのデブリ取出し作業は主にロボットを用いて行われるが、通常の電気配線を伴うロボットではなく、水圧や空気圧で駆動させるロボットが用いられる。これは、電気系統の機器が放射線に弱いためである。従って、ロボットが扱う荷重が制限される。ロボットは硬いデブリを掘削して小片にし、これを放射線遮蔽容器に入れて原子炉格納容器外へ運び出すが、放射性物質の拡散を防ぐため、遮蔽容器は水で洗浄する必要がある。工程としては、掘削、運搬、洗浄、運搬と一連の作業が遠隔操作で行われる。それぞれの工程は放射性物質の拡散を防ぐため、隔離された環境下で行う必要がある。そのため、原子炉格納容器内に隔離された部屋を設ける予定であり、壁材、床材および天井材が必要となる。これらの材料もロボットが搬入し、組立てなければならない。従って、材料は軽量で強度が高く、さらに耐放射線性に優れるもので構成されなければならない。
【0004】
一般に建築資材として用いられる材料として、木材、鉄板、石膏ボード、ALCパネル、プラスチック、コンクリート、ブロック等が挙げられるが、有機系の素材は特殊なものを除き耐放射線性に劣るため原子炉格納容器内での使用には耐えられない。また、コンクリートやブロック等の無機系の材料のほとんどは密度が高く、材料として重くなるため、ロボットでの取り扱いに問題がある。そこで注目したのがALCパネルと石膏ボードである。ALCとは、Autoclaved Lightweight aerated Concrete(軽量気泡コンクリート)の略であり、ALCパネルは珪石、セメント、生石灰、発泡剤となるアルミ粉末を主原料とし、高温高圧蒸気養生という独自の製法による軽量気泡コンクリート建築資材である。軽さと強度、断熱性をあわせ持つ建材であり、無機物質を原料とする軽量ボードとして位置づけられ、原子炉格納容器内で使用する建築資材としては理想的である。
しかしながら、ALCパネルには吸水性があるので、湿度の高い場所での使用においては、防水性の高い仕上げが必要となるが、耐放射線性に優れる防水性の仕上げ材はほとんどないのが現状である。さらに、ALCパネルは曲げ強力が低いうえに、耐衝撃性にも問題があるため、そのままでは原子炉格納容器内で使用する材料としては採用できない。また、石膏ボードも硫酸カルシウムという無機物を主原料としたボードであるので、耐放射線性は良好であり、かつ、比重も0.6から1.0の間であり軽量であるが、これもALCパネルと同様に曲げ強力や耐衝撃性に問題がある。
【0005】
特許文献1には、発泡スチロール芯材の外面側を耐衝撃性繊維で補強し、外面の略全体を覆うようにポリウレア樹脂層を設け、該ポリウレア樹脂層の外表面に前記ポリウレア樹脂層から露出したセラミック粒子露出部を万遍なく形成する方法が開示されており、この方法を用いると、不沈材料、網目サイズの耐衝撃性繊維、ポリウレア樹脂層が一体となった水上浮遊型シェルター用外殻構造材を簡単に形成することができる。これにより、水上火災等の高温環境下になった場合でも、外殻が熱で溶けることなく、またシェルター内部が高温になることがないため、シェルター内部の人員に影響が及びにくい水上浮遊型シェルターとすることができる。また、非使用時は、他の用途として防音室(カラオケルーム、楽器練習室等)や蓄熱槽としても転用できる。しかしながら、芯材として、発泡スチロール等の合成樹脂発泡材や中空の箱体(空気を内部に密閉した木製箱体や鉄製箱体)を提案しているため、合成樹脂や木材は強い放射線で劣化して強力が低下することが懸念される。また、鉄製箱体は強度を得るためにはかなりの重量が必要であり、原子炉格納容器内での取り扱いに問題が生じる。
【0006】
特許文献2には、構造面の補強工法として下地処理するステップと、下地処理された構造面に、接着剤を吹き付けて接着剤層を形成するステップと、前記接着剤層の表面に、補強線材が網状に形成され網目を有する補強ネットを貼付設置するステップと、前記補強ネットに向けて、接着剤を吹き付けて、接着保護層を形成するステップとを、順に実行することが提案されている。構造面としては、コンクリート構造面、モルタル面、岩石面等が挙げられているが、これらの材料は軽量とは言えず、重量物となるため、ロボットによる取り扱いに難がある。また、接着樹脂の耐放射線性についても全く考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-51732号公報
【文献】特開2004-27764号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】梶加名子他「全芳香族ポリアミドに対する放射線照射効果」SEN-I GAKKAISHI Vol.34, No.12(1978), p57-62
【文献】舟川勲他「合成高分子樹脂材料の放射線耐性評価」土木学会第68回年次学術講演会(平成25年9月), p773-774
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる従来技術の背景に鑑み、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉格納容器からのデブリ取出し等に際して必要となる、軽量で、曲げ強力が高く、耐衝撃性、耐放射線性に優れ高放射線下においても長期間使用可能な建築資材(壁材、床材もしくは天井材)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、軽量で、曲げ強力が高く、耐衝撃性、耐放射線性に優れる建築資材を種々検討した結果、ALCパネルまたは石膏ボードを芯材とする平板状の壁材、床材もしくは天井材として、その少なくとも片面を補強する高強度繊維製メッシュ布帛と、該芯材の両面を含む全体および前記高強度繊維製メッシュ布帛を被覆するポリウレア樹脂からなる樹脂層と、を備えている材料が、意外にも上記課題を一挙に解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1) ALCパネルまたは石膏ボードを芯材とする平板状の壁材、床材もしくは天井材であって、前記芯材の少なくとも片面を補強する高強度繊維製メッシュ布帛と、前記芯材の両面を含む全体および前記高強度繊維製メッシュ布帛を被覆するポリウレア樹脂からなる樹脂層と、を備え、累積照射線量500kGyの放射線を照射した後のJIS A 1106:2018に準じて測定した最大曲げ荷重が、少なくとも1.00kNであることを特徴とする壁材、床材もしくは天井材。
(2)下記式(1)により求められる、累積照射線量500kGyの放射線を照射した後の曲げ荷重保持率が、75%以上である、前記(1)に記載の壁材、床材もしくは天井材。
放射線照射後の曲げ荷重保持率(%)=(放射線照射後の最大曲げ荷重/放射線照射前の最大曲げ荷重)×100 ・・・(1)
(3)ALCパネルからなる芯材の厚さが、5mm以上100mm以下である、前記(1)~(2)いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
(4)石膏ボードからなる芯材の厚さが、5mm以上30mm以下である、前記(1)~(2)いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
(5)高強度繊維製メッシュ布帛が、織物、編物、編状物、格子状シートおよびハニカム状物からなる群より選ばれた少なくとも一種である、前記(1)~(4)いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
(6)高強度繊維が、ガラス繊維、ボロン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、高強度ポリエチレン繊維および全芳香族ポリエステル繊維からなる群より選ばれた少なくとも一種である、前記(1)~(5)いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
(7)高強度繊維が、アラミド繊維である、前記(1)~(6)いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
(8)高強度繊維製メッシュ布帛が、空間率が70%以上であり、かつ、1インチ当たりの経糸および緯糸の本数が0.5本~10本である、前記(1)~(7)いずれかに記載の壁材、床材もしくは天井材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原子炉格納容器内に隔離された部屋を設ける際に必要な、軽量で、曲げ強力、耐衝撃性の高い壁材、床材および天井材等の建築資材を提供することが出来る。これらの材料は軽量であるので、ロボットによる搬入、組立が可能である。また、最大曲げ荷重が大きく、放射線照射前後の曲げ荷重保持率が高いため、放射線下でも使用可能である。さらに、耐放射線性に優れるので、頻繁に材料を交換する必要もない。従って、廃炉作業におけるデブリ取出し用の建築資材として好適である。これにより、高放射線下においても長期間使用可能な軽量建築資材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である壁材、床材もしくは天井材を説明する説明図(正面図(a)と背面図(b))であり、芯材両面を含む全体にポリウレア樹脂を吹き付け、芯材片面にのみ高強度繊維製メッシュ布帛を接着させた例である。
【
図2】本発明の一実施形態である壁材、床材もしくは天井材を説明する説明図(正面図(a)と背面図(b))であり、芯材両面を含む全体にポリウレア樹脂を吹き付け、芯材両面に高強度繊維製メッシュ布帛を接着させた例である。
【
図3】本発明の高強度繊維製メッシュ布帛の空間率、目開きおよび糸幅を説明する説明図である。
【
図5】本発明のALCパネルを芯材とする壁材、床材もしくは天井材の放射線照射後における曲げ強度試験結果を示す荷重-変位曲線図である。
【
図6】本発明の石膏ボードを芯材とする壁材、床材もしくは天井材の放射線照射後における曲げ強度試験結果を示す荷重-変位曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図1および
図2は、本発明の壁材、床材もしくは天井材(以下、これらを纏めて「壁材等」と称することがある。)の一実施形態であり、ALCパネルまたは石膏ボードからなる平板状の芯材に、ポリウレア樹脂および高強度繊維製メッシュ布帛を接着させた壁材等を説明する図である。
図1および
図2において、1はALCパネルまたは石膏ボードからなる芯材、2、2aはポリウレア樹脂からなる樹脂層、3は高強度繊維製メッシュ布帛、10は壁材、床材もしくは天井材(壁材等)を示す。
【0015】
本発明に係る壁材等10は、以下の方法で形成することができる。
先ず、ALCパネルまたは石膏ボードからなる芯材1の片面(正面)の全面に、ポリウレア樹脂2を吹き付ける(
図1(a))。
一方、芯材1の反対側の面(背面)は、先ず、全面に適量のポリウレア樹脂2aを吹き付け、その直後に高強度繊維製メッシュ布帛3を全面に貼り付ける。布帛3をしっかりと芯材に接着させるためにローラーで圧着した後、ポリウレア樹脂2を高強度繊維製メッシュ布帛3の上に吹き付け、高強度繊維製メッシュ布帛3を芯材に完全に接着させる(
図1(b))。
芯材1の上面、下面および両側面についても、全面にポリウレア樹脂を吹き付ける(図示を省略する)。
なお、壁材等を設置する際に、高強度繊維製メッシュ布帛で補強した面を、部屋等の建築物の内側にするか外側にするかは自由である。
【0016】
また、芯材1の両面に、高強度繊維製メッシュ布帛を貼り付けて補強構造を形成してもよい。
芯材1の片面補強の場合と同様、芯材1の片面に、ポリウレア樹脂を吹き付け、その直後に、高強度繊維製メッシュ布帛3を全面に貼り付け、布帛3をしっかりと芯材1に接着させた後、さらにポリウレア樹脂を高強度繊維製メッシュ布帛3の上に吹き付ける(
図2(a))。
反対側の面も同様に、ポリウレア樹脂を全面に吹き付け、その直後に高強度繊維製メッシュ布帛3を全面に貼り付け、布帛3をしっかりと芯材1に接着させた後、ポリウレア樹脂を高強度繊維製メッシュ布帛3の上に吹き付け、高強度繊維製メッシュ布帛3を芯材1に完全に接着させる(
図2(b))。
芯材1の上面、下面および両側面についても、全面にポリウレア樹脂を吹き付ける(図示を省略する)。
【0017】
本発明の壁材等は、比重の小さいALCパネルまたは石膏ボードの芯材を補強したものであり、ポリウレア樹脂が有する高い靭性と、高強度繊維製メッシュ布帛が有する高い引張強度および高い引張弾性により、芯材の曲げ強力、せん断強力、耐衝撃性を向上させるものである。
【0018】
芯材となる石膏ボードは、石膏を主体とした成分からなる芯材の両面に紙を張付けた板状の構造物である。紙は、通常両面に配置されているが放射線で劣化するため、無い方が好ましい。石膏ボードには、ガラス繊維、炭素繊維あるいはガラス繊維不織布等が含まれていても良い。
石膏ボードの厚み(紙を含まない厚み)は、JIS A6901:2014 せっこうボード製品で規定された壁材等として使用できる厚みであれば良く、5mm以上30mm以下が好ましい。より好ましくは5mm以上15mm以下、さらに好ましくは5mm以上13mm以下である。5mm以上であれば建築資材として用いるのに十分な強度を付与することができ、30mm以下であれば軽量建築資材となり得る。
【0019】
石膏ボードの比重は、軽量で、持ち運びが容易な範囲であれば良く、0.60以上1.00以下が好ましい。より好ましくは0.65以上0.90以下、さらに好ましくは0.75以上0.90以下である。0.60以上であれば、建築資材として軽量かつ十分な強度を付与でき、1.00以下であれば軽量建築資材となり得る。
【0020】
石膏ボードの大きさ(サイズ)は、原子炉格納容器内に持ち運ぶことができるものであれば良く、特に限定されない。例えば、横幅×高さが、500mm~1,000mm×1,500mm~3,000mmのものを用いることができる。横幅が500mm以上で高さが1,500mm以上であれば、壁材等として好適に使用でき、横幅が1,000mm以下で高さが3,000mm以下であれば、原子炉格納容器内に持ち運べないといったことがない。具体的には、横幅606mm~910mm×高さ1,820mm~2,730mmの石膏ボードや、畳一帖分の大きさで施工し易い、横幅910mm×高さ1,820mm~2,730mmの市販の石膏ボードを用いることができる。
【0021】
また、芯材となるALCパネルは、石膏ボードと同様、壁材等として使用できる厚みであれば良く、5mm以上100mm以下が好ましい。より好ましくは10mm以上70mm以下、さらに好ましくは10mm以上50mm以下である。5mm以上であれば建築資材として用いるのに十分な強度を付与することができ、100mm以下であれば軽量建築資材となり得る。
【0022】
ALCパネルは、JIS A5416;2016 軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル)に規定する試験を行ったときの密度および圧縮強度を有するものであれば良く、特に限定されない。上記JIS規格に規定された密度は450kg/m3を超え550kg/m3未満、圧縮強度は3.0N/mm2以上である。
【0023】
ALCパネルの大きさ(サイズ)は、原子炉格納容器内に持ち運ぶことができるものであれば良く、特に限定されない。例えば、横幅×高さが、300mm~1,000mm×1,500mm~2,000mmのものを好ましく用いることができる。横幅が300mm以上、高さが1,500mm以上であれば、壁材等として好適に使用でき、横幅が1,000mm以下、高さが2,000mm以下であれば、原子炉格納容器内に持ち運べないといったことがない。具体的には、横幅300mm~606mm×高さ1,820mm~2,000mmの市販のALCパネルを用いることができる。
【0024】
ポリウレア樹脂は、芯材両面(表裏面)および側面(上面、下面、両側面)に対する接着力が高いだけでなく、高強度繊維製メッシュ布帛と同様に、壁材等の曲げ強力、せん断強力、および耐衝撃性を向上させることができ、耐放射線性にも優れる。芯材側面をポリウレア樹脂で被覆することで、壁材等に強い衝撃が加わった場合でも、芯材が壊れ、側面から破片が脱落することによる強度低下を効果的に防止できるほか、芯材に防水性を付与できるため、湿度の高い場所でも好適に使用できる。
また、高強度繊維とも親和性(濡れ性)が高いため、高強度繊維製メッシュ布帛にポリウレア樹脂に対する接着性を高めるための前処理を施す必要がないので経済面で優れている。さらに、ポリウレア樹脂を用いることにより、一般的な塗装と比較して10倍(1mm)以上の膜厚とすることが可能となるため、高強度繊維製メッシュ布帛全体を効率よく保護することが可能となる。
【0025】
本発明の壁材等では、高強度繊維製メッシュ布帛3で補強しない芯材1の表面(または裏面)および側面(上面、下面、両側面)に形成するポリウレア樹脂層2の厚みは、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることが特に好ましい。厚みが不足すると、樹脂膜の靱性が不十分となることで、大きな曲げ荷重や衝撃力に対して壁構造を維持することが困難となる。
【0026】
一方、高強度繊維製メッシュ布帛3で補強する場合には、ポリウレア樹脂2aを介して芯材1に接着させた高強度繊維製メッシュ布帛3の上に形成するポリウレア樹脂層2の厚みは、1mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、2mm以上であることが特に好ましい。この場合、あらかじめ芯材1に吹き付けるポリウレア樹脂2aの厚みは、特に制限されるものではないが、芯材1表面の凹凸を十分に覆うことができる程度の厚み、例えば、0.5mm以上1mm以下が好ましい。
【0027】
ポリウレア樹脂は、イソシアネート化合物(主剤)と活性水素を持つアミン化合物(硬化剤)との化学反応により形成される化合物である。ポリウレア樹脂としては、例えば、エクストリーム11-50(ライノライニングス社製)等がある。ポリウレア樹脂は、芯材と高強度繊維製メッシュ布帛とを接着させると共に、芯材の表面に高靱性かつ高伸長率の被膜を形成するものと推察される。
【0028】
ポリウレア樹脂の施工方法としては、ポリウレア樹脂を所定の厚み寸法で芯材に塗布あるいは吹き付ける方法等が挙げられるが、施工性に優れている点で吹き付けが望ましい。ポリウレア樹脂を芯材に吹き付ける吹付装置は、公知の吹付装置を用いることができる。ポリウレア樹脂は、ポリイソシアネート化合物(主剤)と活性水素を持つアミン化合物(硬化剤)とをスプレーガンで衝突混合させて化学反応させることにより生成される。吹付装置は、ポリイソシアネート化合物とアミン化合物を衝突混合させてミスト状にして芯材に吹き付ける装置である。
【0029】
吹付装置は、ポリイソシアネート化合物を収容したタンク、アミン化合物を収容したタンク、各タンクから化合物を送り出すポンプ、化合物に十分な圧力をかけて所定量を送り出す高圧定量ポンプ、輸送される化合物を加熱するヒータ、化合物の温度を保持するヒータ付ホース、および、両化合物を衝突混合させてミスト状態で射出するスプレーガン、さらには両化合物の混合割合を可変させる制御装置、加熱温度を可変させる制御装置等を備えているものを使用することができる。両化合物は、ヒータにより所定の温度に加熱されヒータ付ホースにより所定の温度に保持されたままスプレーガンに送られ、スプレーガンは、両化合物を衝突混合させると共に、ミスト状にして射出するので、両化合物は化学反応によりポリウレア樹脂を生成し、吹付対象物の表面において固化し、塗膜を形成する。そのため、作業時間が極めて短時間で済む利点がある。
【0030】
高強度繊維製メッシュ布帛は、織物、編物、編状物、格子状シートおよびハニカム状物からなる群より選ばれた少なくとも一種が好ましく用いられ、壁材の形状や、壁材に求められる補強効果に応じて、一種を用いてもよく、二種または三種以上の布帛を併用してもよい。高強度繊維製メッシュ布帛の引張強度が高い点からは、織物、格子状シートまたはハニカム状物が好ましい。織物組織は、平織、斜文織、朱子織等が好ましく、一般的な二軸織物、あるいは三軸織物、四軸織物等の多軸織物でもよい。また、芯材の表面と裏面に用いる高強度繊維製メッシュ布帛は、高強度繊維の種類や繊度および布帛の種類や形状は、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0031】
前記高強度繊維としては、ガラス繊維、ボロン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、高強度ポリエチレン繊維および全芳香族ポリエステル繊維からなる群より選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。高強度かつ高弾性率である点および耐放射線性に優れる点より、アラミド繊維が特に好ましい。アラミド繊維は、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、あるいは、それらの共重合体等である。具体例としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリ-3,4´-オキシジフェニレンテレフタルアミド共重合体等からなる繊維が挙げられる。高強度繊維の繊度は、好ましくは100~8,000dtex、より好ましくは100~6,300dtexである。
【0032】
高強度繊維製メッシュ布帛を構成する高強度繊維が無撚りであると、ポリウレア樹脂を吹き付ける際に糸乱れや糸広がりが起きやすくなり、布帛強度の低下あるいは空間率の変化が生じやすい。それらを防止するためには、高強度繊維は撚糸されていることが好ましい。好ましい撚り係数(下撚り係数)は0.1~5.0であり、より好ましくは0.1~2.2、さらに好ましくは0.1~1.6である。撚り係数が5.0を超えると強度が低下し撚糸が太くなるので、空間率の確保、軽量性の観点から好ましくない場合がある。撚り係数は下記式(1)により求められる。
【0033】
高強度繊維製メッシュ布帛は、1インチ当たりの経糸および緯糸の本数が0.5本以上、10本以下であることが好ましい。より好ましくは7本以下である。糸の本数が0.5本未満になると、繊度にもよるがリップストップとしての役割を果たしにくくなるため、さらに好ましくは1~7本/インチである。
【0034】
格子状シートの場合は、メッシュ布帛の空間率が70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上である。空間率が70%以上であると、芯材に対するポリウレア樹脂の接着性が向上することによる効果と相俟って、壁材の耐衝撃性をより一層向上させることが可能となる。一方、空間率が高くなり過ぎると、高強度繊維製メッシュ布帛自体の強度が低下し、補強効果が不充分になるため、空間率が93%以下であることが好ましく、より好ましくは90%以下である。
【0035】
一般的な二軸織物の場合、空間率は下記式(2)で求められる。
【0036】
また、三軸織物、四軸織物等の多軸織物では、空間率は画像解析装置を用いて求めることができる。簡易的には、電子写真(XEROX)式複写機で白黒複写をとり、複写画像を用いて(黒色部分の面積/有効部分全体の面積)×100で求めることができる。
【0037】
図3は、本発明の高強度繊維製メッシュ布帛が格子状シートの場合における、空間率、目開きおよび糸幅を説明する図である。経糸および緯糸の目開き(Me、Mf)は、ともに隣接する繊維間の長さである。経糸および緯糸の糸幅(We、Wf)は、ともにメッシュ布帛を構成する繊維(糸条)の幅である。繊維の幅は、繊維の開繊、拡幅・扁平化の程度や撚数の程度に関連し、繊維の拡幅・扁平化が進んでいると大きくなり、撚数が増えると小さくなる。
【0038】
高強度繊維製メッシュ布帛の場合、1インチ当たりの繊維本数を減少させ、かつ、使用する繊維の幅を小さくすることにより、布帛の目開きを大きくすることができ、結果として空間率を大きくすることができる。メッシュ布帛の強力を保ちながら繊維の幅を小さくするためには、細くても切れ難い高強度繊維を用いることが効果的である。
【0039】
本実施形態の壁材10は、石膏ボードからなる芯材1と、該芯材1の少なくとも片面を補強する高強度繊維製メッシュ布帛3と、該芯材1の両面および前記高強度繊維製メッシュ布帛3を被覆するポリウレア樹脂からなる樹脂層2と、を備えているものであり、芯材1はALCパネルでも良く、また、壁材10は床材または天井材でも良い。
【0040】
すなわち、芯材1と、非常に高い靭性を有する樹脂層2があることで、壁材等の曲げ強力やせん断耐力が著しく向上する。また、外部から衝撃が加わった際にも、強度および弾性率が高い高強度繊維製メッシュ布帛3は破断することなく存在することで、外部からの衝撃が緩和されて、芯材1に対する衝撃が弱められる。それと共に、高強度繊維製メッシュ布帛3が、樹脂層2の変形に追従して自在に伸縮したり、撓んだりすることで、樹脂層2の動きが適度に緩和される。これにより、壁材等に大きな衝撃が加わっても、樹脂層2が芯材1および高強度繊維製メッシュ布帛3の変形に追従して伸縮し、壁材等が破壊することがない。
高強度繊維製メッシュ布帛3が存在しない場合でも、非常に高い靭性を有するポリウレア樹脂からなる樹脂層2が、芯材1の変形に追従して撓むことで、壁材等が破壊することを防止することができる。
高強度繊維製メッシュ布帛3は、強い衝撃を受けると樹脂の繊維表面からの剥離が生じるため、片面のみ高強度繊維製メッシュ布帛で補強する場合は、衝撃を受ける反対面に配置することでより高い効果が期待できる。
【0041】
本発明の壁材等は、JIS A 1106:2018(コンクリートの曲げ強度試験方法)付属書JA(参考)中央点載荷法による曲げ強度試験方法に準じて測定した最大曲げ荷重が、少なくとも1.00kNであることが望ましい。前記最大曲げ荷重が、少なくとも1.00kNであれば、壁材等に大きい荷重が加わった場合でも容易に破壊することがない。より好ましくは1.20kN以上、さらに好ましくは1.35kN以上である。
また、本発明の壁材等は、高放射線下でも使用できるよう耐放射線性を備える必要があるが、累積照射線量が500kGyの放射線を照射した後に、上記試験方法により測定される最大曲げ荷重が、少なくとも1.00kNであることが望ましい。前記最大曲げ荷重が少なくとも1.00kNであれば、高放射線下での強度低下を気にする必要がなく、長期間使用が可能である。より好ましくは1.05kN以上、さらに好ましくは1.10kN以上である。
【0042】
さらに本発明の壁材等は、下記式(1)により求められる、累積照射線量500kGyの放射線を照射した前後の曲げ荷重保持率が、75%以上であることが望ましい。前記曲げ荷重保持率が75%以上であれば、高放射線下での長期間使用にも十分に耐え得る耐放射線性を有する。より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。
放射線照射後の曲げ荷重保持率(%)=(放射線照射後の最大曲げ荷重/放射線照射前の最大曲げ荷重)×100 ・・・(1)
【0043】
また本発明は、壁材による効果を妨げない範囲であれば、芯材1の表面にプライマー処理を施してもよい。プライマー処理により、芯材1とポリウレア樹脂2aとの密着性を向上させることができる。
【0044】
さらに、本発明は、ポリウレア樹脂2の表面に、仕上げ材(塗料)を吹付けあるいは塗布してもよい。仕上げ材は、耐候性、耐傷性、耐摩耗性、作業性、外観性等の点から、ポリウレタン系、アクリルシリコーン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等の樹脂材料を適宜選択して用いることができる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系等特に限定されるものではない。硬化法についても、一液タイプ、二液タイプ、紫外線硬化法等、適宜選択して行うことができる。塗料には、公知の添加剤(艶調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、抗菌剤、防カビ剤)を添加してもよい。
【0045】
意匠性向上等の点から、塗料にアルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等を添加してもよい。あるいは、タイル張りにすることも可能である。
【0046】
上記の実施形態で説明した壁材10は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各材料の形状や寸法等はこの実施形態のものに限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
吉野石膏株式会社製の石膏ボード(商品名:タイガーグラスロック、ガラス繊維不織布入り石膏板)からなる平板状芯材(幅15cm、長さ60cmにカットしたもの、厚さ12.5mm、両面の紙がないもの)の表面に、ポリウレア樹脂(ライノライニングス社製 エクストリーム11-50)を、塗布量が約2.2kg/m
2になるように吹き付けた(
図1(a))。
一方、芯材の裏面は、先ず、上記と同じポリウレア樹脂を、塗布量が約0.5kg/m
2になるように吹き付け、その直後にアラミド繊維製メッシュ布帛(アラミド繊維;東レ・デュポン株式会社製ケブラー(R)、布帛目付;180g/m
2、空間率;85%)を貼り付けた。布帛をしっかりと芯材に接着させた後、ポリウレア樹脂を、塗布量が約2.2kg/m
2になるようにメッシュ布帛の上に吹き付けた(
図1(b))。
芯材の上面、下面、両側面は、ポリウレア樹脂を塗布量が約2.2kg/m
2となるよう吹き付け、耐放射線性を有する軽量板を作製した。
上記軽量板は、その表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0049】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同じ石膏ボードからなる平板状の芯材の表面に、ポリウレア樹脂(ライノライニングス社製 エクストリーム11-50)を、塗布量が約0.5kg/m
2になるように吹き付け、その直後にアラミド繊維製メッシュ布帛(アラミド繊維;東レ・デュポン株式会社製ケブラー(R)、布帛目付;180g/m
2、空間率;85%)を貼り付けた。布帛をしっかりと芯材に接着させた後、ポリウレア樹脂を、塗布量が約2.2kg/m
2になるようにメッシュ布帛の上に吹き付けた(
図2(a))。
一方、芯材の裏面についても、芯材の表面と同様、上記と同じポリウレア樹脂を、塗布量が約0.5kg/m
2になるように吹き付け、その直後に上記と同じアラミド繊維製メッシュ布帛を貼り付け、布帛をしっかりと芯材に接着させた後、ポリウレア樹脂を、塗布量が約2.2kg/m
2になるようにメッシュ布帛の上に吹き付けた(
図2(b))。
芯材の上面、下面、両側面は、ポリウレア樹脂を塗布量が約2.2kg/m
2となるよう吹き付け、耐放射線性を有する軽量板を作製した。
上記軽量板は、その表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0050】
(実施例3)
クリオン株式会社製のALCパネル(商品名:クリオンエースボード)からなる平板状芯材(幅15cm、長さ60cmにカットしたもの、厚さ35mm)の表面に、ポリウレア樹脂(ライノライニングス社製 エクストリーム11-50)を、塗布量が約2.2kg/m
2になるように吹き付けた(
図1(a))。
一方、芯材の裏面は、先ず、上記と同じポリウレア樹脂を、塗布量が約0.5kg/m
2になるように吹き付け、その直後にアラミド繊維製メッシュ布帛(アラミド繊維;東レ・デュポン株式会社製ケブラー(R)、布帛目付;180g/m
2、空間率;85%)を貼り付けた。布帛をしっかりと芯材に接着させた後、ポリウレア樹脂を、塗布量が約2.2kg/m
2になるようにメッシュ布帛の上に吹き付けた(
図1(b))。
芯材の上面、下面、両側面は、ポリウレア樹脂を塗布量が約2.2kg/m
2となるよう吹き付け、耐放射線性を有する軽量板を作製した。
上記軽量板は、その表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0051】
(実施例4)
実施例3で用いたものと同じALCパネルからなる平板状の芯材の表面に、ポリウレア樹脂(ライノライニングス社製 エクストリーム11-50)を、塗布量が約0.5kg/m
2になるように吹き付け、その直後にアラミド繊維製メッシュ布帛(アラミド繊維;東レ・デュポン株式会社製ケブラー(R)、布帛目付;180g/m
2、空間率;85%)を貼り付けた。布帛をしっかりと芯材に接着させた後、ポリウレア樹脂を、塗布量が約2.2kg/m
2になるようにメッシュ布帛の上に吹き付けた(
図2(a))。
一方、芯材の裏面についても、芯材の表面と同様、上記と同じポリウレア樹脂を、塗布量が約0.5kg/m
2になるように吹き付け、その直後に上記と同じアラミド繊維製メッシュ布帛を貼り付け、布帛をしっかりと芯材に接着させた後、ポリウレア樹脂を、塗布量が約2.2kg/m
2になるようにメッシュ布帛の上に吹き付けた(
図2(b))。
芯材の上面、下面、両側面は、ポリウレア樹脂を塗布量が約2.2kg/m
2となるよう吹き付け、耐放射線性を有する軽量板を作製した。
上記軽量板は、その表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0052】
(比較例1)
吉野石膏株式会社製の石膏ボード(商品名:タイガーグラスロック)からなる平板状芯材(幅15cm、長さ60cmにカットしたもの、厚さ12.5mm)の表面、裏面、上面、下面、両側面に、ポリウレア樹脂(ライノライニングス社製 エクストリーム11-50)を、塗布量が約2.2kg/m2になるように吹き付けた軽量板を作製した。
上記軽量板は、その表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0053】
(比較例2)
クリオン株式会社製のALCパネル(商品名:クリオンエースボード)からなる平板状芯材(幅15cm、長さ60cmにカットしたもの、厚さ35mm)の表面、裏面、上面、下面、両側面に、ポリウレア樹脂(ライノライニングス社製 エクストリーム11-50)を、塗布量が約2.2kg/m2になるように吹き付けた軽量板を作製した。
上記軽量板は、その表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0054】
(比較例3)
吉野石膏株式会社製の石膏ボード(商品名:タイガーグラスロック)からなる平板状芯材(幅15cm、長さ60cmにカットしたもの、厚さ12.5mm)の表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0055】
(比較例4)
クリオン株式会社製のALCパネル(商品名:クリオンエースボード)からなる平板状芯材(幅15cm、長さ60cmにカットしたもの、厚さ35mm)の表面、裏面、上面、下面、両側面に、仕上げ材として、アクリル系樹脂を塗布した。
【0056】
実施例1~4および比較例1~4で得られた軽量板について、放射線照射前後の最大曲げ荷重を測定し、耐放射線性を評価した。併せて、放射線照射前後の変位の測定、曲げ荷重保持率の算出、曲げ強度試験後の軽量板の破損状況の観察を行った。試験方法を以下に示す。
【0057】
(1)最大曲げ荷重測定方法
放射線照射前および放射線照射後の最大曲げ荷重を、JIS A 1106:2018(コンクリートの曲げ強度試験方法)付属書JA(参考)中央点載荷法による曲げ強度試験方法に準じて測定した。ただし、スパンは560mmとした。
図4に試験方法の概要を記す。
【0058】
(2)耐放射線性の評価
放射線照射は、室温(空気中)にてγ線(Co60)を照射して行った。放射線は、累積照射線量500kGyで照射完了とした。
耐放射線性の評価は、放射線照射後の各試験体の最大曲げ荷重を考慮して、以下のように判断した。
<判定基準>
〇;放射線照射後の最大曲げ荷重が1.00kN以上、△;1.00kN未満0.50kN以上、×;0.50kN未満
【0059】
(3)変位測定方法
上記曲げ強度試験装置付属のモニター(図示していない)で管理するクロスヘッドの移動量を、放射線照射前の変位とした。放射線照射前の変位測定は最大で168mm(クロスヘッドの最大移動量)まで行った。
放射線照射後の変位は、上記曲げ強度試験装置(
図4)に設置した供試体(軽量板)載荷点下に、取付ジグを介して電気式変位計を取り付け、デジタルひずみ測定器を用いて行った。放射線照射後の変位測定は45mmまで行い、測定結果を小数点以下2桁に丸めた。変位が45mmを超えるものは測定不能とした。
【0060】
(4)曲げ荷重保持率
放射線照射前の最大曲げ荷重に対する放射線照射後の最大曲げ荷重から、下記式(1)により、放射線照射後の曲げ荷重保持率を算出した。
放射線照射後の曲げ荷重保持率(%)=(放射線照射後の最大曲げ荷重/放射線照射前の最大曲げ荷重)×100 ・・・(1)
【0061】
(5)軽量板の破損状況
上記放射線照射後の曲げ強度試験を行った後、各軽量板の裏面(載荷した面と反対の面)の破損状況を目視で確認した。
【0062】
実施例および比較例で作製した軽量板の試験結果を、表1にまとめて示す。
また、ALCパネルおよび石膏ボードを芯材とする壁材等の放射線照射後における曲げ強度試験結果を、
図5および
図6に示す。なお、
図5(
図6も同様)において、変位は原点を基準として最大45mmまで測定した結果を示している。比較例4(比較例3)は0mm地点、比較例2(比較例1)は5mm地点、実施例4(実施例2)は10mm地点を原点とした。
【0063】
【0064】
表1および
図5~6の結果より、本発明のポリウレア樹脂とアラミド繊維製メッシュ布帛によって補強されたALCパネルおよび石膏ボードは、軽量であり、かつ、最大曲げ荷重が高く、壁材、床材、天井材に適していることが分かる。
また、本発明の軽量板は、石膏ボード、ALCパネル、アラミド繊維、ポリウレア樹脂のいずれもが耐放射線性に優れることから、放射線照射後の最大曲げ荷重および曲げ荷重保持率に優れるものであった。そのため、大きい荷重がかかり、かつ、高い放射線環境下でも長期間使用可能であることがわかる。
さらに、本発明の軽量板は、無補強のものと比べて、放射線照射前、照射後の変位がいずれも高くなり、また曲げ試験後の破損状況においてもひび割れは確認できなかった。これは、ACLパネルや石膏ボード自体に伸度は無いが、ポリウレア樹脂が高い伸度(400%以上)を有しており、また、アラミド繊維製メッシュ布帛とポリウレア樹脂がFRP化して、伸度と強度を付与しているためと推察される。
本発明の軽量板を用いて部屋を設けた場合、建材の落下や建物の崩落、あるいは、爆風、台風等の強い衝撃により曲げ荷重が掛かり芯材の耐力が損なわれても、壁、天井等が破壊されて崩れ落ちることがなく、部屋内部の安全性を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の建築資材によれば、耐放射線性に優れ、軽量で丈夫な床材、壁材、天井材を得ることができ、福島第一原子力発電所の廃炉作業に役立てることが出来る。とりわけ極めて高い放射線量が予想されている、原子炉格納容器内での作業において使用することが期待される。
その他にも、住宅、学校、病院、商店、工場、シェルター、小屋等の壁材、床材もしくは天井材、あるいは敷地等の周囲に設ける塀として用いることで、外部からの衝撃から内部施設を守ることができ、地震や台風でも倒壊、崩壊する恐れがない安全な環境を提供できる。
【符号の説明】
【0066】
1 芯材
2 ポリウレア樹脂からなる樹脂層(被覆層)
2a ポリウレア樹脂からなる樹脂層(接着層)
3 高強度繊維製メッシュ布帛
10 壁材、床材もしくは天井材